(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで,
図5には,SMW工法に利用される従来のセメントミルクの製造装置が示されている。
図5に示されるように,従来の装置では,水槽に貯留されている水がプラントミキサーに供給される。また,プラントミキサーには,セメントサイロからセメント供給されるとともに,ベントナイトサイロからベントナイトが供給される。このため,プラントミキサーにおいて,水,セメント,及びベントナイトが混練されて,セメントミルクが生成される。また,プラントミキサーで生成されたセメントミルクは,アジテーターに供給されて,低速で撹拌することによって固化を防止しつつ一時的に貯留される。また,このアジテーターの中に,液状の主剤と粉状の助剤とからなる分散剤が投入されて,セメントミルクとともに撹拌される。そして,分散剤を含むセメントミルクが,注入ポンプを通じて掘削機へと提供される。このように,従来の装置においては,水とセメントとを混練してセメントミルクを生成した後に,このセメントミルクに対して分散剤を撹拌することとしていた。
【0006】
しかしながら,ある程度粘性の高いセメントミルクに分散剤を直接投入すると,分散剤がセメントミルクの液相中に溶けにくいことから,分散剤によるセメントミルク粒子の分散効果を十分に発揮できないと考えられる。特に,分散剤に粉状の助剤などが含まれる場合,粘性の高いセメントミルクにこの助剤を均等に拡散させることは困難であった。さらに,
図5に示されるように,撹拌翼が低速で回転するアジテーター内においては,分散剤がセメントミルクに拡散しにくく,均等なスラリーを得ることは困難であると考えられる。
【0007】
上記のように,本発明者らは,従来の装置では分散剤がセメントミルクに均等に拡散されていない可能性があることに気が付き,このような問題を解決するための手段について検討を行った。つまり,本発明は,少量の分散剤をセメントミルクに均等に拡散させ,セメントミルクの流動性を高めつつ,セメントミルクが固化したセメントソイル壁の強度を維持することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は,上記課題の解決手段について鋭意検討した結果,水と分散剤を予め混合しておくための撹拌混合機を新たに設けて,この撹拌混合機によって水と分散剤を混合した溶液を得た後に,この溶液を既存の撹拌混合機に供給してセメントと混練することにより,分散剤が均等に拡散したセメントミルクを製造することができるという知見を得た。そして,本発明者らは,上記知見に基づけば従来の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の工程・構成を有する。
【0009】
本発明の第1の側面は,セメントに水及び分散剤を含む材料を混練してセメントミルクを製造する方法に関する。セメントミルクの製造方法は,第1の撹拌混合機(分散剤ミキサー)に水及び分散剤を供給して混合し分散剤溶液を得る第1工程と,第2の撹拌混合機(プラントミキサー)にセメント及び分散剤溶液を供給して混練しセメントミルクを得る第2工程とを含む。なお,第1の撹拌混合機にはセメントは投入しない。本発明のように,予め分散剤を水に溶かした溶液を生成し,この溶液をセメントと混練することで,分散剤がセメントミルクに拡散しやすくなるため,流動性の高いセメントミルクを得ることができる。また,このようにしてセメントミルクの流動性を高めても,セメントミルクの単位水量が増加することはないため,ソイルセメント壁の施工性や耐久性を維持することができる。
【0010】
本発明の製造方法において,分散剤は,液状の主剤及び粉状の助剤を含むものであることが好ましい。このように,分散剤に粉状の助剤が含まれる場合,従来の方法では,特に分散剤がセメントミルク中に拡散しにくいものであった。これに対して,本発明の製造方法では,分散剤と水を予め混合するため,分散剤に粉状の助剤が含まれる場合であっても,この分散剤をセメントミルクに均一に拡散させることが可能となる。
【0011】
本発明の製造方法において,第2工程では,第2の撹拌混合機に,さらにベントナイトを供給して混練することが好ましい。このようにセメントミルクにさらにベントナイトの混練することで,セメントミルクの粘性が向上するため,ソイルセメント壁の止水性を向上させることができる。また,第1の撹拌混合機ではなく第2の撹拌混合機にベントナイトを供給することで,分散剤の拡散性を高めることができる。
【0012】
本発明の製造方法において,第1工程では,第1の撹拌混合機により水及び分散剤を30秒以上(特に1分以上)混合することが好ましい。このように,水と分散剤を30秒以上混合することで分散剤をほぼ完全に溶解させることができる。
【0013】
続いて,本発明に係るセメントミルクの製造方法の他の実施形態について説明する。本実施形態においては,分散剤には,液状の主剤及び粉状の助剤が含まれる。第1の工程では,第1の撹拌混合機(分散剤ミキサー)に,水と,主剤及び助剤のいずれか一方とを供給して混合し,分散剤溶液を得る。第2の工程では,第2の撹拌混合機(プラントミキサー)にセメント及び分散剤溶液を供給して混練し,セメントミルクを得る。さらに,第3の工程では,第3の撹拌混合機(アジテーター)に,セメントミルクと,主剤及び助剤のいずれか他方とを供給して混練する。特に,第1の撹拌混合機には,粉状の助剤を供給し,第3の撹拌混合機には,液状の助剤を供給することが好ましい。このように,主剤と助剤のいずれか一方を第1の撹拌混合機に供給して水と混合する実施形態であっても,セメントミルクに対する分散剤の拡散性を高める効果を期待できる。
【0014】
本発明の第2の側面は,セメントに水及び分散剤を含む材料を混練してセメントミルクを製造する装置に関する。本発明に係るセメントミルクの製造装置は,水及び分散剤を混練して分散剤溶液を得る第1の撹拌混合機(分散剤ミキサー)と,この第1の撹拌混合機によって得られた分散剤溶液とセメントを混練してセメントミルクを得る第2の撹拌混合機(プラントミキサー)とを備える。
【0015】
続いて,本発明に係るセメントミルクの製造装置の他の実施形態について説明する。本実施形態においては,分散剤には,液状の主剤及び粉状の助剤が含まれる。第1の撹拌混合機(分散剤ミキサー)は,水と,主剤及び助剤のいずれか一方とを混合して分散剤溶液を得る。第2の撹拌混合機(プラントミキサー)は,第1の撹拌混合機によって得られた分散剤溶液とセメントを混練してセメントミルクを得る。さらに,第3の撹拌混合機(アジテーター)を備え,第3の撹拌混合機では,第2の撹拌混合機によって得られたセメントミルクと,主剤及び助剤のいずれか一方とを混練する。特に,第1の撹拌混合機には,粉状の助剤を供給し,第3の撹拌混合機には,液状の助剤を供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,少量の分散剤をセメントミルクに均等に拡散させ,セメントミルクの流動性を高めつつ,セメントミルクが固化したセメントソイル壁の強度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は,本発明の第1の実施形態に係るセメントミルクの製造装置を示している。
図1に示されるように,製造装置は,分散剤溶液生成部10と,セメントミルク生成部20と,セメントミルク供給部30を有している。
【0020】
分散剤溶液生成部10は,セメントに混練する前に,分散剤と水とを混合して分散剤溶液を生成する部位である。分散剤溶液生成部10は,水槽11と,主剤タンク12と,助剤貯蔵部13と,分散剤ミキサー14(第1の撹拌混合機)を備える。水槽11には水が蓄えられており,水槽11内の水は水供給路11aを通じて分散剤ミキサー14に供給される。また,主剤タンク12には液状の主剤が貯留されており,主剤タンク12内の主剤は主剤供給路12aを通じて分散剤ミキサー14に供給される。また,助剤貯蔵部13には,一定量毎に袋詰された粉状の助剤が載置されている。助剤は,例えば人手によって分散剤ミキサー14の中に投入される。分散剤ミキサー14は,水,主剤,及び助剤を撹拌混合し,主剤と助剤からなる分散剤を水に溶解させた分散剤溶液を生成する。分散剤ミキサー14は,公知のミキサーを用いることができ,例えば複数の攪拌翼を高速で回転させる2軸強制練ミキサーなどを採用すればよい。
【0021】
上記のように,分散剤は,液状の主剤と粉状の助剤を混合して生成するものであることが好ましい。主剤としては,公知の液状のセメント分散剤を用いることができる。主剤の組成は特に限定されないが,例えば,アクリル酸アルカリ金属塩や,特開2000−169209号公報に開示されたポリカルボン酸系低分子量重合体を含有するセメント分散剤,特開2013−139369号公報に開示されたアクリル酸アルカリ土類金属塩を含有するセメント分散剤を採用することができる。また,助剤としては,公知の粉状の石灰や粘土鉱物などを用いることができる。例えば,助剤は,アルカリ金属炭酸塩であることが好ましく,具体的には,炭酸ナトリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸水素カリウムなどの一種又は二種以上を混合して用いることができる。特に,性能や取扱いの面から,助剤としては炭酸ナトリウムを用いることが好ましい。ただし,ここに挙げた主剤と助剤は一例であり,本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0022】
分散剤ミキサー14に投入する水,主剤,及び助剤の量は,施工現場の土質などの諸条件に応じて適宜計量することとすればよい。例えば,助剤の添加量は,主剤との重量比において,100%〜200%,110%〜180%,又は120%〜150%とすればよい。また,水及び主剤の添加量は,水供給路11a及び主剤供給路12aに自動計量機を設けて,自動的に計量することもできる。また,分散剤ミキサー14においては,水,主剤,及び助剤を一定時間以上撹拌させて,主剤及び助剤を完全に水に溶解させることが好ましい。例えば,分散剤ミキサー14による撹拌時間は,30秒以上であることが好ましく,1分以上又は5分以上であることが特に好ましい。
【0023】
上記のようにして分散剤溶液生成部10で生成された分散剤溶液は,分散剤溶液供給路14aを通じて,セメントミルク生成部20を構成するプラントミキサー23(第2の撹拌混合機)に供給される。
【0024】
セメントミルク生成部20は,セメントに分散剤溶液とベントナイトを投入して混練し,スラリー状のセメントミルクを生成する部位である。セメントミルク生成部20は,セメントサイロ21と,ベントナイトサイロ22と,プラントミキサー23を備える。セメントサイロ21はセメントを撹拌しながら貯留しており,セメントサイロ21内のセメントはセメント供給路21aを通じてプラントミキサー23に供給される。ベントナイトサイロ22にはベントナイトが貯留されており,ベントナイトサイロ22内のベントナイトはベントナイト供給路22aを通じてプラントミキサー23に供給される。なお,本発明において,セメントとベントナイトは,従来公知のものを利用することができる。プラントミキサー23は,セメント,ベントナイト,及び分散剤溶液を撹拌混合し,スラリー状のセメントミルクを生成する。プラントミキサー23は,分散剤ミキサー14と同様に,公知のミキサーを用いることができ,例えば複数の攪拌翼を高速で回転させる2軸強制練ミキサーなどを採用すればよい。このように,本発明では,分散剤と水とを混合して溶液を生成した後に,この分散剤溶液をセメントに加えるという手順にてセメントミルクを生成する。これにより,後述する実施例において実証されたとおり,水とセメントとを混練してセメントミルクを生成した後に分散剤を添加する従来の工法と比較して,本発明の工法によれば,セメントミルクの混練直後の流動性を高めることができ,しかもセメントミルクが固化してから所定期間経過した後のセメントソイル壁の強度を維持することが可能である。
【0025】
上記のようにしてセメントミルク生成部20で生成されたセメントミルクは,セメントミルク供給路23aを通じて,セメントミルク供給部30を構成するアジテーター31(第3の撹拌混合機)に供給される。
【0026】
セメントミルク供給部30は,スラリー状のセメントミルクが固化しないように緩やかに撹拌しながら保持しつつ,一定量のセメントミルクを掘削機などの外部装置に供給する部位である。セメントミルク供給部30は,アジテーター31と注入ポンプ32を備える。アジテーター31には,プラントミキサー23によって混練されたセメントミルク(セメント,水,主剤・助剤からなる分散剤,及びベントナイトを含む)が供給され,これを撹拌しながら保持する。アジテーター31は,一又は複数の攪拌翼を有しており,この攪拌翼の回転数は分散剤ミキサー14やプラントミキサー23と比較して低く設定されている。アジテーター31で保持されているセメントミルクは,吸入路31aを通じて注入ポンプ32によって吸入される。注入ポンプ32は,アジテーター31から吸入したセメントミルクを注出口(図示略)を介して掘削機などの外部装置へと供給する。注入ポンプ32としては,公知のポンプを利用することができる。このようにして製造されたセメントミルクは,SMW工法などにおいて好適に利用可能である。
【0027】
[第2の実施形態]
続いて,
図2を参照して,本発明に係るセメントミルクの製造装置の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態については,上述した第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し,第1の実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
【0028】
図2に示されるように,第2の実施形態に係る装置は,第1の実施形態に係る装置と基本的な構成は同じである。ただし,第2の実施形態では,分散剤の主剤と助剤のうち,主剤のみが分散剤ミキサー14に供給されており,助剤はアジテーター31に供給されている。このように,主剤と水を分散剤ミキサー14において混合して分散剤溶液を生成し,この分散剤溶液をプラントミキサー23においてセメントとベントナイトに加えて混練してセメントミルクを生成した後に,アジテーター31においてセメントミルクに助剤を加えて撹拌混合することも可能である。このような構成においても,少なくとも主剤がセメントミルク内において均一に拡散する効果が期待できる。
【0029】
[第3の実施形態]
続いて,
図3を参照して,本発明に係るセメントミルクの製造装置の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態については,上述した第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し,第1の実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
【0030】
図3に示されるように,第3の実施形態に係る装置は,第1の実施形態に係る装置と基本的な構成は同じである。ただし,第3の実施形態では,分散剤の主剤と助剤のうち,粉状の助剤のみが分散剤ミキサー14に供給されており,液状の主剤は主剤供給路12aを通じてアジテーター31に供給されている。このように,まず粉状の助剤と水を分散剤ミキサー14において混合して分散剤溶液を生成し,この分散剤溶液をプラントミキサー23においてセメントとベントナイトに加えて混練してセメントミルクを生成した後に,アジテーター31においてセメントミルクに液状の主剤を加えて撹拌混合することも可能である。このような構成においては,粉状の助剤を水と混合させて溶液とした後に,セメントと混練することができるため,粉状のままの助剤をセメント又はセメントミルクに直接加える場合(例えば第2の実施形態)と比較して,セメントミルク内における助剤の拡散性を高めることができる。
【0031】
[各資材の計量順序例]
図4は,上述した本発明の第1の実施形態から第3の実施形態と従来の工程との違いを,各資材の計量順によって示したフロー図である。
図4及び
図5に示されるように,従来のセメントミルクの製造工程では,(1)水を計量して水槽からプラントミキサーへと供給し,(2)ベントナイトを計量してベントナイトサイロからプラントミキサーへと供給し,(3)セメントを計量してセメントサイロからプラントミキサーへと供給して,これらを混練したセメントミルクを生成し,このセメントミルクをアジテーターへと供給する。その後,(4)主剤を計量して主剤タンクからアジテーターへと供給し,(5)助剤を計量してアジテーターへと供給して,これらからなる分散剤とセメントミルクを混練することとしていた。
【0032】
これに対して,本発明の第1の実施形態では,
図4及び
図1に示されるように,(1)水を計量して水槽から分散剤ミキサーへと供給し,(2)主剤を計量して主剤タンクから分散剤ミキサーへと供給し,(3)助剤を計量して分散剤ミキサーへと供給して,これらを混合した分散剤溶液を生成し,この分散剤溶液をプラントミキサーへと供給する。その後,(4)ベントナイトを計量してベントナイトサイロからプラントミキサーへと供給し,(5)セメントを計量してセメントサイロからプラントミキサーへと供給して,ベントナイト,セメント,及び分散剤溶液を混練したセメントミルクを生成する。これにより,本発明の第1の実施形態によれば,従来工法と比較して,セメントミルク内における分散剤の拡散性を高めることができる。
【0033】
また,本発明の第2の実施形態では,
図4及び
図2に示されるように,(1)水を計量して水槽から分散剤ミキサーへと供給し,(2)主剤を計量して主剤タンクから分散剤ミキサーへと供給して,これらを混合した分散剤溶液を生成し,この分散剤溶液をプラントミキサーへと供給する。その後,(3)ベントナイトを計量してベントナイトサイロからプラントミキサーへと供給し,(4)セメントを計量してセメントサイロからプラントミキサーへと供給して,ベントナイト,セメント,及び分散剤溶液(水及び主剤)を混練したセメントミルクを生成し,このセメントミルクをアジテーターへと供給する。最後に,(5)助剤を計量してアジテーターへと供給して,セメントミルクと助剤とを混練する。これにより,本発明の第2の実施形態によれば,従来工法と比較して,セメントミルク内における主剤の拡散性を高めることができる。
【0034】
また,本発明の第3の実施形態では,
図4及び
図3に示されるように,(1)水を計量して水槽から分散剤ミキサーへと供給し,(2)助剤を計量して分散剤ミキサーへと供給して,これらを混合した分散剤溶液を生成し,この分散剤溶液をプラントミキサーへと供給する。その後,(3)ベントナイトを計量してベントナイトサイロからプラントミキサーへと供給し,(4)セメントを計量してセメントサイロからプラントミキサーへと供給して,ベントナイト,セメント,及び分散剤溶液(水及び助剤)を混練したセメントミルクを生成し,このセメントミルクをアジテーターへと供給する。最後に,(5)主剤を計量して主剤タンクからアジテーターへと供給して,セメントミルクと主剤とを混練する。これにより,本発明の第3の実施形態によれば,従来工法と比較して,セメントミルク内における助剤の拡散性を高めることができる。
【実施例1】
【0035】
続いて,本発明に係る製造装置あるいは製造方法により製造されたセメントミルクの有効性を,実施例に基づいて説明する。特に以下では,第1の実施形態の実施例について説明を行う。
【0036】
表1は,本発明の製造方法に従って製造したセメントミルクの実施例1と,従来の製造方法に従って製造したセメントミルクの比較例1について,配合表,製造工程,及び実験結果を示している。
【表1】
【0037】
上記表1に示されるように,実施例1のセメントミルクと比較例1のセメントミルクは,共に同一の配合とし,分散剤を投入する工程のみを異ならせた。すなわち,実施例1と比較例1では,共に,セメント250kg/m
3,ベントナイト5kg/m
3,及び対セメント体積比226%の水に加えて,液状の主剤4kg/m
3及び粉状の助剤5kg/m
3からなる分散剤(MF)を混合して練り上げたセメントミルクを,試料土に対する体積比において注入率65%で注入した。分散剤の主剤としてはアクリル酸アルカリ金属塩を用い,助剤としては炭酸ナトリウムを用いた。なお,分散剤の“MF”とは出願人が定めた識別符号である。また,試料土は関東ロームであり,その湿潤密度は1.798g/cm
3であり,含水率は29.8%であった。また,セメント系固化材としては,株式会社デイ・シイ製のネオセラメントSSを用いた。
【0038】
実施例1では,水と分散剤(主剤及び助剤を含む)を分散剤ミキサーにおいて30秒以上混合して分散剤溶液を生成し,その分散剤溶液,セメント,及びベントナイトをプラントミキサーにおいて1分以上混練してセメントミルクを生成し,このセメントミルクを試料土に注入して3分以上混練した後に固化させ,ソイルセメント壁を造成した。これ対して,比較例1では,水,セメント,及びベントナイトをプラントミキサーにおいて1分以上混練してセメントミルクを生成し,このセメントミルク及び分散剤(主剤及び助剤を含む)をアジテーターにおいて撹拌混合し,このセメントミルクを試料土に注入して3分以上混練した後に固化させ,ソイルセメント壁を造成した。
【0039】
実施例1及び比較例1のセメントミルクについて,混練直後と60分経過後における試料のシリンダーフロー値(mm)を測定した。シリンダーフロー値は,NEXCO試験法313に準拠した試験器具を使用して測定し,シリンダーの内径と高さは80mmであるため試料の容量は402ccであった。シリンダーフロー値は,数値が大きいほど流動性が高いことを意味する。実施例1と比較例1のシリンダーフロー値を比較すると,実施例1の方が,混練直後と60分経過後の両時点において,比較例よりも流動性が優れていることがわかる。これにより,分散剤の投入順序が,セメントミルクのフロー値に顕著な影響を与えることが実証された。また,実施例1及び比較例1のソイルセメント壁について,施工後7日後と14日後における圧縮強度を測定した。実施例1と比較例1の圧縮強度を比較すると,実施例1は,上述のとおりセメントミルクの流動性が高いにも関わらず,比較例1と変わらない強度を維持できることがわかる。これにより,予め分散剤と水を混合することにより,セメントミルクの流動性を高めつつ,セメントソイル壁の強度を維持できることが確認された。また,実施例1では,セメントミルク内において分散剤を均等に拡散することができ,従来よりも少ない分散剤の投入量で順分な効果を発揮することが可能であると考えられ,経済的にも有利であるといえる。
【実施例2】
【0040】
表2は,本発明の製造方法に従って製造したセメントミルクの実施例2と,従来の製造方法に従って製造したセメントミルクの比較例2について,配合表,製造工程,及び実験結果を示している。
【表2】
【0041】
実施例2と比較例2では,共に,セメント180kg/m
3,ベントナイト5kg/m
3,及び対セメント体積比188%の水に加えて,液状の主剤4kg/m
3及び粉状の助剤5kg/m
3からなる分散剤(MF)を混合して練り上げたセメントミルクを,試料土に対する体積比において注入率40%で注入した。分散剤の主剤としてはアクリル酸アルカリ金属塩を用い,助剤としては炭酸ナトリウムを用いた。また,試料土は細砂であり,その湿潤密度は1.782g/cm
3であり,含水率は23.8%であった。また,セメント系固化材としては,高炉セメントB種を用いた。
【0042】
実施例2及び比較例2は,それぞれ実施例1及び比較例1と同様の工程でソイルセメント壁を造成した。
【0043】
実施例2及び比較例2のセメントミルクについて,混練直後と60分経過後における試料のシリンダーフロー値(mm)を測定した。実施例2と比較例2のシリンダーフロー値を比較すると,実施例2の方が,混練直後と60分経過後の両時点において,比較例よりも流動性が優れていることがわかる。特に,実施例2は,混練直後の流動性が比較例2と比較して大幅に高いものであった。これにより,分散剤の投入順序が,セメントミルクのフロー値に顕著な影響を与えることが実証された。また,実施例2及び比較例2のソイルセメント壁について,施工後7日後と14日後における圧縮強度を測定した。実施例2と比較例2の圧縮強度を比較すると,実施例2は,上述のとおりセメントミルクの流動性が高いにも関わらず,基準値を超える十分な強度を維持できることがわかる。これにより,予め分散剤と水を混合することにより,セメントミルクの流動性を高めつつ,セメントソイル壁の強度を維持できることが確認された。また,実施例2は,従来よりも少ない分散剤の投入量で順分な効果を発揮することが可能であり,経済的にも有利である。
【実施例3】
【0044】
表3は,本発明の製造方法に従って製造したセメントミルクの実施例3と,従来の製造方法に従って製造したセメントミルクの比較例3について,配合表,製造工程,及び実験結果を示している。
【表3】
【0045】
実施例3と比較例3では,共に,セメント180kg/m
3,ベントナイト5kg/m
3,及び対セメント体積比188%の水に加えて,液状の主剤4kg/m
3及び粉状の助剤5kg/m
3からなる分散剤(MF)を混合して練り上げたセメントミルクを,試料土に対する体積比において注入率40%で注入した。分散剤の主剤としてはアクリル酸アルカリ金属塩を用い,助剤としては炭酸ナトリウムを用いた。また,試料土はシルトであり,その湿潤密度は1.715g/cm
3であり,含水率は37.0%であった。また,セメント系固化材としては,高炉セメントB種を用いた。
【0046】
実施例3及び比較例3は,それぞれ実施例1及び比較例1と同様の工程でソイルセメント壁を造成した。
【0047】
実施例3及び比較例3のセメントミルクについて,混練直後と60分経過後における試料のシリンダーフロー値(mm)を測定した。実施例3と比較例3のシリンダーフロー値を比較すると,実施例3の方が,混練直後と60分経過後の両時点において,比較例よりも流動性が顕著に優れていることがわかる。これにより,分散剤の投入順序が,セメントミルクのフロー値に顕著な影響を与えることが実証された。また,実施例3及び比較例3のソイルセメント壁について,施工後7日後と14日後における圧縮強度を測定した。実施例3と比較例3の圧縮強度を比較すると,実施例3は,上述のとおりセメントミルクの流動性が高いにも関わらず,基準値を超える十分な強度を維持できることがわかる。これにより,予め分散剤と水を混合することにより,セメントミルクの流動性を高めつつ,セメントソイル壁の強度を維持できることが確認された。また,実施例3は,従来よりも少ない分散剤の投入量で順分な効果を発揮することが可能であり,経済的にも有利である。
【実施例4】
【0048】
表4は,本発明の製造方法に従って製造したセメントミルクの実施例4と,従来の製造方法に従って製造したセメントミルクの比較例4について,配合表,製造工程,及び実験結果を示している。
【表4】
【0049】
実施例4と比較例4では,共に,セメント250kg/m
3,ベントナイト5kg/m
3,及び対セメント体積比286%の水に加えて,液状の主剤10kg/m
3及び粉状の助剤15kg/m
3からなる分散剤(MF)を混合して練り上げたセメントミルクを,試料土に対する体積比において注入率80%で注入した。分散剤の主剤としてはアクリル酸アルカリ金属塩を用い,助剤としては炭酸ナトリウムを用いた。また,試料土は粘性土であり,その湿潤密度は1.777g/cm
3であり,含水率は29.8%であった。また,セメント系固化材としては,高炉セメントB種を用いた。
【0050】
実施例4及び比較例4は,それぞれ実施例1及び比較例1と同様の工程でソイルセメント壁を造成した。
【0051】
実施例4及び比較例4のセメントミルクについて,混練直後と60分経過後における試料のシリンダーフロー値(mm)を測定した。実施例4と比較例4のシリンダーフロー値を比較すると,実施例4の方が,混練直後と60分経過後の両時点において,比較例よりも流動性が優れていることがわかる。特に,実施例4は,混練直後の流動性が比較例4と比較して大幅に高いものであった。これにより,分散剤の投入順序が,セメントミルクのフロー値に顕著な影響を与えることが実証された。また,実施例4及び比較例4のソイルセメント壁について,施工後7日後と14日後における圧縮強度を測定した。実施例4と比較例4の圧縮強度を比較すると,実施例4は,上述のとおりセメントミルクの流動性が高いにも関わらず,比較例4と変わらない強度を維持できることがわかる。これにより,予め分散剤と水を混合することにより,セメントミルクの流動性を高めつつ,セメントソイル壁の強度を維持できることが確認された。また,実施例4は,従来よりも少ない分散剤の投入量で順分な効果を発揮することが可能であり,経済的にも有利である。
【0052】
以上のとおり,実施例1から実施例4を通じて,試料土の土質やセメント系固化材の種類が変わった場合であっても,本発明の効果を発揮できることが確認された。すなわち,予め分散剤と水を混合しておくことにより,どのような種類の土壌や固化材に対しても,セメントミルクの流動性を高めつつ,セメントソイル壁の強度を維持できることがわかった。
【0053】
以上,本願明細書では,本発明の内容を具体的に表現するために,本発明の実施形態及び実施例の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態や実施例に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。