特許第6365011号(P6365011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧

特許6365011蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子、下地層形成用インキ、下地層付き集電体、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス。
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365011
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子、下地層形成用インキ、下地層付き集電体、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス。
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20180723BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20180723BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20180723BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20180723BHJP
   C08F 2/24 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01G11/38
   H01M4/02 Z
   H01M4/13
   C08F2/24 Z
【請求項の数】8
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-133905(P2014-133905)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-12484(P2016-12484A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉内 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】小池 隆明
(72)【発明者】
【氏名】堀口 雅之
(72)【発明者】
【氏名】仁科 安紀子
(72)【発明者】
【氏名】大竹 隆明
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/133030(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/018887(WO,A1)
【文献】 特開2013−093123(JP,A)
【文献】 特開2013−206759(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133031(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
C08F 2/24
H01G 11/38
H01M 4/02
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能ブロックイソシアネート基とを有する単量体(c)0.1〜20重量%、前記単量体以外の、エチレン性不飽和基を有する単量体(e)80〜99.9重量%を含むエチレン性不飽和基を有する単量体を水中にて界面活性剤の存在下、ラジカル重合開始剤によって乳化重合してなる蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子(A)(但し、単量体(e)は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルコキシシリル基とを有する単量体(a)、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能イソシアネート基とを有する単量体(b)、および1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルキロールアミド基とを有する単量体(d)は含まない)
【請求項2】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルコキシシリル基とを有する単量体(a)と1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能ブロックイソシアネート基とを有する単量体(c)とを0.1〜20重量%、前記単量体以外の、エチレン性不飽和基を有する単量体(e)80〜99.9重量%を含むエチレン性不飽和基を有する単量体を水中にて界面活性剤の存在下、ラジカル重合開始剤によって乳化重合してなる蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子(A)(但し、単量体(e)は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能イソシアネート基とを有する単量体(b)、および1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルキロールアミド基とを有する単量体(d)は含まない)
【請求項3】
エチレン性不飽和基を有する単量体(e)が、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数8〜18のアルキル基とを有する単量体(f)および/または1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、環状構造とを有する単量体(g)を含み、該単量体(f)および/または(g)が、全単量体の合計100%中に30〜95重量%含まれることを特徴とする、請求項1または2記載の蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子(A)。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子(A)と、水溶性樹脂(B)と、導電性の炭素材料(C)とを含む事を特徴とする蓄電デバイス下地層形成用インキ。
【請求項5】
水溶性樹脂(B)が、水酸基価が10〜1275mgKOH/gであることを特徴とする請求項4に記載の蓄電デバイス下地層形成用インキ。
【請求項6】
集電体と、請求項5記載の蓄電デバイス下地層形成用インキから形成された下地層とを有する蓄電デバイス用下地層付き集電体。
【請求項7】
請求項6記載の蓄電デバイス用下地層付き集電体と、極板層とからなる蓄電デバイス用電極。
【請求項8】
正極と負極と電解液とを具備する蓄電デバイスであって、前記正極または前記負極の少なくとも一方が、請求項7記載の蓄電デバイス用電極である、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子、下地層形成用インキ、及びそのインキを用いて得られる下地層を有する下地層付き集電体、及びその下地層付き集電体を有する蓄電デバイス用電極、並びに蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ重量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。また、自動車搭載用等の大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型二次電池の実現が望まれており、電池が使用される様々な環境下でさらなる高寿命化が求められている。さらに、高出力かつ高エネルギー密度な蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターなどのキャパシターも注目されている。
【0003】
そのような要求に応えるため、リチウムイオン二次電池、アルカリ二次電池などの二次電池やキャパシターなどの蓄電デバイスの開発、例えば、極板層の下地層の形成に使用される下地層用インキの開発にも関心が集まりつつある。
【0004】
蓄電デバイスの下地層は、導電助剤、バインダーより構成される。特許文献1には、導電性の炭素粉とアクリル酸重合体などの水溶性結着材とを含む導電性組成物を電極の集電体上へコーティングした下地層が開示されている。また、特許文献2には、カーボンブラック粉末とブチルゴムとをトルエン中で混合して作製した下地形成用組成物が開示されている。しかしながら、これらの組成物は、下地層として用いた場合に集電体との密着性にさらなる改良が必要であり、さらに、上層に合材インキを塗工するために必要な耐水性の改良が必要であり、電池の高寿命化にはさらなる改良が望まれていた。
【0005】
これらの改良に向けて、特許文献3では、樹脂分散体に対して、2つ以上の架橋基を有する低分子架橋剤を添加することにより、下地層の集電体への密着性が改良され、導電性の高い電極を得る旨開示されている。しかしながら、樹脂分散体と架橋成分が独立して存在しているため、乾燥条件によってはどちらかの偏在化が起こり十分な密着性や耐水性が得られないという問題を潜在的に有している。また、電池の使用される環境も様々であり、高温などの環境下にも耐えうる電池においては、さらなる電極の密着性や充放電サイクル特性の改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−160656号公報
【特許文献2】特開昭63−121265号公報
【特許文献3】特開平7−201362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、集電体、または極板層との密着性に優れ、優れた耐水性を有する下地層や、優れた充放電サイクル特性を有する蓄電デバイスを提供することが可能な蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子の提供を目的とする。さらに、集電体への優れた密着性と優れた耐水性をあわせ持つ蓄電デバイス用下地層付き集電体や、この下地層を用いた蓄電デバイス用電極、およびこれらの電極を用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能ブロックイソシアネート基とを有する単量体(c)0.1〜20重量%、前記単量体以外の、エチレン性不飽和基を有する単量体(e)80〜99.9重量%を含むエチレン性不飽和基を有する単量体を水中にて界面活性剤の存在下、ラジカル重合開始剤によって乳化重合してなる蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子(A)(但し、単量体(e)は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルコキシシリル基とを有する単量体(a)、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能イソシアネート基とを有する単量体(b)、および1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルキロールアミド基とを有する単量体(d)は含まない)に関する。
また、本発明は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルコキシシリル基とを有する単量体(a)と1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能ブロックイソシアネート基とを有する単量体(c)とを0.1〜20重量%、前記単量体以外の、エチレン性不飽和基を有する単量体(e)80〜99.9重量%を含むエチレン性不飽和基を有する単量体を水中にて界面活性剤の存在下、ラジカル重合開始剤によって乳化重合してなる前記蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子(A)(但し、単量体(e)は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能イソシアネート基とを有する単量体(b)、および1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルキロールアミド基とを有する単量体(d)は含まない)に関する。
【0009】
また、本発明は、エチレン性不飽和基を有する単量体(e)が、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数8〜18のアルキル基とを有する単量体(f)および/または1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、環状構造とを有する単量体(g)を含み、該単量体(f)および/または(g)が、全単量体の合計100%中に30〜95重量%含まれることを特徴とする、前記蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子(A)に関する。
【0010】
また、本発明は、前記蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子(A)と、水溶性樹脂(B)と、導電性の炭素材料(C)とを含む事を特徴とする蓄電デバイス下地層形成用インキに関する。
【0011】
また、本発明は、水溶性樹脂(B)が、水酸基価が10〜1275mgKOH/gであることを特徴とする前記蓄電デバイス下地層形成用インキに関する。
【0012】
また、本発明は、集電体と、前記蓄電デバイス下地層形成用インキから形成された下地層とを有する蓄電デバイス用下地層付き集電体に関する。
【0013】
また、本発明は、前記蓄電デバイス用下地層付き集電体と、極板層とからなる蓄電デバイス用電極に関する。
【0014】
また、本発明は、正極と負極と電解液とを具備する蓄電デバイスであって、前記正極または前記負極の少なくとも一方が、前記蓄電デバイス用電極である、蓄電デバイスに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子は、集電体との密着性、耐水性に優れており、この樹脂微粒子を用いることにより、耐水性、集電体との密着性に優れた下地層を有する電極を提供でき、ひいては優れた充放電サイクル特性を有する蓄電デバイスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子は、特定の官能基を有するエチレン性不飽和単量体を含む単量体を共重合して得られる、官能基含有樹脂微粒子であることを特徴とする。樹脂微粒子(A)中の官能基が、表面に水酸基を有する集電体と架橋構造をとることにより耐水性を向上させることができる。さらには架橋構造や官能基の量を調整することで、可とう性、安定性に優れた蓄電デバイス下地層用樹脂微粒子を得ることができる。
【0017】
<樹脂微粒子(A)>
本発明の蓄電デバイス下地層用バインダーに用いる樹脂微粒子(A)は、エチレン性不飽和単量体を水中にて界面活性剤の存在下、ラジカル重合開始剤によって乳化重合して得られる樹脂微粒子である。本発明に用いる樹脂微粒子(A)は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルコキシシリル基とを有する単量体(a)、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能イソシアネート基とを有する単量体(b)、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能ブロックイソシアネート基とを有する単量体(c)、および1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルキロールアミド基とを有する単量体(d)からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体0.1〜20重量%、前記単量体(a)〜(d)以外の、エチレン性不飽和基を有する単量体(e)80〜99.9重量%を含むエチレン性不飽和基を有する単量体を水中にて界面活性剤の存在下、ラジカル重合開始剤によって乳化重合してなる樹脂微粒子であることを特徴とする。ここでいう単官能または多官能とは、その官能基を少なくとも1つ有していることを示す。
【0018】
<単量体(a)〜(d)について>
単量体(a)〜(d)に含まれる単量体を使用することにより、水酸基と架橋可能な官能基を、樹脂微粒子(A)の粒子内や表面に残存させることができ、これにより下地層の耐水性などの物性を向上させることができる。単量体(a)〜(d)に含まれる単量体は、粒子合成後でもその官能基が粒子内部や表面に残存しやすく、少量でも集電体や水酸基含有水溶性樹脂(B)との架橋効果が大きい。
【0019】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルコキシシリル基とを有する単量体(a)としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどがあげられる。好ましくは、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランである。
【0020】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能イソシアネート基とを有する単量体(b)としては、例えば、2−イソシアネートナトエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアネートナトエトキシエチル(メタ)アクリラートなどがあげられる。
【0021】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能ブロックイソシアネート基とを有する単量体(c)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−(0−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルバモイル)マロン酸ジエチルなどがあげられる。
【0022】
本発明におけるブロックイソシアネート基とは、通常の条件では、イソシアネート基を他の官能基で保護することによりイソシアネート基の反応性を抑える一方で、加熱により脱保護し、活性なイソシアネート基を再生させることができるイソシアネートブロック体のことを示す。
【0023】
また、単量体(c)としては、市販品を使用できるほか、公知の方法で調製して使用することもできる。例えば、エチレン性不飽和結合を有しているイソシアネート化合物とブロック剤とを溶媒中0〜200℃程度の温度で撹拌し、濃縮、濾過、抽出、晶析、蒸留等の公知の分離精製手段を用いて分離することにより得ることができる。
【0024】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アルキロールアミド基とを有する単量体(d)としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアルキロール(メタ)アクリルアミド類などがあげられる。
【0025】
本発明では、単量体(a)〜(d)に含まれる単量体は、乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体全体(合計100重量%)中に、好ましくは0.1〜20重量%であり、特に好ましくは0.5〜5.0重量%使用される。0.1重量%未満であると、集電体表面の水酸基と架橋可能な官能基の量が少なくなり、耐水性向上に十分寄与できない。また、20重量%を超えると、架橋が過密になるため電池性能に悪影響を与える懸念があるほか、乳化重合する際の重合安定性に問題を生じるか、重合できたとしても保存安定性に問題が生じる場合がある。前記単量体(a)〜(d)は、重合時の安定性や蓄電デバイスのサイクル特性の観点から単量体(c)を使用することが好ましく、単量体(a)と単量体(c)を併用することがさらに好ましい。
【0026】
<前記単量体(a)〜(d)以外の、エチレン性不飽和基を有する単量体(e)>
本発明の樹脂微粒子(A)は、単量体(a)〜(d)に加えて、単量体(a)〜(d)以外のエチレン性不飽和基を有する単量体(e)を同時に乳化重合することで得ることができる。
【0027】
この単量体(e)としては、単量体(a)〜(d)以外であって、エチレン性不飽和基を有する単量体であれば特に限定されないが、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数8〜18のアルキル基とを有する単量体(f)および/または1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、環状構造とを有する単量体(g)を含むことが好ましい。該単量体(f)および/または(g)の含有量は特に限定されないが、単量体(a)〜(e)の合計100%中に30〜95重量%含まれると、粒子合成時の粒子安定性や密着性に優れるため好ましい。30重量%未満であると耐電解液性に悪影響をおよぼす場合があり、95重量%を超えると粒子合成時の安定性に悪影響をおよぼすか、合成できたとしても粒子の経時安定性が損なわれる場合がある。
【0028】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数8〜18のアルキル基とを有する単量体(f)としては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0029】
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、環状構造とを有する単量体(g)としては、脂環式エチレン性不飽和単量体や芳香族エチレン性不飽和単量体などがあげられる。脂環式エチレン性不飽和単量体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどがあげられ、芳香族エチレン性不飽和単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼンなどがあげられる。
【0030】
その他の単量体(e)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体;パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレンなどのパーフルオロアルキル、アルキレン類などのパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和化合物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエーテル鎖を有するエチレン性不飽和化合物;ラクトン変性(メタ)アクリレートなどのポリエステル鎖を有するエチレン性不飽和化合物;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、およびトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩基含有エチレン性不飽和化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル系化合物;ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系エチレン性不飽和単量体;1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和単量体;酢酸アリル、シアン化アリルなどのアリル単量体;シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトンなどのビニル単量体;アセチレン、エチニルトルエンなどのエチニル単量体などがあげられる。
【0031】
また、その他の単量体(e)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1−メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルなどのエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、トリアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリル酸などの多官能(メタ)アクリル酸エステル類;ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニルなどのジビニル類;イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリルなどのジアリル類などの1分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体があげられる。
【0032】
また、その他の単量体(e)としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体;ターシャリーブチル(メタ)アクリレートなどのターシャリーブチル基含有エチレン性不飽和単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体;(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアッシドホスフェートなどのリン酸基含有エチレン性不飽和単量体;ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、N−ビニルホルムアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレートなどのケト基含有エチレン性不飽和単量体(1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ケト基とを有する単量体)などがあげられる。
【0033】
また、その他の単量体(e)としては、例えば、(メタ)アクリルアミドなどの第一アミド基含有エチレン性不飽和単量体;N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミドなどのモノアルコキシ(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミドなどのジアルコキシ(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどのジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどのジアルキル(メタ)アクリルアミド類;ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのケト基含有(メタ)アクリルアミド類などがあげられる。
【0034】
また、その他の単量体(e)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコールなどがあげられる。
【0035】
また、その他の単量体(e)の中でもアミド基、カルボキシル基、ターシャリーブチル基(熱によりターシャリーブタノールが脱離してカルボキシル基になる。)、スルホン酸基、およびリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合して得られた樹脂微粒子は、重合後にも粒子内や表面に前記官能基が残存し、集電体の密着性などの物性を向上させる効果があると同時に、合成時の凝集を防いだり、合成後の粒子安定性を保持したりする場合あるため好ましく使用することができる。
【0036】
アミド基、カルボキシル基、ターシャリーブチル基、スルホン酸基、およびリン酸基を含む単量体を用いる場合には、乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体全体(合計100重量%)中に0.1〜10重量%含まれることが好ましく、さらには1〜5重量%含まれることがより好ましい。アミド基、カルボキシル基、ターシャリーブチル基、スルホン酸基、およびリン酸基を含む単量体が0.1重量%未満であると、粒子の安定性が悪くなる場合がある。また10重量%を超えると、樹脂微粒子やバインダー組成物の親水性が強くなりすぎて耐電解液性が悪くなる場合がある。
【0037】
これらの単量体は、粒子の重合安定性やガラス転移温度、さらには成膜性や塗膜物性を調整するために、単量体を2種以上併用して用いることができる。また、例えば(メタ)アクリロニトリルなどを併用することでゴム弾性が発現する効果がある。
【0038】
<樹脂微粒子(A)の製造方法>
本発明の樹脂微粒子(A)は、従来既知の乳化重合方法により合成することができる。
【0039】
<乳化重合で用いられる乳化剤>
本発明において乳化重合の際に用いられる乳化剤としては、エチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤やエチレン性不飽和基を有しない非反応性乳化剤など、従来公知のものを任意に使用することができる。
【0040】
エチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤はさらに大別して、アニオン系、非イオン系のノニオン系のものが例示できる。特にエチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性乳化剤若しくはノニオン性反応性乳化剤を用いると、共重合体の分散粒子径が微細となるとともに粒度分布が狭くなるため、蓄電デバイス用バインダーとして使用した際に耐電解液性を向上することができ好ましい。このエチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性乳化剤若しくはノニオン性反応性乳化剤は、1種を単独で使用しても、複数種を混合して用いてもよい。
【0041】
エチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性乳化剤としては特に限定されないが、具体的には、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王株式会社製ラテムルPD−104など);スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2など);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、株式会社ADEKA製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N、など);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30など);リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL、株式会社ADEKA製アデカリアソープPP−70など)などがあげられる。
【0042】
エチレン性不飽和基を有するノニオン系反応性乳化剤としては特に限定されないが、具体的には、例えばアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450など);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、株式会社ADEKA製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40など);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114など)などがあげられる。
【0043】
本発明の樹脂微粒子(A)を乳化重合により得るに際しては、前記したエチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤とともに、必要に応じエチレン性不飽和基を有しない非反応性乳化剤を併用することができる。非反応性乳化剤は、非反応性アニオン系乳化剤と非反応性ノニオン系乳化剤とに大別することができる。
【0044】
非反応性ノニオン系乳化剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルなどを例示することができる。
【0045】
また、非反応性アニオン系乳化剤の例としては、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類;ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類などを例示することができる。
【0046】
本発明において用いられる乳化剤の使用量は、必ずしも限定されるものではなく、樹脂微粒子(A)が最終的に蓄電デバイス下地層用バインダー組成物として使用される際に求められる物性にしたがって適宜選択できる。例えば、エチレン性不飽和単量体の合計100重量部に対して、乳化剤は重合時の安定性の理由から、通常0.1〜30重量部であることが好ましく、0.3〜20重量部であることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の樹脂微粒子(A)の乳化重合に際しては、水溶性保護コロイドを併用することもできる。水溶性保護コロイドとしては、例えば、アクリルポリマー、スチレンアクリルポリマー、スチレンマレイン酸共重合体、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩などのセルロース誘導体;グアガムなどの天然多糖類などがあげられ、これらは、単独でも複数種併用の態様でも利用できる。水溶性保護コロイドの使用量としては重合時の安定性の理由から、エチレン性不飽和単量体の合計100重量部に対して0.1〜10重量部であり、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
【0048】
<乳化重合で用いられる水性媒体>
本発明の樹脂微粒子(A)の乳化重合に際して用いられる水性媒体としては、水があげられ、親水性の有機溶剤も本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。
【0049】
<乳化重合で用いられる重合開始剤>
本発明の樹脂微粒子(A)を得るに際して用いられる重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。
【0050】
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリルなどのアゾビス化合物などをあげることができる。これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。これら重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.1〜10.0重量部の量を用いるのが好ましい。
【0051】
本発明においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドなど、従来既知のものを好適に使用することができる。また、乳化重合を行うに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合を行ったりすることが容易になる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩などの還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。これら還元剤は、全エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.05〜5.0重量部の量を用いるのが好ましい。
【0052】
<乳化重合の条件>
なお、前記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射などによっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常70℃程度とすればよい。重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。
【0053】
<反応に用いられるその他の材料>
さらに必要に応じて、緩衝剤として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどが、また、連鎖移動剤としてのオクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類が適量使用できる。
【0054】
樹脂微粒子(A)の重合にカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体などの酸性官能基を有する単量体を使用した場合、重合前や重合後に塩基性化合物で中和することができる。塩基性化合物としては、アンモニアもしくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミンなどのアルキルアミン類;2−ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルコールアミン類;モルホリンなどがあげられる。アミノメチルプロパノール、アンモニア等の揮発性の高い塩基は、乾燥性を上げる効果が高いため好ましい。
【0055】
<樹脂微粒子(A)の特性>
<ガラス転移温度>
樹脂微粒子(A)のガラス転移温度(以下、Tgともいう)は、−30〜70℃が好ましく、−20〜40℃がより好ましく、−10℃〜30℃がさらに好ましい。Tgが−30℃未満の場合、バインダーが過度に導電性の炭素材料を覆い、インピーダンスが高くなりやすい。また、Tgが70℃を超えると、バインダーの柔軟性、粘着性が乏しくなり、集電材への接着性、下地層の成形性が劣る場合がある。なお、ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)を用いて求めた値である。
【0056】
DSC(示差走査熱量計)によるガラス転移温度の測定は以下のようにして行うことができる。樹脂微粒子(A)を乾固した樹脂約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該試験容器をDSC測定ホルダーにセットし、10℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取る。このときのピーク温度を本発明のガラス転移温度とする。
【0057】
<粒子構造>
また、本発明においては樹脂微粒子(A)の粒子構造を多層構造、いわゆるコアシェル粒子にすることもできる。例えば、コア部、またはシェル部に官能基を有する単量体を主に重合させた樹脂を局在化させたり、コアとシェルによってTgや組成に差を設けたりすることにより、硬化性、乾燥性、成膜性、バインダーの機械強度を向上させることができる。
【0058】
<粒子径>
樹脂微粒子(A)の平均粒子径は、導電性の炭素材料の結着性や粒子の安定性の点から、10〜500nmであることが好ましく、30〜250nmであることがより好ましい。また、1μmを超えるような粗大粒子が多く含有されるようになると粒子の安定性が損なわれるので、1μmを超える粗大粒子は多くとも5重量%以下であることが好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定できる。
【0059】
動的光散乱法による平均粒子径の測定は、以下のようにして行うことができる。樹脂微粒子(A)分散液は固形分に応じて200〜1000倍に水希釈しておく。該希釈液約5mlを測定装置[(株)日機装製マイクロトラック]のセルに注入し、サンプルに応じた溶剤(本発明では水)および樹脂の屈折率条件を入力後、測定を行う。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを本発明の平均粒子径とする。
【0060】
<塗膜の強度、伸び率>
さらに樹脂微粒子(A)を成膜して得られる塗膜の強度、および伸び率は、樹脂の強靭性の点から、強度1.0〜7.0N/mm2、伸び率300〜2000%であることが好ましく、さらには強度2.0〜5.5N/mm2、伸び率400〜1200%であることがより好ましい。強度が1.0N/mm2未満であると導電性の炭素材料の保持力や下地層の集電体への結着力が悪くなる場合があり、また、強度が7.0N/mm2を超えると塗膜が剛直になりすぎて結着力が悪くなる。伸び率が300%未満であると、塗膜がもろく、結着力が十分得られない場合がある。また、伸び率が2000%を超えると、導電性の炭素材料の保持力や下地層の集電体への結着力が悪くなる場合がある。なお、本発明における塗膜の強度、および伸び率とは、テンシロンにより測定した破断強度、破断伸度のことである。
【0061】
テンシロンによる塗膜の強度、および伸び率の測定は、以下の方法で行うことができる。樹脂微粒子(A)を乾固して、約0.5mm厚のシートを作製しておく。測定試験片は5mm×60mmに切り抜き、膜厚を正確に測定しておく。測定は、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿条件下にて、引張試験機[オリエンテック(株)製テンシロン]により、チャック間20mm、引張速度50mm/分にて行う。測定により得られる破断強さ、破断伸びから膜厚を考慮して算出した破断強度および破断伸び率を本発明の強度および伸び率とする。
【0062】
<溶出率>
さらに本発明の樹脂微粒子(A)を成膜して得られる塗膜の溶出率は、50%以下、さらには30%以下であることが好ましい。溶出率とは、樹脂微粒子を成膜して得られる塗膜を有機溶剤(ここで有機溶剤とは、メタノール、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサンなどの汎用的に使用される溶媒、またはプロピレンカーボネート、エチルカーボネートなどの二次電池電解液として使用される溶媒などのことを言う)に一定時間浸漬後、有機溶剤に溶解した樹脂分のことをいう。溶出率が大きい樹脂では、電解液中での使用時にバインダー本来の結着性を維持することができず、下地層の剥離などが発生し、蓄電デバイス性能の劣化の問題が起こりうる。
【0063】
通常、樹脂溶出率の測定は、以下の方法で行うことができる。樹脂微粒子(A)を乾固して、約0.2gの試験片を作製しておく。測定試験片は2cm×2cmに切り抜き、重量を正確に測定しておく。本検討においては、溶出率測定用有機溶剤をプロピレンカーボネートとし、試験を有機溶剤に浸漬後70℃、24時間放置して有機溶剤を十分に浸漬させる。浸漬後、試験片中に残存している有機溶剤をオーブン乾燥にて完全に除去し、重量変化を測定する。この浸漬前後の重量変化により、有機溶剤に溶解した樹脂分を算出することで、本発明の溶出率とする。
【0064】
<樹脂微粒子(A)の使用態様>
樹脂微粒子(A)は、二次電池の正極、および負極に用いる下地層に使用することができる。その他、エネルギーデバイス、すなわち、キャパシター、リチウムイオンキャパシター、太陽電池などの極板用下地層にも使用することができる。
樹脂微粒子(A)は、さらに水溶性樹脂(B)を加え、バインダー組成物として用いることができる。
【0065】
<水溶性樹脂(B)>
本発明の水溶性樹脂(B)とは、25℃の水99g中に樹脂を1g入れて撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中で樹脂が完全に溶解可能なものである。
【0066】
水溶性樹脂(B)としては、上述の通り水溶性を示し水酸基を有する樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等の多糖類の樹脂を含む高分子化合物が挙げられる。また、水溶性であれば、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
【0067】
水溶性樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であるのが好ましく、さらには5,000〜500,000がより好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると集電体への密着性効果が十分でない場合があり、また、重量平均分子量が1,000,000を超えると化合物の粘度が高くなる場合があり、電極作製時のハンドリング性が悪くなる場合がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0068】
水溶性樹脂(B)が水酸基を含有すると、樹脂微粒子(A)と架橋し、密着性や耐水性がさらに向上するため好ましい。好ましい具体的としては、カルボキシメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0069】
水溶性樹脂(B)の水酸基価(mgKOH/g)は特に限定されないが、10以上1275以下であるのが好ましく、50以上1275以下がより好ましく、200以上1000以下が更に好ましい。水酸基価が10未満であると樹脂微粒子(A)との架橋が不十分となり、集電体への密着性効果が十分でない場合があり、耐水性向上に十分寄与できない。
【0070】
水溶性樹脂(B)は、樹脂微粒子(A)の固形分100重量部に対して0.1〜200重量部添加するのが好ましく、1〜120重量部がより好ましく、3〜67重量部が更に好ましい。最も好ましくは3〜25重量部である。水溶性樹脂(B)の割合が少なすぎると、集電体の密着性に寄与する官能基の量が少なくなり、集電体の密着性向上に十分寄与できない場合がある。一方、水溶性樹脂バインダー(B)の割合が多すぎると、水溶性樹脂(B)の電解液への漏出など、バインダー性能への悪影響を起こす場合がある。また、耐水性が不足してしまい、良好な下地層を形成することが出来ない場合がある。
さらに、水溶性樹脂(B)は2種類以上併用することも可能である。
【0071】
<下地層用インキ>
樹脂微粒子(A)と、水溶性樹脂(B)と、導電性の炭素材料(C)と混合して、下地層用インキを作成することができる。また、前記バインダー組成物に、導電性の炭素材料(C)を配合することにより下地層用インキを作成することができる。該下地層用インキを集電体に塗布し、乾燥することにより、蓄電デバイス用下地層を製造することができる。下地層インキは、さらに必要に応じて活物質ではない添加剤を使用してもよい。
【0072】
本発明において、下地層用インキの総固形分に占める前記バインダー組成物の割合は、25重量%以上、80重量%以下が好ましく、更に好ましくは30重量%以上、65重量%以下である。バインダー組成物が少なすぎると、塗膜の密着性などの耐久性が保てない場合があり、一方、導電性の炭素材料が少なすぎると、下地層の導電性が低下する場合がある。
【0073】
下地層用インキ中の導電助剤(C)は、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではなく、カーボンブラック、黒鉛、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラック、黒鉛が好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。
【0074】
<下地層付き集電体、電極>
下地層用インキを、集電体上に塗工・乾燥し、下地層を形成し、蓄電デバイス用下地層付き集電体を得ることができる。あるいは、本発明の導電性組成物を、集電体上に塗工・乾燥し、下地層を形成し、該下地層上に、極板層を設け、蓄電デバイス用電極を得ることもできる。下地層上に設ける極板層は、例えば合材インキを用いて形成することができる。
【0075】
(集電体)
集電体の材質や形状は特に限定されず、各種蓄電デバイス用に最適なものを適宜選択することができる。
【0076】
例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。リチウムイオン電池の場合、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、それぞれ好ましい。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0077】
集電体上に下地層形成用インキや合材インキを塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
【0078】
具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0079】
<合材インキ>
合材インキは、一般的な蓄電デバイス用の合材インキを使用することができる。合材インキは、活物質および溶媒を必須成分とし、必要に応じて導電助剤やバインダーを含有することができる。
【0080】
<蓄電デバイス>
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、二次電池、キャパシターなどの蓄電デバイスを得ることができる。
【0081】
二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池で従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
キャパシターとしては、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターなどが挙げられ、それぞれのキャパシターで従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
【0082】
(電解液)
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。
【0083】
電解質としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、又はLiBPh等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0084】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0085】
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びそれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0087】
(電池構造・構成)
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシターの構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「重量部」を表す。
【0089】
(樹脂微粒子(A)のガラス転移温度の測定)
本願明細書に記載の方法によって測定した。
(樹脂微粒子(A)粒子径の測定)
本願明細書に記載した動的光散乱法によって測定した。
(水溶性樹脂(B)の水酸基価)
分子式に基づき計算によって理論値を求めた。
【0090】
<樹脂微粒子(A)水分散体の調製>
[実施例1]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアデカリアソープSR−10(株式会社ADEKA製)0.2部とを仕込み、別途、ラウリルアクリレート56.0部、シクロヘキシルメタクリレート37.8部、エチルアクリレート5.0部、メタクリル酸1.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.2部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアデカリアソープSR−10(株式会社ADEKA製)1.8部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を70℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を70℃で5分間保持した後、内温を70℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液の残りを3時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。25%アンモニア水を添加して、pHを5.0とし、さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して実施例1の官能基含有樹脂微粒子水分散体を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。
【0091】
[実施例2〜13、比較例1〜3]
表1に示す配合組成で、実施例1と同様の方法で合成し、実施例2〜13、比較例1〜2の樹脂微粒子水分散体を得た。比較例3は安定して合成することができなかった。なお、本明細書において、実施例1、2、4〜6、11、13、およびこれらの樹脂を用いた例は参考例である。
【0092】
【表1】
【0093】
[モノマーの説明]
LA:ラウリルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
MMA:メタクリル酸メチル
EA:エチルアクリレート
MAA:メタクリル酸
AAm:アクリルアミド
DAAm:ダイアセトンアクリルアミド
HEMA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
SSMA:スチレンスルホン酸ナトリウム
DBS:ジビニルベンゼン
【0094】
<下地層形成用インキ、下地層付き集電体の作成>
[実施例14]
実施例1で得られた樹脂微粒子水分散体の固形分100部に対して、それぞれ、アセチレンブラック67部、水溶性樹脂としてカルボキシメチルセルロース33部を添加し、固形分8%になるようにイオン交換水を加えた後、混練して下地層用インキを調製した。さらに、この下地層用インキを集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にバーコーターを用いて塗布した後、加熱乾燥し、厚みが1.2μmとなる実施例14の下地層付き集電体を作製した。
[実施例15〜39、比較例4〜7]
表2に示す配合組成で、実施例14と同様の方法で配合し、表2に示す集電体上に同様の方法で塗布することで、実施例15〜39、比較例4〜7の下地層付き集電体を作成した。
【0095】
【表2】

(表2中の水溶性樹脂(B))
・ CMC:カルボキシメチルセルロース(水酸基価370KOHmg/g、分子量Mw100000)
・ PVA:ポリビニルアルコール(水酸基価850KOHmg/g、分子量Mw70000)
・ PEO:ポリエチレンオキサイド(水酸基価5KOHmg/g、分子量Mw20000)
・ スチレンアクリル共重合体:スチレン75%アクリル酸25%の共重合体(水酸基無し、分子量Mw10000)
【0096】
<下地層の密着性の評価>
各下地層付き集電体の表面にナイフを用いて、下地層から集電体に達する深さまでの切込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本入れて碁盤目の切込みを入れた。この切り込みに粘着テープを貼り付けて直ちに引き剥がし、下地層の脱落の程度を目視判定で判定した。評価基準を下記に示す。評価結果を表2に示す。
○:「剥離なし」
○△:「わずかに剥離(実用上問題のないレベル)」
×:「ほとんどの部分で剥離」
××:「完全に剥離」
<下地層の耐水性の評価>
【0097】
上記で作製した下地層の表面を、水が含まれた綿布で擦り耐水性を評価した。下地層の上へ水性合材インキを塗工する際に、下地層が崩壊しないためには耐水性が重要となる。評価基準を下記に示し、評価結果を表2に示す。
【0098】
○:「削れは見られない(実用上問題のないレベル)」
○△:「下地層がわずかに削れて綿布への付着が見られるが、集電体表面は剥き出しにはなっていない(問題はあるが使用可能レベル)」
×:「下地層が削れて、集電体表面が部分的に剥き出しになっている」
××:「下地層が完全に削れ落ちている」
【0099】
<評価用リチウムイオン二次電池正極用合材インキの作成>
ポリテトラフルオロエチレン30−J(三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)の固形分100部に対して、それぞれ、正極活物質であるリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を3000部、アセチレンブラック167部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース200部を添加し、固形分52%になるようにイオン交換水を加えた後、混練してリチウムイオン電池正極合剤インキを調製した。
<評価用リチウムイオン二次電池用負極用合材インキの作成>
スチレンブタジエン系ラテックス40%水系分散体の固形分100部に対して、それぞれ、負極活物質である人造黒鉛を3000部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース33部を添加し、固形分50%になるようにイオン交換水を加えた後、混練してリチウムイオン電池用負極合剤インキを調製した。
【0100】
<下地層付きリチウムイオン二次電池正極の作成>
[実施例40]
評価用リチウムイオン電池用正極合剤インキを、実施例14の下地層付き集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる実施例40の下地層付きリチウムイオン二次電池用正極を作製した。
[実施例41〜52、比較例8、9]
表3に示す下地層付き集電体を用いた以外は実施例40の下地層付きリチウムイオン二次電池正極と同様にして、実施例41〜52、比較例8、9の下地層付きリチウムイオン二次電池正極を作成した。
<評価用対極1(下地層無しリチウムイオン二次電池用正極)の作成>
集電体として下地層を塗工していないアルミ箔を用いた以外は実施例40と同様にして、評価用対極1を作成した。
【0101】
【表3】
【0102】
<下地層付きリチウムイオン二次電池用負極の作成>
[実施例53]
評価用リチウムイオン電池用負極合剤インキを、実施例27の下地層付き集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが70μmとなる実施例53の下地層付きリチウムイオン二次電池用正極を作製した。
[実施例54〜65、比較例10、11]
表4に示す下地層を用いた以外は下地層付きリチウムイオン二次電池負極1と同様にして、実施例54〜65、比較例10、11の下地層付きリチウムイオン二次電池負極を作成した。
<評価用対極2(下地層無しリチウムイオン二次電池用負極)の作成>
集電体として下地層を塗工していない銅箔を用いた以外は実施例53と同様にして、評価用対極2を作成した。
【0103】
【表4】
【0104】
<コイン型リチウムイオン二次電池>
表3、4に示す正極と負極をそれぞれ直径16mmに打ち抜き、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)と、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなるコイン型電池を作製した。コイン型電池はアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、コイン型電池作製後、所定の電池特性評価を行った。
(充放電サイクル特性)
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。
【0105】
充電電流1.0mA(0.2C)にて充電終止電圧4.0Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.1mA)を行った後、放電電流1.0mAで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして5サイクルの充電・放電を繰り返し、5サイクル目の放電容量を初回放電容量とした。(初回放電容量を維持率100%とする)。
【0106】
次に、50℃恒温槽にて充電電流5.0mAにて充電終止電圧4.0Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.5mA)を行った後、放電電流5.0mAで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを200回行い放電容量維持率の変化率を算出した(100%に近いほど良好)。
【0107】
◎:「変化率が90%以上。特に優れている。」
○:「変化率が85%以上、90%未満。全く問題なし。」
○△:「変化率が80%以上、85%未満。使用可能なレベル。」
△:「変化率が75%以上、80%未満。問題はあるが使用可能なレベル。」
×:「変化率が75%未満。実用上問題あり、使用不可。」
【0108】
<評価用電気二重層キャパシター電極用合材インキの作成>
ポリテトラフルオロエチレン30−J(三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)の固形分100部に対して、それぞれ、活物質である活性炭を4300部、アセチレンブラック250部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース400部を添加し、固形分50%になるようにイオン交換水を加えた後、混練して電気二重層キャパシター電極用合剤インキを調製した。
【0109】
<下地層付き電気二重層キャパシター電極の作成>
[実施例66]
評価用電気二重層キャパシター電極用合剤インキを、実施例14の下地層付き集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが50μmとなる実施例66の下地層なし電気二重層キャパシター用電極を作製した。
[実施例67〜91、比較例12〜15]
表5、6に示す下地層付き集電体を用いた以外は、実施例66の下地層付き電気二重層キャパシター電極と同様にして、実施例67〜78、比較例12、13の下地層付き電気二重層キャパシター電極を作成した。
<評価用電極3(下地層無し電気二重層キャパシター電極)の作成>
集電体として下地層を塗工していないアルミ箔を用いた以外は、実施例66と同様にして、評価用対極3を作成した。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
<電気二重層キャパシター>
表5、6に示す電極をそれぞれ直径16mmに打ち抜き、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)と、電解液(プロピレンカーボネート溶媒に(TEMABF(四フッ化ホウ素トリエチルメチルアンモニウム)を1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなる電気二重層キャパシターを作製した。電気二重層キャパシターはアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、電気二重層キャパシター作製後、所定の電気特性評価を行った。
(充放電サイクル特性)
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。
(充放電サイクル特性)
得られた電気二重層キャパシターについて、充放電装置を用い、充放電測定を行った。
【0113】
充電電流10Cレートにて充電終止電圧2.0Vまで充電を行った後、放電電流10Cレートで放電終止電圧0Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして5サイクルの充電・放電を繰り返し、5サイクル目の放電容量を初回放電容量とした。(初回放電容量を維持率100%とする)。また、充放電電流レートは、セル容量を1時間で放電出来る電流の大きさを1Cとした。
【0114】
次に、50℃恒温槽にて充電電流10Cレートにて充電終止電圧2.0Vで充電を行った後、放電電流10Cレートで放電終止電圧0Vに達するまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを500回行い放電容量維持率の変化率を算出した(100%に近いほど良好)。
【0115】
◎:「変化率が90%以上。特に優れている。」
○:「変化率が85%以上、90%未満。全く問題なし。」
○△:「変化率が80%以上、85%未満。使用可能なレベル。」
△:「変化率が75%以上、80%未満。問題はあるが使用可能なレベル。」
×:「変化率が75%未満。実用上問題あり、使用不可。」
【0116】
<評価用リチウムイオンキャパシター正極用合材インキの作成>
ポリテトラフルオロエチレン30−J(三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)の固形分100部に対して、それぞれ、活性炭を4300部、アセチレンブラック250部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース400部を添加し、固形分33%になるようにイオン交換水を加えた後、混練してリチウムイオンキャパシター正極用合剤インキを調製した。
<評価用リチウムイオンキャパシター負極用合材インキの作成>
スチレンブタジエン系ラテックス40%水系分散体の固形分100部に対して、それぞれ、負極活物質である黒鉛を6000部、アセチレンブラック333部、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース233部を添加し、固形分33%になるようにイオン交換水を加えた後、混練してリチウムイオンキャパシター負極用合剤インキを調製した。
【0117】
<下地層付きリチウムイオンキャパシター正極の作成>
[実施例92]
評価用リチウムイオンキャパシター正極用合剤インキを、実施例14の下地層付き集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが60μmとなる実施例92の下地層付きリチウムイオンキャパシター正極を作製した。
[実施例93〜104、比較例16、17]
表7に示す下地層付き集電体を用いた以外は、実施例92の下地層付きリチウムイオンキャパシター正極と同様にして、実施例93〜104、比較例16、17の下地層付きリチウムイオンキャパシター正極を作成した。
<評価用対極4(下地層無しリチウムイオンキャパシター正極)の作成>
集電体として下地層を塗工していないアルミ箔を用いた以外は実施例92と同様にして、評価用対極4を作成した。
【0118】
【表7】
【0119】
<下地層付きリチウムイオンキャパシター負極の作成>
[実施例105]
評価用リチウムイオンキャパシター負極用合剤インキを、実施例27の下地層付き集電体にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥し、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが45μmとなる実施例105の下地層付きリチウムイオンキャパシター負極を作製した。
【0120】
[実施例106〜117、比較例18、19]
表8に示す下地層付き集電体を用いた以外は実施例106の下地層付きリチウムイオンキャパシター負極と同様にして、実施例106〜117、比較例18、19の下地層付きリチウムイオンキャパシター負極を作成した。
<評価用対極5(下地層無しリチウムイオンキャパシター負極)の作成>
集電体として下地層を塗工していない銅箔を用いた以外は実施例105と同様にして、評価用対極5を作成した。
【0121】
【表8】
【0122】
<リチウムイオンキャパシター>
表7、8に示す正極と、あらかじめリチウムイオンをハーフドープ処理を施した負極を、それぞれ直径16mmの大きさで用意し、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)と、電解液(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートを1:1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなるリチウムイオンキャパシターを作製した。リチウムイオンのハーフドープは、ビーカーセル中で負極とリチウム金属の間にセパレーターを挟み、負極容量の約半分の量となるようリチウムイオンを負極にドープして行った。また、リチウムイオンキャパシターはアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、リチウムイオンキャパシター作製後、所定の電気特性評価を行った。(充放電サイクル特性)
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。
【0123】
充電電流1.0mA(0.2C)にて充電終止電圧4.0Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.1mA)を行った後、放電電流1.0mAで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして5サイクルの充電・放電を繰り返し、5サイクル目の放電容量を初回放電容量とした。(初回放電容量を維持率100%とする)。
【0124】
次に、50℃恒温槽にて充電電流5.0mAにて充電終止電圧4.0Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流0.5mA)を行った後、放電電流5.0mAで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを200回行い放電容量維持率の変化率を算出した(100%に近いほど良好)。
【0125】
◎:「変化率が90%以上。特に優れている。」
○:「変化率が85%以上、90%未満。全く問題なし。」
○△:「変化率が80%以上、85%未満。使用可能なレベル。」
△:「変化率が75%以上、80%未満。問題はあるが使用可能なレベル。」
×:「変化率が75%未満。実用上問題あり、使用不可。」
【0126】
表2に示すように、本発明の樹脂微粒子(A)(実施例1〜13)を含む蓄電デバイス下地層用バインダー組成物を用いることで集電体への密着性や、耐水性に優れた蓄電デバイス用下地層(実施例14〜39)を得ることができた。樹脂微粒子が、表面に水酸基を有する集電体や水溶性樹脂と架橋構造をとることにより下地層の密着性や耐水性が向上できたと考えられる。
【0127】
表3〜8に示すように、本発明の樹脂微粒子(A)(実施例1〜13)を含む蓄電デバイス下地層用バインダー組成物を用いた下地層(実施例14〜39)を用いることで優れた電池特性を有する極板、またそれを用いた蓄電デバイスが得られることが分かった。これは、極板または下地層中の架橋状態が制御されることで、デバイス使用時の下地層のはがれを抑制したため、蓄電デバイスの劣化が抑制できたためであると考えられる。
【0128】
表3〜8に示すように、エチレン性不飽和基を有する単量体(e)が、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数8〜18のアルキル基とを有する単量体(f)および/または1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、環状構造とを有する単量体(g)を含み、該単量体(f)および/または(g)が、単量体(a)〜(e)の合計100%中に30〜95重量%含まれるバインダーを用いた下地層(実施例14〜16、18、20〜22、24〜29、31、33〜35、37〜39)を用いることで、該単量体(f)および/または(g)が、単量体(a)〜(e)の合計100%中に0〜30重量%含まれるバインダーを用いた下地層(実施例17、19、30、32)と比較して優れた電池特性を有する極板、またそれを用いた蓄電デバイスが得られることが分かった。これは、デバイス使用時の下地層のはがれをさらに抑制し、蓄電デバイス使用の下地層の対電解液性が向上したため、蓄電デバイスの劣化が抑制できたためであると考えられる。
【0129】
表2に示すように、水酸基価が10〜1275である水溶性樹脂(B)を使用した下地層(実施例14〜17、19〜21、23、25、27〜30、32〜34、36、38)を用いることで、水酸基価が0〜10である水溶性樹脂(B)を使用した下地層(実施例18、22、24、31、35、37)優れた耐水性や密着性が得られることがわかる。これは、樹脂微粒子(A)と水酸基含有の水溶性樹脂(B)が架橋構造をとることにより、バインダー組成物としての耐水性や集電体との密着性が向上したためであると考えられる。
【0130】
表1〜8に示すように、Tgが−10〜30℃である樹脂微粒子を使用した下地層(実施例14〜16、18、20〜22、24〜29、31、33〜35、37〜39)は、Tgが−40℃である樹脂微粒子を用いた下地層(実施例23、36)と比較して優れた電池特性を有する極板、またそれを用いた蓄電デバイスが得られることが分かった。これは、樹脂微粒子が、導電性の炭素材料を覆いにくく導電性に優れるためであると考えられる。
【0131】
表1〜2に示すように、Tgが−10〜30℃である樹脂微粒子を使用した下地層(実施例14〜17、19〜21、23、25、27〜30、32〜34、36、38)は、Tgが80℃である樹脂微粒子を用いた下地層(実施例26、39)と比較して優れた密着性を示すことがわかった。これは、樹脂微粒子が、柔軟性、粘着性に優れるためであると考えられる。
【0132】
表1〜8に示すように、単量体(c)を共重合して得た樹脂微粒子を使用した下地層(実施例16、20〜22、29、33〜35)は、単量体(c)を共重合していない樹脂微粒子を用いた下地層(実施例14、15、18、24〜28、31、37〜39)と比較して優れた電池特性を有する極板、またそれを用いた蓄電デバイスが得られることが分かった。また、単量体(c)と単量体(a)を併用した樹脂微粒子を使用した下地層(実施例16、29)は、単量体(a)を併用していない樹脂微粒子を用いた下地層(実施例20〜22、33〜35)と比較してさらに優れた電池特性を有する極板、またそれを用いた蓄電デバイスが得られることが分かった。