(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記汚れ成分が付着堆積し易いポイントが、エルボの屈曲部、チーズの屈曲部、ブロワー内部、ストレーナー、流量計のオリフィス部または垂直配管の下部である請求項1または2に記載のコークス炉ガス流通路への汚れの付着堆積抑制方法。
前記環状不飽和炭化水素がテルペン類であり、前記芳香族炭化水素が炭素数9〜18の芳香族炭化水素または石油留分である請求項1〜3のいずれか1つに記載のコークス炉ガス流通路への汚れの付着堆積抑制方法。
【背景技術】
【0002】
コークス炉ガスの分離精製プラントでは、プラント運転に伴い、コークス炉ガス中の汚れ成分が熱交換器の伝熱面や配管などのコークス炉ガス流通路内に付着堆積し、コークス炉ガス流通路内を閉塞させるために、ガス流量を確保できなくなるという問題があった。
【0003】
例えば、コークス炉で石炭を蒸した際に発生するコークス炉ガスは、水素、一酸化酸素、メタンを含み、精製後に燃料として利用されている。しかしながら、コークス炉ガスには、例えば、石炭由来のタール分(多環芳香族化合物の重合物)、ナフタレンおよびその誘導体、硫黄化合物、硫酸アンモニウム、硫化鉄やフェロシアン錯体が含まれ、これらが汚れ成分となり、コークス炉ガス流通路内に付着堆積して、閉塞などのトラブルを発生させる。
【0004】
コークス炉ガス流通路に閉塞が発生し、ガス流量を確保できなくなれば、該当装置またはそれを含む周辺の設備の運転を停止せざるを得なくなる。
そこで、装置または設備の運転を停止した上で、加温やスチームパージ、機械洗浄などの手段により、閉塞原因の汚れを取り除くことが行われてきた。
スチームパージでは、加温により軟化もしくは昇華する汚れ成分を取り除くことができても、炭化が進行したタール汚れなどの除去困難な汚れ成分が系内に残り、スチームパージを繰り返しても、最終的には洗浄では汚れを取り除けなくなる事態が発生していた。
【0005】
例えば、次のような先行技術がある。
特許第4196612号公報(特許文献1)には、コークス炉ガス精製工程にあるナフタレン吸収塔における炭化水素および金属化合物を含有する付着物を除去する方法において、比誘電率が12以上50以下であり、かつ双極子モーメントが2.5Debye以上である有機化合物を主成分とする洗浄剤にて洗浄し、次いで水にて洗浄する、もしくは前記有機化合物および水を含む有機洗浄溶剤で洗浄する付着物除去方法が記載されている。
【0006】
また、特開2004−231679号公報(特許文献2)には、熱交換器にモノマー成分および/または無機塩を含有する炭化水素を流通させて炭化水素を加熱する方法であって、熱交換器の熱交換を行う部分で、該炭化水素が接する部分の材質が、オーステナイト系ステンレス鋼またはアルミニウムであることを特徴とする炭化水素の加熱方法、および熱交換器にモノマー成分および/または無機塩を含有する炭化水素を流通させて炭化水素を加熱する方法において、熱交換器の熱交換を行う部分で、該炭化水素が接する部分の材質として、オーステナイト系ステンレス鋼またはアルミニウムを用いる熱交換器の汚れ付着防止方法が記載されている。
【0007】
さらに、特開2002−97494号公報(特許文献3)には、化学プラント内に付着した不溶性汚れを洗浄するための洗浄剤であって、炭素数9〜18の芳香族炭化水素を80重量%以上含有し、蒸留性状における5%留出温度が150℃以上、95%留出温度が320℃以下である化学プラント用洗浄剤およびそれを用いる化学プラントの洗浄方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の先行技術、特に特許文献3のように、ある種の界面活性剤や芳香族炭化水素、有機溶剤でタール汚れを洗浄することは公知であり、一般的に実施されている。しかしながら、これらは、汚れが付着堆積した部材を取り外して洗浄するか、もしくは汚れが付着堆積した部材を含む装置に洗浄液を循環させる方法であり、該当装置またはそれを含む周辺の設備の運転を停止させる必要がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記の従来技術の課題や現状に鑑みてなされたものであり、コークス炉ガスを移送および処理する装置またはそれを含む周辺の設備の運転を停止することなしに、コークス炉ガス流通路におけるコークス炉ガス中の汚れ成分の付着堆積を抑制する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、コークス炉ガスを移送および処理する装置またはそれを含む周辺の設備を稼働したまま、すなわちコークス炉ガスの流通時に、汚れ成分が付着堆積し易いポイント上流から汚れ防止剤を噴霧し、汚れ成分が付着堆積し易いポイントまたはその下流から汚れ成分を汚れ防止剤と共に系外に排出することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
従来、流通するコークス炉ガスへの汚れ防止剤のような薬剤の添加は、コークス炉ガスの精製処理やバーナーによる燃焼に悪影響をもたらすことが危惧されたり、また、運転中に汚れ防止剤を噴霧した場合、有効な汚れ防止効果を発揮するか否かは全く不明であり、薬剤コストの増加などのデメリットが予想されるため、本発明のような薬剤の噴霧手段は実施されることがなかった。
本発明者らは、このような当該技術分野の技術常識に反して、コークス炉ガスへの薬剤の噴霧処理を実施したところ、意外にも危惧された悪影響はなく、経済的かつ効率的に汚れ成分の付着堆積を抑制することができることを見出した。
【0013】
かくして、本発明によれば、コークス炉ガス流通路におけるコークス炉ガスの流通時に、そのコークス炉ガス流通路内のコークス炉ガス中の汚れ成分が付着堆積し易いポイントの上流から、
配合割合が95:5〜60:40(重量比)である環状不飽和炭化水素および/または芳香族炭化水素
と界面活性剤とを含
み、かつ前記界面活性剤がポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルエーテルリン酸モノエステル、アルキルベンゼンスルフォン酸およびジアルキルスルホコハク酸から選択される化合物である汚れ防止剤を噴霧し、
前記汚れ成分が付着堆積し易いポイントまたはその下流から、前記汚れ成分を前記汚れ防止剤と共に排出する
ことを特徴とするコークス炉ガス流通路への汚れの付着堆積抑制方法
が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コークス炉ガスを移送および処理する装置またはそれを含む周辺の設備の運転を停止することなしに、コークス炉ガス流通路におけるコークス炉ガス中の汚れ成分の付着堆積を抑制する方法を提供することができる。
また、本発明によれば、汚れ成分の付着堆積を抑制するだけでなく、既に付着堆積している汚れ成分を軟質化し、それを汚れ防止剤中に分散させて、コークス炉ガス流通路の系外に排出することもできる。
【0015】
具体的には、コークス炉ガス流通路におけるコークス炉ガス中の汚れ成分の付着堆積が抑制される、すなわちコークス炉ガス流通路の閉塞が抑制されるので、コークス炉ガス流量を常に維持でき、緊急停止なしに、装置および設備の安定運転が可能になる。
また、定期的に装置および設備を停止しての洗浄作業が不要になり、生産性が向上する。
【0016】
また、本発明のコークス炉ガス流通路への汚れの付着堆積抑制方法は、次のいずれか1つの要件:
(1)汚れ防止剤が、ミスト粒径10〜1000μmで噴霧される、
(2)汚れ成分が付着堆積し易いポイントが、エルボの屈曲部、チーズの屈曲部、ブロワー内部、ストレーナー、流量計のオリフィス部または垂直配管の下部である、
【0017】
(3)環状不飽和炭化水素がテルペン炭化水素であり、芳香族炭化水素が炭素数9〜18の芳香族炭化水素または石油留分である、
(4)汚れ防止剤が、界面活性剤をさらに含む、および
(5)汚れ防止剤が、環状不飽和炭化水素および/または芳香族炭化水素と界面活性剤とを配合割合99:1〜1:1(重量比)で含む
を満足する場合に、上記の効果をさらに発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のコークス炉ガス流通路への汚れの付着堆積抑制方法(以下「方法」ともいう)は、コークス炉ガス流通路におけるコークス炉ガスの流通時に、そのコークス炉ガス流通路内のコークス炉ガス中の汚れ成分が付着堆積し易いポイントの上流から、環状不飽和炭化水素および/または芳香族炭化水素を含む汚れ防止剤を噴霧し、汚れ成分が付着堆積し易いポイントまたはその下流から、汚れ成分を汚れ防止剤と共に排出することを特徴とする。
すなわち、本発明の方法は、該当装置またはそれを含む周辺の設備を運転しながら薬剤を噴霧して、コークス炉ガス由来の汚れ成分の付着堆積を抑制し、閉塞のトラブルを改善する方法である。
以下、(1)本発明の方法を適用する装置、(2)本発明の付着堆積抑制方法、(3)本発明に用いる汚れ防止剤の順に説明する。
【0020】
(1)本発明の方法を適用する装置
本発明の方法を適用する装置としては、コークス炉ガス流通路を有する装置であれば特に限定されず、例えば、コークス炉ガスの分離精製プラント、ボイラ、加熱炉、熱交換器などのプラントにおける、配管、ブロワ、ストレーナなどが挙げられる。
【0021】
これらの装置において、コークス炉ガス中の汚れ成分が付着堆積し易いポイントは、コークス炉ガスの流れが滞留し易いポイントであり、例えば、配管径の変化がある場所(配管の屈曲部分)および外気温度が低い場所などが挙げられる。
具体的には、エルボの屈曲部、チーズの屈曲部、ブロワー内部、ストレーナー、流量計のオリフィス部または垂直配管の下部などが挙げられ、本発明の方法はこれらのポイントに適用するのが好ましい。
【0022】
付着堆積の抑制対象となる汚れ成分やその含有量は、コークス炉ガスの由来により異なるが、例えば、汚れ成分としては、タール分(多環芳香族化合物の重合物)、ナフタレンおよびその誘導体、硫黄化合物、硫酸アンモニウム、硫化鉄やフェロシアン錯体が挙げられる。
【0023】
(2)付着堆積抑制方法
本発明の方法は、コークス炉ガスの流通時、すなわちコークス炉ガスを移送および処理する装置またはそれを含む周辺の設備の運転時に、連続的に実施され、少なくとも次の2つの操作、
A:コークス炉ガス流通路におけるコークス炉ガスの流通時に、そのコークス炉ガス流通路内のコークス炉ガス中の汚れ成分が付着堆積し易いポイントの上流から、環状不飽和炭化水素および/または芳香族炭化水素(さらに界面活性剤を含む)を含む汚れ防止剤を噴霧すること、および
B:汚れ成分が付着堆積し易いポイントまたはその下流から、汚れ成分を汚れ防止剤と共に排出すること
からなる。
【0024】
(A:汚れ防止剤の噴霧)
上記「(1)本発明の方法を適用する装置」に記載の「汚れ成分が付着堆積し易いポイント」の上流のコークス炉ガス流通路内に設けた噴霧ポイントから汚れ防止剤を噴霧する。
噴霧ポイントは、噴霧された汚れ防止剤がコークス炉ガスの流れに乗って拡散し易いポイントが好ましく、例えば、コークス炉ガスの配管の直線部分が挙げられる。
汚れ成分が付着堆積し易いポイントと噴霧ポイントとの工程長は、例えば、1〜50mである。
また、噴霧は、コークス炉ガス流通路の上部または側面から、コークス炉ガスの流れ方向に沿って行うのが好ましい。
必要に応じて、噴霧ポイントを複数箇所に設けてもよい。
【0025】
噴霧条件は、コークス炉ガスの流量や流速が装置の種類や規模、同じ装置内であっても個々のコークス炉ガス流通路により異なることなどから、適用する装置の種類や規模、適用前の汚れ成分の付着堆積の状況などの諸条件を考慮して適宜決定すればよい。
通常、汚れ防止剤は、汚れ成分の堆積量などにより増減はあるが、コークス炉ガス1Nm
3に対して1〜50gになるように1日2〜24時間噴霧されるのが好ましい。
「Nm
3」は、気体の標準状態(温度0℃、圧力10
5Pa)に換算した体積を表す。
【0026】
汚れ防止剤の噴霧量がコークス炉ガス1Nm
3に対して1g未満またはその噴霧時間が1日2時間未満では、本発明の汚れ成分の付着堆積抑制効果が十分に得られないことがある。
一方、汚れ防止剤の噴霧量がコークス炉ガス1Nm
3に対して50gを超えると、経済的なデメリットを打ち消す効果が発揮されないことがある。
より好ましい汚れ防止剤の噴霧量は、コークス炉ガス1Nm
3に対して5〜20gであり、そのより好ましい噴霧時間は1日5〜24時間である。
噴霧間隔は、上記の1日当たりの時間を複数回に分けてもよい。
【0027】
汚れ防止剤は、ミスト粒径10〜1000μmで噴霧されるのが好ましい。
ミスト粒径が小さい程、汚れ防止剤が噴霧場所からコークス流通路の遠方まで届き、少ない噴霧量での効果が期待できる。
より好ましいミスト粒径は、10〜100μmであり、さらに好ましくは10〜50μmである。
【0028】
噴霧手段は、上記の条件を満足するように汚れ防止剤を噴霧できるのであれば、特に限定されず、公知の噴霧装置を適用することができる。
例えば、汚れ防止剤を貯蔵するタンクおよびキャリアーガスを接続した内挿ノズルが挙げられ、内挿ノズルとしては、実施例で用いているような二流体アトマイジングノズルが挙げられる。
また、キャリアーガスは、コークス炉ガスへの影響を考慮して不活性ガスが好ましく、例えば窒素ガスが挙げられる。
例えば、上記の噴霧量およびミスト粒径は、内挿ノズルの規格選定や調整、キャリアーガスの流量などの調整により設定することができる。
【0029】
(B:汚れ成分の排出)
上記「(1)本発明の方法を適用する装置」に記載の「汚れ成分が付着堆積し易いポイント」またはその下流から、汚れ成分を汚れ防止剤と共に排出する。
排出物は、汚れ防止剤中に溶解したナフタレンなどの汚れ成分および汚れ防止剤により軟質化され、その中に分散されたタールなどの汚れ成分などの混合物であると考えられる。
必要に応じて、排出ポイントを複数箇所に設けてもよい。
【0030】
排出には、コークス炉ガス流通路に設けたドレンを用いるのが好ましい。
通常、本発明の方法を適用する装置には、従来の洗浄処理などのために要所にドレンが設けられており、このような既設のドレンを用いることができる。また、必要に応じて、排出用のドレンを新設してもよい。
【0031】
(3)汚れ防止剤
本発明の方法に使用される汚れ防止剤としては、当該技術分野で用いられる汚れ防止剤、これに類する洗浄剤であれば特に限定されず、具体的には、環状不飽和炭化水素および/または芳香族炭化水素を含む汚れ防止剤、さらに界面活性剤を含む汚れ防止剤が挙げられる。
【0032】
(環状不飽和炭化水素)
環状不飽和炭化水素としては、テルペン炭化水素が挙げられる。
環状不飽和炭化水素としては、例えば、d−リモネン、ピネン、ミルセン、テルピネン、カンフェン、トリシクレン、テルピノレンなどのモノテルペン類;ビサボレン、ジンギベレン、カジネン、サンタレンなどのセスキテルペン類;カンホレン、ポドカルプレンなどのジテルペン類などが挙げられる。
【0033】
(芳香族化合物)
芳香族化合物としては、ベンゼン、アルキルベンゼン、ナフタレンおよびアルキル置換ナフタレンが挙げられ、これらの中でも、炭素数9〜18の芳香族炭化水素が好ましく、洗浄能力の点から炭素数9〜16の芳香族炭化水素が好ましい。
【0034】
芳香族化合物としては、例えば、
ベンゼン、ナフタレン;
イソプロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、1,2−エチルメチルベンゼン、1,3−エチルメチルベンゼン、1,4−エチルメチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、インダンなどの炭素数9のアルキルベンゼン;
イソブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1−メチル−3−n−プロピルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ジメチル−5−エチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、メチルインダン、テトラリンなどの炭素数10のアルキルベンゼン;
ペンチルベンゼン、トリメチルエチルベンゼン、ジエチルメチルベンゼン、ジメチルインダン、エチルインダンなどの炭素数11のアルキルベンゼン;
ヘキシルベンゼン、トリエチルベンゼンなどの炭素数12のアルキルベンゼン;
メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、ジメチル−イソプロピルナフタレン、メチル−n−プロピルナフタレン、ジメチルプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレンなどの炭素数11〜16のアルキルナフタレン
などが挙げられる。
【0035】
本発明においては、環状不飽和炭化水素としてd−リモネンを、芳香族炭化水素として石油留分を用いる場合に、汚れ成分の付着堆積抑制効果の点で特に好ましい。なお、上記の芳香族炭化水素は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
石油留分は、石油の精製過程において生成される特定の温度範囲の留分であり、例えば、実施例で用いている沸点179〜214℃の石油留分(芳香族ナフサ、タイオイル(Thaioil)社製、商品名:TOPSol A-150)が挙げられる。
【0036】
(界面活性剤)
本発明においては、環状不飽和炭化水素および/または芳香族炭化水素に加えて、界面活性剤を用いることにより汚れ成分の付着堆積抑制効果が向上する点で好ましい。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤および天然由来の界面活性剤が挙げられる。
【0037】
界面活性剤としては、例えば、
脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルサルコシン塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などのアニオン界面活性剤;
アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩などのカチオン界面活性剤;
高級アルコールエチレンオキサイド付加物〔エチレンオキサイドは以下、(E.O)と略す〕、アルキルフェノール(E.O)付加物、脂肪酸(E.O)付加物、多価アルコール脂肪酸エステル(E.O)付加物、高級アルキルアミン(E.O)付加物、脂肪酸アミド(E.O)付加物、油脂の(E.O)付加物、プロピレンオキサイド〔以下、(P.O)と略す〕(E.O)共重合体、アルキルアミン(P.O)(E.O)共重合体付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルキロールアミドなどのノニオン界面活性剤;
アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤などの両性界面活性剤
などが挙げられる。
【0038】
(汚れ防止剤)
汚れ防止剤は、環状不飽和炭化水素がd−リモネンであり、芳香族炭化水素が石油留分であり、界面活性剤がポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、アルキルエーテルリン酸モノエステル、アルキルベンゼンスルフォン酸、ジアルキルスルホコハク酸またはアルキルジアミンであるのが好ましい。
【0039】
汚れ防止剤は、環状不飽和炭化水素および/または芳香族炭化水素と界面活性剤とを配合割合99:1〜1:1(重量比)で含むのが好ましい。
より好ましい上記の配合割合は、95:5〜60:40(重量比)である
本発明においては、芳香族化合物と界面活性剤との混合物の形態で、汚れ防止剤として市販品されているものを適宜用いることができる。
【実施例】
【0040】
本発明を以下の製剤例および試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
なお、下記の実施例1−1、1−4、1−8、1−9および1−13は参考例である。
【0041】
(製剤例1)
石油留分(芳香族ナフサ、タイオイル(Thaioil)社製、商品名:TOPSol A-150)
90重量部
d−リモネン((R)-1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセン、キシダ化学株式会社製、試薬) 10重量部
(製剤例2)
石油留分(製剤例1と同様) 90重量部
ポリオキシエチレンアルコールエーテル(ノニオン界面活性剤、主成分:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、三洋化成工業株式会社製、商品名:エマルミンNL−90)
10重量部
(製剤例3)
石油留分(製剤例1と同様) 90重量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、三洋化成工業株式会社製、商品名:ニューポールPE−61) 10重量部
【0042】
(製剤例4)
石油留分(製剤例1と同様) 90重量部
ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(ノニオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール95−FJ) 10重量部
(製剤例5)
石油留分(製剤例1と同様) 90重量部
アルキルエーテルリン酸モノエステル(ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、東邦化学工業株式会社製、商品名:フオスフアノールML−220) 10重量部
(製剤例6)
石油留分(製剤例1と同様) 90重量部
アルキルベンゼンスルフォン酸(アニオン界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール210) 10重量部
【0043】
(製剤例7)
石油留分(製剤例1と同様) 90重量部
ジアルキルスルホコハク酸(アニオン界面活性剤、主成分:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、三洋化成工業株式会社製、商品名:サンモリンOT−70) 10重量部
(製剤例8)
石油留分(製剤例1と同様) 90重量部
アルキルジアミン(カチオン界面活性剤、アルキル基:牛脂、ライオン株式会社製、商品名:デュオミンT) 10重量部
(製剤例9)
石油留分(製剤例1と同様) 100重量部
【0044】
(製剤例10)
石油留分(製剤例1と同様) 95重量部
アルキルベンゼンスルフォン酸(アニオン界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール210) 5重量部
(製剤例11)
石油留分(製剤例1と同様) 70重量部
アルキルベンゼンスルフォン酸(アニオン界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール210) 30重量部
(製剤例12)
石油留分(製剤例1と同様) 60重量部
アルキルベンゼンスルフォン酸(アニオン界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール210) 40重量部
(製剤例13)
石油留分(製剤例1と同様) 98重量部
アルキルベンゼンスルフォン酸(アニオン界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール210) 2重量部
【0045】
(試験例1:薬剤による汚れ成分の溶解効果の確認試験)
製剤例1〜13の薬剤による汚れ成分の溶解効果を評価した。
試験には、某製鉄所のプラントのコークス炉ガス配管から採取した、配管内に付着した汚れ成分(コークス炉ガス配管汚れ)を使用した。汚れ成分は、黒色で、粒状であった。
図1に示すように、容量500mLのガラス製ビーカー(1)に、2mmメッシュの金網(2)を懸垂させ、予め秤量しておいた5gの汚れ成分(3)を金網(2)上に載置した。
【0046】
次いで、市販の家庭用霧吹きを用いて、100mLの薬剤を汚れ成分(3)に噴霧した。
図1の図番(4)は、薬剤噴霧を示す。
さらに、薬剤に配合したものと同じ石油留分30mLで汚れ成分(3)を洗浄し、石油留分が滴下しない状態で、金網(2)上に残留した汚れ成分(3)の重量を秤量した。
得られた薬剤噴霧前後の汚れ成分の重量(g)(それぞれWbおよびWa)から、下式により除去率(%)を算出した。
除去率(%)=(Wb−Wa)/Wb×100
得られた除去率の結果を、使用した薬剤およびその環状不飽和炭化水素および/または芳香族化合物と界面活性剤との使用割合と共に表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
コークス炉ガス配管の閉塞物となる汚れ成分は、重合が進行した芳香族炭化水素、ナフタレン化合物、硫黄化物、鉄化合物などで構成され、ナフタレン化合物や低分子量の炭化水素は、環状不飽和炭化水素および/または芳香族炭化水素に溶解する。
この発明の実施例である環状不飽和炭化水素としてのd−リモネンと芳香族化合物としての石油留分とを含む製剤例1および芳香族化合物と界面活性剤とを含む製剤例2〜8および10〜13(実施例1−1〜1−8および1−10〜1−13)が、芳香族化合物としての石油留分のみを使用した製剤例9(実施例1−9)と比較して汚れ成分の除去率が大きいことがわかる。
【0049】
(試験例2:薬剤による汚れ成分の付着抑制効果の確認試験1)
某製鉄所のプラントのコークス炉ガス配管内に、内挿ノズル(スプレーイングシステムスジャパン株式会社製、二流体アトマイジングノズル、スプレーセットアップ番号:SU11)を取り付け、製剤例6の薬剤を、下記の条件で配管内に直接噴霧して、汚れ成分の付着抑制効果を評価した。
プラント運転時に、COGガス1Nm
3に対して10gとなるように薬剤を24時間連続して配管内に直接噴霧した。噴霧した配管は、放散塔塔頂のバーナーにガスを送っており、地上50mまで塔に沿って立ち上がっている。内挿ノズル(二流体ノズル)と窒素ガス流量とを調整することにより、薬剤をミスト粒径100μm以下に霧化した。この条件により、薬剤の噴霧箇所からCOGガス流通の下流、すなわち放散塔の塔頂部の高い位置まで薬剤が届くようにした。
【0050】
また、汚れ成分の付着状態を観察するために、薬剤の噴霧箇所、すなわち内挿ノズル(7)からCOGガス流通の下流50mから100mの間の配管(軟鋼製、内径50mm)に、それぞれテストチューブとして長さ300mm分の新たな配管を3箇所設置した。
3箇所に設置したテストチューブの内表面には、僅かに汚れ成分で被覆された程度の付着が観察されたが、配管の閉塞を引き起こすような汚れ成分の付着は認められなかった。また、テストチューブ前後の既存配管に付着していた汚れ成分の一部は、薬剤によって洗浄された跡が縞のように認められた(実施例2−1)。そして、薬剤の噴霧開始から5ヶ月間、配管の閉塞がなく、連続してプラントを運転することができた。
【0051】
一方、従来の薬剤噴霧をしないプラントの連続運転では、汚れ成分の付着により約2ヶ月間で配管内が閉塞した(比較例2−1)。そこで、従来はプラントの運転(設備)を定期的に停止してスチームによる洗浄を実施した。
【0052】
(試験例3:薬剤による汚れ成分の付着抑制効果の確認試験2)
某製鉄所のプラントのコークス炉ガス配管内に製剤例6の薬剤を、下記の条件で直接噴霧して、汚れ成分の付着抑制効果を評価した。
まず、
図2に示すようなコークス炉ガス配管内に、薬剤タンクとポンプ(5)およびキャリアーガスとしての窒素(N
2)ガス供給タンク(6)を接続した内挿ノズル(7)(「注入ノズル」ともいう、スプレーイングシステムスジャパン株式会社
製、二流体アトマイジングノズル、スプレーセットアップ番号:SU11)を装着した。
【0053】
図2における図番8はドレン、9はシールポット、10は1段目バーナー、11は2段目バーナー、12はオリフィスを示す。また、COGは、コークス炉ガスを示し、矢符の方向に、内挿ノズルノズル(7)が装着された配管、オリフィス(12)ならびに1段目バーナー(10)および2段目バーナー(11)を経て流通する。
【0054】
プラントの通常運転時に、COGガス1Nm
3に対して10gの製剤例6の薬剤を1日5時間連続して配管内に直接噴霧した。内挿ノズル(二流体ノズル)と窒素ガス流量とを調整することにより、薬剤をミスト粒径100μm以下に霧化した。この条件により、薬剤の噴霧箇所からCOGガス流通の下流まで薬剤が届くようにした。
薬剤の噴霧開始から3ヶ月間、ガス流量の低下(配管の閉塞)がなく、連続してプラントを運転することができた(実施例3−1)。
【0055】
その後、噴霧量をCOGガス1Nm
3に対して7gに低下させて薬剤の噴霧を継続したところ、7ヶ月間(計10ヶ月間)、従来の物理的な配管の機械洗浄を実施することなく、連続してプラントを運転することができた(実施例3−2)。
また、薬剤噴霧によるバーナー燃焼への悪影響は認められなかった。
【0056】
また、薬剤を噴霧しない、従来のプラントの通常運転では、バーナー17手前の低部配管にコークスやナフタレン、硫黄化合物を主とする汚れが堆積し、プラント運転開始から2ヶ月程度でガス流量が低下しはじめるため、スチームによる汚れの除去もしくは設備の運転を停止しての配管の機械洗浄を定期的に実施する必要があった(比較例3−1)。