(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、本実施の形態に係る画像処理装置10が示されている。
【0019】
画像処理装置10は、記録用紙に画像を形成する画像形成部12と、原稿画像を読み取る画像読取部14と、ファクシミリ通信制御回路16を備えている。
【0020】
画像処理装置10は、メインコントローラ18を備えており、画像形成部12、画像読取部14、ファクシミリ通信制御回路16を制御して、例えば、画像読取部14で読み取った原稿画像の画像データを一次的に記憶したり、読み取った画像データを画像形成部12又はファクシミリ通信制御回路16へ送出したりする。なお、画像読取部14は上部筐体10Aに覆われ、画像形成部12,ファクシミリ通信制御回路16、メインコントローラ18は下部筐体10Bに覆われている。下部筐体10Bのさらに下部は記録用紙を収容する複数段のトレイユニット24が設けられている。
【0021】
また、前記画像読取部14を被覆する上部筐体10Aの上面かつ前方には、画像読取処理、複写処理、画像形成処理、送受信処理を含む処理動作(サービス)項目を指示したり、それぞれの処理動作の詳細設定を指示すると共に、画像処理装置10の状態を表示するためのユーザーインターフェイス26(以下、「UI26」という場合がある。)が配置されている。UI26には、表示画面に操作者の指等を接触することで指示可能なタッチパネル部28と、機械的動作(例えば、押圧動作)で指示可能な複数のハードキー(図示省略)が設けられたハードキー配列部30とが設けられている。
【0022】
メインコントローラ18にはインターネット等のネットワーク通信回線網20が接続され、ファクシミリ通信制御回路16には電話回線網22が接続されている。メインコントローラ18は、例えば、ネットワーク通信回線網20を介してホストコンピュータと接続され、画像データを受信したり、ファクシミリ通信制御回路16を介して電話回線網22を用いてファクシミリ受信及びファクシミリ送信を実行する役目を有している。
【0023】
本実施の形態では、上記画像形成部12、画像読取部14、ファクシミリ通信制御回路16を用いて、スキャン、複写、プリント、ファクシミリ送信、ファクシミリ受信、受信後のプリントを含むサービス(処理形態)が実行可能である。
【0024】
画像形成部12は、感光体を備え、感光体の周囲には、感光体を一様に帯電する帯電装置と、画像データに基づいて光ビームを走査する走査露光部と、前記走査露光部によって走査露光されることで形成された静電潜像を現像する画像現像部と、現像化された感光体上の画像を記録用紙へ転写する転写部と、転写後の感光体の表面をクリーニングするクリーニング部と、が設けられている。また、記録用紙の搬送経路上には、転写後の記録用紙上の画像を定着する定着部を備えている。
【0025】
図2(A)に示される如く、画像読取部14を収容する上部筐体10Aの上面には、自動原稿送り装置50が設けられている。
【0026】
また、上部筐体10Aの上面、すなわち、自動原稿送り装置50に対向する面には、画像を読み取る原稿が置かれる読取ガラス70が設けられている。
【0027】
自動原稿送り装置50は、原稿が置かれる原稿台60と、画像を読み取った後の原稿が排出される排出台62と、を有する。
【0028】
原稿台60から排出台62までの原稿搬送路61は、その一部が円弧状に形成されることで原稿Mを反転させる機能を有している。
【0029】
原稿搬送路61の最上流側には、用紙送出部63が設けられている。用紙送出部63は、原稿台60に置かれた原稿Mを枚葉(ピックアップ)する。原稿搬送路61は、複数のローラ対(送出ローラ対64、位置合わせローラ対66、アウトローラ対68、排出ローラ対69)によって形成される。なお、原稿搬送路61の適宜位置には、原稿Mの搬送を案内する案内板65が設けられている。
【0030】
送出ローラ対64は、用紙送出部63から送られた原稿のうち最上部にある原稿を反転しながら内部に供給する。
【0031】
位置合わせローラ対66は、上流側から送られた原稿Mを、読み取りタイミングを調整し、読取ガラス74の対峙領域(読取領域)を通過させる。
【0032】
図2(B)は、この読取り領域における原稿搬送路61の詳細を示したものである。
【0033】
図2(B)に示される如く、読取ガラス74に対して、原稿Mの搬送側の上流側では、原稿Mを読取ガラス側に案内する薄膜状の弾性フィルム109が配置されている。弾性フィルム109の下方には、読取ガラス74の左端上面に、パッド111が支持されている。パッド111は、弾性フィルム109で下方に案内された原稿Mを
図2(B)の右方に案内するように、例えば、剛性の高い案内板に比べて低摩擦材料で構成されている。パッド111で案内された原稿Mは、読取ガラス74の上方を、所定の隙間Gをもって通過して、原稿Mのジャンプガイド板115で案内され、下流側のアウトローラ対68で搬送される。
【0034】
読取ガラス74の下部には、後述する本実施例のおける密着型センサの一例であるCISユニット88が待機しており、このCISユニット88によって原稿Mの画像が読み取られるようになっている。
【0035】
アウトローラ対68および排出ローラ対69は、読み取った原稿Mを排出台62へ排出する。
【0036】
図2(A)に示される如く、前記上部筐体10Aに収容された画像読取部14は、CIS(Contact Image Sensor)ユニット88と、当該CISユニット88で読み取った画像情報信号を処理する信号処理部90、並びにCISユニット88の走査を制御する走査制御部92を備えている。
【0037】
図2(B)に示される如く、CISユニット88は、
図2(B)の奥行き方向を長手方向とする筐体89に収容されており、図示しないレール機構部に沿って、読取ガラス74の下方、並びに、読取ガラス70の下方を移動可能となっている。
【0038】
このとき、CISユニット88は、読取ガラス74の下方では、予め定めた位置に固定配置されており(
図2(B)の実線位置参照)、前記原稿搬送路61に沿って搬送されてくる原稿Mの画像面に対して、順次対峙することになる。すなわち、自動原稿送り装置50から送られる原稿Mに対する副走査となる(以下、「DADF副走査」という)。
【0039】
一方、CISユニット88は、読取ガラス70の下方では、予め定めた範囲内を往復移動する。
図2(B)の鎖線で示したCISユニット88は、この往復移動におけるホームポジションである。
【0040】
ここで、読取ガラス70の上面に原稿Mが位置決めされている場合、往復移動の一方(往路又は復路)が、当該原稿Mから画像を読み取るための副走査となる(以下、「プラテン副走査」という)。
【0041】
走査制御部92は、DADF副走査の際は、読取ガラス74の下方における予め定めた位置にCISユニット88を位置決めする制御を実行し、プラテン副走査の際は、読取ガラス70の下方を予め定めた速度で往復移動させる制御を実行する。
【0042】
CISユニット88は、光源100、ロッドレンズアレイ102、光電変換素子104Aが取り付けられたセンサ基板104が設けられている。
【0043】
光源100は、原稿Mを照明するためのものであり、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の発光波長を持つ発光素子を備え、順次又は選択又は一斉点灯するように制御される。なお、光源100から発光した光は、原稿Mの幅方向(
図2(B)の奥行き方向)に配置された細長形状の導光体(図示省略)によって、前記読取ガラス74の上方の読取領域を通過する原稿Mに照射されるようになっている。
【0044】
ロッドレンズアレイ102は、正立等倍結像型の結像素子を導光体の長手方向と同方向に複数配列したものであり、原稿Mからの反射光をセンサ基板104上の光電変換素子104Aに結像する。
【0045】
この光電変換素子104Aは、ロッドレンズアレイ102の長手方向に沿って複数配列され、長手方向の一方から他方にかけて順次原稿Mからの反射光がロッドレンズアレイ102を介して結像される(DADF副走査及びプラテン副走査での共通の主走査)。
【0046】
光電変換素子104Aは、結像された反射光を電気信号に変換する。また、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の反射光を全て電気信号に変更することで、カラー画像の主走査が実行され、当該電気信号は、信号処理部90へ送出される。
【0047】
ところで、
図2(B)に示される如く、画像読取部14において、自動原稿送り装置50から原稿搬送路61に沿って搬送されて読取ガラス74の上を通過(DADF副走査)する原稿Mから画像を読み取る(以下、「DADF読み」という)ときの原稿MからCISユニット88の上端面までの距離L1と、読取ガラス70の下方を移動(プラテン副走査)しながら、読取ガラス70に位置決めされた原稿Mから画像を読み取る(以下、「プラテン読み」という)ときの原稿MからCISユニット88の上端面までの距離L2とに差分Δが生じている。
【0048】
この差分Δは、読取ガラス70と読取りガラス74とが同一平面上であるにも関わらず、読取ガラス70上では、原稿Mを密着させて画像を読み取り、読取ガラス74上では、搬送される原稿Mが読取ガラス74と接触しながら移動(摺動)することを回避するための隙間Gをもって搬送していることが、1つの要因となっている。なお、読取ガラス70,74の上面間に段差がある場合は、この段差も要因の1つとなる場合がある。
【0049】
CISユニット88は、例えば、CCD(個体撮像素子)に比べて、焦点深度が浅い。このため、前記差分Δによって、一方の焦点が合っている場合、他方の焦点がずれ、双方で読み取った画像の画質に差が生じる場合があった。
【0050】
或いは、設計上の基準となる焦点深度に対して、CISユニット88を含むデバイスの機差、並びに組み付け時の誤差を含む誤差(以下、総称して「デバイス依存の誤差」という)に起因して、DADF読み、プラテン読みの双方において焦点が合わない場合もあり得る。
【0051】
そこで、本実施の形態では、デバイス依存誤差に起因する焦点ずれを認識し、原稿Mから読み取った画像データの画像処理によって、画質低下を抑制するようにした。
【0052】
本実施の形態において、前記「認識」は、CISユニットから原稿Mまでの距離を測定するための測定用原稿に基づく解析であり、前記「画像処理」は、より具体的には、本実施例におけるフィルタ処理の一例である前記解析によって得られた距離に基づくフィルタ係数で、フィルタリングするエッジ強調フイルタ処理である。
【0053】
図3は、画像読取部14における、信号処理部90を機能的に示したブロック図である。なお、このブロック図は、信号処理部90のハード構成を限定するものではない。
【0054】
CISユニット88の光電変換素子104Aは、受付部150に接続されており、光電変換信号(アナログの電気信号)を、受付部150へ送出する。
【0055】
受付部150では、少なくとも受け付けたRGBの各色の電気信号(アナログ)をデジタル信号に変換(A/D変換)し、通常モードでは、変換後のデジタル信号をシェーディング処理部152へ送出する。
【0056】
一方、距離依存フィルタ係数設定モードでは、デジタル変換した電気信号(画像情報)は、ウィンドウ設定部154へ送出される。なお、距離依存ウィンドウ設定モードについては後述する。
【0057】
シェーディング処理部152には、予めCISユニット88において主走査方向に配列された光電変換素子104Aの出力信号のばらつきを補正するための補正テーブルを記憶している。すなわち、例えば、主走査方向に一定の濃度の原稿を読み取ったときの出力の差を補正して、一定値にする。
【0058】
シェーディング処理部152は、第1のフィルタ処理部156に接続されている。この第1のフィルタ処理部156は、設計上の焦点位置と、実際に読み取るときの焦点位置との差によって生じる画質の低下(「ぼけ」や「にじみ」)を補正する役目を有している。
【0059】
この焦点位置の差による画質低下は、エッジ強調フィルタ処理によって補正している。
【0060】
(エッジ強調フィルタ処理の原理)
図4は、基準となるエッジ強調フィルタ処理の原理について説明したものである。
【0061】
図4(A)は、縦5コマ×横5コマの合計25コマのマトリクス配置された基準フィルタ係数テーブル110(以下、「基準ウィンドウ110」という場合がある。)であり、各コマは光電変換素子104Aによって読み取った画素に相当する。フィルタ処理される画素は、基準ウィンドウ110の中央(
図4(A)では符号A)となる。
【0062】
基準ウィンドウ110の各コマには、A〜Iまでの9個の符号が割り当てられており、それぞれの符号が異なるフィルタ係数となる。
【0063】
図4(A)の基準ウィンドウ110は、記号が左右上下で対称配置されており、この結果、25コマの画素であっても、9種類の符号(9種類のフィルタ係数)で処理されることを意味する。
【0064】
図4(B)は、各符号のフィルタ係数を示した図表である。Coef (記号)は予め定めた数値であり、基準ウィンドウ110の記号に対するフィルタ係数である。例えば、CoefAは予め定めた数値であり、基準ウィンドウ110の記号Aに対するフィルタ係数である。以下、CoefB〜CoefIは、記号B〜I対するフィルタ係数である。
【0065】
なお、FillValは、光電変換素子104Aが原稿Mの画像読取領域外に位置するときに使用する画素値である。
【0066】
図4(C)の右図は、原稿Mの画像読取りを開始した直後、すなわち、原稿Mの左上角部から走査(主走査及び副走査)を開始するときの、基準ウィンドウ110の対応配置状態を示したものである。この基準ウィンドウ110の配置状態で、光電変換素子104Aでは、
図4(C)の左図に示すように、それぞれ読取情報Pを読み取る。なお、記号Pの後の2桁の数値は、一の位が主走査方向、十の位が副走査方向を示しており、P00〜P04、P10〜P14、P20〜P24、P30〜P34、P40〜P44で合計25コマの読取情報Pが区別される。
【0067】
ここで、注目画素(
図4(C)では、P22)を対象としてフィルタ処理する場合は、
図4(D)に示す演算で求めることになる。
【0068】
すなわち、注目画素P22の出力は、以下の演算式(1)で演算される。
【0069】
P22
=P00×Coef I+P01×Coef H+P02×Coef F+P03×Coef H+P04×Coef I
+P10×Coef G+P11×Coef E+P12×Coef C+P13×Coef E+P14×Coef G
+P20×Coef D+P21×Coef B+P22×Coef A+P23×Coef B+P24×Coef D
+P30×Coef G+P31×Coef E+P32×Coef C+P33×Coef E+P34×Coef G
+P40×Coef I+P41×Coef H+P42×Coef F+P43×Coef H+P44×Coef I
・・・(1)
なお、上記例では、P00〜P04、P10〜P14、P20、P21、P30、P31、P40、P41が画像読取領域外なので、画素値として「FillVal」が適用される。なお、そのフィルタ係数は画像読取領域外を含まない場合と同じ係数をつかう。
【0070】
図5は、エッジ強調処理による注目画素の濃度とその周辺画素の濃度との相対差を示す特性図である。
【0071】
図5(A)は受付部150(
図3参照)で受け付けた画像情報を示し、
図5(B)はエッジ強調処理を実行した画像情報を示す。
【0072】
図5に示される如く、エッジ強調処理により、注目画素と周辺画素との濃度差が大きくなり、例えば、焦点距離のずれによるぼけやにじみ等の画質低下を、フィルタ処理(エッジ強調処理)で補正可能であることがわかる。
【0073】
(DADF読みとプラテン読みとの距離差に基づくフィルタ処理)
ここで、本実施の形態の第1のフィルタ処理部156(
図3参照)では、上記フィルタ処理の原理を利用して、前記DADF読みとプラテン読みとによる焦点位置の差(
図2(B)に示すΔ(=L1−L2)に依存する画質低下(ぼけやにじみ)を補正している。
【0074】
すなわち、DADF読みとプラテン読みとで、独立したフィルタ係数テーブル(DADF用ウィンドウ110D、プラテン用ウィンドウ110P)を設定しておき、それぞれの読み取り形態に応じて、ウィンドウ(DADF用ウィンドウ110D、プラテン用ウィンドウ110P)を選択して適用する。
【0075】
すなわち、
図3に示される如く、第1のフィルタ処理部156には、ウィンドウ一時格納部158が接続されている。このウィンドウ一時格納部158には、読み取り形態(DADF読み又はプラテン読み)に対応するフィルタ係数がマトリクス配置されたウィンドウ(DADF用ウィンドウ110D又はプラテン用ウィンドウ110P)が格納されている。
【0076】
ウィンドウ一時格納部158は、ウィンドウ読出部160に接続されている。ウィンドウ読出部160は、読取モード情報読込部162及びウィンドウ記憶部164に接続されている。
【0077】
ここで、読取モード情報読込部162では、走査制御部92から読取モード情報(DADF読み又はプラテン読み)を読み込み、ウィンドウ読出部160へ送出する。ウィンドウ読出部160では、読取モード情報に基づいて、ウィンドウ記憶部164からDADF用のフィルタ係数が設定されたDADF用ウィンドウ110D、或いは、プラテン用のフィルタ係数が設定されたプラテン用ウィンドウ110Pの何れかを読み出し、ウィンドウ一時格納部158へ格納する。すなわち、ウィンドウ一時格納部158には、これから画像読取部14で実行される画像読み取りの際の読取モードに応じて、逐次格納されるウィンドウ(DADF用ウィンドウ110D又はプラテン用ウィンドウ110P)が変更されるようになっている。
【0078】
なお、ウィンドウ記憶部164に記憶された、DADF用ウィンドウ110D、並びに、プラテン用ウィンドウ110Pは、距離測定用原稿M1(
図6(A)参照)又は距離測定用原稿M2(
図7(A)参照)のパターンを読み取ることによって生成されるようになっており、当該生成手順については後述する。
【0079】
第1のフィルタ処理部156では、ウィンドウ一時格納部158に格納されたウィンドウ(DADF用ウィンドウ110D又はプラテン用ウィンドウ110P)のフィルタ係数を用いて、前述した演算式(1)に基づいて各画素の濃度を演算する。
【0080】
第1のフィルタ処理部156でフィルタ処理された画像情報は、色変換処理部166へ送出される。色変換処理部166では、入力画像情報がRGBであるのに対し、例えば、画像形成部12での画像形成のための画像情報であるCMYKに変換する。この色変換の際、例えば、L*a*b*色空間を介してCMYKに色変換してもよい(RGB→L*a*b*→CMYK)。なお、色変換は、CMYKに限らず、指定された色空間に変換してもよい。
【0081】
色変換処理部166は、第2のフィルタ処理部168が接続されている。この第2のフィルタ処理部168は、画像モード依存で実行されるフィルタ処理である。例えば、原稿画像が文字モード、写真モード、印刷モード、混在モードに分類され、それぞれの画像に適したフィルタ処理が実行される。この第2のフィルタ処理部168では、例えば、非線形フィルタが用いられ、エッジ部分を損なうことなしに雑音や網点成分を除去する。より具体的には、非線形平滑用フィルタと非線形エッジ強調フィルタを適用する。非線形平滑用フィルタではエッジ部を保存しつつ雑音や網点成分を除去する。また、非線形エッジ強調用フィルタでは、雑音を強調せずエッジ部分のみ強調する。
【0082】
また、色変換処理部166は、濃度調整部170に接続されている。濃度調整部170では、例えば、フィルタ処理、色変換処理が終了した画像情報に対して、最終的に全画素の積算平均濃度が予め定めたグレースケール(例えば、中間値)になるように全ての画素を一律に補正する。なお、濃度調整部170の調整は、前記例に限定されるものではない。
【0083】
濃度調整部170で濃度調整された画像情報は、出力部172を介して、例えば、画像形成部12へ送出される。或いは、画像読取を指示したPCや、サーバー等へ転送するようにしてもよい。
【0084】
(フィルタ係数をマトリクス配置したウィンドウの生成)
本実施の形態では、焦点距離が異なるDADF読みとプラテン読みとで、それぞれ、最適なエッジ強調処理を実行するためのフィルタ係数を設定する。
【0085】
このフィルタ係数の設定は、前述した通常モードとは異なり、距離依存フィルタ係数設定モードにおいて実行される。フィルタ係数設定モードでは、受付部150で受け付け、A/D変換された画像情報をウィンドウ設定部154へ送出する。
【0086】
また、フィルタ係数設定モードでは、当該フィルタ係数設定専用の距離測定用原稿M1(
図6(A)参照)、或いは距離測定用原稿M2(
図7(A)参照)を適用する。
【0087】
(第1例「距離測定用原稿M1適用」)
図6に示される如く、第1例の距離測定用原稿M1は、CTF(解像力)測定用パターン113が印刷されている。当該CTF測定用パターン113は、1mmの間に黒線と白線が交互に存在するペアが5本あるパターン(5LP(LinePair)/mm)であり、
図6の距離測定用原稿M1は、縦線であるため、主走査方向の解像度測定に用いられるものである。
【0088】
距離依存フィルタ計数設定モードでは、前記距離測定用原稿M1を用いて画像読取処理を実行し、ウィンドウ設定部154(
図3参照)において、読み取った画像情報に基づき、以下の演算式(2)で解像力を演算する。
【0089】
CTF=(黒線の濃度−白線の濃度)/(黒基準の濃度−白基準の濃度)×100[%]・・・(2)
例えば、黒線の濃度が160、白線の濃度が70、黒基準の濃度が200、白基準の濃度が50とすると、上記演算式(2)によれば、CTF値は60%となる。
【0090】
図6(B)は、CTF値と距離との関係を示す特性図である。
図6(B)の特性図では、CTF値と距離との関係が二次曲線の関係を示しており、これにより、CTF値から距離を推定することが可能である。上記演算結果のCTF値60%は、
図6(B)の特性図の起点であり、焦点が合っていることを示す。例えば、この
図6(B)の特性図は、
図3に示すウィンドウ設定部154で読み出せる記憶媒体に記憶されている。
【0091】
図3に示される如く、ウィンドウ設定部154では、基準ウィンドウ記憶部155から取り込んだ基準ウィンドウ110のフィルタ係数を基準として、DADF読みにおいて推定された距離に基づいて、ウィンドウの各コマ(
図4(A)の符号A〜Iに相当するCoef値)を設定し、設定されたDADF用ウィンドウ110Dをウィンドウ書込部174へ送出する。すなわち、ウィンドウ設定部154は、特性図の記憶、解像力の算出、距離の推定の機能を備える。
【0092】
ウィンドウ書込部174では、受け付けたDADF用ウィンドウ110Dをウィンドウ記憶部164に記憶する。
【0093】
一方、ウィンドウ設定部154では、基準ウィンドウ記憶部155から取り込んだ基準ウィンドウのフィルタ係数を基準として、プラテン読みにおいて、推定された距離に基づいて、ウィンドウの各コマ(
図4(A)の符号A〜Iに相当するCoef値)を設定し、設定されたプラテン用ウィンドウ110Pをウィンドウ書込部174へ送出する。
【0094】
ウィンドウ書込部174では、受け付けたプラテン用ウィンドウ110Pをウィンドウ記憶部164に記憶する。
【0095】
なお、基準ウィンドウ記憶部155に記憶された基準ウィンドウ110は、設計上のフィルタ係数を設定したものである。
【0096】
(第2例「距離測定用原稿M2適用」)
図7に示される如く、第2例の距離測定用原稿M2は、濃度測定用パターン114が印刷されている。当該濃度測定用パターン114は、矩形状の白基準パターンであり、CISユニット88(
図2参照)による解像力の影響を受けない、例えば、20mm×20mmの正方形パターンで形成される。
【0097】
フィルタ係数設定モードでは、前記距離測定用原稿M2を用いて画像読取処理を実行し、ウィンドウ設定部154(
図3参照)において、読み取った画像情報の濃度を得る。
【0098】
図7(B)は、濃度と距離との関係を示す特性図である。
図7(B)の特性図では、濃度測定用パターン114の濃度と距離との関係が二次曲線で線形(比例)の関係を示しており、これにより、濃度測定用パターン114の濃度から距離を推定することが可能である。例えば、この
図7(B)の特性図は、
図3に示すウィンドウ設定部154で読み出せる記憶媒体に記憶されている。
【0099】
図3に示される如く、ウィンドウ設定部154では、基準ウィンドウ記憶部155から取り込んだ基準ウィンドウのフィルタ係数を基準として、DADF読みにおいて推定された距離に基づいて、ウィンドウの各コマ(
図4(A)の符号A〜Iに相当するCoef値)を設定し、設定されたDADF用ウィンドウ110Dをウィンドウ書込部174へ送出する。すなわち、ウィンドウ設定部154は、特性図の記憶、解像力の算出、距離の推定の機能を備える。
【0100】
ウィンドウ書込部174では、受け付けたDADF用ウィンドウ110Dをウィンドウ記憶部164に記憶する。
【0101】
一方、ウィンドウ設定部154では、基準ウィンドウ記憶部155から取り込んだ基準ウィンドウのフィルタ係数を基準として、プラテン読みにおいて推定された距離に基づいて、ウィンドウの各コマ(
図4(A)の符号A〜Iに相当するCoef値)を設定し、設定されたプラテン用ウィンドウ110Pをウィンドウ書込部174へ送出する。
【0102】
ウィンドウ書込部174では、受け付けたプラテン用ウィンドウ110Pをウィンドウ記憶部164に記憶する。
【0103】
なお、基準ウィンドウ記憶部155に記憶された基準ウィンドウ110は、設計上のフィルタ係数を設定したものである。
【0104】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0105】
(フィルタ係数設定モード制御ルーチン)
図8のフローチャートに従い、DADF用及びプラテン用のそれぞれのフィルタ係数を割り当てたウィンドウ(DADF用ウィンドウ110D及びプラテン用ウィンドウ110P)を設定するフィルタ係数設定について説明する。なお、
図8では、第1例(
図6参照)による距離測定用原稿M1を採用した。
【0106】
ステップ200では、自動原稿送り装置50に距離測定用原稿M1を装填するように指示する。例えば、UI26に装填を促すメッセージを表示するといったことが考えられる。
【0107】
次のステップ202では、読取開始指示があったか否かが判断され、肯定判定されると、ステップ204へ移行して、CISユニット88による原稿画像の読取制御を実行する。ここでは、読取制御は、CISユニット88を読取ガラス74の下方に固定配置し、搬送される距離測定用原稿M1を読み取る。
【0108】
次のステップ206では、原稿M1から読み取った画像情報(
図6(A)に示すCTF測定用パターン113)を受け付け、次いで、ステップ208でA/D変換を含む初期処理を実行し、当該画像情報(デジタル)をウィンドウ設定部154へ送出する。
【0109】
次のステップ210では、画像情報を解析し、演算式(2)に基づいて、CTF値を演算し、次いでステップ212へ移行して、
図6(B)の特性図に基づいて、CTF値から距離を推定する。
【0110】
次のステップ214では、推定した距離に基づいて基準ウィンドウ110を補正し、DADF用ウィンドウ110Dを生成し、ステップ216へ移行して、ウィンドウ記憶部164に記憶する。以上で、DADF用ウィンドウ110Dの生成が終了し、続いて、プラテン用ウィンドウ110Pの生成を実行する。
【0111】
次のステップ218では、読取ガラス70に距離測定用原稿M1を装填するように指示する。例えば、UI26に装填を促すメッセージを表示するといったことが考えられる。
【0112】
次のステップ220では、読取開始指示があったか否かが判断され、肯定判定されると、ステップ222へ移行して、CISユニット88による原稿画像の読取制御を実行する。ここでは、読取制御は、CISユニット88を読取ガラス70の下方のホームポジションに移動し、このホームポジションから往復移動することで、読取ガラス70の上面に固定配置された距離測定用原稿M1を読み取る。
【0113】
次のステップ224では、読み取った画像情報を受け付け、次いで、ステップ226でA/D変換を含む初期処理を実行し、当該画像情報(デジタル)をウィンドウ設定部154へ送出する。
【0114】
次のステップ228では、画像情報を解析し、演算式(2)に基づいて、CTF値を演算し、次いでステップ230へ移行して、
図6(B)の特性図に基づいて、CTF値から距離を推定する。
【0115】
次のステップ232では、推定した距離に基づいて基準ウィンドウ110を補正し、プラテン用ウィンドウ110Pを生成し、ステップ234へ移行して、ウィンドウ記憶部164に記憶する。以上で、プラテン用ウィンドウ及びDADF用ウィンドウの生成が終了し、このルーチンは終了する。
【0116】
なお、
図8では、DADF用ウィンドウ110Dの生成に続きプラテン用ウィンドウ110Pの生成をシリアルに実行したが、生成順は逆でもよい。また、原稿M1を用いて、DADF読み及びプラテン読みを先に実行しておき、時分割で並行処理してもよい。また、DADF用ウィンドウ110Dの生成とプラテン用ウィンドウ110Pの生成とを別々のフローチャートで独立して実行するようにしてもよい。
【0117】
(画像読取制御ルーチン)
図9は、通常モードである画像読取制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0118】
通常モードの画像読取制御では、既に、
図8のフローチャートにおけるフィルタ係数設定が終了し、ウィンドウ記憶部164にDADF用ウィンドウ110Dとプラテン用ウィンドウ110Pが記憶されていることを前提とする。
【0119】
ステップ250では、原稿Mが装填されたか否かが判断される。この判断は、例えば、用紙サイズセンサ等からの信号で、自動原稿送り装置50に装填されたのか、読取ガラス70の上面に装填されたのかを判別することが可能である。
【0120】
ステップ250で否定判定された場合はこのルーチンは終了し、肯定判定された場合は、ステップ252へ移行する。
【0121】
ステップ252では、読取モードを判別する。このステップ252で、原稿Mが自動原稿送り装置50に装填されたと判別された場合は、DADF読みと判断し、ステップ254へ移行して、ウィンドウ記憶部164からDADF用ウィンドウ110Dを読み出してステップ258へ移行する。
【0122】
また、ステップ252で、原稿Mが読取ガラス70上に装填されたと判別された場合は、プラテン読みと判断し、ステップ256へ移行して、ウィンドウ記憶部164からプラテン用ウィンドウを読み出してステップ258へ移行する。
【0123】
ステップ258では、読み出した何れかのウィンドウをウィンドウ一時格納部158へ格納し、ステップ260へ移行する。ステップ260では、読取開始指示があったか否かが判断され、否定判定されると、ステップ262へ移行して、中止指示があったか否かが判断される。このステップ262で否定判定されると、ステップ260へ戻り、ステップ260又はステップ262の何れかで肯定判定されるまで、ステップ260及びステップ262を繰り返す。
【0124】
ここで、ステップ262で肯定判定されると、原稿読み取りを中止して、このルーチンは終了する。また、ステップ260で肯定判定されると、ステップ264へ移行して、読取モードに基づく、CISユニット88による原稿画像の読取制御を実行する。
【0125】
DADF読みの場合の読取制御は、CISユニット88を読取ガラス74の下方に固定配置し、原稿搬送路61に沿って搬送される原稿Mを読み取る。
【0126】
一方、プラテン読みの読取制御は、CISユニット88を読取ガラス70の下方のホームポジションに移動し、このホームポジションから往復移動することで、読取ガラス70の上面に固定配置された原稿Mを読み取る。
【0127】
次のステップ266では、読み取った画像情報(アナログ)を受け付け、次いでステップ268へ移行してA/D変換を含む初期処理を実行し、ステップ270へ移行してシェーディング処理が実行される。
【0128】
次のステップ272では、ウィンドウ一時格納部158に格納されているウィンドウを読み出し、次いでステップ274で、デバイス依存のフィルタ処理を実行する。この場合、ウィンドウ一時格納部158には、読取モードに基づいて、DADF用ウィンドウ110D又はプラテン用ウィンドウ110Pが格納されているため、それぞれの焦点距離に合ったフィルタ処理(エッジ強調処理)が実行される。
【0129】
従って、DADF読みとプラテン読みとで画質が変化するようなことはなく、何れの読取モードであっても、ぼけやにじみを解消することが可能となる。
【0130】
次のステップ276では色変換処理が実行され、次いでステップ278へ移行して、画像モード(文字、写真、印刷、混在)依存のフィルタ処理が実行され、ステップ280へ移行する。例えば、色変換では、送出先が画像形成部12であれば、RGB→L*a*b*→CMYKの順に色変換される。
【0131】
ステップ280では、濃度調整が実行されてステップ282へ移行し、例えば、画像形成部12へ出力される。
【0132】
(走査方向によるフィルタ係数調整)
なお、本実施の形態では、DADF読みとプラテン読みとの焦点距離の差に基づいてフィルタ係数を補正したとしても、基本的には、フィルタ係数の配置が、基準ウィンドウ110(
図10(A)参照)と同様に、上下左右対称の形態を維持する(
図10(B)参照)。
【0133】
ところで、CISユニット88による画像読み取りおいては、主走査方向と副走査方向で、画質(ぼけやにじみの度合い)に差が生じることがある。特に、主走査の方が、副走査よりもぼけやにじみが顕著となる。
【0134】
そこで、基準ウィンドウ110の原則(上下左右対称)を逸脱し、フィルタ係数を主走査方向と副走査方向とで数値を異ならせるようにしてもよい(
図10(C)参照)。
【0135】
この場合、本実施の形態において設定した、DADF用ウィンドウ110D、プラテン用ウィンドウ110Pの双方に反映させることが好ましい。
【0136】
なお、
図10で示したフィルタ係数の数値は一例であり、フィルタ係数の数値を限定するものではない。
【0137】
また、フィルタ処理を異ならせる方法として、フィルタの大きさを変える等を行ってもよい。その場合、センサと原稿とがある方のフィルタを大きくしたり、センサの焦点距離から遠い方のフィルタを大きくするとよい。