(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した回転電極型電界計では、接地遮蔽板を一定速度で回転させるための電動駆動機構を必要としていた。すなわち、電界測定を行うための回路に加えて、回転電極を一定速度で回転させるための回路装置が必要であり、このため、装置が大がかりなものになっていた。また、酷寒期では着氷により遮蔽板が回転しなくなり、測定不能となってしまう、あるいは、小昆虫が駆動機構内に入り込み、収集測定した電荷量に大きな誤差が生じてしまう、等、長期間の連続測定を行う上で多くの問題点を有していた。
【0006】
本発明は、前記のような問題に鑑み、回転機構を有しない極めて簡易な構成によって、信頼度が高く、安定した動作が可能な、大気電界検出装置を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、大気電界検出装置は、対向する第1および第2電極と、前記第1および第2電極間に設けられた基準電極とを有する受信アンテナと、前記第1および第2電極間に発生する電圧を検知するための電子回路部と、前記第1電極と前記電子回路部とを接続する第1信号線、前記第2電極と前記電子回路部とを接続する第2信号線、および、前記基準電極と前記電子回路部とを接続する基準電位線を有する信号線部とを備え、前記電子回路部は、前記第1信号線と前記基準電位線との間の電圧を積分する第1積分回路と、前記第2信号線と前記基準電位線との間の電圧を積分する第2積分回路と、前記第1および第2積分回路の出力を差動入力として受け、増幅する差動増幅器とを備えている。
【0008】
この態様によると、受信アンテナは3極構造となっている。大気電界によって受信アンテナの、第1電極と基準電極間、および、第2電極と基準電極間に発生した電圧信号が、それぞれ、信号線部を経由して電子回路部に平衡伝送される。電子回路部において、第1電極と基準電極間の電圧信号が第1積分回路によって積分され、第2電極と基準電極間の電圧信号が第2積分回路によって積分され、第1および第2積分回路の出力が差動信号として差動増幅器によって増幅される。これにより、回転機構を必要とせず、極めて簡易な構成によって、大気電界を精度良く測定することができる。
【0009】
また、3極構造の受信アンテナと電子回路部との間で、基準電位線を介して、共通の基準電位が維持・確保されているので、大気電界検出装置を設置する際に必ずしもアースをとる必要がない。このため、容易に可搬型の大気電界検出装置とすることができる。
【0010】
そして、前記第1および第2電極、並びに、前記基準電極は、互いに平行に設けられた平板によってそれぞれ構成されている、としてもよい。
【0011】
さらに、前記受信アンテナは、前記基準電極と接続されており、かつ、前記平板の法線方向を軸方向としたとき、前記第1および第2電極をその周方向において囲うように構成された、シールド部を備えている、としてもよい。
【0012】
また、前記第1および第2電極、並びに、前記基準電極は、半球状に構成されている、としてもよい。
【0013】
また、前記電子回路部は、前記第1積分回路の出力線と接続されたCR構成の第1フィルタ回路、および、前記第2積分回路の出力線と接続されたCR構成の第2フィルタ回路を有し、受信帯域を制限するためのフィルタを備えた、としてもよい。
【0014】
これにより、大気電界検出を行う周波数帯域を容易に設定することができる。
【0015】
また、前記信号線部は、前記第1および第2信号線を覆う遮蔽導体を有する遮蔽ケーブルを含み、前記遮蔽導体は、前記基準電位線の一部を構成している、としてもよい
これにより、受信アンテナからの電圧信号が電子回路部に伝送される際の、電源周波数などのコモンモードノイズ耐性を強化することができる。
【0016】
また、前記差動増幅器は、利得調整抵抗が付加されていてもよい。
【0017】
これにより、差動増幅器の出力電圧レベルを利得調整抵抗によって調整できるので、大気電界検出を行う周波数帯域に応じた利得調整が可能になる。
【0018】
本発明の別の態様では、大気電界検出装置は、対向する第1および第2電極を有する受信アンテナと、前記第1および第2電極間に発生する電圧を検知するための電子回路部と、前記第1電極と前記電子回路部とを接続する第1信号線、および、前記第2電極と前記電子回路部とを接続する第2信号線を有する信号線部とを備え、前記電子回路部は、前記第1信号線と接地線との間の電圧を積分する第1積分回路と、前記第2信号線と前記接地線との間の電圧を積分する第2積分回路と、前記第1および第2積分回路の出力を差動入力として受け、増幅する差動増幅器とを備えている。
【0019】
この態様によると、大気電界によって受信アンテナの第1および第2電極間に発生した電圧信号が、それぞれ、信号線部を経由して電子回路部に平衡伝送される。電子回路部において、第1電極と接地間の電圧信号が第1積分回路によって積分され、第2電極と接地間の電圧信号が第2積分回路によって積分され、第1および第2積分回路の出力が差動信号として差動増幅器によって増幅される。これにより、回転機構を必要とせず、極めて簡易な構成によって、大気電界を精度良く測定することができる。
【0020】
本発明の別の態様では、大気電界検出装置は、対向する第1および第2電極を有する受信アンテナと、前記第1および第2電極間に発生する電圧を検知するための電子回路部と、前記第1電極と前記電子回路部とを接続する第1信号線、および、前記第2電極と前記電子回路部とを接続する第2信号線を有する信号線部とを備え、前記電子回路部は、前記信号線部を経由して平衡伝送された信号におけるDC信号成分を、所定周波数のAC信号成分に変換するDC/AC変換回路と、前記DC/AC変換回路の出力信号に対して、前記所定周波数を含む所定帯域の成分を通過させることが可能なように構成された帯域フィルタと、前記帯域フィルタの出力を差動入力として受け、増幅する差動増幅器とを備える。そして、前記DC/AC変換回路は、第1および第2入力端子と第1および第2出力端子とを有し、前記第1および第2入力端子が前記第1および第2信号線とそれぞれ接続されており、前記第1および第2出力端子間の容量値を変動可能に構成された4端子可変キャパシタと、前記4端子可変キャパシタの前記第1出力端子と接地線との間の電圧を積分する第1積分回路と、前記4端子可変キャパシタの前記第2出力端子と前記接地線との間の電圧を積分する第2積分回路とを備え、前記4端子可変キャパシタの前記第1および第2出力端子間の容量値を前記所定周波数でもって変動させる。
【0021】
この態様によると、大気電界によって受信アンテナの第1および第2電極間に発生した電圧が、信号線部を経由して電子回路部に平衡伝送される。この電圧のうち、直流大気電界による電圧は、容量値の変動が可能な4端子可変キャパシタを備えたDC/AC変換回路によって、所定の周波数のAC信号成分に変換され、帯域フィルタによって不要ノイズが除去されてから、差動増幅器によって増幅される。これにより、回転機構を必要とせず、極めて簡易な構成によって、直流大気電界を精度良く測定することができる。また、4端子可変キャパシタを用いることによって、直流電界検出とともに、電界の極性判別が可能になる。
【0022】
そして、前記4端子可変キャパシタは、前記第1出力端子に接続された振動電極と、前記第2出力端子に接続された固定電極とを備え、前記振動電極を振動させることによって、前記第1および第2出力端子間の容量値を変動可能なように構成されている、としてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、回転機構を有しない極めて簡易な構成によって、信頼度が高く、安定した動作が可能な、大気電界検出装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る大気電界検出装置の基本構成を示す図である。
図1において、受信アンテナ1は、大気電界Eaを電圧に変換するものであり、3極構造になっている。すなわち、受信アンテナ1は、対向する第1電極11および第2電極12と、第1電極11と第2電極12との間に設けられた基準電極13とを有している。受信アンテナ1は、ほぼ水平になるように設置される。すなわち、電極表面が、雷雲と大地との間に発生する雷電界方向に直交するように、言い換えると、電極表面の法線方向がほぼ鉛直方向になるように、受信アンテナ1を配置する。
【0027】
電子回路部5は、第1および第2電極11,12間に発生する電圧を検知し、検知した電圧を示す出力信号を出力する。信号線部20は、第1および第2信号線21,22を覆う遮蔽導体24を有する遮蔽ケーブル23を備えており、第1信号線21は第1電極11と電子回路部5とを接続し、第2信号線22は第2電極12と電子回路部5とを接続している。遮蔽ケーブル23の遮蔽導体24は、基準電極13と接続されており、また、電子回路部5と接続されている。すなわち、遮蔽導体24は、基準電極13と電子回路部5とを接続する基準電位線25の一部を構成している。信号線部20は、信号電圧を平衡伝送するとともに、伝送する信号の基準電位を確保する。
【0028】
電子回路部5は、第1信号線21と基準電位線25との間の電圧を積分する第1積分回路31と、第2信号線22と基準電位線25との間の電圧を積分する第2積分回路32と、第1および第2積分回路31,32の出力を差動入力として受け、増幅する差動増幅器40とを備えている。差動増幅器40の出力が、電子回路部5の出力信号となる。この出力信号から、例えば信号処理等によって、実用的な信号を取得し、これを例えば雷予知に活かすことができる。
【0029】
図2は本実施形態に係る大気電界検出装置の回路構成例である。
図2において、受信アンテナ1は、静電容量C
0によって表されている。また、遮蔽ケーブル23は、第1および第2信号線21,22と基準電位線25との間にある静電容量C
cによって表されている。
図2では、遮蔽ケーブル23の遮蔽導体24は、基準電極13、第1および第2積分回路31,32の共通電位端子、および、後述する差動増幅器40の参照電圧端子refと共通に、接地されている。これにより、受信アンテナ1の電圧信号が電子回路部5に伝送される際のノイズ耐性が強化されている。
【0030】
第1および第2積分回路31,32は、同様の回路構成からなる。第1積分回路31は、オペアンプ31aを備えている。オペアンプ31aは、反転入力が第1信号線21と抵抗R
sを介して接続されており、非反転入力が基準電位線25と抵抗R
bを介して接続されている。また、反転入力と出力との間に、抵抗R
dおよび容量C
sが並列に接続されている。第2積分回路32は、オペアンプ32aを備えている。オペアンプ32aは、反転入力が第2信号線22と抵抗R
sを介して接続されており、非反転入力が基準電位線25と抵抗R
bを介して接続されている。また、反転入力と出力との間に、抵抗R
dおよび容量C
sが並列に接続されている。
【0031】
なお、抵抗R
dは時定数調整と放電機能の役割を持っている。例えば、時定数を大きくしてDCオフセット電圧が発生する場合には、第1および第2積分回路31,32において、部分Xの構成を、
図3に示すようなT型ネットワーク構成としてもよい。
【0032】
差動増幅器40は、オペアンプ41を備えている。オペアンプ41は、第1積分回路31の出力を反転入力として受けるとともに、第2積分回路32の出力を非反転入力として受ける。すなわち、差増増幅器40は、第1および第2積分回路31,32の出力を差動入力として受け、増幅する。差動増幅器40の参照電圧端子refは、基準電位線25と接続され、かつ、接地されている。また、オペアンプ41は、利得調整を行うための利得設定抵抗R
Gが付加されている。
【0033】
このような構成によって、大気電界Eaによって受信アンテナ1の、第1電極11と基準電極13間、および、第2電極12と基準電極13間に発生した電圧が、それぞれ、信号線部20を経由して電子回路部5に平衡伝送される。電子回路部5において、第1電極11と基準電極13間の電圧信号が第1積分回路31によって積分され、第2電極12と基準電極13間の電圧信号が第2積分回路32によって積分され、第1および第2積分回路31,32の出力が差動信号として差動増幅器40によって増幅される。これにより、回転部を必要とせず、極めて簡易な構成によって、大気電界を精度良く測定することができる。
【0034】
図4は受信アンテナ1の電極形状の例であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図4の例では、第1および第2電極11,12並びに基準電極13は、互いに平行に設けられた平板によってそれぞれ構成されており、支持部14によって互いに絶縁状態で支持されている。第1および第2電極11,12の平面形状は円形であり、互いに同一形状であり等面積である。基準電極13の平面形状も円形であり、平面視で、第1および第2電極11,12と同心であり、第1および第2電極11,12よりも径が大きくなっている。
【0035】
図5は受信アンテナ1の電極形状の他の例であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図5の例では、
図4の例と同様に、第1および第2電極11,12並びに基準電極13は、互いに平行に設けられた平板によってそれぞれ構成されており、支持部14によって互いに絶縁状態で支持されている。第1および第2電極11,12の平面形状は円形であり、互いに同一形状であり等面積である。基準電極13の平面形状も円形であり、平面視で、第1および第2電極11,12と同心であり、第1および第2電極11,12よりも径が大きくなっている。
【0036】
図5の受信アンテナ1はさらに、基準電極13と接続されたシールド部15を備えている。シールド部15は、第1および第2電極11,12並びに基準電極13を構成する平板の法線方向を軸方向としたとき、第1および第2電極11,12をその周方向において囲うように構成されている。
【0037】
図4の受信アンテナ1は、鉛直方向に対して斜め方向の電界を受信できる。このため、雷雲周辺(例えば10km超)での電界検出が可能であり、中距離の落雷予測に有効である。一方、
図5の受信アンテナ1は、鉛直方向の電界のみを受信できる。このため、雷雲直下(例えば10km以内)での電界検出が可能であり、近距離の落雷予測に有効である。
【0038】
なお、受信アンテナにおける電極形状は、その他にも様々なものが考えられる。例えば、方形状であってもよいし、六角形等の多角形状であってもよい。あるいは、複数の電極片が電気的に接続された形状であってもよい。また、第1電極11および第2電極12は、互いに同一形状であり等面積であることが好ましいが、必ずしもこれに限られるものではない。また、基準電極13は、第1および第2電極11,12とは異なる形状であってもかまわない。
【0039】
図6は本願発明者等の実験の結果得られたデータの一例である。
図6において、横軸は試験的に印加した電界の強度、縦軸は本実施形態に係る大気電界検出装置の出力である。落雷に至る雷雲電界では、緩慢な電界変動や瞬間的な高周波成分を含む電界変動が生じるが、
図6から、電界変動の周波数に拘わらず、電界強度に対してリニアな出力が得られていることが分かる。
【0040】
以上のように本実施形態によると、従来の回転電極型電界計のように回転機構を必要とすることなく、極めて簡易な構成によって、信頼度が高く、安定した動作が可能な、大気電界検出装置を実現することができる。すなわち、大気電界Eaによって受信アンテナ1の、第1電極11と基準電極13との間、および、第2電極12と基準電極13との間に発生した電圧信号が、それぞれ、信号線部20を経由して電子回路部5に平衡伝送される。電子回路部5において、第1電極11−基準電極13間の電圧信号が第1積分回路31によって積分され、第2電極12−基準電極13間の電圧信号が第2積分回路32によって積分され、第1および第2積分回路31,32の出力が差動信号として差動増幅器40によって増幅される。これにより、回転機構を必要とせず、極めて簡易な構成によって、大気電界を精度良く測定することができる。また、3極構造の受信アンテナ1と電子回路部5との間で、基準電位線25を介して、共通の基準電位が維持・確保されているので、大気電界検出装置を設置する際にアースをとる必要がない。このため、容易に可搬型の大気電界検出装置とすることができる。また、差動増幅器40の出力電圧レベルを利得調整抵抗R
Gによって調整できるので、大気電界検出を行う周波数帯域に応じた利得調整が可能になる。
【0041】
(変形例)
図7に示すように、第1および第2積分回路31,32と差動増幅器40との間に、受信帯域を制限するためのフィルタ50を設けてもよい。フィルタ50は、第1積分回路31の出力線と接続されたCR構成の第1フィルタ回路51と、第2積分回路32の出力線と接続されたCR構成の第2フィルタ回路52とを備えている。ここで、CR構成とは、容量素子(C)と抵抗素子(R)とを備えた構成のことをいう。
図7では、第1フィルタ回路51は、直列に接続された容量素子C
1および抵抗素子R
1と、他の抵抗素子R
1とが並列に接続された構成になっている。第2フィルタ回路52も第1フィルタ回路31と同様の構成である。
【0042】
容量素子C
1の容量値、および抵抗素子R
1の抵抗値を適宜設定することによって、第1および第2フィルタ回路51,52の時定数を所望の値に設定することができる。例えば、可変容量素子や可変抵抗素子を用いることによって、時定数を調整可能なように、フィルタを構成することができる。あるいは、容量素子や抵抗素子を交換可能な構成にすることによって、時定数を設定可能なように、フィルタを構成することができる。すなわち、第1および第2フィルタ回路51,52の周波数特性を設定または調整することができるので、大気電界検出を行う周波数帯域を容易に設定することができる。なお、フィルタ回路の構成は、ここで示したものに限られるものではない。
【0043】
また、上述した実施形態では、受信アンテナ1の各電極11,12,13は、互いに並行に設けられた平板によってそれぞれ構成されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、
図8は受信アンテナの電極の他の構成例を示す断面図である。
図8の構成では、受信アンテナ1Aは半球状に構成されている。すなわち、第1電極11A、第2電極12Aおよび基準電極13Aはそれぞれ、半球状に構成されており、支持部14によって互いに絶縁状態で支持されている。
図8の受信アンテナ1Aは、ほぼ全方向からの電界を受信できる。このため、雷雲周辺(例えば10km超)での電界検出が可能であり、例えばビル群空間に設置するのに有用である。
【0044】
(第2実施形態)
第1実施形態では、受信アンテナ1は3極構造であるものとした。ただし、上述した回路構成は、2極構造の受信アンテナにも適用可能である。
【0045】
図9は本発明の第2実施形態に係る大気電界検出装置の回路構成例を示す図である。
図9において、受信アンテナ2は、大気電界Eaを電圧に変換するものであり、2極構造になっている。すなわち、受信アンテナ2は、対向する第1電極11および第2電極12を有している。電子回路部5の回路構成は
図7と同様である。すなわち、電子回路部5において、第1積分回路31は第1信号線21と接地線との間の電圧を積分する。第2積分回路32は第2信号線22と接地線との間の電圧を積分する。差動増幅器40は、第1および第2積分回路31,32の出力を差動入力として受け、増幅する。第1積分回路31の出力線にCR構成の第1フィルタ回路51が接続されており、第2積分回路32の出力線にCR構成の第2フィルタ回路52が接続されている。なお、第1実施形態と同様に、第1および第2フィルタ回路51,52は省いてもかまわない。
【0046】
本実施形態によると、大気電界Eaによって受信アンテナ2の第1および第2電極11,12間に発生した電圧信号が、それぞれ、信号線部20を経由して電子回路部5に平衡伝送される。電子回路部5において、第1電極11と接地間の電圧信号が第1積分回路31によって積分され、第2電極12と接地間の電圧信号が第2積分回路32によって積分され、第1および第2積分回路31,32の出力が差動信号として差動増幅器40によって増幅される。これにより、回転機構を必要とせず、極めて簡易な構成によって、大気電界を精度良く測定することができる。
【0047】
(第3実施形態)
図10は本発明の第3実施形態に係る大気電界検出装置の基本構成を示す図である。
図10の構成は、直流大気電界(DC−AEF)を検出可能にするものであり、電子回路部5Aの前段にDC/AC変換回路60が縦続接続されている。
図10において、
図1と共通の構成要素には
図1と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
【0048】
電子回路部5Aは、信号線部20を経由して平衡伝送された信号におけるDC信号成分を、所定周波数のAC信号成分に変換するDC/AC変換回路60と、DC/AC変換回路60の出力信号に対して周波数弁別を行う帯域フィルタ70と、帯域フィルタ70の出力を差動入力として受け、増幅する差動増幅器40とを備えている。帯域フィルタ70は、DC/AC変換回路60において変換がなされる所定周波数を含む、所定帯域の成分を通過させることが可能なように構成されている。第1実施形態と同様に、差動増幅器40の出力が、電子回路部5Aの出力信号となる。この出力信号から、例えば信号処理等によって、実用的な信号を取得し、これを例えば雷予知に活かすことができる。
【0049】
図11は本実施形態に係る大気電界検出装置の回路構成例である。
図11において、
図2と共通の構成要素には
図2と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。DC/AC変換回路60は、受信電荷の減衰を抑制するためのバッファアンプ61,62と、入力端子N1,N2と出力端子N3,N4とを有する4端子構成のキャパシタである4端子可変キャパシタ63と、第1および第2積分回路64,65とを備える。4端子可変キャパシタ63は、出力端子N3,N4間の容量値Cvを変動させることが可能なように構成されている。第1積分回路64は、4端子可変キャパシタ63の出力端子N3と接地線との間の電圧を積分する。第2積分回路65は、4端子可変キャパシタ63の出力端子N4と接地線との間の電圧を積分する。帯域フィルタ70は、第1積分回路64の出力線側に設けられた第1バンドパスフィルタ(BPF)71と、第2積分回路65の出力線側に設けられた第2バンドパスフィルタ(BPF)72とを備えている。第1および第2BPF 71,72は、例えば、可変容量素子と可変抵抗素子とを用いたCR構成とすればよい。
【0050】
図12は4端子可変キャパシタ63の構成の一例である。
図12(a)〜(c)の例では、4端子可変キャパシタ63は、入力端子N1,N2がそれぞれ接続された電極同士の間に、出力端子N3に接続された振動電極と、出力端子N4に接続された固定電極とが設けられている。
図12(a)の例では、振動電極を固定電極に接触させることなく上下に振動させる構成としている。
図12(b)の例では、振動電極を固定電極に接触させることなく斜めに振動させる構成としている。
図12(c)の例では、圧電素子の制御によって、振動電極を固定電極に接触させることなく上下に振動させる構成としている。いずれも、振動電極を振動させることによって、出力端子N3,N4間の容量値を変動可能なように構成されている。また、
図12(d)の例では、4端子可変キャパシタ63は、入力端子N1,N2がそれぞれ接続された電極同士の間に、出力端子N3,N4にそれぞれ接続された固定電極が設けられており、固定電極間に誘電板が設けられている。誘電板は固定電極に接触することなく、固定電極と平行な方向に振動可能なように構成されている。
【0051】
第1および第2積分回路64,65は、具体的には例えば、第1実施形態で示した第1および第2積分回路31,32と同様に構成すればよい。第1および第2積分回路64,65は、4端子可変キャパシタ63の出力に対するスパイクノイズ吸収および受信電荷維持と、DCオフセット電圧抑制機能とを有する。
【0052】
DC−AC変換回路60は、DC−AEF受信による直流電荷を、4端子可変キャパシタ63を介して、所定周波数で変化する交流電圧(AC信号)に変換する。帯域フィルタ70は、帯域制限により、不要ノイズを除去してこのAC信号のみを通過させる。この場合の差動増幅器40の出力から、直流大気電界を検出することができる。すなわち、本実施形態によると、変化のない電界や変化が非常に遅い電界についても、回転機構を必要とすることなく、極めて簡易な構成によって、検出することができる。また、帯域フィルタ70による周波数弁別によって、他の周波数成分も併せて観測することができるので、交流大気電界(AC−AEF)やパルス大気電界(PULSE−AEF)も、直流大気電界とともに検出することができる。また、4端子可変キャパシタ63を用いることによって、直流電界検出とともに、電界の極性判別が可能になる。
【0053】
なお、本実施形態では、受信アンテナ1は3極構造であるものとしたが、上述した回路構成は、2極構造の受信アンテナにも適用可能である。この場合は、受信アンテナ1の基準電極13と遮蔽導体24との接続を省くだけでよい。