特許第6364538号(P6364538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6364538
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C11C 3/02 20060101AFI20180712BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20180712BHJP
   A23L 33/115 20160101ALI20180712BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20180712BHJP
   C11B 7/00 20060101ALN20180712BHJP
【FI】
   C11C3/02
   A23D9/00 516
   A23L33/115
   A23K20/158
   !C11B7/00
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-243316(P2017-243316)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2018-104684(P2018-104684A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-248980(P2016-248980)
(32)【優先日】2016年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 里佳
(72)【発明者】
【氏名】石川 由結
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/019893(WO,A1)
【文献】 特開平08−208531(JP,A)
【文献】 特開2003−079314(JP,A)
【文献】 特開平08−116878(JP,A)
【文献】 特開2006−328383(JP,A)
【文献】 特開2016−168040(JP,A)
【文献】 KIM, N. et al.,Singlet Oxygen-Related Photooxidative Stability andAntioxidant Changes of Diacylglycerol-Rich Oil Derived from Mixture of Olive and Perilla Oil,Journal of Food Science,2012,Vol. 77, N. 11, C1185-1191,doi:10.1111/j.1750-3841.2012.02928.x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00−15/00
C11C 1/00− 5/02
A23D 7/00− 9/06
A23K10/00−50/15
A23L 5/40−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が40質量%以上、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が6質量%以下、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が3質量%未満、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.1以上3.5未満、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上
を満たす油脂組成物。
【請求項2】
油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が5質量%以上40質量%以下である請求項1記載の油脂組成物。
【請求項3】
油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が10質量%以上50質量%以下である請求項1又は2記載の油脂組成物。
【請求項4】
油脂由来の分別脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応油を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項5】
分別脂肪酸がシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油及びサチャインチ油から選ばれる少なくとも1種の油脂に由来する請求項4記載の油脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂組成物を含有する飲食品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂組成物を含有する飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−リノレン酸を豊富に含む油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康指向の高まりを受けて、油脂中の脂肪酸の機能について多数の研究がなされている。例えば、α−リノレン酸(C18:3、ALA)やドコサヘキサエン酸(C22:6、DHA)等のω3系高度不飽和脂肪酸に冠動脈疾患、脳卒中等の予防効果があることが報告されている。ω3系高度不飽和脂肪酸は生体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎等が発症することから、これを多く含む油脂の利用が望まれ、2005年には、厚生労働省よりα−リノレン酸等のω3系高度不飽和脂肪酸を合計で1g/日という摂取目標量(成人)が定められている。
【0003】
他方、ジアシルグリセロールを高濃度に含む油脂は、食後の血中トリグリセリド(中性脂肪)の増加を抑制し、体内への蓄積性が少ない等の生理作用を有することが報告されている。
そこで、これまでに、α−リノレン酸とジアシルグリセロールの生理活性機能を有効に発現させるべく、ジグリセリド40〜99.7重量%等を含有し、かつジグリセリドを構成するアシル基中、ω3系不飽和アシル基含有量が15〜89.5重量%であり、モノエンアシル基含有量が10〜84.5重量%である油脂組成物(特許文献1)、構成脂肪酸の15〜90重量%が、ω3系不飽和脂肪酸であるモノグリセリド及びジグリセリドを合計で5〜100重量%含有し、酸化安定性指数(100℃におけるランシマット透導時間)が7以上である油脂組成物(特許文献2)、構成脂肪酸の15〜90重量%が炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸であり、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1〜6であるジグリセリドを60〜100重量%含有する油脂組成物(特許文献3)、構成脂肪酸の15〜90重量%が炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸であるジグリセリド5〜59.9重量%等を含有する油脂組成物(特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−40386号公報
【特許文献2】特開2002−322490号公報
【特許文献3】特開2002−138296号公報
【特許文献4】特開2002−138297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の研究によれば、構成脂肪酸中にα−リノレン酸を豊富に含むジアシルグリセロール含有油脂は、低温下で結晶が析出して白濁や沈殿を生じやすいことが判明した。とりわけ、ジアシルグリセロールの濃度が高濃度になるほど、結晶化しやすい傾向があった。
したがって、本発明は、低温での結晶化が抑制されて、白濁や沈殿が生じ難いα−リノレン酸を豊富に含むジアシルグリセロール高含有油脂を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため、α−リノレン酸を豊富に含むジアシルグリセロール高含有油脂の脂肪酸組成に着目して鋭意研究を行ったところ、パルミチン酸とステアリン酸の合計量、特にステアリン酸量を少なくし、且つ、パルミチン酸とステアリン酸の比率を一定範囲とすれば、斯かる油脂の低温での結晶化を抑制できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が40質量%以上、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が6質量%以下、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が3質量%未満、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.1以上3.5未満、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上
を満たす油脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、α−リノレン酸とジアシルグリセロールの含有量が高く、生理効果に優れるものでありながら、低温下で白濁や沈殿を生じ難く、外観が良好な油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の油脂組成物は、次の(1)〜(4)を満たす。
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が40質量%以上、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が6質量%以下、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が3質量%未満、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.1以上3.5未満、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上
本発明において、油脂は、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びトリアシルグリセロールのいずれか1種以上を含むものである。油脂の種類に特に制限はなく、食用油脂として使用できるものであれば何れでもよい。
【0010】
本発明において、油脂組成物中の油脂の含有量は、使用性の点から、好ましくは90質量%(以下、単に「%」とする)以上、より好ましくは95%以上であり、また、好ましくは100%以下である。油脂組成物中の油脂の含有量は、好ましくは90%以上100%以下であり、より好ましくは95%以上100%以下である。
【0011】
本発明において、油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は40%以上であるが、生理効果の点から、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは52%以上、更に好ましくは55%以上であり、また、酸化安定性の点から、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である。
油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は、40%以上80%以下、好ましくは45%以上80%以下、より好ましくは50%以上80%以下、より好ましくは50%以上70%以下、更に好ましくは52%以上70%以下、更に好ましくは55%以上70%以下、更に好ましくは55%以上60%以下である。なお、本明細書における脂肪酸量は遊離脂肪酸換算量である。
【0012】
α−リノレン酸は、シス型であることが生理効果の点、酸化安定性の点、安全性の点から好ましい。
油脂を構成する脂肪酸中のシス型α−リノレン酸の含有量は、同様の点から、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上、更に好ましくは47%以上、更に好ましくは50%以上であり、また、好ましくは80%以下、より好ましくは68%以下、より好ましくは62%以下、更に好ましくは58%以下である。
油脂を構成する脂肪酸中のシス型α−リノレン酸の含有量は、好ましくは35%以上80%以下、より好ましくは40%以上80%以下、更に好ましくは45%以上80%以下、更に好ましくは47%以上68%以下、更に好ましくは47%以上62%以下、より好ましくは50%以上58%以下である。
【0013】
本発明において、油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量は6.0%以下であるが、耐冷性を良好にする点から、好ましくは5.5%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは4.5%以下、更に好ましくは4.0%以下である。また、工業的な生産性の点から、好ましくは0.5%以上である。
油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量は、好ましくは0.5%以上6.0%以下、更に好ましくは0.5%以上5.5%以下、更に好ましくは0.5%以上5.0%以下、更に好ましくは0.5%以上4.5%以下、更に好ましくは0.5%以上4.0%以下である。
飽和脂肪酸の種類は特に限定されないが、好ましくは炭素数14〜24の飽和脂肪酸、より好ましくは炭素数16〜22の飽和脂肪酸、更に好ましくは炭素数16、18の飽和脂肪酸である。
【0014】
本発明において、飽和脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、100%がより好ましい。
【0015】
本発明において、油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量は6%以下であるが、耐冷性を良好にする点から、好ましくは5.5%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは4.5%以下、更に好ましくは4.0%以下である。また、工業的な生産性の点から、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上である。
油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量は、好ましくは0.5%以上6.0%以下、更に好ましくは0.5%以上5.5%以下、更に好ましくは0.5%以上5.0%以下、更に好ましくは0.5%以上4.5%以下、更に好ましくは0.5%以上4.0%以下、更に好ましくは1%以上4.0%以下である。
【0016】
本発明においては、特に炭素数18の飽和脂肪酸を低減することで、耐冷性を良好とすることができる。
本発明において、油脂を構成する脂肪酸中の炭素数18の飽和脂肪酸の含有量は3%未満であるが、耐冷性を良好にする点から、好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5%以下である。また、工業的な生産性の点から、好ましくは0.2%以上である。
油脂を構成する脂肪酸中の炭素数18の飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは0.2%以上3.0%未満、より好ましくは0.2%以上2.5%以下、更に好ましくは0.2%以上2.0%以下、更に好ましくは0.2%以上1.5%以下である。
【0017】
また、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]の比率を一定範囲とすることで、5℃のみならず、0℃での低温耐性を向上させ、より耐冷性を良好とすることができる。
本発明において、油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]は0.1以上3.5未満であるが、耐冷性を良好にする点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上であり、また、工業的な生産性の点から、好ましくは3.2以下であり、より好ましくは3.0以下である。
油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]は、好ましくは0.2以上3.5未満、より好ましくは0.3以上3.5未満、更に好ましくは0.3以上3.2以下であり、更に好ましくは0.4以上3.0以下である。
【0018】
油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸の含有量は、生理効果の点、耐冷性を良好にする点から、好ましくは4.6%以下、より好ましくは4.3%以下、更に好ましくは3.6%以下、更に好ましくは3.0%以下である。また、工業的な生産性の点から、好ましくは0.5%以上である。
油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは0.5%以上4.6%以下、更に好ましくは0.5%以上4.3%以下、更に好ましくは0.5%以上3.6%以下、更に好ましくは0.5%以上3.0%以下である。
【0019】
油脂を構成する残余の構成脂肪酸としては、炭素数14〜24、好ましくは炭素数16〜22の不飽和脂肪酸が挙げられる。
なかでも、油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸(C18:2)の含有量は、工業的生産性の点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、また、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。
油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量は、好ましくは5%以上40%以下、より好ましくは5%以上30%以下、更に好ましくは10%以上20%以下である。
【0020】
また、油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸(C18:1)の含有量は、工業的生産性の点から、好ましくは10%以上であり、また、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量は、好ましくは10%以上50%以下、より好ましくは10%以上40%以下、更に好ましくは10%以上30%以下である。
【0021】
本発明の油脂組成物は、ジアシルグリセロールを25%以上含有する。ジアシルグリセロールの濃度が高濃度になるほど、低温下で結晶が析出して白濁や沈殿を生じやすい傾向があるため、ジアシルグリセロールを高含有する油脂に本発明を適用するのが好ましい。油脂組成物中のジアシルグリセロールの含有量は、効果を有効に発現する点、生理効果の点から、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、更に好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上であり、また、好ましくは96%以下、より好ましくは95%以下、更に好ましくは94%以下である。
油脂組成物中のジアシルグリセロールの含有量は、好ましくは25%以上96%以下、より好ましくは30%以上96%以下、更に好ましくは50%以上95%以下、更に好ましくは55%以上95%以下、更に好ましくは60%以上95%以下、更に好ましくは65%以上94%以下、更に好ましくは70%以上94%以下、更に好ましくは80%以上94%以下、更に好ましくは83%以上94%以下、更に好ましくは85%以上94%以下である。
また、耐冷性を良好にする点と油脂の工業的生産性の点においては、油脂組成物中のジアシルグリセロールの含有量は、好ましくは25%以上70%未満、より好ましくは25%以上60%以下、更に好ましくは25%以上55%以下である。
【0022】
本発明の油脂組成物は、トリアシルグリセロールを含有するのが好ましく、その含有量は、油脂の工業的生産性の点から、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、更に好ましくは5%以上であり、また、好ましくは75%以下、より好ましくは72%以下、より好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下である。
油脂組成物中のトリアシルグリセロールの含有量は、好ましくは1%以上75%以下、より好ましくは2%以上75%以下、更に好ましくは2%以上72%以下、更に好ましくは5%以上50%以下、更に好ましくは5%以上25%以下である。
油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量は、風味、油脂の工業的生産性の点から、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下であり、また、好ましくは0%超である。油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量は、0%でもよい。
油脂組成物中の遊離脂肪酸又はその塩の含有量は、風味の点から、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下であり、また、好ましくは0%超である。油脂組成物中の遊離脂肪酸又はその塩の含有量は、0%でもよい。
トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールの脂肪酸組成は同じであることが、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0023】
本発明の油脂組成物は、α−リノレン酸とジアシルグリセロールの生理効果を発揮させ、且つ低温下で白濁や沈殿が生じるのを抑えて、外観を良好とする観点から、
次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が50〜70%、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が1〜6%、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が0.2%以上3.0%未満、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.1以上3.5未満、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が25%以上
を満たし、さらに次の(5)〜(9)のうち少なくとも1つを満たす油脂組成物であることが好ましい。
(5)油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量が1〜6%である。
(6)油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が10〜20%である。
(7)油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が10〜30%である。
(8)トリアシルグリセロールの含有量が5〜72%である。
(9)モノアシルグリセロールの含有量が1%以下である。
また、同様の観点から、本発明の油脂組成物は、
次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が50〜70%、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が1〜5.5%、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が0.2〜2.5%、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.2以上3.5未満、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が70〜94%
を満たし、さらに次の(5)〜(9)のうち少なくとも1つを満たす油脂組成物であることがより好ましい。
(5)油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量が1〜5.5%である。
(6)油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が10〜20%である。
(7)油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が10〜30%である。
(8)トリアシルグリセロールの含有量が5〜25%である。
(9)モノアシルグリセロールの含有量が1%以下である。
また、同様の観点から、本発明の油脂組成物は、
次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が55〜70%、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が1〜4%、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が0.2〜1.5%、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が1〜2.5、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が70〜94%
を満たし、さらに次の(5)〜(9)のうち少なくとも1つを満たす油脂組成物であることがより更に好ましい。
(5)油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量が1〜4%である。
(6)油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が10〜20%である。
(7)油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が10〜30%である。
(8)トリアシルグリセロールの含有量が5〜25%である。
(9)モノアシルグリセロールの含有量が1%以下である。
また、α−リノレン酸とジアシルグリセロールの生理効果を発揮させ、且つ低温下で白濁や沈殿が生じるのを抑えて、外観を良好とする観点と、油脂の工業的生産性の観点から、本発明の油脂組成物は、
次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が55〜70%、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が0.5〜6%、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が0.2%以上3%未満、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.4〜3.0、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が25%以上70%未満
を満たし、さらに次の(5)〜(9)のうち少なくとも1つを満たす油脂組成物であることが好ましい。
(5)油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量が0.5〜6%である。
(6)油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が10〜20%である。
(7)油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が10〜30%である。
(8)トリアシルグリセロールの含有量が20〜72%である。
(9)モノアシルグリセロールの含有量が1%以下である。
【0024】
本発明の油脂組成物は、ジアシルグリセロールを含有する油脂から調製することができる。必要に応じて通常の食用油脂を配合してもよい。
ジアシルグリセロールを含有する油脂は、油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応、油脂とグリセリンとのエステル交換反応(グリセロリシス)等により得ることができる。
エステル化反応とグリセロリシス反応は、アルカリ金属又はその合金、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド等の化学触媒を用いる化学法と、リパーゼ等の酵素を用いる酵素法とに大別される。
なかでも、脂肪酸組成を制御する点から、後述する油脂由来の分別脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応が好ましい。
【0025】
本発明において、油脂(食用油脂)は、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよい。例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア脂、藻油等の植物性油脂;魚油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂;あるいはそれらのエステル交換油、水素添加油、分別油等の油脂類を挙げることができる。
なかでも、使用性の点から、植物性油脂を用いるのが好ましく、更に低温耐性に優れた液状油脂を用いるのが好ましく、更にα−リノレン酸を豊富に含むシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油及びサチャインチ油から選ばれる少なくとも1種の油脂を用いるのが好ましい。なお、液状油脂とは、基準油脂分析試験法2.3.8−27による冷却試験を実施した場合、20℃で液状である油脂をいう。
【0026】
油脂由来の脂肪酸は、油脂を加水分解して得ることができる。油脂を加水分解する方法としては、高温高圧分解法と酵素分解法が挙げられる。高温高圧分解法とは、油脂に水を加えて、高温、高圧の条件で反応することにより、脂肪酸とグリセリンを得る方法である。また、酵素分解法とは、油脂に水を加えて、油脂加水分解酵素を触媒として用い、低温の条件で反応することにより、脂肪酸とグリセリンを得る方法である。
加水分解反応は、常法に従って行うことができる。
【0027】
油脂の加水分解後は、加水分解反応物を分別して固体を除去することが好ましい。分別方法としては、溶剤分別法、自然分別法(ドライ分別法)、湿潤剤分別法が挙げられる。
析出した固体の除去手段としては、静置分離、濾過、遠心分離、脂肪酸に湿潤剤水溶液を混合し分離する方法等が挙げられる。
【0028】
油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応は、酵素法により温和な条件で行うのが風味等の点で優れており好ましい。
酵素の使用量は、酵素の活性を考慮して適宜決定することができるが、反応速度を向上する点から、固定化酵素を使用する場合は、エステル化反応原料の合計量100質量部に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%である。
エステル化反応の反応温度は、反応速度を向上する点、酵素の失活を抑制する点から、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜80℃、更に好ましくは30〜60℃である。また、反応時間は、工業的な生産性の点から、好ましくは15時間以内、より好ましくは1〜12時間、更に好ましくは2〜10時間である。
脂肪酸とグリセリンとの接触手段としては、浸漬、攪拌、固定化リパーゼを充填したカラムにポンプ等で通液する方法等が挙げられる。
【0029】
エステル化反応の後は、通常油脂に対して用いられる精製工程を行ってもよい。具体的には、蒸留処理、酸処理、水洗、脱色、脱臭等の工程を挙げることができる。
【0030】
本発明の油脂組成物は、酸化安定性の点から、抗酸化剤を含有することが好ましい。
油脂組成物中の抗酸化剤の含有量は、風味、酸化安定性、着色抑制等の点から、好ましくは0.005%以上1.0%以下、より好ましくは0.04%以上0.75%以下、更に好ましくは0.08%以上0.5%以下である。
抗酸化剤としては、食品に使用するものであれば特に制限はないが、天然抗酸化剤、レシチン、トコフェロール、アスコルビルパルミテート、アスコルビルステアレート、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びブチルヒドロキシアニソール(BHA)等から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0031】
本発明の油脂組成物は、一般の食用油脂と同様に使用でき、油脂を用いた各種飲食品や飼料に応用することができる。飲食品としては、通常の飲食品の他、例えば、α−リノレン酸やジアシルグリセロールの生理効果を標榜した特定保健用食品、機能性表示食品等が挙げられる。
飲食品の形態としては、固形、半固形又は液状であり得、例えば、飲料、油中水型油脂含有食品、水中油型油脂含有食品、ベーカリー食品、菓子、冷凍食品、レトルト食品、さらには、錠剤、カプセル剤、トローチ剤等の栄養補給用組成物が挙げられる。
飼料としては、牛、豚等に用いる家畜用飼料、ウサギ、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、エビ等に用いる魚介類用飼料、犬、猫等に用いるペットフード等が挙げられる。
【0032】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の油脂組成物を開示する。
【0033】
<1>次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が40質量%以上、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が6質量%以下、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が3質量%未満、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.1以上3.5未満、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上
を満たす油脂組成物。
【0034】
<2>油脂組成物中の油脂の含有量が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下であり、また、好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは95質量%以上100質量%以下である<1>に記載の油脂組成物。
<3>油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは52質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下であり、また、好ましくは40質量%以上80質量%以下、より好ましくは45質量%以上80質量%以下、より好ましくは50質量%以上80質量%以下、更に好ましくは50質量%以上70質量%以下、更に好ましくは52質量%以上70質量%以下、更に好ましくは55質量%以上70質量%以下、更に好ましくは55質量%以上60質量%以下である<1>又は<2>に記載の油脂組成物。
<4>油脂を構成する脂肪酸中のシス型α−リノレン酸の含有量が、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、更に好ましくは47質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは68質量%以下、より好ましくは62質量%以下、更に好ましくは58質量%以下であり、また、好ましくは35質量%以上80質量%以下、より好ましくは40質量%以上80質量%以下、更に好ましくは45質量%以上80質量%以下、更に好ましくは47質量%以上68質量%以下、更に好ましくは47質量%以上62質量%以下、より好ましくは50質量%以上58質量%以下である<1>〜<3>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<5>油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が、好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは4.5質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下であり、また、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは0.5質量%以上6.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上5.5質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上5.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上4.5質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上4.0質量%以下、更に好ましくは1質量%以上4.0質量%以下である<1>〜<4>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<6>油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量が、好ましくは6質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上6.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上5.5質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上5.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上4.5質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上4.0質量%以下である<1>〜<5>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<7>油脂を構成する脂肪酸中の炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下であり、また、好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは0.2質量%以上3.0質量%未満、より好ましくは0.2質量%以上2.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以上2.0質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以上1.5質量%以下である<1>〜<6>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<8>油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上であり、また、好ましくは3.2以下、より好ましくは3.0以下であり、また、好ましくは0.2以上3.5未満、より好ましくは0.3以上3.5未満、更に好ましくは0.3以上3.2以下であり、更に好ましくは0.4以上3.0以下である<1>〜<7>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<9>油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは4.6質量%以下、より好ましくは4.3質量%以下、更に好ましくは3.6質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下であり、また、好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは0.5質量%以上4.6質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上4.3質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上3.6質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上3.0質量%以下である<1>〜<8>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<10>油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下であり、また、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上30質量%以下、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下である<1>〜<9>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<11>油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が、好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下であり、また、好ましくは10質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下、更に好ましくは10質量%以上30質量%以下である<1>〜<10>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<12>油脂組成物中のジアシルグリセロールの含有量が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、更に好ましく70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは83質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であり、また、好ましくは96質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは94質量%以下であり、また、好ましくは25質量%以上96質量%以下、より好ましくは30質量%以上96質量%以下、更に好ましくは50質量%以上95質量%以下、更に好ましくは55質量%以上95質量%以下、更に好ましくは60質量%以上95質量%以下、更に好ましくは65質量%以上94質量%以下、更に好ましくは70質量%以上94質量%以下、更に好ましくは80質量%以上94質量%以下、更に好ましくは83質量%以上94質量%以下、更に好ましくは85質量%以上94質量%以下である<1>〜<11>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<13>油脂組成物中のトリアシルグリセロールの含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下、より好ましくは72質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは25質量%以下であり、また、好ましくは1質量%以上75質量%以下、より好ましくは2質量%以上75質量%以下、更に好ましくは2質量%以上72質量%以下、更に好ましくは5質量%以上50質量%以下、更に好ましくは5質量%以上25質量%以下である<1>〜<12>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<14>油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量は、風味、油脂の工業的生産性の点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、また、好ましくは0質量%超であり、また、好ましくは0質量%である<1>〜<13>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<15>油脂組成物中の遊離脂肪酸又はその塩の含有量が、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、また、好ましくは0質量%超であり、また、好ましくは0質量%である<1>〜<14>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<16>好ましくは油脂由来の分別脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応油を含有する<1>〜<15>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<17>分別脂肪酸が、好ましくはシソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油及びサチャインチ油から選ばれる少なくとも1種の油脂に由来する<16>に記載の油脂組成物。
<18>好ましくは抗酸化剤、より好ましくは天然抗酸化剤、レシチン、トコフェロール、アスコルビルパルミテート、アスコルビルステアレート、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びブチルヒドロキシアニソール(BHA)から選ばれる少なくとも1種の抗酸化剤を含有する<1>〜<17>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<19>油脂組成物中の抗酸化剤の含有量が、好ましくは0.005質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.04質量%以上0.75質量%以下、更に好ましくは0.08質量%以上0.5質量%以下である<18>に記載の油脂組成物。
<20><1>〜<19>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飲食品。
<21><1>〜<19>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飼料。
<22>次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が50質量%以上70質量%以下 、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が1質量%以上6質量%以下、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が0.2質量%以上3.0質量%未満、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.1以上3.5未満、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上
を満たす油脂組成物。
<23>油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量が1質量%以上6質量%以下である<22>記載の油脂組成物。
<24>油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が10質量%以上20質量%以下である<22>又は<23>記載の油脂組成物。
<25>油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が10質量%以上30質量%以下である<22>〜<24>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<26>油脂組成物中のトリアシルグリセロールの含有量が5質量%以上72質量%以下である<22>〜<25>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<27>油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量が1質量%以下である<22>〜<26>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<28>油脂由来の分別脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応油を含有する<22>〜<27>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<29>分別脂肪酸がアマニ油及び/又はエゴマ油に由来する<28>記載の油脂組成物。
<30><22>〜<29>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飲食品。
<31><22>〜<29>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飼料。
<32>次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が50質量%以上70質量%以下 、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が1質量%以上5.5質量%以下、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が0.2質量%以上2.5質量%以下、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.2以上3.5未満、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が70質量%以上94質量%以下
を満たす油脂組成物。
<33>油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量が1質量%以上5.5質量%以下である<32>記載の油脂組成物。
<34>油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が10質量%以上20質量%以下である<32>又は<33>記載の油脂組成物。
<35>油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が10質量%以上30質量%以下である<32>〜<34>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<36>油脂組成物中のトリアシルグリセロールの含有量が5質量%以上25質量%以下である<32>〜<35>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<37>油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量が1質量%以下である<32>〜<36>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<38>油脂由来の分別脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応油を含有する<32>〜<37>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<39>分別脂肪酸がアマニ油及び/又はエゴマ油に由来する<38>記載の油脂組成物。
<40><32>〜<39>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飲食品。
<41><32>〜<39>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飼料。
<42>次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が55質量%以上70質量%以下、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が1質量%以上4質量%以下、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が0.2質量%以上1.5質量%以下、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が1以上2.5以下、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が70質量%以上94質量%以下
を満たす油脂組成物。
<43>油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量が1質量%以上4質量%以下である<42>記載の油脂組成物。
<44>油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が10質量%以上20質量%以下である<42>又は<43>記載の油脂組成物。
<45>油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が10質量%以上30質量%以下である<42>〜<44>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<46>油脂組成物中のトリアシルグリセロールの含有量が5質量%以上25質量%以下である<42>〜<45>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<47>油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量が1質量%以下である<42>〜<46>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<48>油脂由来の分別脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応油を含有する<42>〜<47>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<49>分別脂肪酸がアマニ油及び/又はエゴマ油に由来する<48>記載の油脂組成物。
<50><42>〜<49>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飲食品。
<51><42>〜<49>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飼料。
<52>次の(1)〜(4):
(1)油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量が55質量%以上70質量%以下、
(2)油脂を構成する脂肪酸中の炭素数16の飽和脂肪酸と炭素数18の飽和脂肪酸の合計含有量が0.5質量%以上6質量%以下、且つ、炭素数18の飽和脂肪酸の含有量が0.2質量%以上3質量%未満、
(3)油脂を構成する脂肪酸における、炭素数18の飽和脂肪酸(S)に対する炭素数16の飽和脂肪酸(P)の含有質量比[(P)/(S)]が0.4以上3.0以下、及び
(4)ジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上70質量%未満
を満たす油脂組成物。
<53>油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量が0.5質量%以上6質量%以下である<52>記載の油脂組成物。
<54>油脂を構成する脂肪酸中のリノール酸の含有量が10質量%以上20質量%以下である<52>又は<53>記載の油脂組成物。
<55>油脂を構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量が10質量%以上30質量%以下である<52>〜<54>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<56>油脂組成物中のトリアシルグリセロールの含有量が20質量%以上72質量%以下である<52>〜<55>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<57>油脂組成物中のモノアシルグリセロールの含有量が1質量%以下である<52>〜<56>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<58>油脂由来の分別脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応油を含有する<52>〜<57>のいずれか1に記載の油脂組成物。
<59>分別脂肪酸がアマニ油及び/又はエゴマ油に由来する<58>記載の油脂組成物。
<60><52>〜<59>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飲食品。
<61><52>〜<59>のいずれか1に記載の油脂組成物を含有する飼料。
【実施例】
【0035】
〔分析方法〕
(i)油脂のグリセリド組成
ガラス製サンプル瓶に、油脂サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.0mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して分析した。
<GLC分析条件>
(条件)
装置:アジレント6890シリーズ(アジレントテクノジー社製)
インテグレーター:ケミステーションB 02.01 SR2(アジレントテクノジー社製)
カラム:DB−1ht 10m×0.25mm×0.2μm (Agilent J&W社製)
キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:50)、T=340℃
ディテクター:FID、T=350℃
オーブン温度:80℃から10℃/分で340℃まで昇温、15分間保持
【0036】
(ii)油脂の構成脂肪酸組成
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られた油脂サンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)に準拠して測定した。
<GLC分析条件>
カラム:CP−SIL88 50m×0.25mm×0.2μm (VARIAN)
キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:50)、T=300℃
ディテクター:FID、T=300℃
オーブン温度:150℃5min保持→1℃/min昇温→160℃5min保持→2℃/min昇温→200℃10min保持→10℃/min昇温→220℃5min保持
【0037】
実施例1〜10及び比較例1〜6
〔油脂組成物の調製〕
アマニ油又はエゴマ油を酵素により加水分解して得た脂肪酸を種々の条件で冷却し、析出した脂肪酸を遠心分離により分別して分別脂肪酸を得た。
分別脂肪酸300質量部とグリセリン47質量部とを混合し、イオン交換樹脂に固定化した1,3位選択リパーゼ(ノボザイム社製)を触媒としてエステル化反応を行った。固定化酵素を濾別した後、反応終了品を分子蒸留し、酸処理及び水洗(蒸留水3回)を行い、処理油を得た。処理油を脱臭して油脂組成物A〜Pを得た。
【0038】
油脂組成物A〜Pのグリセリド組成及び脂肪酸組成を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
〔低温耐性の評価〕
油脂組成物A〜Pをガラスバイアル(SV−50、日電理化硝子(株)製)に30g分注し、蓋をして、5℃又は0℃の冷蔵庫内に1日間静置し、目視にて次に示す基準により結晶の有無を確認した。結果を表2に示す。
【0041】
3:清澄
2:微量の結晶が析出し、僅かに底面に堆積
1:全体に結晶が析出して白濁又は沈殿
【0042】
表2のとおり、実施例1〜10の油脂組成物では、5℃の低温下において清澄の状態を保持し、また、0℃においても結晶化による外観の低下を生じ難かった。
他方、ジアシルグリセロールの濃度が28%の比較例5の油脂組成物では0℃の時点で全体に結晶が析出して白濁し、ジアシルグリセロールの濃度が50%以上の比較例6や比較例1の油脂組成物では5℃の時点でも全体に結晶が析出して沈殿が生じた。また、比較例2〜4の油脂組成物も耐冷性に劣った。
【0043】
【表2】