(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガスを貯蔵するガスホルダーにおいて、前記ガスホルダーのピストンと底板との間に起立配置されて前記ピストンを前記底板から離隔した位置に支持するピストンサポートのうち底板外縁に配置されるピストンサポートを支持するピストンサポート支持管であって、
中空の外管と、前記外管の中空部分に配置された中空の内管とからなり、前記外管の内面と前記内管の外面によって空間を形成することを特徴とする、ピストンサポート支持管。
【背景技術】
【0002】
ガスホルダーは、その内部にガスを貯留する装置であり、ガスの需要と供給の変動(アンバランス)量をピストンの上下動により時間的に吸収することができる。ガスホルダーとしては、例えばピストンと底板とが同一形状を有しており、ピストンの着底時にピストンと底板とがほぼ隙間無く接触するタイプのガスホルダー(例えば「ウィギンス型ガスホルダー」)が知られている。このガスホルダーにおいて、ピストンは、側板と屋根とで囲まれた空間内を、ガス貯留量に応じて昇降自在である。
【0003】
このタイプのガスホルダーでは、ピストンの着底時には底板との間に隙間が無い。このため、ガスホルダー内部の点検・補修を実施する際には、その都度、ピストンと底板との間に複数のピストンサポートを取り付けて、ピストンの荷重をピストンサポートを介して底板で支持して、作業スペースを確保する必要がある。ピストンサポートの取り付け作業は、作業員がピストンの上部に乗って仕切フランジを取り外した後に、ピストンの上側から底板との間にピストンサポートを挿入し、ピストンにピストンサポートを取り付けるといった手順で行われる。
【0004】
ここで、ガスホルダー内部の点検・補修時に設置される複数のピストンサポートのうちホルダーの底部外縁に側板に沿って配設されるピストンサポート(以下、「アウターピストンサポート」という。)は、ピストンをホルダーの底部外縁で支持する支持具に設置される。支持具には、アウターピストンサポートが挿入され、これを支持するピストンサポート支持管が予め設置されている。
【0005】
ピストンサポート支持管は、常にガスホルダー内部に置かれているため、水分やCO
2を含むガスに長時間にわたって曝される。特に、転炉ガス(LDG)、高炉ガス(BFG)、コークス炉ガス(COG)等の製鉄プロセスから発生するガス(副生ガス)は、CO2や、粉塵除去を目的とした水処理に起因する水分が多く含まれ、ピストンサポート支持管に錆が発生し易い。このため、ピストンサポート支持管の内周面において腐食が進行し、腐食により発生した錆によってピストンサポート支持管の内周面が変形して凹凸やフクレが生じる。このようなピストンサポート支持管の変形によって、ピストンサポートの挿入が不可能となる、あるいはピストンサポート挿入時の抵抗が大きくなってピストンサポートの設置が困難になる。
【0006】
また、腐食によりピストンサポート支持管の強度が低下するため、腐食が進んだピストンサポート支持管については取り替える必要がある。しかし、ピストンサポート支持管は支持具のコンクリートダムに埋め込まれているため、取替時にはコンクリート部を全て破壊する必要がある。加えて、腐食が進行しておらず取替不要なピストンサポート支持管をも取り替える必要が生じ、多大な工事費用がかかるため、経済的でない。
【0007】
このような課題に対して、例えば特許文献1には、傾倒可能なピストンサポートをピストンに常設することにより、煩雑なピストンサポートの着脱を不要とし、ガスホルダー内部の点検・補修作業を簡易にしたガスホルダーが開示されている。特許文献1に記載のガスホルダーにおいては、ピストンサポートがピストンに常設されているためピストンサポート支持管は不要となるため、ピストンサポート支持管の腐食やそのメンテナンス性に対する懸念がなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
<1.ガスホルダーの概略構成>
[自動撮像装置の外観例]
まず、
図1〜
図3を参照して、本発明の実施形態に係るガスホルダー10の概略構成について説明する。
図1および
図2は、本実施形態にかかるガスホルダー10の全体構成を、運転時、内部点検時ごとにそれぞれ示す模式図である。
図3は、ピストン1におけるピストンサポートの配列の一例を示す平面図である。
【0020】
本実施形態にかかるガスホルダー10は、
図1に示すように、ホルダー内に昇降自在に配設される円形ドーム状のピストン11と、ホルダー底部に設置される円形ドーム状の底板12と、ホルダー側面を取り囲むように起立配置された円筒形の側板13と、ホルダー上部を覆う円形ドーム状の屋根14とを主に備える。
【0021】
ガスホルダー10は、全体として略円筒形状を有する乾式ガスホルダーであって、ピストン11と底板12とが略同一形状を有し、ピストン11が側板13にゴムシール機構16を介して連結されたタイプのガスホルダーである。ガスホルダー10は、例えば、高さ数十m、直径数十mの貯蔵設備であり、その内部に、例えば、転炉ガス(LDG)、高炉ガス(BFG)、コークス炉ガス(COG)、天然ガス、石炭ガス等の各種のガスを貯蔵できる。
【0022】
ピストン11は、その外周がホルダー直径より若干小さい径の略円形であり、その中心部が最高点に位置するような円形ドーム形状を有する。ピストン11は、板厚が例えば4.5mm程度の比較的薄い鋼板等で製造されており、その強度を補強するための梁材等の構造補強材は取り付けられていない。このため、ピストン11の板厚により、ピストン11の質量が定まり、この結果、ピストン11の下部に貯蔵されるガス圧が決定する。かかるピストン11は、
図1に示すように、その下部側に貯蔵されるガス量に応じて、ホルダー内を昇降自在である。
【0023】
底板12は、例えば、コンクリート等を打設して製造された基台の上面に、鋼板等をドーム状に貼り合わせて構成されている。底板12とピストン11とは、略同一の円形ドーム形状を有する。上述のようにピストン11には構造補強材が設置されていないので、ガスホルダー10が停止してピストン11が着底したときには、ピストン11と底板12とは、ほぼ隙間無く接触する。このように、ピストン11と底板12との間に隙間がなくホルダー内へのガス流入がない場合であっても、ピストン11と底板12との間が負圧になりにくいので、薄い板状のピストン11が変形して破損することを防止できる。
【0024】
側板13及び屋根14は、例えば、複数の鋼板等を溶接等により気密に接合して構築される。また、屋根14の中心部には換気口15が設けられており、さらに、側板13には、小さな換気窓である複数のシェルベント(図示せず。)が配置されている。ピストン11が上昇したときには、ゴムシール機構16のシールゴム(アウターシール161)がガス圧力により側板13に押し付けられるため、シェルベントにより、側板13と当該シールゴムとの間の空気を円滑に抜くことができる。なお、屋根14の形状は、
図1及び
図2に示すようなドーム形状の例に限定されず、例えば、平坦な円板形状または円錐形状などであってもよい。
【0025】
また、ピストン11は、ゴムシール機構16を介して側板13に昇降自在に連結されている。このゴムシール機構16は、例えば、アウタシール161を介して側板13に対して昇降自在に配設されたTフェンダ162と、インナシール163を介してTフェンダ162に対して昇降自在に配設され、ピストン11の外縁を支持する支持具164と、ホルダー内の底部外縁に側板13に沿って配設されるTフェンダ架台165と、から構成される。アウタシール161及びインナシール163は、弾性変形可能なゴムシールで形成されており、これにより、側板13とTフェンダ162との間、及び、Tフェンダ162と支持部164との間をシールできる。
【0026】
かかるゴムシール機構16によりピストン11と側板13とをシールすることで、ピストン11下部の貯留空間に貯留されたガスが、ピストン11と側板13との間からピストン11の上部空間に漏れることを防止できる。また、かかるゴムシール機構16を用いることにより、上述のようにピストン11の構造を支持するための構造補強部材が設置不要となる。このため、ピストン11と底板12を略同一形状の簡易な構造にできるとともに、ピストン11がシール機構上の制約を受けることなくホルダー底部まで到達できる。従って、ピストン11の着底時に、ピストン11と底板12とがほぼ隙間無く接触できるようになる。
【0027】
また、ピストン11の外縁を支持する支持具164には、貯蔵されるガスに接するピストン11の内面(すなわち、下面)及び底板12の点検・補修作業時にピストンサポート20(アウターピストンサポート210)を支持するピストンサポート支持管(
図4〜
図6の符号30)が設けられる。なお、ピストンサポート支持管の構成の詳細については後述する。
【0028】
側板13の下部には、ガスホルダー10内にガスを流入/流出するためのガス流出入口17が設けられている。このガス流出入口17、ホルダー出入口弁18及び配管を介して、外部のブロワー19によって、ガスホルダー10内にガスが流出入される。なお、本実施形態では、ガスホルダー10にガス流出入口17を1つだけ設置しているが、かかる例に限定されず、ガス流入口とガス流出口とを別々に設置してもよい。
【0029】
以上のような構造のガスホルダー10において、貯蔵されるガスに接するピストン11の内面(即ち、下面)及び底板12の点検・補修作業を行う場合には、
図2に示すようにピストン11と底板12との間に複数のピストンサポート20を起立配置させる。こうしてピストンサポート20によりピストン11の荷重を支持することで、ピストン11の下方に作業スペースを確保することができる。すなわち、ピストンサポート20は、ピストン11と底板12との間に起立配置されて、ピストン11を支持する棒状の支持部材である。ピストンサポート20として、例えば円形の横断面形状を有する鋼管を用いることができる。
【0030】
ピストンサポート20は、
図3に示すように、複数のピストンサポート20が、平面円形のピストン11の中心点を中心とした各同心円上に、周方向に沿って等間隔で配設されている。また、
図3に示すように、複数のピストンサポート20は、ピストン11の径方向にも、ほぼ等間隔で配設されている。これにより、ピストン11と底板12との間に複数のピストンサポート20を略均等に配置して、バランス良くピストン11を支持できる。なお、本実施形態において、ピストンサポート20のうちガスホルダー10の底部外縁に側板13に沿って配設されるものをアウターピストンサポート210とし、アウターピストンサポート210以外のもの(すなわち、アウターピストンサポート210よりピストン11の中心側にあるもの)をインナーピストンサポート220という。
【0031】
ここで、ピストンサポート20のうちアウターピストンサポート210は、使用時には支持具164のコンクリートダム164aに埋め込まれたピストンサポート支持管30に挿入される。本実施形態に係るピストンサポート支持管30は、外管と内管とからなる二重管構造となっている。これにより、水分やCO
2を含むガスに長時間にわたって曝されるピストンサポート支持管30が腐食してその内面に発生した錆による凹凸やフクレによってアウターピストンサポート210が挿入できない、あるいは挿入しにくくなることを回避することができる。本実施形態に係るピストンサポート支持管30の構成については、以下、詳細に説明する。
【0032】
<2.ピストンサポート支持管>
図4〜
図7に基づいて、本実施形態に係るピストンサポート支持管30の構成について説明する。なお、
図4は、本実施形態に係るガスホルダー10の通常運転時におけるピストンサポート支持管30の状態を示す概略説明図である。
図5は、本実施形態に係るガスホルダー10の内部点検時におけるピストンサポート支持管30の状態を示す概略説明図である。
図6は、
図5に示すアウターピストンサポート210が挿入されたときのピストンサポート支持管30の状態を示す部分断面図である。
図7は、本実施形態に係るピストンサポート支持管30の外管310、内管320、およびアウターピストンサポート210の配置関係を説明する部分拡大断面図である。
【0033】
[2−1.構成]
ピストンサポート支持管30は、
図4に示すように、支持具164のコンクリートダム164aに埋め込まれて設けられている。ピストンサポート支持管30は、例えばコンクリートダム164aの上部側(ピストン11の上面側)からはピストンサポート支持管30の上部が突出するように設置される。本実施形態に係るピストンサポート支持管30は、上述したように外管310と内管320とからなる二重管構造となっている。外管310および内管320は、例えば圧力配管用の炭素鋼鋼管を用いて構成することができる。
【0034】
外管310は、コンクリートダム164aに埋め込まれて固定されている円筒形状の中空部材である。コンクリートダム164aから突出した外管310の上端部にはフランジ312が形成されており、外管310と内管320とを固定する際に用いられる固定プレート342がフランジ312上に配置されている。外管310は中空となっており、その中空部分に内管320が配置される。
【0035】
内管320は、外管
310の中空部分に挿通され、外管310に固定される円筒形状の中空部材である。外管310と内管320とは、上端部および下端部において、固定プレート342、344を介して溶接により固定されている。内管320は、コンクリートダム164aに既に固定されている外管310に対して溶接固定してガスホルダー10に設置してもよく、まず外管310と内管320とを溶接固定した後、二重管化されたピストンサポート支持部30の外管310部分をコンクリートダム164aに埋め込んで設置してもよい。
【0036】
外管310と内管320との間には、
図7に示すように、所定の間隔t
2を有するように空間が形成される。ピストンサポート支持管30の内管320の内面は、水分やCO
2を含むガスに触れて腐食し、錆が発生する(
図7下側の錆部4)。発生した錆は、約2.5〜2.7倍程度まで体積が膨張する。アウターピストンサポート210挿入時には、アウターピストンサポート210は、ピストンサポート支持管30内面に発生した錆部4を半径方向外側へ押し、これによりピストンサポート支持管210の内管320の錆、フクレ発生部は半径方向外側へ変形する。この変形は、主として弾性変形であるが、塑性変形等の変形も含まれる。外管310の内面と内管320の外面とによって形成される空間は、この内管320の半径方向外側への変形を吸収するために設けられる。
【0037】
すなわち、ピストンサポート支持管30の内管320がアウターピストンサポート210から力を受けることにより弾性変形を生じ、外管310と内管320の間に設けられた空間分の変形が可能となる。したがって、外管310の内面と内管320の外面とは、内管320に持たせる最大変形しろ以上離隔させることで、内管320が最大変形した場合であっても内管320が変形により外管310を半径方向外側へ押すことがなくなる。内管320の最大変形しろは、内管320の寸法や材質、錆の発生位置等に応じて決定される。例えば、内管320の最大変形しろを0.5mmとしたとき、内管320の肉厚を6.15mm以下とすることで内管320の最大変形量を0.5mm以下とすることが可能となる。
【0038】
このように、外管310の内面と内管320の外面とによって形成される空間を設けることで、錆やフクレによる厚み増加によりアウターピストンサポート210と内管320との間に空間が無くなっても、アウターピストンサポート210の挿入が可能となる。
【0039】
本実施形態において、内管320は、上部が外管310よりも長く突出するように設けられ、上端部にはフランジ322が形成されている。フランジ322は、ガスホルダー10の通常運転時に設置される蓋330、あるいはアウターピストンサポート210のフランジと固定するために設けられている。フランジ322を外管310の上端部から離れた位置に設けることで、蓋322あるいはアウターピストンサポート210を設けた際に、これらとピストンサポート支持管30(具体的にはフランジ322)とを固定する作業を行い易くすることができる。
【0040】
ガスホルダー10の通常運転時に設置される蓋330は、
図4に示すように、中空となっているピストンサポート支持管30の上部開口を覆うように設けられる。蓋330は、
図2に示すように内部点検時にアウターピストンサポート210を設置する際には取り外され、アウターピストンサポート210が設置されない通常運転時、停止時に設置される。この作業を行い易くするために、蓋部330の上部には、取っ手332が設けられている。蓋330は、ピストンサポート支持管30に設置されたとき、内管320のフランジ322と例えばボルトなどの固定部材により固定される。
【0041】
一方、ピストンサポート支持管30にアウターピストンサポート210が設置されると、
図5に示すように、ガスホルダー10のピストン11と底板12との間に空間が形成される。アウターピストンサポート210は、
図5に示すように上端部に取っ手214が設けられたフランジ212を備えてもよい。フランジ212は、アウターピストンサポート210がピストンサポート支持管30に設置されたとき、内管320のフランジ322と例えばボルトなどの固定部材により固定される。取っ手214は、ピストンサポート支持管30への設置、除去作業を行い易くするために設けられている。
【0042】
[2−2.メンテナンス性について]
本実施形態に係るピストンサポート支持管30は、外管310と内管320とからなる二重管構造とすることで、外管310の内面は内管320の外面と対向し、ガスに触れない構成となる。したがって、ガスによる腐食や変形はピストンサポート支持管30のうち内管320にて生じることになる。また、コンクリートブロック164aには外管310のみが固定され、内管320はコンクリートブロック164aとは独立して設けられる。
【0043】
これより、ピストンサポート支持管30において内管320の腐食や変形が進行し取り替えが必要となった場合には、外管310と溶接されている内管320のみを取り外し、新たな内管320をコンクリートブロック164aに固定されている外管310に溶接して固定することで、ピストンサポート支持管30を補修することができる。したがって、ピストンサポート支持管30の取り替えを、コンクリートブロック164aを破壊することなく実施することができる。
【0044】
<3.まとめ>
以上、本実施形態に係るガスホルダーのピストンサポートを支持するピストンサポート支持管30の構成とその作用について説明した。本実施形態によれば、ピストンサポート支持管30を外管310と内管320とからなる二重管構造とし、これらの間に空間を設ける。これにより、内管320の内面の腐食によって生じた錆により当該内面に凹凸やフクレが生じても、アウターピストンサポート210挿入時には内管320が主として弾性変形し、錆部の厚みを吸収する。したがって、アウターピストンサポート210挿入時の抵抗が軽減される。
【0045】
また、内管320の腐食が進行し取替が必要となった場合でも、従来のようにピストンサポート支持管30が埋め込まれているコンクリートブロック164aを破壊する必要は無く、内管320の交換のみで補修が可能である。
【実施例】
【0046】
実施例として、ピストンサポート支持管の二重管化によるフクレの吸収効果を検証した。ここでは、
図4〜
図7に基づき説明した本発明に係る構成のピストンサポート支持管を実施例、従来の1つの管からなる構成のピストンサポート支持管を比較例として、以下の条件にて錆がピストンサポート支持管中央に局所的に発生した場合におけるピストンサポートの変形量を数値シミュレーションにより算出した。また、ピストンサポート支持管の内面に0.35mmを超える厚みの錆が発生した場合において、実施例および比較例におけるピストンサポート支持管へのアウターピストンサポートの挿入可否を検証した。結果を下記表1に示す。
【0047】
[前提条件]
支持管の外管:125A STPG(Sch40)
支持管(比較例)、支持管の内管(実施例):100A STPG(Sch40)
アウターピストンサポート:90A STPG(Sch40)
腐食速度:132μm/Y
(CO
2、水分を含む転炉ガス30〜70℃雰囲気環境下での実績腐食最大速度)
錆部の体積膨張最大速度:356μm/Y(実績膨張最大速度)
縦弾性係数:196,000N/mm
2
許容応力:206N/mm
2
サポート支持管長(外管、内管):1.6m
【0048】
【表1】
【0049】
まず、比較例では、ピストンサポート支持管は1つの管から形成されているため、アウターピストンサポートとピストンサポート支持管内面との間隔t
1が0.35mm(0.7mm/2)のとき錆厚みが0.35mmを超えると、アウターピストンサポートを挿入するには強いハンマリングが必要となったり、挿入不可能となったりすると考えられる。また、この比較例のピストンサポート支持管を用いた場合の耐久時間を上記腐食速度、錆部の体積膨張最大速度等に基づきシミュレーションすると、使用開始から約1.6年でアウターピストンサポートの挿入が困難となるものが発生することが判明した。
【0050】
一方、実施例では内管内側の局所的な錆の発生により内管のフクレが0.35mmを超えても、外管と内管の間に間隔t
2の空間があるため、内管が半径方向外側に変形し、フクレが吸収される。このため、錆部が発生しても軽いハンマリングでアウターピストンサポートを挿入することが可能と考えられる。
【0051】
より詳細に説明すると、内管が0.5mm変形した場合(当該条件における内管の最大変形しろ)に、錆部がアウターピストンサポートに与える内径方向の力を108,584N、静止摩擦係数を0.52とすると、アウターピストンサポートにかかる摩擦抵抗は56,464N(108,584N×0.52)となる。なお、静止摩擦係数0.52は、一般的な鋼材間の静止摩擦係数として用いられる値である。ここで、ハンマーの重さを5kg、ハンマリング1回につきアウターピストンサポートが押し下げられる距離を5mmとすると、必要なハンマリングスピードは時速27.1km/hとなり、現実的に当該作業は容易に実行可能であると考えられる。
【0052】
なお、本実施例では、内管の肉厚が6mmの例であり、1〜2m程度の支持管長さ(本願発明例は1.6m)では軽いハンマリングによる内管変形でピストンサポートの挿入が可能である。なお本願発明者らの検討では、内管肉厚が6.15mm以下であれば、人手によるハンマリングによって、ピストンサポート挿入が可能な内管変形が実現できるものと考えられる。一般的なピストンサポート本数を勘案すると、内管肉厚の下限値を2mmとすると、ピストンを支持する強度が確保でき使用できる。
【0053】
また、実施例において内管が弾性変形により許容が可能な変形しろ(最大変形しろ)は、当該寸法、材質、錆の発生位置の条件より0.5mmであった。したがって、ピストンサポート支持管を二重管化することで、最大変形しろ0.5mmにアウターピストンサポートと内管と間隔0.35mmを合わせて、0.85mmの錆厚みまで許容が可能であると考えられる。
【0054】
実施例のピストンサポート支持管を用いた場合の耐久時間については、上記腐食速度、錆部の体積膨張最大速度等に基づきシミュレーションすると、使用開始から約3.8年までは確実にアウターピストンサポートを挿入できることが判明した。シミュレーションによれば、上記比較例よりも2倍以上長い期間、ピストンサポート支持管を使用できることがわかった。
【0055】
以上より、ピストンサポート支持管を上述の本実施形態に係る本発明の構成とすることで、ピストンサポート支持管の内面に錆が発生しても、ピストンサポートの挿入が容易となる。また、本発明の構成のピストンサポート支持管では、アウターピストンサポートを挿入できる、許容可能な錆厚みが大きくなる。これにより、ピストンサポート支持管の取替周期を長期化することが可能となる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、上記実施形態では、ピストンサポートは、強度面と製造の容易さの観点から、例えば、円形の横断面形状を有する鋼管を用いるものとして説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ピストンサポートは、四角、多角形、楕円など任意の横断面形状であってもよい。ピストンサポート支持管の外管および内管の形状は、ピストンサポートの形状に応じて適宜変更することができる。