特許第6364029号(P6364029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許63640291,1,2,3−テトラクロロプロペンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6364029
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】1,1,2,3−テトラクロロプロペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20180712BHJP
   C07C 21/04 20060101ALI20180712BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180712BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-558905(P2015-558905)
(86)(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公表番号】特表2016-511249(P2016-511249A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】US2014016873
(87)【国際公開番号】WO2014130445
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月20日
(31)【優先権主張番号】61/766,405
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/181,769
(32)【優先日】2014年2月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン,テリス
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−036429(JP,A)
【文献】 特開昭50−004006(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/022806(WO,A1)
【文献】 特表2011−507877(JP,A)
【文献】 特公昭39−024784(JP,B1)
【文献】 特公昭34−007416(JP,B1)
【文献】 国際公開第2011/065574(WO,A1)
【文献】 特表2010−534679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
C07C 21/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応基質として1,1,3−トリクロロプロペンおよび/または3,3,3−トリクロロプロペンおよびClガスと、1種以上のハロゲン化鉄化合物を含む脱塩酸触媒とを用いて、連続的に撹拌されるタンク反応器当該タンク反応器に接続された反応塔、および当該反応塔に接続された全縮器を備える装置で製造を行う、HCC−1230xaの製造方法。
【請求項2】
前記触媒がFeClを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応塔が(a)Cl供給ゾーン、(b)反応ゾーン、(c)有機物共給ゾーン、(d)クリーンアップゾーンを含む、4つのゾーンに分割される、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
優先権の主張
本願は2014年2月17日に出願された米国特許出願14/181,769の優先権を主張する。当該出題のすべてが参照により本明細書に包含される。
本願は2013年2月19日に出願された米国仮出願61/766,405の優先権を主張する。当該出題のすべてが参照により本明細書に包含される。
【背景技術】
【0002】
米国特許8,058,486に記載のとおり、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230xa)は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の重要な前駆体である。HFO−1234yfは低GWPの化合物であり、ほんの一例ではあるが、冷媒、消火剤、熱媒、噴射剤、起泡剤、発泡剤、ガス状の誘電剤、滅菌剤の担体、重合媒体、粒子除去流体、担体流体、研磨剤、置換乾燥剤、動力サイクル用流体として使用可能である。
【0003】
通常、HCC−1230xaは、1,1,3−トリクロロプロペン(HCC−1240zaまたは1240za)および/または3,3,3−トリクロロプロペン(HCC−1240zfまたは1240zf)を原料として、二段階で製造される。第一段階では、1240zaおよび/または1240zfを、ある反応条件下においてClによって反応器内で塩素化して、中間体である1,1,1,2,3−ペンタクロロプロペン(HCC−240dbまたは240db)を得る。
【0004】
CCl2=CH-CH2Cl (1240za) + Cl2 → CCl3-CHCl-CH2Cl (240db)
CH2=CH-CCl3(1240zf) + Cl2 → CCl3-CHCl-CH2Cl (240db)
【0005】
次いで、240dbを別の反応器に入れ、触媒(例えばFeCl)を用いて脱塩酸することによりHCC−1230xaおよびHClを生成する。
CCl3-CHCl-CH-Cl (240db) → CCl2=CCl-CH2Cl (1230xa) + HCl
【発明の概要】
【0006】
本発明は、当該2つの反応器を単一反応器に集約し、これによってコストを抑え、工程を簡略化し、かつ反応時間および収率を向上させる、従来の2つの反応器を使用する方法を改良した製造方法を提供する。
【0007】
ここで開示される製造方法は、HCC−1230xaを製造するための2つの反応器を単一反応器に集約し、二工程を一工程に低減する。本発明は、2つの反応器を使用する製造方法を1つの反応器に集約することで、工程を簡略化し操作および維持の両方のコストを低減する。
【0008】
本発明の一態様は、反応基質としてHCC−1240zaおよび/またはHCC−1240zfおよびClガスと、ハロゲン化鉄触媒またはその均等物等の脱塩酸触媒とを用いて単一反応器で製造を行うHCC−1230xaの製造方法である。
【0009】
本発明のある態様は、全縮器を備えた連続的に撹拌されるタンク反応器(continuous stirred-tank reactor:CSTR)とこれに組合わされた反応塔を備える単一反応器システムを用いて行う製造方法である。
【0010】
本発明のある態様において、反応塔を、(a)Cl供給ゾーン、(b)反応ゾーン、(c)有機物共有ゾーン、(d)クリーンアップゾーンを含む、4つのゾーンに分けることができる。ある態様において、1240zaおよび/または1240zfを含む原料を、有機物共有ゾーンを介して反応塔に供給できる。ある態様において、Cl供給ゾーンを介してClガスを反応塔に供給できる。ある態様において、反応塔に用いられる材料は塩素耐性の材料を含む。ある態様において、反応塔は空洞である。ある態様において、反応塔には塩素耐性材料が充填されてもよく、あるいは気体/液体の接触を促進するトレー/プレートもしくは撹拌手段が備えられてもよい。
【0011】
本発明の関連する分野における当業者は、開示された本発明の特別な側面および/または態様に関する任意の特徴を、本発明の他の側面および/または態様に関する1以上の任意の他の特徴と組合せることができ、これらの組合せおよび親和性を高めるために適宜改良を加えることを理解できる。このような組み合わせも個々に開示される本発明の一部である。
【0012】
前述した概要および後述する詳細な記載は一例および説明にすぎず、特許請求の範囲に記載された本発明を限定しないと理解されるべきである。明細書およびここに開示された本発明の実施から他の態様も当業者は理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のHCC−1230xaの製造方法に有用な単一反応器を用いた方法の一態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
図1に示すとおり、本発明の製造方法は、CSTR(全縮器を備えている)および蒸留塔を含む装置であって、CSTRが全縮器を備える反応塔に接続されている装置を用いて実施される。図1に示すとおり、反応塔を(a)Cl供給ゾーン、(b)反応ゾーン、(c)有機物供給ゾーン、(d)クリーンアップゾーンを含む、4つのゾーンに分けることができる。
【0015】
製造中、原料(1240zaおよび/または1240zf)を反応塔の有機物供給ゾーンに供給して液体分配機によって下方へ流し、一方で、過剰量のClガスを反応塔のCl供給ゾーンに供給してガス分配機により上方へ流す。下方へ流れている1240za/1240zfは逆の流れにあるClガスと反応ゾーンで反応し、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロペン(HCC−240db)を生成する。未反応のClはさらに上方へ移動し、気相および/または液相にある1240za/1240zfと、クリーンアップゾーンで反応する。1240za/1240zfおよび240dbを含む有機ガスを伴う過剰のClガスは全縮器を通過し、そこで1240za/1240zfおよび240dbは凝縮して反応塔の頂部へ還流される。過剰のClガスは下流のスクラバーで補足される。
【0016】
反応塔にて生成されたHCC−240dbはCSTRの下方へ移動し、脱塩酸触媒(例えばFeCl)によって、制御された反応温度、時間、およびFeCl/240db比において脱塩酸されてHCC−1230xaを生成する。HClおよびCSTRで精製されたHCC240dbとHCC−1230xaを主として含有する有機気体は全縮器を通過し、ここで有機気体は凝縮され反応器に戻され、HClは副生成物として補足されるかもしくは下流のスクラバーにおいて中和される。
【0017】
HCC−1230xa粗生成物は、濾過によりFeClが除去されCSTRの底部から連続的に排出され、蒸留塔へ供給される。ここで未反応中間体HCC−240dbおよび他の高沸点化合物が高沸点物として分離され、塔頂からHCC−1230xaが目的物として回収される。
【実施例】
【0018】
[実施例1]
ジャケットを備えた1インチの内径および28インチの長さのモネルパイプ(すなわち反応塔またはパイプ反応器)を1000mLの丸底フラスコにRCV弁を介して接続した。当該パイプ反応器は、ジャケット側面を介して反応温度を制御するために蒸気での加熱または冷水での冷却のいずれかができる。パイプ反応器は20インチ長に成形されたPFA充填剤で満たされており、水冷式の全縮器を備えている。有機物をパイプ反応器に供給するために、有機物供給ライン(パイプ反応器の底から16インチ上の位置に設置)が1240za供給容器に接続されている。最大液体レベルがパイプ反応器内の18インチの位置を保つように、有機物供給口から2インチ上方にて、液体シールループを備えた有機物回収ラインが2000mLのガラス製受容器に接続されている。1000mLの丸底ガラスフラスコには撹拌機(すなわちCSTR)および水冷式の全縮器が備えられ、当該フラスコはオイルバスで加熱される。
【0019】
起動時において、パイプ反応器を約240gの1240za(>99.5重量%)で満たした後、パイプ反応器を80℃まで30#蒸気で加熱した。パイプ反応器の底部に設置されたClディスペンサーを介してパイプ反応器にClを供給した。パイプ反応器の温度が上昇し始めたら、パイプ反応器の温度を80±5℃に制御するためにパイプ反応器のジャケットへの蒸気の供給を、冷却水に変えた。質量流量計を用いて、全部で139gのCl(1240zaの約120モル%)がパイプ反応器に約4時間で供給されるようにCl供給速度を制御した。このようにして、1240zaおよびClの連続的な供給が、それぞれ約60g/hかつ約12std.L/hの速度で行われた。同時に、パイプ反応器の液体レベルが安定するように(有機物供給口と回収口との間に挿入されたサイドチューブにて表示される)移送速度を調整しながら、パイプ反応器中に生成した240dbをRCV弁を介してCSTRに移送した。
【0020】
4時間後、パイプ反応器への供給およびパイプ反応器からCSTRへの240dbの移送を終了し、CSTRを撹拌しかつ120℃に加熱した。CSTRの温度が120℃に達した後、3.5gの無水FeClを、CSTRへ4時間で添加できるFeCl充填口を介してCSTRへ加えた。4時間後、CRSTに十分に添加処理がなされ、1240zaとClのパイプ反応器への供給ならびに240dbのパイプ反応器からCSTRへの前記速度における移送を再開始することによって、継続操作を再開した。1230xa粗生成物はCSTRから約74g/hの速度で連続的に排出され、さらなる精製のために濾過された。FeClの濃度を1.0〜1.2重量%の濃度に保つために、1.7〜2.2gの無水FeClを2時間ごとにCSTRに添加した。
【0021】
[実施例2]
本実施例では実施例1と同じ装置を使用した。起動時において、パイプ反応器を約280gの240db(>99重量%)で満たし、CSTRを350gの240db(>99重量%)で満たした。CSTRを撹拌して120に加熱した。CSTRの温度が120℃に達した後、3.5gの無水FeClを、CSTRへ4時間で添加できるFeCl充填口を介してCSTRへ加えた。4時間が経過する20分前に、パイプ反応器を80℃まで30#蒸気で加熱して、次の操作に備えた。4時間後、CRSTに十分に添加処理がなされ、約60g/hおよび約12std.L/hの速度での1240zaおよびClのそれぞれのパイプ反応器への供給、パイプ反応器の液体レベルを安定に維持しながらの240dbのパイプ反応器からCRSTへの移送、および約74g/hでの1230xa粗生成物のCSTRからの排出を開始することによって、継続操作を開始した。
【0022】
操作中、パイプ反応器の温度を80±5℃に制御し、CSTRの温度を120±2℃に制御した。CSTRからの1230xa粗生成物を精製のためにろ過した。FeClの濃度を1.0〜1.2重量%の濃度に保つために、1.7〜2.2gの無水FeClを2時間ごとにCSTRに添加した。
【0023】
ここに開示する例では、パイプ反応器からCSTRへ移送される液体は、通常、次の成分を含んでいた。1240za:0〜0.5重量%、1230xa:1.0〜2.0重量%、240db:96.5〜98.5重量%、230da/230ab:0.2〜0.5重量%、およびその余の不純物。
CSTRからの1230xa粗生成物流は次の成分を含んでいた。1230xa:97.5〜98.5重量%、240db:0.5〜1.0重量%、230da/230ab:0.2〜0.5重量%、1230xa二量体:0.1〜0.5重量%、およびその余の不純物。
【0024】
特に断りのない限り、「1つの」および「前記」は複数を含む。さらに量、濃度、または他の値、あるいはパラメータは、範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値で与えられ、これは範囲が記載されているかどうかにかかわらず、任意もしくは好ましい上限値および任意もしくは好ましい下限値で形成されるすべての範囲を具体的に開示していると解されるべきである。特に断りのない限り、個々に記載されている範囲はその端値およびすべての整数と小数を含むことを意図する。本発明は具体的な数値に限定されることを意図しない。
【0025】
前述の記載は本発明の一例を示すにすぎないことが理解されるべきである。本発明から逸脱しない範囲で当業者による種々の変更、修飾が可能である。したがって、本発明は、後述するクレームの範囲内においてそのようなすべての変更、修飾、変化を包含する。
以下に実施態様を記載する。
態様1
反応基質として1,1,3−トリクロロプロペンおよび/または3,3,3−トリクロロプロペンおよびClガスと、脱塩酸触媒とを用いて単一反応器で製造を行う、HCC−1230xaの製造方法。
態様2
前記脱塩酸触媒が1種以上のハロゲン化鉄化合物である、態様1に記載の製造方法。
態様3
前記ハロゲン化鉄化合物が1種以上の塩化物を含む、態様2に記載の製造方法。
態様4
前記触媒がFeClを含む、態様3に記載の製造方法。
態様5
前記単一反応器がCSRT、反応塔、および全縮器を備える態様1に記載の製造方法。
態様6
前記反応塔が(a)Cl供給ゾーン、(b)反応ゾーン、(c)有機物共給ゾーン、(d)クリーンアップゾーンを含む、4つのゾーンに分割される、態様5に記載の製造方法。
態様7
1,1,3−トリクロロプロペンを、前記有機物供給ゾーンを介して前記反応塔に供給する、態様6に記載の製造方法。
態様8
Clガスを、Cl供給ゾーンを介して前記反応塔に供給する、態様6に記載の製造方法。
態様9
前記反応塔内部が空洞である、態様6に記載の製造方法。
態様10
前記反応塔に塩素耐性材料が充填されている、あるいは前記反応塔が気体/液体の接触を促進するトレー/プレートもしくは撹拌手段を備える、態様6に記載の製造方法。
図1