【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
Julie R. Hu and Brian P. Otis,A 3 μW, 400 MHz divide-by-5 injection-locked frequency divider with 56% lock range in 90nm CMOS,Radio Frequency Integrated Circuits Symposium, 2008. RFIC 2008. IEEE,2008年,665-668頁
【文献】
山本憲 藤島実,差動注入同期型を利用した極低消費電力周波数分周器,信学技法,日本,社団法人 電子情報通信学会,2004年,ICD2004-19(2004-5),33-38頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
NチャネルMOS型トランジスタと、第1のPチャネルMOS型トランジスタと、第2のPチャネルMOS型トランジスタと、を含む増幅回路を、(2n+1)(n:1以上の整数)段、縦続接続したリング発振器を、備え、
前記(2n+1)個の増幅回路の各前記第1のPチャネルMOS型トランジスタのゲート端子には、高周波信号が入力され、
前記(2n+1)個の増幅回路の各前記第2のPチャネルMOS型トランジスタのゲート端子には、所定の直流制御電圧が供給され、
前記(2n+1)個の増幅回路の各前記第2のPチャネルMOS型トランジスタのドレイン端子と前記(2n+1)個の増幅回路の各前記第1のPチャネルMOS型トランジスタのドレイン端子とが接続される、
注入同期型発振器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(各実施形態の内容に至る経緯)
先ず、本開示に係る注入同期型発振器の各実施形態を説明する前に、各実施形態の内容に至る経緯について
図11〜
図15を参照して説明する。
図11は、従来の注入同期型分周器10の回路構成を示す図である。
【0012】
図11に示す注入同期型分周器10は、第1増幅回路41と、第2増幅回路42と、第3増幅回路43とがループ上に3段縦続接続されたリング発振器と、入力端子51と、出力端子52とを含む。
【0013】
第1増幅回路41は、第3増幅回路43の帰還出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)型トランジスタ11と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ12とを含む。
【0014】
第2増幅回路42は、第1増幅回路41の出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ21と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ22とを含む。
【0015】
第3増幅回路43は、第2増幅回路42の出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ31と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ32とを含む。
【0016】
各PチャネルMOS型トランジスタ12,22,32のゲート端子は入力端子51に接続され、各PチャネルMOS型トランジスタ12,22,32のソース端子は高電位電源Vddに接続され、各NチャネルMOS型トランジスタ11,21,31のソース端子は接地される。
【0017】
図11に示す注入同期型分周器10の動作について、
図12を参照して説明する。
図12は、従来の注入同期型分周器10の注入信号と出力信号の周波数と電力との関係を示す図である。
【0018】
図12において、入力端子51に入力される注入信号が無い場合、リング発振器の出力端子52、即ち注入同期型分周器10の出力端子52には、フリーラン周波数f
0の発振信号(フリーラン信号)F1と周波数2f
0の2次高調波成分F2と周波数3f
0の3次高調波成分F3とが生じる。
【0019】
次に、入力端子51に周波数3f
0付近の注入信号I1が入力された場合、注入信号I1と2次高調波成分F2とのミキシングによってフリーラン周波数f
0付近に注入信号I1がダウンコンバートされた出力信号I2が生じ、注入同期型分周器10のフリーラン信号F1は出力信号I2の周波数に引き寄せられて同期する。即ち、注入同期型分周器10は、周波数3f
0の注入信号I1に対して周波数f
0の出力信号I2を出力するので、3分周器として動作する。
【0020】
図13は、従来の注入同期型分周器10における、注入信号の電圧振幅と動作周波数との関係を示す図である。注入同期型分周器10は、
図13に示す曲線(実線)により囲まれる範囲内では分周器として動作し、
図13に示す曲線(実線)により囲まれる範囲外では分周器として動作しない。
【0021】
図13では、注入同期型分周器10のフリーラン周波数f
0の3倍の周波数付近では、注入信号の電圧振幅が最も小さい。注入同期型分周器10は、注入信号のフリーラン周波数f
0の3倍の周波数の注入信号が入力されると、注入信号の電圧振幅を最小化でき、消費電力を低減できる。また、
図13では、注入同期型分周器10を分周器として動作させるためには、注入信号の電圧振幅としてV
0以上が必要となる。
【0022】
しかし、
図11に示す従来の注入同期型分周器10には、以下の課題があった。
【0023】
図13では、注入同期型分周器10のフリーラン周波数f
0の3倍の周波数付近では、注入信号の電圧振幅が大きくなり過ぎても同期しなくなるので、注入信号の電圧振幅がV
1を超えると、注入同期型分周器10は分周器として動作しなくなる。
【0024】
図14は、注入信号の電圧振幅が小さい場合における各時間特性を示すグラフである。
図14(A)は、PチャネルMOS型トランジスタのゲート電圧振幅の時間特性を示すグラフである。
図14(B)は、PチャネルMOS型トランジスタのドレイン電圧振幅の時間特性を示すグラフである。
図14(C)は、PチャネルMOS型トランジスタのドレイン電流の時間特性を示す。
【0025】
図15は、注入信号の電圧振幅が大きい場合における各時間特性を示すグラフである。
図15(A)は、PチャネルMOS型トランジスタのゲート電圧振幅の時間特性を示すグラフである。
図15(B)は、PチャネルMOS型トランジスタのドレイン電圧振幅の時間特性を示すグラフである。
図15(C)は、PチャネルMOS型トランジスタのドレイン電流の時間特性である。
【0026】
図14(A)〜
図14(C)では、注入信号の電圧振幅が小さい場合、ドレイン電圧振幅波形と、ドレイン電流波形とは歪みの少ないサイン波形となる。
図14(B)に示すドレイン電圧振幅は
図11に示す注入同期型分周器10が発振する出力信号の波形を表す。
図14(B)では、注入同期型分周器10は、注入信号の電圧振幅の周波数の1/3の周波数において同期して発振する。即ち、注入同期型分周器10は、注入信号を3分周する分周器として動作し、注入信号の周波数の1/3倍の周波数の出力信号を出力する。
【0027】
一方、
図15(A)〜
図15(C)では、注入信号の電圧振幅が大きい場合、ドレイン電圧振幅波形と、ドレイン電流波形とには、歪みが生じる(
図15(A)〜
図15(C)の点線参照)。これは、PチャネルMOS型トランジスタのゲート端子に入力される電圧振幅が大きいため、PチャネルMOS型トランジスタのソース端子間とゲート端子間との電圧差がPチャネルMOS型トランジスタの閾値電圧よりも低くなり、PチャネルMOS型トランジスタがオフになるためである。
【0028】
従って、PチャネルMOS型トランジスタのソース端子間とゲート端子間との電圧差がPチャネルMOS型トランジスタの閾値電圧よりも低くなると、PチャネルMOS型トランジスタに電流が流れず、
図15(B)に示すドレイン電圧振幅と
図15(C)に示すドレイン電流には注入信号の周波数の歪み成分が現れる。
【0029】
また、注入信号の電圧振幅が更に大きくなると、
図11に示す注入同期型分周器10の出力信号波形の大きさよりも歪み成分の方が大きくなるため、注入信号が分周されずに出力される。即ち、注入信号の電圧振幅が所定値より大きくなると、
図11に示す注入同期型分周器10は、注入信号の周波数の1/3の周波数における同期が困難となり、分周器として動作しなくなるという課題がある。
【0030】
そこで、以下の各実施形態では、注入信号の振幅が所定値より大きくても発振器として安定的に動作し、動作周波数を広帯域化する注入同期型発振器の例を説明する。
【0031】
以下、本開示に係る注入同期型発振器の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態では、本開示に係る注入同期型発振器の一例として、注入同期型分周器を用いて説明するが、必要に応じて、注入同期型逓倍器を用いて説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の注入同期型分周器100の回路構成を示す図である。
図1に示す注入同期型分周器100は、第1増幅回路141と第2増幅回路142と第3増幅回路143とがループ上に3段縦続接続されたリング発振器と、入力端子151と、出力端子152と、制御電圧端子153とを含む。
【0033】
第1増幅回路141は、第3増幅回路143の帰還出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ111と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ112,113とを含む。
【0034】
第2増幅回路142は、第1増幅回路141の出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ121と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ122,123とを含む。
【0035】
第3増幅回路143は、第2増幅回路142の出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ131と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ132,133とを含む。
【0036】
各PチャネルMOS型トランジスタ112,122,132のゲート端子は注入信号(高周波信号)が入力される入力端子151に接続され、各PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲートはDCゲートバイアス電圧が入力される制御電圧端子153に接続される。また、各PチャネルMOS型トランジスタ112,113,122,123,132,133のソース端子は高電位電源Vddに接続され、各NチャネルMOS型トランジスタ111,121,131のソース端子は接地される。
【0037】
入力端子151には、注入同期型分周器100に入力される高周波信号(注入信号、例えば10[GHz])が入力される。
【0038】
出力端子152には、注入同期型分周器100の出力信号、即ち注入同期型分周器100が分周した分周信号、又は注入同期型分周器100が発振したフリーラン信号が出力される。
【0039】
制御電圧端子153には、注入同期型分周器100以外のゲートバイアス生成回路(不図示)が出力したDCゲートバイアス電圧Vcontが入力される。
【0040】
次に、本実施形態の注入同期型分周器100の動作について説明する。
【0041】
入力端子151に入力される注入信号が無い場合、リング発振器の出力端子152、即ち注入同期型分周器100の出力端子152には、フリーラン周波数f
0のフリーラン信号F1と周波数2f
0の2次高調波成分F2と周波数3f
0の3次高調波成分F3とが生じる(
図9参照)。
【0042】
次に、入力端子151に周波数3f
0付近の注入信号I1が入力された場合、注入信号I1と2次高調波成分F2とのミキシングによってフリーラン周波数f
0付近に注入信号I1がダウンコンバートされた出力信号I2が生じ、注入同期型分周器100のフリーラン信号F1は出力信号I2の周波数に引き寄せられて同期する。
【0043】
従って、注入同期型分周器100は、周波数3f
0付近の注入信号I1が入力端子151に入力されると、フリーラン周波数f
0付近の出力信号I2を出力端子152に出力するので、周波数を1/3倍(3分周)する分周器として動作する。
【0044】
本実施形態では、入力端子151に入力される注入信号は、負荷としての一部のPチャネルMOS型トランジスタ112,122,132の各ゲート端子に入力される。注入信号の電圧振幅が所定値より大きい場合には、PチャネルMOS型トランジスタ112,122,132がオフになるので、ドレイン電流が流れなくなる。
【0045】
しかし、本実施形態では、注入信号が入力されない負荷としての一部のPチャネルMOS型トランジスタ113,123,133の各ゲート端子には所定のDCゲートバイアス電圧Vcontが供給されるので、PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133にはドレイン電流が流れる。即ち、注入同期型分周器100において、PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133は、電流源として動作する。
【0046】
これにより、注入同期型分周器100は、入力端子151に入力される注入信号の電圧振幅が所定値より大きい場合でも、各増幅回路141,142,143におけるドレイン電圧振幅とドレイン電流に生じる歪み成分を低減できる。
【0047】
図2は、従来の注入同期型分周器と第1の実施形態の注入同期型分周器とにおける、注入信号の電圧振幅と動作周波数との関係を示す図である。注入同期型分周器100は、
図2に示す曲線(実線)により囲まれる範囲内では分周器として動作し、
図2に示す曲線(実線)により囲まれる範囲外では分周器として動作しない。
【0048】
図2では、注入同期型分周器100のフリーラン周波数f
0の3倍の周波数付近では、注入信号の電圧振幅が最も小さい。注入同期型分周器100は、注入信号のフリーラン周波数f
0の3倍の周波数の注入信号が入力されると、注入信号の電圧振幅を最小化でき、消費電力を低減できる。また、
図2では、注入同期型分周器100を分周器として動作させるためには、注入信号の電圧振幅としてV
0以上が必要となる。
【0049】
図2では、従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10)は、注入信号の電圧振幅がV
1を超えると分周器として動作しないが、注入同期型分周器100は、注入信号の電圧振幅がV
1を超えても分周器として動作できる。
【0050】
これは、注入同期型分周器100において、各PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲート端子にDCゲートバイアス電圧が供給されるので、各PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133が電流源として動作し、各増幅回路141,142,143におけるドレイン電圧振幅とドレイン電流とが歪まないので、注入信号が注入同期型分周器100において正しく分周されるためである。
【0051】
また、注入同期型分周器100は、注入信号の電圧振幅がV
2を超えると、分周器として動作しないが、従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10)に比べて、注入信号の電圧振幅が大きい場合でも分周器として動作できる。
【0052】
以上により、本実施形態の注入同期型分周器100は、第1増幅回路141と第2増幅回路142と第3増幅回路143とがループ上に3段縦続接続されたリング発振器において、各増幅回路141〜143のPチャネルMOS型トランジスタ112,122,132のゲート端子に注入信号(高周波信号)が入力され、更に、各増幅回路141〜143のPチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲート端子にDCゲートバイアス電圧Vcontが供給される。
【0053】
これにより、注入同期型分周器100は、PチャネルMOS型トランジスタ112,122,132に高周波信号が入力され、高周波信号が入力されないPチャネルMOS型トランジスタ113、123、133を電流源として動作させることで、注入信号の電圧振幅が所定値より大きい場合でも、ドレイン電流が流れることになり、分周器としての動作周波数を広帯域化できる。例えば、
図1に示す注入同期型分周器100は、注入信号の電圧振幅が大きくても、注入信号を1/3分周する分周器として広帯域において動作できる。
【0054】
また、本実施形態の注入同期型分周器100は、回路構成が簡易であるため、従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10に比べて、回路規模の増加を抑制でき、部品点数を低減できる。
【0055】
なお、本実施形態では、リング発振器を構成する増幅回路の段数が3段であるとして説明したが、3段に限定されず、例えばリング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)(n:1以上の整数)段としても良い。注入同期型分周器100は、入力端子151に入力される注入信号の周波数を、リング発振器のフリーラン周波数f
0のm(2n+1)倍付近とすれば良い。
【0056】
例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を5段とした場合、注入同期型分周器100は、リング発振器のフリーラン周波数の5倍或いは10倍の周波数の信号を注入する。これにより、注入同期型分周器100は、上述した3段構成と同様の効果が得られる。
【0057】
また、本実施形態では、注入同期型分周器について説明したが、例えば注入信号の高調波成分に同期させる注入同期型逓倍器としても同様な効果が得られる。なお、注入同期型逓倍器は、
図1に示す注入同期型分周器100と同様の回路構成を有するので、以下の説明では同一の符号を用いて同一の内容の説明は省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
【0058】
図3は、注入同期型逓倍器100Xの出力信号の周波数と電力との関係を示す図である。
【0059】
図3において、入力端子151に入力される注入信号が無い場合、リング発振器の出力端子152、即ち注入同期型逓倍器100Xの出力端子152にはフリーラン周波数f
0のフリーラン信号F1が生じる。
【0060】
次に、入力端子151に周波数f
0/3付近の注入信号I1が入力された場合、周波数2f
0/3の2次高調波成分I2と周波数f
0の3次高調波成分I3とが生じる。これにより、リング発振器のフリーラン信号F1、即ち注入同期型逓倍器100Xのフリーラン信号F1は注入信号I1の3次高調波成分I3の周波数に引き寄せられて同期する。即ち、注入同期型逓倍器100Xは、周波数f
0/3の注入信号I1に対して周波数f
0の出力信号I3を出力するため、周波数を3倍する3逓倍器として動作する。
【0061】
また、注入同期型逓倍器100Xにおけるリング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段とし、入力端子151に入力される注入信号の周波数を、リング発振器のフリーラン周波数f
0の1/(m(2n+1))(m:1以上の整数)倍付近としても良い。これにより、注入同期型逓倍器100Xは、注入信号の周波数をm(2n+1)倍する注入同期型逓倍器として動作できる。
【0062】
本開示に係る注入同期型発振器は、フリーラン周波数f
0よりも周波数が高い注入信号に同期した場合は注入同期型分周器として動作し、フリーラン周波数f
0よりも周波数が低い注入信号に同期した場合は注入同期型逓倍器として動作する。
【0063】
また、本実施形態では、各増幅回路のPチャネルMOS型トランジスタに注入信号(高周波信号)が入力される回路構成について説明したが、例えばPチャネルMOS型トランジスタとNチャネルMOS型トランジスタとを入れ替えても同様な効果が得られ、以下の各実施形態においても同様である。
【0064】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の注入同期型分周器101の回路構成を示す図である。
図4に示す注入同期型分周器101では、
図1に示す注入同期型分周器100と同一の回路構成には同一の符号を付して説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
【0065】
図4に示す注入同期型分周器101は、第1増幅回路141と第2増幅回路142と第3増幅回路143とがループ上に3段縦続接続されたリング発振器と、入力端子151と、出力端子152と、制御電圧端子153と、スイッチ181〜183と、制御回路191とを含む。なお、制御回路191は、注入同期型分周器100の構成として含まれなくても良い。
【0066】
スイッチ181は、制御回路191が出力した制御信号に応じて、PチャネルMOS型トランジスタ113のゲート端子に、入力端子151に入力された注入信号(高周波信号)又は制御電圧端子153に入力されたDCゲートバイアス電圧を切り替えて出力する。
【0067】
スイッチ182は、制御回路191が出力した制御信号に応じて、PチャネルMOS型トランジスタ123のゲート端子に、入力端子151に入力された注入信号(高周波信号)又は制御電圧端子153に入力されたDCゲートバイアス電圧を切り替えて出力する。
【0068】
スイッチ183は、制御回路191が出力した制御信号に応じて、PチャネルMOS型トランジスタ133のゲート端子に、入力端子151に入力された注入信号(高周波信号)又は制御電圧端子153に入力されたDCゲートバイアス電圧を切り替えて出力する。
【0069】
制御回路191は、入力端子151に入力される注入信号(高周波信号)の電圧振幅に応じて、各増幅回路141〜143のPチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲート端子に注入信号又はDCゲートバイアス電圧を入力させるための制御信号を生成して各スイッチ181〜183に出力する。
【0070】
具体的には、制御回路191は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWより大きい場合には、各増幅回路141〜143のPチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲート端子にDCゲートバイアス電圧を入力させるための制御信号を生成して各スイッチ181〜183に出力する。V
SWは、注入同期型分周器101において既定の閾値である。
【0071】
また、制御回路191は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SW以下である場合には、各増幅回路141〜143のPチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲート端子に注入信号を入力させるための制御信号を生成して各スイッチ181〜183に出力する。
【0072】
次に、本実施形態の注入同期型分周器101の動作について説明する。
【0073】
入力端子151に入力される注入信号が無い場合、リング発振器の出力端子152、即ち注入同期型分周器101の出力端子152には、フリーラン周波数f
0のフリーラン信号F1と周波数2f
0の2次高調波成分F2と周波数3f
0の3次高調波成分F3とが生じる(
図9参照)。
【0074】
次に、入力端子151に周波数3f
0付近の注入信号I1が入力された場合、注入信号I1と2次高調波成分F2とのミキシングによってフリーラン周波数f
0付近に注入信号I1がダウンコンバートされた出力信号I2が生じ、注入同期型分周器101のフリーラン信号F1は出力信号I2の周波数に引き寄せられて同期する。
【0075】
従って、注入同期型分周器101は、周波数3f
0付近の注入信号I1が入力端子1051に入力されると、フリーラン周波数f
0付近の出力信号I2を出力端子152に出力するので、1/3分周する分周器として動作する。
【0076】
本実施形態では、制御回路191が生成した制御信号に応じて、スイッチ181〜183が各PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲート端子に注入信号が入力される場合、注入同期型分周器101の回路構成は、従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10)と同じ回路構成となる。
【0077】
また、制御回路191が生成した制御信号に応じて、スイッチ181〜183が各PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲート端子にDCゲートバイアス電圧が供給される場合、注入同期型分周器101の回路構成は、第1の実施形態の注入同期型分周器100と同じ回路構成となる。本実施形態では、注入同期型分周器101は、制御回路191が生成した制御信号に応じて、従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10)と第1の実施形態の注入同期型分周器100とを切り替えできる。
【0078】
図5は、従来の注入同期型分周器と第1の実施形態の注入同期型分周器100と第2の実施形態の注入同期型分周器101とにおける、注入信号の電圧振幅と動作周波数との関係を示す図である。注入同期型分周器101は、
図5に示す曲線(太い実線)により囲まれる範囲内では分周器として動作し、
図5に示す曲線(太い実線)により囲まれる範囲外では分周器として動作しない。
【0079】
図5では、注入同期型分周器101のフリーラン周波数f
0の3倍の周波数付近では、注入信号の電圧振幅が最も小さい。注入同期型分周器100は、注入信号のフリーラン周波数f
0の3倍の周波数の注入信号が入力されると、注入信号の電圧振幅を最小化でき、消費電力を低減できる。また、
図5では、注入同期型分周器101を分周器として動作させるためには、注入信号の電圧振幅としてV
0以上が必要となる。
【0080】
図5において、本実施形態の注入同期型分周器101は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWよりも大きい場合、スイッチ181〜183の切り替えによって、第1の実施形態の注入同期型分周器100と同様の回路構成を得る。これにより、注入同期型分周器101は、従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10)と比較して、第1の実施形態の注入同期型分周器100と同様に、注入信号の電圧振幅の最大値がV
1からV
2に増加し、注入信号の電圧振幅が大きくても分周器として動作できる。
【0081】
一方、本実施形態の注入同期型分周器101は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWよりも小さい場合、スイッチ181〜183の切り替えによって、従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10)と同様の回路構成を得る。これにより、注入同期型分周器101は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWより小さいV
Lでは、分周器としての動作周波数帯域の減少を抑制できる。
【0082】
以上により、本実施形態の注入同期型分周器101は、第1の実施形態の注入同期型分周器100の回路構成に、スイッチ181〜183と、制御回路191とを更に含む。注入同期型分周器101は、入力端子151に入力される注入信号の電圧振幅の大きさに応じたスイッチ181〜183の切り替えによって、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWより大きい場合は第1の実施形態の注入同期型分周器100と同様の回路構成とし、注入信号の電圧振幅が所定値V
SW以下である場合は従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10)とする。
【0083】
これにより、注入同期型分周器101は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWより大きい場合には注入信号の電圧振幅の最大値がV
1からV
2に増加でき、注入信号の電圧振幅が大きくても分周器として動作できる。また、注入同期型分周器101は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SW以下である場合には分周器としての動作周波数帯域の減少を抑制できる。従って、本実施形態の注入同期型分周器101は、第1の実施形態の注入同期型分周器100に比べて、分周器としての動作周波数を広帯域化できる。
【0084】
なお、本実施形態では、リング発振器を構成する増幅回路の段数が3段であるとして説明したが、3段に限定されず、例えばリング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段としても良い。注入同期型分周器101は、入力端子151に入力される注入信号の周波数を、リング発振器のフリーラン周波数f
0のm(2n+1)倍付近とすれば良い。
【0085】
例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を5段とした場合、注入同期型分周器101は、リング発振器のフリーラン周波数の5倍或いは10倍の周波数の信号を注入する。これにより、注入同期型分周器101は、上述した3段構成と同様な効果が得られる。
【0086】
また、本実施形態では、注入同期型分周器について説明したが、例えば注入信号の高調波成分に同期させる注入同期型逓倍器としても同様な効果が得られる。なお、注入同期型逓倍器は、
図4に示す注入同期型分周器101と同様の回路構成を有する。例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段とし、入力端子151に入力される注入信号の周波数をリング発振器のフリーラン周波数f
0の1/(m(2n+1))倍付近とすれば良い。これにより、注入同期型逓倍器101Xは、m(2n+1)倍する逓倍器として動作できる。
【0087】
本開示に係る注入同期型発振器は、フリーラン周波数f
0よりも周波数が高い注入信号に同期した場合は注入同期型分周器として動作し、フリーラン周波数f
0よりも周波数が低い注入信号に同期した場合は注入同期型逓倍器として動作する。
【0088】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態の注入同期型分周器104の回路構成を示す図である。
図6に示す注入同期型分周器104では、
図1に示す注入同期型分周器100と同一の回路構成には同一の符号を付して説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
【0089】
図6に示す注入同期型分周器104は、第1増幅回路141Bと第2増幅回路142Bと第3増幅回路143Bとがループ上に3段縦続接続されたリング発振器と、入力端子151と、出力端子152と、制御電圧端子153とを含む。
【0090】
第1増幅回路141Bは、第3増幅回路143Bの帰還出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ111と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ113と、アンプとしてのPチャネルMOS型トランジスタ112とNチャネルMOS型トランジスタ114とを含む。
【0091】
第2増幅回路142Bは、第1増幅回路141Bの出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ121と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ123と、アンプとしてのPチャネルMOS型トランジスタ122とNチャネルMOS型トランジスタ124とを含む。
【0092】
第3増幅回路143Bは、第2増幅回路142Bの出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ131と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ133と、アンプとしてのPチャネルMOS型トランジスタ132とNチャネルMOS型トランジスタ134とを含む。
【0093】
各NチャネルMOS型トランジスタ114,124,134のゲート端子とドレイン端子とは、各PチャネルMOS型トランジスタ112,122,132のゲート端子とドレイン端子とにそれぞれ接続されている。また、各NチャネルMOS型トランジスタの114,124,134のソース端子は接地される。
【0094】
次に、本実施形態の注入同期型分周器104の動作について説明する。
【0095】
入力端子151に入力される注入信号が無い場合、リング発振器の出力端子152、即ち注入同期型分周器104の出力端子152には、フリーラン周波数f
0のフリーラン信号F1と周波数2f
0の2次高調波成分F2と周波数3f
0の3次高調波成分F3とが生じる(
図12参照)。
【0096】
次に、入力端子151に周波数3f
0付近の注入信号I1が入力された場合、注入信号I1と2次高調波成分F2とのミキシングによってフリーラン周波数f
0付近に注入信号I1がダウンコンバートされた出力信号I2が生じ、注入同期型分周器104のフリーラン信号F1は出力信号I2の周波数に引き寄せられて同期する。
【0097】
従って、注入同期型分周器104は、周波数3f
0付近の注入信号I1が入力端子151に入力されると、フリーラン周波数f
0付近の出力信号I2を出力端子152に出力するので、1/3分周する分周器として動作する。
【0098】
本実施形態では、入力端子に接続されている各NチャネルMOS型トランジスタ114,124,134と、各PチャネルMOS型トランジスタ112,122,132とがインバータアンプとして動作するため、入力信号は増幅されて注入される。また、注入同期型分周器104の電流源として動作する各PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲートに注入信号を入力しないため、ドレイン電流は安定して流れることになり、各増幅回路141B、142B、143Bにおけるドレイン電圧振幅とドレイン電流の歪み成分を低減することができる。
【0099】
図7は、従来の注入同期型分周器と第1の実施形態の注入同期型分周器100と第3の実施形態の注入同期型分周器104とにおける、注入信号の電圧振幅と動作周波数との関係を示す図である。注入同期型分周器104は、
図7に示す曲線(太い実線)により囲まれる範囲内では分周器として動作し、
図7に示す曲線(太い実線)により囲まれる範囲外では分周器として動作しない。
【0100】
図7では、注入同期型分周器104のフリーラン周波数f
0の3倍の周波数付近では、注入信号の電圧振幅が最も小さい。注入同期型分周器100,104は、注入信号のフリーラン周波数f
0の3倍の周波数の注入信号が入力されると、注入信号の電圧振幅を最小化でき、消費電力を低減できる。また、
図7では、注入同期型分周器104を分周器として動作させるためには、注入信号の電圧振幅としてV
0以上が必要となる。
【0101】
図7では、従来の注入同期型分周器(例えば
図11に示す注入同期型分周器10)は注入信号の電圧振幅がV
1、第1の実施形態の注入同期型分周器100は注入信号の電圧振幅がV
2を超えると分周器として動作しないが、注入同期型分周器104は、注入信号の電圧振幅がV
2を超えても分周器として動作できる。
【0102】
これは、注入同期型分周器104において、電流源として動作する各PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲートに注入信号が入力されないため、ドレイン電流は安定して流れることになり、各増幅回路141B,142B,143Bにおけるドレイン電圧振幅とドレイン電流とが歪まないので、注入信号が注入同期型分周器104において正しく分周されるためである。
【0103】
また、注入同期型分周器104は、注入信号の電圧振幅がV
3を超えると、分周器として動作しないが、従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10)や第1の実施形態の注入同期型分周器に比べて、注入信号の電圧振幅が大きい場合でも分周器として動作できる。
【0104】
以上により、本実施形態の注入同期型分周器104は、第1の実施形態の注入同期型分周器100の回路構成に、NチャネルMOS型トランジスタ114,124,134を更に含む。
【0105】
これにより、注入同期型分周器104は、入力端子に接続されている各NチャネルMOS型トランジスタ114,124,134と、各PチャネルMOS型トランジスタ112,122,132とがインバータアンプとして動作するため、入力信号は増幅されて注入される。また、注入同期型分周器104の電流源として動作する各PチャネルMOS型トランジスタ113,123,133のゲートに注入信号が入力されないため、ドレイン電流は安定して流れることになり、分周器としての動作帯域を広帯域化でき、かつ注入信号の電圧振幅が大きくても、注入信号を1/3分周する分周器として広帯域において動作できる。
【0106】
なお、本実施形態では、リング発振器を構成する増幅回路の段数が3段であるとして説明したが、3段に限定されず、例えばリング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段としても良い。注入同期型分周器104は、入力端子151に入力される注入信号の周波数を、リング発振器のフリーラン周波数f
0のm(2n+1)倍付近とすれば良い。
【0107】
例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を5段とした場合、注入同期型分周器104は、リング発振器のフリーラン周波数の5倍或いは10倍の周波数の信号を注入する。これにより、注入同期型分周器104は、上述した3段構成と同様な効果が得られる。
【0108】
また、本実施形態では、注入同期型分周器について説明したが、例えば注入信号の高調波成分に同期させる注入同期型逓倍器104Xとしても同様な効果が得られる。なお、注入同期型逓倍器104Xは、
図6に示す注入同期型分周器104と同様の回路構成を有する。例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段とし、入力端子151に入力される注入信号の周波数をリング発振器のフリーラン周波数f
0の1/(m(2n+1))倍付近とすれば良い。これにより、注入同期型逓倍器104Xは、m(2n+1)倍する逓倍器として動作できる。
【0109】
本開示に係る注入同期型発振器は、フリーラン周波数f
0よりも周波数が高い注入信号に同期した場合は注入同期型分周器として動作し、フリーラン周波数f
0よりも周波数が低い注入信号に同期した場合は注入同期型逓倍器として動作する。
【0110】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態の注入同期型分周器102の回路構成を示す図である。
図8に示す注入同期型分周器102は、第1増幅回路141Aと第2増幅回路142Aと第3増幅回路143Aとがループ上に3段縦続接続されたリング発振器と、入力端子151と、出力端子152と、制御電圧端子153と、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161と、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162とを含む。
【0111】
第1増幅回路141Aは、第3増幅回路143Aの帰還出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ111と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ112とを含む。
【0112】
第2増幅回路142Aは、第1増幅回路141Aの出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ121と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ122とを含む。
【0113】
第3増幅回路143Aは、第2増幅回路142の出力をゲート端子に受けるNチャネルMOS型トランジスタ131と、負荷としてのPチャネルMOS型トランジスタ132とを含む。
【0114】
各NチャネルMOS型トランジスタ111,121,131のソース端子は、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161及び第2のNチャネルMOS型トランジスタ162の各ドレイン端子に接続される。
【0115】
第1のNチャネルMOS型トランジスタ161のゲート端子には注入信号(高周波信号)が入力される入力端子151が接続され、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲート端子にはDCゲートバイアス電圧が入力される制御電圧端子153に接続される。
【0116】
また、各PチャネルMOS型トランジスタ112,122,132のソース端子は高電位電源Vddに接続され、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161及び第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のソース端子は接地される。
【0117】
入力端子151には、注入同期型分周器102に入力される高周波信号(注入信号、例えば10[GHz])が入力される。
【0118】
出力端子152には、注入同期型分周器102の出力信号、即ち注入同期型分周器102が分周した分周信号又は注入同期型分周器102が発振したフリーラン信号が出力される。
【0119】
制御電圧端子153には、注入同期型分周器100以外のゲートバイアス生成回路(不図示)が出力したDCゲートバイアス電圧Vcontが入力される。
【0120】
次に、本実施形態の注入同期型分周器102の動作について説明する。
【0121】
入力端子151に入力される注入信号が無い場合、リング発振器の出力端子152、即ち注入同期型分周器102の出力端子152には、フリーラン周波数f
0のフリーラン信号F1と周波数2f
0の2次高調波成分F2と周波数3f
0の3次高調波成分F3とが生じる(
図12参照)。
【0122】
次に、入力端子151に周波数3f
0付近の注入信号I1が入力された場合、注入信号I1と2次高調波成分F2とのミキシングによってフリーラン周波数f
0付近に注入信号I1がダウンコンバートされた出力信号I2が生じ、注入同期型分周器102のフリーラン信号F1は出力信号I2の周波数に引き寄せられて同期する。
【0123】
従って、注入同期型分周器102は、周波数3f
0付近の注入信号I1が入力端子151に入力されると、フリーラン周波数f
0付近の出力信号I2を出力端子152に出力するので、1/3分周する分周器として動作する。
【0124】
本実施形態では、入力端子151に入力される注入信号は、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161のゲート端子に入力される。注入信号の電圧振幅が大きい場合には、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161がオフになるので、ドレイン電流が流れなくなる。
【0125】
しかし、本実施形態では、注入信号が入力されない第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲート端子には所定のDCゲートバイアス電圧Vcontが供給されるので、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162にはドレイン電流が流れる。即ち、注入同期型分周器102において、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162は、電流源として動作する。
【0126】
これにより、注入同期型分周器102は、入力端子151に入力される注入信号の電圧振幅が大きい場合でも、各増幅回路141A,142A,143Aにおけるドレイン電圧振幅とドレイン電流に生じる歪み成分を低減できる。
【0127】
以上により、本実施形態の注入同期型分周器102は、第1増幅回路141Aと第2増幅回路142Aと第3増幅回路143Aとがループ上に3段縦続接続されたリング発振器と、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161と、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162とにおいて、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161のゲート端子に注入信号(高周波信号)が入力され、更に、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲート端子にDCゲートバイアス電圧Vcontが供給される。
【0128】
更に、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161のドレイン端子と、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のドレイン端子と、各増幅回路141A〜143AのNチャネルMOS型トランジスタ111,121,131のソース端子とが接続される。
【0129】
これにより、注入同期型分周器102は、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161に高周波信号が入力され、高周波信号が入力されない第2のNチャネルMOS型トランジスタ162を電流源として動作させることで、注入信号の電圧振幅が所定値より大きい場合でも、ドレイン電流が流れることになり、分周器としての動作周波数を広帯域化できる。例えば、
図8に示す注入同期型分周器102は、注入信号の電圧振幅が所定値より大きくても、注入信号を1/3分周する分周器として広帯域において動作できる。
【0130】
また、本実施形態の注入同期型分周器102は、回路構成が簡易であるため、従来の注入同期型分周器(例えば
図8に示す注入同期型分周器10に比べて、回路規模の増加を抑制でき、部品点数を低減できる。
【0131】
なお、本実施形態では、リング発振器を構成する増幅回路の段数が3段であるとして説明したが、3段に限定されず、例えばリング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段としても良い。注入同期型分周器100は、入力端子151に入力される注入信号の周波数を、リング発振器のフリーラン周波数f
0のm(2n+1)倍付近とすれば良い。
【0132】
例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を5段とした場合、注入同期型分周器102は、リング発振器のフリーラン周波数の5倍或いは10倍の周波数の信号を注入する。これにより、注入同期型分周器102は、上述した3段構成と同様の効果が得られる。
【0133】
また、本実施形態では、注入同期型分周器について説明したが、例えば注入信号の高調波成分に同期させる注入同期型逓倍器としても同様な効果が得られる。なお、注入同期型逓倍器は、
図8に示す注入同期型分周器102と同様の回路構成を有する。例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段とし、入力端子151に入力される注入信号の周波数をリング発振器のフリーラン周波数f
0の1/(m(2n+1))倍付近とすれば良い。これにより、注入同期型逓倍器102Xは、m(2n+1)倍する逓倍器として動作できる。
【0134】
本開示に係る注入同期型発振器は、フリーラン周波数f
0よりも周波数が高い注入信号に同期した場合は注入同期型分周器として動作し、フリーラン周波数f
0よりも周波数が低い注入信号に同期した場合は注入同期型逓倍器として動作する。
【0135】
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態の注入同期型分周器103の回路構成を示す図である。
図9に示す注入同期型分周器103では、
図8に示す注入同期型分周器102と同一の回路構成には同一の符号を付して説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
【0136】
図9に示す注入同期型分周器103は、第1増幅回路141Aと第2増幅回路142Aと第3増幅回路143Aとがループ上に3段縦続接続されたリング発振器と、入力端子151と、出力端子152と、制御電圧端子153と、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161と、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162と、スイッチ184と、制御回路192とを含む。なお、制御回路192は、注入同期型分周器103の構成として含まれなくても良い。
【0137】
スイッチ184は、制御回路192が出力した制御信号に応じて、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲート端子に、入力端子151に入力された注入信号(高周波信号)又は制御電圧端子153に入力されたDCゲートバイアス電圧を切り替えて出力する。
【0138】
制御回路192は、入力端子151に入力される注入信号(高周波信号)の電圧振幅に応じて、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲート端子に注入信号又はDCゲートバイアス電圧を入力させるための制御信号を生成してスイッチ184に出力する。
【0139】
具体的には、制御回路192は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWより大きい場合には、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲート端子にDCゲートバイアス電圧を入力させるための制御信号を生成してスイッチ184に出力する。V
SWは、注入同期型分周器103において既定の閾値である。
【0140】
また、制御回路192は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SW以下である場合には、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲート端子に注入信号を入力させるための制御信号を生成してスイッチ184に出力する。
【0141】
次に、本実施形態の注入同期型分周器103の動作について説明する。
【0142】
入力端子151に入力される注入信号が無い場合、リング発振器の出力端子152、即ち注入同期型分周器103の出力端子152には、フリーラン周波数f
0のフリーラン信号F1と周波数2f
0の2次高調波成分F2と周波数3f
0の3次高調波成分F3とが生じる(
図12参照)。
【0143】
次に、入力端子151に周波数3f
0付近の注入信号I1が入力された場合、注入信号I1と2次高調波成分F2とのミキシングによってフリーラン周波数f
0付近に注入信号I1がダウンコンバートされた出力信号I2が生じ、注入同期型分周器103のフリーラン信号F1は出力信号I2の周波数に引き寄せられて同期する。
【0144】
従って、注入同期型分周器103は、周波数3f
0付近の注入信号I1が入力端子151に入力されると、フリーラン周波数f
0付近の出力信号I2を出力端子152に出力するので、1/3分周する分周器として動作する。
【0145】
本実施形態では、制御回路192が生成した制御信号に応じて、スイッチ184が第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲート端子に注入信号が入力される場合、注入同期型分周器103において、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161及び第2のNチャネルMOS型トランジスタ162に注入信号が入力される。
【0146】
注入同期型分周器103は、
図4に示す注入同期型分周器101と同様に、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWより小さい場合には、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWより小さいV
Lでは、分周器としての動作周波数帯域の減少を抑制できる。
【0147】
また、制御回路192が生成した制御信号に応じて、スイッチ184が第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲート端子にDCゲートバイアス電圧が供給される場合、注入同期型分周器103の回路構成は、第4の実施形態の注入同期型分周器102と同じ回路構成となる。
【0148】
以上により、本実施形態の注入同期型分周器103は、第4の実施形態の注入同期型分周器102の回路構成に、スイッチ184と、制御回路192とを更に含む。注入同期型分周器103は、入力端子151に入力される注入信号の電圧振幅の大きさに応じたスイッチ184の切り替えによって、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWより大きい場合は第4の実施形態の注入同期型分周器102と同様の回路構成とし、注入信号の電圧振幅が所定値V
SW以下である場合は、注入信号を第1のNチャネルMOS型トランジスタ161及び第2のNチャネルMOS型トランジスタ162の各ゲート端子に入力させる。
【0149】
これにより、注入同期型分周器103は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SWより大きい場合には注入信号の電圧振幅の最大値がV
1からV
2に増加でき、注入信号の電圧振幅が大きくても分周器として動作できる。また、注入同期型分周器103は、注入信号の電圧振幅が所定値V
SW以下である場合には分周器としての動作周波数帯域の減少を抑制できる。従って、本実施形態の注入同期型分周器103は、第4の実施形態の注入同期型分周器102に比べて、分周器としての動作周波数を広帯域化できる。
【0150】
なお、本実施形態では、リング発振器を構成する増幅回路の段数が3段であるとして説明したが、3段に限定されず、例えばリング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段としても良い。注入同期型分周器101は、入力端子151に入力される注入信号の周波数を、リング発振器のフリーラン周波数f
0のm(2n+1)倍付近とすれば良い。
【0151】
例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を5段とした場合、注入同期型分周器103は、リング発振器のフリーラン周波数の5倍或いは10倍の周波数の信号を注入する。これにより、注入同期型分周器103は、上述した3段構成と同様な効果が得られる。
【0152】
また、本実施形態では、注入同期型分周器について説明したが、例えば注入信号の高調波成分に同期させる注入同期型逓倍器としても同様な効果が得られる。なお、注入同期型逓倍器は、
図9に示す注入同期型分周器103と同様の回路構成を有する。例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段とし、入力端子151に入力される注入信号の周波数をリング発振器のフリーラン周波数f
0の1/(m(2n+1))倍付近とすれば良い。これにより、注入同期型逓倍器103Xは、m(2n+1)倍する逓倍器として動作できる。
【0153】
本開示に係る注入同期型発振器は、フリーラン周波数f
0よりも周波数が高い注入信号に同期した場合は注入同期型分周器として動作し、フリーラン周波数f
0よりも周波数が低い注入信号に同期した場合は注入同期型逓倍器として動作する。
【0154】
(第6の実施形態)
図10は、第6の実施形態の注入同期型分周器105の回路構成を示す図である。
図10に示す注入同期型分周器105では、
図8に示す注入同期型分周器102と同一の回路構成には同一の符号を付して説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
【0155】
図10に示す注入同期型分周器105は、第1増幅回路141Aと第2増幅回路142Aと第3増幅回路143Aとがループ上に3段縦続接続されたリング発振器と、入力端子151と、出力端子152と、制御電圧端子153と、第1のNチャネルMOS型トランジスタ161と、第2のNチャネルMOS型トランジスタ162と、PチャネルMOS型トランジスタ142Zとを含む。
【0156】
PチャネルMOS型トランジスタ142Zのゲートとドレインとは、それぞれ第1のNチャネルMOS型トランジスタ161のゲートとドレインに接続される。また、PチャネルMOS型トランジスタ142Zのソースは電源に接続される。
【0157】
次に、本実施形態の注入同期型分周器105の動作について説明する。
【0158】
入力端子151に入力される注入信号が無い場合、リング発振器の出力端子152、即ち注入同期型分周器105の出力端子152には、フリーラン周波数f
0のフリーラン信号F1と周波数2f
0の2次高調波成分F2と周波数3f
0の3次高調波成分F3とが生じる(
図12参照)。
【0159】
次に、入力端子151に周波数3f
0付近の注入信号I1が入力された場合、注入信号I1と2次高調波成分F2とのミキシングによってフリーラン周波数f
0付近に注入信号I1がダウンコンバートされた出力信号I2が生じ、注入同期型分周器105のフリーラン信号F1は出力信号I2の周波数に引き寄せられて同期する。
【0160】
従って、注入同期型分周器105は、周波数3f
0付近の注入信号I1が入力端子151に入力されると、フリーラン周波数f
0付近の出力信号I2を出力端子152に出力するので、1/3分周する分周器として動作する。
【0161】
本実施形態では、入力端子に接続されている第1のNチャネルMOS型トランジスタ161と、PチャネルMOS型トランジスタ142Zとがインバータアンプとして動作するため、入力信号は増幅されて注入される。また、注入同期型分周器105の電流源として動作する第2のPチャネルMOS型トランジスタ162のゲートに注入信号が入力されないため、ドレイン電流は安定して流れることになり、各増幅回路141A、142A、143Aにおけるドレイン電圧振幅とドレイン電流の歪み成分を低減することができる。
【0162】
以上により、本実施形態の注入同期型分周器105は、第4の実施形態の注入同期型分周器102の回路構成に、PチャネルMOS型トランジスタ142Zを更に含む。
【0163】
これにより、注入同期型分周器105は、入力端子に接続されているNチャネルMOS型トランジスタ161と、PチャネルMOS型トランジスタ142Zとがインバータアンプとして動作するため、入力信号は増幅されて注入される。また、注入同期型分周器105の電流源として動作する第2のNチャネルMOS型トランジスタ162のゲートに注入信号が入力されないため、ドレイン電流は安定して流れることになり、分周器としての動作帯域を広帯域化でき、かつ注入信号の電圧振幅が大きくても、注入信号を1/3分周する分周器として広帯域において動作できる。
【0164】
なお、本実施形態では、リング発振器を構成する増幅回路の段数が3段であるとして説明したが、3段に限定されず、例えばリング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段としても良い。注入同期型分周器105は、入力端子151に入力される注入信号の周波数を、リング発振器のフリーラン周波数f
0のm(2n+1)倍付近とすれば良い。
【0165】
例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を5段とした場合、注入同期型分周器105は、リング発振器のフリーラン周波数の5倍或いは10倍の周波数の信号を注入する。これにより、注入同期型分周器105は、上述した3段構成と同様な効果が得られる。
【0166】
また、本実施形態では、注入同期型分周器について説明したが、例えば注入信号の高調波成分に同期させる注入同期型逓倍器105Xとしても同様な効果が得られる。なお、注入同期型逓倍器105Xは、
図10に示す注入同期型分周器105と同様の回路構成を有する。例えば、リング発振器を構成する増幅回路の段数を(2n+1)段とし、入力端子151に入力される注入信号の周波数をリング発振器のフリーラン周波数f
0の1/(m(2n+1))倍付近とすれば良い。これにより、注入同期型逓倍器105Xは、m(2n+1)倍する逓倍器として動作できる。
【0167】
本開示に係る注入同期型発振器は、フリーラン周波数f
0よりも周波数が高い注入信号に同期した場合は注入同期型分周器として動作し、フリーラン周波数f
0よりも周波数が低い注入信号に同期した場合は注入同期型逓倍器として動作する。
【0168】
以上、図面を参照して各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0169】
なお、本出願は、2013年3月5日出願の日本特許出願(特願2013−043497)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。