(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記繊維は、コア−クラッド(core-cladding)型の複合繊維の形態で存在し、室温(25℃)において固体分散媒の形態である、前記クラッドを形成する前記高分子は、室温(25℃)において固体分散相の形態であるシリコーンポリマーを0.1ないし20重量%含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリマー繊維。
【発明を実施するための形態】
【0012】
高分子
分散媒を形成する本発明に係る合成高分子は、好ましくは、熱可塑性高分子、特に熱可塑性縮重合体を含み、特に好ましくは、いわゆる合成バイオポリマーを含み、特に好ましくは、いわゆるバイオポリマー系の熱可塑性縮重合体を含む。
【0013】
本発明において、「熱可塑性高分子」の用語は、特定の温度幅、好ましくは、25℃〜350℃の範囲内で変形することができる樹脂(熱可塑性)を指す。この過程は可逆的であり、すなわち、過加熱によるその材料の熱分解が開始されない限りにおいて、この過程は任意に高い頻度で、溶融した状態となる限り、冷却および再加熱することにより繰り返すことができる。これは、熱可塑性高分子と、熱硬化性樹脂と、エラストマーとの間の違いである。
【0014】
本発明の思想内において、以下の高分子は、好ましくは、「熱可塑性高分子」の用語によって理解される:
アクリロニトリルエチレンプロピレン(ジエン)スチレン共重合体、アクリロニトリルメタクリル酸共重合体、アクリロニトリルメタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル塩化ポリエチレンスチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリロニトリルエチレンプロピレンスチレン共重合体、芳香族ポリエステル、アクリロニトリルスチレンアクリロエステル(acryloester)共重合体、ブタジエンスチレン共重合体、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート、セルロースアセトプロピオネート、水和セルロース、カルボキシメチルセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメタクリレート共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンブテン共重合体、エチルセルロース、ポリスチレン、ポリフルオロエチレンプロピレン、メタクリル酸メチルアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、メタクリル酸メチルブタジエンスチレン共重合体、メチルセルロース、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド6−3−t、ポリアミド6−テレフタル酸共重合体、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6i、ポリアミドmxd6、ポリアミドpda−t、ポリアミド、ポリアリールエーテル、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリールアミド、ポリアミノ−ビス−メレイミド、ポリアリーレート、ポリブテン−1、ポリブチルアクリレート、ポリベンズイミダゾール、ポリ−ビス−マレイミド、ポリオキサジアゾベンズイミダゾール(polyoxadiazobenzimidazole)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリエステルカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンオキシド、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリイソブチレン、ポリイソシアヌレート、ポリイミドスルホン、ポリメタクリルイミド、ポリメタクリレート、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体、スチレン無水マレイン酸ブタジエン共重合体、スチレンメタクリル酸メチル共重合体、スチレンメチルスチレン共重合体、スチレンアクリロニトリル共重合体、塩化ビニルエチレン共重合体、塩化ビニルメタクリレート共重合体、塩化ビニル無水マレイン酸共重合体、塩化ビニルマレイミド共重合体、塩化ビニルメタクリル酸メチル共重合体、塩化ビニルオクチルアクリレート共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル塩化ビニリデン共重合体および塩化ビニル塩化ビニリデンアクリロニトリル共重合体。
【0015】
紡糸繊維の製造に非常に適している高温溶融熱可塑性高分子(Mp≧100℃)が、特に適している。適した高温溶融熱可塑性高分子は、例えば、ポリヘキサメチレンアジピンアミド等のポリアミド、ポリカプロラクタム、芳香族または部分的な芳香族ポリアミド(「アラミド」)、例えば、ナイロン等の脂肪族ポリアミド、部分的な芳香族または完全な芳香族ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、例えば、ポリエーテルケトン(PEK)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエーテルおよびケト基を有する高分子、または、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィンである。
【0016】
高温溶融熱可塑性高分子のなかでも、溶融−紡糸可能な高分子が特に好ましい。
【0017】
溶融−紡糸可能なポリエステルは、主として、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジオールに由来する構成単位から構成される。一般的な芳香族ジカルボン酸構成単位は、特に、テレフタル酸およびイソフタル酸のベンゼンジカルボン酸の二価のラジカルであり;一般的なジオールは、2〜4の炭素原子を有し、エチレングリコールおよび/またはプロパン−1,3−ジオールが特に好ましい。
【0018】
少なくとも95mol%ポリエチレンテレフタレート(PET)を有するポリエステルが特に好ましい。
【0019】
かようなポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、通常、ジクロロ酢酸中、25℃における溶液として測定された固有粘度(IV)が、0.4〜1.4(dl/g)に相当する分子量を有する。
【0020】
本発明において、「合成バイオポリマー」の用語は、生物起源原料(再生可能な原料)から構成される材料を指す。したがって、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリ塩化ビニル(PVC)等の従来の石油系材料または樹脂からは区別される。
【0021】
本発明によれば、特に好ましい合成バイオポリマーは、乳酸、ヒドロキシ酪酸および/またはグリコール酸の繰り返し単位、好ましくは乳酸および/またはグリコール酸の繰り返し単位、特に好ましくは乳酸の繰り返し単位を含む、いわゆるバイオポリマー系熱可塑性縮重合体である。この場合、ポリ乳酸が特に好ましい。
【0022】
本明細書中、「ポリ乳酸」は、乳酸ユニットから構成される重合体として理解される。かようなポリ乳酸は、通常、乳酸の縮合により製造されるだけでなく、適当な条件下、ラクチドの開環重合によってもまた得られる。
【0023】
本発明によれば、特に適したポリ乳酸は、ポリ(ジオキサノン)の他、ポリ(グリコリド−コ−L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含む。かような高分子は、例えば、ベーリンガーインゲルハルムファーマKG社(Boehringer Ingelheim Pharma KG)(ドイツ)から商品名Resomer(登録商標)GL903、Resomer(登録商標)L206S、Resomer(登録商標)L207S、Resomer(登録商標)L209S、Resomer(登録商標)L210、Resomer(登録商標)L210S、Resomer(登録商標)LC703S、Resomer(登録商標)LG824S、Resomer(登録商標)LG855S、Resomer(登録商標)LG857S、Resomer(登録商標)LR704S、Resomer(登録商標)LR706S、Resomer(登録商標)LR708、Resomer(登録商標)LR927S、Resomer(登録商標)RG509SおよびResomer(登録商標)X206Sが市販されている。
【0024】
本発明の目的に特に有利なポリ乳酸は、特に、ポリ−D−、ポリ−L−またはポリ−D,L−乳酸である。
【0025】
特に好ましい実施形態において、分散媒を形成する合成高分子は、乳酸系熱可塑性縮重合体である。
【0026】
本発明に用いられるポリ乳酸は、好ましくは、狭分散性のポリスチレン標準を対象として、または末端基滴定によりゲルパーミエーションクロマトグラフィによって決定される数平均分子量(Mn)が、最小500g/mol、好ましくは最小1,000g/mol、特に好ましくは最小5,000g/mol、適切には最小10,000g/mol、特には最小25,000g/molである。一方、数平均分子量は、好ましくは最大1,000,000g/mol、適切には最大500,000g/mol、より有利には最大100,000g/mol、特には最大50,000g/molである。最小10,000g/mol〜500,000g/molの範囲内の数平均分子量であると、本発明の思想において特に適切である。
【0027】
好ましい乳酸高分子、特に、ポリ−D−、ポリ−L−またはポリ−D,L−乳酸の、好ましくは、狭分散性のポリスチレン標準を対象として決定される重量平均分子量(Mw)は、750g/mol〜5,000,000g/molの範囲内であると好ましく、5,000g/mol〜1,000,000g/molの範囲内であると好ましく、10,000g/mol〜500,000g/molの範囲内であると特に好ましく、30,000g/mol〜500,000g/molの範囲内であると特に好ましく、これらの高分子の多分散性は、好ましくは1.5〜5の範囲内である。
【0028】
特に適した乳酸高分子、特に、ポリ−D−、ポリ−L−またはポリ−D,L−乳酸の、クロロホルム中、25℃、0.1%高分子濃度で測定された固有粘度は、0.5dl/g〜8.0dl/gの範囲内であり、好ましくは、0.8dl/g〜7.0dl/gの範囲内であり、特には1.5dl/g〜3.2dl/gの範囲内である。
【0029】
さらに、特に適した乳酸高分子、特に、ポリ−D−、ポリ−L−またはポリ−D,L−乳酸の、ヘキサフルオロ−2−プロパノール中、30℃、0.1%高分子濃度で測定された固有粘度は、1.0dl/g〜2.6dl/gの範囲内であり、特には、1.3dl/g〜2.3dl/gの範囲内である。
【0030】
本発明の思想内において、さらに、高分子、特に、20℃よりも高いガラス転移温度を有する熱可塑性高分子が有利であり、さらに好ましくはガラス転移温度が、25℃よりも高く、より好ましくは30℃よりも高く、特に好ましくは35℃よりも高く、特に好ましくは40℃よりも高い熱可塑性高分子である。本発明の特に好ましい実施形態の思想の範囲内において、高分子のガラス転移温度は、35℃〜55℃の範囲内であり、特に好ましくは、40℃〜50℃の範囲内である。
【0031】
さらに、50℃よりも高い融点を有する高分子、より好ましくは少なくとも60℃、好ましくは150℃よりも高く、特に好ましくは160℃〜210℃の範囲内であり、特に好ましくは175℃〜195℃の範囲内である融点を有する高分子が特に適している。
【0032】
この場合において、高分子のガラス転移温度および融点は、好ましくは、示差走査熱量測定、略してDSCによって決定される。これに関連し、以下の手法が特に有効であることが判明している:
窒素下においてMettler−Toledo DSC 30Sを用いてDSC測定を行う。キャリブレーションは、好ましくは、インジウムを用いておこなう。測定は、好ましくは、無酸素の乾燥窒素下でおこなう(流速:好ましくは、40mL/分)。試料の重量は、好ましくは、15mgないし20mgの間で選択される。測定のため、試料を、初めに0℃から、好ましくはその高分子の融点の超える温度まで加熱し、その後、0℃まで冷却し、再度0℃から前記温度まで加熱速度を10℃/分として加熱する。
【0033】
ポリエステル、特に乳酸高分子は、熱可塑性高分子として特に好ましい。
【0034】
ポリマー繊維
本発明に係るポリマー繊維は、例えば、いわゆる短繊維といった有限(finite)繊維であっても、また、無限(infinite)繊維(フィラメント)であってもよい。より良好な分散性のため、繊維は、短繊維であると好ましい。前記短繊維の長さは、いかなる根本的な制限も受けないが、通常1〜200mm、好ましくは2〜120mm、特に好ましくは2〜60mmである。本発明に係る、分散媒としての合成高分子と、さらなる分散相としてのシリコーンとの組み合わせの結果として、特に短い繊維は、十分に切断することができる。これにより、5mm以下、特に4mm以下の長さの繊維長が理解される。
【0035】
本発明に係るポリマー繊維、好ましくは短繊維のそれぞれの繊度(titre)は、0.3ないし30dtexであり、好ましくは0.5〜13dtexである。ある用途において、繊度が0.3ないし3dtexであり、かつ、繊維長<10mm、特には<8mm、特に好ましくは<6mm、特に好ましくは<4mmであると特に好適である。
【0036】
上記繊度は、DIN EN ISO1973に従って決定された。
【0037】
ポリマー繊維は、複合繊維であってもよく、上記繊維は、成分A(コア)および成分B(クラッド:cladding)から構成される。成分A(コア)は、少なくとも一の熱可塑性高分子を含み;成分B(クラッド)は、室温(25℃)でシリコーン用の固体分散媒を形成する少なくとも一の熱可塑性高分子を含み、上記シリコーンは、固体状のさらなる分散相を形成し、成分Bに対して0.1〜20重量%の量で存在する。さらなる実施形態において、固体状のさらなる分散相を形成する上記シリコーンは、さらにコア中に存在する。
【0038】
さらなる実施形態において、成分A中の熱可塑性高分子の融点は、少なくとも5℃であり、好ましくは、少なくとも10℃であり、特に好ましくは、少なくとも20℃であり、成分B中の熱可塑性高分子の融点よりも高い。成分A中の熱可塑性高分子の融点は、好ましくは、少なくとも100℃であり、好ましくは少なくとも140℃であり、特に好ましくは少なくとも150℃である。
【0039】
複合繊維に用いられる熱可塑性高分子は、上述の高分子を含む。
【0040】
シリコーン
本発明に係るポリマー繊維は、0.1ないし20重量%、好ましくは0.5〜3重量%のシリコーンを分散相として含む。シリコーンは、室温(25℃)で、分散した形態で存在し、熱可塑性処理、例えば、溶融押出機中で混合することにより得られる圧縮された含有物は、ポリマー繊維のポリマーマトリックス中で実質的に均一に分散される。
【0041】
好ましい実施形態において、シリコーンは、担持された形態、特に、粒子状のシリケート担体上、好ましくはケイ酸、特には焼成ケイ酸上に担持された形態で存在し、なかでも、好ましい焼成ケイ酸は、そのBETにより決定される比表面積が、最小30m
2/g、特には最小50m
2/gである。適当な焼成ケイ酸は、例えば、Aerosil(登録商標)(エボニック)またはHDK(ワッカーケミーAG)に基づく。担体の割合は、シリコーンおよび担体の合計量に対して、35重量%以下である。
【0042】
本発明の分散相として用いられるシリコーンは、シリコーンポリマーを含む。シリコーンポリマーは、ケイ素原子が有機ラジカルで飽和したシロキサンユニットの高分子として理解される。
【0043】
シリコーンポリマーは、環状ポリシロキサン、線状ポリシロキサン、分岐状ポリシロキサン、架橋ポリシロキサン、およびこれらの混合物であってもよい。
【0044】
線状ポリシロキサンは、好ましくは、以下の式を有する化合物として理解される:
【0046】
Rは、C1〜C10炭化水素ラジカル、アルキル、アリール等である。
【0047】
環状ポリシロキサンは、好ましくは、以下の式を有する化合物として理解される:
【0049】
Rは、C1〜C10炭化水素ラジカル、アルキル、アリール等である;
nは、少なくとも4の整数であり、好ましくは、4、5または6である。
【0050】
分岐状ポリシロキサンは、好ましくは、以下の式を有する化合物として理解される:
【0052】
Rは、C1〜C10炭化水素ラジカル、アルキル、アリール等である;
nは、それぞれ同じであるかまたは異なり、10ないし10000の数を表す。
【0053】
架橋ポリシロキサンは、好ましくは、以下の式を有する化合物として理解される:
【0055】
Rは、C1〜C10炭化水素ラジカル、アルキル、アリール等である。
【0056】
好ましく用いられるシリコーンポリマーは、線状シリコーンポリマーであり、好ましくは、非架橋線状シリコーンポリマーである。
【0057】
好ましく用いられるシリコーンポリマーは、線状高分子シリコーンポリマーであり、好ましくは、非架橋の線状高分子シリコーンポリマーである。
【0058】
「高分子シリコーン」の用語は、本発明に関連して、平均分子量が、少なくとも100,000g/molであり、好ましくは少なくとも150,000g/molであり、特に好ましくは少なくとも200,000g/molであり、最大平均分子量が900,000g/mol以下であり、好ましくは700,000g/mol以下であり、特に好ましくは650,000g/mol以下であり、特には600,000g/mol以下であるシリコーンとして理解される。
【0059】
好ましい実施形態において、高分子非架橋線状シリコーンポリマーは、その動的粘度(DIN 53018に従って25℃にて測定される)が、少なくとも10,000Pa・s、好ましくは少なくとも15,000Pa・sであり、特に好ましくは少なくとも17,500Pa・sであり、最大が60,000Pa・sであり、好ましくは最大が55,000Pa・sであり、特に好ましくは最大が50,000Pa・sであり、特には最大が45,000Pa・sであるものが用いられる。
【0060】
動的粘度を決定するために、超高分子量シリコーンポリマーは、任意に存在する担体から遊離される。適切な方法は、FAO JECFA Monographs 5 (2008)に開示されている。
【0061】
好ましい実施形態において、高分子非架橋線状シリコーンポリマーは、25℃にて測定される動粘性率が、少なくとも10,000,000cStであり、好ましくは少なくとも15,000,000cStであり、特に好ましくは少なくとも17,500,000cStであり、最大が60,000,000cStであり、好ましくは最大が55,000,000cStであり、特に好ましくは最大が50,000,000cStであり、特には、最大が45,000,000cStであるものが用いられる。
【0062】
好ましい高分子シリコーンオイルの例としては、SS4267またはBaysilone-Oel M 2000000(モメンティブ)、KF-96H-300000(信越シリコーン)、PMX-200 Silicone Fluid、500000cSt.(ダウコーニング)、Genioplast(ワッカー)およびRhodorsil Ol 47 V 300000(ブルースター)といった市販品が挙げられる。末端水酸基ポリシロキサン(PDM-シロキサン)の例としては、CAS番号70131-67-8のBays. Abhaesive/Release Coat. ZW PR/OH (モメンティブ)またはUC 107(UChem)といった市販品が挙げられる。
【0063】
好ましい実施形態において、高分子の非架橋線状シリコーンポリマーは、25℃で測定される密度が、0.76ないし1.07g/cm
3であり、特に好ましくは0.9〜1.07g/cm
3であり、特には0.95〜1.07g/cm
3であるものが用いられる。
【0064】
本発明に係るポリマー繊維において分散相として用いられるシリコーンは、水中の繊維の分散性を大幅に改善する。一方、本発明に係る繊維は、極めて早く分散し、かつ、かなり長時間にわたって分散した状態が維持される。さらに、分散された繊維は、非常に均一に分散して存在し、本発明に係る繊維に加え、固体粒子状の粒子、例えば鉱物粒子が追加的に存在している分散液を安定化させるのにもまた適している。繊度が0.3ないし3dtexであり、かつ、繊維長が<10mm、特には、<8mm、特に好ましくは<6mm、特に好ましくは<4mmである本発明に係るポリマー繊維は、本実施形態に適している。
【0065】
本発明に係るポリマー繊維において分散相として用いられるシリコーンは、繊維を形成する溶融状態の高分子(分散媒)に添加される。この添加は、直接的に、または、いわゆるマスターバッチによって行うことができる。
【0066】
本発明に係る合成高分子繊維は、常法により製造される。初めに、必要に応じて合成高分子を乾燥させ、押出機に供給する。マスターバッチとしてシリコーンもまた用いる場合、これもまた供給を同時にまたは別々に行うことができる押出機に供給する。シリコーンは、その他の方法で押出機に添加されてもよい。その後、溶融した材料を適当なノズルを備えた通常の装置によって紡糸するが、分散媒を形成する高分子によって、使用温度と共に押出機中のそれぞれの滞留時間が決定される。ノズル外表面における排出速度は、所望の繊度を有する繊維が製造されるように、紡糸速度に合わせられる。
【0067】
紡糸速度は、固化した糸が引き出される速度と理解される。このようにして引き出される糸は、直接的に延伸に供給されてもよいし、または巻かれるのみであってもよいし、または定着され、その後延伸されてもよい。次いで、常法において延伸される繊維およびフィラメントは、一般的な方法により固定され、短繊維を形成するように所望の長さに切断されてもよい。繊維は、捲縮されなくても、捲縮されてもよく、捲縮された場合、捲縮は、湿式堆積法(低圧着)のために調整されなければならない。
【0068】
形成される繊維は、円形、楕円形、または他の適当な断面を有していてもよく、例えば、ダンベル形状、インゲン豆形状、三角形または三もしくは多葉性断面等の他の形状を有していてもよい。中空繊維であってもよい。二以上の高分子の繊維もまた使用することができる。
【0069】
このようにして製造される繊維フィラメントは、糸を形成するために結合され、そしてこれらの糸は、次にトウ(tow)を形成する。これらのトウは、さらなる処理のために初めに、缶の中に定着される。缶内に中間的に保存されたトウは取り出され、大きなトウが製造される。次いで、大きなトウは、通常、10〜600ktexを有し、好ましくは10〜110m/分の搬入速度の搬送ライン上で従来の方法を用いて延伸されうる。ここで、延伸を促進する一方、その後の特性に不都合に影響しない前処理を行ってもよい。
【0070】
延伸倍率は、好ましくは、1.25〜4であり、特には、2.5〜3.5である。延伸中の温度は、トウが延伸されるガラス転移温度の範囲内であり、例えば、ポリエステルの場合、40℃ないし80℃である。
【0071】
延伸は、一段式または必要に応じて二段式の延伸工程(この事項については、例えば、米国特許第3,816,486を参照)で行ってもよい。延伸前および延伸中、従来の方法を用いて、一以上の被覆剤を塗布してもよい。
【0072】
任意で行われる延伸された繊維の捲縮/表面への風合いの付加(texturing)のため、それ自体が公知の捲縮機械を用いた機械的な捲縮による従来法を用いることができる。蒸気によって促進された繊維捲縮のための機械的な装置、例えば、スタッファボックス(stuffer box)が好ましい。しかしながら、他の方法により捲縮された繊維もまた用いることができ、したがって、例えば、三次元に捲縮された繊維であってもよい。トウを捲縮するために、初めに、通常50〜100℃、好ましくは70〜85℃、特に好ましくは約78℃といった温度に調整し、トウを1.0〜6.0bar、特に好ましくは約2.0barのラン−インローラーで加圧処理し、0.5〜6.0bar、特に好ましくは1.5〜3.0barの圧力のスタッファボックス内で、1.0ないし2.0kg/分、特に好ましくは1.5kg/分の蒸気で処理する。
【0073】
次いで、平滑なまたは任意に捲縮された繊維は、炉中または熱風気流中、120〜170℃で弛緩され、または固定される。
【0074】
短繊維を製造するために、平滑なまたは任意に捲縮された繊維は取り出され、続いて切断され、任意で硬化され、フロック(flock)としてベール梱包中に保存される。本発明の短繊維は、弛緩後に機械的な切断装置上で切断されると好ましい。トウ型を製造するために、切断作業を省略してもよい。これらのトウ型は、未切断の形態で圧縮してベール梱包中に保存される。
【0075】
捲縮された実施形態において、本発明に従って製造された繊維は、少なくとも2個の捲縮度を有していると好ましく、1cmごとに少なくとも3個の捲縮(捲縮湾曲)を有していると好ましく、好ましくは1cmごとに3個の湾曲から9.8個の湾曲であり、特に好ましくは1cmごとに3.9個の湾曲から8.9個の湾曲である。織物表面を製造する用途において、1cmあたり約5〜5.5個の湾曲である捲縮度の値が特に好ましい。湿式堆積法による織物表面を製造するために、捲縮度は個々に調節される。
【0076】
上記のパラメータ、紡糸速度、延伸、延伸倍率、延伸温度、固定、固定温度、ラン−イン速度、捲縮/表面への風合いの付加等は、分散媒を形成するそれぞれの高分子によって決定される。これらは当業者が通常の範囲内で選択するパラメータである。
【0077】
本発明に係る繊維から製造される織物もまた、本発明の対象である。本発明に係る繊維から製造される織物は、本発明に係る繊維の他、異なる繊維の混合物もまた含んでいてもよい。本発明に係る水系懸濁液の繊維から製造される製品にも同様のことが適用される。本発明に係る繊維の良好な分散性の結果として、かような織物は、湿式堆積法により製造されると好ましい。
【0078】
水中における繊維の改善された分散性に加え、本発明に係るポリマー繊維は、湿式堆積法を用いる織物の製造に特によく適するような、水中に分散された繊維の良好なポンプ圧送性もまた示す。本発明に係る繊維は、固体粒子状の粒子、例えば鉱物粒子の分散性を促進するため、鉱物の仕上げ剤を伴った織物もまた製造することができる。本実施形態には、繊度が0.3ないし3dtexであり、かつ、繊維長が<10mm、特には<8mm、特に好ましくは<6mm、特に好ましくは<4mmである本発明に係るポリマー繊維が適している。
【0079】
これらの湿式堆積法に加え、いわゆるメルトブロー法(melt-blowing method)(例えば、「Complete Textile Glossary, Celanese Acetate LLC, from 2000」または「Chemiefaser-Lexikon, Robert Bauer, 10th edition, 1993」中に記載されている)もまた適している。かようなメルトブロー法は、微細な繊度の繊維または不織布の製造、例えば、衛生分野における応用に適している。
【0080】
「織物」の用語は、したがって、この開示の思想内において、最も広い意味で理解される。当該用語は、表面形成技術によって製造される本発明の繊維を含むすべての構造を含むことができる。かような織物の例としては、不織布、特に湿式不織布、好ましくは短繊維系またはメルトブロー法により製造される不織布が挙げられる。
【0081】
本発明に係る繊維は、本発明に係る添加剤を伴わない繊維と比較して、感触が顕著に改善されることを特徴としており、柔軟性が改善されることにより、区別される。この柔軟性は、特に本発明に係る繊維が人間の肌に触れる用途において非常に重要である。特に、合成バイオポリマー系の繊維は、必要とされる柔軟性を欠いているため、このような用途には不十分であるか、消費者もしくは最終消費者製品の製造者からは拒否されうる。
【実施例】
【0082】
分散性を評価するために、以下の試験方法を開発し、本発明に用いた:
本発明に係る繊維を、長さ2〜12mmに切断する。切断された繊維を、室温(25℃)で、VE水(VEとは、完全に脱塩されたことを示す)で満たされたガラス容器(寸法:長さ150mm;幅200mm;高さ200mm)に入れる。繊維の量は、1リットルのVE水あたり0.25gとする。より良好な評価のために、通常、1gの繊維および4リットルのVE水を用いる。
【0083】
次いで、繊維/VE水混合物を、通常のラボラトリー磁気撹拌機(例えば、IKAMAG RCT)および磁気撹拌棒(80mm)によって少なくとも3分間(回転速度は750〜1500rpm)撹拌し、撹拌機のスイッチを切る。次いで、すべての繊維が分散されているか否かを評価する。
【0084】
繊維の分散挙動は、以下のように評価される:
分散せず(−)
部分的に分散した(〇)
完全に分散した(+)。
【0085】
上記評価は、定義された時間間隔の後に行われる。
【0086】
本発明に係る分散相としてのシリコーン添加剤を含まないが、それ以外は同じである繊維を比較例として用いた。
【0087】
以下の実施例によって本発明を説明するが、その範囲は、これらに限定されない。
【0088】
実施例1
切断長さが6mmであり、繊度(titre)が1.5dtexである(シリコーン添加剤 1.5重量%)、本発明に係る熱可塑性ポリマー繊維(ポリエステル)1gを、上記のように室温(25℃)で分散させ、評価した。
【0089】
比較例として、切断長さが6mmであり、繊度が1.5dtexである熱可塑性ポリマー繊維(ポリエステル)1gを、本発明に係るシリコーン添加剤を添加しないこと以外は同様にして、室温(25℃)で分散させ、評価した。
【0090】
以下の表に、結果をまとめて示す:
【0091】
【表1】
【0092】
図1は、撹拌機停止直後の分散挙動を示す。
図1aは、本発明に係る繊維を、
図1bは、本発明に係る添加剤を含まない同じ繊維を示す。
【0093】
実施例2
切断長さが4mmであり、繊度が1.5dtexであり(シリコーン添加剤 3重量%)、合成バイオポリマー(PLA)系である、本発明に係る熱可塑性ポリマー繊維1gを、上記のように室温(25℃)で分散させ、評価した。
【0094】
比較例として、切断長さが4mmであり、繊度が1.5dtexであり、合成バイオポリマー(PLA)系である、本発明に係る熱可塑性ポリマー繊維1gを、本発明に係るシリコーン添加剤を添加しないこと以外は同様にして、室温(25℃)で分散させ、評価した。
【0095】
以下の表に、結果をまとめて示す:
【0096】
【表2】
【0097】
図2は、撹拌機停止直後の分散挙動を示す。
図2aは、本発明に係る繊維を、
図2bは、本発明に係る添加剤を含まない同じ繊維を示す。
【0098】
実施例3
切断長さが4mmであり、繊度が2dtexであり、コアとして合成バイオポリマー(PLA)、クラッド(cladding)としてポリエチレンホモポリマーを基礎とした(コア/クラッド 50/50)、本発明に係る熱可塑性複合ポリマー繊維(PEクラッド中の本発明に係る添加剤、クラッド中3重量%のシリコーン添加剤)1gを、上記のように室温(25℃)で分散させ、評価した。
【0099】
比較例として、切断長さが4mmであり、繊度が2dtexであり、コアとして合成バイオポリマー(PLA)、クラッドとしてポリエチレンホモポリマーを基礎とした(コア/クラッド 50/50)(それぞれにおいて、シリコーン添加剤は添加されていない)、本発明に係る熱可塑性複合ポリマー繊維1gを、上記のように室温(25℃)で分散させ、評価した。
【0100】
以下の表に、結果をまとめて示す:
【0101】
【表3】
【0102】
図3は、撹拌機停止直後の分散挙動を示す。
図3aは、本発明に係る複合繊維を、
図3bは、本発明に係る添加剤を含まない同じ複合繊維を示す。