特許第6364546号(P6364546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6364546
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】抗腫瘍剤の副作用軽減剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/513 20060101AFI20180712BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20180712BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180712BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   A61K31/513
   A61P1/00
   A61P43/00 121
   A61P35/00
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-515633(P2017-515633)
(86)(22)【出願日】2016年4月28日
(86)【国際出願番号】JP2016063494
(87)【国際公開番号】WO2016175324
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2017年7月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-93305(P2015-93305)
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若狭 武司
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/065541(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/147843(WO,A1)
【文献】 MIYAHARA, S. et al,Discovery of a novel class of potent human deoxyuridine triphosphatase inhibitors remarkably enhanci,J. Med. Chem.,2012年,Vol.55, No.7,pp.2970-2980,ISSN 0022-2623
【文献】 UTSUGI, T.,New challenges and inspired answers for anticancer drug discovery and development,Jpn. J. Clin. Oncol.,2013年,Vol.43, No.10,pp.945-953,ISSN 0368-2811
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/513
A61P 1/00
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
〔式中、R1は水素原子又はC1−6アルキル基を示し、R2は水素原子又はハロゲン原子を示し、R3はC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、(C3−6シクロアルキル)C1−6アルキル基、ハロゲノC1−6アルキル基、又は飽和複素環基を示す〕
で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
【請求項2】
ウラシル化合物が、前記式(I)中、R1が水素原子、メチル基又はエチル基であり、R2が水素原子であり、R3がシクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、又は2,2,2−トリフルオロエチル基である化合物である、請求項1に記載の抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
【請求項3】
ウラシル化合物が、下記の群から選択される、請求項1に記載の抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
・N−(1−(3−(シクロペンチルオキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・N−(3−(シクロプロピルメトキシ)ベンジル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・(R)−N−(1−(3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
【請求項4】
抗腫瘍剤が、代謝拮抗剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
【請求項5】
抗腫瘍剤が、5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(テガフール:ギメラシル:オテラシル=1:0.4:1(モル比))、及びペメトレキセドのいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
【請求項6】
抗腫瘍剤の副作用軽減剤を製造するための、下記式(I)
【化2】
〔式中、R1は水素原子又はC1−6アルキル基を示し、R2は水素原子又はハロゲン原子を示し、R3はC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、(C3−6シクロアルキル)C1−6アルキル基、ハロゲノC1−6アルキル基、又は飽和複素環基を示す〕
で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項7】
ウラシル化合物が、前記式(I)中、R1が水素原子、メチル基又はエチル基であり、R2が水素原子であり、R3がシクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、又は2,2,2−トリフルオロエチル基である化合物である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ウラシル化合物が、下記の群から選択される化合物である、請求項6に記載の使用。
・N−(1−(3−(シクロペンチルオキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・N−(3−(シクロプロピルメトキシ)ベンジル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・(R)−N−(1−(3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
【請求項9】
抗腫瘍剤が、代謝拮抗剤である請求項6〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
抗腫瘍剤が、5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(テガフール:ギメラシル:オテラシル=1:0.4:1(モル比))、及びペメトレキセドのいずれかである請求項6〜8のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍剤の副作用軽減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デオキシウリジントリホスファターゼ(以下、「dUTPase」(EC3.6.1.23)ともいう。)は、予防的なDNA修復酵素である。天然型核酸トリリン酸体の中でデオキシウリジントリホスフェートのみを特異的に認識し、デオキシウリジンモノホスフェートとピロリン酸に分解する酵素であり、原核生物及び真核生物の両方で細胞の生存に必須であることが知られている。
【0003】
悪性腫瘍においては、悪性度とdUTPaseの発現量に相関が認められ(非特許文献1、2)、さらに、発現が亢進した腫瘍は化学療法に対する抵抗性を示すことが報告されている(非特許文献3)。また培養癌細胞においては,siRNAを用いてdUTPaseの発現量を低下させるとチミジル酸合成酵素阻害剤(以下、「TS阻害剤」)の抗腫瘍効果を増強することが示されている(非特許文献4)。
一方、特許文献1には、dUTPase阻害作用を有するウラシル化合物が開示され、特許文献2には、同ウラシル化合物が抗腫瘍効果を増強することが開示されている。
【0004】
しかしながら、上記のウラシル化合物が、抗腫瘍剤の副作用を軽減することは全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/147843号公報
【特許文献2】国際公開第2011/065541号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Clin Pathol.2009 Apr;62(4):364−9
【非特許文献2】Int J Cancer.1999 Dec 22;84(6):614−7
【非特許文献3】Cancer Res.2000 Jul 1;60(13):3493−503
【非特許文献4】Mol Pharmacol.2004 Sep;66(3):620−6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、抗腫瘍剤と併用した場合に、当該抗腫瘍剤の副作用を軽減する抗腫瘍剤の副作用軽減剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記式(I)で表されるウラシル環N−1位にスルホンアミド構造を有するウラシル化合物又はその塩が、抗腫瘍剤に対して優れた副作用軽減作用、特に消化管毒性の軽減作用を有し、当該抗腫瘍剤の副作用軽減剤として有用であること見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、次の〔1〕〜〔20〕を提供するものである。
〔1〕下記式(I)
【0010】
【化1】
【0011】
〔式中、R1は水素原子又はC1−6アルキル基を示し、R2は水素原子又はハロゲン原子を示し、R3はC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、(C3−6シクロアルキル)C1−6アルキル基、ハロゲノC1−6アルキル基、又は飽和複素環基を示す〕
で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする、抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
〔2〕ウラシル化合物が、前記式(I)中、R1が水素原子、メチル基又はエチル基であり、R2が水素原子であり、R3がシクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、又は2,2,2−トリフルオロエチル基である化合物である、〔1〕に記載の抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
〔3〕ウラシル化合物が、下記の群から選択される、〔1〕又は〔2〕に記載の抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
・N−(1−(3−(シクロペンチルオキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・N−(3−(シクロプロピルメトキシ)ベンジル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・(R)−N−(1−(3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
〔4〕抗腫瘍剤が、代謝拮抗剤である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
〔5〕抗腫瘍剤が、5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(テガフール:ギメラシル:オテラシル=1:0.4:1(モル比))、及びペメトレキセドのいずれかである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤の副作用軽減剤。
〔6〕抗腫瘍剤の副作用軽減剤を製造するための、下記式(I)
【0012】
【化2】
【0013】
〔式中、R1は水素原子又はC1−6アルキル基を示し、R2は水素原子又はハロゲン原子を示し、R3はC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、(C3−6シクロアルキル)C1−6アルキル基、ハロゲノC1−6アルキル基、又は飽和複素環基を示す〕
で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
〔7〕ウラシル化合物が、前記式(I)中、R1が水素原子、メチル基又はエチル基であり、R2が水素原子であり、R3がシクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、又は2,2,2−トリフルオロエチル基である化合物である、〔6〕に記載の使用。
〔8〕ウラシル化合物が、下記の群から選択される化合物である、〔6〕に記載の使用。
・N−(1−(3−(シクロペンチルオキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・N−(3−(シクロプロピルメトキシ)ベンジル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・(R)−N−(1−(3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
〔9〕抗腫瘍剤が、代謝拮抗剤である〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の使用。
〔10〕抗腫瘍剤が、5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(テガフール:ギメラシル:オテラシル=1:0.4:1(モル比))、及びペメトレキセドのいずれかである〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の使用。
〔11〕抗腫瘍剤の副作用軽減に使用するための、下記式(I)
【0014】
【化3】
【0015】
〔式中、R1は水素原子又はC1−6アルキル基を示し、R2は水素原子又はハロゲン原子を示し、R3はC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、(C3−6シクロアルキル)C1−6アルキル基、ハロゲノC1−6アルキル基、又は飽和複素環基を示す〕
で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩。
〔12〕式(I)中、R1が水素原子、メチル基又はエチル基であり、R2が水素原子であり、R3がシクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、又は2,2,2−トリフルオロエチル基である、〔11〕に記載のウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩。
〔13〕下記の群から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩である、〔11〕に記載のウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩。
・N−(1−(3−(シクロペンチルオキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・N−(3−(シクロプロピルメトキシ)ベンジル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・(R)−N−(1−(3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
〔14〕抗腫瘍剤が、代謝拮抗剤である〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載のウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩。
〔15〕抗腫瘍剤が、5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(テガフール:ギメラシル:オテラシル=1:0.4:1(モル比))、及びペメトレキセドのいずれかである〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載のウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩。
〔16〕抗腫瘍剤の副作用軽減方法であって、それを必要とする対象に、下記式(I)
【0016】
【化4】
【0017】
〔式中、R1は水素原子又はC1−6アルキル基を示し、R2は水素原子又はハロゲン原子を示し、R3はC1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C3−6シクロアルキル基、(C3−6シクロアルキル)C1−6アルキル基、ハロゲノC1−6アルキル基、又は飽和複素環基を示す〕
で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、方法。
〔17〕ウラシル化合物が、前記式(I)中、R1が水素原子、メチル基又はエチル基であり、R2が水素原子であり、R3がシクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、又は2,2,2−トリフルオロエチル基である化合物である、〔16〕に記載の方法。
〔18〕ウラシル化合物が、下記の群から選択される、〔16〕に記載の方法。
・N−(1−(3−(シクロペンチルオキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・N−(3−(シクロプロピルメトキシ)ベンジル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
・(R)−N−(1−(3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミド
〔19〕抗腫瘍剤が、代謝拮抗剤である〔16〕〜〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕抗腫瘍剤が、5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(テガフール:ギメラシル:オテラシル=1:0.4:1(モル比))、及びペメトレキセドのいずれかである〔16〕〜〔18〕のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤を抗腫瘍剤と併用することにより、消化管毒性等の抗腫瘍剤の副作用を軽減することができる。したがって、本発明によれば、より安全性の高い癌化学療法の提供が可能となり、また抗腫瘍剤を増量して投与することも可能となることから、より治療効果の高い癌化学療法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】担癌マウスにおけるPemetrexedに対する体重変化率を示す図である。
図2】担癌マウスにおけるPemetrexedに対する下痢発現率を示す図である。
図3】担癌マウスにおけるS−1に対する体重変化率を示す図である。
図4】担癌マウスにおけるS−1に対する体重変化率を示す図である。
図5】担癌マウスにおけるS−1に対する下痢発現率を示す図である。
図6】非担癌マウスにおけるS−1に対する体重変化率を示す図である。
図7】非担癌マウスにおけるS−1に対する下痢発現率を示す図である。
図8】非担癌マウスにおけるFCDに対する体重変化率を示す図である。
図9】非担癌マウスにおけるFCDに対する下痢発現率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
式(I)において、R1で表される「C1−6アルキル基」としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状の炭化水素基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、C1〜3アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
式(I)において、R2で表される「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子である。
式(I)において、R2として好ましくは、水素原子である。
式(I)において、R3で表される「C1−6アルキル基」としては、上記R1と同じものが挙げられる。
【0021】
式(I)において、R3で表される「C2−6アルケニル基」は、炭素−炭素二重結合を含む、炭素数2〜6の炭化水素基を示し、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
式(I)において、R3で表される「C3−6シクロアルキル基」としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル基である。
式(I)において、R3で表される「(C3−6シクロアルキル)C1−6アルキル基」は、上記のシクロアルキル基を有する炭素数1〜6のアルキル基を示し、好ましくはシクロプロピルメチル基である。
【0022】
式(I)において、R3で表される「ハロゲノC1−6アルキル基」は、上記のハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基を示し、好ましくは2,2,2−トリフルオロエチル基である。
式(I)において、R3で表される「飽和複素環基」は、好ましくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかの原子を、好ましくは1個又は2個有する単環性又は二環性の飽和複素環基を示し、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ホモピペリジニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピリル基等が挙げられる。
3として好ましくは、シクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基である。
【0023】
式(I)中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基を示し;R2は水素原子を示し;R3はシクロペンチル基、シクロプロピルメチル基、又は2,2,2−トリフルオロエチル基を示す場合が好ましい。
【0024】
式(I)で表されるウラシル化合物の薬学的に許容される塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、グルタミン酸などの有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどの無機塩基や、メチルアミン、エチルアミン、メグルミン、エタノールアミンなどの有機塩基、又はリジン、アルギニン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸との塩やアンモニウム塩が挙げられる。また、式(I)で表されるウラシル化合物には、光学異性体も含まれ、水和物も含まれる。
【0025】
本発明の式(I)で表されるウラシル化合物は、前記特許文献1又は特許文献2に従い、製造することが出来る。
【0026】
後記実施例に示すように、式(I)で表されるウラシル化合物は、種々の抗腫瘍剤と併用した場合に、その抗腫瘍剤の副作用を軽減する作用を有する。
したがって、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩は、抗腫瘍剤の副作用軽減剤として使用できる。
また、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩は、その有効量を投与し、抗腫瘍剤の副作用軽減を図るために使用できる。
また、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩は、抗腫瘍剤の副作用軽減剤を製造するために使用することができる。
【0027】
本発明において、「抗腫瘍剤の副作用軽減」とは、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩を抗腫瘍剤と併用した場合に、当該抗腫瘍剤による副作用を軽減することを意味する。
【0028】
ここで、「副作用」としては、抗腫瘍剤によって、造血細胞、口腔粘膜、消化管粘膜、毛根細胞等の正常細胞が傷害を受けることにより現れる症状が挙げられ、例えば、造血細胞が傷害を受けることによる貧血、感染症、出血、毛根細胞が傷害を受けることによる脱毛、口腔粘膜が傷害を受けることによる口内炎、消化管粘膜が傷害を受けること(消化管毒性)による吐き気や下痢といった症状が挙げられる。このうち、消化管毒性に対してより有効であり、下痢に対して特に有効である。
【0029】
本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤により、その副作用が軽減される抗腫瘍剤としては特に限定されないが、例えばシクロフォスファミド、ニムスチン等のアルキル化剤、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等のプラチナ製剤;代謝拮抗剤;パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン等の植物アルカロイド系抗腫瘍剤等が挙げられ、好ましくは代謝拮抗剤である。
【0030】
ここで代謝拮抗剤とは、がん細胞が分裂・増殖する際に、核酸の材料となる物質と化学構造が似ている化合物、又はそれを有効成分とする薬剤であって、核酸の生合成あるいは核酸の生合成経路を妨げ、増殖を抑制する抗がん剤をいう。例えば5−フルオロウラシル(5−FU)、 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(テガフール:ギメラシル:オテラシル=1:0.4:1(モル比);以下、「S−1」)、テガフール・ウラシル配合剤(テガフール:ウラシル=1:4;以下「UFT」)、カペシタビン、ドキシフルリジン、5−フルオロ−2'−デオキシウリジン(FdUrd)、ゲムシタビン、シタラビン等のピリミジン系代謝拮抗剤、フルダラビン、クラドリビン、ネララビン等のプリン系代謝拮抗剤、ペメトレキセド、メトトレキサート等の葉酸代謝拮抗剤等が挙げられる。
これらのうち、チミジル酸(TMP)合成経路阻害剤が好ましい。チミジル酸合成経路阻害剤とは、代謝拮抗剤のうち、チミジル酸合成酵素阻害剤やジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤等を代表とする、TMPの生合成に関わる酵素を直接的、或いは間接的に阻害する化合物、又はそれを有効成分とする薬剤をいう。チミジル酸合成酵素阻害剤とは、チミジル酸合成酵素を阻害する化合物、又はそれを有効成分とする薬剤をいい、例えば5−フルオロウラシル(5−FU)、S−1、UFT、カペシタビン、ドキシフルリジン、5−フルオロ−2'−デオキシウリジン(FdUrd)、カルモフール(ヤマフール)等のフッ化ピリミジン系代謝拮抗剤、ペメトレキセド、メトトレキセート、ラルチトレキセド等の葉酸代謝拮抗剤、及びノラトレキセド2塩酸塩等が挙げられる。また、ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤とは、プリン類やチミジル酸等のde novo合成に必須のテトラヒドロ葉酸を生合成する酵素の阻害化合物、又はそれを有効成分とする薬剤をいい、例えばプララトレキセートやエダトレキセート等の葉酸代謝拮抗剤やピリメサミン、ブロジモプリム、トリメトレキセート グルクロネート等が挙げられる。
本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤により、その副作用が軽減される抗腫瘍剤としては、チミジル酸合成酵素阻害剤がより好ましく、テガフール・ギメラシルを有効成分して含む薬剤、ペメトレキセドがより好ましく、S−1、ペメトレキセドが特に好ましい。
また、本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤を上記抗腫瘍剤と併用した場合に治療できる悪性腫瘍としては特に制限はないが、例えば頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮体癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍等が挙げられる。
【0031】
本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤は、抗腫瘍剤と組み合せて用いることにより、抗腫瘍剤の副作用が軽減された癌化学療法の提供を可能とする。この場合、本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤を、抗腫瘍剤を含む一剤型の製剤形態とすることでもよいし、本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤を、抗腫瘍剤とは別個に製剤化し、使用時に併用する形態とすることでもよい。
【0032】
本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤と抗腫瘍剤を別個の形態で用いる場合は、本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤の投与手段と抗腫瘍剤の投与手段は同一であってもよいし、相違していてもよい(例えば、経口投与と注射)。また、抗腫瘍剤の副作用軽減剤と抗腫瘍剤の投与時期は、同時であっても間隔をおいて投与するものでもよく、両者の投与順序も限定されず適宜選択可能である。好ましくは同時、或いは一方を投与後6時間以内に他方を投与するのがよい。
【0033】
本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤と抗腫瘍剤を別個の形態で用いる場合は、「キット」の形で提供することができる。すなわち、本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤と抗腫瘍剤を、それぞれ任意の製剤形態とし、その製剤形態に応じて、通常用いられる各種の容器に収納され、ヒトを含むホ乳動物における癌治療用キットとすることができる。
【0034】
本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤は医薬(医薬組成物)として使用されるが、この場合、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩の他に、必要に応じて薬学的担体を配合し、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態とすることができる。
該形態としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられるが、経口剤が好ましい。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
【0035】
薬学的担体は、製剤素材として慣用の各種有機或いは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、安定化剤等の製剤添加物を用いることもできる。
【0036】
経口用固形製剤を調製する場合は、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩に、賦形剤、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。
【0037】
ここで、賦形剤としては、乳糖、白糖、D−マンニトール、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、無水ケイ酸等が挙げられる。結合剤としては、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、α−デンプン液、ゼラチン液、D−マンニトール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。滑沢剤としては、精製タルク、ステアリン酸塩ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。着色剤としては、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。矯味・矯臭剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0038】
経口用液体製剤を調製する場合は、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩に、矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。この場合矯味・矯臭剤としては、前記に挙げられたものでよく、緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム等が、安定剤としては、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。必要により、腸溶性コーティング又は、効果の持続を目的として、経口製剤に公知の方法により、コーティングを施すこともできる。このようなコーティング剤にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、Tween80(登録商標)等が挙げられる。
【0039】
注射剤を調製する場合は、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。この場合のpH調節剤及び緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖、D−マンニトール、グリセリン等が挙げられる。
【0040】
坐剤を調製する場合は、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩に、当該分野において公知の製剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセリド等を、さらに必要に応じてTween80(登録商標)のような界面活性剤等を加えた後、常法により製造することができる。
【0041】
軟膏剤を調製する場合は、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩に、通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。基剤としては、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0042】
貼付剤を調製する場合は、通常の支持体に前記軟膏、クリーム、ゲル、ペースト等を常法により塗布すればよい。支持体としては、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布や軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム或いは発泡体シートが適当である。
【0043】
前記の各投与単位形態中に配合されるべき式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩の量は、これを適用すべき患者の症状により、或いはその剤形等により一定ではないが、一般に投与単位形態あたり、経口剤では約0.05〜1000mg、注射剤では約0.01〜500mg、坐剤では約1〜1000mg程度である。
また、前記投与形態を有する薬剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、通常成人(体重50kg)1日あたり約0.05〜5000mg程度であり、0.1〜1000mgが好ましく、これを1日1回又は2〜3回程度に分けて投与するのが好ましい。
【0044】
本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤の使用により、抗腫瘍剤の副作用を減弱することができるため、抗腫瘍剤の投与量としては、通常用いられる投与量でも良いが、通常用いられる投与量より増量して用いることもできる。
【0045】
本発明の抗腫瘍剤の副作用軽減剤と抗腫瘍剤との投与若しくは配合割合は、抗腫瘍効果の増強効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、抗腫瘍剤1モルに対して、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩を0.01〜100モル程度、好ましくは0.07〜64モル程度とすればよい。ここで、抗腫瘍剤の投与又は配合割合は、抗腫瘍効果を奏する有効成分の量を基準とする。例えば、テガフール・ギメラシルを含む薬剤である場合には、1日量としてテガフール1モルに対して、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩を0.01〜100モル程度、好ましくは0.15〜64モル程度とすればよい。ペメトレキセドの場合には、ペメトレキセド1モルに対して、式(I)で表されるウラシル化合物又はその薬学的に許容される塩を0.01〜100モル程度、好ましくは0.07〜12モル程度とすればよい。
【実施例】
【0046】
以下に実施例、試験例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0047】
実施例1
(R)−N−(1−(3−(シクロペンチルオキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミドの合成
特許文献1に開示されている手法に準じて合成した。
1H−NMR (CDCl3):δppm 1.53 (3H,d,J=6.8Hz),1.56−1.98 (10H,m),2.67−2.78 (1H,m),2.80−2.91 (1H,m),3.42−3.60 (2H,m) ,4.51−4.63 (1H,m),4.74−4.89 (2H,m),5.05 (2H,s) ,5.76 (1H,dd,J=7.8Hz,2.2Hz),6.77−6.89 (3H,m),7.20−7.27 (2H,m),8.76 (1H,brs):LRMS(ESI)m/z 452[M+H]
【0048】
実施例2
N−(3−(シクロプロピルメトキシ)ベンジル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミドの合成
特許文献1に開示されている手法に準じて合成した。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):0.30−0.39(2H,m),0.57−0.68(2H,m),1.20−1.31(1H,m),1.96−2.09(2H,m),3.0(2H,t,J=7.2Hz),3.57−3.64(2H,m),3.81(2H,d,J=6.9Hz),4.25(2H,d,J=6.1Hz),4.89(1H,brs),5.09(2H,s),5.75(1H,dd,J=7.9,1.8Hz),6.76−6.90(3H,m),7.20−7.29(2H,m),8.90(1H,brs)
【0049】
実施例3
(R)−N−(1−(3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル)エチル)−3−((2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−イル)メトキシ)プロパン−1−スルホンアミドの合成
特許文献1に開示されている手法に準じて合成した。
1H−NMR(DMSO-D6)δ(ppm):1.37(3H,d,J=6.8Hz),1.69−1.80(2H,m),2.58−2.70(1H,m),2.72−2.88(1H,m),3.31−3.46(2H,m),4.39−4.45(1H,m),4.69−4.79(2H,m),4.99(2H,s),5.60(1H,dd,J=8.1,0.8Hz),6.91−7.08(3H,m),7.26−7.31(1H,m),7.63(1H,dd,J=8.1,0.8Hz),7.73(1H,d,J=8.6Hz),11.3(1H,brs)
【0050】
【表1】
【0051】
試験例1
Pemetrexedに対する毒性軽減効果
50%マトリゲルを含むPBSにヒト肺癌株NCI−H441を懸濁し、8週齢のBALB/cA Jcl−nuマウス(日本クレア(株))右側胸部皮下に5×106cells/0.1mL/bodyで移植した。群分け後の平均腫瘍体積が100mm3を超える時期に、腫瘍の長径及び短径を測定し、各群の腫瘍体積にばらつきのないように群分けを行った(1群当たり6匹)。また、5週齢から試験終了日まで低葉酸飼料飼育下の条件で実施した。
生理食塩水にPemetrexed<LC Laboratories(株)製>を溶解し、群分けの翌日である1日目および1週間後である8日目に尾静脈投与した。また、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液に化合物1を懸濁し、群分けの翌日より1日1回14日間連日経口投与した。Pemetrexed投与量は50mg/kg/dayとし、化合物1投与量は600mg/kg/dayとした。
群分けから週に2回、体重(Body weight,BW)を測定し体重変化率(Body weight change,BWC)を下記の式から算出し、毒性軽減効果の判定を行った。
【0052】
(式1) BWC(%)=[BW−(BW on day0)]/(BW on day0)×100
[式中、BWCは体重変化率を示し、BWは各測定日の体重、BW on day0は群分け日の体重を示す。]
【0053】
試験結果を図1に示した。Pemetrexed単剤では体重減少が顕著であるのに対し、本発明化合物を併用することにより体重減少が抑制された。
【0054】
また薬剤投与開始日より15日において、個体毎にマウスの肛門付近を観察することで下痢発現の有無を確認し、各群で下痢の症状が認められた割合を下痢発現率(%)として算出し、消化管毒性軽減効果の判定を行った。
試験結果を図2に示した。Pemetrexed単剤では60%の頻度で下痢の発現が観察されたのに対し、本発明化合物を併用することにより下痢の発現は認められなかった。
さらに試験中の死亡個体数を表2に示した。Pemetrexed単剤では6例中1例の死亡例が観察されたが、本発明化合物を併用することにより死亡例は確認されなかった。
以上より、本発明化合物は、Pemetrexedの副作用を軽減することが明らかとなった。
【0055】
【表2】
【0056】
試験例2
S−1に対する毒性軽減効果
皮下継代したヒト乳癌株MX−1を2mm角のフラグメントにし、5又は6週齢のBALB/cA Jcl−nuマウス(日本クレア(株))右側胸部皮下に移植した。群分け後の平均腫瘍体積が100mm3を超える時期に、腫瘍の長径及び短径を測定し、各群の腫瘍体積にばらつきのないように群分けを行った(1群当たり5匹)。
0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液にS−1<大鵬薬品工業(株)製>および被検化合物を懸濁し、群分けの翌日より1日1回14日間連日経口投与した。S−1投与量は有効性が期待される用量の8.3mg/kg/dayとした。被検化合物(化合物2,3)投与量は、75、100、150、300又は600mg/kg/dayとし、S−1と同時に投与した。
群分けから週に2回、体重(Body weight,BW)を測定し体重変化率(Body weight change,BWC)を下記の式から算出し、毒性軽減効果の判定を行った。
【0057】
(式1) BWC(%)=[BW−(BW on day0)]/(BW on day0)×100
[式中、BWCは体重変化率を示し、BWは各測定日の体重、BW on day0は群分け日の体重を示す。]
【0058】
試験結果を図3及び図4に示した。S−1単剤では体重減少が認められるのに対し、本発明化合物を併用することにより体重減少が抑制された。
【0059】
薬剤投与開始日から15日後、個体毎にマウスの肛門付近を観察することで下痢発現の有無を確認し、各群で下痢の症状が認められた割合を下痢発現率(%)として算出し、消化管毒性軽減効果の判定を行った。
試験結果を図5に示した。S−1単剤では80%以上の頻度で下痢の発現が観察されたのに対し、本発明化合物を併用することにより用量依存的に下痢の発現が減少した。
【0060】
さらに試験中の死亡個体数を表3に示した。S−1単剤では5例中1例の死亡例が観察されたが、本発明化合物を併用することにより死亡例は確認されなかった。
以上より、本発明化合物は、S−1の副作用を軽減することが明らかとなった。
【0061】
【表3】
【0062】
試験例3
S−1に対する毒性軽減効果
6週齢のBALB/cA Jcl−nuマウス(日本クレア(株))を体重測定した後、群分け後の各群の体重が均一になるように、無作為層別化法により群分けを行った(1群当たり5匹)。
0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液にS−1<大鵬薬品工業(株)製>および被検化合物を懸濁し、群分けの翌日より1日1回14日間連日経口投与した。S−1投与量は毒性用量である12mg/kg/dayとした。被検化合物(化合物1)投与量は、300又は600mg/kg/dayとし、S−1と同時に投与した。
群分けから週に2回、体重(Body weight,BW)を測定し体重変化率(Body weight change,BWC)を下記の式から算出し、毒性軽減効果の判定を行った。
【0063】
(式1) BWC(%)=[BW−(BW on day0)]/(BW on day0)×100
[式中、BWCは体重変化率を示し、BWは各測定日の体重、BW on day0は群分け日の体重を示す。]
【0064】
試験結果を図6に示した。S−1単剤では体重減少が認められた(なお表3に示すように5例中2例は体重減少が著しく10日目前後で死亡したため、12日目以降の体重計測における平均体重は増加している)。本発明化合物を併用することにより用量依存的に体重減少が抑制された。
【0065】
また薬剤投与開始日より14日間連日、個体毎にマウスの肛門付近を観察することで下痢発現の有無を確認し、各群で下痢の症状が認められた割合を下痢発現率(%)として算出し、消化管毒性軽減効果の判定を行った。
試験結果を図7に示した。S−1単剤では投与期間中、高頻度で下痢が確認され、特に8日目〜10日目では100%の頻度で下痢の発現が観察された。一方、本発明化合物を併用することにより用量依存的に下痢の発現頻度が減少した。
【0066】
さらに試験中の死亡個体数を表4に示した。S−1単剤では5例中2例の死亡例が観察されたが、本発明化合物を併用することにより用量依存的に死亡例が減少した。以上より、本発明化合物は、S−1の副作用を軽減することが明らかとなった。
【0067】
【表4】
【0068】
試験例4
S−1に対する毒性軽減効果
ヒト腫瘍患者に対し、S−1を単独で投与する複数本の臨床試験と、S−1と化合物1を併用して投与する複数本の臨床試験を実施した。
臨床試験を開始してから中止基準(原疾患の悪化、患者の同意撤回)により試験を中止するまでの期間に患者に発現した下痢の重症度を、CTCAEを用いて評価した。
臨床試験では、原則としてS−1は30mg/m2の用量で食後に投与した。ただし、S−1を単独で投与する臨床試験においてはS−1を30mg/m2の用量で投与する三つの試験のほかに、36mg/m2の用量で食後に投与する複数の試験を行い、これらの試験全体の結果として(合計N数が1800)下痢の発生率を求めた。尚、36mg/m2の用量で投与したものは、30mg/m2の用量で食後に投与したものと5−FUのAUC0-12がほぼ同等となる。
化合物1は、S−1と同時に投与した。
S−1単剤及びS−1と化合物1を併用した患者の全グレード(All)及びグレード3(G3)以上の下痢の発現頻度を比較し、その結果を表5に示した。
S−1単剤を投与した患者における全グレード及びグレード3以上の下痢発現率は29.6〜49%及び3.6〜21%であるのに対し、S−1と化合物1を併用して投与した患者のそれらは18.8%と19%及び0%と1.6%であり、本発明化合物を併用することにより下痢の発現頻度は減少した。
以上より、本発明化合物は、S−1の副作用を軽減することが明らかとなった。
【0069】
【表5】
【0070】
試験例5
FCDの毒性軽減効果
S−1の配合成分であるテガフール、ギメラシル、オテラシルのうち、消化管軽減に寄与するオテラシル(Jpn J Clin Oncol 2009:39(1)2−15)を除いたFCD(テガフール・ギメラシル=1:0.4(モル比))を用いた毒性軽減効果を検討した。
6週齢のBALB/cA Jcl−nuマウス(日本クレア(株))を体重測定した後、群分け後の各群の体重が均一になるように、無作為層別化法により群分けを行った(1群当たり5匹)。
0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液にFCDを懸濁し、群分けの翌日より1日1回14日間連日経口投与した。FCD投与量はテガフール換算量で10mg/kg/dayとした。化合物1投与量は150,300又は600mg/kg/dayとし、FCDと同時に投与した。
群分けから週に2回、体重(Body weight,BW)を測定し体重変化率(Body weight change,BWC)を下記の式から算出し、毒性軽減効果の判定を行った。
【0071】
(式1) BWC(%)=[BW−(BW on day0)]/(BW on day0)×100
[式中、BWCは体重変化率を示し、BWは各測定日の体重、BW on day0は群分け日の体重を示す。]
試験結果を図8に示した。FCD単剤では体重減少が認められるのに対し、本発明化合物を併用することにより体重減少が抑制された。
【0072】
また薬剤投与開始日より14日間連日、個体毎にマウスの肛門付近を観察することで下痢発現の有無を確認し、各群で下痢の症状が認められた割合を下痢発現率(%)として算出し、消化管毒性軽減効果の判定を行った。
試験結果を図9に示した。
FCD単剤では投与期間中、高頻度で下痢が確認され、特に10日目では100%の頻度で下痢の発現が観察された。一方、本発明化合物を併用することにより用量依存的に下痢の発現頻度が減少した。
以上より、本発明化合物は、テガフール・ギメラシルを有効成分として含む薬剤の副作用を軽減することが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9