(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6364550
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ボタンバック及びボタン
(51)【国際特許分類】
A44B 1/06 20060101AFI20180712BHJP
A44B 1/02 20060101ALI20180712BHJP
A44B 1/18 20060101ALI20180712BHJP
A44B 1/28 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
A44B1/06 F
A44B1/02 A
A44B1/18 A
A44B1/28 620D
A44B1/28 610A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-524322(P2017-524322)
(86)(22)【出願日】2015年6月23日
(86)【国際出願番号】JP2015068100
(87)【国際公開番号】WO2016207984
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
(72)【発明者】
【氏名】清水 昇
(72)【発明者】
【氏名】小櫛 拓人
(72)【発明者】
【氏名】小林 明生
【審査官】
▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0226959(US,A1)
【文献】
特許第3566428(JP,B2)
【文献】
米国特許第1521431(US,A)
【文献】
実開昭58−061009(JP,U)
【文献】
実開昭59−166711(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 1/00−9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部(11)と、筒部(11)の軸方向一端から半径方向外側に延びる傘部(20)とを備える金属製のボタンバック(10)であって、
前記傘部(20)は、筒部(11)の軸方向一端から半径方向外側に延びた後、前記筒部(11)とは反対側に屈曲する第1の屈曲部(23)を含み、
前記第1の屈曲部(23)の、半径方向外側端を含む外周は、三つ以上の角部(24a)と、周方向に隣り合う二つの角部(24a)間に延びる辺部(24b)とを有する多角形状であり、
前記傘部(20)は、前記辺部(24b)に対応する前記第1の屈曲部(23)の半径方向外側端から半径方向外側に延びる平板部(25)を含む、ことを特徴とするボタンバック。
【請求項2】
前記平板部(25)は前記角部(24a)それぞれを結ぶ真円の外周をなすことを特徴とする請求項1に記載のボタンバック。
【請求項3】
前記第1の屈曲部(23)の外周は、八つ〜十二の角部(24a)を有する多角形状である請求項1又は2に記載のボタンバック。
【請求項4】
前記第1の屈曲部(23)は曲率半径が1mm以下である湾曲部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボタンバック。
【請求項5】
前記平板部(25)の延出長さは、前記辺部(24b)の長さのうち中央部が最も長く、前記辺部(24b)と隣り合う角部(24a)に向けて漸次減少することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバタンバック。
【請求項6】
前記ボタンバック(10)はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のボタンバック。
【請求項7】
金属製のボタンバック(10)と、ボタンバック(10)に組み付けられる金属製のシェルキャップ(2)とを含むボタンであって、
前記ボタンバック(10)は、筒部(11)と、筒部(11)の軸方向一端から半径方向外側に延びる傘部(20)とを備え、前記傘部(20)は、筒部(11)の軸方向一端から半径方向外側に延びた後、前記筒部(11)とは反対側に屈曲する第1の屈曲部(23)を含み、前記第1の屈曲部(23)の、半径方向外側端を含む外周は、三つ以上の角部(24a)と、周方向に隣り合う二つの角部(24a)間に延びる辺部(24b)とを有する多角形状であり、前記傘部(20)は、前記辺部(24b)に対応する前記第1の屈曲部(23)の半径方向外側端から半径方向外側に延びる平板部(25)を含み、
前記シェルキャップ(2)は、ボタン(1)の表面を規定する円板部(2a)と、円板部(2a)の半径方向外側端から屈曲され、前記ボタンバック(10)の傘部(20)の半径方向外側部分に加締め付けられる第2の屈曲部(2b)とを備え、
前記第2の屈曲部(2b)の屈曲の程度が、前記第1の屈曲部(23)における前記角部(24a)よりも前記辺部(24b)で大きいことを特徴とするボタン。
【請求項8】
前記平板部(25)は前記角部(24a)それぞれを結ぶ真円の外周をなすことを特徴とする請求項7に記載のボタン。
【請求項9】
前記シェルキャップ(2)の第2の屈曲部(2b)の加締め形態が周方向に対して交互に異なることを特徴とする請求項7又は8に記載のボタン。
【請求項10】
前記シェルキャップ(2)の第2の屈曲部(2b)の屈曲角度が、辺部(24b)と対応する部分と角部(24a)に対応する部分とで異なり、前記辺部(24b)と対応する部分において、前記第2の屈曲部(2b)と前記辺部(24b)との間には空間部(s)が形成されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のボタン。
【請求項11】
前記第1の屈曲部(23)は、前記第1の屈曲部(23)の半径方向外側端へと至る、前記ボタンバック(10)の軸方向にほぼ平行となる垂直部(23b)を含み、
前記シェルキャップ(2)の第2の屈曲部(2b)が前記垂直部(23b)に少なくとも部分的に接触する請求項7〜10のいずれか1項に記載のボタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタンバック及びボタンに関し、特にジーンズ等に多用されるボタンの一構成部品であるボタンバックと、このボタンバックを用いるボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
ジーンズ、ジージャン等に多用されるボタンとして、ほぼ円筒状の胴部と、胴部の一端側において円板状に拡張する頭部とを有し、頭部をボタン穴に出し入れするタイプのものが知られている。このようなボタンは、例えば、米国特許出願公開第2007/0226959号明細書(特許文献1)等に開示されている。この種のボタンは、一般に、金属製の外殻部材であるボタンバック及びシェルキャップと、樹脂製又は金属製のコア部材であるインサートの三部品から構成される。ボタンバックは、ボタンの胴部の外周壁をなす円筒部と、円筒部の一端から半径方向外側に延び、ボタンの頭部の裏側壁をなす傘部とを備える。傘部は、一般に、その半径方向外側端部が円筒部とは反対側に湾曲するようにプレス成形される。これにより、インサートの頭部対応部分を配置するための厚みが傘部に与えられると共に、傘部の強度が高められる。シェルキャップは、ボタンの頭部の表側壁をなす円板部と、円板部の半径方向外側端から頭部の裏側へと屈曲される屈曲部とを有する。屈曲部は、ボタンバックの傘部の湾曲状の半径方向外側端部に対し加締め付けられる。シェルキャップの円板部の表面はボタンの頭部の表面となり、この表面には、一般に、周方向向きが決められた文字、図形、記号等からなるロゴやデザインが付与される。このようなボタンは、ジーンズ等に対し所定の周方向向きで取り付けられる。
【0003】
上記のように表面に方向性のあるロゴ等が付されたシェルキャップがボタンバックの傘部に取り付けた後に傘部に対し廻る、すなわち周方向にずれると、ロゴ等が所定の向きからずれてしまう。また、表面に方向性がない場合でも使用時にシェルキャップが廻ってしまうことは製品性能上好ましくない。このようなシェルキャップの廻りを防ぐため、特許文献1では、ボタンバックの傘部の外周を多角形状とし(同文献
図9参照)、多角形の角部を廻り止めとして機能させることが提案されている。しかしながら、傘部の外周を多角形状とした場合、シェルキャップの屈曲部が傘部の多角形状に沿って折り曲げられるため、ボタンの表面が綺麗な円形になり難いという問題がある。
【0004】
シェルキャップの廻り止め機能を有する別のボタンバックとして、傘部の湾曲状の半径方向外側端部に廻り止めしての凸部を周方向に複数設けたものが知られている。しかしながら、そのような凸部を成形するためには、金型が複雑となり、製造コストが嵩む。また、近年、ボタンの材料コストを低減するため、ボタンバックを従前のブラス材からアルニウム又はアルミニウム合金で製造するようになってきている。アルミニウム又はアルミニウム合金製のボタンバックの場合、上述したような凸部を傘部の半径方向外側端部に設けても、シェルキャップの組み付けにより傘部の半径方向外側端部自体が変形し易く、傘部が変形すると、シェルキャップの組み付け力が弱くなり、シェルキャップの廻りを招き易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0226959号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ボタンの表面を綺麗な真円にすることが可能であり、シェルキャップが廻り難く、また傘部が変形し難いボタンバック及びそのようなボタンバックを用いたボタンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一側面によれば、筒部と、筒部の軸方向一端から半径方向(放射方向)外側に延びる傘部とを備える金属製のボタンバックであって、前記傘部は、筒部の軸方向一端から半径方向外側に延びた後、前記筒部とは反対側に屈曲する第1の屈曲部を含み、前記第1の屈曲部の、半径方向外側端を含む外周は、三つ以上の角部と、周方向に隣り合う二つの角部間に延びる辺部とを有する多角形状であり、前記傘部は、前記辺部に対応する前記第1の屈曲部の半径方向外側端から半径方向外側に延びる平板部を含む、ことを特徴とするボタンバックが提供される。
【0008】
本発明において、ボタンバックは、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、亜鉛又は亜鉛合金、ニッケル又はニッケル合金等の金属から製造することができるが、これらに限定されるものではない。また、後述するように、ボタンバックの材料費を低減するため、ボタンバックをアルミニウム又はアルミニウム合金製とすることができる。
【0009】
本発明に係るボタンバックでは、傘部に、外周が三つ以上の角部及び辺部を有する多角形状となる第1の屈曲部と、第1の屈曲部の各辺部の半径方向外側端から延びる平板部とを設けている。このような多角形状の湾曲部と平板部との組み合わせにより、傘部の強度もしくは剛性を高めることができる。そのため、ボタンバックをブラス材よりも変形し易いアルミニウム又はアルミニウム合金から製造しても、傘部を変形し難くすることができる。第1の屈曲部は、例えば湾曲状に屈曲する部分とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記平板部は前記角部それぞれを結ぶ真円の外周をなす。この場合、平板部が第1の屈曲部の半径方向外側端から半径方向外側へと延びる距離は、角部では実質的にゼロであり、周方向に隣り合う二つの角部間の中間である各辺部の周方向中間点で最大となる。本形態では、ボタンバックの傘部の半径方向外側端の形状は、平板部によって真円となるため、シェルキャップの第2の屈曲部をボタンバックの傘部の半径方向外側端部に取り付ける際、シェルキャップの第2の屈曲部を平板部の外周に沿って真円形状に屈曲することができる。そのため、ボタンの表面が綺麗な真円になり易い。
【0011】
また、シェルキャップの第2の屈曲部は、ボタンバックの傘部の第1の屈曲部に当接するように加締められる。この際、第1の屈曲部の多角形状の辺部には平板部が存在するが角部には平板部が実質的に存在しないため、シェルキャップの第2の屈曲部の屈曲の程度が第1の屈曲部の各角部で最も小さく、各辺部の周方向中間点で最も大きくなる。このようにシェルキャップの第2の屈曲部の屈曲の程度が角部及び辺部により周方向に交互に変化するため、シェルキャップがボタンバックに対して廻り難くなる。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記第1の屈曲部の外周は、八つ〜十二の角部を有する多角形状である。傘部の第1の屈曲部の強度もしくは剛性を高めることに寄与する最適な多角形状は、試験等からボタンのサイズによって次のようになることが分かった。
22L(完成品直径;1L=0.635mm):12角形
24L:8角形
27L:8角形
28L:8角形
30L:10角形
32L:10角形
第1の屈曲部の外周形状が8〜12角形である場合、ボタンバックの傘部の平板部の半径方向外側端が規定する円と、傘部の第1の屈曲部に対し加締め付けられた後のシェルキャップの第2の屈曲部の半径方向内側端が規定する円との間に第1の屈曲部の角部及び辺部の少なくとも半径方向外側部分が周方向全域において収まり、これにより、シェルキャップの組み付けが確実に行われる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記第1の屈曲部の曲率半径は1mm以下である。本発明において、第1の屈曲部の曲率半径は、角部と辺部の両方で同じに設定することができる。なお、第1の屈曲部の曲率半径の下限は第1の屈曲部の厚さ、例えば0.3mmとなる。このように第1の屈曲部の曲がりを比較的に急にすることにより、第1の屈曲部の曲がりが比較的緩やかな場合に比べ、シェルキャップの第2の屈曲部の加締め付けをしっかり行うことができる。更に、第1の屈曲部の曲率半径が1mm以下の場合、シェルキャップの第2の屈曲部に対し第1の屈曲部の角部がエッジを効かせるように当接することができるため、廻り止め効果を高めることができる。なお、第1の屈曲部の曲率半径が1mmを超えると、シェルキャップの第2の屈曲部を必要以上に屈曲させる必要があったり、加締められた第2の屈曲部と第1の屈曲部との間に生じる隙間が大き過ぎて、シェルキャップが傘部に対し廻り易くなるおそれがある。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記平板部の延出長さは、前記辺部の長さのうち中央部が最も長く、前記辺部と隣り合う角部に向けて漸次減少する。平板部の辺部からの延出長さとは、平板部の辺部に対して垂直な方向へ延びる長さのことである。平板部の辺部からの延出長さは、辺部の長さのうち中央部(辺部の周方向中間点)が最も長く、この中央部から前記辺部と隣り合う角部に向けて漸次減少する。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記ボタンバックはアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。ボタンバックをアルミニウム又はアルミニウム合金から製造することにより、ブラス材に比べコストを削減できる一方、変形し易くなる。しかしながら、傘部に、上述した外周が多角形状の第1の屈曲部と第1の屈曲部の辺部の半径方向外側端から延びる平板部とを設けることにより、傘部の強度もしくは剛性を高め、シェルキャップに対する廻り止めを効かせることができる。
【0016】
本発明の別の側面によれば、金属製のボタンバックと、ボタンバックに組み付けられる金属製のシェルキャップとを含むボタンであって、前記ボタンバックは、筒部と、筒部の軸方向一端から半径方向外側に延びる傘部とを備え、前記傘部は、筒部の軸方向一端から半径方向外側に延びた後、前記筒部とは反対側に屈曲する第1の屈曲部を含み、前記第1の屈曲部の、半径方向外側端を含む外周は、三つ以上の角部と、周方向に隣り合う二つの角部間に延びる辺部とを有する多角形状であり、前記傘部は、前記辺部に対応する前記第1の屈曲部の半径方向外側端から半径方向外側に延びる平板部を含み、前記シェルキャップは、ボタンの表面を規定する円板部と、円板部の半径方向外側端から屈曲され、前記ボタンバックの傘部の半径方向外側部分に加締め付けられる第2の屈曲部とを備え、前記第2の屈曲部の屈曲の程度が、前記第1の屈曲部における前記角部よりも前記辺部で大きいことを特徴とするボタンが提供される。
【0017】
本発明に係るボタンは、上述した本発明に係るボタンバックを使用するもので、シェルキャップの第2の屈曲部の屈曲の程度が、前記第1の屈曲部における前記角部よりも前記辺部で大きいことを特徴とする。このようにシェルキャップの第2の屈曲部の屈曲の程度が角部及び辺部により周方向に交互に変化するため、シェルキャップがボタンバックに対して廻り難くなる。
【0018】
本発明において、シェルキャップは、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、亜鉛又は亜鉛合金、ニッケル又はニッケル合金等の金属から製造することができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記平板部は前記角部それぞれを結ぶ真円の外周をなす。この場合、平板部が第1の屈曲部の半径方向外側端から半径方向外側へと延びる距離は、角部では実質的にゼロであり、周方向に隣り合う二つの角部間の中間である各辺部の周方向中間点で最大となる。本形態では、ボタンバックの傘部の半径方向外側端の形状は、平板部によって真円となるため、シェルキャップの第2の屈曲部をボタンバックの傘部の半径方向外側端部に取り付ける際、シェルキャップの第2の屈曲部を平板部の外周に沿って真円形状に屈曲することができる。そのため、ボタンの表面が綺麗な真円になり易い。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記シェルキャップの第2の屈曲部の加締め形態が周方向に対して交互に異なる。すなわち、シェルキャップの第2の屈曲部は、ボタンバックの第1の屈曲部の角部に対して加締められる部分と、辺部に対して加締められる部分とで加締め形態が異なる。このような加締め形態の異なりが、第1の屈曲部の周方向に交互となる角部と辺部に従って、周方向に交互に生じる。これにより、シェルキャップがボタンバックの傘部に対し廻り難くなる。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記シェルキャップの第2の屈曲部の屈曲角度が、辺部と対応する部分と角部に対応する部分とで異なり、前記辺部と対応する部分において、前記第2の屈曲部と前記辺部との間には空間部が形成されている。シェルキャップの第2の屈曲部の屈曲角度は、ボタンバックの第1の屈曲部に対し、平板部が存在する辺部に対して角部よりも大きくなる。また、辺部に対応する部分において、シェルキャップの第2の屈曲部とボタンバックの第1の屈曲部の辺部との間には空間部が形成される。これにより、シェルキャップの第2の屈曲部の屈曲角度がボタンバックの第1の屈曲部に対し周方向において交互に異なるため、シェルキャップがボタンバックの傘部に対し廻り難くなる。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記第1の屈曲部は、前記第1の屈曲部の半径方向外側端へと至る、前記ボタンバックの軸方向にほぼ平行となる垂直部を含み、前記シェルキャップの第2の屈曲部が前記垂直部に少なくとも部分的に接触する。シェルキャップの第2の屈曲部をボタンバックの傘部の第1の屈曲部に加締め付ける際、第2の屈曲部を第1の屈曲部における垂直部に少なくとも部分的に接触させることにより、シェルキャップが一層廻り難くなることが期待できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、傘部に、外周が三つ以上の角部及び辺部を有する多角形状となる第1の屈曲部と、第1の屈曲部の各辺部の半径方向外側端から延びる平板部とを設けたため、傘部の強度もしくは剛性を高めることができ、また、シェルキャップの第1の屈曲部の屈曲の程度や角度あるいは加締め形態が角部及び辺部により周方向に交互に変化する。そのため、シェルキャップがボタンバックに対して廻り難くなる。また、平板部が各角部を結ぶ真円の外周をなす場合、ボタンバックの傘部の半径方向外側端の形状は、平板部によって真円となるため、シェルキャップの第2の屈曲部をボタンバックの傘部の半径方向外側端部に取り付ける際、シェルキャップの第2の屈曲部を平板部の外周に沿って真円形状に屈曲することができる。そのため、ボタンの表面が綺麗な真円になり易い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るボタンの底面図である。
【
図8】
図8は、傘部の湾曲部の角部に対応する断面におけるシェルキャップの加締め状態を示す拡大図である。
【
図9】
図9は、傘部の湾曲部の辺部中間点に対応する断面におけるシェルキャップの加締め状態を示す拡大図である。
【
図10】
図10は、ボタンを生地に取り付ける際に用いるボタン止具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るボタンバックを図面を参照しつつ説明するが、本発明は、そのような実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び均等の範囲内で適宜変更等が可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係るボタン1の底面図である。
図2及び3は、
図1のA−A線断面図及びB−B線断面図である。以下の説明において、ボタン1についての上下方向は
図2及び3等の紙面に基づくものとする。ボタン1は、ジーンズ等に多用されるものであり、ほぼ円筒状の胴部1aと、胴部1aの上端側において半径方向外側に円板状に拡張する頭部1bとを有する。ボタン1は、頭部1bをボタン穴(図示せず)に出し入れするタイプのものである。ボタン1は、金属製の外殻部材であるボタンバック10及びシェルキャップ2と、樹脂製又は金属製のコア部材であるインサート3との三部品から構成される。ボタンバック10は本発明の一実施形態に係る。本実施形態において、一例として、ボタンバック10はアルミニウム合金製であり、シェルキャップ2はブラス製であり、インサート3は樹脂製であるが、これらに限定されるものではない。シェルキャップ2は、ボタン1の表面を規定する円板部2aと、円板部2aの半径方向外側端から下方に屈曲され、ボタンバック10の後述する傘部20に対し加締め付けられる環状の第2の屈曲部2b(以下、単に「屈曲部2b」という。)とを有する。シェルキャップ2の円板部2aの上面すなわちボタン1の表面には、図示はしないが、周方向における向きが決められた文字、図形、記号等からなるロゴやデザインが付されている。そのため、ボタン1を生地に取り付ける場合、ロゴ等の向きが所定方向となるようにする必要がある。インサート3は、ボタン1の円筒部11内に収容される円筒状の胴部コア3aと、頭部1b内に収容される、胴部コア3aから半径方向に拡張した頭部コア3bと、ボタン1の生地への取り付け時に後述するボタン止具30(
図10参照)の軸部32を受け入れて係止するための係合部3cとを備える。本実施形態では、係合部3cは貫通孔として形成される。係合部3cは軸部32の直径よりも小さい空間である。インサート3の係合部3cの径は下方から上方へと2段階に拡大し、その内壁に段部を有する。胴部コア3aは、その下端部に、外径が縮小し、ボタンバック10の後述する円筒部11の開口12から下方に突出する小径部3dを含む。更に、小径部3dの下面には下方に十字状に凸となる凸部が設けられている。
【0026】
図4及び5は、ボタンバック10の斜視図及び底面図である。
図6及び7は、
図5のA−A線断面図及びB−B線断面図である。ボタンバック10は、約0.3mmの厚さのアルミニウム又はアルミニウム合金製の板を成形加工してなり、ボタン1の胴部1aの外周壁をなす筒部としての円筒部11と、円筒部11の上端から半径方向外側に延び、ボタン1の頭部1bの下側壁をなす傘部20とを備える。円筒部11は上方に開放すると共に、下端部に開口12を有する。円筒部11の下端には半径方向内側にわずかに突出する突出片13が周方向に八つ設けられる。これら突出片13により開口12の径がわずかに縮小され、この縮径した開口12からインサート3の胴部コア3aの小径部3dが圧入式により下方に突出する。
【0027】
傘部20は、円筒部11の上端から半径方向外側にほぼ水平(「水平」とは、円筒部11の軸線に対し垂直な任意の面に沿う方向をいう。)に延びる環状のベース部21と、ベース部21の半径方向外側端から下方かつ半径方向外側にわずかに落ち込む環状の段部22と、段部22の下端から半径方向外側にほぼ水平に延びた後、上方へと湾曲する第1の屈曲部としての湾曲部23と、湾曲部23の半径方向外側端から更に半径方向外側へとほぼ水平に部分的に延びる平板部25とを備える。湾曲部23の曲率半径R1は、R1=1mm以下となるように設定される。
図8及び9の拡大図を参照して、湾曲部23は、段部22の下端から半径方向外側にほぼ水平に延びる水平部23aと、湾曲部23の半径方向外側端(上端)へと至る、軸方向にほぼ平行となる垂直部23bとを含む。また、
図9を参照して、辺部24bに対応する領域において、湾曲部23の垂直部23bと平板部25との間の曲率半径R2は、本実施形態において、R2=0.3mmとなるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本実施形態において、湾曲部23の、半径方向外側端を含む外周は、一例として正八角形状であり、八つの角部24aと、周方向に隣り合う二つの角部24a間に直線状に延びる八つの辺部24bとを有する。角部24a及び辺部24bの曲率半径は同じR1=1mm以下である。平板部25は、湾曲部23の各角部24aの半径方向外側端(上端)を結ぶ真円の外周形状をなす。そのため、平板部25が湾曲部23の半径方向外側端から半径方向外側に延びる距離は、各角部24aで実質的にゼロ(多少残る場合もある)であり、各角部24aから各辺部24bにおける周方向両側の角部24a間の中間点(以下「辺部中間点」という。)24c(
図5参照)へと次第に大きくなり、辺部中間点24cで最大となる。換言すれば、平板部25の辺部24bからの延出長さは、辺部24bの長さのうち中央部が最も長く、前記辺部(24b)と隣り合う角部(24a)に向けて漸次減少する。なお、平板部25の辺部24bからの延出長さとは、平板部25の辺部24bに対して垂直な方向へ延びる長さのことである。
図1及び5のB−B線はいずれも辺部中間点24cを通る。
【0029】
ボタンバック10、シェルキャップ2及びインサート3をボタン1へと組み立てる場合、ボタンバック10の円筒部11内にインサート3の胴部コア3aを入れ、小径部3dを円筒部11の開口12から突出させる。これにより、インサート3の頭部コア3bは、ボタンバック10の傘部20のベース部21上に配置される。この状態から、頭部コア3bの上方からシェルキャップ2をボタンバック10の傘部20に対し組み付ける。すなわち、シェルキャップ2の屈曲部2bを円板部1bの半径方向外側端から下方に屈曲させ、ボタンバック10の傘部20の湾曲部23に対し外側から加締め付ける。この際、傘部20の半径方向外側端は平板部20により真円形状であるため、シェルキャップ2の屈曲部2bが円板部2aから真円形状で折り曲げられる。そのため、ボタン1の表面が綺麗な真円となる。シェルキャップ2の屈曲部2bの加締め状態は、湾曲部23の角部24aと辺部25bとで以下に述べるように異なる。
【0030】
図8は、湾曲部23の角部24aに対応する断面におけるシェルキャップ2の屈曲部2bの加締め状態を示す拡大断面図である。
図9は、湾曲部23の辺部24bの辺部中間点27cに対応する断面におけるシェルキャップ2の屈曲部2bの加締め状態を示す拡大断面図である。本実施形態において、加締められた状態のシェルキャップ2の屈曲部2bの下端は、ボタンバック10の湾曲部23の正八角形状の外周に接する。屈曲部2bの下端は、湾曲部23の垂直部24bよりもわずかに下方に来るが、湾曲部23の水平部23aには達しない。シェルキャップ2の屈曲部2bの円板部2aに対する屈曲角度は、平板部25のない角部24aで実質的に最も小さくなり、平板部25の半径方向長さが最大となる辺部中間点24cで最も大きくなる。このようにシェルキャップ2の屈曲部2bの加締め状態が周方向に交互となる角部24aと辺部24bとにより周方向に交互に変化するため、一旦ボタンバック10の傘部20に組み付けられたシェルキャップ2は傘部20に対し廻り難くなる。
【0031】
図8を参照して、シェルキャップ2の屈曲部2bは、湾曲部23の角部24aに対応する断面において、垂直部23bにほぼ面接触している。これに対し、
図9に示すように、湾曲部23の辺部中間点24cに対応する断面では、シェルキャップ2の屈曲部2bと垂直部23bとの間に空間部sが備わり、屈曲部2bは垂直部23bに実質的に接触しないかもしくは屈曲部2bの下端が点接触する。このように湾曲部23の角部24aに対応する周方向位置でシェルキャップ2の屈曲部2bを湾曲部23の垂直部23bに面接触させることにより、ボタンバック10の傘部20に対する廻り止め効果が一層高まることが期待される。
【0032】
ボタン1の底面を示す
図1と
図2及び3から、シェルキャップ2の屈曲部2bの加締め後の半径方向内側端2cがボタンバック10の湾曲部23の角部24a及び辺部24bに対し周方向全域で接していることが分かる。換言すれば、ボタンバック10の傘部20の平板部25の半径方向外側端が規定する円と、傘部20の湾曲部23に対し加締め付けられた後のシェルキャップ2の屈曲部2bの半径方向内側端2cが規定する円との間に、湾曲部23の角部24a及び辺部24bの少なくとも半径方向外側部分が周方向全域において収まっている。これにより、シェルキャップ2の組み付けが確実に行われる。
【0033】
図10は、上述したボタン1をジーンズ等の生地(図示せず)に取り付ける際に用いるボタン止具30の断面図である。ボタン止具30は、円板状の基部31と、基部31の中央から上方に延び、先端が鋭利となる軸部32とを備える。ボタン1を生地に取り付ける場合、ボタン1の表面のロゴ等を所定の周方向向きに合わせ、ボタン止具30の軸部32を生地に貫通させた後、ボタン1のインサート3の係合部3cに挿入する。これにより、ボタン1が生地に固定される。なお、ボタンのインサート及びボタン止具の形態は様々なものが知られており、インサート3及びボタン止具30はその単なる一例である。
【0034】
以上の実施形態では、ボタンバック10の傘部20の湾曲部23の外周が正八角形の例を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、湾曲部の外周形状が例えば三角形、四角形、五角形、六角形、十角形、十二角形等であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 ボタン
1a 胴部
1b 頭部
2 シェルキャップ
2a 円板部
2b 屈曲部(第2の屈曲部)
3 インサート
10 ボタンバック
11 円筒部(筒部)
20 傘部
23 湾曲部(第1の屈曲部)
23b 垂直部
24a 角部
24b 辺部
25 平板部
30 ボタン止具
s 空間部