【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF NORTH TEXAS HEALTH SCIENCE CENTER AT FORT WORTH
【文献】
Sid E O'Bryant et al,A serum protein-based algorithm for the detection of Alzheimer disease.,Archives of Neurology,,2010年 9月 1日,vol.67, No.9,P1077-1081
【文献】
Sid E O'Bryant et al,Biomarkers of Alzheimer's disease among Mexican Americans,Journal of Alzheimer's disease,,2013年 1月 1日,vol.34, No.4,PP841-849
【文献】
Leigh A Johnson et al,A depressive endophenotype of mild cognitive impairment and Alzheimer's disease.,Plos One,2013年 7月,vol.8, Issue 7,e68848
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンドフェノタイププロファイルが、学習機械(ランダムフォレスト、サポートベクターマシン)、クラスタリングアルゴリズム(因子分析、主成分分析)、値の総和、又は複数の測定値からエンドフェノタイププロファイルスコアを作成するための他の方法を使用して作成される、請求項1に記載の方法。
試料が血液又は血漿試料であり、バイオマーカー測定値の少なくとも1つが、イムノアッセイ、酵素活性アッセイ、蛍光検出、化学発光検出、電気化学発光検出、及びパターン化アレイ、逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応、抗体結合、蛍光活性化ソーティング、検出可能ビーズソーティング、抗体アレイ、マイクロアレイ、酵素アレイ、受容体結合アレイ、対立遺伝子特異的プライマー伸長、標的特異的プライマー伸長、固相結合アレイ、液相結合アレイ、蛍光共鳴移動、又は放射活性標識から選択される方法により得られる、請求項1又は2に記載の方法。
認知欠損を患う患者由来の試料中の1又は2以上のバイオマーカーのレベルを比較するステップの前に、前記1又は2以上のバイオマーカーの前記レベルを含むエンドフェノタイププロファイルデータセットを作成するステップをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
所定の時間、治療された患者から得られた1又は2以上のさらなる血液試料由来のバイオマーカーのレベルを比較して、認知欠損の進行又は治療法の有効性を決定するためのデータを収集するステップ
をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
以下のステップを含み、炎症誘発性エンドフェノタイプに基づき、認知力の改善又は認知欠損の減少のための1又は2以上の抗炎症治療法を選択するためのデータを収集するステップをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
インターロイキン(IL)−7、腫瘍壊死因子−アルファ(TNFα)、IL−5、IL−6、C反応性タンパク質(CRP)、IL−10、テネイシンC(TNC)、細胞間接着分子−1(ICAM1)、凝固因子VII(FVII)、I309、腫瘍壊死因子受容体−1(TNFR1)、アルファ−2マクログロブリン(A2M)、ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド17(TARC)、エオタキシン3、血管細胞接着分子−1(VCAM1)、トロンボポエチン(TPO)、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、IL−18、ベータ−2ミクログロブリン(B2M)、血清アミロイドA1クラスター(SAA)、膵臓ポリペプチド(PPP)、パーキンソンタンパク質7(DJ1)、ベータアミロイド(Aβ)、タウ、及びα−シヌクレインから選択される3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25個のバイオマーカーの、試料中の発現レベルを決定することにより、高炎症誘発性及び低炎症誘発性エンドフェノタイプを作成するステップ;及び
高炎症誘発性又は低炎症誘発性エンドフェノタイプについての前記バイオマーカーの前記発現レベルを決定することにより、高炎症誘発性又は低炎症誘発性エンドフェノタイププロファイルを決定するステップ;及び
前記炎症誘発性エンドフェノタイププロファイルに対して適応である治療法を選択する、或いは前記炎症誘発性エンドフェノタイププロファイルに対して禁忌である治療法を選択しないためのデータを収集するステップ;
以下のステップを含み、代謝性エンドフェノタイプに基づき、認知力の改善のための、或いは認知欠損の減少のための1又は2以上の抗糖尿病薬治療法を選択するためのデータを収集するステップをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
アルファ−2−マクログロブリン(A2M)、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、膵臓ポリペプチド(PPP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、ペプチドYY(PYY)、インスリン、グリコヘモグロビンA1c(HbA1c)、グルコース、トリグリセリド、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL及びvLDLs)、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1(DGAT1)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)−γ、PPARα、コレステロール、体格指数(BMI)、及び腹囲から選択される、試料中の少なくとも5つのバイオマーカーの発現レベルを決定することにより、高代謝性及び低代謝性エンドフェノタイプを作成するステップ;
前記少なくとも5つのマーカーの前記発現レベルを、高代謝性エンドフェノタイプ又は低代謝性エンドフェノタイプのいずれかとして分けるステップ;及び
対象が高代謝性エンドフェノタイプとして選択されるか低代謝性エンドフェノタイプとして選択されるかに基づき、前記対象のための一連の治療を選択するためのデータを収集するステップであって、高代謝性エンドフェノタイプの対象が、抗糖尿病薬による治療から利益を受ける、ステップ;
以下のステップを含み、メキシコ系アメリカ民族の対象のための1又は2以上の抗糖尿病薬治療法を使用する、認知力の改善のための、或いは認知機能障害/欠損の防止のための治療法を選択するためのデータを収集するステップをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
メキシコ系アメリカ民族の対象から得られた試料中の、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、CD40、グルカゴン様タンパク質−1(GLP−1)、IgM、ベータ−2ミクログロブリン、IGF結合タンパク質2、IL−8、ペプチドYY、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、マクロファージ炎症性タンパク質−1(MIP−1アルファ)、膵臓ポリペプチド、グリコヘモグロビンA1c(HbA1c)、グルコース、トリグリセリド、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL及びvLDLs)、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1(DGAT1)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)−γ、PPARα、コレステロール、体格指数(BMI)、及び腹囲から選択される2又は3以上のマーカーの発現レベルを決定することにより、高代謝性及び低代謝性エンドフェノタイプを作成するステップ;
前記2又は3以上のマーカーの前記発現レベルを、高代謝性エンドフェノタイプ又は低代謝性エンドフェノタイプのいずれかとして分けるステップ;並びに
前記対象が高代謝性エンドフェノタイプとして選択されるか低代謝性エンドフェノタイプとして選択されるかに基づき、前記対象のための一連の治療を選択するためのデータを収集するステップであって、高代謝性エンドフェノタイプの対象が、抗糖尿病薬による治療から利益を受ける、ステップ;
以下のステップを含み、神経栄養性エンドフェノタイプに基づき、認知力の改善のための、或いは認知欠損の防止のための1又は2以上の治療法を選択するためのデータを収集するステップをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
対象から得られた試料中の、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、テネイシン3(TN−3)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、白血病阻害因子(LIF)及びニューレグリン−1(GGF)から選択される、2、3、4、5、6又は7個のバイオマーカーの発現レベルを決定することにより、高神経栄養性及び低神経栄養性エンドフェノタイプを作成するステップであって、高神経栄養性及び低神経栄養性の群分けが、前記2、3、4、5、6又は7個のバイオマーカーの前記発現レベルを決定することにより決定される、ステップ;及び
前記2又は3以上のバイオマーカーの発現レベルを高神経栄養性エンドフェノタイプ又は低神経栄養性エンドフェノタイプのいずれかとして分けるステップ;及び
前記対象が、高神経栄養性エンドフェノタイプとして選択されるか低神経栄養性エンドフェノタイプとして選択されるかに基づき、前記対象のための一連の治療を選択するためのデータを収集するステップ;
以下のステップを含み、抑うつ性エンドフェノタイプに基づき、認知力の改善のための、或いは認知欠損の防止のための1又は2以上の抗うつ薬治療を選択するためのデータを収集するステップをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
うつ病評価尺度試験が実施された対象の抑うつ性エンドフェノタイプ(DepE)スコアの上昇が採点されるかどうかに基づき、前記対象のための一連の治療を選択するためのデータを収集するステップ;
高炎症誘発性エンドフェノタイプが、以下の治療薬:NSAIDs、非選択的NSAIDs、選択的NSAIDs、ステロイド、グルココルチコイド、免疫選択的抗炎症性誘導体(ImSAIDs)、抗TNF薬、抗IL5薬又はCRP低下剤のうちの1又は2以上により治療可能である、請求項8に記載の方法。
対象が高炎症誘発性エンドフェノタイプを有しない場合、以下の治療薬:NSAIDs、非選択的NSAIDs、選択的NSAIDs、ステロイド、グルココルチコイド、免疫選択的抗炎症性誘導体(ImSAIDs)、抗TNF薬、抗IL5薬又はCRP低下剤のうちの1又は2以上が禁忌となる、請求項8に記載の方法。
エンドフェノタイププロファイルが、以下の治療薬:抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン2C(5−HT2C)アンタゴニスト、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、及び三環系抗うつ薬、運動と薬物との組合せのうちの1又は2以上により治療される抑うつ性エンドフェノタイププロファイルとして特定される、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
エンドフェノタイププロファイルが、代謝性エンドフェノタイプとして特定され、対象が、高代謝性エンドフェノタイププロファイルと採点された場合、抗糖尿病薬治療が適応となり、対象が、低代謝機能障害群と採点された場合、抗糖尿病薬治療が禁忌となる、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
高代謝性エンドフェノタイププロファイルが、以下の治療薬:抗糖尿病薬、インスリン、GLP−1薬、アミリン関連薬、又は経口血糖降下薬のうちの1又は2以上により治療される、請求項17に記載の方法。
エンドフェノタイププロファイルが、以下の治療薬:神経栄養因子アゴニスト、運動療法、BDNF及びBDNFアゴニスト、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン2C(5−HT2C)アンタゴニスト、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ薬、運動と薬物との組合せ、GDNF及びGDNFアゴニストのうちの1又は2以上により治療される神経栄養性エンドフェノタイプとして特定される、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
以下のステップを含む、1又は2以上のエンドフェノタイプを使用して、認知力の改善のための、及び/又は認知機能障害/欠損の防止のための治療法を選択するためのデータを収集する方法。
対象から得られた試料中の、炎症誘発性、代謝性、神経栄養性、及び抑うつ性エンドフェノタイプを区別するバイオマーカー又はスコアを測定して、1又は2以上のエンドフェノタイプを使用して認知機能障害/欠損を特定するためのデータを収集するステップ;並びに
前記対象が、前記炎症誘発性、代謝性、神経栄養性及び/又は抑うつ性エンドフェノタイプのうちの1又は2以上について、高エンドフェノタイプを有するとして採点されるか低エンドフェノタイプを有するとして採点されるかに基づき、前記対象のための一連の治療を選択するためのデータを収集するステップ;
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の各種実施形態の作成及び使用について以下で詳細に論じるが、本発明は、多様な特定の状況において実施可能である多くの適用可能な発明概念を提供するものと理解されるべきである。本明細書で論じられる特定の実施形態は、単に本発明を作成及び使用する特定の方法を例示するに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
本発明の理解を助けるため、いくつかの語を以下に定義する。本明細書で定義される語は、本発明に関連する当業者により通常理解される意味を有する。「a」、「an」及び「the」などの語は単数形の物を指すだけでなく、特定の実施例が例示のために使用可能である、一般的な種類も含むことを意図される。専門用語は、本明細書では本発明の特定の実施形態について記載するために使用されるが、特許請求の範囲において説明される場合を除き、それらの使用により本発明が限定されることはない。
【0035】
本明細書では、「神経学的疾患」という語は中枢神経系の疾患又は障害を指し、例えば、AD、パーキンソン病、軽度認知障害(MCI,mild cognitive impairment)及び認知症などの神経変性障害など多くのものを含み、神経学的疾患は多発性硬化症、神経障害を含む。本発明は、AD、並びにパーキンソン病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症及びダウン症候群などの他の神経変性障害に伴う認知機能障害の治療において特に使用される。
【0036】
本明細書では、「アルツハイマー病患者」「AD患者」及び「ADと診断された個人」という語は全て、ADと診断された、又はアルツハイマー病(AD,Alzheimer's Disease)の可能性が高いという診断を受けた個人を指す。
【0037】
本明細書では、「パーキンソン病患者」及び「パーキンソン病と診断された個人」という語は全て、PDと診断された、又はパーキンソン病の診断を受けた個人を指す。
【0038】
本明細書では、「前頭側頭型認知症」及び「前頭側頭型認知症と診断された個人」という語は全て、FTDと診断された、又はFTDの診断を受けた個人を指す。
【0039】
本明細書では、「レビー小体型認知症」(DLB,Dementia with Lewy bodies)及び「DLBと診断された個人」という語は全て、DLBと診断された、又はDLBの診断を受けた個人を指す。
【0040】
本明細書では、「ダウン症候群」(DS,Down’s syndrome)及び「ダウン症候群と診断された個人」という語は全て、DSと診断された、又はDSの診断を受けた個人を指す。
【0041】
本明細書では、「神経学的疾患バイオマーカー」という語は神経学的疾患診断バイオマーカーであるバイオマーカーを指す。
【0042】
本明細書では、「神経学的疾患バイオマーカータンパク質」という語は、タンパク質バイオマーカー又はタンパク質バイオマーカーのレベルで機能する物質のいずれかを指す。
【0043】
本明細書では、「認知力」「認知能力」「記憶」「言語」などの語は、認知能力を行使する個人の能力、並びにMCI、AD、DLB、FTD、DLB、多発性硬化症(MS,Multiple Sclerosis)、PD、又はその他の神経学的疾患、及び糖尿病、高血圧、脂質異常症、代謝症候群、うつ病、外傷性脳損傷、統合失調症、双極性疾患を含むがこれらに限定されないその他の医学的及び精神医学的状態、及び加齢の過程そのものに伴う認知低下(slowing)/低下(decline)と診断された結果でありうるそれらの能力の機能不全を指すために、交換可能に使用される。
【0044】
本明細書では、「治療支援」の方法は、神経学的疾患(例えばAD、PD、DLB、FTD、DS又はMCIなど)に伴う認知機能障害の一連の治療に関して、臨床的判断を行うことを助け、確定診断に関して決定的であってもなくてもよい方法を指す。
【0045】
本明細書では、「階層化」という語は、神経学的疾患の特徴に基づき、個人を異なるクラス又は階層に分類することを指す。例えば、アルツハイマー病を有する個人の集団を階層化することは、疾患の重症度(例えば軽度、中度、進行など)に基づいて個人を割り当てることを含む。
【0046】
本明細書では、「予測」という語は、特定の神経学的疾患を発症する個人の可能性が有意に増大していることを見出すことを指す。
【0047】
本明細書では、「生物学的液体試料」は、個人から得られ、診断又はモニターアッセイに使用可能である多様な種類の液体試料を指す。生物学的液体試料は、例えば血液、脳脊髄液(CSF)、尿及び生物由来のその他の液体試料を含む。通常、試料はタンパク質又はポリヌクレオチドなどの特定の成分について、試料中のマーカーの解析が妨げられない限り、安定化試薬処理、可溶化処理又は濃縮処理が行われる。
【0048】
本明細書では、「血液試料」は血液、好ましくは末梢(又は循環)血液由来の生物学的試料を指す。血液試料は、例えば全血、血清又は血漿であってよい。特定の実施形態において、試料が容易に入手可能であり、しばしばその他の試料採取のために得られるため、バイオマーカーの供給源として血清が好ましく、安定で加工をほとんど必要としないため冷却又は電力をほとんど用いずに置いておくのに理想的であり、容易に輸送可能であり、通常医療補助スタッフにより扱われる。
【0049】
本明細書では、「正常な」個人又は「正常な」個人由来の試料は、医師により例えば神経学的疾患などの疾患を有しないと評価された、又は評価されると思われる個人由来の量的データ、質的データ又はその両方を指す。しばしば、「正常な」個人は、評価される個人由来の試料と、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10年の範囲内で年齢適合もされている。
【0050】
本明細書では、「治療」という語は、症状の緩和、改善及び/又は安定化、並びに特定の障害の症状の進行を遅らせることを指す。例えば、ADの「治療」は、(1)ADの1若しくは2以上の症状の除去、(2)ADの1若しくは2以上の症状の低減、(4)ADの症状の安定化(例えばADがより進行した段階へ進行しないことなど)及び(5)ADの1若しくは2以上の症状の発症を遅らせること、ADの1若しくは2以上の症状の進行(すなわち悪化)を遅らせることのうちいずれか1つ又は2つ以上、並びに(6)ADの1又は2以上の症状の進行(すなわち悪化)を遅らせることを含む。
【0051】
本明細書では、「エンドフェノタイプ」という語は、生物学的、認知的、又は心理学的/調査票データにより定義可能である、より広いカテゴリー内の患者のサブグループを指す。
図1は認知欠損についての4つのエンドフェノタイプを示す。例えば、認知欠損を患う、外傷性脳損傷(TBI,traumatic brain injury)と診断された患者において、これらのTBI患者は炎症誘発性エンドフェノタイプ、神経栄養因子エンドフェノタイプ、代謝性エンドフェノタイプ及びさらに抑うつ性エンドフェノタイプに基づき、群に細分されうる。
【0052】
本明細書では、「倍数差」という語は、例えばADバイオマーカー、パーキンソン病バイオマーカー、認知症バイオマーカー、又は1若しくは2以上の神経学的疾患の区別を可能にする値などの、測定値及び基準値間の大きさの差を数値的に表すことを指す。典型的には、倍数差は数値的な測定値を数値的な基準値で割ることで数学的に算出される。例えば、ADバイオマーカーの測定値が20ナノグラム/ミリリットル(ng/ml)、基準値が10ng/mlである場合、倍数差は2(20/10=2)である。代わりに、ADバイオマーカーの測定値が10ナノグラム/ミリリットル(ng/ml)、基準値が20ng/mlである場合、倍数差は10/20又は−0.50又は−50%)である。
【0053】
本明細書では、「基準値」は絶対値、相対値、上限及び/又は下限を有する値、値の範囲、代表値、中央値、平均値、又は特定の対照若しくはベースライン値と比較した値であってよい。一般的に、基準値は個人の試料の値、例えば、AD、パーキンソン病若しくは認知症などの神経学的疾患を有する個人由来の試料から、好ましくはより早い時期に得られた値、又は、試験される個人、若しくは「正常な」個人、つまりAD、パーキンソン病若しくは認知症と診断されなかった個人以外の神経学的疾患患者由来の試料から得られた値などに基づく。基準値は、例えばAD患者、パーキンソン病患者、認知症患者若しくは正常な個人など由来の多数の試料に基づいていてもよく、被験試料を含めた若しくは除外した試料プールに基づいていてもよい。
【0054】
本明細書では、「所定の時間」という語は、統計上有意な結果を生じる測定間の時間の長さを説明するために使用され、認知欠損の疾患進行の場合、7日間、2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、1年3ヶ月、1年6ヶ月、1年9ヶ月、2年、2年3ヶ月、2年6ヶ月、2年9ヶ月、3、4、5、6、7、8、9又は10年、及びそれらの組合せであってよい。
【0055】
本明細書では、「神経認知スクリーニング試験」又は「認知試験」という語は、認知状態又は障害を測定するための、当業者には既知である1又は2以上の試験を説明するために使用され、4点時計描画試験、発話流暢性試験、トレイルメイキング試験、リスト学習試験などを含みうるがこれに限定されない。当業者であれば、本発明による使用のために、これらの試験がどのように改変可能であり、同様の認知機能を測定する新規の試験がどのように開発及び実施可能であるかを認識、既知であろう。
【0056】
認知欠損は、高齢化/高齢集団において一般的である。65歳以上の全人口のうち約10〜12%がアルツハイマー病を患い、それとは別に約20%がアルツハイマー病の前駆期である軽度認知障害(MCI)を患っている。さらに、認知欠損は通常、他の神経変性(例えばパーキンソン病、前頭側頭型認知症など)、神経学的(例えば外傷性脳損傷、多発性硬化症など)、精神医学的(例えばうつ病、双極性疾患、統合失調症など)、及びその他の医学的状態(例えば糖尿病、高血圧、脂質異常症など)を伴う。一方、成人及び高齢者における認知欠損を治療する「画一的」手法はほとんどが失敗であった。例えば、アルツハイマー病におけるベータアミロイドタンパク質に注目した臨床試験全てがIII期試験で失敗しており、この疾患のための新規の薬物は数十年間承認されていない。さらに、うつ病−認知力、及び糖尿病−認知力の関連性は確立されているが、疾患特異的介入に注目した治験は利益が限られている。これらの失敗により本発見、つまり、認知欠損には多くの根本的な生物学的理由があり、これらの系はほとんどが「疾患」と無関係である可能性がある、という発見に至った。例えば、炎症は多くの疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、がん、多発性硬化症、糖尿病、TBIなど)と関連しており、本発明者らにより、疾患において認知力の低下に関連していることが認められた。したがって本発明者らは、炎症系及びその他の系の根本的な機能障害に関連する認知欠損リスクが増大している患者を、疾患状態におけるこのような認知欠損を改善又は防止する治療レジメンにサブグループ化した。現在まで、有効性が証明された、認知欠損の防止戦略は存在しなかった。
【0057】
本発明者らは、高齢化集団における認知欠損を治療及び防止するエンドフェノタイプ手法を開発した。エンドフェノタイプ(Gottesman, II, Shields J. Genetic theorizing and schizophrenia. British Journal of Psychiatry. 1973;122(566):15-30)という語は、精神医学において頻繁に論じられており、臨床フェノタイプのサブグループを特定する方法をもたらす(Gottesman, II, Gould TD. The endophenotype concept in psychiatry: etymology and strategic intentions. American Journal of Psychiatry. 2003;160(4):636-645)。本発明は、認知障害治療法を導き出すために使用可能である4つの明確なエンドフェノタイプ:認知欠損の炎症性(O'Bryant SE, Waring SC, Hobson V, et al. Decreased C-reactive protein levels in alzheimer disease. Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology. 2010;23(1):49-53、O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A serum protein-based algorithm for the detection of Alzheimer disease. Archives of Neurology. 2010;67(9):1077-1081)、神経栄養因子(O'Bryant SE, Hobson VL, Hall JR, et al. Serum Brain-Derived Neurotrophic Factor Levels Are Specifically Associated with Memory Performance among Alzheimer's Disease Cases. Dementia and Geriatric Cognitive Disorders. 2010;31(1):31-36)、抑うつ性(Johnson LA, Hall JR, O'Bryant SE. A Depressive Endophenotype of Mild Cognitive Impairment and Alzheimer's Disease. PLoS ONE. 2013;8(7):e68848)、及び代謝性(O'Bryant SE, Xiao G, Edwards M, et al. Biomarkers of Alzheimer's disease among Mexican Americans. Journal of Alzheimer's Disease. 2013;34(4):841-849)エンドフェノタイプを実証する。認知欠損のエンドフェノタイプは、神経病理学(Janocko NJ, Brodersen KA, Soto-Ortolaza AI, et al. Neuropathologically defined subtypes of Alzheimer's disease differ significantly from neurofibrillary tangle-predominant dementia. Acta Neuropathologica. 2012:1-12)、神経画像法(Braskie MN, Ringman JM, Thompson PM. Neuroimaging measures as endophenotypes in Alzheimer's disease. International Journal of Alzheimer's Disease. 2011、During EH OR, Elahi FM, Mosconi L, de Leon, MJ. The concept of FDG-PET endophenotype in Alzheimer's disease. Neurol Sci. 2011;32:559-569)、遺伝学(N E-T. Gene expression endophenotypes: a novel approach for gene discovery in Alzheimer's disease. Molecular Neurodegeneration. 2011;3(31):1-14)、及び脳脊髄液マーカー(Cruchaga C KJ, Nowotny P, Bales K, Pickering EH, Mayo K, Bertelsen S, Hinrichs A, the ADNI initiative, Fagan AM, Holtzman DM, Morris JC, and Goate AM. Cerebrospinal fluit APOE levels: an endophenotype for genetic studies for Alzheimer's disease. Human Molecular Genetics. 2012;2012)にも基づいて特定された。本発明者らは本明細書で、治療法を導き出すために特異的にデザインされた4つのエンドフェノタイプ、及び本発明により使用するための例示的な治療法を提供する。
【0058】
炎症誘発性エンドフェノタイプ
炎症誘発性エンドフェノタイプにより特定された対象に治療薬を与える場合、治療薬は以下のものを含みうる。非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs):非選択的NSAIDs−非選択的NSAIDsは炎症誘発性エンドフェノタイプの最高値となった患者に対し選択される。本明細書に示すように、非選択的NSAIDs(ナプロキセン)は、選択的NSAIDs(セレコキシブ)よりも優れた治療薬であった。非選択的NSAIDsは、炎症誘発性エンドフェノタイプの最高値の範囲内となったいかなる人でも試験可能である。
【0059】
選択的NSAIDs:選択的NSAIDs(例えばセレコキシブなど)は、炎症誘発性エンドフェノタイプの最高値の範囲内となった者で試験可能である。
【0060】
ステロイド:多くのステロイド、グルココルチコイドは抗炎症特性を有し、炎症誘発性エンドフェノタイプの最高値の範囲内となった患者に対し検討されてよい。
【0061】
免疫選択的抗炎症性誘導体(ImSAIDs):ImSAIDsは炎症誘発性エンドフェノタイプの最高値の範囲内となった患者に対し検討されてよい。
【0062】
抗TNF薬は、TNFαが最も多い炎症誘発性エンドフェノタイプの最高値の範囲内の者に対し特に利用されうる。
【0063】
抗IL5薬は、IL−5が最も多い炎症誘発性エンドフェノタイプの最高値の範囲内の者に対して利用されうる。
【0064】
CRP低下剤は、CRPが最も多い炎症誘発性エンドフェノタイプの最高値の者に対し選択的に利用されうる。
【0065】
代謝性エンドフェノタイプ
代謝性エンドフェノタイプにより特定された対象に治療薬を与える場合、抗糖尿病薬は、薬剤の作用機序に応じて、代謝性エンドフェノタイプの最低又は最高値の範囲内となった者に対し利用されうる。
【0066】
インスリンは、インスリンが多い代謝性エンドフェノタイプの者に対して利用される。インスリンはグルコースレベルが最も多い代謝性エンドフェノタイプの者に対しても利用されうる。
【0067】
GLP−1薬は、GLP−1が最も多い代謝性エンドフェノタイプの者に対して利用される。発明者らの以前の研究において、認知機能障害を有する者においてGLP−1がより高かった。しかし、より高いレベルのGLP−1は記憶力の向上に関連するため、認知欠損を有する者における認知問題の治療、及び認知的に正常な高齢者における認知欠損の防止のために投与される。
【0068】
アミリン関連薬は、アミリンが最も多い代謝性エンドフェノタイプの者に対して利用可能である。
【0069】
経口血糖降下薬は、代謝性エンドフェノタイプの最高値のいかなる患者においても試験可能である。
【0070】
神経栄養性エンドフェノタイプ
神経栄養性エンドフェノタイプにより特定された対象に治療薬を与える場合、神経栄養因子アゴニストは、神経栄養性エンドフェノタイプの最低値の者における認知機能の改善及び認知欠損の防止について検証されうる。神経栄養因子アゴニストは、神経栄養性エンドフェノタイプの最高値の者における認知改善について検証されうる。神経栄養性エンドフェノタイプの中間の群の者が、このような治療薬から認知的な利益又は低下を受ける可能性は低い。
【0071】
運動療法は、認知欠損の防止又は治療のために、神経栄養性エンドフェノタイプの最低値となるいかなる患者にも、また神経栄養性エンドフェノタイプの最高値の者における認知欠損の改善のためにも処方可能である。
【0072】
BDNF及びBDNFアゴニストは認知力の改善及び認知欠損の防止のために、神経栄養性エンドフェノタイプの最低値の患者に対して利用される。このような薬物はエンドフェノタイプの最高値における認知欠損を治療するために利用される。選択的セロトニン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン2C(5−HT2C)アンタゴニスト、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ薬はBDNFレベルを増加させることが判明しており、BDNFが最も多い神経栄養性エンドフェノタイプの者に対する認知欠損の治療及び/又は防止において特に有用でありうる。
【0073】
運動と薬物、例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン2C(5−HT2C)アンタゴニスト、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ薬などとの組合せは、BDNFレベルを増加させることが判明しており、BDNFが最も多い神経栄養性エンドフェノタイプの者に対する認知欠損の治療及び/又は防止において特に有用でありうる。
【0074】
GDNF及びGDNFアゴニストは認知力の改善及び認知欠損の防止のために、神経栄養性エンドフェノタイプの最低値の患者に対して利用される。このような薬物はエンドフェノタイプの最高値における認知欠損を治療するために利用される。
【0075】
抑うつ性エンドフェノタイプ
抑うつ性エンドフェノタイプにより特定された対象に治療薬を与える場合、抗うつ薬及び/又は治療法は、認知機能障害の治療及び/又は防止のために、認知欠損の抑うつ性エンドフェノタイプ(DepE)についてスコアが上昇した者に対して利用可能である。
【0076】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン2C(5−HT2C)アンタゴニスト、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ薬は認知機能に関連することが判明しており、DepEスコアについてスコアが上昇した者に対する認知欠損の治療及び/又は防止において有用である可能性がある。
【0077】
運動と薬物、例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン2C(5−HT2C)アンタゴニスト、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ薬などとの組合せは、DepEについてスコアが上昇した者に対する、認知欠損の治療及び/又は防止において特に有用でありうる。
【0078】
IL−6が最も多い炎症誘発性エンドフェノタイプを有する対象について、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン2C(5−HT2C)アンタゴニスト、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ薬は、DepEについてスコアが上昇した者に対する、認知欠損の治療及び/又は防止において特に有用でありうる。
【0079】
IL−6及び/又はTNFαが最も多い炎症誘発性エンドフェノタイプを有する対象について、運動と抗うつ薬治療(選択的セロトニン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン2C(5−HT2C)アンタゴニスト、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤及び三環系抗うつ薬)との組合せは、DepEについてスコアが上昇した者に対する、認知欠損の治療及び/又は防止において特に有用でありうる。
【0080】
炎症誘発性エンドフェノタイプ
認知機能障害及び低下は、米国における疾病及び死亡の主要な原因であり、医療費の増大、治療コンプライアンスの低下、賃金の喪失(患者及び家族)、生産性の低下、生活の質の低下、及び自立性の段階的な喪失を伴う。認知欠損のうち最も名の知れた形態は、アルツハイマー型認知症である。しかし、認知欠損は、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病(PD,Parkinson’s disease)、うつ病、統合失調症、及びその他の多くの障害/疾患とも関連している。興味深いことに、炎症はこれらの各状態及び認知欠損と関連する一般的な生物学的経路である。さらに、疫学的研究が、抗炎症薬の使用により各種疾患状態(例えばTBIなど)における認知欠損/認知症リスクの減少、及び認知機能の増大が伴うことを示しているが、これらの結果は、失敗に終わった多くの臨床試験と矛盾している。現在まで、認知力を改善するために、どの特定の患者が抗炎症薬を投与されるべきか又は投与されてはならないかを特定する個別化医療的手法を開発する研究が以前に行われたことはない。本発明の新規な方法は、認知強化利益のための抗炎症薬を投与されるべき個人の部分母集団だけでなく、同様に重要に、これが認知欠損の増大に関わるためどの部分母集団がこれらの薬物を投与されてはならないかということも特定する、個別化医療的手法として明確に開発された。この新規な方法は、選択された患者の部分母集団において認知力を改善/安定化し、認知低下の増大リスクのため抗炎症薬を投与されてはならない患者をスクリーニングして除くために、臨床試験及び臨床診療において実施可能である。本発明者らは炎症誘発性エンドフェノタイプの存在について論じているが、この研究では初めて、明確なエンドフェノタイプ、エンドフェノタイプの組合せ及び/又はエンドフェノタイプの結果としての決定的な治療レジメン(O'Bryant SE, Waring SC, Hobson V, et al. Decreased C-reactive protein levels in alzheimer disease. Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology. 2010;23(1):49-53、O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A serum protein-based algorithm for the detection of Alzheimer disease. Archives of Neurology. 2010;67(9):1077-1081、O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A blood-based algorithm for the detection of Alzheimer's disease. Dementia and Geriatric Cognitive Disorders. 2011;32(1):55-62、O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A Blood-Based Screening Tool for Alzheimer's Disease That Spans Serum and Plasma: Findings from TARC and ADNI. PLoS ONE. 2011;6(12):e28092)を提供する。
【0081】
炎症誘発性エンドフェノタイプから治療反応が予測されたかどうかを決定するために、ベースライン血漿試料をAlzheimer’s Disease Cooperative Study(ADCS、Aisen et al 2003、JAMA)で以前に実施された治験より解析した。
【0082】
ベースライン血漿試料を、炎症性マーカーの範囲について増強化学発光(ECL,enhanced chemiluminescence)を使用して分析した。CRP及びTNFαを使用して炎症誘発性プロファイルを作成した。本明細書に示す既に確かな結果を改善するため、さらなるマーカーが使用可能である。炎症誘発性プロファイルの最低値、中間値(基準群)及び最高値の度数を以下に示す。
【0084】
治験期間12ヶ月中のMMSEスコアの変化を見ると、以下のことが分かる:プラセボ群−(a)炎症誘発性プロファイルの最低値の者では、最高値及び基準群(すなわち中間群)と比較すると12ヶ月間安定(疾患重症度及び認知機能が安定)であり、(b)最高値の者では、基準群及び炎症誘発性プロファイルの最低値と比較すると12ヶ月間で有意に減少した。治療薬群−(a)抗炎症薬で治療された、炎症誘発性プロファイルの最低値の者(
図2の群1)では、基準群(すなわち中間群、
図2の群2)と比較すると早く、有意に減少し(すなわち疾患重症度及び認知力)、(b)最高値の者(
図2の群3)では、炎症誘発性プロファイルの最低値及び基準群と比較すると、抗炎症薬で治療した場合12ヶ月間安定であった。したがって、治療薬は炎症誘発性エンドフェノタイプの最高値の者においては適応となるが、炎症誘発性エンドフェノタイプの最低値の者においては禁忌となる。
【0085】
疾患重症度(すなわち臨床認知症評価法(CDR,clinical dementia rating)の項目の合計点数[CDRSum])を考慮すると、同じことが判明した。
図3を参照のこと。特に、抗炎症薬で治療された、炎症誘発性プロファイルの最低値の者では、12ヶ月間で他のいずれの群よりも早く疾患重症度が進行したが、同じバイオマーカーで定義された群の者は、未治療のままであれば12ヶ月間での減少が最小であった。一方、治療された最高値の者は未治療の者ほど減少しなかったが、差の大きさは、上記の客観的認知測定(すなわちミニメンタルステート検査(MMSE,mini-mental state examination)スコア)で観察されたものより小さい。
【0086】
AD症例及び正常な対照の独立コホートからベースライン認知及び疾患重症度マーカーを検証すると、本発明の炎症誘発性エンドフェノタイププロファイルは患者のベースライン特性間を明確に鑑別する。
図4は、認知機能(MMSEスコア)の直線的減少を示す。
図5はAD患者における炎症誘発性プロファイルに基づく疾患重症度の直線的増加を明確に示す。
図6は、炎症誘発性プロファイルに相関する、認知症でない正常な対照におけるベースライン認知能力(MMSEスコア)の同じ直線的減少を示す。
【0087】
代謝性エンドフェノタイプ
本明細書で先に論じたように、認知機能障害及び低下は米国における疾病及び死亡の主要な原因である。興味深いことに、代謝機能障害及び糖尿病はこれらの各状態及び認知欠損と関連する一般的な生物学的経路である。さらに、疫学的研究により、中年の糖尿病が晩年の認知欠損の強力なリスク因子であり、糖尿病が剖検時の神経病理学負担の増大と関連していることが示唆される。この文献の結果として、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)(MCI;前駆AD)を治療するための糖尿病薬及び代謝薬を使用して数回の臨床試験が実施され、一部は成功し、一部は研究が継続されている。実際、あるグループがMCI及び初期ADの治療薬としての鼻腔内インスリンの3期治験を開始している。一部は成功しているが、治療上の利益は中程度であり、認知欠損のリスクが最も高い、糖尿病を有する特定の患者を特定する研究が以前に実施されたことはない。本発明の新規な方法は、認知強化利益のための糖尿病/代謝薬を投与されるべき個人の部分母集団を特定する、コンパニオン診断法(及び個別化医療的手法)として明確に開発された。本発明は、治療から利益を受ける可能性が最も高い患者を最も良く選択し、それによって必要な試料サイズを実質的に減少させるために、臨床試験において実施可能である。
【0088】
本発明は、(1)糖尿病及び代謝障害をMCI及びADと関連付ける以前の研究、並びに(2)本発明者らによる以前の、メキシコ系アメリカ人におけるバイオマーカー及び臨床研究(Gottesman, II, Shields J. Genetic theorizing and schizophrenia. British Journal of Psychiatry. 1973;122(566):15-30、Gottesman, II, Gould TD. The endophenotype concept in psychiatry: etymology and strategic intentions. American Journal of Psychiatry. 2003;160(4):636-645、O'Bryant SE, Waring SC, Hobson V, et al. Decreased C-reactive protein levels in alzheimer disease. Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology. 2010;23(1):49-53、O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A serum protein-based algorithm for the detection of Alzheimer disease. Archives of Neurology. 2010;67(9):1077-1081)に基づく、MCI及びADにおける代謝性エンドフェノタイプを提案した。本発明者らは、MCI,ADと診断された者及び認知的に正常な高齢者における代謝性エンドフェノタイプ(MetEndo,metabolic endophenotype)を特徴化することも試みた。マルチマーカー手法を利用して、本発明者らは代謝性エンドフェノタイプ(MetEndo)を作成した。MetEndoの最低値の者(群1)は、プロファイル手法により最低限の代謝障害を有するが、最高値の者(群3)は高レベルの代謝障害を有し、他の全ては中間範囲(群2)内に留まる。本発明者らは、MetEndoにより認知機能及び低下、並びに代謝機能障害を有する者における進行のリスクが予測されることを見出した。ADの根本的な神経病理がきわめて複雑であり、多数のエンドフェノタイプが存在する可能性が高いため、MetEndoはMCI及びADと診断された患者のサブセットにのみ適切でなければならない。本明細書で開示されるように、本発明者らは炎症性エンドフェノタイプ(O'Bryant SE, Hobson VL, Hall JR, et al. Serum Brain-Derived Neurotrophic Factor Levels Are Specifically Associated with Memory Performance among Alzheimer's Disease Cases. Dementia and Geriatric Cognitive Disorders. 2010;31(1):31-36、Johnson LA, Hall JR, O'Bryant SE. A Depressive Endophenotype of Mild Cognitive Impairment and Alzheimer's Disease. PLoS ONE. 2013;8(7):e68848)、神経栄養因子エンドフェノタイプ(O'Bryant SE, Xiao G, Edwards M, et al. Biomarkers of Alzheimer's disease among Mexican Americans. Journal of Alzheimer's Disease. 2013;34(4):841-849、Janocko NJ, Brodersen KA, Soto-Ortolaza AI, et al. Neuropathologically defined subtypes of Alzheimer's disease differ significantly from neurofibrillary tangle-predominant dementia. Acta Neuropathologica. 2012:1-12)、及び抑うつ性エンドフェノタイプ(Braskie MN, Ringman JM, Thompson PM. Neuroimaging measures as endophenotypes in Alzheimer's disease. International Journal of Alzheimer's Disease. 2011)を含むいくつかのエンドフェノタイプ、並びにそれに応じて直接的な治療法の存在及び使用をさらに実証した。実際、この手法(すなわち炎症誘発性エンドフェノタイプ)が、以前に「失敗した」臨床試験から有意に利益を受けるAD患者のサブグループを特定することを実証するために、以前に実施された臨床試験由来の血液試料を遡及的解析すべく本発明を使用することもできる。したがって、代謝性エンドフェノタイプは、疾患の進行を遅らせ、選択された部分母集団におけるMCIからADへの進行を減少させ、さらに糖尿病を患う認知的に正常な高齢者の特定の部分母集団における認知欠損を防止するために、AD患者の特定の部分母集団を治療すべく利用可能である。
【0089】
MetEndoの有病率を検証したところ、本発明者らは、MCI患者の5%がMetEndoの最低値に当てはまるのに比較して、20%がMetEndoの最高値に当てはまることを見出した。糖尿病と診断されたMCIの症例に限定した場合、割合は最高値において25%に増加した。最低値の者はベースラインでの認知機能障害が増大、疾患重症度が増大し(表2)、それらの病理は、非代謝因子、すなわちAβによってほとんど進められている可能性が高い(上記の表を参照のこと:1=MetEndo低、2=中間群、3=MetEndo高)。注目すべきことに、MetEndoの群分けは臨床的特性とは完全に無関係であるが、全ての患者がMCIと診断された。興味深いことに、認知的に正常な高齢者(NC)を検証したところ、MetEndoの群分けによって認知的転帰に有意な差もあった(表3を参照のこと)。NC群において、MetEndoの最高値は認知転帰評価項目に関して最も機能が小さかった。したがって、MetEndoに相関して、NCからMCI、及びAD(MCIと同じに見える)への認知能力の変化が起こる。
【0091】
この変化に基づき、MetEndoの最高値を、NCからMCI、及びADへの進行との有意な関連性を示すために使用した。24ヶ月間の追跡期間中、低MetEndo群における10%、及び中間群における20%(低及び中間群における進行は非代謝因子による可能性が高い)と比較して、MetEndo群の最高値において(25%)最も高い全進行率が見出された。さらに、低MetEndo群におけるNCsのうちの7%と比較して、MetEndoの最高値におけるNCsのうちの18%がMCIに転換した。高MetEndo群におけるMCI症例のうち合計34%が24ヶ月以内にADへ進行した。MetEndoはNCからMCI(AUC=0.63)及びMCIからAD(AUC=0.60)への進行についての重要な予測材料であった。興味深いことに、MetEndoの最低値のうち42%が24ヶ月中にADへ進行した。このことは、(1)ベースライン認知力がこの群でより低かったこと、及び(2)根本的な病理がAβに大きく依存し、これらの患者がこの機序を特異的に標的とする治療薬から最も利益を受けるという事実による可能性が高い。したがって、この方法は大規模Aβ防止治験(例えばA4治験)にスクリーニングして組み入れるために使用可能である。
【0093】
神経栄養性エンドフェノタイプ
神経栄養性エンドフェノタイプを、認知欠損/アルツハイマー病(AD)を評価及び治療するために使用した。本発明者らは、脳由来神経栄養因子(BDNF)などの神経栄養因子がアルツハイマー病の存在についてのバイオマーカーとなる可能性があることを示していた。しかし、BDNFレベルが疾患状態についての重要な予測材料ではなかったことが判明した。一方、BDNFレベルはADと診断された者における記憶力に有意に関係していた。本明細書では、神経栄養因子(すなわちBDNF、NGF、TN−3、CNTF、GDNF、LIF及びGGF)が、この生物系に特異的に関連する認知欠損のリスクがある個人のサブセットを特定するために使用可能であることを示す。そのようなものとして、ある人がこの特定のエンドフェノタイプの範囲内のどこになるかを知ることで、認知欠損を防止及び/又は治療するための特定の治療法が導き出される。BDNFレベルを使用するだけで、認知機能障害を有する者及び有しない者における異なった認知能力を明確に実証することが可能であることが本明細書で示される。
図7において、全般的な認知能力(MMSEスコア)が患者の種類(1=アルツハイマー病、2=正常な対照、3=軽度認知障害)によって、BDNFレベルに相関して変化することが明らかである。
【0094】
さらに、認知試験スコアを検証したところ、明確なパターンが生じた。表4は、特に、認知欠損(AD又はMCI)を有する者において、神経栄養性エンドフェノタイプについてのより高いスコア(範囲1〜4では4が高レベルである)が、認知欠損(MCI及びAD)を有する者において、より低い認知スコア及び疾患重症度のさらなる進行に関連していることを示している。一方、より高い神経栄養性エンドフェノタイプスコア(すなわち4)は、認知的に正常である者においてより良好な認知機能と関連している。このことは、正常な高齢者から認知障害者へ高齢者が移行する際、神経栄養因子の重要性が変化することを示している。説明のために、しかし本発明を限定することは全くなく、この、より高いBDNFレベルがより低い記憶能力に関連しているという矛盾した知見は、打ち消し効果によるものである可能性がある(O'Bryant SE, Waring SC, Hobson V, et al. Decreased C-reactive protein levels in alzheimer disease. Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology. 2010;23(1):49-53)。つまり、脳は、神経病理の蓄積を打ち消すために、より高レベルの神経栄養因子を産生している。実際、このことは、AD治療のためのいくつかのコリンエステラーゼ阻害剤をFDAが最終認可することにつながった知見及び仮説と類似している。
【0096】
抑うつ性エンドフェノタイプ
高齢者における認知的健康に対してうつ病が負の影響を及ぼし(23)、うつ病と認知機能障害の併発により日常生活での活動における障害の増大及び生活の質の低下が引き起こされることを実証する文献が、長年にわたって存在する(24、25、26)。しかし、認知機能障害となる可能性が最も高い、うつ病を患う特定の患者の特定は困難なままであった。本発明では、2つの独立なコホート、Project FRONTIER及びthe Texas Alzheimer’s Research & Care Consortium (TARCC)からのデータを解析し、MCI/ADの抑うつ性エンドフェノタイプ(17)を作成し、交差検証した。
【0097】
抑うつ性エンドフェノタイプの特定
開発
まず、本発明者らはProject FRONTIERコホートを2つの試料、訓練(n=255、MCI52名、正常な対照203名)及び被験試料(n=263、MCI n=60、対照 n=203)にランダムに分けた。訓練試料において一連のχ
2解析を行い、高齢者用うつ病尺度からの30項目のうちいずれが、MCI症例においてより有意に「はい」と回答されるかを特定した。訓練試料において、以下の項目が正常認知力群よりもMCI群においてより頻繁に有意に「はい」と回答された:記憶障害の悪化を感じる(χ
2=12.39、p0.001未満)、気分の落ち込みや憂鬱を感じる(χ
2=6.97、p=0.008)、無力だと感じる(χ
2=5.58、p=0.02)、頻繁に泣きたくなる(χ
2=6.50、p=0.01)及び集中力の欠如(χ
2=7.82、p=0.005)。注目すべきことに、これらの各項目に対して「はい」と回答するとうつ病が存在する傾向にあるため、逆スコアリングは必要でなかった。抑うつ性エンドフェノタイプ(DepE)を、これら5項目についての各人の反応を合計することにより作成した。
【0098】
検証
次に、ロジスティック回帰を使用して、被験試料におけるDepEスコアに相関してMCIと診断されるリスクを決定した。DepEスコアはMCI診断リスクを有意に増大し(オッズ比[OR,odds ratio]=2.04;95%CI=1.54〜2.69)、年齢(OR=1.09;95%CI=1.05〜1.13)及び教育(OR=0.82;95%CI=0.71〜0.95)を除いては、これが唯一の重要な予測材料であった。条件付きステップワイズ変数増加ロジスティック回帰において、年齢がまずモデルに入り、DepEスコアがそれに続いた。他の変数はモデルに入らなかった。注目すべきことに、DepEスコアがモデルに入った状態で、GDS総スコア(DepE項目を除外)はMCI状態に有意に関連していなかった。したがって、DepEスコア及び非全般的うつ病スコアはMCIリスクに特異的に関連している。ApoEε4遺伝子型(MCI及びADの最も強力な唯一の遺伝的リスク)はモデルに入らなかった。
【0099】
抑うつ性エンドフェノタイプ交差検証
横断解析
次に、DepEをTARCCコホートに適用した。ロジスティック回帰モデルを、転帰評価項目としてAD対正常対照を用いて作成した;年齢、性別、教育、ApoEε4の存在(有/無)、GDS総スコア及びDepEスコアが説明変数として入った。年齢(OR=1.18、95%CI=1.12〜1.24、p0.001未満)、ApoEε4状態(OR=2.42、95%CI=1.13〜5.19、p=0.02)及びDepEスコア(OR=2.49、95%CI=1.40〜4.43、p=0.002)がAD状態についての唯一の有意な予測材料であった。条件付きステップワイズ変数増加ロジスティック回帰において、モデルへ入る順は年齢、DepEスコア(ApoEε4遺伝子型の前)、及びApoEε4状態であった。単独でのDepEスコアは、受信者動作特性(ROC,receiver operating characteristic)曲線解析(曲線下面積[AUC,Area Under the Curve]=0.74(95%CI=0.68〜0.81)、p0.001未満)を使用すると、AD状態の有意な予測材料であった。
縦断解析
ベースラインDepEスコアは、全般的な認知低下(MMSEスコア)及び疾患進行の増大(臨床認知症評価法スコア)にも縦断的に有意に関連していた(17)。本発明者らは、Western Australia Memory Studyコホートからのデータも解析した。このコホートは認知欠損に関連する因子を特定するために縦断的に追跡されている、認知的に正常な成人及び高齢者を含んでいた。65歳以上の者において、DepEスコアの上昇は、認知機能の低下(すなわちコホートの平均未満)に有意に関連していた(OR=1.53;95%CI=1.01〜2.32、p=0.04)。70歳以上の者において、DepEスコアの上昇は、認知機能の低下(OR=2.23、95%CI 1.12〜4.40、p=0.02)の最も強力な唯一のリスクであり、年齢も教育も有意ではなかった。
【0100】
(1)経時的な認知力に対するDepEスコアの改善の影響、及び(2)別の独立な研究での、認知症でない高齢者におけるDepEスコアのさらなる交差検証を決定するため、より最近の解析を実施した。WMS Logical Memory I及びIIを使用して、記憶力スコアに対する経時的なDepEスコアの変化の影響を特異的に決定するため、予備解析も実施した。DepEスコア=0〜1を正常とし、2以上のいかなるスコアも高いとした。群は以下の通りであった。
図8は、12ヶ月間の、正常な対照(NC,normal control)並びにAD症例における即時(LMI)及び遅延(LMII)言語記憶の変化を示すグラフである。DepEスコアの改善によってAD症例における記憶能力の変化は起こらなかったが、DepEスコアの改善が起こった正常な対照において記憶力スコア(即時及び遅延)が大いに改善された。実際、DepEスコアが上昇した認知症でない高齢者は、DepEスコアが上昇しなかった者未満の総標準偏差(すなわち尺度スコアポイント3)のベースライン記憶力尺度スコアを得た。しかし、12ヶ月間のDepEスコアの改善によって、ベースラインDepE上昇を示さなかった認知的に正常な高齢者のレベルと同等である、総標準偏差1(尺度スコアポイント3)の即時及び遅延記憶力スコアの改善が起こった。重要なことには、これらの知見は、AD診断前の介入が保証され、DepEによって、認知的に正常である者又は抗うつ薬治療により認知改善されると思われる軽度認知障害(MCI)患者の特定方法が提供されることを示す。この認知改善は、TBI、パーキンソン病、多発性硬化症、糖尿病及びその他多くの医学的状態に伴ううつ病、並びにその他の医学的状態とは無関係の、又は非存在下でのうつ病によるものであろう。
【0101】
認知欠損を治療及び防止する個別化医療的手法のための患者を特定する方法
認知機能障害及び低下は、米国における疾病及び死亡の主要な原因である。認知機能障害は医療費の増大、治療コンプライアンスの低下、賃金の喪失(患者及び家族)、生産性の低下、生活の質の低下、及び自立性の段階的な喪失を伴う。認知欠損のうち最も名の知れた形態は、アルツハイマー型認知症である。しかし、認知欠損は、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病(PD)、うつ病、統合失調症、及びその他の多くの障害/疾患とも関連している。興味深いことに、炎症はこれらの各状態及び認知欠損と関連する一般的な生物学的経路である。本発明者らは以前に、(1)アルツハイマー病の特定並びに(2)神経変性疾患の検出及び鑑別のための血液ベースの方法を作成した。しかし、これらのデータは、作成された生物学的アルゴリズム及びエンドフェノタイプにより、軽度認知障害の前駆AD段階である者、並びに認知的に正常な成人及び高齢者における認知能力も鑑別可能であることをも示唆している。本明細書で教示される方法は、認知低下のリスクが最も高い者も特定可能である。本発明の目的は、開示されるエンドフェノタイプ法に基づき、認知欠損を防止及び/又は治療することを目的とした治験に患者を選別して組み入れる方法の導入である。
【0102】
患者を選別して臨床試験に組み入れる主要な方法は、疾患診断に基づくものである。しかし、大部分の疾患が非常に複雑な病因(例えば糖尿病、心疾患、アルツハイマー病、うつ病など)を有している。この手法は、患者が認知欠損の診断を示すことで始まる。したがって、現在の方法は疾患状態とは無関係に認知欠損を診断することを対象としている。認知欠損は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、脳卒中、その他の神経変性又は神経学的疾患、うつ病又はその他の情動障害、糖尿病、及びその他の代謝障害、心疾患、及び甲状腺疾患を含むがこれに限定されない、いくつもの根本的な状態によるものでありうる。認知欠損を有するか認知欠損リスクがあると一旦特定されると、個別化医療的手法も使用可能となる。
【0103】
アルツハイマー病と診断された者及び正常な対照について、ベースライン認知及び疾患重症度マーカーを検証したところ、本発明者らは炎症性プロファイルにより認知能力間の鑑別が可能であることを示した。
【0104】
図9は認知機能(MMSEスコア)の直線的減少を示す。アルツハイマー病と診断された者及び正常な対照についてベースライン認知及び疾患重症度マーカーを検証したところ、本発明者らは本明細書で、炎症性プロファイルにより認知能力間の鑑別が可能であることを示す。
図9は認知機能(MMSEスコア)の直線的減少を示す。
図10はAD患者における炎症誘発性プロファイルに基づく疾患重症度の直線的増加を示す。
図11は炎症誘発性プロファイルに相関する、認知症でない正常な対照におけるベースライン認知能力(MMSEスコア)の同じ直線的減少を示す。
【0105】
図12は、血液ベースのバイオマーカー系、並びに認知障害を有する者及び有しない者(AD n=2、MCI n=2、対照 n=2)におけるベータアミロイド(Aβ)の存在の間の関連性を示す(取扱いの変化によりスキャンが遅延した)。この例において、試験を実施したところ参加者6名のうち4名がAβについて陽性となった(AD2名、MCI1名及び対照1名)。血液ベースのバイオマーカー系が、Aβが陽性であることの検出において精度100%であることが判明した。
【0106】
これらの結果は、本発明の体系的な手法が軽度認知障害を正確に検出することを実証している。次に、本発明者らは試料269個(正常な対照 n=88、MCI n=57、AD n=124)を分析し、(1)非健忘型MCIに対する健忘型MCIを検出し、(2)MCIをADと鑑別した。バイオマーカープロファイルにより健忘型MCIが正確に検出された(AUC=0.94、SN=0.97、SP=0.87)。同じ方法論は、最小限の認知試験の組み込みにより精度が有意に増大したものの、非健忘型MCIの検出においてわずかに精度が劣った(AUC=0.70、SN=0.70、SP=0.66)(以下を参照のこと)。したがって、バイオマーカープロファイル及びトレイルメイキング試験パートBにより、健忘型MCI(AUC=0.95)及び非健忘型MCI(AUC=0.85)の検出における精度が改善された。MCIをADと鑑別する1つの非限定的な例において、APOE4遺伝子型によって方法を分けることが重要であった。本発明は、APOE4キャリア(AUC=0.76、SN=0.44、SP=0.90)と比較して、APOE4ノンキャリア(AUC=0.80、SN=0.85、SP=0.74)におけるMCIとADとの鑑別において最も正確であった。しかし、動物命名試験を含めると、全体の精度が、APOE4ノンキャリアで0.86、APOE4キャリアで0.89に増大した。
【0107】
本発明は、明らかな障害を有しない者における認知欠損を特定するために使用することもできる。実際、本発明は記憶能力低下(すなわち物語記憶について標準偏差1.0未満)を有する「認知的に正常な」高齢者の検出において精度100%であった。
【0108】
本発明は、認知機能障害の将来的なリスクも予測可能である。まず、先に概要を述べたのは、アミロイド−ベータ陽性であることを特定するために本発明が使用された際のデータである。脳内にアミロイドベータを有することは、将来的な認知低下の非常に強力なリスク因子である。次に、代謝機能障害についてのバイオマーカーを、経時的な認知欠損を予測するための本明細書で教示される方法の効力を実証するために使用した。代謝性リスクスコアにより、ベースラインで認知的に正常な者における将来的な認知欠損、及びMCIがADに進行するリスクが予測された。
【0109】
したがってこれらのデータは、本発明が、プロファイル手法全体及び特定のエンドフェノタイプ手法(例えば炎症、代謝機能障害、神経栄養系、抑うつ性エンドフェノタイプなど)を使用して、認知欠損を有する個人、又は認知欠損のリスクがある個人を特定するために使用可能であることを示している。
【0110】
治療分子に対する患者反応の予後モデルを作成する方法
「失敗した」臨床試験に何10億ドルもが費やされてきた。大部分の治験の現在のデザインにおける重大な欠点は、患者集団の選別である。特に、患者は典型的には、薬物の特定の生物学及び患者のベースライン生物学的プロファイルではなく、異種疾患分類に基づいてスクリーニングされ、治験に組み入れられる。例として、アルツハイマー病臨床試験は、ADそのものに関連するいかなる特定の根本的な生物学的機序にも関係なく、NINDS−ADRDA(又はより新しいNIA−AA)基準での「アルツハイマー病の可能性大」との臨床診断に基づいて募集する。複雑な疾患プロセスをそれぞれ治癒/治療しようとする多くの臨床試験における「画一的な」手法のため、潜在的に有用な治療分子を用いる「失敗した」治験が以前に何千回と実施されており、それらの特定の薬物により最も利益を受けると思われる患者にそれらの分子が到達しない。全ての治験が反応者及び非反応者を有するが、治験は部分母集団ではなく群レベルの効果を探求するためにデザインされることもよく知られている。
【0111】
治療薬に対して反応者、非反応者及び有害反応者となる可能性が最も高い患者を特定することは、医療行為を改革する大いなる可能性を有している。現在、臨床試験の大部分が、所定の治療法に反応する可能性が最も高い患者のサブカテゴリー化ではなく、異種疾患カテゴリー化(例えばアルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、COPD、慢性腎臓病など)により患者を登録する。利益を受ける可能性が最も高い患者を特定するために明確にデザインされた、コンパニオン診断手段を作成する方法を本明細書に示す。これは、本発明が以前に実施された臨床試験に対して影響(負の結果)を及ぼさないというさらなる利点を有する。したがって、この方法(以下に短く概要を述べる)は、(1)特定の患者集団に対し薬物を標的化し、さらに(2)特定の薬剤そのものから利益を受ける可能性が最も高い特定の患者を登録する新規な臨床試験を作成するために使用可能である。
【0112】
概して、ここで使用するために作成された方法により、炎症、神経栄養因子及び代謝機能障害を含む複数の生物系における機能障害がモニターされる。その他の系は、特定の候補薬剤に好適と考えられる特定の治療分子に標的化されることも可能である。これらの系は、特定の化合物について必要に応じてゲノム(及びその他の)マーカーが組み込まれうるが、プロテオーム解析によりモニターされる。これが単一マーカー手法ではないことに注目することが重要である。複合病に適用されるプロテオーム解析を考慮すると、マルチマーカー手法が優れていることは上記で既に示してある。したがって、方法が任意の単一のマーカーによってゆがめられるのではなく、系の機能障害全体がモニターされる。解析される各個人の治験における好適な試料サイズによって、系は高度なバイオインフォマティクス(例えば構造方程式モデリング、ランダムフォレスト解析、サポートベクターマシンなど)によってモニターされる。
【0113】
モニターするために特定の系が一旦選択され、試料が特定されると、多様な方法で手法が適用されうる。しかし、最適な手法は以下の、以前に実施された複数の治験(例えば第2a相、第2b相、第3相など)が必要な手法である。
【0114】
ステップ1 予測モデルの作成
この手法は2つの形態を取る:
(1)系及びそれらによりどのように治療反応(陽性反応、負の反応及び無反応)が予測されるかを先験的に定義すること;(2)反応者、非反応者及び有害反応者の検出のため、最適な予測アルゴリズムを理論的に見つけること。この全体のステップは、他の全ての治験とは完全に独立な最初の臨床試験において行われる。
【0115】
ステップ2 モデルの適用及び精緻化
ステップ1から一旦モデルが作成されると、これが第2の臨床試験に無作為に適用され、結果が予測される。次に、ステップ1のプロセスがこの第2の治験に再度使用され、予測アルゴリズムがさらに精緻化される。
【0116】
ステップ3 モデルの検証
一旦モデルが作成、精緻化されると、その後これが第1の第3相臨床試験に適用され、治療反応者、非反応者及び有害反応者の予測におけるモデルの効力が決定される。第2の第3相治験が実行可能であれば、必要に応じてモデルがさらなる精緻化とともに再度適用される。
【0117】
1 治療反応の転帰評価項目はオープンである。例えば、MSについては、結果が再発率だけでなく、生活の質、日常生活能力、うつ病率(抑うつ性エンドフェノタイプ)、認知能力(ここでも再度抑うつ性エンドフェノタイプが有用である)、又は使用者にとってのあらゆる所望の結果であってよい。
【0118】
2 プロジェクトの最後での産物は、(a)標的化治療のための患者を選択、及び/又は(b)反応する可能性が最も高い患者のみを特異的に標的とする新規な臨床試験をデザインするために使用可能なコンパニオン診断となるようにデザインされる。
【0119】
現在の方法論は標的集団を治療分子に精緻化する方法を提供する。大部分の治療分子が第3相治験を通過しないという事実にも関わらず、これらの分子の多くが患者の部分母集団にかなりの影響を及ぼす。しかし、企業は臨床試験を事後解析し、その情報をFDAに提出することができない。一方、本明細書で教示される方法は、治療反応者、非反応者及び有害反応者を特定し、その後(1)FDA認可薬物により特定の患者集団を標的化し、(2)これらの治療分子の効力を実証するために、標的集団を選択的に登録(及び除外)するさらなる第3相治験をデザインするために使用可能な、新規な方法を提供する。
【0120】
AD患者において以前に実施された臨床試験由来の血液試料を使用した。この治験はAlzheimer’s Disease Cooperative Study(ADCS、Aisen et al 2003、JAMA)により実施された。
【0121】
炎症性マーカーの範囲についてのECLを使用してベースライン血漿試料を分析した。CRP及びTNFαを使用して炎症誘発性プロファイルを作成した。炎症誘発性プロファイルの最低値、中間値(基準群)、最高値の度数を表5に示す。
表5は、治験の期間12ヶ月間のMMSEスコアの変化の概要である。
【0123】
表5は、治験の期間12ヶ月間のMMSEスコアの変化の概要である。以下のことが判明した:プラセボ群では(a)炎症誘発性プロファイルの最低値の者は、最高値及び基準群(すなわち中間群)と比較すると12ヶ月間安定(疾患重症度及び認知機能が安定)であり、(b)最高値の者は、基準群及び炎症誘発性プロファイルの最低値と比較すると12ヶ月間で有意に減少した。
【0124】
図13は治療薬群についての結果を示す。(a)抗炎症薬で治療された炎症誘発性プロファイルの最低値の者(
図13の群1)では、基準群(すなわち中間群、
図13の群2)と比較すると早く、有意に減少し(すなわち疾患重症度及び認知力)、(b)最高値の者(
図13の群3)は炎症誘発性プロファイルの最低値及び基準群と比較すると、抗炎症薬で治療された場合12ヶ月間安定であった。
【0125】
疾患重症度(すなわちCDRの項目の合計点数[CDRSum])を考慮すると、同じことが判明した。
図14を参照のこと。特に、抗炎症薬で治療された炎症誘発性プロファイルの最低値の者では、12ヶ月間他のいずれの群よりも早く疾患重症度が進行したが、同じバイオマーカーで定義された群の者は、未治療のままであれば12ヶ月間での減少が最小であった。一方、治療された最高値の者は未治療の者ほど減少しなかったが、差の大きさは、上記の他覚的認知測定(すなわちMMSEスコア)で観察されたものより小さい。
【0126】
これらのデータは方法の有効性を実証し、現在これらの方法はその他の多数の疾患状態(例えば多発性硬化症など)に適用されるであろう。
【0127】
ヒスパニックにおける認知障害と慢性腎臓病との関連性
この45年間で、米国におけるヒスパニック人口は6倍に増加し、これによりヒスパニックは最も増加の早い人口区分となっている[(Gottesman, II, Shields J. Genetic theorizing and schizophrenia. British Journal of Psychiatry. 1973;122(566):15-30)]。不幸なことに、ヒスパニックでは非ヒスパニックの白人よりも末期腎疾患(ESRD,end-stage renal disease)がはるかに多く発生する。United States Renal Data Systemのデータから、ヒスパニックは非ヒスパニックの白人よりもESRDの発生率が1.5倍高いことが明らかになっている[(Gottesman, II, Gould TD. The endophenotype concept in psychiatry: etymology and strategic intentions. American Journal of Psychiatry. 2003;160(4):636-645)]。ESRDの発生率が明らかに増加しているにも関わらず、ヒスパニック集団における慢性腎臓病(CKD,chronic kidney disease)の発生率は非ヒスパニックの白人と同等又はそれ未満である[(O'Bryant SE, Waring SC, Hobson V, et al. Decreased C-reactive protein levels in alzheimer disease. Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology. 2010;23(1):49-53、O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A serum protein-based algorithm for the detection of Alzheimer disease. Archives of Neurology. 2010;67(9):1077-1081)]。このことは、慢性腎臓病がヒスパニック集団ではより早くESRDに進行することを示唆している。この不均衡の理由ははっきりしていない。
【0128】
National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)1999〜2008、及びNorthern California Kaiser Permanente health systemの両方のデータの解析により、糖尿病を有するヒスパニックは非ヒスパニックの白人よりも尿中アルブミン排泄量が高レベルであることが示されている[(O'Bryant SE, Hobson VL, Hall JR, et al. Serum Brain-Derived Neurotrophic Factor Levels Are Specifically Associated with Memory Performance among Alzheimer's Disease Cases. Dementia and Geriatric Cognitive Disorders. 2010;31(1):31-36、Johnson LA, Hall JR, O'Bryant SE. A Depressive Endophenotype of Mild Cognitive Impairment and Alzheimer's Disease. PLoS ONE. 2013;8(7):e68848、O'Bryant SE, Xiao G, Edwards M, et al. Biomarkers of Alzheimer's disease among Mexican Americans. Journal of Alzheimer's Disease. 2013;34(4):841-849)]。一般的なCKD集団において、アルブミン尿の程度は腎疾患の進行に明確に関連している[(Janocko NJ, Brodersen KA, Soto-Ortolaza AI, et al. Neuropathologically defined subtypes of Alzheimer's disease differ significantly from neurofibrillary tangle-predominant dementia. Acta Neuropathologica. 2012:1-12)]。ヒスパニックにおいてアルブミン尿の程度がより大きいことは、軽度認知障害(MCI)に関連する全身性内皮機能障害を表している可能性がある[(Braskie MN, Ringman JM, Thompson PM. Neuroimaging measures as endophenotypes in Alzheimer's disease. International Journal of Alzheimer's Disease. 2011)]。認知障害はCKD及び非CKD集団の両方における死亡率の増大に関連している[(During EH OR, Elahi FM, Mosconi L, de Leon, MJ. The concept of FDG-PET endophenotype in Alzheimer's disease. Neurol Sci. 2011;32:559-569、N E-T. Gene expression endophenotypes: a novel approach for gene discovery in Alzheimer's disease. Molecular Neurodegeneration. 2011;3(31):1-14)]。MCIはヘルスリテラシーに影響を及ぼし、予防及び治療レジメンに従う能力の低下を引き起こす可能性がある[(Cruchaga C KJ, Nowotny P, Bales K, Pickering EH, Mayo K, Bertelsen S, Hinrichs A, the ADNI initiative, Fagan AM, Holtzman DM, Morris JC, and Goate AM. Cerebrospinal fluit APOE levels: an endophenotype for genetic studies for Alzheimer's disease. Human Molecular Genetics. 2012;2012)]。
【0129】
ヒスパニックは非ヒスパニックよりも認知障害リスクが高いと思われる[(O'Bryant SE, Hobson V, Hall JR, et al. Brain-derived neurotrophic factor levels in alzheimer's disease. Journal of Alzheimer's Disease. 2009;17(2):337-341)]。さらに、MCIの「確立された」リスク因子(高血圧、肥満、脂質異常症及びAPOE4遺伝子型)は、メキシコ系アメリカ人において有意であると示されたことがない[(O'Bryant SE, Hobson VL, Hall JR, et al. Serum brain-derived neurotrophic factor levels are specifically associated with memory performance among Alzheimer's disease cases. Dementia and Geriatric Cognitive Disorders. 2011;31(1):31-36)]。CKDが一般集団における認知低下のリスク因子であることは十分に確立されているが[(O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A blood-based algorithm for the detection of Alzheimer's disease. Dementia and Geriatric Cognitive Disorders. 2011;32(1):55-62、O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A Blood-Based Screening Tool for Alzheimer's Disease That Spans Serum and Plasma: Findings from TARC and ADNI. PLoS ONE. 2011;6(12):e28092、17、18)]、ヒスパニックにおいてCKDが認知障害と関連していることを実証する、公表された研究はほとんど存在しない[(19、20)]。しかし、これらの研究では、認知低下を評価する唯一の一般的なスクリーニング手段が利用されていた。
【0130】
MCI及び前駆MCIを患うCKD患者を特定する方法、並びに生じる結果に基づく新規な治療レジメンを特定する必要性がかなりある。本研究は、メキシコ系アメリカ人のコミュニティ在住コホートにおける、CKDと認知力/MCIとの関連を検証することにより、この必要性の検討を試みた。さらに、本発明者らは、発明者らが以前に作成したADの血液プロファイル由来の血清プロテオームマーカーがCKD関連認知機能障害の血液プロファイルを作成するために利用可能かどうかを決定した。
【0131】
参加者
Health & Aging Brain among Latino Elders(HABLE)研究由来の参加者437名(男性105名、女性332名)のデータを解析した。HABLE研究は、コミュニティ在住のメキシコ系アメリカ人における認知加齢についての、継続中の疫学的研究である。HABLE研究では、コミュニティベース参加型研究(CBPR,community-based participatory research)手法を使用しており、これは、科学コミュニティにおいて使用及び受容に関して急速に増大している、ヒトの疾患についての研究を実施するための、コミュニティを科学グループと提携させることを含む研究方法論である。標的化CBPR募集のための場所を作ることは、ヒスパニックの人口密度が最も高いタラント郡のzipコードの解析により決定した。研究は、書面によるインフォームドコンセントを与えている各患者(及び/又は認知障害のある人については情報提供者)を用いて、IRBの認可を受けたプロトコルをもとに実施した。
【0132】
研究デザイン
各参加者は、面談(すなわち病歴、薬物、保健行動)、詳細な神経生理学試験、採血、及び健康診断(レビューオブシステム、ハチンスキー虚血インデックススケール、簡易神経学的スクリーニング)を受けた。神経心理学バッテリーは、実行機能(トレイルメイキング試験[25]、EXIT25、時計描画[CLOX1][26])、言語(FAS及び動物命名試験)[27]、空間視覚能力(CLOX2[26])、記憶(ウエクスラー記憶検査第3版ロジカルメモリ、Consortium for the Establishment of Registry for Alzheimer’s Disease(CERAD)リスト学習[27])及び注意(WMS−3数唱[28])の試験より構成されていた。試験は、参加者の好みによって英語又はスペイン語で記入された。素点を解析に利用した。現在のチームは、診断目的で、英語及びスペイン語を話すメキシコ系アメリカ人用のこれらの各試験についての引用規格を作成した(原稿準備中)。軽度認知障害(MCI)の認知診断を、コンセンサスレビューによりMayo Clinic基準[29]に従って割り当てた。標準偏差1未満のCERADリスト想起が平均未満である正常な対照として定義される前駆MCI参加者のサブグループに対して予備解析を実施した。
【0133】
採血及び血液処理
空腹時血液を臨床検査室解析のために採取した。CKD−epi式を使用して、eGFRを算出した。血清試料も採取し、以下の通りバイオバンクに保存した:(1)血清試料を10mlタイガートップチューブに採集し、(2)垂直位置で、室温で30分間凝固させ、(3)採取から1時間以内に、1300xgで10分間遠心処理し、(4)血清を1.0mlずつクライオバイアルチューブに移し替え、(5)Freezerworks(商標)バーコードラベルを各部分試料にしっかりと貼り付け、(6)採取から2時間以内に、アッセイにおいて使用されるまで保存するために試料を−80℃冷凍庫に入れた。
【0134】
バイオマーカーアッセイ
全ての試料を2連で、Meso Scale Discovery (MSD; www.mesoscale.com)社製SECTOR Imager 2400Aによる電気化学発光(ECL,electrochemiluminesce)を使用して、マルチプレックスバイオマーカーアッセイプラットフォームにより分析した。MSDプラットフォームは、ADを含む広範なヒトの疾患に関連するバイオマーカーを分析するために広く使用されている[26、27、28、29、30]。ECL測定は、大部分のアッセイについてのゴールドスタンダードである、従来のELISAs[30]よりも高感度で、必要な試料の量がより少ないという、十分に確立された特性を有する。分析されたマーカーは上記のように作成され、ADアルゴリズムを交差検証し[21、22、23、24]、脂肪酸結合タンパク質(FABP3)、ベータ2ミクログロブリン、膵臓ポリペプチド(PPY)、sTNFR1、CRP、VCAM1、トロンボポエチン(THPO)、α2マクログロブリン(A2M)、エキソタキシン3、腫瘍壊死因子α、テネイシンC、IL5、IL6、IL7、IL10、IL18、I309、第VII因子、TARC、SAA及びICAM1を含んでいた。
【0135】
統計解析
eGFRレベルと神経生理学的結果との関連性をANOVA(未調整モデル)及びANCOVA(共変数は年齢、性別、教育を含む)により評価した。eGFRを以下の群に分けた:45未満、45〜59、及び60以上(ml/min/1.73m
2)。血清バイオマーカーとMCI(及び前駆MCI)状態との関連性をロジスティック回帰(年齢、性別、教育が共変数として入った)により検証した。全ての血清バイオマーカーを、Box−Cox変換を使用して変換した。
【0136】
試料の平均年齢及び教育はそれぞれ、61.2(sd=8.3;範囲=50〜91)及び7.7(sd=4.3;範囲=0〜18)であった。平均eGFRレベルは86.3(sd=17.0;範囲=21〜123)であった。eGFRカテゴリーを以下の通り分類した:45未満(n=14)、45〜59(n=20)及び60以上(n=403)。eGFR60以上の者は、より低いeGFR群である他2つの群よりも有意に若く、他2つの群は互いに有意差はなかった。コホートの人口統計的特性については表6を参照のこと。合計83名の参加者がMCIと診断された。
【0137】
未調整モデルにおいて、より低いeGFRレベルは全般的な認知力(MMSE)、記憶(WMS−3 LM及びCERAD想起)、実行機能(EXIT25、CLOX1)、処理速度(Trials A)、空間視覚能力(CLOX2)及び言語(動物命名試験)のドメインにおける成果の有意な低下に関連していた(表6を参照)。調整モデルにおいて、45未満の群は以下のドメインにおいて、45〜59及び60以上の群よりも有意に成果が悪化した:処理速度(トレイルメイキング試験パートA、F=14.1、p0.001未満)、実行機能(CLOX1、F=4.5、p=0.01)、空間視覚能力(CLOX2、F=4.8、p0.009未満)及び全般的な認知機能(MMSE、F=6.2、p=0.002)。さらに、eGFR45未満の群は遅延記憶に関してeGFR60以上の群よりも有意に成果が悪化した(CERADリスト想起、F=3.8、p=0.02)。個人平均I−J差スコアを表7に示す。
【0139】
ロジスティック回帰モデル(年齢、教育、グルコース、ヘモグロビン及びeGFR60未満がモデルに入った)において、eGFR60未満がMCI診断リスクの増大に関連している傾向があったが、おそらく試料サイズにより統計的有意性に達しなかった(OR=2.4、95%CI=0.91〜6.1、p=0.07)。興味深いことに、解析結果が性別により分かれた場合、eGFR60未満は男性においてMCIリスクの増大に有意に関連していた(OR=9.6、95%CI=1.3〜74.3、p=0.03)。
【0141】
次に、試料をeGFR60未満(MCI n=14)の者及びeGFR60以上(MCI n=68)の者に分けた。ロジスティック回帰において、FVII、IL10、CRP及びFABPのみを含む(人口統計的変数はモデルに含めなかった)血清バイオマーカーパネルは、eGFR60未満の群における、MCIを有する個人の特定において精度93%であった(感度=86%、特異度=100%)。同じマーカーのセットはeGFR60以上の群におけるMCIの検出において精度85%であった。しかし、これは特異度98%であるが感度わずか24%と偏っていた。正常な認知力を有する者のみを検証したところ、eGFR60未満の群内で3名が前駆MCIに分類されたが、eGFR60以上の群内では49名の前駆MCI症例が特定された。同じアルゴリズムは、eGFR60未満の群内の前駆MCI症例の特定において100%正確であった。しかし、eGFR60以上の群において、血清バイオマーカーにより正しく特定された前駆MCI症例はなかった。
【0142】
多数の研究により、軽度認知障害と慢性腎臓病との関連が明確に実証されてきた[(O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A blood-based algorithm for the detection of Alzheimer's disease. Dementia and Geriatric Cognitive Disorders. 2011;32(1):55-62、O'Bryant SE, Xiao G, Barber R, et al. A Blood-Based Screening Tool for Alzheimer's Disease That Spans Serum and Plasma: Findings from TARC and ADNI. PLoS ONE. 2011;6(12):e28092)、17、18]。認知機能の低下は、実行機能、言語記憶、空間視覚能力及び注意持続時間を含む全てのドメインに影響を及ぼす。本発明は、認知障害の程度が腎疾患の重症度と正の相関があると思われることを実証している。腎機能が最悪であるほど、認知障害が大きくなる。さらに、認知障害がCKDを有する患者においてより早く進行するため、より積極的な治療及び介入が必要であることが判明した。
【0143】
認知障害とCKDとの関連は驚くべきことではない。多くの同じリスク因子が両方の原因となっている。CKDを有する患者における認知症は血管性認知症であり、アルツハイマー型ではない。さらに、多数の心血管リスク因子を調節した後でも、CKDは認知障害の独立したリスク因子であり続ける[19]。一般的な基盤は内皮機能障害である可能性があり、MCI及びCKDの両方に関連している[(Braskie MN, Ringman JM, Thompson PM. Neuroimaging measures as endophenotypes in Alzheimer's disease. International Journal of Alzheimer's Disease. 2011)]。内皮機能障害は炎症性及び代謝性決定因子両方により引き起こされうる。
【0144】
本研究は、詳細な神経生理学試験を利用して、メキシコ系アメリカ人集団におけるCKD−MCIの関係性を特徴化する最初の研究である。CKDとMCIとの関連を示す以前の研究では、一般的な簡易スクリーニング試験のみが使用された[19、20]。本発明により初めて、メキシコ系アメリカ人におけるMCIとCKDとをより完全に理解することが可能になり、本発明を使用して本明細書で得られたこれらの結果から、治療レジメンを変化させることが可能になる。認知低下は疾患転帰を悪化させる。メキシコ系アメリカ人は米国の最も増加の早い人口区分である。彼らは末期腎疾患の過剰な有病率に苦しめられてもいる。この過剰なリスクは社会経済的因子、ヘルスリテラシー不足、糖尿病コントロール不足、好適な薬物をあまり使用しないこと及び血圧コントロール不足によるものである可能性がある[31、32、33]。CKDのいかなる段階においても、ヒスパニックは非ヒスパニックよりも高レベルのタンパク尿を有し、内皮機能障害の程度がより重大であることを示唆している。
【0145】
本発明は、FVII、IL10、CRP及びFABPを含む血清バイオマーカーパネルが、CKDを有する個人でのMCIの特定において精度93%であることも実証している(感度=86%、特異度=100%)。IL10及びCRPが炎症のマーカーである一方で、FABPは代謝機能に強力に関連している。上記で示す通り、及びメキシコ系アメリカ人におけるADのバイオマーカープロファイルについての、本発明者らの以前の研究において、このプロファイルは代謝因子(例えばFABP、GLP−1、PPYなど)に大きく偏っていたが、CKD関連MCIのバイオマーカープロファイルが実際はほとんどが炎症性であることが本明細書で示されている。したがって、CKD−MCIプロファイルは、メキシコ系アメリカ人におけるADプロファイルと有意に異なる。さらに、CKD−MCIプロファイルから、CKDを患っていないメキシコ系アメリカ人におけるMCIが予測されなかった。興味深いことに、炎症は非ヒスパニックのADバイオマーカープロファイルにおける重要な因子である。本研究はさらに、特に状態を認識した後、認知力に影響を及ぼす適切な治療法により、医学的状態を標的とするためにその情報を使用することによって、MCI疫病分類学を精緻化する緊急の必要性を強調する。本明細書で示すように、MCIのバイオマーカープロファイルは1つの状態(例えば糖尿病関連MCI)から次(すなわちCKD関連MCI)へと有意に変化し、認知力を標的とする治療介入が結果として異なる必要がある可能性がある。
【0146】
この差のため、ヒスパニックにおける腎疾患の進行率だけでなくMCIのリスク因子においても、この特定の血液ベースのバイオマーカー群を検証するため、この民族集団をより詳細に研究することが重要である。このような研究により、CKDとMCIとの関連をより良く特徴化することが可能となり、CKD及びMCIの進行を防止、又は少なくとも遅くするためのより良い標的化介入を開発することが可能となる。
【0147】
この明細書において論じられるいかなる実施形態も、本発明のあらゆる方法、キット、試薬又は組成物に関して実施可能であり、逆もまた然りであると考えられる。さらに、本発明の組成物は本発明の方法を実施するために使用可能である。
【0148】
本明細書に記載される特定の実施形態は、本発明を限定するものとしてではなく、例示のために示されることが理解される。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく各種実施形態において使用可能である。当業者であれば、通常の実験、及び本明細書に記載される特定の手順との多数の同等物のみを使用することを認識、又は確かめることができる。このような同等物は本発明の範囲内と考えられ、特許請求の範囲内に含まれる。
【0149】
本明細書で言及される全ての出版物及び特許出願は、本発明が属する技術分野の技術者の技術レベルを示す。全ての出版物及び特許出願は、各出版物又は特許出願が特に及び個々に参照により組み込まれることを意図されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0150】
特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む(comprising)」という語と併せて使用される場合の「a」又は「an」という語の使用は、「1つ」を意味しうるが、「1又は2以上」「少なくとも1つ」及び「1又は1超」という意味とも一致する。特許請求の範囲における「又は(or)」という語の使用は、いずれか1つのみ又は互いに独立ないずれか1つを指すものと明確に意図されない限り「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示はいずれか1つのみ及び「及び/又は」を指すという定義を支持する。本出願を通して、「約(about)」という語は、値がデバイス若しくは値を決定するために使用される方法についてのエラーの固有のばらつき、又は研究対象において存在するばらつきを含むことを示すために使用される。
【0151】
本明細書及び特許請求の範囲では、「含む(comprising)」(並びにcomprisingのあらゆる形態、例えば「comprise」及び「comprises」)、「有する(having)」(並びにhavingのあらゆる形態、例えば「have」及び「has」)、「含む(including)」(並びにincludingのあらゆる形態、例えば「includes」及び「include」)、又は「含む(containing)」(並びにcontainingのあらゆる形態、例えば「contains」及び「contain」)という語は包括的又はオープンエンドであり、追加で言及されていない要素又は方法のステップを除外しない。本明細書で提供される組成物及び方法についてのいずれの実施形態においても、「含む(comprising)」は「〜から本質的になる(consisting essentially of)」又は「〜からなる(consisting of)」で置き換え可能である。本明細書では、「〜から本質的になる」という語は、特定の整数又はステップ、及び請求項に係る発明の特性又は機能に実質的に影響を及ぼさない特定の整数又はステップを必要とする。本明細書では、「〜からなる(consisting)」という語は、言及された整数(例えば特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は制限など)、又は整数群(例えば特徴、要素、特性、性質、方法/プロセスステップ又は制限など)のみの存在を示すために使用される。
【0152】
「又はそれらの組合せ」という語は、本明細書でその語に先行して列挙される項目の全ての順列及び組合せを指すために使用される。例えば、「A、B、C又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABC、特定の状況で順序が重要であればさらに、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABのうち少なくとも1つを含むことを意図される。引き続きこの例を用いて、1又は2以上の項目又は語の繰り返しを含む組合せ、例えばBB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどが明確に含まれる。当業者であれば、別に文脈から明らかでない限り、いかなる組合せにおいても項目又は語の数には典型的に限りがないことを理解するであろう。
【0153】
本明細書では、近似の語、例えば限定されないが「約」「実質的な」又は「実質的に」などは、そのように変更された場合に、必ずしも絶対又は正確である必要はなく、提示される条件をデザインする保証をするのに十分に近いと当業者には考えられるものと理解される条件を指す。記載が変化しうる範囲は、どれくらいの大きさの変化が定められ、必要な特性及び未変更の特徴の性質を未だ有する特徴の変更が当業者に認識されるかに依存する。一般に、ただし先行の考察に従って、本明細書で「約」などの近似の語により変更される数値は、記載された値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変化してよい。
【0154】
本明細書で開示及び主張される組成物及び/又は方法全てが、本開示に照らして過度な実験なしに作成及び実施可能である。本発明の組成物及び方法は好ましい実施形態に関して記載されるが、当業者には、本発明の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物及び/又は方法、並びに方法のステップ又は一連のステップに対し、変更が適用可能であることが明らかである。添付の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨、範囲及び概念の範囲内と考えられるこのような類似の代替及び修正全てが、当業者には明らかである。
【0155】
(参考文献)
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