特許第6364694号(P6364694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6364694
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】運搬船
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20180723BHJP
   B63J 2/14 20060101ALI20180723BHJP
   F17C 3/04 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B63B25/16 Z
   B63B25/16 101Z
   B63B25/16 F
   B63J2/14 A
   F17C3/04 E
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-142201(P2014-142201)
(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公開番号】特開2016-16806(P2016-16806A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】石田 聡成
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏一
(72)【発明者】
【氏名】廣田 一博
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−29087(JP,A)
【文献】 米国特許第3903824(US,A)
【文献】 特開平3−287485(JP,A)
【文献】 実開昭57−80393(JP,U)
【文献】 特開昭58−81295(JP,A)
【文献】 実開昭48−56792(JP,U)
【文献】 特表2014−514212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
B63J 2/14
F17C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯蔵するタンクと、
前記タンクを収容するタンク収容部を有した船体と、
前記タンクの上部の周囲を囲うように前記タンク収容部のタンクカバーに前記タンク収容部の内周面に設けられた支持部材を介して支持され、前記タンクカバーから離間して配置された断熱材と、
を備える運搬船。
【請求項2】
前記タンクは、タンク本体と、前記タンク本体の外周面を覆うように設けられた断熱パネルと、を備える請求項1に記載の運搬船。
【請求項3】
前記タンクと前記断熱材との間の空間と、前記断熱材と前記タンク収容部との間の空間との間に生じる対流を抑制する対流抑制部材を備える請求項1又は2に記載の運搬船。
【請求項4】
液化ガスを貯蔵するタンクと、
前記タンクを収容するタンク収容部を有した船体と、
前記タンクの上部の周囲を囲うように前記タンク収容部のタンクカバーの内周面に支持され、前記タンクから離間して配置された断熱材と、
を備え
前記タンクは、タンク本体と、前記タンク本体の外周面を覆うように設けられた断熱パネルと、を備える運搬船。
【請求項5】
前記断熱材は、前記タンク収容部の内周面に貼り付けられている請求項に記載の運搬船。
【請求項6】
前記断熱材と前記タンクとの間の空間に冷気を供給する冷気供給手段を備える請求項に記載の運搬船。
【請求項7】
前記断熱材と前記タンクの外周面との間に、前記断熱材と前記タンクの上部の外周面との間の空間と、前記空間よりも下方に位置する前記タンクの外周面と前記タンク収容部との間のホールド空間と、の間に生じる対流を防止する対流防止部材を備える請求項又はに記載の運搬船。
【請求項8】
前記タンクと前記タンク収容部との間の空間を上下に仕切る仕切り部材を備える請求項1からの何れか一項に記載の運搬船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液化ガスを運搬する運搬船に関する。
【背景技術】
【0002】
LNG、LPG等の液化ガスを運搬する運搬船は、液化ガスを収容するタンクを備えている。タンク内に収容された液化ガスは、輸送中に外部からの自然入熱などによって、その一部がガス化する。タンク内の圧力は、このガス化によって上昇してしまう。そのため、気化したガス(蒸発ガス)は、タンクから抜かれ、船舶の燃料などとして用いられる。
【0003】
しかしながら、近年、船舶の動力源における燃費改善が著しい。そのため、発生したボイルオフガスを燃料として使いきれなくなることが想定されている。燃料として使いきれない蒸発ガスは、余剰ガスとして焼却するなどの必要が生じてしまう。そのため、運搬船においては、できる限りタンクへの入熱を抑えて蒸発ガスの発生量を低減することが望まれている。
【0004】
特許文献1には、球形タンク内に液化ガスを内蔵する運搬船において、球形タンクの外側に断熱材を固定することで、断熱材により球形タンクを覆う構成が開示されている。
【0005】
特許文献2には、球形のタンクの底部のタンク支持構造部からの入熱を抑えるため、船体二重床上に設けられてタンクの底部を支持するタンクサポートに断熱ライナー材を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−164493号公報
【特許文献2】特許第3108067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、球形タンクの外側を断熱材により覆う構成では、外部からタンクへの入熱をさらに抑えようとした場合、断熱材の厚さを増大させる必要がある。しかし、断熱材の厚さを増大させると、断熱材の重量が増加する。その結果、断熱材を球形タンクに固定するスタッドボルト等の支持部材への負担が大きくなり、断熱材の固定が困難になることが想定される。
また、断熱材や断熱ライナー材を構成する断熱材料が厚くなれば、タンクの周囲に配置する機器類等の設置自由度が低下してしまう。
【0008】
この発明は、外部からタンクへの入熱を抑え、積み荷である液化ガスの量の蒸発による減少を抑えることができる運搬船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第一態様によれば、運搬船は、液化ガスを貯蔵するタンクと、前記タンクを収容するタンク収容部を有した船体と、前記タンクの上部の周囲を囲うように前記タンク収容部のタンクカバー前記タンク収容部の内周面に設けられた支持部材を介して支持され、前記タンクカバーから離間して配置された断熱材と、を備える。
このように構成することで、断熱材を厚くして断熱材の重量が増加しても、断熱材をタンク収容部によって確実に支持することができる。
【0010】
この発明の第二態様によれば、運搬船は、第一態様の前記タンクが、タンク本体と、前記タンク本体の外周面を覆うように設けられた断熱パネルと、を備えていてもよい。
このように構成することで、断熱パネルと断熱材との2つの断熱構造により外部からタンクへの入熱を抑制できるため、断熱パネルの厚さ寸法を小さくしつつ、十分な断熱性能を得ることができる。
【0012】
この発明の第三態様によれば、運搬船は、第一又は第二態様において、前記タンクと前記断熱材との間の空間に生じる対流を抑制する対流抑制部材を備えていてもよい。
このように構成することで、前記タンクと前記断熱材との間の空間が対流により温度上昇することを抑制できる。したがって、タンクへの外部からの入熱をより一層低減することができる。
この発明の第四態様によれば、運搬船は、液化ガスを貯蔵するタンクと、前記タンクを収容するタンク収容部を有した船体と、前記タンクの上部の周囲を囲うように前記タンク収容部のタンクカバーの内周面に支持され、前記タンクから離間して配置された断熱材と、を備える。
さらに、第四態様に係るタンクは、タンク本体と、前記タンク本体の外周面を覆うように設けられた断熱パネルと、を備え
【0013】
この発明の第態様によれば、運搬船は、第四態様の断熱材が、前記タンク収容部の内周面に貼り付けられていてもよい。
このように構成することで、断熱材の荷重をタンク収容部で直接支持することができる。そのため、タンク収容部の内部空間への外部からの入熱を抑制することができる。
【0014】
この発明の第態様によれば、運搬船は、第態様において、前記断熱材と前記タンクとの間の空間に冷気を供給する冷気供給手段を備えていてもよい。
このように構成することで、運搬船で想定される最低レベルの外気温の状態で、断熱材とタンクとの間の空間が、適切な温度に維持されるよう、断熱材の厚さ、材質を設定することができる。その結果、断熱材とタンクとの間の空間が冷えすぎることを防止できる。
また、断熱材を最小限の断熱性で形成することが可能となる。一方で、外気温が、想定される最低レベルを上回ったときには、冷気供給手段で冷気を供給して、断熱材とタンクとの間の空間を適切な温度に維持することができる。そのため、断熱材とタンクとの間の空間で用いる構造部材の使用温度を適切に設定することができ、その結果、断熱材とタンクとの間の空間で用いる構造部材の選択自由度を向上できる。
【0015】
この発明の第態様によれば、運搬船は、第又は第態様において、前記断熱材と前記タンクの外周面との間に、前記断熱材と前記タンクの上部の外周面との間の空間と、前記空間よりも下方に位置する前記タンクの外周面と前記タンク収容部との間のホールド空間と、の間に生じる対流を防止する対流防止部材を備えていてもよい。
このようにすることで、断熱材とタンクの外周面との間の空間が対流により温度上昇することを抑制できる。したがって、タンクへの外部からの入熱をより一層低減することができる。
【0016】
この発明の第態様によれば、運搬船は、第一から第態様の何れか一つの態様において、前記タンクと前記タンク収容部との間の空間を上下に仕切る仕切り部材を備えていてもよい。
このように構成することで、断熱材とタンクとの間の空間において、対流によって冷気が断熱材とタンクとの間の空間の下部に集中することを抑えることができる。これによって、断熱材とタンクとの間の空間を、適切な温度に維持することができる。したがって、断熱材とタンクとの間の空間に存在する構造部材が所定の強度を維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る運搬船によれば、外部からタンクへの入熱を抑え、積み荷である液化ガスの量の蒸発による減少を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施形態に係る運搬船の全体構成を示す模式図である。
図2】上記運搬船の第一実施形態におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図3】上記運搬船の第一実施形態におけるタンクに設けられた断熱パネルを示す断面図である。
図4】上記運搬船の第一実施形態の変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図5】上記運搬船の第二実施形態におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図6】上記運搬船の第二実施形態の第一変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図7】上記運搬船の第二実施形態の第二変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図8】上記運搬船の第二実施形態の第三変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図9】上記運搬船の第二実施形態の第四変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図10】上記運搬船のタンク本体の他の形状例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態に係る運搬船を図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この発明の実施形態に係る運搬船の全体構成を示す模式図である。図2は、上記運搬船の第一実施形態におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
この実施形態の運搬船10は、液化天然ガス(LNG)、液化プロパンガス(LPG)等の液化ガスを運搬する。
図1図2に示すように、この運搬船10は、船体11と、タンク12と、断熱体20とを、少なくとも備えている。
【0020】
船体11は、タンク12を収容するいわゆるホールド空間を形成するタンク収容部14を備えている。タンク収容部14は、収容凹部15と、タンクカバー13とを備えている。
収容凹部15は、上甲板11aに対して下方の船底部11bに向けて凹み、上方に開口している。
【0021】
図2に示すように、タンクカバー13は、主にタンク12の上部を覆っている。このタンクカバー13は、船体11の上甲板11a上に設けられている。またタンクカバー13は、上方に向かって凸状に形成されている。このタンクカバー13は、立ち上がり部13a,13aと、天板部13bと、を備えている。
立ち上がり部13a,13aは、収容凹部15を挟んで船体11の幅方向両側に位置する上甲板11a,11aからそれぞれ上方に立ち上がるよう設けられている。
天板部13bは、立ち上がり部13a,13a同士を繋ぐように形成されている。
また、タンクカバー13は、船体11の船首11c側と船尾11d側の各端部において、その高さが漸次小さくなるよう形成されている。
このようなタンクカバー13は、多角形の平面部材13pを複数枚組み合わせることによって構成されている。平面部材13pを用いることで、断熱材41を容易に設けることができる。また、平面部材13pは、図示しない補強部材により補強し、断熱材41を支持する強度が確保されていることが好ましい。
【0022】
タンク12は、その内部に、運搬対象である液化ガスを収容する。タンク12は、タンク本体18と、複数の断熱パネル19と、を備えている。
タンク本体18は、例えばアルミニウム合金製で、球形もしくはそれに準じた形状をなしている。例えば、タンク本体18は、上下方向の中間部を、一定の径を有した筒状とし、その上下をそれぞれ半球状とし、鉛直断面形状が上下方向に長い長円形状としてもよい。
【0023】
図3は、タンク本体18に設けられた断熱パネル19を示す断面図である。
図3に示すように、複数の断熱パネル19は、タンク本体18の外周面18fとの間に僅かな隙間を設けてもよい。これら断熱パネル19は、スタッドボルト100等によりタンク本体18に固定されている。これら断熱パネル19は、タンク本体18の断熱を行う。断熱パネル19は、例えば矩形の平板状に形成されている。断熱パネル19は、例えば、断熱材料19aと、基材19bとを積層して形成されるものでもよい。断熱材料19aは、フェノールレジンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、グラスウール等からなり、断熱材料19a自身をそれらの積層としてもよい。基材19bは、必要に応じて断熱材料19aを補強するアルミニウム合金等の金属、樹脂等からなる。
【0024】
図2に示すように、これら断熱パネル19は、タンク本体18の外周面18fを外側から覆うように、タンク本体18の経線方向、および、緯線方向に隙間なく並べて配置されて球状を呈している。隣り合う断熱パネル19、19同士は、テープや目地材により結合されて液密構造となっている。
【0025】
タンク12は、タンク収容部14の内部において、タンクカバー13の内周面13f、収容凹部15の内周面15fとの間に、間隙をあけて設けられている。タンク収容部14には、複数のタンク12が、船体11の船首11c側から船尾11d側に向けて並べて配置されている。各タンク12は、その上部12aが、船体11の上甲板11aよりも上方に突出している。各タンク12は、収容凹部15に設けられたファウンデーションデッキ部16上に、円筒状のスカート17を介して支持されている。
【0026】
断熱体20は、タンク12の周囲を囲うようにタンク収容部14、より具体的にはタンクカバー13に支持されている。この断熱体20は、支持部材21と、断熱体本体(断熱材)22と、を備えている。支持部材21は、その基部が、タンクカバー13の天板部13bの内周面13fに、溶接、ボルト締結等によって固定されている。一方で、支持部材21の端部は、断熱体本体22に連結されている。
【0027】
断熱体本体22は、フェノールレジンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、グラスウール等の断熱材料22aを備える。ここで、断熱体本体22は、アルミニウム合金等の金属、樹脂等からなるパネル状の基材22bと、断熱材料22aとを積層することで、断熱材料22aを補強してもよい。また、断熱材料22aは、フェノールレジンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム等の硬質材と、グラスウール等の軟質材料とを積層して設けてもよい。この場合、硬質材、軟質材は、相対的な硬度を示すものである。断熱体本体22は、基材22bに硬質材の第一面を貼り付け、硬質材の第二面に軟質材を積層してもよい。
【0028】
断熱体本体22は、タンク12の上部12aを覆うように、タンク12の外周面12fに沿って湾曲形成されている。この湾曲形成された断熱体本体22の内周面側には、外周面12fとの間に空隙が設けられている。ここで、断熱体本体22は、断熱材料22aがタンク12側に軟質材を積層して備えている場合に、タンク12の外周面12fに密着させてもよい。軟質材は、断熱性能を向上させつつ、タンク12が膨張、収縮した際に硬質材に負荷が掛かることを抑制できる程度の硬度となっている。
【0029】
断熱体本体22の下端部22eの近傍には、防熱材(対流抑制部材)25が設けられている。防熱材25は、フェノールレジンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、グラスウール等の断熱材料を用いることができる。防熱材25は、断熱体本体22の下端部22eにおいて、断熱体本体22とタンク12の外周面12fとの間の空間を下方から塞ぐよう設けられている。
【0030】
タンク12の下部12bと、収容凹部15との間には、断熱体30が設けられている。断熱体30は、断熱体20と同様、フェノールレジンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、グラスウール等の断熱材料から形成することができる。
【0031】
したがって、上述した第一実施形態の運搬船10によれば、タンク12の周囲を囲うようにタンクカバー13の内周面に支持された断熱体本体22を備えていることで、断熱体本体22を厚くして断熱体本体22の重量が増加しても、断熱体本体22をタンクカバー13によって確実に支持することができる。
【0032】
また、タンクカバー13の内周面13fに設けられた支持部材21を介して断熱体本体22が支持されていることで、断熱体本体22を、支持部材21を介してタンクカバー13で吊り下げて支持することができる。これにより、断熱体本体22をタンク12の外周面12fに近い位置で外側から覆うように設けることができるため、高い断熱性を確保することができる。
【0033】
また、タンク12の外周面12fと断熱体本体22の下端部22eとの間を塞ぐ防熱材25を備えることで、タンク12の外周面12fと断熱体本体22との間の空間が、対流により温度上昇することを抑制できる。その結果、断熱体本体22の断熱効果を向上することができる。
【0034】
さらに、外部からタンク12への入熱を抑え、積み荷である液化ガスの量の減少を抑えて、液化ガスの運搬に掛かる運搬船10の輸送効率が向上する。
【0035】
(第一実施形態の変形例)
図4は、上記運搬船の第一実施形態の変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
上記第一実施形態では、断熱体本体22の下端部22eの近傍に、防熱材25を設けるようにした。しかし、図4に示す変形例のように、フィン(対流抑制部材)27を設けてもよい。フィン27は、金属材料、樹脂材料等により形成することができる。フィン27は、タンクカバー13の立ち上がり部13aやタンク収容部14内のタンク間隔壁などに固定され、断熱体本体22の下端部22eにおいて、断熱体本体22を構成する基材22bとタンク12の外周面12fとの間の空間を下方から遮るよう設けられている。
【0036】
このようなフィン27を設けることでも、タンク12の外周面12fと断熱体本体22の下端部22eとの間から対流によって空気が入り込むことを抑えることができる。その結果、タンクへの入熱をより一層低減して、積み荷である液化ガスの量の減少を抑えることができる。
【0037】
(第二実施形態)
次に、この発明にかかる運搬船の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と断熱体の構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
図5は、上記運搬船の第二実施形態におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図5に示すように、この実施形態における運搬船10は、タンクカバー13とタンク12との間隙に、タンクカバー13側に支持された断熱体(断熱材)40を備えている。
【0038】
断熱体40は、タンクカバー13の内周面13fに沿って設けられた複数枚の断熱パネル41を備えている。
断熱パネル41は、フェノールレジンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、グラスウール等の断熱材料を用いることができる。断熱材料は、フェノールレジンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム等の硬質材と、グラスウール等の軟質材料とを積層して設けてもよい。この場合、硬質材、軟質材は、相対的な硬度を示すものである。
【0039】
このような断熱パネル41は、タンク収容部14を構成するタンクカバー13の立ち上がり部13a,13a、天板部13bの内周面13fに、貼り付けられている。
【0040】
これにより、複数枚の断熱パネル41からなる断熱体40と、タンク12の外周面12fとの間に、間隙S2が形成されている。
【0041】
したがって、上述した第二実施形態の運搬船によれば、タンク12の周囲を囲うようにタンクカバー13の内周面13fに支持された断熱パネル41を備えることで、断熱パネル41と、タンク本体18の外周面18fを外側から覆う断熱パネル19との二つの断熱構造を形成することができる。さらに、間隙S2が確保されているので、タンク本体18の外周面18fを外側から覆う断熱パネル19の厚さ寸法を小さくしつつ、断熱体40の厚さを最大限に厚くすることもできる。その結果、上記第一実施形態と同様、外部からタンク12への入熱を抑え、積み荷である液化ガスの量の減少を抑えることができる。
【0042】
(第二実施形態の第一変形例)
図6は、上記運搬船の第二実施形態の第一変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
この図6に示すように、この変形例における運搬船10は、収容凹部15とタンクカバー13とに囲まれたホールド空間Shに、冷気供給手段55により、外部からホールド空間Sh内に冷気を注入する。
【0043】
第二実施形態において、複数枚の断熱パネル41からなる断熱体40と、タンク12の外周面12fとの間には、間隙S2が形成されている。タンク収容部14と、タンクカバー13とに囲まれたホールド空間Sh、すなわち間隙S2における雰囲気温度は、外気温の影響を受ける。外気温が例えば+45℃程度の高温である場合に、収容凹部15とタンクカバー13とに囲まれたホールド空間Sh内は、−20℃程度の冷温に保つことが必要である。その一方で、外気温度が、例えば−18℃程度と低温である場合、温度勾配によりホールド空間Sh内が−60℃程度の極低温になると、ホールド空間Sh内のタンク12をはじめとする金属部材等の材料強度が確保できないことがある。
【0044】
そこで、例えば、外気温度が−18℃程度と低温である場合に、ホールド空間Sh内が−40℃〜−25℃程度の雰囲気温度となるよう、断熱パネル41の材質、厚さ等を設定する。一方で、外気温度が上昇した場合には、冷気供給手段55により、外部からホールド空間Sh内に冷気を注入する。この冷気は、冷気供給手段55に備えた熱交換器(図示無し)で熱交換を行うことによって生成することができる。この熱交換器の冷熱源としては、燃料としてボイラ等に供給される極低温の蒸発ガスを利用することができる。
これにより、外気温が上昇した場合に、外部から供給する冷気によってホールド空間Sh内を冷却することができる。
【0045】
このような構成によれば、運搬船10で想定される最低レベルの外気温の状態で、断熱パネル41とタンク12の外周面12fとの間のホールド空間Shが、適切な温度に維持されるよう断熱パネル41の厚さ、材質を設定することができる。これにより、外気温が低温である場合に、断熱材とタンクとの間の空間が冷えすぎることを防止できる。また、断熱パネル41の厚さを最小限に抑えることができる。
さらに、外気温が、想定される最低レベルを上回ったときには、冷気供給手段55で断熱パネル41とタンク12の外周面12fとの間の空間に冷気を供給することによって、ホールド空間Shを適切な温度に維持することができる。
その結果、断熱パネル41とタンク12の外周面12fとの間の空間に存在するタンク12をはじめとする金属部材等が過度に冷却されるのを防ぎ、所定の強度を維持することができる。そのため、断熱パネル41とタンク12との間の空間で用いる構造部材の使用温度を適切に設定することができる。したがって、断熱パネル41とタンク12との間の空間で用いる構造部材の選択自由度を向上できる。
【0046】
(第二変形例)
図7は、上記運搬船の第二実施形態の第二変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図7に示すように、断熱体40とタンク12の外周面12fとの間に、断熱体40とタンク12の外周面12fとの間の空間に生じる対流を防止するフィン(対流防止部材)45を備えていてもよい。フィン45は、金属材料、樹脂材料等により形成することができる。フィン45は、タンクカバー13の立ち上がり部13aに固定され、断熱体40とタンク12の外周面12fとの間の空間を塞ぐよう設けられている。
【0047】
このようにすることで、断熱体40とタンク12の外周面12fとの間の空間が対流により温度上昇することを抑制できる。したがって、タンク12への外部からの入熱をより一層低減することができる。その結果、タンク12への入熱をより一層低減して、積み荷である液化ガスの量の減少を抑えることができる。
【0048】
(第三変形例)
図8は、上記運搬船の第二実施形態の第三変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
図8に示すように、タンク12からホールド空間Shへの冷熱の漏出を抑えるため、タンク12にビニールシート58等をかぶせるようにしてもよい。これによって、ホールド空間Sh内の金属部材の温度が過度に低下するのを抑えることができる。
【0049】
(第四変形例)
図9は、上記運搬船の第二実施形態の第四変形例におけるタンクの断熱構造を示す断面図である。
例えば、ホールド空間Sh内には、対流が生じる。そのため、図9に示すように、ホールド空間Sh内を上下に仕切る仕切り部材50を、例えばタンク12の下部12bと収容凹部15の内周面15fとの間に設けてもよい。
【0050】
このように構成することで、断熱パネル41とタンク12の外周面12fとの間のホールド空間Shにおいて、対流によって冷気が空間の下部に集中するのを抑えることができる。これによって、ホールド空間Shを適切な温度に維持することができる。したがって、断熱パネル41とタンク12の外周面12fとの間の空間に存在する金属部材が所定の強度を維持することができる。
【0051】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した各実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
上述した各実施形態において、タンク12を球形とし、タンクカバー13を複数のタンク12を覆う連続形である場合を例示した。しかし、タンク12の形状、設置数、タンクカバー13の形状等は、いかなるものとしてもよい。
さらに、上述した第一実施形態においては、対流を防止する対流抑制部材として、防熱材25やフィン27を設ける場合を例示した。しかし、対流抑制部材は、対流による防止できれば如何なる形状および配置であってもよい。例えば、断熱パネル19とタンク12との間にグラスウールを設けたり、複数の突起を形成したりしてもよい。
【0052】
また、タンク本体18は、球形に限らず、球形に準じた形状をなしているものとしてもよい。
図10は、タンク本体18の他の形状例を示す断面図である。
タンク本体18は、例えば、図10に示す形状としてもよい。この図10に示すタンク本体18は、上下方向の中間部が、上下方向に一定の径を有した筒状部18aとされている。タンク本体18の上部は、筒状部18aから上方に向かって、トーラス(Torus)形状部18b、球形(Sphere)状部18cが順次連続して形成されている。また、タンク本体18の下部は、筒状部18aから下方に向かって、球形状部18d、トーラス形状部18e、球形状部18gが順次連続して形成されている。
【0053】
さらに、上述した各実施形態においては、運搬船10のタンク収容部14に複数のタンク12を収容する場合について説明した。しかし、この構成に限られず、例えば、タンク12を個別に収容する複数のタンク収容部を備える運搬船にも、この発明は適用可能である。さらに、タンク12を一つだけ備える運搬船であってもよい。
また、上記各実施形態およびその変形例に示した構成は、適宜選択して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 運搬船
11 船体
11a 上甲板
11b 船底部
11c 船首
11d 船尾
12 タンク
12a 上部
12b 下部
12f 外周面
13 タンクカバー
13a 立ち上がり部
13b 天板部
13f 内周面
14 タンク収容部
15 収容凹部
15f 内周面
16 ファウンデーションデッキ部
17 スカート
18 タンク本体
18a 筒状部
18b,18e トーラス形状部
18c,18d,18g 球形状部
18f 外周面
19 断熱パネル
20 断熱体
21 支持部材
22 断熱体本体(断熱材)
22b 基材
22e 下端部
25 防熱材(対流抑制部材)
27 フィン(対流抑制部材)
30 断熱体
40 断熱体
41 断熱パネル(断熱材)
45 フィン(対流防止部材)
50 仕切り部材
55 冷気供給手段
58 ビニールシート
S2 間隙
Sh ホールド空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10