特許第6364541号(P6364541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6364541
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】変速機の制御装置及び変速機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20180712BHJP
   F16H 59/72 20060101ALI20180712BHJP
   F16H 61/662 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   F16H61/12
   F16H59/72
   F16H61/662
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-507603(P2017-507603)
(86)(22)【出願日】2016年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2016054590
(87)【国際公開番号】WO2016152331
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2017年9月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-57849(P2015-57849)
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱野 正宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋次
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩介
(72)【発明者】
【氏名】大園 青加
【審査官】 星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−004863(JP,A)
【文献】 特開2010−180993(JP,A)
【文献】 特開2014−114828(JP,A)
【文献】 特開2006−090403(JP,A)
【文献】 特開2010−203511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/12
F16H 59/72
F16H 61/662
F16H 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリ圧を制御することにより溝幅が変更されるプライマリプーリと、セカンダリ圧を制御することにより溝幅が変更されるセカンダリプーリと、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとに巻きかけられたベルトと、を有するバリエータと、
前記プライマリ圧及び前記セカンダリ圧の元圧となるライン圧の実圧を制御するライン圧用油圧アクチュエータと、
前記プライマリ圧の実圧を制御するプライマリ圧用油圧アクチュエータと、
前記セカンダリ圧の実圧を制御するセカンダリ圧用油圧アクチュエータと、
を有する変速機において制御を行う変速機の制御装置であって、
前記プライマリ圧用油圧アクチュエータのフェールを判定するフェール判定部と、
前記ライン圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるライン指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記ライン指示圧を可変に制御することにより、前記バリエータの変速比を連続的に変化させるライン指示圧制御部と、
前記プライマリ圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるプライマリ指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記プライマリ指示圧を第1所定値以上の値であるプライマリ圧設定値に固定するプライマリ指示圧制御部と、
前記セカンダリ圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるセカンダリ指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記セカンダリ指示圧を第2所定値以上の値であるセカンダリ圧設定値に固定するセカンダリ指示圧制御部と、
を有する変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機の制御装置であって、
前記プライマリ指示圧制御部は、前記フェールが判定された場合には、前記プライマリ指示圧が第1所定時間をかけて前記プライマリ圧設定値になるように前記プライマリ指示圧を制御する、
変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の変速機の制御装置であって、
前記セカンダリ指示圧制御部は、前記フェールが判定された場合には、前記セカンダリ指示圧が第2所定時間をかけて前記セカンダリ圧設定値になるように前記セカンダリ指示圧を制御する、
変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項に記載の変速機の制御装置であって、
前記セカンダリ指示圧制御部は、前記フェールが判定された場合には、前記プライマリ指示圧の変化の開始後に前記セカンダリ指示圧の変化を開始する、
変速機の制御装置。
【請求項5】
プライマリ圧を制御することにより溝幅が変更されるプライマリプーリとセカンダリ圧を制御することにより溝幅が変更されるセカンダリプーリと前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとに巻きかけられたベルトとを有するバリエータと、前記プライマリ圧及び前記セカンダリ圧の元圧となるライン圧の実圧を制御するライン圧用油圧アクチュエータと、前記プライマリ圧の実圧を制御するプライマリ圧用油圧アクチュエータと、前記セカンダリ圧の実圧を制御するセカンダリ圧用油圧アクチュエータと、を有する変速機において制御を行うための変速機の制御方法であって、
前記プライマリ圧用油圧アクチュエータのフェールを判定することと、
前記ライン圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるライン指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記ライン指示圧を可変に制御することにより、前記バリエータの変速比を連続的に変化させることと、
前記プライマリ圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるプライマリ指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記プライマリ指示圧を第1所定値以上の設定値であるプライマリ圧設定値に固定することと、
前記セカンダリ圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるセカンダリ指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記セカンダリ指示圧を第2所定値以上の設定値であるセカンダリ圧設定値に固定することと、
を含む変速機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の制御装置及び変速機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無段変速機でフェールセーフを行う技術がJP8−4863Aに開示されている。この技術は、プライマリプーリの制御圧であるプライマリ圧を制御するソレノイドバルブが故障した場合に、次のようにライン圧を固定する。すなわち、この技術は、車速が所定値以下である場合にはライン圧を最大圧に固定し、車速が所定値よりも大きい場合にはライン圧を最小圧に固定する。この技術は、セカンダリプーリの制御圧であるセカンダリ圧をライン圧に固定する片調圧方式によって無段変速機を変速する。
【発明の概要】
【0003】
無段変速機の変速方式には、プライマリ圧及びセカンダリ圧のうち一方をライン圧に固定せずに、これらの双方を可変とする両調圧方式もある。
【0004】
ところが、JP8−4863Aでは、両調圧方式で変速を行う場合のフェールセーフ技術については開示されていない。また、プライマリ圧の実圧を制御するソレノイドバルブ等のプライマリ圧用油圧アクチュエータのフェールに関し、フェールモードは様々であり、容易に判別できない場合がある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、両調圧方式で変速を行う場合において、プライマリ圧の実圧を制御するプライマリ圧用油圧アクチュエータのフェール時に有効なフェールセーフを行うことができる変速機の制御装置及び変速機の制御方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明のある態様の変速機の制御装置は、プライマリ圧を制御することにより溝幅が変更されるプライマリプーリと、セカンダリ圧を制御することにより溝幅が変更されるセカンダリプーリと、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとに巻きかけられたベルトと、を有するバリエータと、前記プライマリ圧及び前記セカンダリ圧の元圧となるライン圧の実圧を制御するライン圧用油圧アクチュエータと、前記プライマリ圧の実圧を制御するプライマリ圧用油圧アクチュエータと、前記セカンダリ圧の実圧を制御するセカンダリ圧用油圧アクチュエータと、を有する変速機において制御を行う。当該変速機の制御装置は、前記プライマリ圧用油圧アクチュエータのフェールを判定するフェール判定部と、前記ライン圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるライン指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記ライン指示圧を可変に制御することにより、前記バリエータの変速比を連続的に変化させるライン指示圧制御部と、前記プライマリ圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるプライマリ指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記プライマリ指示圧を第1所定値以上の値であるプライマリ圧設定値に固定するプライマリ指示圧制御部と、前記セカンダリ圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるセカンダリ指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記セカンダリ指示圧を第2所定値以上の値であるセカンダリ圧設定値に固定するセカンダリ指示圧制御部と、を有する。
【0007】
本発明の別の態様によれば、プライマリ圧を制御することにより溝幅が変更されるプライマリプーリとセカンダリ圧を制御することにより溝幅が変更されるセカンダリプーリと前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとに巻きかけられたベルトとを有するバリエータと、前記プライマリ圧及び前記セカンダリ圧の元圧となるライン圧の実圧を制御するライン圧用油圧アクチュエータと、前記プライマリ圧の実圧を制御するプライマリ圧用油圧アクチュエータと、前記セカンダリ圧の実圧を制御するセカンダリ圧用油圧アクチュエータと、を有する変速機において制御を行うための変速機の制御方法であって、前記プライマリ圧用油圧アクチュエータのフェールを判定することと、前記ライン圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるライン指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記ライン指示圧を可変に制御することにより、前記バリエータの変速比を連続的に変化させることと、前記プライマリ圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるプライマリ指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記プライマリ指示圧を第1所定値以上の設定値であるプライマリ圧設定値に固定することと、前記セカンダリ圧用油圧アクチュエータへの指示圧であるセカンダリ指示圧を可変に制御する一方、前記フェールが判定された場合には、前記セカンダリ指示圧を第2所定値以上の設定値であるセカンダリ圧設定値に固定することと、を含む変速機の制御方法が提供される。
【0008】
これらの態様によれば、フェールが判定された場合に、フェールモードに関わらずプライマリ指示圧を第1所定値以上の値に固定するので、指示圧に応じて実圧が変化するフェールモードでは、プライマリ圧の実圧を高めることができる。また、セカンダリ指示圧を第2所定値以上の値に固定するので、セカンダリ圧の実圧を高めることもできる。結果、両調圧方式で変速を行う場合において、プライマリ圧用油圧アクチュエータのフェール時に、フェールモードが指示圧に応じて実圧が変化するフェールモードであった場合に、ベルト滑りの発生を抑制するフェールセーフを行うことができる。
【0009】
また、これらの態様によれば、フェールが判定された場合に、ライン指示圧を可変に制御することによりバリエータの変速比を連続的に変化させるので、変速可能な範囲内で変速を行うことで、変速機を搭載する車両の運転性悪化を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、変速機を含む車両の要部を示す図である。
図2図2は、コントローラが行う制御の一例をフローチャートで示す図である。
図3図3は、図2のフローチャートに対応するタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において、実圧という表現は主に、実圧であることを強調するためや、指示圧との区別を図るために用いる。このため、本明細書では実圧であっても、敢えて実圧とまでは言わないこともある。
【0012】
図1は、変速機100を含む車両の要部を示す図である。車両は、エンジン1と、トルクコンバータ2と、バリエータ20と、副変速機構30と、車軸4と、駆動輪5と、を備える。
【0013】
エンジン1は、車両の動力源を構成する。トルクコンバータ2は、流体を介して動力を伝達する。トルクコンバータ2では、ロックアップクラッチ2aを締結することで、動力伝達効率を高めることができる。バリエータ20と副変速機構30とは、入力された回転速度を変速比に応じた回転速度で出力する。変速比は、入力回転速度を出力回転速度で割って得られる値である。車軸4は、減速ギヤや差動装置で構成される駆動車軸である。エンジン1の動力は、トルクコンバータ2、バリエータ20、副変速機構30及び車軸4を介して駆動輪5に伝達される。
【0014】
バリエータ20は無段変速機構であり、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、ベルト23と、を備える。以下では、プライマリプーリ21を単にプーリ21とも称し、セカンダリプーリ22を単にプーリ22とも称す。
【0015】
プライマリプーリ21は、固定円錐板と、可動円錐板と、油圧シリンダ21aと、を備える。セカンダリプーリ22は、固定円錐板と、可動円錐板と、油圧シリンダ22aと、を備える。プーリ21、22それぞれにおいて、固定円錐板と可動円錐板とは、シーブ面を互いに対向させた状態で配置され、V溝を形成する。プーリ21では油圧シリンダ21aが、プーリ22では油圧シリンダ22aが、可動円錐板の背面に設けられ、可動円錐板を軸方向に変位させる。ベルト23は、プーリ21とプーリ22とに巻きかけられる。ベルト23にはVベルトを用いることができる。
【0016】
油圧シリンダ21aには、プライマリプーリ21の制御圧であるプライマリ圧が作用する。プーリ21は、プライマリ圧を制御することによりV溝の幅が変更される。油圧シリンダ22aには、セカンダリプーリ22の制御圧であるセカンダリ圧が作用する。プーリ22は、セカンダリ圧を制御することによりV溝の幅が変更される。
【0017】
プライマリ圧を調整し、プーリ21のV溝の幅を変化させることで、プーリ21とベルト23との接触半径が変化する。セカンダリ圧を調整し、プーリ22のV溝の幅を変化させることで、プーリ22とベルト23との接触半径が変化する。このため、プーリ21やプーリ22のV溝の幅を制御することで、バリエータ20の変速比を無段階に制御することができる。
【0018】
バリエータ20は、このように構成されることで両調圧方式用のバリエータとして構成される。両調圧方式は、プライマリ圧とセカンダリ圧との大小関係が入れ替わる調圧方式である。したがって、両調圧方式では、プライマリ圧とセカンダリ圧との大小関係が、プライマリ圧>セカンダリ圧となる場合と、プライマリ圧=セカンダリ圧となる場合と、プライマリ圧<セカンダリ圧となる場合がある。両調圧方式で変速を行うバリエータ20では、プライマリプーリ21の受圧面積とセカンダリプーリ22の受圧面積とが等しくなるように設定される。また、可動円錐板を付勢するリターンスプリングがセカンダリプーリ22に設けられる。
【0019】
副変速機構30は有段変速機構であり、前進2段、後進1段の変速段を有する。副変速機構30は、前進用変速段として、1速と、1速よりも変速比が小さい2速を有する。副変速機構30は、エンジン1から駆動輪5に至るまでの動力伝達経路において、バリエータ20の出力側に直列に設けられる。副変速機構30は、バリエータ20に直接接続されてもよく、ギヤ列など他の構成を介してバリエータ20に間接的に接続されてもよい。
【0020】
車両では、バリエータ20及び副変速機構30それぞれにおいて、変速比が変更される。このため、車両ではバリエータ20の変速比に副変速機構30の変速比を掛けて得られるバリエータ20及び副変速機構30全体の変速比であるスルー変速比に応じた変速が行われる。
【0021】
バリエータ20は副変速機構30とともに、自動変速機構3を構成する。バリエータ20と副変速機構30とは構造上、個別の変速機構として構成されてもよい。
【0022】
車両は、オイルポンプ10と、油圧制御回路11と、コントローラ12と、をさらに備える。
【0023】
オイルポンプ10は、油圧を発生させる。オイルポンプ10には、エンジン1の動力で駆動する機械式のオイルポンプを用いることができる。
【0024】
油圧制御回路11は、オイルポンプ10がオイル供給によって発生させる油圧を調整してバリエータ20や副変速機構30の各部位に伝達する。油圧制御回路11は、ライン圧ソレノイドバルブ11s、プライマリ圧ソレノイドバルブ11a及びセカンダリ圧ソレノイドバルブ11bを含む。以下では、ライン圧ソレノイドバルブ11sをSOL11sと称す。また、プライマリ圧ソレノイドバルブ11aをSOL11aと称し、セカンダリ圧ソレノイドバルブ11bをSOL11bと称す。
【0025】
SOL11sは、ライン圧の実圧を制御するライン圧用油圧アクチュエータの一例である。SOL11sは具体的には、SOL11sへの指示圧であるライン指示圧に応じて、ライン圧の実圧を制御する。ライン圧は、プライマリ圧及びセカンダリ圧の元圧となる油圧であり、ベルト23の滑りが発生しないように設定される。
【0026】
SOL11aは、プライマリ圧の実圧を制御するプライマリ圧用油圧アクチュエータの一例である。SOL11aは具体的には、SOL11aへの指示圧であるプライマリ指示圧に応じて、プライマリ圧の実圧を制御する。
【0027】
SOL11bは、セカンダリ圧の実圧を制御するセカンダリ圧用油圧アクチュエータの一例である。SOL11bは具体的には、SOL11bへの指示圧であるセカンダリ指示圧に応じて、セカンダリ圧の実圧を制御する。
【0028】
SOL11s、SOL11a及びSOL11bには具体的には、次のようなソレノイドバルブが用いられる。すなわち、通電される電流の大きさに応じてリニアな駆動を行うリニアソレノイドアクチュエータをソレノイド部に用いたソレノイドバルブが用いられる。また、ソレノイド部の駆動に応じてドレーンの度合いを変化させることで調圧を行うバルブ機構をバルブ部に用いたソレノイドバルブが用いられる。このようなソレノイドバルブにおいて、ドレーンポートは指示圧が最大値である場合に全閉にされる。SOL11s、SOL11a及びSOL11bには、通電停止の指示が最大値の指示圧の指示になるノーマルハイタイプのソレノイドバルブが用いられる。
【0029】
本実施形態では、SOL11sは、オイルポンプ10が発生させる油圧を調整してライン圧を生成するライン圧制御弁がさらに組み合わされた構成とされる。また、SOL11aはライン圧からプライマリ圧を生成するプライマリ圧制御弁が、SOL11bはライン圧からセカンダリ圧を生成するセカンダリ圧制御弁が、さらに組み合わされた構成とされる。
【0030】
このような構成のSOL11sは、ライン指示圧に応じてライン圧制御弁の制御圧、換言すればパイロット圧を生成し、生成した制御圧によってライン圧制御弁を制御することで、ライン圧の実圧を制御する。すなわち、本実施形態ではSOL11sは、上述のソレノイドバルブとしてパイロット圧を生成するリニアソレノイドバルブを有するとともに、当該リニアソレノイドバルブが生成したパイロット圧で駆動されライン圧を生成するライン圧制御弁を有した構成される。SOL11a及びSOL11bについても同様である。
【0031】
コントローラ12は、油圧制御回路11を制御する。コントローラ12には、回転センサ41、回転センサ42、回転センサ43の出力信号が入力される。回転センサ41は、バリエータ20の入力側の回転速度を検出するためのバリエータ入力側回転センサに相当するセンサである。回転センサ42は、バリエータ20の出力側の回転速度を検出するためのバリエータ出力側回転センサに相当するセンサである。回転センサ42は具体的には、バリエータ20の出力側且つ副変速機構30の入力側の回転速度を検出する。回転センサ43は、副変速機構30の出力側の回転速度を検出するための副変速機構出力側回転センサに相当するセンサである。
【0032】
バリエータ20の入力側の回転速度は具体的には、バリエータ20の入力軸の回転速度である。バリエータ20の入力側の回転速度は、前述の動力伝達経路において、例えばギヤ列をバリエータ20との間に挟んだ位置の回転速度であってもよい。バリエータ20の出力側の回転速度や、副変速機構30の出力側の回転速度についても同様である。
【0033】
コントローラ12には、このほかアクセル開度センサ44、インヒビタスイッチ45、エンジン回転センサ46などの出力信号が入力される。アクセル開度センサ44は、アクセルペダルの操作量を表すアクセル開度APOを検出する。インヒビタスイッチ45は、セレクトレバーの位置を検出する。エンジン回転センサ46は、エンジン1の回転速度Neを検出する。コントローラ12は、回転センサ43の出力信号に基づき車速VSPを検出することができる。
【0034】
コントローラ12は、これらの信号に基づき変速制御信号を生成する。変速制御信号は、ライン指示圧、プライマリ指示圧及びセカンダリ指示圧を指示するための信号を含む。このため、コントローラ12は、上述した各種の信号に基づき変速制御信号を生成することで、ライン指示圧やプライマリ指示圧やセカンダリ指示圧を可変に制御する。コントローラ12は、生成した変速制御信号を油圧制御回路11に出力する。
【0035】
油圧制御回路11は、コントローラ12からの変速制御信号に基づき、ライン圧、プライマリ圧、セカンダリ圧の実圧を制御するほか、油圧経路の切り換えなどを行う。油圧制御回路11は具体的には、ライン圧、プライマリ圧及びセカンダリ圧それぞれにつき、実圧が指示圧になるように実圧を制御する。
【0036】
これにより、油圧制御回路11からバリエータ20や副変速機構30の各部位に変速制御信号に応じた油圧の伝達が行われる。結果、バリエータ20や副変速機構30の変速比が、変速制御信号に応じた変速比すなわち目標変速比に変更される。
【0037】
目標変速比は、アクセル開度APO及び車速VSPに応じて設定することができる。目標変速比は、アクセル開度APOの代わりに、エンジン1の吸入空気量を調節するスロットル弁のスロットル開度TVOに応じて設定されてもよい。ライン指示圧、プライマリ指示圧及びセカンダリ指示圧は、目標変速比に応じて設定することができる。
【0038】
変速機100は自動変速機であり、このようにして変速比を制御する油圧制御回路11及びコントローラ12のほか、バリエータ20、副変速機構30、回転センサ41、回転センサ42及び回転センサ43を有して構成されている。アクセル開度センサ44、インヒビタスイッチ45、エンジン回転センサ46も、変速機100の構成として把握されてもよい。
【0039】
油圧制御回路11及びコントローラ12は、変速機100において制御を行う変速機の制御装置50を構成する。以下では、変速機の制御装置50を単に制御装置50と称す。
【0040】
図2は、コントローラ12が行う制御の一例をフローチャートで示す図である。コントローラ12は、本フローチャートに示す処理を微小時間毎に繰り返し実行することができる。コントローラ12は、ステップS1でSOL11aが異常であるか否かを判定する。
【0041】
ここで、SOL11aのフェールモードとしては例えば、天絡、地絡、断線、Lowずれ、Highずれがある。天絡は電源に短絡する故障である。地絡は大地に短絡する故障である。天絡が発生するとSOL11aは通電状態のままとなる。地絡が発生するとSOL11aは通電していない状態のままとなる。断線の場合も同様である。Lowずれは、指示圧に対して実圧が低くなる故障である。Highずれは、指示圧に対して実圧が高くなる故障である。
【0042】
これらのフェールモードは、容易に判別できない場合がある。例えば、フェール時の状態が、指示圧が最低値であり且つ実圧も最低値であるという状況は、天絡によってもLowずれによっても生じ得る。この場合、フェールモードが天絡であるかLowずれであるかを判別するには例えば、指示圧を変えてみて実圧が変化するかどうかを確認しなければならない。
【0043】
このため、ステップS1でコントローラ12は、これらのフェールモードのうち少なくともいずれかをフェールモードとして含む異常状態が発生しているか否かを判定することで、SOL11aが異常であるか否かを判定する。SOL11aが異常であるか否かの判定は、複数の判定で構成されてもよい。SOL11aが異常であるか否かの判定には、公知技術のほか適宜の技術が適用されてよい。
【0044】
ステップS1で否定判定であれば、処理はステップS5に進む。この場合、コントローラ12は通常の変速比制御を行う。ステップS5で、コントローラ12は、ライン指示圧、プライマリ指示圧、セカンダリ指示圧を可変に制御することで、バリエータ20の変速比を制御する。
【0045】
ステップS5で、ライン指示圧は、変速機100への入力トルクに応じて、ベルト23の滑りが発生しないように制御される。プライマリ指示圧とセカンダリ指示圧とは、目標変速比に応じて、バリエータ20の変速比が目標変速比になるように制御される。
【0046】
ステップS5で、プライマリ指示圧とセカンダリ指示圧とは、さらに変速機100への入力トルクに応じて制御される。ベルト23の滑りが発生しないように制御されるライン指示圧に対応させて、これらの指示圧をベルト23の滑りが発生しないように制御するためである。ステップS5の後には、本フローチャートの処理は一旦終了する。
【0047】
ステップS1で肯定判定であれば、処理はステップS2に進む。この場合、コントローラ12は、プライマリ指示圧をプライマリ圧設定値Paに固定する。プライマリ圧設定値Paは第1所定値以上の値であり、本実施形態ではプライマリ指示圧の最大値とされる。第1所定値は、ベルト23のすべりを抑制可能な値であればよい。
【0048】
ステップS2で、コントローラ12は具体的には、プライマリ指示圧が第1所定時間をかけてプライマリ圧設定値Paになるようにプライマリ指示圧を制御する。第1所定時間は、プライマリ指示圧がプライマリ圧設定値Paでない場合に、時間に応じたプライマリ指示圧の変化を示すグラフに傾きが生じるようにすることで、発生する時間とすることができる。第1所定時間は、このような傾きや本ステップの制御開始時のプライマリ指示圧に応じて決まってくる時間であってよい。プライマリ指示圧がもともとプライマリ圧設定値Paであった場合、第1所定時間はゼロであってもよい。
【0049】
ステップS3で、コントローラ12は、セカンダリ指示圧をセカンダリ圧設定値Pbに固定する。セカンダリ圧設定値Pbは第2所定値以上の値であり、本実施形態ではセカンダリ指示圧の最大値とされる。第2所定値は、ベルト23のすべりを抑制可能な値であればよい。第2所定値は、第1所定値と同じであってもよい。
【0050】
ステップS3で、コントローラ12は具体的には、セカンダリ指示圧が第2所定時間をかけてセカンダリ圧設定値Pbになるようにセカンダリ指示圧を制御する。この場合の第2所定時間も、プライマリ指示圧を制御する際の第1所定時間と同様である。コントローラ12は、ステップS2の処理に続いてステップS3の処理を行うことで、プライマリ指示圧の変化の開始後にセカンダリ指示圧の変化を開始する。
【0051】
ステップS4で、コントローラ12は、ライン指示圧を可変に制御することにより、バリエータ20の変速比を連続的に変化させる。具体的にはコントローラ12は、車速VSPに応じてライン指示圧を制御することにより、バリエータ20の変速比を連続的に変化させる。ステップS4で、コントローラ12は、開ループ制御によってライン指示圧を制御する。ステップS4で、コントローラ12は、変速機100への入力トルクに応じない態様でライン指示圧を可変に制御することができる。ステップS4の後には、本フローチャートの処理は一旦終了する。
【0052】
ステップS2につき、プライマリ指示圧をプライマリ圧設定値Paに固定する、とは、修理等によってフェールが解除されるまでの間、プライマリ指示圧をプライマリ圧設定値Paに維持することを意味する。ステップS3についても同様である。
【0053】
図3は、図2のフローチャートに対応するタイミングチャートの一例を示す図である。図3では、パラメータとしてプライマリ指示圧、セカンダリ指示圧及びライン指示圧を示す。図3では、LowずれやHighずれのように、指示圧に応じて実圧が変化するフェールモードでSOL11aがフェールした場合について示す。
【0054】
タイミングT1では、SOL11aのフェールが判定される。このため、プライマリ指示圧は、タイミングT1以降のタイミングであるタイミングT2から、第1所定時間をかけてプライマリ圧設定値Paになるように制御される。このとき、プライマリ指示圧は徐々に増加するように制御される。プライマリ指示圧は、タイミングT2後のタイミングであるタイミングT3でプライマリ圧設定値Paになる。プライマリ指示圧は、タイミングT3以降、プライマリ圧設定値Paに固定される。
【0055】
タイミングT3からは、セカンダリ指示圧が、第2所定時間をかけてセカンダリ圧設定値Pbになるように制御される。このとき、セカンダリ指示圧は徐々に増加するように制御される。この例に示すように、セカンダリ指示圧の変化は例えば、プライマリ指示圧がプライマリ圧設定値Paに固定されてから開始することができる。セカンダリ指示圧は、プライマリ指示圧がプライマリ圧設定値Paに固定される前に開始されてもよい。セカンダリ指示圧は、タイミングT3後のタイミングであるタイミングT4でセカンダリ圧設定値Pbになる。セカンダリ指示圧は、タイミングT4以降、セカンダリ圧設定値Pbに固定される。
【0056】
タイミングT4からは、車速VSPに応じてライン指示圧が制御される。この例に示すように、ライン指示圧の制御は、プライマリ指示圧がプライマリ圧設定値Paに、セカンダリ指示圧がセカンダリ圧設定値Pbにそれぞれ固定されてから開始することができる。
【0057】
本実施形態において、フェール判定部はコントローラ12、具体的には前述のステップS1の判定を行う部分として機能的に把握されるコントローラ12の一部により実現されている。また、ライン指示圧制御部はコントローラ12、具体的には前述のステップS4及びステップS5の処理を行う部分として機能的に把握されるコントローラ12の一部により実現されている。また、プライマリ指示圧制御部はコントローラ12、具体的には前述のステップS2及びステップS5の処理を行う部分として機能的に把握されるコントローラ12の一部により実現されている。また、セカンダリ指示圧制御部はコントローラ12、具体的には前述のステップS3及びステップS5の処理を行う部分として機能的に把握されるコントローラ12の一部により実現されている。
【0058】
次に、制御装置50の主な作用効果について説明する。
【0059】
ここで、天絡や地絡や断線のように、指示圧に応じて実圧が変化しないフェールモードでSOL11aがフェールした場合、プライマリ指示圧をプライマリ圧設定値Paに固定しても、プライマリ圧の実圧は変化しない。その一方で、LowずれやHighずれのように、指示圧に応じて実圧が変化するフェールモードでSOL11aがフェールした場合には、プライマリ指示圧をプライマリ圧設定値Paに固定することで、プライマリ圧の実圧を高めることができる。しかしながら、これらのフェールモードは前述の通り、容易に判別できない場合がある。
【0060】
このような事情に鑑み、制御装置50は、バリエータ20と、SOL11sと、SOL11aと、SOL11bと、を有する変速機100において制御を行う。制御装置50は、コントローラ12を有する。コントローラ12は、SOL11aのフェールを判定する。また、コントローラ12は、ライン指示圧を可変に制御する一方、フェールが判定された場合にはライン指示圧を可変に制御することによりバリエータ20の変速比を連続的に変化させる。また、コントローラ12は、プライマリ指示圧を可変に制御する一方、フェールが判定された場合にはプライマリ指示圧をプライマリ圧設定値Paに固定する。また、コントローラ12は、セカンダリ指示圧を可変に制御する一方、フェールが判定された場合にはセカンダリ指示圧をセカンダリ圧設定値Pbに固定する。
【0061】
このような構成の制御装置50によれば、フェールが判定された場合に、フェールモードに関わらずプライマリ指示圧をプライマリ圧設定値Paに固定するので、指示圧に応じて実圧が変化するフェールモードでは、プライマリ圧の実圧を高めることができる。また、セカンダリ指示圧をセカンダリ圧設定値Pbに固定するので、セカンダリ圧の実圧を高めることもできる。結果、両調圧方式で変速を行う場合において、SOL11aのフェール時に、フェールモードが指示圧に応じて実圧が変化するフェールモードであった場合に、ベルト23の滑りの発生を抑制するフェールセーフを行うことができる。
【0062】
また、このような構成の制御装置50によれば、フェールが判定された場合に、ライン指示圧を制御することによりバリエータ20の変速比を連続的に変化させるので、変速可能な範囲内で変速を行うことで、変速機100を搭載する車両の運転性悪化を抑制することもできる。
【0063】
制御装置50では、コントローラ12は、フェールが判定された場合には、プライマリ指示圧が第1所定時間をかけてプライマリ圧設定値Paになるようにプライマリ指示圧を制御する。
【0064】
このような構成の制御装置50によれば、指示圧に応じて実圧が変化しないフェールモードか、指示圧に応じて実圧が変化するフェールモードかに関係なく、フェールセーフを実行することができるようになる。このため、フェールモードの種類の特定を完了する前にフェールセーフを実行することができるようになる。そして、指示圧に応じて実圧が変化するフェールモードだった場合は、プライマリ圧の実圧が急変することを防止できるようになる。
【0065】
制御装置50では、コントローラ12は、フェールが判定された場合には、セカンダリ指示圧が第2所定時間をかけてセカンダリ圧設定値Pbになるようにセカンダリ指示圧を制御する。
【0066】
このような構成の制御装置50によれば、セカンダリ圧の実圧が急変することを防止することができる。結果、バリエータ20の変速比が急変することで、変速機100を搭載する車両の運転者に違和感を与えることを防止することができる。
【0067】
ところで、指示圧を設定値に固定する場面でSOL11aとSOL11bとが同時に制御されると、SOL11a側及びSOL11b側から要求される油量全体に対し、元圧となるライン圧を生じさせている油量が不足する可能性がある。また、フェールモードがLowずれであった場合は、プライマリ指示圧に対してプライマリ圧の実圧が低下するので、ベルト23の滑りが発生し易くなる。
【0068】
このような事情に鑑み、制御装置50では、コントローラ12は、フェールが判定された場合には、プライマリ指示圧の変化の開始後にセカンダリ指示圧の変化を開始する。
【0069】
このような構成の制御装置50によれば、プライマリ指示圧及びセカンダリ指示圧間で設定値への変化開始タイミングをずらすので、SOL11a及びSOL11b間でライン圧を奪い合うようにして供給油量不足が発生する事態を抑制することができる。また、フェールが発生したSOL11aを優先するかたちで指示圧の変化を開始するので、フェールモードがLowずれであった場合でも、ベルト23の滑りが発生することを効果的に抑制することができる。結果、ベルト23の滑り防止を最優先するかたちでフェールセーフを行うことができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0071】
本願は2015年3月20日に日本国特許庁に出願された特願2015−57849に基づく優先権を主張し、この出願のすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3