特許第6364027号(P6364027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6364027補強構造部品を作製するプロセス及び機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6364027
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】補強構造部品を作製するプロセス及び機構
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20180712BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20180712BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180712BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20180712BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180712BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20180712BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B05D3/00 D
   B05D3/00 C
   B05D3/02 D
   B05D7/24 301P
   B05D7/14 L
   B05D7/14 M
   C09J201/00
   C09J5/00
   F16B11/00 A
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-557398(P2015-557398)
(86)(22)【出願日】2014年2月11日
(65)【公表番号】特表2016-516560(P2016-516560A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014052607
(87)【国際公開番号】WO2014124924
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】13155497.4
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504274505
【氏名又は名称】シーカ・テクノロジー・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルペール ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ベルリ クルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴェガー マーティン
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0051183(US,A1)
【文献】 特開2006−341291(JP,A)
【文献】 特開2008−195277(JP,A)
【文献】 特開2009−226316(JP,A)
【文献】 特開2010−076417(JP,A)
【文献】 特表2012−501363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B05D 1/00− 7/26
C09J 1/00− 5/10
C09J 9/00−201/10
F16B 9/00− 11/00
B62D 17/00− 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本構造部品(9’)及び補強用支持材(1)を含み、前記補強用支持材を前記基本構造部品に構造的に接合するために、接着剤ビード(3a)及び/又は複数の接着剤プロットが前記補強用支持材の外面と前記基本構造部品の接触面との間に配置される補強構造部品(9)を作製するプロセスであって、
該プロセスは、
ロボット(7)を用いて前記補強用支持材を取り上げるステップと、
前記ロボットを対応して動作させることによって、前記補強用支持材を接着剤吐出ユニット(5)の近くに運ぶステップと、
前記ロボットを対応して動作させることによって、前記補強用支持材を前記接着剤吐出ユニットに沿って所定の経路に従って移動させるとともに、前記補強用支持材の移動に適時対応して、前記接着剤吐出ユニットから1回あたりの所定量の接着剤を放出して、1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットを、前記補強用支持材の前記外面上の所定の場所に塗布し、これにより、1又は複数の前記接着剤ビード又は複数の前記接着剤プロットが所定の形状に形成されるように前記ロボット及び前記接着剤吐出ユニットを制御するステップと、
1又は複数の前記接着剤ビード又は複数の前記接着剤プロットが塗布された前記補強用支持材を、作業空間に配置されている前記基本構造部品のところに移動させるとともに、1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットが、前記基本構造部品の前記接触面上の所定の場所に接触かつ接着して機械的に安定な結合を形成するように、前記ロボットを対応して動作させることによって、前記補強用支持材を前記基本構造部品に押し込むステップと、
前記補強用支持材を解放して開始位置に戻り、次の補強用支持材を取り出して該プロセスを再開するように、前記ロボットを操作するステップと、を含むプロセス。
【請求項2】
前記補強構造部品が、自動車若しくは他の車両又は航空機又は船舶の一部を形成する請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記基本構造部品と前記補強用支持材との間の接合部は、前記押し込みによって専ら実現される請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記基本構造部品と前記補強用支持材との間の接合部は、前記補強用支持材を保持する前記ロボットが、前記補強用支持材を介して前記基本構造部品を取り上げることができるようになっている請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記補強用支持材を前記接着剤吐出ユニットに沿って移動させるとともに、1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットを、前記補強用支持材に塗布するステップは、前記所定の経路に沿って一定量の接着剤が塗布されるように、前記ロボット及び前記吐出ユニットを制御することを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記補強用支持材を前記接着剤吐出ユニットに沿って移動させるとともに、1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットを、前記補強用支持材に塗布するステップは、前記所定の経路に沿って可変量の接着剤が塗布され、前記接着剤ビード及び/又は前記接着剤プロットのそれぞれの断面が、前記接着剤ビード及び/又は前記接着剤プロットの所定の幾何形状に従って変化するように、前記ロボット及び前記吐出ユニットを制御することを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記補強構造部品は、少なくとも第1の構造部材及び第2の構造部材を含み、
該プロセスは、
1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットが施された前記補強用支持材を前記第1の構造部材のところに移動させるとともに、前記ロボットを対応して動作させることによって、前記補強用支持材を前記第1の構造部材に押し込むステップと、
前記ロボットを対応して動作させることによって、前記補強用支持材及び前記補強用支持材に接着している前記第1の構造部材を組み立て位置に移動させるステップと、
1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットが施された前記第1の構造部材を、前記組み立て位置で待機している前記第2の構造部材に押し付けるように、前記ロボットを操作するステップ、又は、前記第1の構造部材が前記組み立て位置において解放され、前記ロボットが、前記第2の構造部材が待機している保管位置に移動し、前記第2の構造部材を取り出して前記組み立て位置に移送するとともに、前記第2の構造部材を、1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットが施された前記第1の構造部材に押し付けるように、前記ロボットを操作するステップと、を含み、
前記第1の構造部材を前記第2の構造部材に押し付けること又は前記第2の構造部材を前記第1の構造部材に押し付けることは、1又は複数の前記接着剤ビード又は複数の前記接着剤プロットを未硬化状態で前記第2の構造部材の表面に接触させ前記第2の構造部材に接着させるようにして行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
1又は複数の前記接着剤ビード又は複数の前記接着剤プロットが施された前記補強用支持材を前記基本構造部品又は前記第1の構造部材に押し付けること、及び必要に応じて、前記第1の構造部材を前記第2の構造部材に押し付けることは、前記補強用支持材又は前記第1の構造部材を保持する前記ロボットの並進運動において実行され、及び/又は、
1又は複数の前記接着剤ビード又は複数の前記接着剤プロットが施された前記補強用支持材を前記基本構造部品又は前記第1の構造部材に押し付けること、及び必要に応じて、前記第1の構造部材を前記第2の構造部材に押し付けることは、前記補強用支持材又は前記第1の構造部材を保持する前記ロボットの並進運動と回転運動との組み合わせによって実行される請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記補強用支持材を前記基本構造部品又は前記第1の構造部材に押し込むステップ、及び必要に応じて、1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットが施された前記第1の構造部材を前記第2の構造部材に互いに押し付けるステップにおいて、前記接着剤ビード又は前記接着剤プロットの側方延長部が拡張され、その一方で、前記側方延長部の前記ビードは、所定の範囲に減少する請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
計量ユニットに結合されている空間的に固定されたノズル(5a)を備える前記接着剤吐出ユニットを用いて、前記補強用支持材又は前記構造部材上の接着剤が塗布される場所が、前記ロボットの運動によって専ら制御されるようにし、及び/又は、
熱硬化性接着剤を用いて、前記補強用支持材に接着剤(3’)を塗布して、接着剤ビード及び/又は複数の接着剤プロットを前記補強用支持材上に形成するステップの後、前記プロセスを中断し、その後再開する請求項1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記補強用支持材を射出成形機(101)において射出成形によって作成する請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ロボットが前記射出成形機の出口において前記補強用支持材を取り出す請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記組み立てられた補強構造部品を、硬化場所に移送して所定の時間入れておき、1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットを硬化させる請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記硬化場所がコート塗装オーブン(109)であり、前記組み立てられた補強構造部品を前記コート塗装オーブンに移送し、前記コート塗装オーブンに所定の時間入れておき、1又は複数の前記接着剤ビード及び/又は複数の前記接着剤プロットを硬化させる請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記補強用支持材及び/又は前記第1の構造部材前記第2の構造部材に、ロボット操作のための操作部を設けることを含む請求項1〜14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のプロセスを実施する機構であって、
該機構は、
補強用支持材(1)と、必要に応じて第1の構造部材及び/又は第2の構造部材とを取り出して移動させるようになっているロボット(7)と、
前記補強用支持材のそれぞれの表面、又は必要に応じて、前記第1の構造部材のそれぞれの表面に、1回あたりの所定量の接着剤(3’)を放出するようになっている接着剤吐出ユニット(5)と、
基本構造部品(9’)、又は前記第1の構造部材若しくは前記第2の構造部材をそれぞれ保管するようになっている保管部(105)と、
前記ロボットの取り出し動作、解放動作及び運動、及び、所定の接着剤構成に従った前記補強用支持材又は必要に応じて前記第1の構造部材のそれぞれの表面に対する前記接着剤吐出ユニットからの前記接着剤の放出を制御するロボット及び吐出ユニットの動作制御ユニット(111)と、を備える機構。
【請求項17】
該機構は、前記補強用支持材を保管するようになっている保管部(103)又は前記補強用支持材をインラインで供給する射出成形機(101)を備え、
前記ロボットは、前記保管部(103)又は前記射出成形機の出口から前記補強用支持材を取り出すように構成されているとともに動作可能である請求項16に記載の機構。
【請求項18】
前記接着剤吐出ユニットは、固定ノズル(5a)を備える請求項16又は17に記載の機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強構造部品、特に、自動車若しくは他の車両又は航空機又は船舶の一部を形成する補強構造部品を作製するプロセスに関する。補強構造部品は、基本構造部品を含む。また、本発明は、このようなプロセスを実行する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
補強材は、費用及び重量を著しく増加させることなく、構造支持を提供する。例えば、補強材は、自動車において、例えばピラー、バンパー等の自動車の種々の部品によって形成される空洞部を補強するように用いることができる。構造体の一方の側から他方の側に負荷を適切に伝達するように、補強材は、補強材が配置される空洞部の内面、又は補強材が取り付けられる部品の表面に略合致する形状を有することができる。
【0003】
補強材は、補強材を所与の空洞部又は所与の構造部品内に固定する接着剤又は結合剤を用いて施すことができる。一般に、そのような物質は、補強される構造部品の対応する表面に係合するように、補強材の外面に施される。このタイプの補強材又はシステムはそれぞれ、本出願人のいくつかの特許又は特許出願、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、又は特許文献4の主題である。特許文献5、特許文献6及び特許文献7は、複数の機械及びロボットを使用する2つの構造部品の結合プロセスを記載している。本質的に、特許文献5、特許文献6及び特許文献7のプロセスは、処理時間の増大及び効率の低さを伴う比較的複雑なプロセスとみなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開公報第1946995号
【特許文献2】米国特許出願公開公報第2009/0220737号
【特許文献3】欧州特許出願公開公報第2159109号
【特許文献4】欧州特許出願公開公報第2251250号
【特許文献5】独国特許出願公開公報第102008039869号
【特許文献6】米国特許出願公開公報第2009/0038361号
【特許文献7】特開第2006−341291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業用途において、自動車部品又は他の車両の部品の高生産力かつ低費用での製造、及び、同時に、複合製品の機械的性質がそれぞれの分野における品質水準を満たすことの保証を可能にする、補強構造部品を作製するための高自動化プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的及び他の目的は、請求項1に記載の特徴を有するプロセスによって、また請求項13に記載の特徴を有する機構を用いて解決される。本発明の実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明の重要な態様のうちの1つは、ロボットが、補強用支持材を基本構造部品に押し込んで、これらの2つの部品を接合するように動作する点にある。さらに、所定量の接着剤を塗布するステップ内で、同じロボットが用いられる。これは、本プロセスが比較的簡単で時間効率がよいことを意味する。例えば、特許文献5では、ロボットによってハンドリングされる構成部材がロボットから取り外された後に、異なる2つの構成部材のプレスが行われる。
【0008】
補強用支持材は、ロボットによって接着剤吐出ユニットに沿って移動されることが好ましい。このステップは、少なくとも1つの接着剤ビードを塗布するステップと同時に(少なくとも部分的に同時に)実行することができる。本質的に、ロボットは、一方で接着剤ビードを塗布する間、また他方で補強用支持材を(基本)構造部品に押し込むステップを実施する間、補強用支持材を保持する。補強用支持材は、(少なくとも1つの)接着剤ビードが(基本)構造部品の接触面上の所定の場所に結合するように、(基本)構造部品に押し込まれる。接着剤ビードは、連続的に拡がって、接着剤層を形成することが好ましい。ここで、接着剤層が機械的に十分安定な結合を形成するまでプレスを行う。
【0009】
好ましい一実施形態では、(基本)構造部品と補強用支持材との間の接合部は、前記押し込むステップによって(専ら)実現される。例えば、(十分安定な)結合は、補強用支持材、基本構造部品、及び/又は接着剤の熱処理に基づくものではない。そのため、ロボットは、基本構造部品を補強用支持材と結合するのに効率的に用いられる。
【0010】
基本構造部品と補強用支持材との間の接合部は、補強用支持材を保持するロボットが、補強用支持材を介して基本構造部品を取り上げることができるようになっていることが好ましい。そのため、ロボットはまた、基本構造部品を補強用支持材と結合した後、補強構造部品をハンドリングするのに効率的に用いられる。ロボット(又は任意の他の装置)は、基本構造部品を運搬する場合に、基本構造部品に直接接触する必要さえない。このような運搬は、補強用支持材を介して(特に1又は複数の接着剤ビードを介して)(間接的に)実行することができる。
【0011】
通常、本発明は、接着剤(例えば従来技術において開示されているシーラントではない)を用いて、補強用支持材を基本構造部品としっかりと結合する。
【0012】
本発明の包括的な態様によれば、本明細書に開示されるプロセスは、ロボットを対応して動作させることによって、接着剤吐出ユニットの近くに補強用支持材を運ぶことと、ロボットを対応して動作させることによって、接着剤吐出ユニットに沿って所定の経路に従って補強用支持材を移動させるとともに、この補強用支持材の移動に適時対応して、接着剤吐出ユニットから1回あたりの所定量の接着剤を放出して、1又は複数の接着剤ビード及び/又は複数の接着剤プロットを、補強用支持材の外面上の所定の場所に塗布する。ここで、1又は複数の接着剤ビード又は複数の接着剤プロットが所定の形状に形成されるように、ロボット及び接着剤吐出ユニットを制御する。例示的な一実施形態において、本プロセスは、一定量の接着剤が所定の経路に沿って塗布されるように、ロボット及び接着剤吐出ユニットを制御することを含む。別の例示的な実施形態において、可変量の接着剤が所定の経路に沿って塗布され、それにより、それぞれの接着剤ビード及び/又は接着剤プロットの断面が、接着剤ビード及び/又は複数の接着剤プロットの予め規定された幾何形状に従って変化するように、ロボット及び接着剤吐出ユニットを制御する。
【0013】
更なる例示的な一実施形態において、計量ユニットに結合されている固定ノズルを備える接着剤吐出ユニットを用いて、補強用支持材又は構造部材の接着剤が塗布される場所が、ロボットの運動によって専ら制御されるようにする。そのような実施形態において、著しい変更を伴うことなく、またより具体的には一切の固有の駆動手段及び駆動制御手段を伴うことなく、市販されているタイプの基本的に静的なディスペンサー装置を用いることができ、したがって製造コストの低減に寄与する。
【0014】
更なる一実施形態において、本プロセスは、補強用支持材及び/又は第1の構造部材及び/又は第2の構造部材に、ロボット操作のための操作部を設けることを含む。そのような実施形態では、異なる補強材形態又は組み立て環境について費用がかかる固有のロボット構成部品を要することなく、規格化された鉤爪又は移動させる部品を把持する他の手段を備えるロボットを用いることができる。そのような操作部又はハンドリング部はそれぞれ、射出成形ステップ内で形成することができるか、若しくは、補強用支持材を発泡成形若しくはプレス加工するステップ内で形成することができるか、又は、後続ステップにおいて補強用支持材本体に取り付けることができる。
【0015】
更なる一実施形態において、補強用支持材は、射出成形機において射出成形によって作製され、特に、ロボットは、射出成形機の出口において補強用支持材を取り出す。代替的な実施形態において、補強用支持材は、異なるプロセス、例えば押出プロセスにおいてプラスチックで作製することができるか、又は、異なる材料によって作製された補強用支持材、例えば圧縮した天然繊維若しくは木材によって作製された補強用支持材を用いることができる。
【0016】
本発明の更なる例示的な実施形態において、補強構造部品は、少なくとも第1の構造部材及び第2の構造部材を含む多部分部品である。このような場合、本プロセスは、補強用支持材及び補強用支持材に接着している第1の構造部材を、ロボットを対応して動作させることによって組み立て位置に移動させることを含む。したがって、ロボットは、1又は複数の接着剤ビード及び/又は複数の接着剤プロットが施された第1の構造部材を、組み立て位置で待機している第2の構造部材に押し付けるように操作されるか、又は、ロボットは、第1の構造部材を組み立て位置において解放し、第2の構造部材が待機している保管位置に移動し、第2の構造部材を取り出して組み立て位置に移送するとともに、第2の構造部材を1又は複数の接着剤ビード及び/又は複数の接着剤プロットが施された第1の構造部材に押し付けるように操作される。ここで、第1の構造部材を第2の構造部材に押し付けること又は第2の構造部材を第1の構造部材に押し付けることは、1又は複数の接着剤ビード又は複数の接着剤プロットが、未硬化状態で第2の構造部材の表面に接触して、第2の構造部材に接着するようにして行われる。3つ以上の部材からなる補強構造部品に適合された実施形態では、本プロセスのステップは、補強構造部品の意図した全体形状を考慮して、またより具体的には、いくつかの部材間に設けられる接着剤による接合部又は機械的結合部に関する補強構造部品の設計を考慮して、対応して適合される。
【0017】
更なる一実施形態において、本プロセスは、好ましくはSikaPower(登録商標)製品グループから選択される熱硬化性接着剤を、補強用支持材に塗布し、補強用支持材上に、接着剤ビード及び/又は複数の接着剤プロットを形成するステップを含み、それからプロセスを中断し、その後再開する。次に、組み立てられた補強構造部品を、硬化場所、特にコート塗装オーブンに移送し、コート塗装オーブンに所定の時間入れておき、1又は複数の接着剤ビード及び/又は複数の接着剤プロットを硬化させる。また基本的に、この硬化場所への移送は、組み立てステップの直後に行うことができる。
【0018】
SikaPower(登録商標)シリーズは、通常、ブロックポリウレタンプレポリマー系の強化剤を含む、耐衝撃性の1液型エポキシ樹脂系熱硬化性接着剤を含む。このような接着剤は、例えば、引用することにより本明細書の一部をなす、欧州特許出願第1916269号、欧州特許出願第1916272号、欧州特許出願第1916270号、欧州特許出願第2084200号、及び欧州特許出願第1972646号から既知である。
【0019】
別の実施形態において、補強構造部品を組み立てる直前に、湿気硬化性接着剤、例えばSikaFlex(登録商標)又はSikaForce(登録商標)製品グループから選択される湿気硬化性接着剤を補強用支持材に塗布する。このとき、接着剤塗布ステップと組み立てステップとの間で、過度に長い遅滞は起こらない。
【0020】
本発明に係る機構(すなわちシステム)の例示的な実施形態は、上記で特定したプロセスの態様から容易に導き出すことができる。この限りにおいて、記載の繰り返しは避けることができると考えられる。そうではあるが、この機構の実施形態において、補強用支持材を保管するようになっている保管部又は補強用支持材をインラインで供給する射出成形機を備え、ロボットが保管部又は射出成形機の出口から補強用支持材を取り出すように構成されているとともに動作可能であることに留意されたい。
【0021】
更なる実用上重要な一実施形態において、接着剤吐出ユニットは固定ノズルを含む。この固定ノズルは、1回あたりに可変量の接着剤を放出するようになっていることが好ましいが、これはこの機構に必要な特徴ではない。
【0022】
本発明の利点のうちの1つは、本プロセスを実行するのに、1つのロボット及び1つの接着剤吐出ユニットしか必要でないことである。その結果として、更なる機械又はロボットのための更なる投入費用が累増せず、また修理費用及びダウンタイムが低減することが予期される。
【0023】
全プロセスの間、ロボットが補強用支持材を保持することの別の利点は、補強用支持材を他の機械にハンドオーバーする必要がないことである。特に、接着剤を補強用支持材に塗布する間、ロボットは、補強用支持材を接着剤吐出ユニットのところに移送する必要がない。そのため、ロボット及び接着剤吐出ユニットのプログラミングがより単純になる。
【0024】
さらに、補強用支持材又は基本構造部品のいずれにも(相当な)力、すなわち圧力を印加する必要がなく、そのため補強用支持材又は基本構造部品のいずれの変形も起こらないように、プレスするステップを実行することができる。したがって、ロボットは、高動力型である必要がなく、このことはこのようなロボットの投入費用を最終的に低減する。プレスするステップは、補強用支持材を基本構造部品内にセット又は挿入するものとして記載することもできる。ここで、補強用支持材と基本構造部品との間に、少なくとも1つの接着剤を拡げるか又は押し伸ばして、少なくとも1つの接着剤層を形成することが好ましい。
【0025】
またさらに、少なくとも1つの接着剤層が機械的に十分安定な結合部を形成するまでプレスするステップを行う場合、有益な作用がある。このような場合、処理時間が低減する。結合部は、接着剤が拡げられて層を形成し、この層と基本構造部品及び補強用支持材の双方との間に十分な接着をもたらすと、すぐに形成され得る。接着剤の凝集により、補強用支持材を取り上げることによって、補強用支持材に接着している基本構造部品を取り上げることが可能になる。このように、接着剤は、基本構造部品及び補強用支持材に粘着するように十分な接着力と、内部が中実であることを確実にするように十分な凝集力とを提供するように構成されていることが好ましい。プレスするステップでは、接着剤層が硬化していないか、又は少なくとも完全には硬化していない必要がある。機械的に十分安定な結合部は、少なくとも1つの所定のパラメーターに従って、本プロセスのプレスするステップにおいて確立される(例えば、ロボットが動作して補強用支持材を基本構造部品に押し込む)と想定されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る補強用支持材を示す正面図である。
図2】接着剤吐出ユニットによって接着剤ビードを補強用支持材に塗布するステップ中の、図1の補強用支持材を示す図である。
図3】補強用支持材を2つの作業ステーション間で移送するステップにおける、ロボットハンド上に保持されている図1の補強用支持材を示す図である。
図4A】補強構造部品を形成する基本構造部品及び補強用支持材の組み立てを示す側面図である。
図4B】補強構造部品を形成する基本構造部品及び補強用支持材の組み立てを示す側面図である。
図5】本発明に係る例示的な機構の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、補強用支持材1を示している。補強用支持材1は、プラスチック製の長い本体を有するとともにトラフ状であり、また、本体の凸面上に、互いにかつ本体の長縁に対して平行に延びる第1の接着剤ビード3a及び第2の接着剤ビード3bを有する。接着剤ビード3a,3bは、例えば、標準のホットメルト接着剤によって形成される。第1の接着剤ビード3aがその延在範囲にわたって一定の断面積を有する一方で、第2の接着剤ビード3bは、その延在範囲の約2/3のところで段状に変化する可変の断面積を有する。
【0028】
図2は、接着剤吐出ユニット5のノズル5aから接着剤3’を放出することにより、接着剤ビード3a,3bを補強用支持材1の表面に塗布する方法を示している。ここで、補強用支持材1は、産業ロボット(図3を参照)のロボットハンド7aによって支持される。接着剤吐出ユニット5のノズル5aは、固定され、接着剤放出制御信号に従って1回あたりの所定量の接着剤を放出し、一方で、補強用支持材1は、ロボット動作制御プログラムに従ってノズルの端部に沿って移動することが留意される。
【0029】
図3は、2つの作業ステーションの間で、例えば接着剤吐出作業ステーションから補強構造部品組み立てステーションに補強用支持材を移送する間に、接着剤ビード3a,3bが塗布された補強用支持材1を、自身のロボットハンド7aを用いて保持している産業ロボット7を斜視図で示している。産業ロボット7は、制御ソフトウェアに従って並進運動及び回転運動をもたらす標準型である。制御ソフトウェアは、補強用支持材及び補強用支持材に塗布される接着剤ビードの設計に適合され、また、基本構造部品及び本発明のプロセスを実行する機構を形成する上記いくつかの作業ステーションの空間的構成の設計に適合されている。作業ステーション及び対応するロボット制御プログラムの構成の実施は、当業者の技術内にあり、したがってより詳細な説明を要しない。
【0030】
図4A及び図4Bは、前述の図に示されているように、補強構造部品9が基本構造部品9’及び補強用支持材1から組み立てられる方法を示している。基本構造部品9’を組み立てブロック11の対応形状キャビティ11aに入れ、補強用支持材1(この図では別個に指し示されていない接着剤ビードが塗布されている)を、基本構造部品9’の凹面上方に位置決めし(図4A)、ロボットハンド7aの対応する並進運動によって基本構造部品9’の凹面に押し込む(図4B)。
【0031】
この運動は、接着剤ビードが基本構造部品9’の表面と接触して変形し、連続する接着剤層になり、基本構造部品9’を補強用支持材1と結合するように制御される。これによって達成される結合部は、機械的に十分安定であり、補強用支持材1の背面を把持しながらの、ロボットハンド7aを用いた補強構造部品9の更なるハンドリングを可能にする。
【0032】
実用的な一実施態様において、基本構造部品を正確に位置決めするように主に機能する組み立てブロックは省くことができ、基本構造部品を他の位置決定手段を用いて適所に維持することができる。
【0033】
図5は、上記で説明したタイプの補強構造部品を製造する例示的な機構100を概略的に示している。前述の図のうちの1つに示されている要素/装置の参照符号は、その図と同じである。
【0034】
機構100において、本プロセスに用いられる補強用支持材1の供給源として、射出成形機101及び並列して補強用支持材保管部103が示されている。ロボット7は、射出成形機101の出口及び保管部103の出口のいずれかから補強用支持材を取り出すことができる。すなわちロボット7は、各プロセスサイクルにおいて、これらの出口のうちの一方において1つの支持材本体を把持し、その支持材本体を接着剤吐出ユニット5のノズル5aの出口に移動させる。1つ又は複数の接着剤吐出ステップにおいて、補強用支持材1の表面をノズルの出口に沿って移動させるとともにノズルから接着剤を放出することにより、支持材本体上に、それぞれ必要な幾何形状を有する必要数の接着剤ビードが施される。
【0035】
次に、ロボット7は、完成した補強用支持材を接着剤吐出ユニットから組み立てブロック11に運ぶ。組み立てブロック11では、基本構造部品9’がキャビティ11aに待機している。基本構造部品9’は、構造部品保管部105に保管され、図では矢印107として象徴的に示されている適切な搬送手段によって組み立てブロック11に移送される。補強構造部品は、更に上記で説明したように、組み立てブロック11において組み立てられる。次に、再びロボット7を対応して動作させることによって硬化塗装オーブン109に移送され、接着剤を硬化させ、これにより補強構造部品の機械的完全性をもたらし、適切な場合は同時に補強構造部品に塗布された塗装を硬化させる。
【0036】
ロボット及び接着剤吐出ユニットの動作制御ユニット111は、ロボット7の取り出し動作、解放動作及び運動と、接着剤吐出ユニット5からの接着剤の放出とを制御するように機構に設けられる。動作制御ユニット111内に格納されている制御プログラムが、補強用支持材1のそれぞれの表面に対する所定の接着剤構成に適応する。また、このプログラムは、機構のいくつかのユニットの、互いに対する空間的構成を反映する。
【0037】
上記機構の一変更形態(図には示さず)として、組み立てられた補強構造部品をオーブン109に移送する前に、組み立てられた補強構造部品を保管する中間保管部を設けることができる。
【0038】
本明細書に記載のプロセス、システム、方法等に関して、このようなプロセスのステップ等は、或る特定の順序に従って行われるように記載されているが、このようなプロセスは、記載したステップを本明細書に記載の順序以外の順序で実行して行うことができることが理解されるべきである。ある特定のステップを複数同時に実行することができること、他のステップを加えることができること、又は本明細書に記載のある特定のステップを省くことができることが更に理解されるべきである。換言すれば、本明細書のプロセスの記載は、ある特定の実施形態を例示する目的で提供されており、決して、特許請求される本発明を限定するように解釈されるべきではない。
【0039】
したがって、上記記載は、限定ではなく例示を意図していることが理解される。上記記載を読めば、提供された例以外の多くの実施形態及び適用形態が明らかとなる。本発明の範囲は、上記記載を参照することで判断されるべきではなく、その代わりに、このような特許請求の範囲が享受する均等物の完全な範囲と一致する添付特許請求の範囲を参照することで判断されるべきである。本明細書で論じた技術において将来の発展形態が現れることと、開示されたシステム及び方法がそのような将来の実施形態に含まれることとが予想及び意図される。つまり、本発明は、変更及び変形することができることが理解されるべきである。
【0040】
特許請求の範囲において用いられている全ての用語は、本明細書でそれに反することが明示されていない限り、その妥当な最も広い解釈及び本明細書に記載の技術の当業者が通常理解する意味が与えられることが意図されている。特に、数量を特定しない表現の使用は、それに反する明確な限定が請求項に記載されていない限り、指示されている要素の1つ又は複数を記載しているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0041】
1 補強用支持材
3a,3b 接着剤ビード
3’ 接着剤
5 接着剤吐出ユニット
5a ノズル
7 ロボット
7a ロボットハンド
9 補強構造部品
9’ 基本構造部品
11 組立てブロック
11a キャビティ
100 機構
101 射出成形機
103 補強用支持材保管部
105 構造部品保管部
107 搬送手段
109 硬化塗装オーブン
111 ロボット及び吐出ユニットの動作制御ユニット
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5