特許第6364545号(P6364545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6364545結晶性(2S)−3−[(3S,4S)−3−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−(4−メトキシ−3−{[1−(5−メチルピリジン−2−イル)アゼチジン−3−イル]オキシ}フェニル)−3−メチルピロリジン−1−イル]−3−オキソプロパン−1,2−ジオ−ル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6364545
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】結晶性(2S)−3−[(3S,4S)−3−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−4−(4−メトキシ−3−{[1−(5−メチルピリジン−2−イル)アゼチジン−3−イル]オキシ}フェニル)−3−メチルピロリジン−1−イル]−3−オキソプロパン−1,2−ジオ−ル
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20180712BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20180712BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C07D401/14
   A61P13/10
   A61K31/4985
   A61K31/4439
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-512825(P2017-512825)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公表番号】特表2017-525747(P2017-525747A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】US2015047415
(87)【国際公開番号】WO2016036596
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2014/085925
(32)【優先日】2014年9月4日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ホアン・ピン
(72)【発明者】
【氏名】セス・ディートリック・ライブ
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6017708(JP,B2)
【文献】 特表2003−519135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D401/14
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオールの結晶
【請求項2】
回折角2シータが18.5°の回折ピークと、16.2°、20.2°及び14.4°からなる群より選択される1つ以上のピークとを組み合わせて有し、前記回折角の許容誤差が0.2度である、CuKα放射線を用いたX線粉末回折パターンによって特徴づけられる(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオールの結晶
【請求項3】
請求項1または2に記載の結晶と、薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の結晶である第1成分と、タダラフィルである第2成分と、薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の結晶を含む過活動膀胱を治療するための医薬組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の結晶を、タダラフィルと組み合わせて含む過活動膀胱を治療するための医薬組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の結晶を含む治療に使用するための薬剤。
【請求項8】
請求項1または2に記載の結晶を含む過活動膀胱の治療に使用するための薬剤。
【請求項9】
同時使用、個別使用または逐次使用用途の請求項1または2に記載の結晶とタダラフィルの組み合わせを含む過活動膀胱の治療に使用するための薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ル、その医薬組成物、その使用方法及びその調製方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
過活動膀胱(OAB)は、切迫性尿失禁を伴った、または伴わない頻尿及び尿意逼迫の症状を指す、症候的に定義された病状である。OABは、成人人口の約17パ-セントで生活の質や社会的機能に悪影響を及ぼしている病状である。OAB治療が進歩しているにもかかわらず、多くの患者が何年も回復せずにOABを患っている。OABの第一選択治療法は抗ムスカリン薬物であり、この抗ムスカリン薬物は良好な初期反応を有するが、有効性の減少や副作用に起因して、長期間では服薬コンプライアンスが低下する。安全且つ効果的なOAB治療法に対し、未だ対処されていない要求が多く残っている。
【0003】
環状ヌクレオチド(cAMP及びcGMP)は、平滑筋の収縮性を調節する重要なセカンドメッセンジャ-である。環状ヌクレオチドホスホジエステラ-ゼ(PDE)は環状ヌクレオチドを加水分解し、細胞内の環状ヌクレオチドの濃度及び作用期間の制御に重要なものである。PDEを阻害する化合物は環状ヌクレオチドの細胞内濃度を上昇させ、これにより多くの種類の平滑筋を弛緩させる。先の研究により、膀胱平滑筋の弛緩は、cAMPを上昇させる薬剤によって主に媒介されていることが示されている。ホスホジエステラ-ゼ4(PDE4)はcAMP特異的であり、膀胱で大量に発現している。よって、PDE4は、生体外及び過活動膀胱の動物モデルにおいて、膀胱平滑筋緊張の制御への関与が示されている(Kaiho, Y.ら、BJU International 2008, 101(5), 615-620)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の化合物は、ホスホジエステラ-ゼ4(PDE4)阻害剤であり、PDE4に対して選択性を示す。よって、本発明の化合物は、頻発及び逼迫などの関連症状の軽減を含めた、過活動膀胱などのPDE4が関与する病状の治療に対し有用であると考えられる。さらに、本発明の結晶性(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルは、処理、取扱いまたは製造性における利点を提供すると考えられる。
【0005】
国際出願公開WO01/47905号には、ホスホジエステラ-ゼ、特にPDE4の阻害剤として、特定のピロリジン誘導体化合物が開示されており、この化合物が、喘息を含めたいくつかの疾患の治療において有用であると記載されている。
【0006】
本発明は、PDE4阻害剤であり、よって、過活動膀胱及び他の障害の治療に有用である新規化合物を提供する。提供される化合物は、過活動膀胱などのPDE4に関する病状の安全かつ効果的な治療に対する要求に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を提供する。
【化1】
式中、Rは水素またはメチルである。
【0008】
特定の式Iの化合物は、Rがメチルである化合物か、またはその薬学的に許容できる塩である。
【0009】
特定の式Iの化合物は、(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルであるか、またはその薬学的に許容できる塩である。
【0010】
さらに、本発明は、結晶性(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルを提供する。
【0011】
さらに、本発明は、回折角2シ-タが18.5°である回折ピ-クと、16.2°、20.2°及び14.4°からなる群より選択される1つ以上のピ-クとを組み合わせて有し、回折角の許容誤差が0.2度である、CuKα放射線を用いたX線粉末回折パタ-ンによって特徴づけられる結晶性(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルを提供する。
【0012】
さらに、本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩と、薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態においては、この医薬組成物は、タダラフィルなどの1種以上の他の治療剤をさらに含む。よって本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩である第1成分と、タダラフィルである第2成分と、薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、治療用途の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、過活動膀胱の治療用の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩の、過活動膀胱の治療薬製造用の用途を提供する。
【0016】
特定の式Iの化合物は、式Iaの化合物またはその薬学的に許容できる塩である。
【化2】
式中、Rは水素またはメチルである。
【0017】
特定の式Iaの化合物は、Rがメチルである化合物か、またはその薬学的に許容できる塩である。
【0018】
特定の式Iaの化合物は、(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルであるか、またはその薬学的に許容できる塩である。
【0019】
さらに、本発明は、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を、それを必要とする患者に投与することを含む過活動膀胱の治療方法を提供する。特定の実施形態においては、本発明は、式Iaの化合物またはその薬学的に許容できる塩である第1成分の有効量を、タダラフィルである第2成分の有効量と組み合わせて、それらを必要とする患者に投与することを含む過活動膀胱の治療方法を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、過活動膀胱の治療における、タダラフィルと組み合わせた同時使用、個別使用または逐次使用用途の本発明の化合物を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルまたはその薬学的に許容できる塩の有効量を、タダラフィルの有効量と組み合わせて、それらを必要とする患者に投与することを含む過活動膀胱の治療方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の化合物は、立体異性体として存在してもよいことがわかる。本発明の実施形態は、全ての鏡像異性体、ジアステレオマ-及びそれらの混合物を包含する。好ましい実施形態は単一のジアステレオマ-であり、より好ましい実施形態は単一のエナンチオマ-である。
【0023】
「薬学的に許容できる塩」という用語には、式Iの化合物の塩基性部分に結合して存在する酸付加塩が含まれる。このような塩には、例えば当業者に公知であるHandbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use、P. H. Stahl及びC. G. Wermuth(編)、Wiley-VCH、New York、2002.に挙げられている薬学的に許容できる塩などの薬学的に許容できる塩が含まれる。
【0024】
本発明においては、薬学的に許容できる塩に加えて、他の塩が意図される。他の塩は、化合物の精製中の中間体として、もしくは他の薬学的に許容できる塩の調製中の中間体として役割を担ってもよく、または本発明の化合物の同定、特性評価もしくは精製に有用である。
【0025】
本明細書において使用する場合、「患者」という用語は、哺乳動物などの温血動物を指し、ヒトが含まれる。ヒトは、好ましい患者である。
【0026】
当業者が有効量の式Iの化合物を、現在症状を示している患者に投与することによって過活動膀胱を治療してよいことも認識される。したがって、「治療」及び「治療すること」という用語は、存在する障害及び/または症状の進行の遅延、中断、抑止、制御または停止があってもよい全てのプロセスを指すことが意図されるが、必ずしも全症状の完全な除去を指すわけではない。
【0027】
当業者が有効量の式Iの化合物を、将来症状を示す危険性のある患者に投与することによって過活動膀胱を治療してよいことも認識され、治療にはこのような予防治療が含まれることが意図される。
【0028】
本明細書において使用する場合、式Iの化合物の「有効量」という用語は、本明細書において説明されている過活動膀胱などの障害の治療において有効な量を指し、投薬量である。担当の診断医は当業者として、従来技術を用いることによって、また類似の状況で得られた結果を観察することによって、有効量を容易に決定することができる。式Iの化合物の有効量または用量の決定においては、いくつかの要因が考慮される。この要因としては、投与する式Iの化合物に限定されないが、他の薬剤をもし使用する場合にはその同時投与;哺乳動物の種;哺乳動物のサイズ、年齢及び総合的な健康;過活動膀胱などの障害の影響の度合いまたは重症度;個々の患者の応答;投与方法;投与する製剤の生物学的利用率特性;選択される投与計画;他の併用薬物の使用;ならびに他の関連状況が挙げられる。
【0029】
式Iの化合物は、過活動膀胱を含めた、式Iの化合物が有用である疾患または状態の治療/予防/抑制または寛解において使用される他の薬物と組み合わせて使用してもよい。このような他の薬物は、式Iの化合物との同時投与または逐次投与を含めた、一般に用いられる経路及び量で投与してもよい。式Iの化合物を1種以上の他の薬物と同時に使用する場合は、式Iの化合物に加えてこのような他の薬物を含有する医薬品単位の剤形が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物は、式Iの化合物に加えて1種以上の他の活性成分を含有する医薬組成物を包含する。個別投与または同一医薬品中で投与される、式Iの化合物と組み合わせてもよい過活動膀胱の治療において有効な他の活性成分としては、タダラフィルなどのPDE5阻害剤が挙げられる。
【0030】
本発明の化合物は、単独で、または薬学的に許容できる担体もしくは賦形剤と組み合わせた医薬組成物の形態で投与することができる。この担体または賦形剤の比率及び性質は、選択される化合物の溶解度、及び安定性を含めた化学的性質、選択される投与経路、ならびに標準的な薬務によって決定する。本発明の化合物は、それ自体で有効であるが、結晶化の便宜上または溶解度の増加などのため、薬学的に許容できる塩の形態で製剤して投与してもよい。
【0031】
製剤調製の当業者は、選択される化合物の特定の性質、治療する障害または状態、障害または状態の段階、及び他の関連状況に応じて、適切な投与形態及び投与方法を容易に選択することができる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(D.B. Troy編、第21版、Lippincott, Williams & Wilkins、2006)を参照のこと。)
【0032】
生体外アッセイにおけるPDE4阻害
ホスホジエステラ-ゼアッセイは、本質的にはLoughney, K.ら、J. Biol. Chem., 271, pp. 796-806 (1996).において記載されている方法に従って行う。PDE4A、PDE4B、PDE4C、PDE4D及びPDE5ヒト組換えタンパク質を発現させ、内在性PDEを欠乏しているSaccharomyes cerevisiaeから精製する。阻害剤の非存在下で環状ヌクレオチド一リン酸(cNMP)を約20%〜40%加水分解するよう、ホスホジエステラ-ゼ酵素を酵素希釈緩衝液(25mM Tris、pH7.5、0.1mM DTT、5.0mM MgCl、100mM NaCl、5mμM ZnSO、100μg/mL BSA)を用いて氷上で希釈する。
【0033】
試験化合物の貯蔵液をBeckman BioMek(商標)1000ワ-クステ-ションで希釈し、対数を0.5ずつ増加させた、対数単位で4.5の濃度範囲にする。最終試験系のDMSO濃度は、全てのPDE酵素で2.5%である。試験した最終試験化合物濃度の範囲は、0.03nM〜1μMであった。
【0034】
アッセイは、Beckman BioMek(商標)1000ロボットステ-ションにある96ウェルマイクロタイタ-プレ-トフォ-マットで行う。プレ-トの各列は、ブランク(酵素なし)、阻害なしの対照、及び対数を0.5ずつ増加させた、対数単位で4.5の濃度範囲の阻害剤希釈液を含む、10点用量反応曲線を表す。アッセイ貯蔵液をBioMekリザ-バ(水、阻害剤希釈液[2.5%または10%DMSO]、5×PDEアッセイ緩衝液、基質、阻害剤溶液、酵素溶液、ヘビ毒ヌクレオチダ-ゼ及び炭懸濁液)に入れる。酵素で反応を開始させ、30℃で15分間インキュベ-トする。次に過剰量のCrotalus atroxヘビ毒ヌクレオチダ-ゼ(5μL/ウェル)を加え、混合物をさらに3分間インキュベ-トする。活性炭懸濁液200μLを加えることにより反応を終了させ、その後、プレ-トを750×gで5分間遠心分離する。トランスファ-プログラムを実行し、上澄み液200μLを取り除いて新しいプレ-トに入れる。Wallac MicroBeta Plate(商標)カウンタ-にて、リン酸エステルとして放出される放射能量を測定する。
【0035】
4、3または2パラメ-タロジスティック用量反応モデルを使用して、阻害剤の各濃度で減少したデ-タを分析し、IC50値を得る。最大阻害剤濃度で95%超の阻害を示したデ-タのセットでは、4パラメ-タロジスティック用量反応モデルを使用する。
【0036】
上記のアッセイでは、実施例1及び2の化合物が、PDE4Bで10nM未満のIC50を示す。より詳細には、実施例2の化合物が、上記のアッセイにおいてPDE4Bで測定される0.58nMのIC50を有する。これらのデ-タにより、実施例1及び2の化合物はPDE4Bの阻害剤であることが実証される。
【0037】
生体内モデルにおける過活動膀胱
PDE4阻害剤のOABに対する生体内有効性を、Boudesら,Neurourol. Urodynam. 2011.から適応させた慢性シクロホスファミド(CYP)誘発過活動膀胱マウスモデルを用いて調べる。典型的な調査においては、体重約20グラムの雌C57/Bl6マウス(Harlan Laboratories, Inc.、Indianapolis、Indiana)を使用する。マウスは、調査開始1日前に体重により無作為抽出してグル-プに分ける。マウスを個別に収容し、食料(0.72% Ca及び0.61% P、990IU/g D3を含有するTD 2014、Teklad(商標)、Madison、WI)及び水を自由に得られるようにしながら、12時間の明暗サイクルで22℃にて維持する。動物には、1、3、5及び7日目にシクロホスファミド(生理食塩水に溶解)を100mg/kg腹腔内投与して、慢性的にOABを誘発させる。媒体対照グル-プには、媒体(HEC 1%/Tween 80 0.25%/消泡剤0.05%)を1日1回経口投与する。他の全てのグル-プには、試験化合物0.1、1.0または10.0mg/kgと組み合わせて、タダラフィル10.0mg/kgを1日1回、200μl/マウスの容量で経口投与する。8日目に、マウスを尿採取チャンバに収容し、チャンバの下には濾紙を設置する。尿採取前に、各マウスに水1mlを強制経口投与する。尿は、午後6時〜午後10時に(すなわち4時間)採取する。その4時間中、水源としてジェルカップ(DietGel(商標)76A)を供給する。濾紙を1時間毎に交換する。Image Jソフトウェア(NIH)を使用して、排尿頻度及び容量/排尿を計算する。JMP8(登録商標)ソフトウェア(Cary, N. C.)を用いて、デ-タを統計学的に解析する。
【0038】
動物は、CYP処理後の8日後に、排尿頻度増加(擬似:6.66±0.91排尿数/4時間、対して、媒体:16.5±1.65排尿数/4時間)及び容量/排尿の減少(擬似:173.36±38.39mL、対して、媒体:31.93±4.16mL)によって示されるように、OABを発症する。全ての治療グル-プには、タダラフィル10mg/kgを固定用量で与える。この用量では、タダラフィルは、排尿頻度または排尿毎の容量のいずれにも有意な活性を有しない。本質的に上記のプロトコルに従ってタダラフィルと共に与えられた実施例2の化合物は、用量依存的に排尿頻度を有意に減少させる(表1)。さらに、容量/排尿の増加も用量依存的に観測される(表2)。これより、タダラフィルと組み合わせた実施例2の化合物は、過活動膀胱の動物モデルにおいて活性であることが実証される。
【表1】
【表2】
【0039】
式Iの化合物は、化学の技術分野で公知のプロセスによって、または本明細書において説明される新規プロセスによって調製してもよい。式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩、及び式Iの化合物製造用の新規中間体の調製プロセスは、本発明のさらなる特徴を提供し、以下の手順によって例示される。以下の手順においては、別段の定めがない限り、置換基Rの意味は上記で規定されたとおりである。
【0040】
概して、Rが水素またはメチルである式Iaの化合物は、1,2-ジオ-ル基がアセトニドなどの好適な基で保護された式IIの化合物から調製してもよい(スキ-ム1)。より詳細には、式IIの化合物を、好適な溶媒中で塩酸または酢酸などの酸と反応させて、式Iaの化合物を得る。好適な溶媒としては、水、メタノ-ル及びアセトニトリルが挙げられる。Rがハロゲンまたはメチルである式IIの化合物は、好適な塩基の存在下で、式IIIの化合物を式IVの化合物と反応させることによって調製してもよい。式IV中のLは、フルオロまたはクロロなどの好適な脱離基を表す。好適な塩基としては、炭酸カリウム及び炭酸セシウムが挙げられる。この反応は、N-メチル-2-ピロリドンまたはアセトニトリルなどの溶媒中で好都合に行われる。
【0041】
式IIIの化合物は、アゼチジンアミンがジフェニルメチルなどの好適な基で保護された式Vの化合物から調製してもよい。より詳細には、式Vの化合物を、炭素担持白金などの好適な触媒の存在下で水素ガスと反応させて、式IIIの化合物を得る。この反応は、メタノ-ルまたはエタノ-ルなどの溶媒中で好都合に行われる。
【0042】
式Vの化合物は、好適な塩基の存在下で、式VIの化合物をメタンスルホン酸1-(ジフェニルメチル)アゼチジン-3-イルと反応させることによって調製してもよい。好適な塩基としては、炭酸カリウム及び炭酸セシウムが挙げられる。この反応は、アセトニトリルなどの適切な溶媒中で好都合に行われる。
【化3】
【0043】
代替的には、式IIの化合物は、式VIの化合物から直接調製してもよい(スキ-ム2)。より詳細には、式VIの化合物を、炭酸セシウムなどの好適な塩基の存在下で式VIIの化合物と反応させる。式VII中、Rは水素またはメチルであり、OMsはメタンスルホニル脱離基を表す。この反応は、アセトニトリルなどの適切な溶媒中で好都合に行われる。
【0044】
式VIIの化合物は、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で、式VIIIの化合物を塩化メタンスルホニルと反応させることによって調製してもよい。この反応は、塩化メチレンなどの好適な溶媒中で好都合に行われる。Rが水素またはメチルである式VIIIの化合物は、好適な塩基の存在下で、式IVの化合物を3-ヒドロキシアゼチジンと反応させることによって調製してもよい。式IV中のLは、フルオロまたはクロロなどの好適な脱離基を表す。好適な塩基としては、炭酸カリウムが挙げられる。この反応は、好適な溶媒中で好都合に行われる。
【化4】
【0045】
式VIの化合物は、国際特許出願公開WO01/47905号において開示されている手順、及びNichols, P. J.; DeMattei, J. A.; Barnett, B. R.; LeFur, N. A.; Chuang, T.; Piscopio, A. D.; Kock, K. Org. Lett. 2006, 8, 1495-1498.を参照してスキ-ム3において開示している手順を含めた、当業者により認識されている手順によって調製してもよい。
【化5】
【0046】
代替的には、式IIの化合物は、式XIIIの化合物から調製してもよい(スキ-ム4)。より詳細には、式XIIIの化合物を、アシル化条件下で(S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸と反応させて、式IIの化合物を得る。式XIIIの化合物は、式XIVの化合物を脱保護することによって調製してもよい。式XIV中、Pgは好適なアミン保護基を表す。好適なアミン保護基としては、t-ブチルオキシカルボニル(tBOC)が挙げられる。Pgが好適なアミン保護基を表す式XIVの化合物は、式XVの化合物から調製してもよい。より詳細には、式XVの化合物を、三塩基性リン酸カリウム・n水和物などの好適な塩基の存在下で式VIIの化合物と反応させる。式VII中、Rは水素またはメチルであり、OMsはメタンスルホニル脱離基を表す。この反応は、ジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒中で好都合に行われる。式XVの化合物は、合成例及び実施例において説明するように、式Xの化合物から調製してもよい。
【化6】
【0047】
本明細書において使用する場合、「DMSO」はジメチルスルホキシドを指し;「Tris」はトリスヒドロキシメチルアミノメタンを指し;「DTT」はジチオスレイト-ルを指し;「HEC」はヒドロキシエチルセルロ-スを指し;「IC50」は、その薬剤で可能な最大阻害反応の50%を生じさせる薬剤濃度を指す。
【0048】
有機化学分野では、1つの化学構造に対して1つ以上の化学名が得られてもよいことが認識されている。実施例及び合成例においては、代替名が示されていてもよい。
【実施例】
【0049】
合成例1
(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(3-{[1-(ジフェニルメチル)アゼチジン-3-イル]オキシ}-4-メトキシフェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ルの合成。
【化7】
【0050】
アセトニトリル(30mL)に懸濁させた(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(4-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ル(2.0g)と炭酸カリウム(1.46g)の懸濁液に、メタンスルホン酸1-(ジフェニルメチル)アゼチジン-3-イル(2.51g)を加える。混合物を80℃で一晩加熱する。反応混合物を冷却し、酢酸エチル(100mL)に注ぎ入れ、水(40mL)及び塩水(40mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して濾過し、濾液を蒸発乾固する。得られた残渣を精製(シリカゲル、60%酢酸エチル/ヘキサン〜酢酸エチル)して、標題化合物0.6gを得る。MS(ES+)=601(M+1)。
【0051】
合成例2
(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(4-メトキシ-3-{[1-(アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ルの合成。
【化8】
【0052】
メタノ-ル(20mL)に溶かした(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(3-{[1-(ジフェニルメチル)アゼチジン-3-イル]オキシ}-4-メトキシフェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ル(0.6g)の溶液を含むParr(商標)容器に、炭素担持水酸化パラジウム(60mg、乾燥基準で20重量%のPdをCが担持)を加える。懸濁液を、30psigの水素ガスで、水素ガスの吸収が止むまで水素化する。反応混合物をCelite(商標)で濾過し、濾液を蒸発させて標題化合物(0.4g)を得る。MS(ES+)=435(M+1)。
【0053】
合成例3
(3S,4S)-4-(3-(ベンジルオキシ)-4-メトキシフェニル)-3-((R)-1-ヒドロキシエチル)-3-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成。
【化9】
【0054】
酢酸エチル(200mL)に入れた(R)-1-((3S,4S)-4-(3-(ベンジルオキシ)-4-メトキシフェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル)エタン-1-オ-ル(20.0g、58.57mmol)に、トリエチルアミン(0.6g、5.93mmol)を加える。反応物を0〜5℃に冷却する。反応温度を0〜5℃に保ちながら、メタノ-ル(60mL)に入れた二炭酸ジ-tert-ブチル(13.45g、61.63mmol)を反応物に加える。反応物を15〜20℃に温め、2時間撹拌する。水(200mL)を加え、層を分割する。水層を酢酸エチル(100mL)で逆抽出する。有機層を合わせ、水(100mL)で洗浄する。有機層を2容量まで濃縮する。n-ヘプタン(200mL)を加え、15〜20℃で16時間撹拌する。スラリ-を濾過し、濾紙上の固体をn-ヘプタンで洗浄する。濾紙上の固体を減圧下、50℃未満で乾燥して、標題化合物(22.0g、49.92mmol)を得る。H NMR(CDCl)δ0.58(d,J=8.8Hz,3H),1.02(m,3H),1.06(m,1H),1.48(s,9H),3.16(m,2H),3.58(m,4H),3.91(s,3H),5.24(m,2H),6.78(m,3H),7.36(m,5H);及び13C-NMR(CDCl)δ(ppm)17.5,17.6,19.7,19.8,28.8,45.7,46.3,48.4,48.7,49.1,52.4,52.9,56.2,69.1,71.1,71.2,79.5,111.6,116.1,116.3,121.4,127.4,128.0,128.8,129.8,137.8,147.4,148.8,155.2,155.3。H及び13Cスペクトルにおいて回転異性化が観測され、これにより関連するピ-クが2倍になっている。
【0055】
合成例4
(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-3-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成。
【化10】
【0056】
メタノ-ル(50mL)に溶かした(3S,4S)-4-(3-(ベンジルオキシ)-4-メトキシフェニル)-3-((R)-1-ヒドロキシエチル)-3-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(5.0g、11.32)を含む反応溶液に、水酸化パラジウム(0.26g、1.85mmol)を加え、反応物を真空引きして、15〜20℃で138〜207kPaの水素雰囲気を得る。2時間後、反応物を珪藻土で濾過する。濾紙上の固体をメタノ-ル(10mL)で洗浄し、有機層を1〜2容量まで濃縮する。MTBE(25mL)を加え、有機物を1〜2容量まで濃縮する。さらなるMTBE(25mL)を加え、有機層を1〜2容量まで濃縮する。溶液にn-ヘプタン(50mL)を加え、5〜10℃で16時間撹拌する。スラリ-を濾過し、濾紙上の固体をn-ヘプタンで洗浄する。濾紙上の固体を減圧下、50℃未満で乾燥して、標題化合物(3.9g、11.10mmol)を得る。H NMR(CDCl)δ0.76(s,3H),1.11(d,J=6.4Hz,3H),1.48(s,9H),3.24(m,2H),3.60(m,5H),3.88(s,3H),5.62(brs,1H),6.78(m,2H),6.86(s,1H);及び13C-NMR(CDCl)δ(ppm)17.6,17.7,19.6,19.7,28.8,45.9,46.1,46.5,48.5,49.1,49.2,49.6,52.7,53.2,56.2,69.3,79.5,110.6,110.7,115.5,115.7,120.6,120.8,130.7,145.5,145.8,155.3,155.4。H及び13Cスペクトルにおいて回転異性化が観測され、これにより関連するピ-クが2倍になっている。
【0057】
合成例5
(3S,4S)-3-((R)-1-ヒドロキシエチル)-4-(4-メトキシ-3-((1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成。
【化11】
【0058】
ジメチルホルムアミド(700mL)に溶かした(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-3-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(100g、274.3mmol)の溶液に、三塩基性リン酸カリウム・n水和物(238.1g、1.12mol)を加える。得られた混合物を90〜95℃に加熱する。ジメチルホルムアミド(30mL)に溶かしたメタンスルホン酸1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル(73.3g、289.81mmol)の溶液を、反応混合物に滴下する。滴下が完了したら、混合物を90〜100℃で撹拌する。16時間後、反応物を15〜25℃に冷却し、酢酸エチル(2500mL)及び水(2500mL)を加える。層を分割し、水層を酢酸エチル(2500mL)で逆抽出する。有機層を合わせ、12%塩水(2×2500mL)で洗浄して、有機層を減圧下、50℃で2〜3容量まで濃縮する。テトラヒドロフラン(300mL)を加え、減圧下、50℃で2〜3容量まで濃縮する。テトラヒドロフラン(300mL)を加え、減圧下、50℃で2容量まで濃縮する。テトラヒドロフラン(600mL)を加え、テトラヒドロフランに溶解した溶液として標題化合物(765.7g、264.65mmol)を得る。これをさらなる精製なしで次の反応で使用する。
【0059】
合成例6
(R)-1-((3S,4S)-4-(4-メトキシ-3-((1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル)エタン-1-オ-ルの合成。
【化12】
【0060】
テトラヒドロフラン(88mL)に溶かした(3S,4S)-3-((R)-1-ヒドロキシエチル)-4-(4-メトキシ-3-((1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(22.0g、44.21mmol)の15〜20℃の溶液に、濃HCl(44mL、535.92mmol、12.18M)を加える。滴下が完了したら、溶液を30〜35℃に温める。4時間後、10%炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜9に調整する。テトラヒドロフランが全て除去されるまで反応物を濃縮する。ジクロロメタン(440mL)を加え、層を分割する。有機層を水(220mL)で洗浄する。有機層を濃縮して、標題化合物(17.0g、42.77mmol)を得る。H NMR(CDCl)δ0.75(s,3H),1.17(d,J=6.4Hz,3H),2.15(s,3H),3.18(d,J=11.6Hz,1H),3.47(s,2H),3.65(m,2H),3.79(m,6H),4.07(m,2H),4.50(m,2H),5.10(t,J=5.2Hz,1H),6.27(d,J=8.4Hz,1H),6.65(s,1H),6.80(s,2H),7.29(m,1H),7.88(s,1H);及び13C-NMR(CDCl)δ(ppm)17.3,17.8,19.3,46.8,48.0,49.6,50.3,51.1,55.7,58.0,67.5,68.8,106.3,111.5,114.3,121.5,122.0,128.0,138.5,145.9,146.8,148.5,158.6。
【0061】
合成例7
(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(4-メトキシ-3-{[1-ピリジン-2-イルアゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ルの合成。
【化13】
【0062】
N-メチル-2-ピロリドン(3mL)に入れた(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(4-メトキシ-3-{[1-(アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ル(50mg)、2-フルオロピリジン(11.8mg)及び炭酸カリウム(31.8mg)の混合物を120℃で一晩加熱する。反応物を冷却し、塩化メチレン(40mL)に注ぎ入れ、水(10mL)で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、3mLになるまで蒸発させる。アセトニトリルを加え、粗生成物溶液を逆相クロマトグラフィ-(5%〜95%アセトニトリル/水)によって精製する。適切な分画を回収し、蒸発させて、標題化合物(22.1mg)を得る。MS(ES+)=512(M+1)。
【0063】
合成例8
(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ルの合成。
【化14】
【0064】
標題化合物は、2-クロロ-5-メチルピリジンを使用して、本質的には合成例7の方法によって調製する。MS(ES+)=526(M+1)。
【0065】
(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ルの代替合成。
【化15】
【0066】
(R)-1-((3S,4S)-4-(4-メトキシ-3-((1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル)エタン-1-オ-ル(300g、754.68mmol)、ジメチルホルムアミド(3000mL)、酢酸エチル(1500mL)及びN-メチルモルホリン(375g、3.71mol)の溶液に、(S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸カリウム(165g、891.13mmol)を加える。混合物を0〜10℃に冷却し、30分間撹拌する。1-プロパンホスホン酸環状無水物(675g、1.06モル、551.92mL)の50重量%酢酸エチル溶液を、内部温度を0〜10℃で維持する添加速度で加える。0〜10℃で30分間撹拌後、混合物を10〜20℃に温める。1時間後、水(6.0L)及び酢酸エチル(4.5L)を加える。層を分割し、水層を酢酸エチル(3.0L)で逆抽出する。合わせた有機層を水(3.0L)で洗浄し、3容量まで濃縮する。酢酸イソプロピル(1.5L)を加え、有機物を3容量まで濃縮する。酢酸イソプロピル(1.5L)を加え、15〜20℃で20時間撹拌する。スラリ-を濾過し、固体を減圧下で乾燥して、標題化合物(290.0g、551.7mmol)を得る。H NMR(CDCl)δ0.76(s,3H),1.20(d,J=6.4Hz,3H),1.45(m,6H),2.20(s,3H),3.75(m,3H),3.85(m,6H),4.20(m,4H),4.42(m,3H),4.68(m,1H),5.10(m,1H),6.30(d,J=8.4Hz,1H),6.65(d,J=12.8Hz,1H),6.85(d,J=2.4Hz,2H),7.30(d,J=8.4Hz,1H),7.98(s,1H);及び13C-NMR(CDCl)δ(ppm)16.9,17.4,17.5,19.6,21.7,25.5,25.6,25.8,44.6,46.3,47.0,48.8,49.3,49.6,52.6,53.0,55.8,58.0,66.4,67.8,68.5,74.1,74.2,106.0,110.6,111.5,114.7,115.0,121.6,121.7,122.1,122.2,129.0,129.6,138.2,145.8,147.5,147.6,148.3,148.4,158.9,168.2,168.4。H及び13Cスペクトルにおいて回転異性化が観測され、これにより関連するピ-クが2倍になっている。
【0067】
実施例1
(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-{4-メトキシ-3-[(1-ピリジン-2-イルアゼチジン-3-イル)オキシ]フェニル}-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルの合成。
【化16】
【0068】
テトラヒドロフラン(2mL)に溶かした(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(4-メトキシ-3-{[1-ピリジン-2-イルアゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ル(22.1mg)の溶液に、1.0M HCl水溶液(1mL)を加える。室温で一晩撹拌する。1.0M HCl水溶液(1mL)を加え、さらに8時間撹拌する。1.0M NaOH水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出し、乾燥して蒸発させ、標題化合物(18.2mg)を得る。MS(ES+)=472(M+1)。
【0069】
実施例2
(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルの合成。
【化17】
【0070】
標題化合物は、本質的には実施例1の方法によって調製する。MS(ES+)=486(M+1)。
【0071】
実施例3
結晶性(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルの調製。
【0072】
(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルの代替名は、(S)-2,3-ジヒドロキシ-1-((3S,4S)-3-((R)-1-ヒドロキシエチル)-4-(4-メトキシ-3-((1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル)プロパン-1-オンである。
【化18】
【0073】
(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ル(20g、38.05mmol)を、1N塩酸(120mL、120.0mmol)の5〜10℃の溶液に加える。溶液を20〜25℃に温め、3時間撹拌する。ジクロロメタン(400mL)を加え、得られた層を分割する。水層にジクロロメタン(400mL)を加え、7%炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを7〜8に調整する。層を分割し、水層をジクロロメタン(200mL)で逆抽出する。合わせた有機層を水(100mL)で洗浄する。有機層を乾固するまで濃縮する。エタノ-ル(8mL)を標題化合物(4.0g)に加える。混合物を15〜20℃で20時間撹拌する。スラリ-を濾過し、湿った濾紙上の固体を減圧下で乾燥して、標題化合物を結晶性固体(3.5g)として得る。
【0074】
結晶性(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルの代替調製。
【0075】
(1R)-1-[(3S,4S)-1-{[(4S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]カルボニル}-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-3-イル]エタノ-ル(290g、551.7mmol)に、1N塩酸(1800mL、1.8mol)を20〜25℃で加える。3時間撹拌後、ジクロロメタン(5800mL)及び10%炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを7〜8に調整する。エタノ-ル(1450mL)を加え、混合物を30分間撹拌する。層を分割し、有機層を水(2900mL)で洗浄する。有機物を2〜3容量まで濃縮する。エタノ-ル(1450mL)を加え、有機物を2〜3容量まで濃縮する。エタノ-ル(580mL)を加え、反応物を15〜20℃に冷却する。標題化合物の種結晶(0.1g)を加え、混合物を24時間撹拌する。スラリ-を濾過し、濾紙上の固体をエタノ-ル(290mL)で洗浄する。濾紙上の固体を減圧下、55〜60℃で40時間乾燥して、標題化合物(240.0g、494.25mmol)を得る。H NMR(CDCl)δ0.73(m,3H),1.19(d,J=6.0Hz,3H),1.8(brs,3H),2.20(s,3H),3.31(m,1H),3.53(m,1H),3.85(m,9H),4.38(m,2H),4.42(m,3H),5.07(m,1H),6.32(d,J=8.4Hz,1H),6.68(d,J=6.0Hz,1H),6.84(m,2H),7.33(m,1H),8.02(m,1H);及び13C-NMR(CDCl)δ(ppm)17.0,17.5,17.6,19.6,44.5,47.4,48.8,49.3,52.7,55.9,57.7,58.2,64.0,64.1,67.5,67.6,67.7,70.5,71.3,106.2,111.3,111.4,115.1,120.7,122.1,128.7,138.5,138.7,145.7,147.3,148.1,158.5,170.9。H及び13Cスペクトルにおいて回転異性化が観測され、これにより関連するピ-クが2倍になっている。
【0076】
X線粉末回折
結晶性固体のXRDパタ-ンは、CuKa源(λ=1.54060Å)及びVantec検出器を備えたBruker D4 Endeavor X線粉末回折計にて、35kV及び50mAで作動させて取得する。試料は、2θで4〜40°の間で、ステップ幅が2θで0.009°、スキャン速度0.5秒/ステップで、発散スリット0.6mm、固定散乱線除去スリット5.28及び検出器スリット9.5mmを用いてスキャンする。乾燥粉末を石英試料ホルダに充填し、スライドガラスを使用して平滑面を得る。結晶形回折パタ-ンを、周囲温度及び周囲相対湿度にて取得する。任意の所定の結晶形で、回折ピ-クの相対強度は、結晶形態及び晶癖などの要因から生じる選択方位に起因して変化し得ることは結晶学分野において周知である。選択方位の影響が存在する場合、ピ-ク強度は変化するが、その多形の特性ピ-ク位置は変化しない。例えば米国薬局方23版、国民医薬品集18版、1843〜1844頁、1995年を参照のこと。さらに、任意の所定の結晶形で、角度ピ-ク位置はわずかに変化し得ることも結晶学分野において周知である。例えばピ-ク位置は、試料を分析する温度もしくは湿度における変動、試料変位、または内部標準の有無に起因して変化し得る。本件では、生じ得るこれらの変動は、2θで±0.2のピ-ク位置変動性によって考慮される。これは、示される結晶形の明確な同定を妨げない。結晶形の確認は、特徴的なピ-ク(°2θ単位)、典型的にはより突出したピ-クの任意の固有の組合せに基づいてなされ得る。周囲温度および周囲相対湿度にて取得した結晶形回折パタ-ンは、8.853及び26.774度2シ-タにおけるNIST675標準ピ-クに基づいて調整した。
【0077】
(2S)-3-[(3S,4S)-3-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-4-(4-メトキシ-3-{[1-(5-メチルピリジン-2-イル)アゼチジン-3-イル]オキシ}フェニル)-3-メチルピロリジン-1-イル]-3-オキソプロパン-1,2-ジオ-ルの試料は、以下の表3に記される回折ピ-ク(2シ-タ値)を有し、特に18.5°の回折ピ-クと、16.2°、20.2°及び14.4°からなる群より選択される1つ以上のピ-クとを組み合わせて有し、回折角の許容誤差が0.2度である、CuKa放射線を用いたX線粉末回折パタ-ンによって特徴づけられる。
【表3】