特許第6365022号(P6365022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365022
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】沿線電話機
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/11 20060101AFI20180723BHJP
   E05F 1/12 20060101ALI20180723BHJP
   E05C 17/14 20060101ALI20180723BHJP
   E05C 17/24 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H04M1/11 Z
   E05F1/12
   E05C17/14
   E05C17/24
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-136689(P2014-136689)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-15619(P2016-15619A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】松本 竜秀
(72)【発明者】
【氏名】高野 修司
【審査官】 白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−271467(JP,A)
【文献】 特開2007−162226(JP,A)
【文献】 特開2007−278059(JP,A)
【文献】 特開2000−111238(JP,A)
【文献】 特開2006−077396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B1/00−65/44
65/46
65/462−85/28
E05C1/00−21/02
E05F1/00−17/00
F25D23/02
23/06−23/08
H01F7/06−7/17
H04M1/02−1/23
17/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機本体を内部に収納する筐体と、前記筐体の開口面に設けられた扉と、この扉を前記筐体に対して開閉自在に支持すると共に当該扉を閉じる方向に付勢する自動閉じ蝶番とを備えた沿線電話機であって、
前記扉を前記自動閉じ蝶番の力に抗して開いた状態に維持可能なストッパと、
駆動源を備え前記ストッパの開放維持状態を解除可能な解除手段と、
前記駆動源を作動させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、タイマを有し、前記扉が解放されると前記タイマの計時を開始するとともに、前記タイマにより所定時間経過したと判断すると前記解除手段の駆動源を作動させて、前記ストッパの開放維持状態を解除するように構成されていることを特徴とする沿線電話機。
【請求項2】
音声または警告を発生可能な報知手段と、前記タイマをリセットさせるための操作手段と、を備え、
前記制御手段は、前記タイマが所定時間を計時する前に、前記報知手段により前記解除手段が作動することを報知させることを特徴とする請求項1に記載の沿線電話機。
【請求項3】
前記電話機本体の電力を供給する電源装置および前記扉の開閉状態を検出可能な検出手段備え、前記扉が開かれている間は前記電源装置より前記電話機本体に電力が供給されるように構成され、
前記制御手段は、電荷蓄積手段および該電荷蓄積手段を定電流で充電可能な充電手段を備え、前記扉の解放中は前記電源装置が供給可能な最大電流から前記電話機本体の動作時に前記電話機本体へ供給される電流分を引いた残りの電流もしくはその一部で前記電荷蓄積手段を充電し、前記タイマにより所定時間が経過したと判断すると前記解除手段の駆動源を前記電荷蓄積手段の充電電荷で作動させることを特徴とする請求項1または2に記載の沿線電話機。
【請求項4】
前記ストッパは、ほぼ直線状をなし、先端側に前記筐体側に設けられた係止手段と係合可能な係合部を有し、基端部が前記扉の内面に回動可能に取り付けられるとともに、バネによって前記係止手段が前記係合部に係合する方向に回動付勢され、
前記駆動源はソレノイドで構成され、該ソレノイドは前記ストッパの移動方向とほぼ平行な方向にプランジャが移動可能に配設され、
前記解除手段は、前記ストッパの先端部に当接され前記ソレノイドにより回動される作動レバーを備え、該作動レバーが回動されると前記係止手段と前記係合部との係合が外れるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の沿線電話機。
【請求項5】
前記係止手段はベアリングを有するローラーピンであり、前記係合部は前記ストッパに形成された切欠きであり、該切欠きは互いにほぼ90度をなす第1面および第2面を有し、前記第1面が前記ローラーピンと接触することで前記自動閉じ蝶番の力よる前記扉の閉鎖を阻止し、前記第2面が前記ローラーピンの外周面と接触することで前記ストッパによる前記扉の開放状態を維持するとともに、前記切欠きの前記第1面から前記ストッパの側面にかけて外面が円弧状をなす摺動部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の沿線電話機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道沿線や道路沿線等に所定間隔をおいて設置された連絡用の沿線電話機に関し、特に開閉扉の自動閉扉機能を備えた沿線電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道沿線には所定間隔(例えば500m)をおいて連絡用の沿線電話機が設置されており、定期的に保守点検が行われている。従来の沿線電話機には、開閉扉を閉じる方向にバネで付勢するようにした構造のものがあるが、このような電話機には保守点検の際に開閉扉を開いて行うが、扉がバネで付勢されていると作業中に扉が閉じないように手で抑えていなければならず不便である。そのため、開状態を維持するストッパを設けた沿線電話機の発明(例えば特許文献1)が提案され、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−271467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように開状態を維持するストッパを設けた沿線電話機にあっては、作業中に扉が閉じないように抑えていなくても良いため、作業がし易いという利点がある一方、作業終了後に扉の閉め忘れが発生している。しかるに、扉が開いたままであると風雨や降雪による障害発生、機器の劣化が生じるおそれがあるので、扉の閉め忘れが発見されると、いちいち閉めに行かなくてはならない。ところが、沿線電話機は駅舎等から離れている位置に設置されていることが多いとともに、作業中に列車が接近していないか監視する必要があるので、閉め忘れの扉を閉めに行くだけの作業に二人の人員が必要となり、非常に多くの時間と手間がかかってしまうという課題があった。
【0005】
本発明は上述したような課題に着目してなされたもので、扉の閉め忘れが発生しても所定時間経過すると自動的に扉が閉まるようにすることで作業員を派遣する必要がない沿線電話機を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、既設の沿線電話機の電源装置を交換することなく電話機への電力供給を保証しつつストッパのロック解除機構を動作させることができる沿線電話機を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、極めて少ない消費電力で動作させることができ、既設の沿線電話機に容易に増設することができる小型のストッパロック解除機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、電話機本体を内部に収納する筐体と、前記筐体の開口面に設けられた扉と、この扉を前記筐体に対して開閉自在に支持すると共に当該扉を閉じる方向に付勢する自動閉じ蝶番とを備えた沿線電話機であって、
前記扉を前記自動閉じ蝶番の力に抗して開いた状態に維持可能なストッパと、
駆動源を備え前記ストッパの開放維持状態を解除可能な解除手段と、
前記駆動源を作動させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、タイマを有し、前記扉が解放されると前記タイマの計時を開始するとともに、前記タイマにより所定時間経過したと判断すると前記解除手段の駆動源を作動させて、前記ストッパの開放維持状態を解除するように構成した。
上記のような構成によれば、扉が解放された後所定時間経過すると制御手段が解除手段の駆動源を作動させてストッパの開放維持状態を解除するため、自動閉じ蝶番の力で扉が閉じるので、扉の閉め忘れにより長時間に亘って電話機の扉が開きっぱなしになるのを防止することができる。
【0007】
ここで、望ましくは、音声または警告を発生可能な報知手段と、前記タイマをリセットさせるための操作手段と、を備え、
前記制御手段は、前記タイマが所定時間を計時する前に、前記報知手段により前記解除手段が作動することを報知させるようにする。
かかる構成によれば、タイマが所定時間を計時する前にストッパの解除手段が作動することを報知するので、作業時間が長くなって作業中に所定時間が経過して扉が自動的に閉鎖しそうになったとしても、操作手段を操作してタイマをリセットさせることで、扉の自動的閉鎖を回避することができ、突然、作業の中断を余儀されることがなく作業効率を向上させることができる。
【0008】
また、望ましくは、前記電話機本体の電力を供給する電源装置および前記扉の開閉状態を検出可能な検出手段備え、前記扉が開かれている間は前記電源装置より前記電話機本体に電力が供給されるように構成し、
前記制御手段は、電荷蓄積手段および該電荷蓄積手段を定電流で充電可能な充電手段を備え、前記扉の解放中は前記電源装置が供給可能な最大電流から前記電話機本体の動作時に前記電話機本体へ供給される電流分を引いた残りの電流もしくはその一部で前記電荷蓄積手段を充電し、前記タイマにより所定時間が経過したと判断すると前記解除手段の駆動源を前記電荷蓄積手段の充電電荷で作動させるように構成する。
【0009】
上記のような構成によれば、扉の解放中に微小電流で電荷蓄積手段を充電し、所定時間が経過すると電荷蓄積手段を充電電荷でロック解除機構を作動させるので、既設の沿線電話機の電源装置を電流供給能力の大きな電源装置に交換することなく、電話機への電力供給を保証しつつストッパの開放維持状態を解除するロック解除機構を動作させることができる。
【0010】
さらに、望ましくは、前記ストッパは、ほぼ直線状をなし、先端側に前記筐体側に設けられた係止手段と係合可能な係合部を有し、基端部が前記扉の内面に回動可能に取り付けられるとともに、バネによって前記係止手段が前記係合部に係合する方向に回動付勢され、
前記駆動源はソレノイドで構成され、該ソレノイドは前記ストッパの移動方向とほぼ平行な方向にプランジャが移動可能に配設され、
前記解除手段は、前記ストッパの先端部に当接され前記ソレノイドにより回動される作動レバーを備え、該作動レバーが回動されると前記係止手段と前記係合部との係合が外れるように構成する。
【0011】
上記のような構成によれば、ソレノイドはストッパの移動方向とほぼ平行な方向にプランジャが移動可能に配設されているとともに、ストッパの先端部にソレノイドにより回動される作動レバーが当接されているため、比較的小さなソレノイドで作動レバーを回動させて係止手段と係合部との係合を外すことができ駆動源の小型化が可能であるので、配設スペースの狭い既設の沿線電話機にストッパのロック解除機構を増設することで、扉を閉め忘れても所定時間が経過すると自動的に扉を閉鎖することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記係止手段はベアリングを有するローラーピンであり、前記係合部は前記ストッパに形成された切欠きであり、該切欠きは互いにほぼ90度をなす第1面および第2面を有し、前記第1面が前記ローラーピンと接触することで前記自動閉じ蝶番の力よる前記扉の閉鎖を阻止し、前記第2面が前記ローラーピンの外周面と接触することで前記ストッパによる前記扉の開放状態を維持するとともに、前記切欠きの前記第1面から前記ストッパの側面にかけて外面が円弧状をなす摺動部が形成されている構成とする。
【0013】
かかる構成によれば、ローラがストッパの切欠きに係合した状態では、ローラからの反力がストッパの長手方向に作用することで、ストッパの外れを防止しつつストッパの先端がローラから離れる方向に少し移動されるだけで係合が外れてストッパのロック状態が解除されるので、非常に小さな動力でストッパの開放維持状態を解除することができ、ロック解除機構の小型化を図ることができるため、既設の沿線電話機に容易に増設することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、扉の閉め忘れが発生しても所定時間経過すると自動的に扉が閉まることで作業員を派遣する必要がない沿線電話機を実現することができる。また、既設の沿線電話機の電源装置を交換することなく、電話機本体への電力供給を保証しつつストッパのロック解除機構を動作させることができる。さらに、極めて少ない消費電力でストッパのロック解除機構を動作させることができるため、既設の沿線電話機に容易に増設することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の沿線電話機の一実施例の扉を開いた状態を正面から見た様子を示す斜視図である。
図2図1の沿線電話機の扉を開いた状態に維持するストッパの構成(ロック解除機構省略)を示す斜視図である。
図3図2のストッパとこれを係止するローラーピンとの関係を示す斜視図である。
図4】ロック解除機構を含む沿線電話機内部の電気系統を制御する制御回路の具体例を示す回路構成図である。
図5図2のストッパを外すためのロック解除機構の具体例の詳細を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る沿線電話機の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る沿線電話機10は、図1に示すように、前面が解放可能な箱状の筐体11と、該筐体11の内部に収納された電話機本体12と、筐体11の前面開口部を開閉するための扉13と、内部の電気系統を制御するコントロールボックス14などから構成されている。
電話機本体12は、内部に音声送受信用の電話回路基板が内蔵されているとともに、前面にはダイヤル用のプッシュボタン群15が、また側部には送受話器16を掛止するためのフック17が設けられている。
【0017】
扉13は、トーションバネを内蔵した自動閉じ蝶番18a,18bによって、筐体11の前面に回動可能に取り付けられており、トーションバネによって閉じ方向へ付勢されている。また、扉13の蝶番18a,18bと反対側の縁部にはドア取っ手13Aが固定されているとともに、電話機本体12の上面と扉13との間には、短冊状のストッパ21とそのロック解除機構(ソレノイド29等)が設けられている。なお、図示しないが、電話機本体12の側方(図では左側方)であって送受話器16の後方のパネルで覆われた空間には、列車の接近を知らせる列車接近警報装置(TC列警)などの付属機能装置が設けられている。
【0018】
なお、本実施形態に係る沿線電話機10は、扉13が閉じている状態でこれを開かないようにロックする施錠機構を備えているが、この施錠機構は周知のものと同様であるので、図示および説明を省略する。
電話機本体12の上部のストッパ21は、図2に示すように、一端(図では右端)が、扉13の内面にブラケット22によって支持されたピン23に回動可能に枢支されている。なお、図2においては、構造をそのまま表すとストッパ21の先端部の形状が分かりにくくなるので、ロック解除機構の図示を省略している。
【0019】
ストッパ21の他端(図では左端)は、電話機本体12の上面に取り付けられた係止金具24にスライド自在に係合されており、先端にはほぼ90度をなす切欠き21aが形成されている。係止金具24は、帯状板材をコの字状に折り曲げて形成され、両端が電話機本体12の上面に固定されている。
これにより、係止金具24と電話機本体12の上面とで、四角形の孔が構成され、この孔にストッパ21がスライド自在に挿入されている。
【0020】
係止金具24の下面には、係止金具24を下側から見た図3に示すように、ストッパ21の幅より僅かに大きい間隔をおいて一対のローラーピン25a,25bが設けられている。このうち、ローラーピン25aはガイド&係止用のローラーピンであり、ストッパ21の先端の切欠き21aにローラーピン25aが入り込むことでロックがかかるようになっている。他方のローラーピン25bはガイド用のローラーピンである。ローラーピン25aは、摩擦抵抗を減らすつまり小さな力でロックを解除できるようにするため、ベアリングを内蔵したものによって構成するとよい。
【0021】
図示しないが、ストッパ支承用のピン23にはトーションバネが介装されており、切欠き21aがローラーピン25aと係合する方向へストッパ21を回動付勢している。これにより、扉13を開くとストッパ21の背面がローラーピン25aと摺接しながら斜め前方へ移動し、切欠き21aがピン25aの位置まで来ると、ストッパ21が回動して切欠き21aがローラーピン25aと係合し、ストッパ21の逆方向すなわち扉が閉じる方向への移動が阻止される解放維持状態(ロック状態)となる。
通常の作業では、作業終了後に作業者がストッパ21の中ほどを後方へ押すと、ストッパ21の切欠き21aとローラーピン25aとの係合が外れ、自動閉じ蝶番18a,18bに内蔵されているバネの復元力で、扉13が自動的に閉じるように構成されている。
【0022】
なお、電話機本体12の上面には、扉13が閉じているか否か検出するためのドアスイッチ31(図2参照)が設けられている。ドアスイッチ31は、扉13が閉じた状態になると、例えばブラケット22の下面によってアクチュエータが押圧されてオン状態となるような位置に配設されることで、扉の開閉状態を検出するように構成することができる。また、本実施例では、ストッパ21の先端の上面(図3では裏面側)には、ロック解除ピン26(図5参照)が設けられており、所定時間以上扉が開いた状態が継続すると、ロック解除機構が作動してソレノイドの力でピン26を押すことでストッパ21の切欠き21aとローラーピン25aとの係合を外せるように構成されている。
【0023】
次に、上記ロック解除機構のソレノイド29(図5参照)および警告用のブザーやLED、スピーカなどの電気部品の作動を制御する前記コントロールボックス(制御装置)14の構成及び機能について説明する。
前述したように、本実施例の沿線電話機は、ドアスイッチ31がオン(扉が閉)していると電話機本体12へ電力を供給し、ドアスイッチ31がオン(扉が閉)していると電話機本体12への電力を遮断するように構成されている。これは、電話機による通話は扉を開いた状態で行うためである。一方、制御装置は、作業中で扉が開いているのか閉め忘れで扉が開いているのか知ることができない。そこで、本実施例では、所定時間(例えば1時間)扉の開状態が継続した場合には、閉め忘れと判断してロック解除機構を作動させて扉を閉鎖させる機能を持たせることとした。
【0024】
ただし、扉13が所定時間以上開いている場合であっても、ロック解除機構を作動させて扉を閉鎖させて閉じるまでは、電話機本体12へ電力の供給を保証し続ける必要がある。ところが、既設の沿線電話機の電源装置は、最も消費電力の大きな電話機本体12の動作電流に若干の余裕を持たせた程度の電流供給能力しか有してない。その結果、ロック解除機構を設け該ロック解除機構を作動させる直前に警報音や音声を発生させようとすると、電力が不足して電話機本体12へ電力の供給を保証することができない。
【0025】
そこで、本実施例のコントロールボックス(制御装置)14においては、大容量のキャパシタを実装して、扉が開いている間に余裕電流(数10mA)でキャパシタを充電し、ロック解除機構の作動時の電力不足を補えるように構成した。
また、作業時間が長くなり、作業中に自動ロック解除機構が作動する状況になったとしても、前もって作動を報知して、作業者がリセットボタンを押すと、ロック解除機構が作動しないようにする機能も持たせることとした。
なお、扉13の開閉状態に応じた電話機本体12へ電力の供給/遮断は、ドアスイッチ31の信号に基づいて行うことができる。
【0026】
図4には、上記のような機能を有するコントロールボックス14の具体的な回路構成例を示す。
図4において、符号41が付されているのが制御装置の主役となるマイクロプロセッサのような制御部、符号42が付されているのが電源装置である。制御部41には、コントロールボックス14の筐体表面に設けられているリセットボタン43からの信号および筐体内部の基板に実装されているロータリスイッチのような設定器44A,44Bからの信号が入力可能にされている。
【0027】
また、制御部41には、該制御部41から出力される信号に基づいて警告音を発する電子ブザー45を駆動するインバータのようなドライバ46A、発光表示用のLED47を駆動するドライバ46B、スピーカ48の再生開始信号を出力するドライバ46Cが接続されている。
電源装置42は、外部からの+48Vのような電源電圧に基づいて+12Vのような内部電源電圧を生成するDC−DCコンバータもしくはスイッチングレギュレータからなり、該電源装置42には、制御部(CPU)41や電子ブザー45、LED47等の動作電圧(+5V)を生成する定電圧回路49Aおよび定電流充電回路50Aが接続されている。また、電源装置42には、定電流充電回路50Bの動作電圧(+5.6V)を生成する定電圧回路49Bが接続されている。このうち、定電流充電回路50Aは、電気二重層キャパシタのような大容量のキャパシタ(コンデンサ)51Aを微弱な定電流で充電し、定電流充電回路50Bは、同じく大容量のキャパシタ51Bを微弱な定電流で充電するために設けられている。
【0028】
また、上記キャパシタ51Aとロック解除機構のソレノイド29との間には、例えばフォトカプラのようなオン、オフ制御用の電子スイッチ52Aが設けられ、ソレノイド29はキャパシタ51Aの充電電荷で駆動されるように構成されている。また、上記ドライバ46Cとスピーカ48Bを駆動する音声再生ボード53との間には、オン、オフ制御用の電子スイッチ52Bが設けられているとともに、キャパシタ51Bには音声再生ボード53の電源端子が接続され、スピーカ48はキャパシタ51Bの充電電荷で駆動されるように構成されている。
【0029】
なお、電子スイッチ52Aは制御部41から出力される信号を受けるドライバ46Dによってオン、オフ制御され、電子スイッチ52Bはドライバ46Cによってオン、オフ制御される。
上記のように本実施例のコントロールボックス(制御装置)は、キャパシタの充電電荷でロック解除機構のソレノイド29やスピーカ48を駆動するように構成されているため、既存の電源装置を電流供給能力の高いものに交換することなく、新たに設けたロック解除機構を作動させることができる。
【0030】
さらに、本実施例のコントロールボックス(制御装置)においては、制御部41に接続されている設定器(ロータリスイッチ)44Aを操作することで、扉解放時から自動ロック解除機構が作動するまでの時間を、0時間〜15時間までの範囲で1時間おきに設定できるように構成され、設定器44Bを操作することで、自動ロック解除機構の作動直前の警報送出時間を、0秒〜300秒までの範囲で20秒おきに設定できるように構成されている。
また、例えば警報送出中にリセットボタン43が押されると、自動ロック解除機構が作動するまでの時間を計時するタイマがリセットされて自動ロック解除機構の作動が中止される。さらに、設定器44Aによる設定時間の経過で制御部41がソレノイド29の駆動制御信号を出力した後しばらくたってもドアスイッチ31がオンにならない場合には、1時間後に自動ロック解除機構(ソレノイド29)の作動のリトライを実行するように構成されている。
【0031】
図5には、電話機本体12の上部に設けられているストッパ21のロック解除機構の詳細が示されている。このロック解除機構は、既設の沿線電話機に対して、後から増設できるように工夫されている。具体的には、既設の沿線電話機のストッパ機構は、図2に実線で示されている構成であり、これに図5に示すようなソレノイドを駆動源とするロック解除機構を、電話機本体12の上方の比較的狭い空間に増設可能にしたものである。
【0032】
図5に示されているように、ストッパ21の先端側が挿入されるコの字状の係止金具24の上面には、支軸27によってL字状のレバー28が回動可能に枢支されているとともに、電話機本体12の上面には、ストッパ21とほぼ同一の方向に沿ってソレノイド29が固定されている。そして、該ソレノイド29のプランジャ29aの先端に作動プレート32が固着され、該作動プレート32の他端が上記レバー28の一方の端部にピン33にて回動可能に連結されている。
また、上記レバー28の他方の端部の側面は、ストッパ21の先端の切欠き21a(図3参照)がローラーピン25aに係合している解放維持状態で、ストッパ21の先端のロック解除ピン26の周面に当接するように構成されている。
【0033】
さらに、図3に示されているように、ストッパ21の先端の切欠き21aのストッパ21の側面に連続する部位には、ローラーピン25aが切欠き21aから外れ易くするために、円弧状の摺動部21bが形成されている。そして、切欠き21aの最奥部から円弧状の摺動部21bの開始点までの長さL1は、ローラーピン25aの半径よりも僅かに大きな値に設定されている。
これにより、ローラーピン25aが切欠き21aに係合した状態では、ローラーピン25aからの反力がストッパ21の長手方向に作用することで、ストッパ21の外れを防止しつつ、ストッパ21の先端がローラーピン25aから離れる方向に少し移動するだけで係合が外れてロックが解除されるようになる。つまり、ストッパ21の先端のロック解除ピン26を軽く押してやるだけで、係合が外れてロックが解除される。
【0034】
図5のロック解除機構は、ソレノイド29が励磁されると、プランジャ29aが収縮して先端に固定されている作動プレート32を引っ張る。すると、作動プレート32がレバー28を反時計回り方向へ回動させるため、レバー28の他方の端部の側面がストッパ21の先端のロック解除ピン26を押圧して、ストッパ21を時計回り方向へ回動させるので、切欠き21aとローラーピン25aとの係合が外れて解放維持状態(ロック状態)が解除され、ストッパ21の先端が筐体11の奥の方へ移動して扉13が閉じるようになっている。
【0035】
図1を参照すると分かるように、電話機本体12の上面には、ストッパ21および係止金具24が配設されており、追加部品を配置する空白スペースが限られているが、本実施例においては、上述したように、ストッパ21とほぼ同一の方向に沿ってソレノイド29が配設されており、該ソレノイド29のプランジャ29aの直線移動をレバー28を介して、ストッパ21の先端に設けられているロック解除ピン26を押圧する方向に移動に変換して解放維持状態(ロック状態)を解除するように構成されているため、電話機本体12の上面という比較的狭い空間であってもロック解除機構を配設することができる。
【0036】
さらに、ストッパ21の先端の切欠き21aには円弧状の摺動部21bが形成されており、ローラーピン25aが少しでもこの摺動部21bにかかると自動閉じ蝶番18a,18bからストッパ21に作用する力の分力がストッパ21を回動させる方向に働くようになる。そのため、ソレノイド29の駆動力が小さくても、言い換えると、ソレノイド29の駆動力の小さなソレノイド29を使用したとしても、容易にストッパ21の切欠き21aとローラーピン25aとの係合を外して解放維持状態(ロック状態)を解除することができる。
そして、このように駆動力の小さなソレノイド29を使用してストッパ21の解放維持状態を解除することができるため、前述したように、キャパシタの充電電荷のみでソレノイドを駆動することができ、それによって既存の電源装置を、電流供給能力の高い電源装置に交換する必要がないという効果が達成される。
【0037】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、ストッパ21のロックを外すのにソレノイドを使用しているが、モータを使用するようにしても良い。また、前記実施形態においては、ストッパ21およびそのロック解除機構を電話機本体の上面に設けているが、電話機本体の下面に設けるようにして良い。また、オンフックの信号をコントロールボックス14の制御部41へ入力して、送受話器16がフック17から外れている間はタイマが起動しないように構成しても良い。これにより、作業時間が設定器44Aの設定時間を越えたとしても、通話中であればロック解除機構が作動しないようにすることができる。
さらに、前記実施形態においては、本発明を沿線電話機に適用した場合について説明したが、本発明は鉄道沿線等屋外に配設される制御箱一般に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 沿線電話機
11 筐体
12 電話機本体
13 扉
14 コントロールボックス(制御手段)
15 ダイヤル用のプッシュボタン群
16 送受話器
18a,18b 自動閉じ蝶番
20 ロック解除機構
21 ストッパ
21a 切欠き(係合部)
25a ローラーピン(係止手段)
28 作動レバー
29 ソレノイド(駆動源)
42 電源装置
43 操作手段(リセットボタン)
51A,51B キャパシタ(電荷蓄積手段)
図1
図2
図3
図4
図5