(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、本発明に従った電池1が示されている。電池は再充電式又は非再充電式でもよい。本明細書で使用される用語「電池」は電池以外に、セル又は蓄電池を意味する。
【0016】
電池1は、セパレータ6によって互いに隔離された正極2及び負極4を備える。電池1は更に、2つの集電器、即ち正極集電器8及び負極集電器10を備える。正極2は正極集電器8とセパレータ6との間に配置し、負極4はセパレータ6と負極集電器10との間に配置する。
【0017】
セパレータ6は通常、ポリマー又は複合材料から形成される。
【0018】
極度の可撓性が要求される場合、正極及び負極集電器8及び10はステンレス鋼、又は例えば少なくとも部分的に非晶質な金属材料から形成してもよい。このような非晶質金属集電器は例えば欧州特許第2795702号(特許文献2)に記載されている。
【0019】
電池1は更に、正極2と負極4との間でイオン交換するための電解液を含む。
【0020】
更に電池には、正極2、負極4及びセパレータ6の周縁に配置され、これらの構成要素の周囲にフレームを形成する非導電性封口ガスケット12が備えられる。封口ガスケット12は、正極集電器8と負極集電器10との間に配置され、正極集電器8の内周縁を負極集電器10の内周縁に接続する。従って、封口ガスケット12ならびに集電器8及び10が電池1のカプセル封入装置を形成している。
【0021】
封口ガスケット12の厚さは正極、セパレータ及び負極の厚さに等しい。通常、電池1の総厚は約0.4mmであり、集電器8及び10の厚さは1μm〜50μmの範囲で変更可能である。その厚さは5μm〜30μmの範囲内にすることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、封口ガスケット12は少なくとも部分的に粘弾性エラストマー材料から形成される。このような粘弾性エラストマー材料は、同等の効果を有する別の方法では加硫又は架橋されないことが有利である。特に、硫黄で加硫されたことはない。このような粘弾性エラストマー材料のヤング率は500Pa〜100kPaの範囲内にあり、ずり弾性率は250Pa〜100kPaの範囲内にあることが好ましい。封口ガスケット全体がこの粘弾性エラストマー材料から形成されていることが好ましい。
【0023】
本発明で利用する材料に粘弾性があるため、ヤング率及びずり弾性率についてこれらの数値は、それぞれ10mm/分及び2mm/分のけん引力において、それらがそれぞれ0〜2%及び0〜1%である応力開始時に測定する。
【0024】
好ましくは、本発明で利用される粘弾性エラストマー材料は50N/cm
2(ASTM D‐897、72時間後、50mm/分、6.45cm
2、25℃)を超える引張強度、及び50N/cm
2を越える動的ずり抵抗(ASTM D‐1002、72時間後、12.7mm/分、6.45cm
2、25℃)を示す。
【0025】
ヤング率及びずり弾性率の数値は目的の用途に適合させる。特に、腕時計用バンドなどの非常に高い可撓性を必要とする用途では、低い数値を推奨範囲から選択している。このような場合、エラストマー材料のヤング率は500Pa〜3kPaの範囲内にあり、ずり弾性率は250Pa〜3kPaの範囲内にある。クレジットカードなどの低い可撓性を必要とする用途では、推奨範囲から高い数値を利用することが可能である。
【0026】
特に有利な方式では、本発明で利用するエラストマー材料は、500〜900kg/m
3、好ましくは600〜800kg/m
3の範囲内にある密度を有する発泡体であってもよい。
【0027】
封口ガスケットは、接着剤結合によって正極集電器8及び負極集電器10の周縁に取り付けてもよく、例えば、接着剤はエラストマー材料により提供される可撓性を損なわないように適合されている。
【0028】
特に有利な方式では、本発明で利用するエラストマー材料は感圧性又は自己粘着性接着剤である。これにより電池の簡単で安全な高速カプセル封入が可能になる。このような材料は自己回復性でもある。
【0029】
本発明で利用する粘弾性エラストマー材料は、アクリル、天然ゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ニトリル、スチレンブロック共重合体(SBC)(スチレン‐ブタジエン‐スチレン(SBS)、スチレン‐エチレン/ブチレン‐スチレン(SEBS)、スチレン‐エチレン/プロピレン(SEP)及びスチレン‐イソプレン‐スチレン(SIS)など)及びビニルエーテルから成る群より選択することが好ましい。
【0030】
本発明で利用する粘弾性エラストマー材料は、感圧性接着アクリル発泡体であることが好ましい。
【0031】
更に、本発明で利用する粘弾性エラストマー材料は、上記粘弾性エラストマー材料と上記正極及び負極集電器との間の接着力が上記粘弾性エラストマー材料の凝集力より強くなるように選択する。
【0032】
集電器の一方又は他方の内面を活性化することにより、正極及び負極集電器8及び10の内周縁における粘弾性エラストマー材料の接着性を改善することも可能である。脱脂,表面を粗くするための摩耗、プラズマ/コロナ処理、定着剤の付着の公知の技術を採用してもよい。
【0033】
粘弾性エラストマー材料は、様々な要素の配置を正確にし、保護フィルムの剥離を容易にし、最終的に層の接着に必要な圧力を加えるロールツーロール法により理想的に適用される。
【0034】
本発明で利用される粘弾性エラストマー材料は、2つの正極及び負極集電器がずれるように引張応力及び圧縮応力を吸収することが可能である。更に、ずり応力は通常の引張/圧縮応力に変換され、ガスケットの反りをもたらし、このことは実際、この応力の電池長への依存を解消する。これは、曲率半径より大幅に長い電池が達成できることを意味する。
【0035】
よって、本発明に従った電池は、総厚0.4mmの電池内で厚さ25マイクロメートルの2つの完全に非晶質な金属集電器を使用して1cm曲率半径の屈曲に少なくとも5,000回耐えることが可能であり、その集電器は損傷することもない。現在市販されている薄膜電池の中で、1cm曲率半径の屈曲を150回持ち堪えられるものはない。
【0036】
本発明の電池の構成要素は、非水性溶媒中の電解液、又は固体電解液で動作させることが選択できる。この種の化学物質は従来から電池に使用されており、当業者に公知である。
【0037】
しかし、特に好ましい有利な方式では、本発明に従った電池に使用される電解液は、電池の動作が水性化学に基づくように水溶液中の塩の形態を取る。
【0038】
そのような場合、負極及び正極は、電位差が水の安定性の枠内にある電気活性材料を含むことが有利である。これにより、酸素又は水素を形成して電池を急速に劣化させる水の酸化又は還元は起こらない。従って、負極と正極との間の電圧は通常1.5V前後である。
【0039】
例えば、電池構成要素は、電池が水性電解液を有するNi‐MH型のもの、又は水性媒体中のリチウムイオン型のもの、例えば(−)LISICON/LiNO
3/LiMn
2O
4(+)になるような構成要素とする。
【0040】
電解液はまた、その電気化学的安定性を増加させる添加剤を含有してもよい。
【0041】
電池構成要素全てを湿らせるために、電解液はエラストマーガスケット全体に注入可能であることが有利である。材料には自己回復性があるため、注入後、ガスケットは再び閉じる。
【0042】
電解液の飽和蒸気圧が平均空気蒸気圧(相対湿度)と同等になり、通常の使用条件で電池が±20%、好ましくは±10%以内になるように、電解液塩濃度を選択することが有利である。従って、周囲空気が通常の使用条件より乾燥してくると、水分は電池から蒸発し、電解液を濃縮して平衡相対湿度をより低い値にシフトさせる効果を奏する。周囲空気が通常の使用条件より湿潤してくると、電池は水分を吸収し、電解液を希釈して平衡相対湿度を高める効果を奏する。これらの変更は可逆的であり、電池寿命を確実に延長する。
【0043】
従って、吸水性が有害である非水系電池とは異なり、本発明に従った水系電池は、異なる周囲空気条件に適合するように塩濃度を選択することによって最適化することが可能である。非常に高い可撓性が得られることに加えて、本発明で使用されるエラストマー封口ガスケットは電池の体積変化をも吸収し、それにより水分条件とは無関係にその適切な動作を確実にすることが可能である。
【0044】
本発明に従った電池は、例えば時計用途、又はスマートカードもしくは電気通信の用途など、様々な用途に使用可能である。
【0045】
以下の例は本発明を説明するものであり、それによりその範囲を限定するものではない。
【0046】
活性材料は、以下の刊行物に従って合成する:
‐負極LiTi
2(PO
4)
3:C.Wessellsら、J.Electrochem.Soc.,Vol.158(3)、p.A352(2011年)(非特許文献1)
‐正極LiMn
2O
4:W.Liuら、J.Electrochem.Soc.,Vol.143(3),p.879(1996年)(非特許文献2)、但し、7.5mol%の硝酸マンガン(II)は硝酸クロム(III)に置き換えている。
【0047】
電極の調製:
負極:300rpmで3時間、遊星型ボールミルにおいて(20mm直径めのうボール)、LiTi
2(PO
4)
3とカーボンブラック(Super P)を1:1の割合で粉砕することにより複合体を形成する。次に、8%PVDF(Kynar)及び4%グラファイト(Timrex MX15)と共にめのう乳鉢で粉砕を行い、次いでNMPを添加し、PVDFが溶解して均質な分散物が得られるまで粉砕を継続する(固形分約50%)。
【0048】
正極:LiCr
0.15Mn
1.85O
4を、8%PVDF(Kynar)及び4%グラファイト(Timrex MX15)と共にめのう乳鉢で粉砕し、次いでNMPを添加し、PVDFが溶解して均質な分散物が得られるまで粉砕を継続する(固形分約50%)。
【0049】
負極及び正極集電器は、厚さ0.028mmの316Lステンレス鋼シートであり、イソプロパノールで脱脂し、表面を粗面化して接着性を改善するために摩耗させる。その後、それらを封口ガスケット用に意図された場所(例えば、電極周囲の5mm境界線)でマスキングテープ(例えばNitto PS‐2)によりマスキングし、次いで所望の厚さ、例えば0.2mmのバー及びスペーサを使用して上記の分散物でコートする。
【0050】
電極を周囲温度で12時間乾燥し、次いで100N/mmの圧力で積層する。
【0051】
セルの組立て:
上記のように測定した約2500Paのヤング率及び約300Paのずり弾性率を示し、厚さが0.4mmの独立気泡アクリル発泡体の中央層を備えた3M(商標)から販売されているVHB(商標)接着粘弾性エラストマーテープのストリップを切断して所望のガスケット寸法にする(例えば、外寸50mm×25mm及び内寸40mm×15mmの矩形フレーム)。
【0052】
このフレームはマスキングした場所で正極集電器に接着接合する。
【0053】
ガラスマイクロファイバーセパレータ(Whatman GF/D)に電解液:1%のビニレンカーボネートも含有するLi
2SO
4の2M水溶液を含浸させる。
【0054】
負極は、マスキングした場所で封口ガスケット/フレームが再度鋼集電器に付着するように、上面に配置する。
【0055】
封口ガスケットが鋼によく接着するように、20N/cm
2の圧力を加える。
【0056】
保管の1日後、外径約0.2mmの針(例えば、Hamilton HA‐7750‐22)を有するシリンジを介して封口ガスケットから注入することにより、電解液の体積を補充して15マイクロリットル/cm
2にする。
【0057】
図2は、サイクル数の関数として得られた電池容量を示し、放電率はサイクル1〜19では1mA、次いでサイクル20以降は3mAである。
【0058】
図3はC/2での40回の放電(左の曲線の第1部分)と、それに続く5Cでの100回の放電(右の曲線の第2部分)を示し、これは100サイクル以降は、得られた電池の安定性が優れていることを実証している。
【0059】
屈曲試験:
本発明に従って得られた電池を2枚のPETフィルムの間に挟む。各フィルムの一端を、所望の曲率半径の2倍に相当する直径のシリンダ上に固定する。他端は、電池を屈曲させるため、すなわち円筒に押し付けるために十分に重い500gの平衡錘に固定する。
【0060】
その後、電池を一定回数、シリンダの周囲に巻く。各屈曲の後に回転の方向を変えることにより、凸状屈曲は凹状屈曲と交互に形成することが可能である。
【0061】
本発明に従った電池は、損傷させることなく、周波数0.1Hz、曲率半径1cmで5000回交互に屈曲させることが可能である。