【文献】
ECKHARDT, Hanns-Simon H. et al.,Fiber-optic detection device for GC-UV,Proceeding of SPIE,米国,2007年,Vol.6433 ,pp.64330D-1−64330D-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、液体およびガスを調査するのに特に適したVUV吸収システムを提示する。一実施形態において、システムは、ガスクロマトグラフィ(GC)システムと併用して使用される非破壊的検出器として構成される。他の実施形態において、システムは、液体の研究のための液体クロマトグラフィ(LC)システムと併用して使用される検出器として構成される。さらに他の実施形態において、システムは、ガス形態にするのが困難である種(species)の研究を可能にするために、LCシステムおよびエレクトロスプレーインタフェースの両方と関連して使用するように構成される。
【0010】
ガスクロマトグラフィ(GC)において、サンプルが気化され、不活性キャリアガス(移動相と称される)とともにカラム(column)と称されるチューブの中に輸送される。カラムは、サンプルの種々の成分と相互作用する固定相を含む。固定相とのサンプル成分の相互作用は、これらをカラムの端部から異なる時間で流出させ、その結果、サンプルがその構成成分に「分離」される。流出された成分は、検出器を用いて検出される。
【0011】
多くの異なるタイプの既存のGC検出器が存在する。2つの最も一般的なものは、炎イオン化型検出器(FID)と熱伝導度型検出器(TCD)である。両方ともかなりの範囲の成分に対して感度があり、両方とも広範囲の濃度に渡って良好に作動する。多くの用途で広範囲に採用されているが、これらの検出器の両方とも選択度(selectivity)に関して残念ながら不足していることが判っている。残りのGC検出器の多くは、逆の性質セットを示し、即ち、これらは選択度はあるが、特定範囲の成分に対して感度があるだけである。現在、この一般論に対する唯一の例外が、質量分析計(MS)検出器である。質量分析計は、広範囲の成分に対して感度を有し、同時に高い選択度を提供する。残念ながら、MS検出器は、動作させるのに相当な専門知識を必要とする高価かつ複雑な機器である。それ自体、広範囲の成分に対するその応答時の際に、動作が容易であり、ほぼ普遍性のある、高感度で選択度がよいGC検出器の開発に多大な利益があることになろう。
【0012】
現行システムの一実施形態の概略的な説明を
図1に示す。図で明らかなように、システム100の主要な要素は、光源モジュール102と、フローセル104と、検出器モジュール106とを含む。動作の際、VUV光源110からの光が、コンピュータ制御のシャッタ機構112によって阻止または通過するのが許容され、第1VUV光学系114によって平行化(コリメート)され、そしてフローセルを通過するように方向付けられる。シャッタアクチュエータは、典型的には光源モジュールの外部に設置され、機器の光学経路内の汚染(contamination)源を最小化するために、真空フィードスルー(feed-through)を介して接続される。
【0013】
図1に明示していないが、光源モジュールは、フローセルを通過する光子束を増加させるために、ビーム直径を縮小(フローチャネルのものと比べて)する適切なビーム減少VUV光学系が装備できることに留意する。さらに、光源モジュールは、光源の出力を時間の関数として監視するために使用できる光検出器が装備できる。こうした光検出器は、光学系の下流での汚染によって生ずるものから、光源出力の変化を区別するのに有用であることが判明している。
【0014】
好ましくは、光源は、広帯域スペクトル出力を発生し、一方、特定の用途では、強力な線光源(line source)も望ましい。特に適合した光源が、VUV透明窓が装備された重水素ランプである。こうした窓は、典型的には、多数のフッ化物化合物(即ち、フッ化マグネシウムMgF
2,フッ化リチウムLiFなど)のうちの1つで構成される。光源は、典型的には、光源モジュールに気密封止が付与できるようにして搭載される。
【0015】
システムの一実施形態において、第1VUV光学系は、VUV反射率を増強するためにアルミニウム/MgF
2コーティングを用いて仕上げた、レプリカ式の軸外トロイダルミラーである。光学系の表面粗さは、散乱損失を最小化するために良好に管理できる。特定の場合、レンズがミラーの代わりに使用できるが、こうしたオプションは吸収損失および色収差をもたらすことがある。
【0016】
光源モジュールを出射した平行化光ビーム116は、他のVUV透明窓118を通過して、フローセルに入射する。窓は、漏れ気密シールが光源モジュールの環境とフローセルとを分離するように搭載される。光源モジュール内の環境は、吸収種(即ち、酸素、水など)の濃度が、VUV光子束をあまり吸収しないように充分に低くなるように、図で描いたガス接続部120を介して維持される。これは、真空及び/又はパージ手法(窒素、ヘリウム、水素など、大部分が非吸収性ガスを用いて)を用いて達成できる。図に示していないが、これらの接続部は、管理された環境を維持するのに必要なものとして、バルブ、レギュレータ、コントローラなどを組み込んでもよいことが理解される。さらに、極めて低い濃度の特定種を、管理された環境の中に導入して、光学表面のクリーニングを促進し、及び/又は、その上での汚染の構築を防止することが望ましい。
【0017】
光源モジュールおよびフローセルは、熱絶縁カプリング122を介して接続される。こうしたカプリングは、典型的には、低い熱伝導率を示すセラミックで構成され、システム残部の温度に著しく影響を与えることなく、フローセルの加熱を許容している。しかしながら、多くのセラミックでの不具合は、脆くて割れやすいことである。代替の手法が、薄い壁付きステンレス鋼の配管を用いて、熱スタンドオフ(standoff)を構築することである。ステンレス鋼の熱伝導率は多くのセラミックよりかなり高いが、薄い壁付き配管の断面積は極めて小さくでき、こうして堅固な機械的性質を維持しつつ、伝導率を許容レベルに限定している。熱絶縁カプリングは、典型的には、金属及び/又は特殊化した高温で低いガス放出のシールを用いて、フローセルおよび光源モジュールに対して封止され、光学性能を劣化させる汚染物の放出を最小化している。
【0018】
ガスクロマトグラフィ130の簡略化した概略図を
図1に示している。サンプルが気化され、インジェクタポート132でキャリアガス流に導入される。キャリアガスおよびサンプルがカラム133に入る。サンプルがカラムと相互作用しながら、オーブンは、上昇する温度を維持する。キャリアガスおよび分離したサンプル成分(検体)は、GCを出て、入口ポート135を介してVUV吸収検出器のフローセル104に入る前に、メイクアップ(make-up)ガスフロー134と組み合わさる。カラム、メイクアップガスフローおよびフローセルは、上昇した温度に維持され、流出した種の凝縮を防止する。フローセルに入ったガスは、セルの長さを進行し、セルの他端で出口ポート140を介して消費されずに出る。入口ポートおよび出口ポートの両方は、標準のGC装着具(fitting)が装備され、「死容積(dead-volume)」を最小化している。
【0019】
フローセルに入る平行化光ビームは、フローチャネルに沿って進行するガス流を通過する。流出した成分は、光ビームから光を吸収し、減少した透過率および検出可能な信号をもたらす。検出した信号(本質的にはフローセルを通る通過率)は、時間の関数として記録され、光ビームに存在する検体の識別性および密度に依存している。偶然にも、GC作業に採用される典型的なキャリアガス(即ち、水素、ヘリウム、窒素)は、VUVで光を著しく吸収せず、検出システムにとって本質的に不可視のままである。
【0020】
フローセルを通過した光ビームは、セルの端部で他のVUV透明窓142を通過し、第2VUV光学系150によって分光計の入射アパーチャ152に集光される。アパーチャ通過した光は、グレーティング154によって回収、回折され、そして検出器156に集光され、そこでコンピュータ158によって記録される。
【0021】
一実施形態において、回収された光を同時に集光し回折するために、収差補正型フラットフィールド回折グレーティングが採用され、これにより必要な光学素子の数を低減し、光学効率を改善している。同様に、広いダイナミックレンジ、高感度の裏面入射型CCDイメージセンサの使用は、特に有利であることが判る。典型的には、検出器電子機器160は、検出器モジュールチャンバの外側に収納され、機器内側の汚染源を最小化するために、電気フィードスルーを介して接続される。
【0022】
光源モジュールと同様に、検出器モジュール内の環境は、VUV吸収種の濃度を最小化するように、ガス接続部162を介して制御される。同様に、フローセルの出口端部は、熱絶縁カプリング164および適切な漏れ気密シールを用いて検出器モジュールと接続される。明示していないが、全体システム(即ち、光源、シャッタ、ガス接続部、検出器など)は、コンピュータ上で動作するソフトウエアプログラム及び/又は埋め込みコントローラによって制御できる。
【0023】
フローセル104の拡大図を
図2に示す。セルの両端にある熱絶縁カプリング122,164(この場合、セラミック)は、VUV窓118,142および対応するシール204と同様に、容易に見えている。カラムガス133およびメイクアップガス134をフローセルの入口部と接続するGC装着具202は、先行技術で知られているように、図において明らかである。GCからのカラム端部は、フローチャネルの外直径まで下方に延びているように見える。
【0024】
フローセルは、加熱時にある程度膨張することが予想されるため、システムは、システムの光学アライメントに悪影響を与えることなく、あるいは不要な機械的変形を導入することなく、前記膨張に順応するように設計する必要がある。
図1に明示していないが、これを達成する1つの手段が、検出器モジュールをベースプレートに堅固に搭載し、同時に光源モジュールを、同じベースプレートに搭載された光学レールに搭載することである(代替として、光源モジュールを堅固に搭載し、検出器モジュールを光学レールに搭載してもよく、あるいは両方のモジュールを光学レールに搭載してもよい)。こうしてモジュール間の相対運動が、フローセルの光学経路と同一直線上に延びる単一軸に制限できる。そのように加熱によって誘起されたフローセルの長さの増加が、光源モジュールをレールの長さに沿って進行させ、そのため光学アライメントに影響を与えることなく、あるいは機械的変形を導入することがない。逆に、加熱が中断してフローセルが冷えた場合、フローセルは短くなり、光源モジュールを光学レールに沿って再び移動させる。
【0025】
フローセルの幾何形状は、システムによって検出される信号において重要な役割を果たす。明示的には、単一タイプの検体がセル内にある場合、光の強度は、下記の式(1)によって与えられる。
【0027】
ここで、I
o(λ)は、セル内に検体が無い場合の光の強度、σは、検体の吸収断面積(分子当り)、Lはセル長、Nはセル内の検体分子の数、Vはセル体積である。
【0028】
所定の検体からの最高の可能な吸収応答を記録できるために、検体分子の全てが、これらの集団的吸光度を測定するのに充分に長いフローセル内に含まれることを確保することが望ましい。この条件を維持するとともに、セルの断面積を可能な限り減少させて、検体分子の密度を増加させることがさらに望ましい。製造的、光学的、分析的な配慮が、これが可能になる程度に実際の制限を課す。
【0029】
より大型のフローセル体積を採用した場合、ピーク分離に役立つ入口装着具を介して、メイクアップガスをカラム流出物と組み合わせてもよく、これによってカラムの時間分解能を維持する。メイクアップガスフローは、コンピュータ制御され、システム性能を増強するためにリアルタイムで調整可能なように構成される。VUV光を著しく吸収しない任意のガス(即ち、窒素、ヘリウム、水素など)が、メイクアップガスとして使用できる。そのため、測定可能になる前に、検体分子がセルから勢いよく出てくるほど流量がそれほど高くないことを条件として、メイクアップガスの追加は検出器感度に悪影響を与えないことになる。これは、メイクアップガス流量の変化が検出器感度に直接に影響する他のGC検出器(即ち、FID、TCDなど)では、そうではない。時には、低濃度の特定種をメイクアップガスに導入して、光学表面のクリーニングを促進し、及び/又はその上での露出した加工物の構築を防止することが望ましいであろう。
【0030】
図2に示していないが、フローセルおよび、GCと検出器との間にあるGCカラムの一部の両方には、加熱手段が装備される。典型的には、これらは、良好に絶縁され、GCオーブンの温度より約20℃高く維持される。露出したカラムおよびフローセルの両方の温度は、コンピュータ制御される。反応種を研究する場合、不活性コーティングがフローチャネルの内側に付与できる。代替として、フローセル自体の大部分を、不活性材料で構成してもよい。
【0031】
動作の際、カラムを出たガス流は、フローチャネル210を下方に進行し、出口ポート140を介してフローセルを出る。出口は、大気に通気したり、または真空と接続することができる。出てくるガス流は、他の検出器にも導入できる。図に簡単に示しているが、フローセルおよび関連したGC装着具の幾何形状は、層流(laminar flow)を促進し、「死容積」を低減または除去するように特に設計された特定の構造部を含んでもよい。
【0032】
図3は、開示したシステムの他の実施形態を表す。この構成において、フローセル104は、光源モジュール102と検出器モジュール106との間で専用チャンバ302の中に位置決めされる。本実施形態では、フローセルは、熱絶縁カプリングを介して光源モジュールおよび検出器モジュールに堅固に取り付けられておらず、代わりに第2セットのVUV窓306が装備されることに留意する。図では明示していないが、フローセルは、代わりに、上述したようなベースプレートおよび光学レールアセンブリに取り付けられた熱絶縁スタンドオフを介して支持される。これらのスタンドオフは、シーリングに関与していないため、
図1に示すカプリングよりもかなり少ないエネルギーを伝導する。この配置は、システム残部を加熱するリスクなしで、フローセルをより高い温度に加熱するのを促進する。
【0033】
フローセルチャンバ内の環境は、光源モジュール窓および検出器モジュール窓とフローセルの窓との間の隙間を横切ってVUV光子の透過を許容するように維持される。この体積内部の環境を制御する能力(例えば、スルーポート308)は、光源モジュールおよび検出器モジュールとは独立して、動作中に上昇する温度に起因して生ずることがある汚染物の濃度増加の点で有用であることが判る。
【0034】
システムのさらに他の実施形態を
図4に示す。
図1と
図3の平行化ビームシステムとは異なり、
図4のシステムは、集光光学系およびより小さい断面積を持つフローセルを採用している。より小さい断面積は、検体分子の密度を増加させる(吸収信号を増加させる)が、結果として、平行化ビームを用いて達成できる光子束も制限する。その結果、フローセルチャンバ404は、VUV光学系をフローセルに追加して収納する。第1光学系406は、光源モジュール102からの平行化ビームを受けて、フローセルの入射窓408に集光する。フローセルに入る光線の少なくとも幾つかが、内側壁から反射すると予想されるため、壁が前記光線を効率的に反射するのを確保するように用心すべきである。必要な反射性能は、集光光学系のF値およびセル幾何形状に大きく依存する。これらの変数の選択に依存して、コート(内部及び/又は外部)付き及び/又はコート無しのセルが採用できる。
【0035】
フローセルの本体は、種々の材料で構成できるが、化学的に不活性なガラス、例えば、溶融石英が好ましい。セルの入射窓および出射窓は、専用シール(上述のような)、溶融、または適切な低ガス放出のセメント及び/又はエポキシ樹脂を用いて装着できる。同様に、ガス入口および出口ポートは、セルの構築の際、完全にまたは部分的に形成してもよく、あるいはその後に追加してもよい。
【0036】
セルを通過した光は、第2VUV窓410を通って出射し、コリメート光学系412によって平行化され、これは、上述のように、検出器モジュール内の集光光学系150に光を方向付ける。光学系の他の組合せが、光をシステムに方向付けるために確かに使用できるが、色収差を回避するのが可能である限り、集光ビームを複屈折窓に通過させる配置が回避される。
【0037】
図1と
図3の実施形態と同様に、
図4の実施形態はまた、フローセル加熱を促進するように構成され、結果として生ずる熱膨張に順応するように構成される。
【0038】
図1、
図3または
図4の実施形態がクロマトグラムを得るために使用できる前に、最初に「暗(dark)」スペクトルおよび「基準(reference)」スペクトルの両方を記録することが望ましい。「暗」スペクトルは、光が無いときに得られる信号に対応する。それは、光源モジュール内のシャッタを閉じて、検出器によって見えるバックグランドレベルを記録することによって簡単に収集される。いったん測定すると、この「暗」スペクトルは、透過率及び/又は吸光度を決定する前に、他の全てのスペクトル(基準スペクトルおよびサンプルスペクトルの両方)から引き算される。
【0039】
「基準」スペクトルは、シャッタを閉じて、「光」スペクトルを得るサンプルの注入の前に(即ち、キャリアガスフローのみが存在する)、セルを通る強度を記録することによって同様に得られる。「光」スペクトルから「暗」スペクトルの引き算は、セル内に検体が無いときの光の強度、式(1)に示したI
o(λ)を表す「基準」スペクトルを出力する。
【0040】
「暗」スペクトルおよび「基準」スペクトルの両方は、いったんサンプル注入の前に得られるため、これらは、典型的にはある程度時間平均され、データの信号対ノイズ比を改善する。検出器が温度制御されている場合、それは「暗」スペクトルのようになり、あまり変化しない。もしそうでなければ、周囲温度の変化を経験した場合、「暗」スペクトルを更新する必要があるであろう。一方、「基準」スペクトルは、これに限定されないが、周囲温度および圧力の変化、システムモジュールの環境の変化、光学システムの変化、光源出力の変化などの多くの要因によって影響され得る。これらの変動は、新たな「基準」スペクトルの収集によって、または実験的修正を通じて説明できる。
【0041】
入手した「暗」スペクトルおよび「基準」スペクトルの両方を用いて、注入サンプルを通る透過率が下記の式(2)のように容易に計算できる。
【0043】
同様に、吸光度は、下記の式(3)のように表現できる。
【0045】
長さL、体積Vのサンプルセル内の単一の検体では、式(2)の透過率は、下記の式(4)のように表現できる。
【0047】
ここで、Nは、セル内に存在する検体分子の数であり、σ(λ)は、分子当りの波長依存吸収断面積であり、通常、吸収断面積と称され、面積の単位で表される。波長に依存するのに加えて、吸収断面積は、異なる検体では異なっている。波長依存吸収断面積は、光学分光を用いた場合、選択性を可能にする「指紋(fingerprint)」である。
【0048】
代替として、セル内の検体による吸収は、式(3)の吸光度によって特徴付けられ、下記の式(5)のように表される。
【0050】
既知の断面積の単一成分がサンプルセル内にある場合、式(5)を直接反転して、セル内の検体分子の数を得ることができる。
【0052】
原理的には、Nを決定するためには、1つの波長値での吸光度および断面積だけが必要であるが、実際には、回帰手法により複数の波長からのデータが使用可能であり、Nの決定での不確実性を低減する利点がある。代替として、式(6)での反転は、それぞれ測定した波長値について行うことができ、得られたNは、整合性のために検証される。異なる波長でのデータを用いて得られた異なるNは、測定データでの誤差、あるいは、推定した断面積の波長依存性に誤差があることを暗示している。
【0053】
典型的には、検体のモル質量Mが既知であり、これは、下記の式(7)により、サンプルセル内の検体の質量を計算するために使用できる。
【0055】
ここで、N
Aは、アボガドロ定数である。従って、検体断面積およびセル幾何形状の知識を用いて、クロマトグラムを、分子の数またはセル内の質量に時間の関数として変換できる。セル幾何形状は、セル内の検体の数密度または質量密度を表すために、引き合いに出される。濃度が、注入された溶媒体積を知ることによって計算できる(例えば、溶媒のミリリットル当りのマイクログラム)。
【0056】
所定の時間でサンプルセル内に複数の検体成分を含んでいる場合には、吸光度は下記の式(8)によって与えられる。
【0058】
ここで、nは、セル内の検体成分の合計数、σ
i(λ)は、成分検体iの吸収断面積、N
iは、成分iの分子の数である。このような状況は、多くの成分からなる溶液が、サンプルセルの中に直接注入される場合、あるいは、GC分析の際、複数の成分がVUV分光器に同時に到達する(即ち、成分が共溶出(coelute)する)場合に起こり得る。
【0059】
式(8)を未知のN
iについて解くことは、少なくともn個の波長値での吸光度測定を必要とする。この場合、式(8)は、n個の一次方程式の系であり、先行技術の既知の手法を用いて解くことができる。実際、式(8)は、未知の量N
iより多いデータポイントが存在するため、過剰規定である。こうした式は、未知数の数と等しい独立方程式の数に減少できる。代替として、回帰フッティング手法が使用できる。回帰手法も、測定データそして、推定した断面積における不確実性を許容する点で好都合である。式(8)の結果は、N
iについて最善にフッティングした値の組、そして、決定係数(GOF: Goodness Of Fit)としばしば称される信頼度計量である。こうした回帰手法の1つが、文献(Press, et al. (W.H. Press, S.A. Teukolsky, W.T. Vetterling, and B.P. Flannery. Numerical Recipes in C: The Art of Scientific Computing, Second Edition. Cambridge University Press, 1992))に記載されているレーベンバーグ・マルカート(Levenberg-Marquardt)法である。
【0060】
こうして波長依存の吸収断面積が既知である検体成分の組が与えられると、波長依存の吸光度スペクトルの測定が、測定スペクトルに最も一致するN
iの組を決定するために使用でき、即ち、各検体成分の未知の量が決定できる。
【0061】
断面積値が未知である場合、それぞれ測定したデータポイントについて未知の断面積、そして1つの追加の未知数Nが存在するため、式(5)は、未知数の全てについて解くことができない。より一般には、種々の検体の量を測定する場合、式(5)(6)(8)への入力として使用できる種々の「未知」の物質について、断面積値のデータベースを保存することが望まれる。さらに、波長依存の断面積は、本質的に検体の識別性であるため、特定の検体の存在についての吸光度データの組(例えば、VUV分光クロマトグラムから)を探査できることが好都合である。従って、断面積スペクトルが既に未知である場合、断面積スペクトルを決定するための方法が望まれる。
【0062】
第1手順において、吸光度は、既知の量の検体について測定される。この手順を達成するのに便利な方法が、既知の量のサンプルを溶媒と組み合わせて、この混合物をGC注入ポートの中に注入し、VUV検出器を用いて溶出液を測定することである。GC分離が、検体成分が単独で測定されることを確保する。そして、断面積は、下記の式(9)のように、吸光度データが存在する波長ごとに決定できる。
【0064】
この手順は、与えられた検体について1回だけ実施する必要がある。未知の量の検体は、検体が、単独または、断面積が既知である他の検体成分と共に測定されるにも関わらず、既知である断面積を利用することによって、上述した方法を用いて後で決定できる。
【0065】
GC分離が上記の方法で利用される場合、キャリアガス及び/又はVUV検出器メイクアップガスが、検体の全てがサンプルセル内に存在する場合に吸光度スペクトルが得られるのを確保するために、調整する必要があり、その結果、式(9)のNについて推定した値が、注入されたサンプル中の検体の量に対応することに留意する。これは、通常、検出器メイクアップガスフローを単に遅くすることによって達成できるが、GCセッティングを最適化することが必要になる。
【0066】
第1方法の不具合が、サンプルセルに到達する検体の量の不確実性が、決定される断面積の精度に影響することである。例えば、注入されたサンプルの体積に変動があったり、サンプルがシステムから漏出したり、誤差が分流較正などに存在することがある。こうしたサンプルが無差別に失われる場合、未知の検体断面積を決定するための第2手順について以下説明する。
【0067】
N
aを注入された検体分子の数とし、N
Sを溶媒分子の数とする。密度および分子質量は典型的には既知であるため、N
aおよびN
Sは、サンプルおよび全体注入体積の既知の体積または質量比から決定できる。検体の吸光度は、下記の式(10)によって与えられる。
【0069】
そして、溶媒については下記の式(11)によって与えられる。
【0071】
溶媒の断面積σ
Sは既知であるとする。吸光度の比をとると、下記の式(12)になる。
【0073】
検体および溶媒の成分は、クロマトグラフィプロセスによって分離され、検体および溶媒についての吸光度は別個に測定できる。こうしてA
rが、式(12)を、各波長ごとに測定したA
aおよびA
Sに滝用することによって測定できる。A
rの結果は、A
aおよびA
Sの各々と同じ数のデータポイントを有する吸光度比のスペクトルである。N
a/N
Sおよびσ
Sが既知であるため、式(12)は、下記式(13)のようにσ
aについて解くことができる。
【0075】
従って、溶媒の断面積および検体対溶媒分子の相対比率が既知である限り、検体についての断面積が、測定した吸光度データが存在する波長値ごとに決定される。この方法を用いるために、溶媒は、関心のある波長領域について吸収(非ゼロ断面積)する必要があることに留意する。大部分の溶媒は、VUV領域において吸収する。検体が特定の波長領域で吸収しない場合、検体断面積は自明にゼロである。しかし、この結果が上記分析に出てくることもある。
【0076】
この方法の利点が、N
a/N
Sだけが既知である必要があり、N
a/N
Sが影響されない限り、N
aおよびN
Sの変動が許容されることである。従って、ガスクロマトグラフィ測定および分離プロセスの際のシステム誤差は、検出器に到達する溶液の体積の変動を生じさせるが、検体の未知の断面積を決定する能力に影響を与えない。こうした変動の例が、注入体積での変動/不確実性、分流での変動/不確実性、インジェクタからカラムへの伝送効率での変動、漏れなどを含む。検体断面積を決定する手順は、1回だけ行う必要がある。その後、検体はシステムにとって「既知」になり(断面積ライブラリに保存される)、波長依存の断面積は、単独または他の物質の混合物中において未知の量の検体を含有する溶液の次の測定に利用できる。
【0077】
一実施形態において、比N
a/N
Sは、注入比と同じになる。前述のように、式(12)(13)で用いられる測定した吸光度は、検体及び/又は溶媒の全てがサンプルセル内に存在する場合に対応すべきである。メイクアップガスフローは遅くすることができ、検体または溶媒分子の全てが検出器サンプルセル内にある場合、少なくとも1つの吸収スキャンが得られる。典型的なクロマトグラムが、検体および溶媒の各々について複数の吸収スキャンからなるため、率直な基準が、検体および溶媒のピークからの測定値を使用することであり、各ピークは、これらのピークの各々について最大吸収に対応している。
【0078】
この第2方法を説明するために、一例を提示する。3部(体積で)のエタノールと、5部の塩化メチレンの混合物を作成した。この説明では、塩化メチレンは既知の溶媒とし、エタノールは未知の断面積を持つ検体としている。密度、モル質量および他の一般的性質は、エタノール、塩化メチレンの両方とも既知であると仮定している。0.1μL体積の溶液をGC/VUV分光システムの中に注入した。既知の密度およびモル質量から、注入されたエタノールおよび塩化メチレンの総量(例えば、分子の数または総質量)が決定できる。GCスプリット比から、原理的に検出器に到達すべき、注入されたエタノールおよび塩化メチレンの量が計算できる。実際、吸収測定を用いて検出器で観測された量は、幾らか異なることがあり(通常、その量は少ない)、これは、注入体積での変動、分流およびスプリット比測定の精度、漏れに起因した損失などに起因している。エタノールの量と塩化メチレンの量との比率は、下記式(14)のようにより信頼性がある。
【0080】
ここで、ρは密度、Mはモル質量を表す。式(14)での3/5の係数は、体積混合比3:5から来ており、一般に、異なる混合比では異なるであろう。式(14)での比率は、注入された体積、またはサンプルの全体積を無差別に変化させる任意の損失機構には依存しない。
【0081】
図5は、100:1のスプリット比を用いて、3:5溶液の0.1μLのスプリット(split)注入から得られるクロマトグラムを示す。各データポイントは、VUV波長領域に渡る完全な吸光度スペクトルに対応する。
図5にプロットした応答は、125〜220nm波長領域に渡って平均した吸光度である。ピークは、
図5にラベル付与しており、2つの成分が良好に分離して、EtOH成分が約29秒で流出し、塩化メチレンが約35秒で流出している。
【0082】
EtOH信号が、塩化メチレンに少し入り込むように見え、塩化メチレン信号が、少なくともセル内に残ったEtOHによって少し「汚染」されていることを暗示する。多くの実際の関心のあるケースでは、分離は、かなり大きいものであり(この場合、キャリアガス速度を単に減少させることによって)、2つの成分の各々が、それ自体でセルを占めるであろう。この説明の例では、CH
2Cl
2スペクトルが単一の成分からなると仮定している。しかし、得られたエタノール断面積は、この仮定により、おそらく小さな量の誤差を被ることになるであろう。
【0083】
ピークの「切り落とし(chopped-off)」出現は、各成分の全体量がサンプルセル内に存在する少なくとも1つのスペクトルが得られるのを確保するために、メイクアップガスを遅くすることに起因している。このスペクトルは、エタノールおよび塩化メチレンのピークの各々についての最大吸収に対応するものとする。
【0084】
図6は、29.6秒および35.3秒に対応したEtOHおよびCH
2Cl
2について最大吸光度スキャンからの125〜200nm吸光度スペクトルを示す。
図7(上側)は、エタノール吸光度を塩化メチレン吸光度で波長単位ベースで除算することによって生成される吸光度比(式(12)のA
r)を示す。
図7(下側)は、吸光度比を塩化メチレン断面積と波長単位ベースで乗算することによって生成されるエタノール断面積を示す。エタノール断面積については何も仮定しておらず、これは、測定した波長領域に渡って決定されていることに留意する。断面積は、未知の量のエタノールを含有するサンプルの次の測定での使用のために利用できる。
【0085】
式(13)でのN
a/N
Sを、注入時の比率の値と一致させるために、溶媒/検体の分子の全てがサンプルセル内にある場合、溶媒および検体の各々について吸光度を測定することが好ましい。しかしながら、溶媒および検体の吸光度に対応するN
a/N
Sの比率は、溶媒/検体の分子の全てがセル内にない場合、上記方法において決定、使用できることが想定できる。この方法は、式(12)(13)での吸光度比を形成するために用いられる吸光度スペクトルが、N
a/N
Sの決定した値に対応するものである限り、同じように動作する。
【0086】
「溶媒」および「検体」の用語を上述では使用しているが、該方法は、一方の断面積が既知であり、2つの成分の相対量が既知である混合物の任意の2つの成分に適用できることに留意する。サンプルは、複数の容易に分離される検体を備えた溶媒でもよく、それ自体は、標準サンプルの販売会社によってしばしば提供される。既知の成分は、断面積が既知である検体のいずれでもよい。そして、この成分は、上記方法における「溶媒」として機能する。そして、この方法は、既知の成分のいずれかに適用でき、これは「検体」になる。通常、成分の相対量は、これらの標準サンプルでは既知であり、成分分子の全てがサンプルセル内にある場合、それぞれ隔離された成分を測定する条件が満足されることを条件として、一方の成分の断面積の知識が残余成分の断面積の決定を可能にする。実際、後述する次の方法と組み合わせた場合、成分の1つについて単一波長での断面積値の知識が、標準サンプル内の成分の全てについて断面積スペクトルを決定するのに充分であろう。
【0087】
未知の検体断面積を決定するための第3方法を以下説明する。この目的のため、式(5)を書き換えるのが便利である。測定した波長値が密集している場合でも、測定した吸収スペクトルは典型的には離散しており、フォトダイオードまたはCCDのアレイを用いて決定される。以下では、式(5)での明示的な波長依存性は、下記のようにある指標で置換している。
【0089】
jの値は整数であり、例えば、j=1は、測定した最低波長値に対応でき、j=2は次の最低値に対応し、以下同様である。σ
jの値は、指標jに対応した波長での吸収断面積の値である。一例として、特定の波長領域に渡って平均化した吸光度は、下記の式(16)になる。
【0091】
ここで、j
minは、積分領域での最低波長に対応した指標であり、j
maxは、積分領域での最高波長の指標である。式(16)では、n=j
max−j
min+1である。
【0092】
式(15)のように、単一の検体成分についての吸光度スペクトルを仮定すると、A
jは、特定のjの値、いわゆるj
normでのA
jで除算することによって正規化できる。その結果は、式(17)のようになる。
【0094】
式(17)での比率は、断面積値の比率にのみ依存し、即ち、全ての波長非依存の量が相殺される。これは、単一検体の相対吸光度がその特定の検体にとって特有であり、セル幾何形状または存在する検体の量に依存しないことを意味する。さらに、式(17)は、相対断面積が単一の吸収スペクトル測定によって決定されることを示す。断面積の絶対値が、測定した波長領域内の単一波長についても既知である場合、絶対断面積は、下記のように全体領域について決定される。
【0096】
但し、既知の断面積が、σ
jnormそれ自体であると仮定している。断面積が異なる波長値j
knownで既知である場合、σ
jは、下記の式(19)から決定できる。
【0098】
この比率は、j
norm=j
knownを用いて、即ち、式(17)で正規化した値のように、既知の断面積の波長での吸収を用いることによって、第1場所にも形成できている。
【0099】
既知の断面積値は、その断面積で容認された論文の値とすることができる。VUV領域での1つ又は少数の波長値について断面積が既知であるが、それ以外は未知である多くの事例が存在する。さらに、吸収測定は、UVまたは可視波長領域にまで拡張して、既知の断面積が存在する領域を包含できる。この第3手順は、VUV領域の残余について断面積値を決定する何れのケースにおいて使用可能である。
【0100】
利用できる断面積情報がない場合、式(10)〜(13)で詳述した手順は、単一波長値での断面積を決定するために採用でき、そして式(18)(19)は、測定領域の残余について断面積を決定するために使用できる。この手法には幾つかの利点がある。溶媒/検体の溶液が作成され測定できる場合、溶媒吸収は、幾つかの波長領域を飽和させるのに充分に強くてもよい(即ち、これらの領域での溶媒を通る透過率はゼロに降下する)。式(10)〜(13)は、溶媒透過率がゼロでないこれらの波長での断面積を決定するために使用でき、式(17)〜(19)のような相対吸収が、断面積値の残余を決定さるために使用できる。断面積スペクトルの残余を決定するために使用される相対吸収測定は、同じ測定セットから到来するものである必要はなく、そのためGCラン(run)パラメータは、検体信号について特別に最適化でき、信号対ノイズ特性を改善し、決定した断面積スペクトルでの測定不確実性の影響を低減できる。この第2ランのためのGCランパラメータは、便宜的に最適化できる。理由は、式(17)〜(19)が、検体が単独でサンプルセル内で発生する任意の吸光度測定のために使用できるからである。別の方法では、吸光度は、各検体分子が同時にサンプルセル内に存在する条件と一致する必要はない。システムに導入される検体の量を最大化する1つの方法が、スプリットレス注入(分流なし)を実施することである。こうしたケースでは、検体分子の全てが何れかの特定の時間ポイントでサンプルセル内に存在することを確保することが困難になることがあるが、スプリットレスまたは低スプリット比の注入が、最大可能な検体応答を提供できる。
【0101】
式(10)〜(13)を採用する手順は、検体および溶媒の吸光度特性が最適である波長での検体断面積を見つけるために使用でき、単一波長の断面積の決定に対する測定不確実性の影響を低減できる。この最適条件は同時に、全体の測定領域よりも、1つの特定の波長値で達成するのがより容易である。未知の検体について特別に最適化した第2測定が、式(17)〜(19)を用いて断面積スペクトルの残余を決定するために使用でき、こうして精度を改善し、全体の波長領域について断面積の不確実性を最小化している。
【0102】
第4の方法が、検体の吸光度または透過率を隔離して測定する。断面積について存在するどのような論文値または他の既知の値も、断面積が既知であるこれらの波長からのデータを用いてフッティング手順で使用される。例えば、断面積データが、180nmより上でVUVには入らない波長で利用可能であろう。フッティングの結果は、検体Nの量について値である。そして、Nについてのこの値は、式(9)で使用され、残りの未知の波長または波長領域での断面積値が得られる。
【0103】
得られた吸光度/断面積データは離散しているが、波長間隔は典型的には小さい(<1nm)。連続した波長値間の吸光度または断面積データが必要である場合、これらの値は補間(interpolation)によって決定できる。
【0104】
VUV分光システムの例示の態様は、検体の吸収断面積の入手可能性が、既知のサンプルを用いた明示的な較正の必要性なしで、吸収/透過率の測定からの定量分析を可能にすることである。吸光度/透過率の測定は、GC分離プロセスに影響する要因から独立して、所定の時刻においてサンプルセル内の検体の量を決定するために使用できる。クロマトグラフィプロセスの際、サンプルの損失がある場合、これらの誤差は、相対量が影響を受けないケースであっても、検出された各検体の量の差として現れるようになる。このため、GCシステム効率が、既知の標準品の使用により特徴付けられ、そして標準品の検出量の変動が、注入、伝送及び/又は分離のプロセスの効率での変動に帰着できる。標準品は、異なるGCシステムの効率を比較するためにも使用できる。これを行う能力は、普通ではない。典型的なGC検出器は、任意の種類の定量分析を行うために、一連の既知サンプルを用いて頻繁な較正を必要とし、時間がかかるのは別として、こうした較正プロセスは、GCプロセスの効率についての情報を何も明らかにしない。無差別でない誤差(即ち、特定の検体に依存する誤差)が疑われる場合、標準品が、既知量の複数成分を用いて調製でき、そして成分の相対量での変動がVUV検出器を用いて監視される。
【0105】
第2の利点は、吸収断面積スペクトルが特定の検体にとって特有であるため、VUV分光検出器を用いた場合、固有の選択性が存在することである。データベースライブラリに保存された吸収断面積を用いて、式(17)で定義されるような相対断面積が、時間依存のクロマトグラムからの相対吸収スペクトルと比較できる。特定の相対吸収スペクトルが、問題となる検体に起因していた場合、測定した検体の量に関わらず、正確な一致(測定不確実性の範囲内と)が得られるようになる。こうして検体スペクトルの存在は、クロマトグラムにおいて検出される。断面積の全体ライブラリデータベースがこうしてサーチでき、最も近い一致が各クロマトグラムピークに割り当てられることは、不合理ではない。正規化した波長が異なる場合に生じ得る一定のオフセット係数を説明することが可能であるが、正規化した波長が、比較される相対断面積および相対吸光度の両方について同じにすべきであることに留意する。
【0106】
共溶出の可能性が存在する場合、回帰フッティング手法が、式(8)(または透過率について類似の式)を用いて吸光度データに対して実施できる。入力は、候補となる検体の断面積を含む。ゼロとはかなり異なるフッティング量N
iを返すこれらの検体は、その特定の吸光度スペクトルに対応した時刻に、サンプルセル内に存在する傾向がある。この手順は、検出した検体の量の決定をもたらす。
【0107】
フッティング手順の際、候補の検体成分の数はおそらく、同時に数千の成分を潜在的に(そして不必要に)フッティングを行うことを回避できる程度に減少するであろう。サーチインタフェースは、注入される溶液中のこれらの存在の可能性に従って、有力な成分を識別する手段を提供できる。既知の保持時間も使用でき、候補の検体が、これらが生ずることになるクロマトグラムの領域だけにおいて、サーチ/フッティングに含まれる。
【0108】
特定の検体のための保持時間および保持時間の周りに時間ウインドウを提供する手段が含まれる。このウインドウの内側に入るクロマトグラムの領域を含むフッティングが、問題となる検体のための期間(term)を含むであろう。
【0109】
一実施形態において、VUV検出器の出力は、吸光度または透過率のスペクトルである。既に説明したように、時間依存のプロセスが、吸光度または透過率を規則的間隔で記録することによって監視できる。この場合に提供されるデータセットは、本来、3次元であり、波長および時間の両方の関数として吸光度(または透過率)からなる。ガスクロマトグラフと関連させると、吸光度または透過率のスペクトルの時間依存性は、種々の溶出液がカラムを出て、検出器サンプルセルを通過する際に記録される。各記録されたデータポイントが、全体の測定した波長領域に渡るスペクトルであるが、GCカラムを出る溶出液と相互に関係する全体の検出器応答を発生することが便利である。この全体応答は、クロマトグラムとして提示できる便利なデータの2次元図を提供する。
【0110】
典型的な吸光度/透過率スペクトルが離散的であること、即ち、透過光がアレイ検出器を用いて収集されたことが指摘された。全体応答が、各波長値での吸光度/透過率の合計から構成できる。吸光度の場合は、下記の式(20)になる。
【0112】
ここで、nは、波長値の全体数である。式(20)での応答は、データポイントの全体数で除算することによって、下記の式(21)のように正規化できる。
【0114】
これは、測定した波長領域に渡る平均吸光度と同じである。式(20)(21)での全体応答に加えて、特定の波長に渡る応答は、下記の式(22)のように計算できる。
【0116】
ここで、j
minは、積分領域での最低波長に対応する指標であり、j
maxは、積分領域での最高波長の指標に対応する。問題となる領域に渡る平均吸光度が要望される場合、下記の式(23)のようになる。
【0118】
ここで、n=j
max−j
min+1。式(23)は、式(16)のように先に提示している。
【0119】
式(20)は、下記の式(24)のように吸光度−波長カーブの下方の面積を表現するように修正できる。
【0121】
ここで、Δλは、連続した波長値間の間隔であり、ほぼ等しい間隔であると仮定している。式(24)のA
intは、吸光度単位×長さの単位を有する。式(24)は、積分の離散バージョンにより近いが、特に一定波長間隔の場合、式(20)は同じ情報を含み、命名A
intは、そこで保持された。平均吸光度を計算する場合、式(24)は、式(21)(または、特定の波長領域を考慮した場合は式(23))になることに留意する。波長値が等しい間隔でない場合、Δλは、インデックス付きにすることができ、間隔は、式(24)に用いられるデータポイントの各近接セットに適している。
【0122】
式(20)〜(24)の吸光度データが連続的である場合、総和は積分に変換できる。式(20)〜(24)のいずれか、離散または連続バージョン、あるいは追加変数の任意の数が、クロマトグラム上の検出器応答として報告できる。実際の波長依存の吸光度は、保存でき、必要なときはいつでもフルデータ分析のために呼び出すことができる。検出器応答は、透過率データにも適用できる。
【0123】
下記の議論は、検出器応答の吸光度スペクトルに適用される式(23)を使用する。しかし、これらの選択は、説明目的のために厳格である。クロマトグラムでの各測定は、全体の測定した波長領域に渡る吸光度スペクトルからなる。さらに、異なる検体は、一般には異なる波長特性を持つ吸収断面積を有する。式(23)を、特定の検体または検体クラスの波長特性に調整した波長領域に適用することは有益であろう。こうしたスペクトルフィルタが、該検体クラスへのクロマトグラム応答を増強するようになり、それ自体あるレベルの選択度を提供する。単一のGC/VUV検出器ラン(run)から複数のフィルタを用いて複数のクロマトグラムを構築することが可能であり、あるいは、後でクロマトグラムデータセットに戻り、異なるフィルタを用いて再分析することが可能である。
【0124】
図8は、無鉛ガソリンのGC/VUV測定の一例を示す。125nm〜220nmフィルタが適用され、測定した波長範囲の大部分をカバーしている。
図9は、脂肪族炭化水素、大部分がイソオクタン(上側)およびトルエン(下側)の125nm〜240nm吸光度スペクトルを比較している。脂肪族炭化水素からの応答は、一般に、遠VUV領域に集中している。トルエンは、芳香族化合物であり、これらの化合物の応答はVUV領域に及んでいるが、180〜190nm領域に最大応答を有する。
【0125】
図10(上側)は、
図8のものと同じクロマトグラムを示すが、150nm〜200nmフィルタを適用している。幾つかの芳香族化合物はラベル付与している。脂肪族炭化水素からの応答が抑圧されることがこの図から判る。
図10(下側)は、125nm〜160nmフィルタを適用したクロマトグラムを示しており、脂肪族炭化水素が優位となるように芳香族化合物の応答を抑圧している。より劇的な例を
図11(上側)に示しており、200nm〜220nmフィルタが適用されている。このフィルタは、多環式芳香族炭化水素(PAH)が優位となるように、脂肪族炭化水素および芳香族化合物の両方を抑圧している。ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレンをラベル付与している。
図11(下側)は、ナフタレンピークについての吸光度スペクトルを示し、最大応答は、実際に200nm〜220nm領域にある。
【0126】
実際は、GC/VUVランの際またはその後に、任意の数のフィルタが適用できる。ランタイムクロマトグラムプロットが、幾つかのフィルタの結果と重なり合ってもよく、特定の検体クラスの応答を増強するようにそれぞれ設計される。
【0127】
開示した手法の特定の利点は、較正サンプルのセットを用いて特定の量の検体が何を見ているかを「教示」する必要なくして、定量分析を実施する能力であるが、VUV分光システムをこのように使用することも可能である。VUV検出器応答が、検出器に直接に注入され、またはGC分離プロセスに注入されてVUV分光器によって後で検出される既知の量の検体と相互に関連し得る。多くのGC検出器がこの方法で既に使用されており、VUV検出器によって提供される、増強されまたはより万能な応答は、その完全3次元データ特性が活用されていない場合でも、こうした測定プロセス内でのその配置を正当化するのに充分すぎるものであろう。
【0128】
例えば、対象となる既知の量の検体をそれぞれ有する幾つかのサンプルが、GC/VUVシステムに注入され、応答が測定される。サンプルは、典型的な測定範囲(またはそれより大きい)に広がる検体量を含むように構成されるであろう。VUV検出器応答は、式(23)またはその変形のように、特定の波長領域に渡って正規化した積分吸光度となるであろう。応答のある態様が、各サンプルについて既知の量の検体に対してプロットされる。例えば、検体の最大応答は、関連したクロマトグラムピークの最大値から取られ、既知の注入量と相互に関連付けられる。代替として、検体と関連したクロマトグラムは、さらに積分され、そして、応答時のピーク面積−時間のカーブが、既知の検体量と相互に関連付けられる。いったん較正サンプルの全てについて応答が得られると、検体量−応答からなる較正カーブが生成される。このカーブは、理想的にはリニアであるが、他の関数関係も可能である。未知の量の検体を含むサンプルについて検出器応答が測定可能であり、そして、較正プロセスの際に生成された検出器応答と検体量との間の関数関係から、未知の検体量が決定できる。
【0129】
ここで開示した手法を用いて生成されるクロマトグラムの他の例を、
図12に示している。このクロマトグラムは、2つの共通溶媒、即ち、メタノールと塩化メチレンからなる簡単な溶液に対応している。検出器は、スキャンを200ms毎に収集するように構成した。125〜180nmの波長領域に渡って透過率を合算し、データポイントの合計数で除算することによって、各スキャンについて正規化した積分透過率値を構成した(式23が透過率に適用される)。図で明らかなように、(I)メタノールおよび(II)塩化メチレンに対応した2つの良好に定義されたピークが、〜31sと〜38sにおいてそれぞれ現れている。メタノールおよび塩化メチレンについて良好に確立した溶出時間の考察の際、この割り当てが容易に行われるが、現システムは、この結論を検証する強力な手段を提供する。
【0130】
前図のメタノールおよび塩化メチレンのピークと関連した透過率スペクトルを
図13と
図14に示す。明らかなように、2つのスペクトルは、肉眼にとって明らかに区別可能である。
図13のメタノール透過率スペクトルは、〜148nmおよび〜158nmにおいて特徴的な吸収二重線(doublet)を示し、
図14の塩化メチレンスペクトルは、〜138nmおよび〜152nm近傍で特徴を示す。これら2つの種についてのVUV吸収断面積の知識を用いて、上述のようなコンピュータ化直線回帰アルゴリズムを用いて、各濃度を容易に決定できる。分析は、リアルタイム(即ち、クロマトグラフの収集時)または測定後に実施できる。さらに、分析は、単一検体がフローセル内に存在する状況(
図13と
図14のように)、または複数の成分が共溶出する場合に実施できる。
【0131】
対象となる種についてのVUV吸収断面積が、論文で見つけたり、または上述した方法を用いた測定により決定できる。断面積が、通常の操作(即ち、検体がGCカラムを経由して導入される)の際に決定できるが、幾つかの場合、ガスセル内の対象となる種を、延長した期間で隔離して、信号の平均化を容易にし、不確実性を低減することが好都合であろう。この手法は、これに限定されないが、断面積決定の際にトレース分析および改善した精度などを含む種々の理由のために使用できる。
【0132】
隔離が、これに限定されないが、メイクアップガスフローの減少または完全停止、フローセルの入口および出口で適切な三方弁の使用、またはサンプルの直接注入を容易にするようにセルを変更することによる等、種々の手段で達成できる。後者は、前述したフローセルを用いて、あるいは付属するGCの使用を必要としないスタンドアロン版を用いて達成できる。
【0133】
こうしたシステムの一例を
図15に示しており、スタンドアロンセル1500が装着されたVUV検出器を描いている。他の光源および検出器モジュール構成は、図から判るように、
図1のシステムのものと同様である。セルは、必要となる注入ポート1502、ポンピングポート1504およびバックフィル(backfill)ポート1506が装備される。図には明示していないが、セルには、加熱手段も装備される。上述したように、セルの内側をコートしたり及び/又は処理して、反応種に対して不活性にすることが望ましいであろう。複数の種が、制御した方法でセルに導入できるるため、該システムは、化学反応などを研究するために使用できる。セルは、この能力をさらに増強するように、他の付属品(即ち、光源、プローブ、センサ、電極など)を装備してもよいことに留意する。
【0134】
液体クロマトグラフィ(LC)は、多くの点でガスクロマトグラフィと類似している。LCにおいて、サンプルは、液体溶媒を用いてカラムに沿って輸送される(移動相と称される)。カラムは、サンプルの種々の成分と相互作用する固定相からなる。固定相を用いたサンプルの相互作用は、カラムの端部から異なる時間で溶出させ、その結果、サンプルは、その構成成分に「分離」される。溶出した成分が、検出器を用いて再び検出される。現代のLCシステムが、一般に、固定相での極めて小さい粒子および比較的高い圧力を利用しており、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)システムと称される。
【0135】
最も一般的なHPLC検出器は、UV−Vis(紫外−可視)吸収検出器である。原理上、VUVまで延長している吸収検出器が、数桁より高感度であることが判るはずであり、その結果、かなり高い吸収断面積がVUVにおいて多くの分子によって示される(UV−Vis領域と比べて)。残念ながら、この手法の可能性のある利益は、標準のベンチトップシステムを用いて達成不可能であることが判っている。より高い断面積は、巨視的な厚さの全て液体をVUVにおいて実質的に不透明にするからである。その結果、液体のVUV吸収調査は、非常に強い光源が利用できる大型のシンクロトロン放射施設において、専用のVUVビームラインと結合したシステムにほぼ全く限定されている。
【0136】
従来の光源を用いて動作可能であるベンチトップVUV吸収システムの発展から多大な利益があることになる。これを達成するため、一実施形態において現システムは、超短光路(ultra short path)長サンプルセルを組み込んで、液体薄膜をVUV光に対して半透明にするようにしている。
【0137】
超短光路長サンプルセルの一実施形態の側面図を
図16に示す。3つの全体領域、即ち、上部バリア領域1602、下部バリア領域1604および中央チャネル領域1606が図において見えている。中央チャネル領域の右側および左側において、入口および出口ポート1610,1612が認識できる。チャネル領域の中央での点線円1620は、VUV光ビームが超短光路長サンプルセルを通過するエリアを表現している。動作の際、HPLCからの液体が入口ポートを通ってフローセルに入り、VUV光ビームによってサンプリングされるエリアを横断するようにチャネル領域内に広がる。液体は、セルを進み、出口ポートを通って出る。
【0138】
セルは、共にサンドイッチ構造となる2つのVUV透明窓で構成される。窓の一方は、パターン化した超薄膜が片側に存在するように変更される。膜が存在するエリアがバリア領域を形成し、一方、膜の無いエリアが中央チャネル領域を形成する。セルは、流れ方向軸に沿って断面積を維持し、そして層流を確保するように設計される。これを達成するため、VUV光ビームによってサンプリングされるエリアのプロファィルおよび中央チャネル領域の残部は、
図17に見えるように、はっきり区別される。
【0139】
図17の3つの図は、流れ方向軸に沿ったフローセルの断面図を示しており、
図16の垂直な破線1650,1652,1654の位置に対応している。具体的には、
図17の上部概略
図1702は、
図16でのフローセルの中心に最も近い破線1650に対応する。セルのこの領域において、このプロファィルは単に、液体が通過して流れる薄い水平チャネル1710からなる。チャネルの壁は、下部窓1712の上に堆積したパターン化薄膜によって形成される。上部窓1714および下部窓1712は、チャネルの上部および下部をそれぞれ形成する。
【0140】
同様に、
図17の中間概略図は、
図16での中間破線1652に対応している。この図面において、第3の領域1720が、概略図の片側においてフローチャネルとバリア領域との間に見える。この領域は、エッチングプロセスなどにより、下部窓から材料を除去することによって生成される。それは、セルを通る液体の層流を促進するように断面積を維持することを目的としている。エッチングされた領域の壁は、図において垂直に示しているが、他の幾何形状がより良く適しており、層流を増強するために採用されるであろうと理解される。セルは、VUV光ビームがフロー領域の未エッチング部分だけを通過し、エッチング後の粗さに起因した散乱損失を回避するように設計されていることが、さらに留意される。幾つかの場合、カラムフローを妨害しないように、フローチャネルの全体長さに沿ってエッチング領域を延長することが望ましいであろうことが留意される。
【0141】
最後に、
図17の下部図面1706は、
図16の右側破線1654に対応している。フローセルのこの部分は、エッチング領域1730を含み、チャネルの未エッチング部分を含んでいない。光は、セルのこの部分を通過しないからである。明らかなように、より大きいエッチング深さ(中間図面と比べて)は、チャネルの減少した幅を考慮して、断面積を維持するために必要になる。再び、より複雑なプロファィルが、「死」体積を減少し、層流を増強するために採用されることが理解される。
【0142】
図18は、超薄光路長フローセルを組み込んだVUV HPLC検出器1800の一実施形態を示す。実際、この構成は、
図1のVUV GC検出器とかなり類似しており、ガスフローセルは、超薄光路長液体フローセル1802で置換されている。前述のように、クロマトグラフィシステム(この場合、HPLCシステム)を出たサンプルは、入口ポート1806でセルに入り、カラム1804を出て、平行化したVUV光ビームと相互作用する。セルから離れた液体は、出口ポート1808を通過する。図には明示していないが、システムには、他の付属品、例えば、メイクアップ溶媒装着具、ヒータ、クーラなどが装備できることは理解されよう。
【0143】
ここで開示した概念のさらに他の実施形態を
図19に示しており、集光ビームおよびより小型の液体フローセル1902を採用したVUV HPLC検出器1900を描いている。また、このシステムは、
図4において先に提示した集光ビームVUV GC検出器システムにある程度類似している。この構成は、
図18の平行化バージョンより大きな光子束の見通しを提供しており、強く吸収する種が関連する場合に有用になるであろう。
【0144】
図16〜19において上述した実施形態は、VUV吸収手法を用いて直接に研究することが可能であるが、ガスのVUV吸収スペクトルが、液体のものより構造において豊かであり、識別用途においてかなりより有用であることは、一般に真実である。残念ながら、多くの検体、特に生物学的関心のある大型で壊れやすい分子が、GC分離手法を用いた分析に耐えるために、揮発性または熱的な安定性が不充分である。
【0145】
エレクトロスプレー(electrospray)イオン化が、静電帯電の使用により極めて微細な液体エアロゾルを発生する手段である。実際、この手法は、質量分光分析を用いた研究のため、溶液中の大型で複雑な種から無傷(intact)のイオンを真空中で生産する標準的手段になっている。エレクトロスプレープロセスにおいて、検体の溶液が、高い電位に保持された毛細管を通過する。溶液が出現するときの高電界の効果は、強く帯電した液滴の霧(mist)を発生することである。毛細管から出現する溶液の噴霧は、噴霧器シース(sheath)ガスのフローによってさらに促進される。出現する液滴は、検出器の分析器部分に向かって電位および圧力の勾配を通過する。この移動の際、液滴は、溶媒の蒸発および液滴細分化によってサイズを減少する。最終的に、完全に脱溶媒化したイオンが、溶媒の完全蒸発または帯電液滴からの電界脱離(desorption)によって得られる。溶媒の蒸発を速めるために、ドライガスの加熱した逆流がしばしば追加される。
【0146】
MSおよびVUVガス吸収法を用いた分析のための検体の調製条件は基本的に異なるが(MSは帯電イオンの生成を必要とするが、VUVガス吸収は必要としない)、これらは両方とも、検出のために導入できる前に、分子がガス状の形態になることを必要とする。よって、適切な変更とともに、エレクトロスプレー手法は、重い分子液体サンプル(HPLCシステムまたは他の方法から)をダメージなしで、本開示において先に説明したようなVUV GC検出器を用いた研究のためにガス状の種に変換する際に使用するのに役立つということになる。
【0147】
開示したシステムの他の実施形態を
図20に示しており、VUVガス吸収フローセル内に集積されたエレクトロスプレーインタフェースを描いている。液体サンプル2002が、電位の分布および使用可能な任意の加熱ドライガスのフローを形作るのに役立つ周囲電極(明示していない)に対して高電位に保持されたエレクトロスプレー毛細管2004を通ってフローセルに入る。ニードル先端で生じた電界は、出現する液体の表面を帯電し、クーロン力によって、帯電液滴の微細スプレーに分散する。電界によって駆動されると、液滴は、圧力/電位の勾配を横切って、2つのVUV透明窓2012を通過するVUV光ビーム2010のサンプリング空間に向かって移動する。
【0148】
サンプリング空間において完全に脱溶媒化した検体分子の密度および分布は、液体サンプルフローレート、サンプル(検体および溶媒の両方)の性質、毛細管電位、電極の詳細(場所、幾何形状、電位など)、乾燥ガスの性質(タイプ、温度、フローレートなど)、フローセル環境およびフローセル幾何形状など、数多くの要因によって影響される。簡単な電極2020の2つのペアを図面で表示しているが、検体分子の最適な分布がサンプリング空間内に維持されることを確保するために、追加のより複雑な電極(毛細管に対して正または負の電位を持つ)が採用できることは理解されよう。
【0149】
よって、このフローセルは、本開示で前述したVUVガス吸収システムの何れかに容易に組み込み可能であることになる。
【0150】
本開示で説明したガスまたは液体のフローセルの何れもがVUV円偏光二色性分光器と連結できることはさらに留意する。これは、例えば、係属中の米国特許出願第13/184619号(2011年7月18日出願)に記載しており、その内容は参照によりここに明白に組み込まれる。この構成は、立体異性体を含む用途において、特に有利であることが判明している。
【0151】
上述したように、広範囲の検出ハードウエアおよび手法が提供されている。ここで説明した種々の概念は、種々の組合せにおいて単独または代替として利用できることは認識されるであろう。
【0152】
1つの態様において、ガスフローセルをここでは説明している。特定の実施形態において、ガスフローセルは、ほぼ全ての検体分子をフローセル内に同時に収容できるように、検体体積と等しいか、またはそれより大きい体積を有するガス検出スペースを提供するように構成できる。フローセル内により多くの検体を供給することによって、吸収が最大化でき、より高感度の検出器システムを提供できる。一実施形態において、その体積は、ガスクロマトグラフィカラムから供給される検体体積と等しいか、これを超えるように設けられる。しかしながら、他のより少ない体積のガスフローセルが利用できるとともに、ここで説明した利益の少なくとも幾つかが得られることは認識されるであろう。
【0153】
他の態様において、メイクアップガスフローと連結したガスフローセルが設けられる。メイクアップガスは、検出機構にとって比較的見えないガスで構成してもよい。この方法では、メイクアップガスのガスフローレベルは、システム感度にほぼ影響することなく調整できる。一実施形態において、検体が、経時的な方法でガスフローセルに供給される。メイクアップガスフローは、検体の時間分解能を維持するように調整できる。理由は、検出システムは、メイクアップガスに対して比較的感度が低く、ガスフローの調整は、システム感度を別段減少させないからである。こうしたシステムは、時間に関して分離した複数の検体を出力できるガスクロマトグラフィカラムを用いた用途に特に適している。
【0154】
さらに他の態様において、ガスフローセルは、ガスフローセルが連結できる他のシステムモジュールからの熱的分離を提供するように、熱カプリングを装備してもよい。ガスフローセルはまた、検出されるガスが存在する管理された環境を提供するように封止してもよい。
【0155】
さらに他の実施形態において、ガスフローセルは、平行化した光を受けるように構成してもよい。さらに、ガスフローセルは、充分に平行化した光エネルギーのアクセスを許容して、吸収測定が得られるように寸法決定してもよい。代替として、小さな断面積の集光された光ビームが吸収検出機構において利用できるように、集光光学系を設けてもよい。用途に応じて、ガスフローセルを加熱する機構を提供することが望ましいであろう。
【0156】
上述したガスフローセルの種々の特徴を別々に利用しながら、ここで説明したような利益が得られることは認識されるであろう。さらに、ここで説明したガスフローセルは、種々の方法で、上述した種々の特徴を用いて、単独または組合せで、より大型の検出システム内で利用できる。一実施形態において、ガスフローセルは、フローセルの熱膨張に順応する方法で、他のシステムと直接に結合してもよい。こうした実施形態において、フローセルと接続された他のシステムモジュールは、フローセルが熱影響に起因して膨張すると、移動するように構成できる。他の実施形態において、ガスフローセルは、ガスフローの熱膨張が他のモジュールの移動を必要としないように、システムの他のモジュールから隔離してもよい。こうした実施形態において、ガスフローセルは、別個の専用チャンバを用いて収納してもよい。こうしたチャンバの実装の一実施形態において、ガスフローセルおよび専用チャンバの両方が、管理された環境を封止し、環境は、例えば、光学窓を通して互いに光学的に結合している。
【0157】
開示された手法が利用できる検出システムの1つの例示の実施形態が、ガスクロマトグラフィカラムを備えた検出システムである。開示された手法が利用できる検出システムの1つの例示の実施形態が、真空紫外(VUV)光学分光システムである。一般に、VUV光が、約190nm以下の光の波長であると考えられている。1つの例示の実施形態において、VUV光源が、分光検出モジュールの使用によりフローセルのVUV出力を分析することによって、ガスクロマトグラフィカラムの出力を分析するために利用できる。一実施形態において、VUV光源は、フローセル内の検体を複数の光波長に同時に露出する広帯域VUV光源でもよい。
【0158】
分光器検出器モジュール、ガスクロマトグラフィ検体供給源およびVUV光源モジュールに関して上述したが、これらのコンポーネントの各々が、他のモジュールまたはコンポーネントと置換できることは認識されるであろう。例えば、非ガスクロマトグラフィ検体供給源が利用でき、非VUV光波長が利用でき、非分光器検出器モジュールが利用できるとともに、ここで説明した利益の1つ以上が得られるであろう。
【0159】
1つの非ガスクロマトグラフィ検体供給源が、エレクトロスプレー検体供給源でもよい。こうした手法において、光源を、高電位に維持されたエレクトロスプレー毛細管に設けてもよい。エレクトロスプレー毛細管の出力は、検出チャンバ、例えば、光経路(例えば、VUV光経路)を収容する環境的に管理されたチャンバに供給してもよい。毛細管の出口での電極が、サンプリング空間での検体の所望の分布に役立つように利用できる。VUV透明メイクアップガスも、サンプリング空間での脱溶媒化した検体分子の発生に役立つように使用できる。
【0160】
さらに他の実施形態において、超短光路長液体フローセルが設けられる。この液体フローセルは、2つのVUV透明窓の使用により形成してもよい。薄膜を1つ以上の窓の上に形成し、そして、ある領域において除去して、流体が入口ポートおよび出口ポートを通じて供給され通過する光学領域をクリアにしてもよい。この方法において、クリアな光学領域の厚さは、薄膜の厚さによって定義してもよい。流体伝達領域は、所望の断面積を維持するように形成でき、セルを通る積層流(laminate flow)を促進する。液体フローセルは、液体クロマトグラフィシステム、VUV光源及び/又は分光器検出システムと連結して使用できる。幾つかの実施形態において、液体フローセルは、他のシステムコンポーネントと堅固に接続してもよく、あるいは分離した専用フローセルチャンバに収納してもよい。平行化した光または集光した光が、液体フローセルを通過してもよい。
【0161】
上述した手法は、材料を分析する広範囲の方法をサポートしている。これらの方法は、独立にまたは種々の組合せで利用でき、ここで提供した開示は、いずれか特定の分析方法に限定されることを意味しない。一実施形態において、ガスクロマトグラフィ応用のための検出器を説明している。他の実施形態において、真空紫外(VUV)波長を利用したガスクロマトグラフィ(GC)応用のための分光検出器を説明している。VUV波長、即ち、多くの材料が、例えば、紫外波長および可視波長よりかなり強く豊かな吸収特性を示す波長を利用したGC応用は、GCプロセスの際に分離した検体に対して増強した感度を提供する。GC応用のために分光検出器およびVUV波長を利用することは、定量的能力および定性的能力の両方を実現する3次元データセットを生成する。この3次元データセットは、吸収データ、波長データおよび時間データを含んでもよい。データは、既知の検体スペクトルと比べて、溶出する検体の量を決定し、溶出する成分を識別するためにフィッティングが可能であり、あるいは、共溶出する種の量を決定するために、複数の検体からなるモデルに対してフィッティングが可能である。2次元応答が、特定の波長領域に渡って吸光度/透過率を積分するスペクトルフィルタを適用することによって生成でき、特定のクラスの検体に対するクロマトグラム応答を増強できる。これらの手法を用いたシステムが、検体量とキャリア/メイクアップガスとの相対量によって悪影響を受けず、検出器セルへの可変かつ制御可能なメイクアップガスフローを利用することから利益を受ける。メイクアップガスフローは、GC/VUVクロマトグラムの時間分解能を増強するために増加でき、測定統計を改善するために減少でき、あるいは両方を可能な範囲で達成するために最適化できる。
【0162】
他の実施形態において、1つ以上の波長で検体の未知の断面積値を決定するための方法が提供される。検体の断面積は、検体の吸収プロファイルを波長の関数として提供する。該方法は、既知の量の検体分子および溶媒分子を含み、検体の吸収断面積が未知であり、溶媒分子の吸収断面積が既知であるサンプルの分離を行うことを含んでもよい。該方法は、測定した検体および溶媒の吸光度の比率を形成することをさらに含む。該方法は、(1)既知の量の検体および溶媒の比率、および(2)既知の断面積の溶媒を利用することによって、吸光度比率から未知の検体の断面積を計算することをさらに含む。検体および溶媒の絶対量を呼び出していないため、該方法は、検体および溶媒に対して無差別に影響を与える、注入体積の変動または他のシステム誤差に対して鈍感である。
【0163】
他の実施形態において、未知の検体について波長依存の断面積を決定するための方法が提供される。該方法は、問題となる検体だけからなるサンプルの吸光度を測定することを含んでもよい。これは、純粋なサンプルの直接注入によって、またはGC分離プロセスを利用することによって達成できる。該方法は、単一波長での吸光度値を用いてスペクトルデータを正規化することによって、相対吸光度を形成することをさらに含んでもよい。この相対吸光度は、測定時に存在する検体分子の数に関係なく、検体の相対断面積と等しい。そして、該方法は、単一波長での絶対断面積を利用することによって、全体波長領域について絶対断面積を計算することを含む。最も簡単には、正規化波長は、この既知の波長に対応する。
【0164】
さらに他の方法が、未知の検体について波長依存の断面積を決定するための方法を提供する。この方法は、未知の断面積を有する既知の量の検体分子と、既知の断面積を有する既知の量の溶媒分子とを含むサンプルの分離を行うことを含んでもよい。GCおよびメイクアップガスのパラメータを、単一波長または少数の波長での検体および溶媒の吸光度特性を増強させるために調整してもよい。そして、比率が、検体および溶媒の測定した吸光度で形成できる。そして、該方法は、既知の量の検体および溶媒の比率、そして既知の断面積の溶媒を利用して、吸光度比率から単一波長または少数の波長で検体について断面積を計算することをさらに含んでもよい。該方法の更なる拡張が、検体の第2吸光度測定を行うことを含んでもよい。第2測定は、第1サンプルを含まず、同じGCおよびメイクアップガスの設定も含まない。その代わり、GCおよびメイクアップガスの設定は、検体吸光度信号の増強のために厳密に最適化してもよい。そして、該方法は、1つの波長での吸光度値を用いて正規化することによって、第2測定から相対吸光度スペクトルを形成することと、相対吸光度スペクトルから全体波長領域について絶対断面積を計算することとを含み、既知の断面積値は、吸光度比率を用いて決定したものである。
【0165】
開示した他の方法が、測定したGC/VUVクロマトグラムにおいて検体成分を識別するための方法である。該方法は、既知/前回測定した検体について断面積をライブラリデータベースに保存することを含む。そして、相対吸光度が、特定の波長での吸光度によって、クロマトグラムにおいてまたはクロマトグラムの特定の時間領域内で各吸光度スペクトルを正規化することによって、構築される。該方法は、相対吸光度を、データベースにおける断面積スペクトルを正規化することによって得られた相対断面積と比較することをさらに含む。好ましくは、相対断面積は、相対吸光度スペクトルを構築するのに使用したものと同じ波長を用いて生成される。
【0166】
開示したさらに他の方法が、GC/VUVクロマトグラムにおいて検体成分を識別/測定するための方法である。該方法は、既知/前回測定した検体について断面積をライブラリデータベースに保存することを含む。該方法は、測定したサンプルでの可能性のある存在に従って、多数の候補検体を選択することをさらに含む。該方法は、推定した検体保持時間に従って、クロマトグラム上の特定の時間ウインドウ内に関連した候補検体の数を精選することと、前回ステップで識別された時間ウインドウ内で吸光度スペクトルを用いて、検体量(分子の絶対数または濃度)のセットを最適化する回帰/フィッティング手順を実施することとを含む。
【0167】
GC効率を監視するために、既知のサンプルを利用する方法が開示される。GC検出器が、典型的には、予期した測定範囲に及ぶ検体濃度を持つ既知のサンプルのセットを用いて較正される。こうした較正が、検体濃度に対する検出器応答での変動、そしてGC注入および分離プロセスでのシステム誤差を考慮する。これらは、インジェクタからカラムへのサンプルの移送での変動、分流または分岐比の誤差、漏れに起因した損失、カラム効率などを含むことがある。これらの変動は、異なるGCでは異なることがあり、単一GCについて時間とともに変化することがある。ここで開示したように、測定した検体の量に関するVUV検出器応答は、外部標準の使用によって較正する必要がない。即ち、測定した透過率または吸光度は、所定のサンプルセル幾何形状内にある所定量の特定の検体についていつも同じである。さらに、既知の検体断面積を用いて、VUV検出器は、GC移送/分離プロセスの効率について何も知る必要なしで、検出器に実際に到達する注入した検体の量を決定できる。
【0168】
一実施形態において、GC分離プロセスの後、VUV検出器に到達する検体の量を測定することによって、サンプルの調製および特徴付けが可能である。同じサンプルは、後で再び測定でき、測定した検体の量の差は、GCプロセスでの上記変動の差に起因すると考えられる。代替として、サンプルは、2つのGC/VUVシステムにおいて測定でき、GCの効率が、各ケースにおいて検出器に到達する検体の量を比較することによって比較できる。
【0169】
本発明の更なる変更および代替の実施形態が、本説明の観点から当業者に明らかになるであろう。従って、本説明は、実例として考えられるだけであり、当業者に本発明を実施する方法を教示する目的のためである。ここで図示し説明した本発明の形態は、現在好ましい実施形態として採用されることと理解すべきである。等価な要素が、ここで図示し説明したものについて置換してもよく、本発明の特定の特徴が、他の特徴の使用から独立して利用してもよく、全ては、本発明のこの説明の利益を有した後、当業者にとって明らかになるであろう。