(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、所定の計測時間内の積算日照量を測定し、前記積算日照量が一定値以上である場合に前記発熱体の出力を現在よりも小さくするように制御する請求項9又は請求項10に記載のヒーター装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るヒーター装置は、
通電により発熱する発熱体と、
前記発熱体をその全長に亘って収納するケースとを備え、
前記ケースは、
前記発熱体をその全長に亘って挟むように配置される一対の壁部と、
前記発熱体の下方をその全長に亘って覆う底部と、
前記一対の壁部のうち、少なくとも一方の壁部において、前記発熱体の下端よりも下方位置に設けられる吸気口と、
前記ケースにおける前記発熱体の上端よりも上方位置に設けられる暖気排出口と、
前記ケース内に設けられて、前記吸気口から前記ケース内に取り込まれた空気を前記発熱体側に導く導風部とを備える。
【0014】
上記のヒーター装置では、ケースを構成する一対の壁部によって発熱体の側方をそれぞれ覆うと共に、底部によって発熱体の下方を覆う。また、このヒーター装置では、ケースにおいて発熱体の下端よりも下方に開口部を有すると共に、発熱体の上端よりも上方に開口部を有する。即ち、このケースは、発熱体を実質的に露出させないようにしつつ、下方に吸気口、上方に暖気排出口を備える。このような特定の形状のケースを備える上記のヒーター装置は、吸気口が設けられた壁部を窓部側に向けて設置すると、いわゆる煙突効果によって、窓部側からの低温の空気(冷気)を吸気口からケース内に効率よく、かつ自動的に吸い込める。詳しくは、ケース内で発熱体によって加熱された空気は、相対的に密度が小さくなるため、ケース内の空気に密度差が生じ、この密度差によって上昇流が生じる。その結果、ケース内の下方とケース外とで圧力差が生じ、ケース下方の吸気口から、相対的に低圧のケース内に上述の冷気を取り込む。ケース内に取り込まれた上記の冷気は、発熱体によって加熱されて上昇する。以上の事象を繰り返す。
【0015】
特に、上記のヒーター装置は導風部を備えるため、吸気口からケース内に導入された冷気は、導風部に接触すると、導風部に沿って発熱体側に向かって上向きに流れて発熱体によって加熱され、暖気となって暖気排出口から排出される。暖気は主として室内の上方に向かって流れるため、下方に流れようとする冷気と上方に向かう暖気とが循環するような空気の流れ(対流)を発生できる。このようにして上記のヒーター装置は、コールドドラフトを防止できる。更に、上述のケース内に導入された冷気は、その流れ方向を導風部によって発熱体側に規制され、発熱体に加熱されずに低温のままでケース外に流れ出ることを阻害される。いわば、導風部は、冷気におけるケース外への流出阻害部材としても機能する。従って、ケース内に導風部を備える上記のヒーター装置は、コールドドラフトを上述の従来のヒーター装置よりも確実に防止でき、室内の居住者に寒さを感じ難くさせる効果が大きいと期待される。
【0016】
また、上記のヒーター装置は、ケースの上方から排出する暖気によって窓部を直接暖められるため、室内の湿度が高い場合でも窓際の温度が露点以下となって結露が生じることも防止できる。
【0017】
(2)上記のヒーター装置の一例として、
前記一対の壁部は、その下端側から上端側に向かって、両壁部の間隔が狭くなるように配置される形態が挙げられる。
【0018】
上記形態では、ケースの容積が吸気口側から暖気排出口側に向かって小さくなることで、暖気の流速を高め易い。暖気が勢いよく天井に当たって、天井から室内壁に沿って下方に流れることで、窓部側からの冷気が下方に流れることを促して、上述の対流を生じさせ易いと期待される。また、上記形態は、三角柱状の外観を有し、特許文献1,2に記載される直方体状の外観を有する場合に比較して、スタイリッシュであり、意匠性に優れる。
【0019】
(3)上記のヒーター装置の一例として、
前記吸気口の上端縁の高さ位置は、前記ヒーター装置の設置面から前記ケースの高さの5%以上20%以下の範囲にあり、
前記発熱体の軸の高さ位置は、前記設置面から前記ケースの高さの30%以上70%以下の範囲にある形態が挙げられる。
【0020】
上記形態は、発熱体における室内の設置面からの高さが高過ぎず、低過ぎず適切であると共に、吸気口の開口面積が小さ過ぎず、大き過ぎず適切に確保できつつ、ケースの下方に適切に位置する。従って、上記形態は、冷気を良好に吸い込めると共に、暖気を良好に形成でき、コールドドラフトをより確実に防止できる。
【0021】
(4)上記のヒーター装置の一例として、
前記導風部は、前記吸気口側に配置される下端縁から前記発熱体側に配置される上端縁に向かって上向きに傾斜する傾斜部を含む形態が挙げられる。
【0022】
上記形態は、吸気口からの冷気が傾斜部に沿って発熱体側に向かって滑らかに流されて、導風部との接触による圧力損失を低減し易く、冷気の吸込み能力を大きくし易い。従って、上記形態は、コールドドラフトをより確実に防止できる。
【0023】
(5)上記のヒーター装置の一例として、
前記一対の壁部にそれぞれ前記吸気口を備え、
前記導風部は、各壁部における前記吸気口の形成領域に重複して設けられる形態が挙げられる。
「前記導風部は、各壁部における吸気口の形成領域に重複して設けられる」とは、吸気口をケースの幅方向に透視した場合に、導風部の外形が壁部における吸気口の形成領域に重なる(一致する又は吸気口の形成領域よりも大きい)ことが挙げられる。ここでのケースの幅方向とは、ケースの長手方向に直交し、一方の壁部から他方の壁部に向かう方向をいう。
【0024】
上記形態は、両壁部にそれぞれ吸気口を備えるため、いずれの壁部を窓部側に向けて設置してもコールドドラフト防止効果が得られる。このような上記形態は、発熱体に繋がるコードなどを取り回す必要が無く、設置状態の選択の自由度が高く、この点で利用し易い。また、上記形態は、いずれの吸気口を窓部側に向けて設置しても冷気をケース内に吸い込める。かつ、上記形態は、各吸気口の形成領域に重複にして導風部を備えるため、窓部側の吸気口から導入した冷気が発熱体に加熱されずに低温のままで窓部とは反対側の吸気口からケース外に流出することを防止できる。従って、上記形態は、コールドドラフトをより確実に防止できる。
【0025】
(6)両壁部にそれぞれ吸気口を備える上記のヒーター装置の一例として、
前記ケースをその長手方向に直交する平面で切断した横断面において、前記一対の壁部は、線対称な外形を有する形態が挙げられる。
【0026】
上記形態は、両壁部における吸気口及び暖気排出口の仕様(大きさ、形状、形成位置など)がそれぞれ等しいため、いずれの壁部を窓部側に向けて設置しても、冷気の吸気量や暖気の排出量を等しくし易く、コールドドラフトの防止効果を同様に得易い。また、上記形態は、ケースが線対称な外形を有するため、いずれの壁部を室内の中央部側に向けて設置しても同様な外観を有することができ、この点で意匠性に優れる。更に、ケースが単純な外形となり易く、製造性にも優れる。
【0027】
(7)ケースの外形が線対称である上記のヒーター装置の一例として、
前記横断面において、前記導風部は、線対称な外形を有する形態が挙げられる。
【0028】
上記形態は、ケースの内部形状も線対称な形状であるため、いずれの壁部を窓部側に向けて設置しても、吸気口及び導風部が同様に配置されてコールドドラフトの防止効果を同様に得られる。この点で、上記形態は、利便性に優れる。また、ケースがより単純な形状となり易く、製造性にも優れる。
【0029】
(8)上記のヒーター装置の一例として、
前記導風部は、前記底部を兼ねる形態が挙げられる。
【0030】
上記形態は、ケースの部品点数が少なく、軽量にでき、この点で利用し易い。導風部が上述の傾斜部を備える場合には、ケースの底部と室内の設置面間に傾斜部の傾斜に応じた隙間を設けられるため、ケースの底部と室内の設置面間に結露水が溜まるなどの不具合を回避し易い。
【0031】
(9)上記のヒーター装置の一例として、
照度センサと、
前記照度センサからの情報に基づいて前記発熱体の出力を調整する制御部とを備える形態が挙げられる。
「発熱体の出力を調整する」とは、発熱体の出力を現時点の値よりも増大すること、減少すること、現時点の値をそのまま維持すること、出力を停止することなどが挙げられる。
【0032】
ここで、窓部に日光がある程度当たり、窓部近傍がある程度暖められると、窓部側から室内の中央部側に向かう冷気が生じ難くなる、との知見を得た。上記(1)などのヒーター装置は、窓部近くに設置されて利用されるため、窓部近傍の照度を測定し、照度の大小に応じて発熱体の出力を調整すれば、消費電力を低減できる。上記形態は、照度センサ及び制御部を備えて、窓部からの照度を測定し、照度に応じて発熱体の出力を自動的に調整するため、消費電力を低減でき、省エネルギー化を図ることができる。また、上記形態は、使用者が複雑な操作をする必要が無く、利用し易い。
【0033】
(10)照度センサを備えるヒーター装置の一例として、
前記暖気排出口から排出する暖気の温度及び前記吸気口から取り込む空気の温度の少なくとも一方を測定する温度センサを備え、
前記制御部は、前記照度センサからの情報と、前記温度センサからの情報とに基づいて、前記発熱体の出力を調整する形態が挙げられる。
【0034】
上記形態は、上述のように消費電力の低減、利便性の向上に加えて、窓部からの照度とヒーター装置内の温度(例、暖気温度や冷気温度)とに応じて自動的に発熱体の出力を調整するため、暖気の温度をより適切な温度に調整し易い。
【0035】
(11)照度センサを備えるヒーター装置の一例として、
前記制御部は、所定の計測時間内の積算日照量を測定し、前記積算日照量が一定値以上である場合に前記発熱体の出力を現在よりも小さくするように制御する形態が挙げられる。
「発熱体の出力を現在よりも小さくする」とは、出力を停止する場合を含む。
【0036】
ここで、窓部に日光がある程度の時間当たると、窓部近傍が暖められると共に、暖められた状態がある程度保持されて、窓部側から室内の中央部側に向かう冷気が生じ難くなる、との知見を得た。上記形態は、照度センサで測定した日照量を積算し、積算日照量に応じて発熱体の出力を自動的に調整するため、消費電力を低減できて、省エネルギー化を図ることができる。また、上記形態は、使用者が複雑な操作をする必要が無く、利用し易い。
【0037】
(12)上記のヒーター装置の一例として、
前記発熱体の発熱量は、71.5W/m未満である形態が挙げられる。ここでの発熱量とは、発熱体1mあたりの熱量(W)とする。
【0038】
上述のように(1)などのヒーター装置は、ケース内に導入された冷気を効率よく発熱体に接触させて加熱できるため、発熱量が比較的小さい発熱体であっても冷気を良好に加熱できる。従って、上記形態は、コールドドラフトを防止できる上に、省エネルギー化に寄与する。
【0039】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図中、同一符号は同一名称物を示す。
【0040】
[実施形態1]
以下、
図1から
図3を参照して、実施形態1のヒーター装置1Aを説明する。
図2は、ヒーター装置1Aを、ケース3の長手方向(発熱体2の軸方向でもある)に直交する平面で切断した横断面図である。
【0041】
(概略)
実施形態1のヒーター装置1Aは、代表的には、窓部w(
図3)を有する建物(戸建ての住宅やマンションなどの集合住宅、各種の施設など)の室内において、窓際に設置されて利用される細長いもの(
図1)である。このヒーター装置1Aは、通電により発熱する発熱体2と、発熱体2をその全長に亘って収納するケース3とを備える。ケース3は、発熱体2をその全長に亘って挟むように向かい合って配置される一対の壁部31,32と(
図2も参照)、発熱体2の下方を発熱体2の全長に亘って覆う底部33とを備える(同)。代表的には、ケース3は、発熱体2の上方を覆う天面部34と、壁部31,32及び天面部34並びに底部33(以下、これらをまとめてケース主要部と呼ぶことがある)の長手方向の両端部の開口部を覆う端板35(
図1では左側のみ示し、右側の端板を省略している)とを備え、ケース3内を発熱体2の収納空間とする容器である。なお、ヒーター装置1Aを設置した状態で、底部33側を下方、天面部34側を上方と呼ぶ。
図1から
図3では、ヒーター装置1Aを設置した状態を示し、紙面下方が底部33側である。
【0042】
ケース3は、更に、窓部w側からの冷気をケース3内に導入する開口部(吸気口3i)をケース3の下方に備えると共に、導入された冷気を発熱体2によって暖め、生じた暖気をケース3外に排出する開口部(暖気排出口3o)をケース3の上方に備える。このような特定の形状のケース3を備えるヒーター装置1Aは、いわゆる煙突効果を生じ、窓部w側に向かって配置された吸気口3iによって、窓部w側からの冷気をケース3内に自動的に吸い込み、ケース3内で暖めた暖気をケース3の上方から排出できる。特に、実施形態1のヒーター装置1Aは、ケース3の下方に位置する吸気口3iからケース3内に導入された冷気を発熱体2側に向かって上向きに流すように指向する構成(導風部4)を備える。ヒーター装置1Aは、ケース3内に設けられた導風部4によって、ケース3内に導入された冷気を上向きに流すことで、発熱体2に接触させて暖気にし易い上に、発熱体2に加熱されずに低温のままの冷気がケース3外に流出することを効果的に阻害できる。以下、詳細に説明する。
【0043】
以下の説明では、ケース3の長手方向に沿った大きさを長さ、ケース3の長手方向に直交し、一方の壁部31から他方の壁部32に向かう方向を幅方向、幅方向に沿った大きさを幅、ケース3の長手方向に直交し、底部33から天面部34に向かう方向(ヒーター装置1Aの設置状態では上下方向)を高さ方向、高さ方向に沿った大きさを高さと呼ぶ。ケース3における最大幅(ここでは底部33の幅W、
図2)の二等分線を中心線Cと呼ぶ(
図2)。
【0044】
(発熱体)
発熱体2は、窓部wの長さ方向に沿って配置されることが望ましく、窓部wの長さに対応したある程度長い棒状の電気ヒーターを好適に利用できる。この例の発熱体2は、ニクロム線などの発熱線材とMgOなどの絶縁粉末とを円筒状のパイプに収納したシーズヒーターであり、両端部は、ケース3に支持される箇所をなす。公知のシーズヒーターを利用できる。また、この例では、上記パイプの外周面から径方向に突出するフィン部22を備える。この例では、帯板状のフィン部22がパイプの外周に螺旋を描くように設けられている。このようなフィン部22を備える発熱体2は、全体として丸棒状のものである。
図1では、フィン部22の一部を螺旋状に示し、残部を簡略化して円柱状に示す。
図2〜
図4では、フィン部22を円形又は円柱状に簡略化して示す。その他の発熱体2として、例えば、炭素繊維、導電性粉末と樹脂又はゴムとを含む混合物などを用いた公知の電気ヒーターを利用してもよい。帯板状に設けられた電気ヒーターなどを利用してもよい。
【0045】
発熱体2の発熱量は適宜選択できる。上記発熱量が大きいほど、冷気の加熱速度を大きくしたり、暖気の温度をより高めたりし易いと考えられるものの、消費電力の増大、ひいては電気料金の増大を招く。実施形態1のヒーター装置1Aは、上述のように煙突効果を奏する上に冷気を発熱体2に接触させ易いケース3を備えており、冷気を効率よく加熱できる。そのため、発熱体2として、従来、コールドドラフトの防止に必要とされる発熱量よりも小さい発熱量のものを利用できる。例えば、発熱体2の発熱量が71.5W/m未満であるのものを利用できる。上記発熱量が小さいほど消費電力を低減できるため、発熱量を65W/m以下、更に60W/m以下とすることができる。コールドドラフトのより確実な防止という観点からは、ケース3の大きさなどにもよるが、発熱体2の発熱量を30W/m以上、更に50W/m以上とすることができる。
【0046】
発熱体2の個数は適宜選択できる。実施形態1のヒーター装置1Aは上述のように冷気の加熱効率が良いため、発熱体2の個数は少なくてよく、本例では1本である。本例の発熱体2は、
図2に示すようにケース3の幅方向の中心線Cに対して、発熱体2の軸が直交するようにケース3内に配置され、中心線Cを軸として線対称に配置されている。なお、発熱体2の個数を複数とすることもできる。例えば、複数の帯板状の発熱体を各帯板の表裏面が平行するように離間して並列配置させた集合体(例、特許文献1,2)などとすることもできる(例えば、後述の変形例(1)参照)。
【0047】
発熱体2の長さは、上述のようにある程度長いことが好ましく、例えば、窓部wの規格長さの0.5倍以上、更に0.7倍以上、0.75倍以上、0.8倍以上であることが挙げられる。発熱体2の長さを窓部wの規格長さと同等程度とすることもできる。発熱体2の直径、フィン部22の外径d(
図2)などは適宜選択できる。
【0048】
その他、発熱体2には、電源(図示せず)からの商用電力を供給するコード39が接続される。コード39にスイッチ(図示せず)を備えると、使用者が発熱体2への通電開始及び停止の操作を容易に行える。コード39及びスイッチは公知のものを利用できる。スイッチをケース3に備えることもできる。ヒーター装置1Aを使用する際には、コード39の先端のプラグを室内のコンセント口(図示せず)に差し込み、電源から発熱体2に電力供給が可能な状態とする。
【0049】
また、
図2に例示するように、発熱体2とケース3との熱絶縁性を高めるために、耐熱性があり、熱伝導性が低い材料、例えば耐熱性樹脂などの非金属材料などで形成された断熱部24を備えることができる。この例の断熱部24はフィン部22を挿通可能な内径を有する円環体であり、発熱体2の長手方向の適宜な位置に配置される。断熱部24の個数は一つでも複数でもよい。ケース3の壁部31,32及び底部33と発熱体2との間隔を調整すれば、断熱部24を省略してもよい。
【0050】
(ケース)
<全体構成>
ケース3は、室内の設置面側に配置される底部33と、底部33から立設するように配置される壁部31,32と、底部33と対向するように配置される天面部34とを備える細長い容器である。更に、このケース3は、所定の位置に開口部を有すると共に、導風部4を備える。詳しくは、ケース3は、一対の壁部31,32のうち、少なくとも一方の壁部において、発熱体2の下端よりも下方位置に設けられる吸気口3iと、ケース3における発熱体2の上端よりも上方位置に設けられる暖気排出口3oと、ケース3内に設けられて、吸気口3iからケース3内に取り込まれた空気(冷気)を発熱体2側に導く導風部4とを備える(
図2も参照)。
【0051】
この例では、一対の壁部31,32は、その下端側から上端側に向かって、両壁部31,32の間隔が狭くなるように配置される。そのため、ケース3は、
図1に示すようにその全長に亘って三角柱状の外観を有する。一対の壁部31,32はそれぞれ吸気口3i,3iを備えると共に暖気排出口3o,3oを備え、
図2に示すようにケース3の横断面において、中心線Cを軸とする線対称な外形を有する。この例では、壁部31,32の下端縁は、各吸気口3i,3iの開口縁のうち、上端縁をなし、壁部31,32の上端縁は、各暖気排出口3o,3oの開口縁のうち、下端縁をなす。
【0052】
また、この例では、各壁部31,32における吸気口3i,3iの形成領域に重複して導風部4,4が設けられると共に、
図2に示すようにケース3の横断面において、導風部4,4は中心線Cを軸とする線対称な外形を有する。各導風部4,4は、吸気口3i側に配置される下端縁から発熱体2側に配置される上端縁に向かって上向きに傾斜する傾斜部332,332を含むと共に、底部33を兼ねる。
【0053】
なお、ケース3の形状は、発熱体2の全長を収納可能な大きさを有し、煙突効果を有する範囲で変更できる(例えば、後述の変形例(2)〜(9)参照)。
【0054】
<壁部>
この例の各壁部31,32は、
図1,
図2に示すように主として、横長の長方形状の板材からなる。これら板材の下端縁及び上端縁から離れた中間部分で棒状の発熱体2の側面を挟むように各壁部31,32が配置される。各壁部31,32の下端縁は、底部33(ここでは後述の設置面部330)に連続しておらず、底部33の縁との間に所定の隙間が設けられている。各隙間は、壁部31,32に開口する吸気口3i,3iをなす。各壁部31,32の上端縁は、天面部34に連続しておらず、天面部34の縁との間に所定の隙間が設けられている。各隙間は、壁部31,32に開口する暖気排出口3o,3oをなす。
【0055】
この例の各壁部31,32は、平行に配置されておらず、
図2に示すように両壁部31,32の上端縁が近付き、下端縁が離れるように傾斜して配置される。この配置により、両壁部31,32の間隔は、下端側から上端側に向かって連続的に狭くなるため、暖気の流速を高め易い。この暖気によって、後述するように下方に流れる冷気と上方に向かう暖気との対流が生じ易くなると期待される。また、このようなケース3は、三角柱状というスタイリッシュな外観を有し、意匠性にも優れる。
【0056】
各壁部31,32における中心線C又は設置面部330に対する傾斜角を異ならせることができる。この例では両壁部31,32の傾斜角が実質的に等しく、各壁部31,32は、ケース3の横断面において中心線Cを軸として線対称に設けられている。そのため、各壁部31,32に備えられる吸気口3i及び暖気排出口3oの大きさ(開口面積など)、形状及び形成位置はそれぞれ等しい。このようなヒーター装置1Aは、いずれの壁部31,32を窓部w側に向かって設置した場合でも、冷気の吸気量や暖気の排出量を等しくし易く、コールドドラフト防止効果を同様に得易い。また、線対称な外形を有することで、いずれの壁部31,32を窓部wとは反対側(室内の中央部側)に設置した場合でも同様な外観を有することができ、この点で意匠性により優れる。更に、線対称な外形を有するケース3は、単純な外形となり易く、ケース3の製造性にも優れる。
【0057】
特に、この例の壁部31,32は、ケース3の横断面形状が縦長の二等辺三角形状となるように設けられている(
図2)。ここでは、二等辺三角形の高さが底辺よりも1.5倍以上、更に1.8倍以上大きい。壁部31,32は、平坦な外形となるように平板材によって構築してもよいが、この例のように比較的大きな曲げ半径(例えば、ケース3の高さH
3の8倍以上15倍以下程度、更に9倍以上12倍以下程度)を有し、ケース3の内側に向かって凸となる円弧状の板材を用いて、滑らかな曲面を有する外形となるように構築することができる。各円弧板材は、その上端部から延ばした仮想の延長線が交わるように配置する。円弧状の壁部31,32に沿うことで、ケース3の上方の暖気排出口3oに向かう暖気の流れを滑らかにし易く、圧損などを低減し易いと考えられる。なお、ケース3の高さH
3とは、ここでは設置面部330から天面部34の最高地点までの距離である。
【0058】
<底部及び導風部>
この例の底部33は、
図2に示すように横断面形状がとんがり帽子状であり、
図1に示すように横長の長方形状の板材を山型に屈曲したような形状である。詳しくは、底部33は、室内の設置面に平行するように配置される設置面部330と、設置面部330(又は室内の設置面)に非直交に交差し、吸気口3i側に配置されて設置面部330に繋がる下端縁から発熱体2側に配置される上端縁に向かって上向きに傾斜する傾斜部332とを備える。この底部33は、ケース3の横断面において中心線Cを軸として線対称に設けられている。両傾斜部332,332の上端縁の交点が山の頂点をなし、中心線C上に位置する。設置面部330の縁は、吸気口3i,3iの開口縁のうち、下端縁をなす。
【0059】
両傾斜部332,332のうち、一方の壁部31に対向する一方の傾斜部332は、壁部31の吸気口3iからケース3内に導入された冷気を一方の設置面部330の内面から発熱体2側に向かって上昇させる機能を有する。同様に、他方の壁部32に対向する他方の傾斜部332は、壁部32の吸気口3iからケース3内に導入された冷気を他方の設置面部330の内面から発熱体2側に向かって上昇させる機能を有する。即ち、傾斜部332は導風部4として機能する。ここで、導風部4を、例えば設置面部330に直交するように立設される垂直壁などとすることができる。この場合、上記冷気が垂直壁に当たると冷気の流速が低下する、即ち圧損が増大して冷気の吸込み能力が低下し、ひいてはコールドドラフト防止効果の低下を招く可能性がある。これに対し、導風部4が傾斜部332を含むと、ケース3内に導入された冷気が発熱体2側に向かって滑らかに流れ易く、上述の圧損を低減して冷気の吸込み能力を高め易い。ひいてはコールドドラフトを防止し易い。かつ、上記冷気の流れ方向を上向きに規制する導風部4は、上記冷気が発熱体2に接触せずに低温のままでケース3外に流出することを防止する阻害部材としても機能する。この例では、窓部w側に配置される壁部、例えば壁部31の吸気口3iから導入された冷気が、窓部w側とは反対側に配置される壁部、例えば壁部32の吸気口3iからケース3外に流出することを防止できる。窓部w側に壁部32を配置し、窓部w側とは反対側に壁部31を配置した場合も同様である(
図3)。このことからも、導風部4を備えるヒーター装置1Aは、コールドドラフトをより確実に防止できる。
【0060】
傾斜部332における設置面部330(又は室内の設置面)に対する傾斜角θは90°未満の範囲で適宜選択できる。上記傾斜角θが90°に近づくほど垂直壁に近くなって、上述の圧損の増大を招き易く、0°に近づくほど上述の上向きに規制する効果が得難くなる。上記傾斜角θは、ケース3の外寸、発熱体2の外寸、フィン部22の外径dなどにもよるが、例えば40°以上75°以下程度、更に45°以上70°以下程度が挙げられる。
【0061】
導風部4は、吸気口3iが設けられている壁部(ここでは壁部31,32)において、吸気口3iの形成領域に重複して設けられていることが好ましい。この例では、各壁部31,32における吸気口3i,3iの形成領域を各導風部4,4に向かってケース3の幅方向に透視した場合に、導風部4,4の外形は吸気口3i,3iの形成領域よりも十分に大きい。詳しくは導風部4の長さが吸気口3iの形成領域の長さに実質的に等しく、導風部4の高さH
4(
図2)が吸気口3iの形成領域の上端位置を上回る(
図4の右領域も参照)。導風部4の上端部は、発熱体2の下端縁よりも下方に位置しつつ、吸気口3iの上端部よりも十分に上方に位置する(
図2)。そのため、窓部w側に配置された一方の壁部、例えば、
図2の壁部31の吸気口3iから導入された冷気は、壁部31寄りの導風部4(傾斜部332)を上って導風部4の上端部から、相対的に高温で低密度な領域である発熱体2側に向かってそのまま上昇を続け易い。他方の壁部32寄りの傾斜部332側の領域は相対的に低温で高密度な領域であるため、上記冷気は他方の壁部32寄りの傾斜部332に沿って下り難い。この例のように、吸気口3iの全長に対応した導風部4を備えることで、窓部w側の導風部4は、ケース3内に導入された冷気が窓部wとは反対側の傾斜部332を経て、窓部wとは反対側の吸気口3iから流出することを防止できる。
【0062】
更に、この例の導風部4は底部33を兼ねるため、ケース3の部品点数の低減、軽量化を図ることができる。また、この例では、底部33と室内の設置面間に山型の導風部4,4に応じた三角柱状の隙間を設けられて、底部33が部分的に底上げされた状態である。この隙間によって、底部33と室内の設置面間に結露水が溜まるなどの不具合を回避し易い。設置面部330の幅は、導風部4をなす傾斜部332が適切に設けられる範囲で適宜選択できる。設置面部330を省略することもできる(後述する変形例(6)参照)。なお、底部33を平坦な平板材などで構築し、この底部33とは別に上述の山型の導風部4,4を備えて、底部33に固定することもできる。
【0063】
その他、この例の底部33は、上述の断熱部24を支持する台座部334を備える(
図2)。台座部334は、円環状の断熱部24の外周に対応した円弧状の外周面を有する部材であり、両傾斜部332,332の上端縁の交点部分に設けられ、円弧片の両側が上記交点部分からケース3の幅方向に突出する。断熱部24を支持できれば、台座部334における上記交点部分からの突出量は小さくてよく、発熱体2側に向かう冷気の流れを阻害しない範囲で調整するとよい。
【0064】
<天面部>
この例の天面部34は、
図1,
図2に示すように、細長い長方形状の板材を円弧状に湾曲したような形状である。天面部34は、両壁部31,32の上端縁から離間して配置されると共に、両壁部31,32間の上方空間を覆うように配置される(
図2)。天面部34の各縁は、暖気排出口3o,3oの開口縁のうち、上端縁をなす。
【0065】
また、この例では、
図2に示すように壁部31,32の上端縁よりもケース3の幅方向に若干突出するように天面部34の幅を調整している。そのため、ケース3を上面視すると、ケース3の内部は天面部34に隠れて見えない。この構成により、ケース3の上方からケース3内に埃や異物などが混入することを防止し易い。
【0066】
<吸気口及び暖気排出口>
この例では、上述のように壁部31,32のそれぞれに吸気口3i,3i及び暖気排出口3o,3oを備える。そのため、いずれの壁部31,32を窓部w側に向けて設置しても、窓部w側に向かって斜め上向き又は横向きに吸気口3i及び暖気排出口3oが開口した状態にすることができる。各壁部31,32に備えられる吸気口3i,3iの仕様(大きさや形状、形成位置など)や、暖気排出口3o,3oの仕様を異ならせることができるが、この例のように両壁部31,32が線対称な形状であり、吸気口3i,3iの仕様及び暖気排出口3o,3oの仕様が等しいと、上述のようにコールドドラフトの防止効果や外観を同様に得易い。
【0067】
この例の各吸気口3i,3i、各暖気排出口3o,3oは、ケース3の長手方向に連続し、壁部31,32の全長に至って設けられる横長の長方形の貫通孔である。このような吸気口3i,暖気排出口3oは、窓部wの大きさに対して大きな開口面積を有し易く、冷気の吸気量や暖気の排出量を大きく確保し易い。なお、一つの連続する貫通孔に代えて、複数の小さな貫通孔を集めた小孔群とすることができる(後述の変形例(8)参照)。
【0068】
吸気口3i,暖気排出口3oの大きさ(小孔群とする場合には合計の大きさ)は、発熱体2の発熱量や発熱体2の高さ位置、ケース3の外寸などにもよるが、例えば、吸気口3i,暖気排出口3oの長さは、発熱体2の全長以上であることが挙げられる。この場合、冷気の吸気量や暖気の排出量を大きく確保し易い。吸気口3i,暖気排出口3oの長さを発熱体2の全長よりも短くすることもできるが、発熱体2の全長の50%以上、更に60%以上、70%以上であると暖気を形成し易く好ましい。
【0069】
吸気口3iの高さHi,暖気排出口3oの高さHoは(
図2)、例えばケース3の高さH
3の5%以上20%以下程度、更に8%以上18%以下程度であることが挙げられる。高さHi,Hoが小さ過ぎないことで、冷気の吸気量や暖気の排出量を適切に確保でき、大き過ぎないことで暖気を形成し易く、コールドドラフトの防止効果を適切に得易い。また、大き過ぎないことでケース3の剛性も高め易い。
【0070】
吸気口3iの大きさと暖気排出口3oの大きさとは異ならせることもできるが、実質的に等しいことが好ましい。異ならせる場合、例えば、暖気排出口3oの大きさを吸気口3iの大きさよりも若干小さくすると、暖気の流速を高め易いと期待される。
【0071】
この例の吸気口3iは、その下端縁を設置面部330の縁とするため、吸気口3iを室内の設置面に近接して配置できる。このようなヒーター装置1Aは、低温で密度が相対的に大きく、下方に流れ易いとされる窓部w側からの冷気をケース3内に効率よく導入できる。
【0072】
<各部の大きさ>
ケース3のうち、ケース主要部である壁部31,32、底部33、及び天面部34は、発熱体2及びフィン部22を収納可能な長さ、幅、高さを有するものとする。
【0073】
上述のケース主要部の長さは、本例のように発熱体2の長さ以上であればよい。ケース主要部の長さが窓部wの規格長さと同等、更に上記規格長さを超えると、ケース3自体で窓部w側からの冷気が室内の中央部側に流れることを阻止できる。
【0074】
吸気口3iにおけるヒーター装置1Aの設置面(ここでは底部33の設置面部330の外面に概ね相当する)からの高さ位置、発熱体2におけるヒーター装置1Aの設置面からの高さ位置は、特に、冷気の吸込みや暖気の形成に影響を与える。例えば、吸気口3iの上端縁の高さ位置は、ヒーター装置1Aの設置面からケース3の高さH
3の5%以上20%以下の範囲にあることが挙げられる。上記高さ位置が高さH
3の5%以上であれば、吸気口3iの開口面積が小さ過ぎず、冷気の吸気量を適切に確保し易い。上記高さ位置が大きいほど、吸気口3iの開口面積を大きく確保できることから、上記高さ位置を高さH
3の6%以上、更に7%以上、8%以上、10%以上とすることができる。上記高さ位置が高さH
3の20%以下であれば、吸気口3iがケース3の下方に位置して、ケース3内に暖気の形成領域を確保し易い。上記高さ位置が小さいほど、暖気の形成領域を大きく確保できることから、上記高さ位置を高さH
3の19%以下、更に18%以下、17%以下、15%以下とすることができる。
【0075】
例えば、発熱体2の軸の高さ位置(ここでは高さH
2に相当)は、ヒーター装置1Aの設置面からケース3の高さH
3の30%以上70%以下の範囲にあることが挙げられる。上記高さ位置が高さH
3の30%以上であれば、発熱体2の位置が低過ぎず、吸気口3iの開口面積を確保し易いため、冷気の吸気量を適切に確保し易い。上記高さ位置が大きいほど、吸気口3iの開口面積を大きく確保できることから、上記高さ位置を高さH
3の32%以上、更に35%以上とすることができる。上記高さ位置が高さH
3の70%以下であれば、発熱体2が室内の設置面から離れ過ぎず、ケース3内に暖気の形成領域を確保し易い。上記高さ位置が小さいほど、暖気の形成領域を大きく確保できることから、上記高さ位置を高さH
3の65%以下、更に60%以下、55%以下とすることができる。発熱体2の軸の高さ位置が上述の範囲を満たし、かつ発熱体2の下端位置(ここではフィン部22の下端位置)が吸気口3iの上端縁の高さ位置よりも上方に位置するように、発熱体2の大きさを調整するとよい。
【0076】
吸気口3iにおける上述の高さ位置、及び発熱体2の軸における上述の高さ位置の双方が上述の範囲を満たすと、冷気を良好に吸い込めると共に、暖気を良好に形成でき、煙突効果を得易いと考えられ、コールドドラフトをより確実に防止できる。
【0077】
ケース3の高さH
3は、ケース3の幅Wよりも大きいと(H
3>W)、例えば、高さH
3を幅Wの1.5倍以上などとすると、縦長のケース3となり易く、煙突効果をより得易く好ましい。なお、この例の幅Wは、フィン部22の外径dよりも大きい。また、この例の高さH
3は、フィン部22の外径dの2倍以上5倍以下、更に4.5倍以下であり、ケース3が高過ぎず、持ち運びし易い上に、転倒し難い。
【0078】
発熱体2と壁部31,32の内面との間隔が小さいほど、縦長のケース3となり易く、上述のように煙突効果を得易い。上記間隔がある程度大きいと、発熱体2と壁部31,32間の熱絶縁性を高められ、壁部31,32が過度に加熱されることを回避し易い。この例では、発熱体2と壁部31,32間にフィン部22が介在するため、上記間隔を大きく確保し易い。また、この例では、断熱部24を備えて上述の熱絶縁性を高められるため、
図2に示すようにフィン部22と壁部31,32の内面との間隔を断熱部24の厚さ程度に狭くする。このように狭くても、ケース3内に導入された冷気は螺旋状に設けられたフィン部22に沿って流れて発熱体2に接触でき、加熱されてできた暖気は暖気排出口3o側に流れることができる。
【0079】
本例のように三角形の筒状のケース3とする場合には、一方の吸気口3iから発熱体2を経て一方の暖気排出口3oに至る空気流路の断面積がこの吸気口3iの開口面積に概ね同等程度となるように、ケース主要部の各部の大きさを調整すると、煙突効果をより得易いと考えられる。上記各部の大きさとして、吸気口3i及び暖気排出口3oの開口面積、導風部4(傾斜部332)の傾斜角、発熱体2の直径、フィン部22の外径d、発熱体2における設置面部330(又は室内の設置面)からの高さH
2、壁部31,32の傾斜角、ケース3の最大幅(底部33の幅W)、ケース3の高さH
3などが挙げられる。
【0080】
<端板及び端部カバー>
端板35は、上述のようにケース主要部がつくる筒体において長手方向の両端部を塞ぐ部材である。端板35及びケース主要部によって、吸気口3i及び暖気排出口3oを除いてケース3を実質的に閉空間とすることで、ヒーター装置1Aは、ケース3内への冷気の導入及び暖気の形成を効率よく行える。
【0081】
この例の端板35は、発熱体2をケース3の所定の位置に支持する支持体としても機能すると共に、ケース主要部を一体化する連結部材としても機能する。ケース主要部の各部材は、ボルト孔やねじ孔などの締結孔が設けられた取付片(図示せず)を備え、端板35は締結孔(図示せず)を備える。取付片の締結孔と端板35の締結孔とを重ね合せてボルトやねじなどの締結部材を締め付けることで、端板35とケース主要部とが一体化される。また、端板35は、発熱体2の固定孔が設けられた取付部(図示せず)を備え、固定孔に発熱体2の軸部の端部を挿入して適宜固定することで、一対の端板35,35間に棒状の発熱体2を支持する。端板35には、室内の設置面に配置される底面部(図示せず)が延設されており、端板35とこの底面部とは連続するL字状の部材をなす。端板35は、ケース主要部の横断面形状に対応した縦長の二等辺三角形状であり、底面部は長方形状である。
【0082】
この例のケース3は、端板35を収納する端部カバー36,37を備える。各端部カバー36,37の基本的構成は同様であり、端板35に相似な外形を有する外端板部と、外端板部の一部を囲む山型の周壁部とを備える。周壁部と、上述の端板35に連続する底面部とを合せることで、各端部カバー36,37は、縦長の二等辺三角形状の内部空間を形成する。内部空間は、転倒OFFスイッチ(
図4において端部カバー37内に二点鎖線で仮想的に示すもの参照、
図4では作動突部が突出した状態を示す)や各種のセンサ(
図4において符号6参照)、コード39と発熱体2との接続箇所や制御部5(
図4において端部カバー36参照)を収納することに利用できる。端部カバー36,37を省略して端板35のみとすることもできるが、端部カバー36,37を備えて、上述の接続箇所などを収納すると、美観に優れ、意匠性を高められる。なお、外端板部においてコード39の引出箇所には、貫通孔や切欠を設けるとよい。
【0083】
端板35と端部カバー36,37とは上述の締結部材などによって一体化することが挙げられる。端板35と端部カバー36,37とに互いに係合する係合部などを備えたり、端部カバー36,37にケース主要部の端縁近傍が差し込まれる凹部などを備えたりすると、ケース3が一体化された状態をより強固に維持し易い。
【0084】
<構成材料>
ケース3の構成材料は、代表的には、アルミニウムやその合金、鋼やステンレス鋼などの鉄系材料といった金属、樹脂といった非金属が挙げられる。金属製のケース3は、耐熱性や強度に優れる。樹脂製のケース3は、軽量にし易い。この例では、ケース主要部を金属製とし、端部カバー36,37を樹脂製とするが、適宜変更できる。
【0085】
その他、ケース3は、この例のように複数の分割片の組物とすると、発熱体2を収納した状態を容易に構築でき、製造性に優れる。分割数や分割位置などは適宜選択できる。分割片同士の接続には、上述の締結部材や、接着剤などの接合部材などが利用できる。
【0086】
また、ケース3は、
図2に示すように適宜な位置に、適宜な形状の補強材38を備えると、縦長で細長いものであっても、剛性を高められる。
図2では、両壁部31,32と天面部34とを連結する逆T字状の補強材38と、各壁部31,32と各導風部4,4(傾斜部332,332)とを連結する補強材38,38とを備える場合を例示する。
【0087】
(設置形態)
この例のケース3は、室内におけるヒーター装置1Aを設置する面(室内の設置面)にケース3の一部を直接接触させて設置する直置き型である(
図3)。この例では、端部カバー36,37の周壁部の下端面が室内の設置面側に向かって設置面部330よりも極僅かに突出する。そのため、端部カバー36,37の周壁部の下端面が室内の設置面に直接接触し、底部33の設置面部330は、上述の端部カバー36,37の微小な突出に伴い、室内の設置面に対して極僅かな隙間(0.5mm以下、更に0.3mm以下)を有して近接配置される。この極僅かな隙間によって、底部33をなす金属のエッジなどが室内の設置面と接触することを防止できる。このような極僅かな隙間であれば、窓部w側からの冷気がこの隙間を経て室内の中央部側に流れ出ることを実質的に防止できる。また、比較的広い面積を有する設置面部330と室内の設置面間に結露水が溜まるなどの不具合を回避し易い。
【0088】
(設置場所)
実施形態1のヒーター装置1Aは、上述のように窓際、具体的には
図3に示すように窓部wの下方である室内の床面100や窓直下の棚面(図示せず)、出窓の場合には出窓の天板面(図示せず)などに設置されて利用される。
【0089】
(使用状態)
使用者は、例えば窓部w側からの冷気が気になる場合などに、
図3に示すようにヒーター装置1Aを窓部wの下方に設置する。詳しくは、ケース3の一方の壁部、
図3では壁部32を窓部w側、他方の壁部31を窓部wとは反対の室内側に向けて、窓部wの長さ方向に沿ってヒーター装置1Aを設置する。ケース3の長手方向(発熱体2の軸方向に実質的に等しい)が窓部wの長さ方向に平行するようにヒーター装置1Aを設置することが好ましい。
図3では、説明の便宜上、窓部wを有する建物の側壁102と壁部32間に大きな隙間を有するが、ヒーター装置1Aは、窓部wにできるだけ近付けて設置することが好ましいと考えられる。
【0090】
使用者がヒーター装置1AのスイッチをONにすると、発熱体2が所定の温度に加熱され、ケース3内の空気が暖められる。この加熱によって生じた暖気は、密度が小さいため、ケース3の上方に設けられた暖気排出口3oから上方に排出される(
図3の破線矢印参照)。一方、窓部w側からの冷気は、密度が大きいため、室内の下方に向かって流れる(
図3の黒太線矢印参照)。ケース3内の下方は、暖気の生成及び排出によってケース3外よりも低圧であるため、壁部32の下方に位置する吸気口3iは、窓部w側からの冷気を吸込み易い。ケース3内に導入された冷気は、ケース3内で壁部32寄りの設置面部330(
図2)から導風部4(傾斜部332)に沿って上方に流れ、発熱体2に接触して加熱されて順次暖気になる。上述の導風部4を上った冷気は、上述のように上方に向かって流されて、壁部31寄りの傾斜部332に沿って下方に流れることが防止される(
図3では二点鎖線で仮想的に示す矢印に×印を付して示す)。このように煙突効果を利用して窓部w側からの冷気を自動的に吸い込んで暖気にすると共に、導風部4を利用して上記冷気がケース3内から室内側の開口部(
図3では壁部31の吸気口3i)を経て流出することを防止することで、使用者は快適に過ごすことができる。特に、この例のヒーター装置1Aは、上述のように両壁部31,32が三角形をなすように配置されるため、暖気排出口3oから排出される暖気の流速を高め易い。暖気排出口3oから勢いよく排出された暖気の一部は、
図3に示すように天井103に当たると、天井103から側壁102に沿って下方に流れ、窓部w側からの冷気が下方に流れることを促進することに寄与すると期待できる。この結果、下方に流れる冷気と上方に向かう暖気との対流が生じ易くなることからも、窓部w側からの冷気が室内側に流れ難く、使用者は快適に過ごすことができると期待される。室内の温度が高くなるなどして、使用者がヒーター装置1Aの使用をやめる場合にはスイッチをOFFにする。
【0091】
なお、使用者の手作業(スイッチのON/OFF)によって、発熱体2への通電状態を制御する他、自動的に制御可能な構成を備えることができる(例えば、後述の実施形態2、変形例(12)〜(15)参照)。転倒OFFスイッチを備える場合、ヒーター装置1Aが転倒した際に、発熱体2への通電回路を自動的にOFFにできる。詳しくは、ヒーター装置1Aが正常な設置状態であれば、転倒OFFスイッチは、作動突部が室内の設置面に押されて、スイッチ本体内に後退し、端部カバー37内に収納される。ヒーター装置1Aが転倒した場合には、上述の端板35に連続する底面部が室内の設置面から離れることで作動突部が端部カバー37から突出して、上記通電回路をOFFにする。
【0092】
(効果)
実施形態1のヒーター装置1Aは、壁部31,32と底部33とを備えるケース3に発熱体2をその全長に亘って収納し、ケース3における下方の特定箇所及び上方の特定箇所を開口して、いわゆる煙突効果を有する特定の形状とする。このようなヒーター装置1Aを利用すれば、窓部w側からの冷気を窓部w側に向けて開口する吸気口3iからケース3内に効率よく、かつ自動的に吸い込める。特に、ヒーター装置1Aは、導風部4を備えるため、吸気口3iから導入された冷気が発熱体2側に向かって上向きに流れ易く、発熱体2に加熱される。即ち、上記冷気が発熱体2に加熱されずに低温のままでケース3外に流出することも防止でき、ケース3内に導入された冷気を効率よく暖気にできる。この暖気によって、窓部wを暖めたり、窓部w側からの冷気を暖めたりできる。従って、実施形態1のヒーター装置1Aは、コールドドラフトを上述の従来のヒーター装置よりも確実に防止でき、室内の居住者が窓部w側からの冷気によって寒さを感じ難くできる効果が大きいと期待される。また、実施形態1のヒーター装置1Aによれば、暖気を利用して、結露防止や室内湿度の低下防止も期待できる。
【0093】
特に、この例のヒーター装置1Aでは、両壁部31,32に吸気口3i,3iを備えるものの、各壁部31,32における吸気口3i,3iの形成領域に重複して導風部4,4を備える。そのため、窓部w側の吸気口3iからケース3内に導入された冷気が、窓部wとは反対の室内側の吸気口3iを経てケース3外に流出することをより確実に防止できる。
【0094】
その他、この例のヒーター装置1Aは、以下の点から、窓部w側からの冷気が室内側に流出することをより低減できる。
(1)直置き型であり、ケース3の外底面と室内の設置面間の隙間から上記冷気が実質的に流れ出ない。
(2)暖気排出口3oが壁部31,32に設けられて、ヒーター装置1Aの設置状態では、窓部wに向かって開口するため、暖気によって窓部wを効率よく暖められる。この点から、結露もより確実に防止できる。
(3)吸気口3iの上端縁の高さ位置をヒーター装置1Aの設置面からケース3の高さH
3の5%以上20%以下とし、発熱体2の軸の高さ位置を上記設置面からケース3の高さH
3の30%以上70%以下とするため、煙突効果をより得易い。
【0095】
[実施形態2]
図4,
図5を参照して、実施形態2のヒーター装置1Bを説明する。
図4は、ケース3の壁部31の一部(左領域)を切り欠いて、ケース3内が見えるように示す模式正面図である。
【0096】
実施形態2のヒーター装置1Bの基本的構成は、実施形態1と同様であり、発熱体2と、吸気口3i及び暖気排出口3oが設けられた壁部31,32と、導風部4とを含むケース3とを備える。実施形態2のヒーター装置1Bは、更に、発熱体2への通電状態を窓部からの照度に応じて、自動的に制御可能な構成を備える。詳しくは、ヒーター装置1Bは照度センサ6と、照度センサ6からの情報に基づいて発熱体2の出力を調整する制御部5とを備える。以下、照度センサ6及び制御部5を詳細に説明し、実施形態1と同様の構成及び効果は詳細な説明を省略する。
【0097】
照度センサ6は、窓部からの日光に基づく照度を測定することに利用する。照度センサ6には市販品が利用できる。例えば、照度を検知する検知部と、検知部の出力をA/D変換してデジタル値とする変換部とが一体化されたものが利用し易い。上記検知部と上記変換部とをそれぞれ独立して備えることもできる。照度センサ6の出力をデジタル値として制御部5に入力可能な構成とすると、制御部5が演算などし易く、制御部5を構築し易い。照度センサ6は、例えば、ケース3の上方に配置すると、窓部からの日光に基づく照度を精度よく測定し易い。ケース3には、受光用の窓部を設ける。
図4では端部カバー37の上方に照度センサ6を備える場合を例示する。樹脂製の端部カバー37などに照度センサ6を備えると、受光用の窓部を形成し易い。
【0098】
制御部5は、
図5に示すように、例えば、各種の情報を入力する入力部(図示せず)と、照度センサ6からの入力情報や記憶情報などに基づき判定を行う照度判定部56と、設定値などの入力情報などを記憶する記憶部50と、判定結果に基づいて発熱体2に指令を出す通電命令部51とを備え、以下のように構成することが挙げられる。入力部は、照度センサ6からの照度情報を適宜な間隔で入力する。照度判定部56は、照度情報と記憶部50から呼び出した閾値(設定値)とを比較し、照度の大小を判定する。照度が閾値よりも小さい場合、窓部に当たる日光が十分ではなく、窓部及びその近傍が比較的低い温度であり、窓部側から室内の中央部側に向かって冷気が流れていると考えられる。この場合、コールドドラフトなどを防止するために発熱体2への通電や電力の変更が望まれる。そのため、通電命令部51は、発熱体2に通電開始指令や、通電電力を大きくする供給電力の変更指令を出す。一方、照度が閾値よりも大きい場合、窓部に当たる日光が多く(例えば晴れた日の昼間など)、窓部及びその近傍が暖められて、窓部側からの冷気が少ない又は上記冷気が流れていないと考えられる。照度が十分に大きければ、発熱体2への通電が不要であり、通電命令部51は停止指令を出す。照度がある程度大きければ、通電命令部51は、通電電力を小さくする供給電力の変更指令を出す。
【0099】
通電開始や供給電力の変更に関して、トライックアックやサイリスタなどの半導体スイッチを備えて、発熱体2への通電継続(ON)、通電停止(OFF)を切り替え可能な構成とする他、デューティ制御などを行い、発熱体2への供給電力を0%から100%の間で調整可能な構成とすることが挙げられる。供給電力が0%の場合がOFFであり、供給電力が0%超100%以下の場合がONである。この場合、複数の閾値を設けて記憶部50に記憶させておき、照度判定部56が取得した照度情報と各閾値とをそれぞれ比較し、比較結果に応じて発熱体2への供給電力を所定の値とする変更指令を通電命令部51が出すように、制御部5を構成することができる。
【0100】
具体的な制御内容としては、例えば、以下が挙げられる。なお、説明の便宜上、二つの閾値A,Bを用いるが、閾値をより多くして、制御内容を細分化することができる。
(α)供給電力を全出力に対してa%、b%、c%の出力に変更する場合(a>b>c)
照度が閾値Aよりも大きいとき、日照量が非常に多いため、供給電力をc%出力とし、供給電力を小さくする。
照度が閾値Bよりも大きいとき(但しB<A)、日照量がある程度多いため、供給電力をb%出力とし、供給電力をある程度小さくする。
照度が閾値B以下のとき、日照量が少ないため、供給電力をa%出力とし、供給電力を大きくする。
(β)発熱体2への通電回路をON/OFFする場合
照度が閾値Aよりも大きいとき、日照量が非常に多いため、通電回路をOFFにする。
照度が閾値Bよりも大きいとき(但しB<A)、日照量がある程度多いため、供給電力を一定時間ONにし、その後OFFにする。稼働時間(ON時間)は、日照量に応じて予め設定しておくとよい。
照度が閾値B以下のとき、日照量が少ないため、通電回路をONにする。
【0101】
実施形態2のヒーター装置1Bは、窓部からの照度に応じて自動的に発熱体2の通電制御を行う。そのため、ヒーター装置1Bを用いれば、コールドドラフトや結露を防止できながら、無駄な稼働時間を削減して、スイッチの切り忘れなどによる消費電力の増大を低減でき、省エネルギー化が期待できる。電気料金の増大の低減も期待できる。照度に応じて、発熱体2への供給電力を多段階に調整可能な構成とすれば、コールドドラフトや結露を防止できながら、消費電力の更なる低減が期待できる。また、ヒーター装置1Bは、自動制御であるため、使用者が複雑な操作を行う必要が無く、利用し易い。
【0102】
上述の(α),(β)のように、ケース3内における暖気排出口3o近傍の実際の温度や、吸気口3i近傍の実際の温度などとは無関係に発熱体2への供給電力を制御できるが、上記温度を加味して発熱体の出力制御を行うと、暖気の温度をより適切な温度に調整し易い。このようなヒーター装置1Bとして、暖気排出口3oから排出する暖気の温度及び吸気口3iから取り込む空気の温度の少なくとも一方を測定する温度センサ7を備え、制御部5は、照度センサ6からの情報と温度センサ7からの情報とに基づいて、発熱体2の出力を調整する構成とすることが挙げられる。
【0103】
温度センサ7は、コールドドラフト防止や結露防止に必要な暖気を形成可能な発熱体2の出力の判断指標となる温度、具体的には暖気の温度や冷気の温度を測定することに利用する。暖気の温度及び冷気の温度の少なくとも一方を測定できるようにケース3に温度センサ7を配置する。暖気の温度を測定する場合にはケース3において暖気排出口3oの近傍(
図2も参照)、冷気の温度を測定する場合にはケース3において吸気口3iの近傍に温度センサ7を配置することが挙げられる。この場合、暖気や冷気を精度よく測定し易く、より適切な制御を行える。
図4では、暖気排出口3oの近傍に温度センサ7を備える場合を例示する。
【0104】
制御部5は、例えば、温度センサ7からの入力情報や記憶情報などに基づき判定を行う温度判定部57を更に備える。そして、温度センサ7からの温度情報を随時入力し、温度判定部57は、温度情報と記憶部50から呼び出した閾値(設定値)とを比較し、温度に基づく判定結果と、上述の照度に基づく判定結果とを総合的に判断して、発熱体2への制御内容を決定するように制御部5を構成することが挙げられる。又は、上述の照度に基づく判定結果に則った制御中などに、温度センサ7からの温度情報に基づいて、供給電力を微調整するように制御部5を構成することが挙げられる。このような制御によって、消費電力の無駄をより低減しつつ、コールドドラフトや結露を防止できる。
【0105】
測定した照度と温度とを加味した具体的な制御内容としては、例えば、以下が挙げられる。ここでは、暖気の温度が所定の設定温度となるように供給電力を変更する場合を例示する。
(γ)暖気の設定温度Tをx℃、y℃、z℃に変更する場合(x>y>z)
照度が閾値Aよりも大きいとき、日照量が非常に多いため、設定温度Tをz℃に変更し、暖気がz℃となるように供給電力を小さくする。制御部5は、例えば、温度センサ7によって実際の暖気の温度と設定温度T=z℃との温度差を求め、温度判定部57は、温度差と閾値(設定値)とを比較し、その結果に基づいて供給電力の調整量を決定するように構成することが挙げられる。以下の二つの場合も同様にして制御部5を構成するとよい。
照度が閾値Bよりも大きいとき(但しB<A)、日照量がある程度多いため、設定温度Tをy℃に変更し、暖気がy℃となるように供給電力をある程度小さくする。
照度が閾値B以下のとき、日照量が少ないため、設定温度Tをx℃に変更し、暖気がx℃となるように供給電力を小さくする。
上述の(α)の制御のように、供給電力の出力を一定の値として制御する他、以下のように多段階に可変する制御を行うことができる。
(δ)暖気の設定温度Tをx℃、y℃、z℃に変更する場合(x>y>z)
照度が閾値Aよりも大きいとき、日照量が非常に多いため、設定温度Tをz℃に変更し、暖気がz℃となるように所定時間tは供給電力をc%出力とし、t時間後、供給電力をb%出力とする。制御部5は、例えば、上述の温度差の比較判定に用いる閾値を複数設定しておき、比較結果に応じて、所定時間tや供給電力の出力割合(ここではa%〜c%)として、適切な値を選択するように構成することが挙げられる。以下の二つの場合も同様にして制御部5を構成するとよい。
照度が閾値Bよりも大きいとき(但しB<A)、日照量がある程度多いため、設定温度Tをy℃に変更し、暖気がy℃となるように、所定時間tは供給電力をb%出力とし、t時間後、供給電力をa%出力とする。
照度が閾値B以下のとき、日照量が少ないため、設定温度Tをx℃に変更し、暖気x℃となるように、供給電力をa%出力とする。
【0106】
更に、所定の計測時間内の積算日照量を測定し、積算日照量が一定値以上である場合に発熱体2の出力を現在よりも小さくするように制御部5を構成することができる。ここで、窓部が日光によって暖められると、窓部近傍がある程度暖められた状態を維持でき、窓部側から室内の中央部側に向かう冷気が生じ難くなる。そのため、適宜な間隔で日照量を測定し、この測定結果を所定の計測時間分だけ積算し、この積算値がある程度大きい場合には、発熱体2の出力を小さくしたり、通電を停止したりすると、消費電力を更に低減し易い。例えば、制御部5は、所定の計測時間内の積算日照量を演算する日照量演算部(図示せず)と、演算した積算日照量と記憶部50から呼び出した閾値(設定値)とを比較する積算日照量判定部58とを備える。積算日照量が閾値よりも大きい場合、窓部が十分に暖められており、窓部側からの冷気が生じ難いと考えられため、通電命令部51は、発熱体2に停止命令や通電電力を小さくする供給電力の変更指令を出す。一方、積算日照量が閾値よりも小さい場合、通電命令部51は現状の通電状態を維持する指令などを出す。閾値によっては、所定時間通電後、停止命令を出すように制御部5を構成することもできる。具体的な制御内容は上述の(α)〜(δ)を参照できる。
【0107】
その他、照度センサ6として、アナログ出力を行うものを利用し、発熱体2への通電回路のON/OFFを直接行う構成とすることができる。この場合、照度センサ6が一定量の日照量を検出すると、通電回路をOFFにする制御を行う。照度センサ6は、例えばCdSセンサといった、光の強さに応じて電気抵抗が変化する抵抗器が挙げられる。通電回路のON/OFFには、機械的リレーやバイメタルスイッチなどを用いることが挙げられる。
【0108】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0109】
例えば、実施形態1,2などに対して、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
(変形例)
(1)発熱体2を、複数の帯板状のものを離間して並列配置させた集合体とする。
この場合、例えば、一方の壁部31にのみ吸気口3iを備え、傾斜部332の上端部を他方の壁部32の内面に近接又は接するように設けることが挙げられる。吸気口3iから導入された冷気は、導風部4をなす傾斜部332に沿って流れると、他方の壁部32の内面に接触することで上向きに流れ、隣り合う帯板状の発熱体間に設けられる下方の開口部に進入することで加熱される。この導風部4は上記下方の開口部を覆うように設けられるため、上記冷気は、帯板状の発熱体間を上向きに流れ易く、発熱体によって加熱されずにケース3外に流出することを防止できる。
【0110】
(2)天面部34に貫通孔を備える。
この貫通孔を室内の天井に向かって上向きに開口する暖気排出口3oとして利用することで、窓部wの高さが大きい場合などでも、冷気と暖気とが循環するような空気の流れを形成し易いと考えられる。
【0111】
(3)天面部を有しておらず、両壁部31,32の上端縁が一つの暖気排出口3oの周縁をなす。
この場合、暖気排出口3oは室内の天井に向かって上向きに開口し、比較的大きな開口面積を有し易い。そのため、窓部wの高さが大きい場合などでも、冷気と暖気とが循環するような空気の流れを形成し易いと考えられる。暖気排出口3oに格子板などを配置すると、埃や異物がケース3内に混入することを防止し易い。なお、この形態では、両壁部31,32の上端縁の高さ位置を揃えることで、線対称な外観とすることができる。
【0112】
(4)一方の壁部31にのみ吸気口3i及び暖気排出口3oを備え、他方の壁部32には吸気口3i及び暖気排出口3oを備えておらず、壁部32が底部33と天面部34とに連続して設けられる。
この場合、導風部4に加えて、壁部32の下方領域がケース外への冷気の流出防止部材として機能し、冷気がケース3内を経て、ケース3外に流出することをより効果的に防止できる。この形態は、中心線Cを軸として非線対称な外観を有する。
【0113】
(5)両壁部31,32にそれぞれ、吸気口3i及び暖気排出口3oを備える場合に、吸気口3i及び暖気排出口3oの少なくとも一方の高さ位置が壁部31,32で異なる。
この形態は、中心線Cを軸として非線対称な外観を有する。
【0114】
(6)底部33が設置面部330を実質的に有しておらず、傾斜部332の下端縁が吸気口3iの下端縁をなす。即ち、底部33が実質的に傾斜部332から形成されて、側面視(又は横断面視)山型である。
この場合、底部33は、室内の設置面との接触面積をより小さくし易く、室内の設置面との間に三角柱状の隙間を十分に設けられるため、底部33の外面に結露水が付着するなどの不具合を回避し易い。この形態は、底部33全体が導風部4をなす。
【0115】
(7)壁部31,32が平坦な平板材からなり、一方の壁部31が中心線Cに対して交差するように傾斜して配置され、他方の壁部32が中心線Cに対して平行するように配置される。即ち、ケース3は、横断面形状が直角台形状である。
この場合、傾斜して配置される一方の壁部31にのみ吸気口3i及び暖気排出口3oを備えることが挙げられる。この形態は、中心線Cを軸として非線対称な外観を有する。
【0116】
(8)吸気口3i及び暖気排出口3oの少なくとも一方を連続する一つの貫通孔とせず、複数の小さな貫通孔が離間して並べられた小孔群とする。
この場合、壁部31,32の下端縁領域や上端縁領域を櫛歯状とすると共に、壁部31,32の下端縁、上端縁を底部33、天面部34に連続させたり、壁部31,32の下端縁領域や上端縁領域に複数の貫通孔を備えたりすることが挙げられる。複数の小孔群とすると、吸気口3iや暖気排出口3oからケース3内に埃や異物が混入することを防止し易い。また、ケース3の剛性をある程度高め易い。
【0117】
(9)壁部31,32が平坦な平板材からなり、平行に配置される。即ち、ケース3は、直方体状である。
この場合、ケース3の形状が単純でケース3の製造性に優れる上に、安定した設置状態を維持し易い。この形態は、壁部31,32の下端縁から上端縁に向かって、両壁部31,32の間隔が実質的に均一であるため、縦長の直方体状となるように壁部31,32の高さなどを調整すると、煙突効果を高め易い。
【0118】
(10)ケース3の底部33から室内の設置面に向かって突出する脚部(図示せず)を備える。
この場合、脚部の突出高さに応じて、底部33の位置を室内の設置面よりも高くでき、底部33の外面に結露水が付着したり、底部33の外面と室内の設置面間に埃が溜まったりするなどの不具合を回避し易い。脚部の高さは3mm以上が挙げられる。但し、脚部と室内の設置面間の隙間を利用して、窓部w側からの冷気が室内の中央部側に向かって流れ出る可能性があることから、脚部の高さは15mm以下、更に10mm以下、8mm以下、5mm以下が好ましい。脚部をねじ式などとして、高さ調整可能な構成とすると、必要に応じて直置き型に近付けられる。なお、ヒーター装置1Aなどは、上述のように導風部4によって、室内の設置面との間に隙間を設けられるため、脚部が無くても、上述の不具合を回避し易い。
【0119】
(11)端部カバー36,37の少なくとも一方に、ケース3の長手方向に延びる延長壁部(図示せず)を備える。
延長壁部は、室内の設置面に対して立設するようにケース3に取り付けられて、窓部w側からの冷気が室内の中央部側に流れることを阻止する。延長壁部には平板材などが利用できる。延長壁部は、蝶番などによって端部カバー36,37などに取り付けると、不使用時に折り畳めて、ケース3を持ち運びし易い上に、開き角度を容易に変更できる。又は、延長壁部を着脱可能な構成とすることができる。
【0120】
(12)ケース3内に設けられる温度センサ7と、温度センサ7からの温度情報に基づいて、発熱体2への通電状態を制御する制御部とを備える。
温度センサ7は、上述のようにケース3において、暖気排出口3oの近傍や吸気口3iの近傍に備えるとよい。制御部は、例えば、入力部と、温度判定部57と、記憶部50と、通電命令部51とを備えて、以下のように構成することが挙げられる(実施形態2も参照)。温度センサ7からの温度情報を随時入力する。温度判定部57は、温度情報と記憶部50から呼び出した閾値(設定値)とを比較する。暖気排出口3oの近傍や吸気口3iの近傍の温度が閾値よりも小さい場合、通電命令部51は、発熱体2に通電開始指令や通電電力を大きくする供給電力の変更指令を出す。一方、上記温度が閾値よりも大きい場合、通電命令部51は停止指令や通電電力を小さくする供給電力の変更指令を出す。具体的な制御内容は上述の(α)〜(δ)を参照できる。
【0121】
(13)ケース3内に設けられる温度センサ7と、室内における窓部wから離れた位置に設けられた別の温度センサからの温度情報を受信可能な受信部と、温度センサ7からの温度情報と受信した温度情報とに基づいて、発熱体2への通電状態を制御する制御部とを備える。
この場合、温度センサ7は冷気の温度を測定できるように、吸気口3iの近傍に配置されることが好ましい。
温度センサ7とは別に室内側に設けられる温度センサは、例えば、測定した温度情報を制御部に送信可能な送信部を備える装置に内蔵されるものなどが挙げられる。このような装置として、室内空調機や電気暖房器などであって、電気製品の電気使用状態を管理するシステム、例えばHEMS(Home Energy Management System)などに制御されているものなどが挙げられる。
制御部は、入力部と、上述の二つの温度情報に基づいて温度差を演算する演算部と、演算結果に基づいて判定を行う判定部と、記憶部50と、通電命令部51とを備えて、以下のように構成することが挙げられる(実施形態2も参照)。入力部は上述の二つの温度情報を随時入力する。温度差演算部は、温度情報から吸気口3iの近傍温度(いわば窓際の温度に近いと考えられる温度)と室内側の温度との温度差を演算する。判定部は、この温度差と記憶部50から呼び出した閾値(設定値)とを比較する。上記温度差が閾値よりも大きい場合、代表的には窓際の温度が低く、窓部w側から室内の中央部側に向かって冷気が流れていると考えられる。そのため、通電命令部51は、発熱体2に通電開始指令や通電電力を大きくする供給電力の変更指令を出す。一方、上記温度差が閾値よりも小さい場合、窓部側からの冷気が少ない又は窓部側からの冷気が流れていないと考えられる。そのため、通電命令部51は停止指令や通電電力を小さくする供給電力の変更指令を出す。具体的な制御内容は上述の(α)〜(δ)を参照できる。
【0122】
(14)上述のHEMSなどの管理システムと通信を行う通信部と、通信部が受信した管理システムからの命令に基づいて、発熱体2への通電状態を制御する制御部とを備える。
通信部は、ケース3の適宜な位置(例えば、端部カバー36,37内など)に備えることが挙げられる。
制御部は、入力部と、判定部と、記憶部50と、通電命令部51とを備えて、以下のように構成することが挙げられる(実施形態2も参照)。通信部は、管理システムからの情報を随時取得する。判定部は、上記情報に基づいて制御命令の有無を判定する。通電命令部51は、判定結果に基づいて、発熱体2への通電開始指令や供給電力の変更指令、又は停止指令を出す。
【0123】
(15)実施形態1で説明したスイッチと、実施形態2で説明した制御部5及び変形例(12)〜(14)で説明した制御部から選択される二つ以上の制御部とを備え、手動による通電制御モード、複数の自動制御モードから使用者が選択可能な構成とする。
【0124】
[付記]
上述の実施形態1,2、変形例の他、コールドドラフトを防止できるヒーター装置として、例えば、以下の構成とすることができる。
[付記1]
通電により発熱する発熱体と、
前記発熱体をその全長に亘って収納し、前記発熱体の下端よりも下方位置に設けられる吸気口と、前記発熱体の上端よりも上方位置に設けられる暖気排出口とを有するケースと、
照度センサと、
前記照度センサからの情報に基づいて前記発熱体の出力を調整する制御部とを備えるヒーター装置。
[付記2]
前記暖気排出口から排出する暖気の温度及び前記吸気口から取り込む空気の温度の少なくとも一方を測定する温度センサを備え、
前記制御部は、前記照度センサからの情報と、前記温度センサからの情報とに基づいて、前記発熱体の出力を調整する[付記1]に記載のヒーター装置。
[付記3]
前記制御部は、所定の計測時間内の積算日照量を測定し、前記積算日照量が一定値以上である場合に前記発熱体の出力を現在よりも小さくするように制御する[付記1]又は[付記2]に記載のヒーター装置。
発熱体やケースの具体的な構成などは上述の実施形態1を参照するとよい。照度センサや適宜温度センサを備えた具体的な制御やその効果などは、上述の実施形態2を参照するとよい。
【解決手段】通電により発熱する発熱体と、前記発熱体をその全長に亘って収納するケースとを備え、前記ケースは、前記発熱体をその全長に亘って挟むように配置される一対の壁部と、前記発熱体の下方をその全長に亘って覆う底部と、前記一対の壁部のうち、少なくとも一方の壁部において、前記発熱体の下端よりも下方位置に設けられる吸気口と、前記ケースにおける前記発熱体の上端よりも上方位置に設けられる暖気排出口と、前記ケース内に設けられて、前記吸気口から前記ケース内に取り込まれた空気を前記発熱体側に導く導風部とを備えるヒーター装置。