(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6363985
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】葬儀用遺体保冷装置
(51)【国際特許分類】
A61G 17/04 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
A61G17/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-238341(P2015-238341)
(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公開番号】特開2017-104162(P2017-104162A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2016年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】314001036
【氏名又は名称】ヤマザキ・シー・エー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴道
【審査官】
井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−243135(JP,A)
【文献】
特開2006−212303(JP,A)
【文献】
特開2006−043245(JP,A)
【文献】
特開2000−279461(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3115108(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/04
A61G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体又は遺体を保持した棺桶を収容可能な箱状部材から成り、遺体を上部から視認可能とすべく上方が開放した収容本体と、
前記収容本体内に配設され、前記遺体又は棺桶を載置可能とされた載置手段と、
前記収容本体に配設され、当該収容本体内の遺体を冷却可能な冷却手段と、
を備えた葬儀用遺体保冷装置において、
前記収容本体の壁部に開閉扉が形成されるとともに、当該開閉扉を開状態にすることにより略水平方向に遺体又は棺桶を移動して前記載置手段に載置可能とされ、且つ、前記冷却手段は、前記収容本体における内側壁面に沿って冷媒を流通させ得る配管を有して構成され、当該配管がパンチングメタルから成る板状の保護材にて覆われて成ることを特徴とする葬儀用遺体保冷装置。
【請求項2】
前記開閉扉は、前記収容本体内に収容される遺体の足側に位置する壁部に形成されたことを特徴とする請求項1記載の葬儀用遺体保冷装置。
【請求項3】
前記載置手段は、転動して遺体又は棺桶を水平方向に移動させ得るローラを有して成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の葬儀用遺体保冷装置。
【請求項4】
前記載置手段は、上下方向に移動可能とされたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の葬儀用遺体保冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葬儀において遺体又は遺体を保持した棺桶を収容するとともに、その収容した遺体を冷却可能な葬儀用遺体保冷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、葬儀の式場等において出棺時まで遺体を保持する際、特に夏期において、遺体を保冷して一時的に保存する葬儀用遺体保冷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来の葬儀用遺体保冷装置は、函体内に載置手段及び冷却手段を具備しており、載置手段に棺桶を載置させつつ冷却手段により棺桶内の遺体を冷却することができるので、ドライアイス等の保冷剤を詰める作業や冷気を供給する作業等を不要とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3190725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、函体内の棺桶載置板に棺桶を載置させる際、棺桶を函体の上端より上方に持ち上げて移動させる必要があるので、重労働となってしまうとともに、多数の作業者が必要となってしまうという問題があった。なお、葬儀においては棺桶を使用せず、布団に保持させた遺体を載置手段に直接載置させる使用形態も考えられるが、その場合であっても、函体内に遺体を収容させる際、遺体を函体の上端より上方に持ち上げて移動させる必要があり、重労働且つ多数の作業者が必要になってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、遺体又は遺体を保持した棺桶を上方に持ち上げなくても良好に載置手段に載置させることができる葬儀用遺体保冷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、遺体又は遺体を保持した棺桶を収容可能な箱状部材から成り、遺体を上部から視認可能とすべく上方が開放した収容本体と、前記収容本体内に配設され、前記遺体又は棺桶を載置可能とされた載置手段と、前記収容本体に配設され、当該収容本体内の遺体を冷却可能な冷却手段とを備えた葬儀用遺体保冷装置において、前記収容本体の壁部に開閉扉が形成されるとともに、当該開閉扉を開状態にすることにより略水平方向に遺体又は棺桶を移動して前記載置手段に載置可能とされ
、且つ、冷却手段は、収容本体における内側壁面に沿って冷媒を流通させ得る配管を有して構成され、当該配管がパンチングメタルから成る板状の保護材にて覆われて成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の葬儀用遺体保冷装置において、前記開閉扉は、前記収容本体内に収容される遺体の足側に位置する壁部に形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の葬儀用遺体保冷装置において、前記載置手段は、転動して遺体又は棺桶を水平方向に移動させ得るローラを有して成ることを特徴とする。
【0010】
請求項
4記載の発明は、請求項1〜
3の何れか1つに記載の葬儀用遺体保冷装置において、前記載置手段は、上下方向に移動可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、収容本体の壁部に開閉扉が形成されるとともに、当該開閉扉を開状態にすることにより略水平方向に遺体又は棺桶を移動して載置手段に載置可能とされたので、遺体又は遺体を保持した棺桶を上方に持ち上げなくても良好に載置手段に載置させることができる。
また、冷却手段は、収容本体における内側壁面に沿って冷媒を流通させ得る配管を有して構成され、当該配管が板状の保護材にて覆われて成るので、遺体又は棺桶を収容本体内に収容させる際、配管に干渉して破損させてしまうのを防止することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、開閉扉は、収容本体内に収容される遺体の足側に位置する壁部に形成されたので、収容本体に対して遺体の頭部側から搬入して収容させ、足側から外部に搬出することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、載置手段は、転動して遺体又は棺桶を水平方向に移動させ得るローラを有して成るので、より小さな力で確実に載置手段の所定位置まで遺体又は棺桶を移動させることができる。
【0015】
請求項
4の発明によれば、遺体又は遺体を保持した棺桶を収容本体の上部まで容易に搬送することができ、遺体をより円滑に視認させることができるとともに、葬儀の演出効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る葬儀用遺体保冷装置を示す3面図
【
図3】同葬儀用遺体保冷装置における冷却手段の配管を示す模式図
【
図4】同葬儀用遺体保冷装置における開閉扉が閉状態のときの係止状態を示す模式図
【
図5】同葬儀用遺体保冷装置における遺体の向きが反対とされて収容された状態を示す縦断面図
【
図6】同葬儀用遺体保冷装置における枠体を取り付けた状態を示す3面図
【
図7】本発明の他の実施形態に係る葬儀用遺体保冷装置(載置手段が下降端)を示す縦断面図
【
図8】本発明の他の実施形態に係る葬儀用遺体保冷装置(載置手段が上昇端)を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る葬儀用遺体保冷装置1は、葬儀において遺体又は遺体を保持した棺桶を収容するとともに、その収容した遺体を冷却可能なもので、
図1〜3に示すように、収容本体2と、載置手段3と、冷却手段(配管4及び本体5)とを主に有して構成されている。
【0018】
収容本体2は、遺体又は遺体を保持した棺桶Kを収容可能な箱状部材から成り、遺体を上部から視認可能とすべく上方が開放したものである。かかる収容本体2は、内部に載置手段3や冷却手段等が配設されており、葬儀用遺体保冷装置1の筐体を構成するものであり、その下部に複数のキャスターrが取り付けられて容易に搬送可能とされている。なお、本実施形態に係る収容本体2は、遺体を保持した棺桶K(
図2参照)を収容させているが、棺桶Kを使用せず、布団に保持させた遺体を収容させる使用形態としてもよい。
【0019】
また、棺桶Kは、遺体の頭部が一端Ka側、足部が他端Kb側に位置するよう保持しており、収容本体2内における棺桶Kの一端Kaと対峙する位置には、クッション材6が取り付けられている。これにより、棺桶Kを収容本体2内に収容する際、誤って収容本体2の内壁に棺桶Kが衝突したとしても、その衝撃を吸収することができる。収容本体2は、断熱材等を有して成るのが好ましい。なお、図中符号8は、収容本体2の底面に設置されたドレンパンを示している。
【0020】
載置手段3は、収容本体2内に配設され、棺桶K(又は遺体)を載置可能とされたもので、本実施形態においては、収容本体2の底面に設置された載置台3aと、その載置台3a上に取り付けられた一対のレールL及びローラRを有して構成されている。ローラRは、その両端がレールLに支持されつつ転動可能とされており、転動して遺体又は棺桶を水平方向(
図2中左右方向)に移動させ得るものである。
【0021】
冷却手段は、収容本体2に配設され、当該収容本体2内の遺体を冷却可能なもので、本実施形態においては、コンプレッサや制御盤等を有して冷媒を冷却し得る本体5と、本体5で冷却された冷媒を流通させ得る配管4とを有して構成されている。配管4は、
図3に示すように、収容本体2における内側壁面(側面の内壁)に沿って屈曲しつつ配設されたもので、本体5にて冷却された冷媒が流通することにより、収容本体2内を冷却することができ、葬儀において遺体を保冷可能とするものである。
【0022】
ここで、本実施形態に係る葬儀用遺体保冷装置1においては、収容本体2の壁部に開閉扉Dが形成されるとともに、当該開閉扉Dを開状態(
図2の二点鎖線で示す状態)にすることにより略水平方向に遺体又は棺桶K(本実施形態においては遺体を保持した棺桶K)を移動して載置手段3に載置可能とされている。具体的には、開閉扉Dは、収容本体2内に収容される遺体の足側(本実施形態においては、棺桶Kの他端Kb側)に位置する壁部に形成されており、蝶番Daによって揺動することで、閉状態(
図2中実線で示す状態)と開状態(同図二点鎖線で示す状態)との間を移動可能とされている。
【0023】
また、開閉扉Dの所定位置及び収容本体2の壁部における開閉扉Dと対峙する位置には、
図4に示すように、当該開閉扉Dが閉状態のときに係止可能な係止手段7(例えばボールキャッチ等)が配設されている。かかる係止手段7により、開閉扉Dの閉状態が保持されるとともに、開閉扉Dを比較的強く引っ張ることにより、係止手段7による係止を解いて開状態まで揺動させることができる。なお、開閉扉Dが閉状態のとき、収容本体2の壁部と当該開閉扉Dとの間の隙間をシールするシール部材を取り付けるようにすれば、冷却手段による収容本体2内の保冷状態を確実に維持させることができる。
【0024】
さらに、本実施形態に係る収容本体2内には、冷却手段を構成する配管4を覆って保護するための板状の保護材C(本実施形態においてはパンチングメタル)が取り付けられている。このように、配管4が板状の保護材Cにて覆われて成るので、遺体又は棺桶Kを収容本体2内に収容させる際、配管4に干渉して破損させてしまうのを防止することができる。特に、保護材Cをパンチングメタルとすることにより、配管4による冷却効果を低下させずに当該配管4を確実に保護することができる。
【0025】
しかして、棺桶Kを収容本体2内に収容する場合、例えば載置手段3のローラRの設置高さと略同一高さの台車等に棺桶Kを載せ、その棺桶Kを開状態とした開閉扉Dに近接させる。そして、台車上の棺桶Kを略水平方向に移動して(本実施形態においては載置手段3側にずらして)ローラR上まで引っ張り、そこからローラRによって正規位置まで滑動させることができる。その後、開閉扉Dを閉状態とするとともに、冷却手段の本体5を作動させて配管4にて冷媒を流通させることにより、遺体を冷却することができる。
【0026】
このように、遺体を冷却することにより、葬儀において遺体の腐敗を防止することができるとともに、上部から遺体を視認(目視)することができる。なお、葬儀が終了して出棺する際は、開閉扉Dを開状態とするとともに、棺桶Kを開閉扉D側に引っ張って台車に載せることにより、外部に容易に搬出することができる。一方、棺桶Kを搬出した後の葬儀用遺体保冷装置1は、繰り返し使用することができる。
【0027】
本実施形態によれば、収容本体2の壁部に開閉扉Dが形成されるとともに、当該開閉扉Dを開状態にすることにより略水平方向に遺体又は棺桶K(本実施形態においては、遺体を保持した棺桶K)を移動して載置手段3に載置可能とされたので、遺体又は遺体を保持した棺桶Kを上方に持ち上げなくても良好に載置手段3(本実施形態においては、載置台3a上のローラR)に載置させることができる。
【0028】
また、本実施形態に係る開閉扉Dは、収容本体2内に収容される遺体の足側(本実施形態においては、棺桶Kの他端Kb側)に位置する壁部に形成されたので、収容本体2に対して遺体の頭部側から搬入して収容させ、足側から外部に搬出することができる。さらに、本実施形態に係る載置手段3は、転動して遺体又は棺桶を水平方向に移動させ得るローラRを有して成るので、より小さな力で確実に載置手段3の所定位置まで遺体又は棺桶Kを移動させることができる。
【0029】
しかるに、
図5に示すように、収容本体2内に収容される遺体の頭部側(本実施形態においては、棺桶Kの他端Kb側)に位置する壁部に開閉扉Dを形成するようにしてもよい。この場合、収容本体2に対して遺体の足側から搬入して収容させ、頭部側から外部に搬出することができる。また、収容本体2における冷却手段の本体5が配設される部位と反対側に遺体の頭部側が位置するよう構成するのが好ましい。この場合、開閉扉Dが配設される位置は、収容本体2における壁部の何れの位置であってもよい。さらに、
図6に示すように、収容本体2の上端部に沿って枠体9を取り付けるのが好ましい。かかる枠体9によって、上方から冷却手段の配管4が見えてしまうのを回避することができる。
【0030】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば開閉扉Kをスライド式の扉や脱着式の扉等としてもよい。また、冷却手段は、収容本体2に配設され、当該収容本体2内の遺体を冷却可能なものであれば、他の形態であってもよい。さらに、
図7、8に示すように、収容本体2内において載置手段3がリフト等の昇降手段10によって上下方向に移動可能とされたものとするのが好ましい。すなわち、載置手段3が下降端にあるとき(
図7参照)、遺体又は遺体を保持した棺桶Kを当該載置手段3上に載置させるとともに、葬儀において載置手段3を上昇端まで上昇させる(
図8参照)ことができるのである。これにより、遺体又は遺体を保持した棺桶Kを収容本体2の上部まで容易に搬送することができ、遺体をより円滑に視認させることができるとともに、葬儀の演出効果を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
収容本体の壁部に開閉扉が形成されるとともに、当該開閉扉を開状態にすることにより略水平方向に遺体又は棺桶を移動して載置手段に載置可能とされ
、且つ、冷却手段は、収容本体における内側壁面に沿って冷媒を流通させ得る配管を有して構成され、当該配管がパンチングメタルから成る板状の保護材にて覆われて成る葬儀用遺体保冷装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 葬儀用遺体保冷装置
2 収容本体
3 載置手段
4 配管(冷却手段)
5 本体(冷却手段)
6 クッション材
7 係止手段
8 ドレンパン
9 枠体
10 昇降手段
D 開閉扉
R ローラ
C 保護材
K 棺桶