(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重畳ノイズ波形生成ステップは、前記電磁ノイズが継続する時間以上の長さに設定されたノイズ期間を単位として、前記ノイズ波形をずらして複数重畳させた前記重畳ノイズ波形を生成することを特徴とする請求項1に記載の電磁感受性評価方法。
前記重畳ノイズ波形生成ステップは、前記電磁ノイズが継続する時間以上の長さに設定されたノイズ期間を単位として設定される時点から、前記アイパターンの単位期間を重畳する前記ノイズ波形の数で分割したそれぞれの時点までの追加期間をずらして、当該ノイズ波形を複数重畳させた前記重畳ノイズ波形を生成することを特徴とする請求項1に記載の電磁感受性評価方法。
前記重畳ノイズ波形生成ステップは、前記電磁ノイズが継続する時間以上の長さに設定されたノイズ期間後に、前記アイパターンの単位期間を重畳する前記ノイズ波形の数で分割したそれぞれの時点に前記電磁ノイズが与えられるように、当該ノイズ波形をずらして複数重畳させた前記重畳ノイズ波形を生成することを特徴とする請求項1に記載の電磁感受性評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
(電磁感受性)
電磁感受性とは、機器、装置又はシステムにおいて、外側から侵入する電磁妨害の受けやすさ、つまり、電磁妨害による機器、装置又はシステムの性能低下の発生しやすさのことであり、電磁感受性評価とは、機器、装置又はシステムの電磁妨害の受けやすさを評価することをいう。また、電磁妨害に対する耐性を評価することであるから、イミュニティ(Immunity)評価とも呼ばれる。
【0010】
ここでは、電磁感受性を評価する方法の一例として、ESDガン2による静電気放電に対する電子装置1の電磁感受性の評価方法を説明する。
図1は、電子装置1の電磁感受性を評価する方法の概要を説明する図である。
図1(a)は、ESDガン2の発生する放電3により電磁感受性を評価する方法を示す図、
図1(b)は、人体からの静電気放電を模擬するために国際標準規格IEC61000−4−2において規定された電流波形を示す図、
図1(c)は、
図1(a)のケーブル20の出力端子側(α)において見られるノイズ波形を示す図である。なお、
図1(b)において、縦軸は電流I、横軸は時間t、
図1(c)において、縦軸は電圧(V)、横軸は時間t(ns)である。
【0011】
図1(a)に示すように、電子装置1は、電子回路などが搭載された基板10−1、10−2、基板10−1、10−2間を接続するケーブル20、基板10−1、10−2、ケーブル20を囲む筐体30を備えている。なお、基板10−1から、ケーブル20を介して、基板10−2に信号が送信されるとする。
このような電子装置1に対する電磁感受性の評価は、ESDガン2により、電子装置1の筐体30に対して放電3を発生させ、放電3によって電子装置1に誘起される電磁ノイズの影響を評価することで行われる。
なお、以下では、電磁ノイズをノイズと表記する。
【0012】
ESDガン2が発生する放電3は、
図1(b)に示す国際標準規格IEC61000−4−2で規定された電流波形に従っている。すなわち、国際標準規格IEC61000−4−2が規定する電流波形は、電流Iのピークの10%からピーク(100%)までの立ち上がり時間trが0.7nsec〜1nsecのパルス波形である。
ESDガン2による放電3は、電子装置1におけるケーブル20の出力端子側(
図1(a)にαで示す箇所、後述する
図2(b)のポート5)に、
図1(c)に示すノイズ(ノイズ波形)を誘起する。ノイズは、正負に振動する波形であって、放電3の開始時点(0ns)で大きな振幅を有し、その後、急激に振幅が減衰する。そして、100nsまで継続する。
以下では、
図1(c)に示すような波形をノイズ波形と表記し、正負に振動する部分をノイズと表記する。ノイズの開始時点は、ESDガン2により放電3が開始した時点に対応する。
【0013】
このESDガン2を用いて電磁感受性を評価する方法は、一般に完成した電子装置1(実機)に対して行われる。すなわち、電子装置1の実機を準備する必要がある。
一方、電子装置1(実機)を完成させる前に、シミュレーションによって電磁感受性が評価できれば、電子装置1の実機を準備することを要しないとともに、評価の結果を電子装置1の設計に反映させることにより、電子装置1の電磁感受性を向上させうる。
ここでは、ESDガン2による放電3により、電子装置1におけるケーブル20の出力端子側(α)(
図2(b)のポート5)に、
図1(c)に示すノイズ波形が表れるとして、シミュレーションによって、電子装置1の電磁感受性を評価する。
【0014】
なお、電磁感受性を向上させる対策として、従来から基板10−1、10−2毎に接地(
図1(a)に示すE)を設けたり、基板10−1、10−2間を接続するケーブル20の長さを短くしたりすることが行われている。これらの対策は、すでに行われているとする。
【0015】
(電子装置1の構成)
図2は、第1の実施の形態における電磁感受性評価方法が適用される電子装置1の一例を説明する図である。
図2(a)は、電子装置1の構成を示す図、
図2(b)は、電子装置1におけるケーブル20を示す図である。なお、
図2(a)に示す電子装置1では、
図1(a)に示した筐体30の表記を省略している。
図2(a)において、基板10−1、10−2は、ガラスエポキシなどの基体の表裏に銅箔などにより配線層が形成され、LSIなどが部品として搭載されて構成されている。そして、基板10−1、10−2は、それぞれが予め定められた機能を実現するように構成されている。
なお、基板10−1、10−2のそれぞれの基体の内部にさらに配線層が設けられ、多層配線構造となっていてもよい。
【0016】
基板10−1は、信号生成回路11、信号送信回路12、電子回路13、基板配線14−1、AC結合回路15、基板配線14−2、コネクタ16−1を備えている。そして、この順に信号が伝搬する。
信号生成回路11は、信号を生成する。信号送信回路12は、信号生成回路11が生成した信号を差動信号として送信する。電子回路13は、信号に対して予め定められた処理を行う。基板配線14−1、14−2は、基板10−1を構成する基体上に設けられた配線である。AC結合回路15は、基板配線14−1と基板配線14−2との間に設けられ、基板配線14−1を伝搬してきた信号から、直流成分を除いた交流成分を基板配線14−2に伝搬させる。
コネクタ16−1は、基板配線14−2とケーブル20とを接続し、基板配線14−2を伝搬してきた信号を、ケーブル20に伝搬させる。
【0017】
一方、基板10−2は、コネクタ16−2、基板配線14−3、電子回路17、信号受信回路18を備えている。そして、この順に信号が伝搬する。
コネクタ16−2は、ケーブル20と基板10−2上の基板配線14−3とを接続し、ケーブル20を伝搬してきた信号を基板配線14−3に伝搬させる。基板配線14−3は、基板10−2を構成する基体上に設けられた配線である。
電子回路17は、基板配線14−3を伝搬した信号に対して予め定められた処理を行う。そして、信号受信回路18は、電子回路17で処理された信号を受信する。
ここでは、信号生成回路11が生成する信号を送信信号、信号受信回路18が受信する信号を受信信号と表記する。
なお、
図2(a)に示す電子装置1は、一例であって、他の構成であってもよい。
【0018】
ここで、電磁感受性評価方法の評価対象物としては、
図2(a)に示す電子装置1において、信号送信回路12及び信号受信回路18を含まない。すなわち、信号送信回路12及び信号受信回路18は、信号を評価するために設けられている。よって、評価対象物に対して、送信信号(送信信号波形)は入力信号(入力信号波形)であり、受信信号(受信信号波形)は出力信号(出力信号波形)である。
【0019】
図2(b)に示すように、ケーブル20は、一対の信号線とそれを包む被覆部を含むケーブル本体21と、プローブ22とを備えている。そして、ポート1、2が一対の信号線の入力端子(入力ポート)、ポート3、4が一対の信号線の出力端子(出力ポート)である。そして、ポート5が、プローブ22に接続され、ケーブル20にノイズを与えるノイズ端子(ノイズポート)である。例として、ポート5は、ポート3、4に近い側(出力端子側)に配置されている。
そして、ポート1、2が基板10−1のコネクタ16−1に接続され、ポート3、4が基板10−2のコネクタ16−2に接続されている。そして、基板10−1のコネクタ16−1から伝搬してきた信号(差動信号)は、ケーブル20のポート1、2に入力し、ポート3、4から出力されて、基板10−2のコネクタ16−2に伝搬される。
なお、ケーブル本体21における被覆部は、一対の信号線の保護及び絶縁のために設けられたプラスティックで構成されたフィルム層であってもよく、さらに金属の編線で構成された電磁シールド層を含んでもよい。
【0020】
ケーブル20のポート5は、ケーブル20の外部からノイズを与えるための端子(ポート)である。ケーブル20のポート5にノイズを与えて、電子装置1におけるノイズの影響をシミュレーションする。これにより、電子装置1の電磁感受性を評価する。
よって、ケーブル20は、ポート1〜5を備える5ポート回路として取り扱う。
【0021】
ここで、電子装置1において電磁感受性評価方法の概要を説明する。
設計データに基づいて、基板10−1、10−2の回路パラメータを、電磁界解析などにより求める。回路パラメータは、例えば、基板配線14−1〜14−3の抵抗、容量などのパラメータ、電子回路13、17におけるトランジスタなどの能動素子のパラメータ、電子回路13、17内の配線の抵抗、容量などである。
一方、ケーブル20を5ポート回路として評価(測定)して、ケーブル20の回路パラメータであるSマトリクスを求める。
そして、電子装置1の回路パラメータ(基板10−1、10−2の回路パラメータ及びケーブル20のSマトリクス)を用いて、電子装置1の動作(入力信号に対する出力信号)をシミュレーションする。このとき、ケーブル20のポート5から、
図1(c)に示したノイズ波形を与える。
このようにして、電子装置1の電磁感受性が評価される。
【0022】
(ケーブル20に対するSマトリクスの測定)
ケーブル20のSマトリクスは、ネットワークアナライザNA(Network Analyzer)により測定される。以下に、5ポート回路であるケーブル20のSマトリクスの測定方法について説明する。
“ポート”という用語は、
図2(b)に示すケーブル20のように、測定対象物DUT(Device Under Test)における端子に広く用いられる。一方、測定対象物DUTのSマトリクスを測定するネットワークアナライザNAにおける端子にも広く用いられる。
そこで、測定対象物DUTの一例であるケーブル20のポートとネットワークアナライザNAのポートとを区別するため、
図2(b)に示すように、ケーブル20のポート1〜5を、ポートD1〜D5と表記する。ネットワークアナライザNAについては、後述する
図3(a)に示すように、5ポート(ポート1〜5)備える場合は、ポートN1〜N5と表記し、後述する
図4(a)〜(c)に示すように、4ポート(ポート1〜4)備える場合は、ポートN1〜N4と表記する。
【0023】
ネットワークアナライザNAは、接続された測定対象物DUTのポート間のSパラメータを測定する。なお、Sパラメータの行列がSマトリクスである。
なお、Sマトリクス及びその要素であるSパラメータは高周波回路の特性評価に一般に用いられているので、これらの詳細な説明を省略する。
【0024】
図3は、5ポート回路であるケーブル20のSマトリクスを5ポートのネットワークアナライザNAにより測定する場合の接続図及びSマトリクスを示す図である。
図3(a)は、ケーブル20とネットワークアナライザNAとの接続図、
図3(b)はSマトリクスである。
【0025】
図3(a)に示すように、ケーブル20のポートD1〜D5は、それぞれがネットワークアナライザNAのポートN1〜N5に接続されている。すなわち、ケーブル20はポートD1〜D5を備えた5ポート回路であるので、5ポートを備えたネットワークアナライザNAを用いれば、ケーブル20のポートD1〜D5とネットワークアナライザNAのポートN1〜N5とをそれぞれ対応させて接続することで、ケーブル20のSマトリクスの測定が1回で行える。
そして、
図3(b)に示すように、5×5の要素(Sパラメータ)を有するSマトリクスが得られる。このSパラメータの添え字(S11の1、1など)は、
図2(b)に示したケーブル20のポート番号であるが、ネットワークアナライザNAのポート番号と一致する。
なお、
図3(b)に示すSマトリクスが目的とする(求めたい)Sマトリクス(以下では、目的Sマトリクスと表記する。)である。なお、目的Sマトリクスと測定Sマトリクス(後述する
図4参照)とを区別しない場合、又は両者を含める場合にはSマトリクスと表記する。
【0026】
図2(b)から分かるように、プローブ22を備えないケーブル20は4ポート回路であるので、その評価は、4ポートのネットワークアナライザNAで足りる。このようなことから、ポート数が4以下のネットワークアナライザNAが普及している。一方、ポート数が5以上のネットワークアナライザNAは、高価である。
そこで、5ポート回路であるケーブル20の目的Sマトリクスを、4ポートのネットワークアナライザNAを用いて測定する方法を説明する。ここでは、目的Sマトリクスは、測定1、測定2、測定3の3回のステップで測定される。
【0027】
図4は、5ポート回路であるケーブル20の目的Sマトリクスを4ポートのネットワークアナライザNAで測定する場合の接続図、測定Sマトリクス、目的Sマトリクスを示す図である。
図4(a)が測定1、
図4(b)が測定2、
図4(c)が測定3である。
図4(a)、(b)、(c)において、左側(左図)に接続図、右側(右図)にSマトリクスを示している。
すなわち、ネットワークアナライザNAは、ポート数が4(ポートN1〜N4)であって、ケーブル20のポート数(5)より少ない。このため、ネットワークアナライザNAのポートN1〜N4には、ケーブル20のポートD1〜D5のすべてを同時に接続することができない。よって、ネットワークアナライザNAのポートN1〜N4とケーブル20のポートD1〜D5との接続関係を変えながら、複数のステップ(測定1〜3)によって、ケーブル20の目的Sマトリクスを測定する。
【0028】
測定1(
図4(a))では、左図に示すように、ネットワークアナライザNAのポートN1〜N4を、ケーブル20のポートD1〜D4に接続する。なお、ケーブル20のポートD5には終端素子TR(Terminal Resitor)を接続する。
測定1において、4×4の要素(Sパラメータ)を有するSマトリクスが得られる。このSマトリクスは、目的Sマトリクスと異なっている。そこで、4ポートのネットワークアナライザNAによって測定されるSマトリクスを測定Sマトリクスと表記する。なお、測定SマトリクスのSパラメータの添え字(S11の1、1など)は、ネットワークアナライザNAのポートN1〜N4の番号に対応する。
よって、
図4(a)、(b)、(c)の右側には、測定Sマトリクス及び目的Sマトリクスを表記し、測定SマトリクスのSパラメータと目的SマトリクスのSパラメータとの対応関係を示している。
【0029】
測定1では、ケーブル20のポートD1〜D4の番号1〜4がネットワークアナライザNAのポートN1〜N4の番号1〜4と一致する。よって、破線で囲って示すように、測定1による測定SマトリクスのS11〜S44が目的SマトリクスのS11〜S44に対応する。
すなわち、測定1により、目的Sマトリクスにおける一部のSパラメータが得られる。
なお、終端素子TRは、終端抵抗とも呼ばれ、一般的なネットワークアナライザNAでは50Ωである。
【0030】
測定2(
図4(b))では、ケーブル20のポートD3、D4に終端素子TRを接続する。そして、ケーブル20のポートD1、D2、D5をネットワークアナライザNAのポートN1、2、3にそれぞれ接続する。
測定2において、3×3の要素(Sパラメータ)を有する測定Sマトリクスが得られる。測定2では、ケーブル20のポートD1、D2の番号1、2がネットワークアナライザNAのポートN1、N2の番号1、2と一致する。よって、破線で囲って示すように、測定SマトリクスのS11、S12、S21、S22が目的SマトリクスのS11、S12、S21、S22に対応する。また、ケーブル20のポートD5がネットワークアナライザNAのポートN3に接続されているので、測定Sマトリクスにおける番号3が目的Sマトリクスの番号5に対応する。よって、一点鎖線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS13、S23が目的SマトリクスのS15、S25に対応し、二点鎖線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS31、S32が目的SマトリクスのS51、S52に対応する。さらに、点線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS33が目的SマトリクスのS55に対応する。
このようにして、測定2(
図4(b))において、測定1(
図4(a))で得られなかった目的Sマトリクスの一部のSパラメータが得られる。
【0031】
そして、測定3(
図4(c))では、ケーブル20のポートD1、D2に終端素子TRを接続する。そして、ケーブル20のポートD5、D3、D4を、ネットワークアナライザNAのポートN1、N3、N4にそれぞれ接続する。
測定3において、3×3の要素(Sパラメータ)を有する測定Sマトリクスが得られる。測定3では、ケーブル20のポートD3、D4の番号3、4がネットワークアナライザNAのポートN3、N4の番号3、4と一致する。よって、破線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS33、S34、S43、S44が目的SマトリクスのS33、S34、S43、S44に対応する。また、ケーブル20のポートD5がネットワークアナライザNAのポートN1に接続されているので、測定Sマトリクスにおける番号1が目的Sマトリクスの番号5に対応する。よって、一点鎖線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS31、S41が目的SマトリクスのS35、S45に対応し、二点鎖線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS13、S14が目的SマトリクスのS53、S54に対応する。さらに、点線で囲んで示すように、測定SマトリクスのS11が目的SマトリクスのS55に対応する。
【0032】
以上説明したように、測定1〜測定3の3回のステップで測定することにより、目的Sマトリクスの5×5のすべてのSパラメータが求められる(測定される)。
【0033】
(電磁感受性評価方法)
次に、シミュレーションにより、電子装置1において電磁感受性を評価する方法を説明する。
電子装置1の基板10−1に搭載された信号生成回路11(
図2(a)参照)は、例えば480Mbpsの擬似ランダム・ビット・シーケンス(PRBS:Pseudo−Random Bit Sequence)である信号(送信信号)を生成する。ここでは、PRBSは、一例として7ビット長とし、データ長が2
7−1である。
そして、電子装置1におけるケーブル20のポート5(
図2(a)、(b)参照)に、
図1(c)に示したノイズ波形を与える。そして、信号受信回路18(
図2(a)参照)で信号(受信信号)を受信する。そして、信号受信回路18に受信された受信信号からアイパターン(EYEパターン)を生成し、アイパターンにより電子装置1における電磁感受性を評価する。
ここで、アイパターンとは、信号波形の遷移を多数サンプリングし、重ね合わせて視覚的に表示したものである。
【0034】
図5は、ケーブル20のポート5に与えられたノイズ波形、信号受信回路18で受信された受信信号の波形(受信信号波形)、受信信号から求められたアイパターンの一例を示す図である。
図5(a)は、ノイズ波形、
図5(b)は、受信信号波形、
図5(c)は、アイパターンである。ここで、
図5(a)、(b)、(c)において、横軸が時間t(ns)、縦軸が電圧(V)である。
【0035】
図5(a)に示すように、0nsの時点においてノイズが与えられている。すると、
図5(b)に示す受信信号波形において、ノイズが与えられた時点である0nsから50nsまでの間、振幅が他の部分に比べて大きくなるとともに、波形に乱れが発生している。そして、
図5(c)に示すアイパターンにおいて、βで示す箇所に、ノイズによる影響が表れている。このノイズの影響により、アイパターンの開口(六角形のパターンが記載された、信号で囲まれた領域)を狭くしている。
このようにして、電子装置1についての電磁感受性の評価が行われる。
なお、ノイズが与えられた時点とは、ESDガン2で放電3を発生させた時点に対応し、
図5(a)に示すノイズ波形において振幅の変動が開始した時点をいう(
図1(a)参照)。
【0036】
しかし、0nsの時点においてノイズを与えるのみでは、電子装置1についての電磁感受性の評価が十分であるとは言えない。
図6は、100nsの時点においてノイズが与えられた場合のノイズ波形、受信信号波形、アイパターンを示す図である。
図6(a)は、ノイズ波形、
図6(b)は、受信信号波形、
図6(c)は、アイパターンである。
図7は、200nsの時点においてノイズが与えられた場合のノイズ波形、受信信号波形、アイパターンを示す図である。
図7(a)は、ノイズ波形、
図7(b)は、受信信号波形、
図7(c)は、アイパターンである。
図8は、300nsの時点においてノイズが与えられた場合のノイズ波形、受信信号波形、アイパターンを示す図である。
図8(a)は、ノイズ波形、
図8(b)は、受信信号波形、
図8(c)は、アイパターンである。
図9は、400nsの時点においてノイズが与えられた場合のノイズ波形、受信信号波形、アイパターンを示す図である。
図9(a)は、ノイズ波形、
図9(b)は、受信信号波形、
図9(c)は、アイパターンである。
なお、それぞれのノイズ波形、受信信号波形、アイパターンにおいて、横軸が時間t(ns)、縦軸が電圧(V)である。
【0037】
これらの受信信号波形において、ノイズが与えられた時点から50nsが経過するまでの間、振幅が他の部分に比べて大きくなるとともに、波形に乱れが生じている。そして、アイパターンにおいて、ノイズによる影響が表れ、開口が狭くなっている。
そして、アイパターンの開口は、それぞれの場合で異なっている。これは、PRBSである送信信号とノイズを与える時点(以下では、ノイズタイミングと表記する。)との関係によって、ノイズがアイパターンに与える影響が異なるためと考えられる。
【0038】
電子装置1における電磁感受性の評価においては、最悪の状態が得られることが好ましいため、最悪の状態となる条件で評価することが好ましい。しかし、送信信号がPRBSであることから、ノイズタイミングを予め設定することが難しい。すなわち、最悪の状態がいつ生じるか分からない。
よって、
図5〜9に示したように、ノイズタイミングが異なる複数のシミュレーションを行って、電磁感受性を評価することが好ましい。
しかし、ノイズタイミングが異なる複数のシミュレーションを行うことは、時間を要することから好ましくない。
【0039】
そこで、第1の実施の形態では、1回のシミュレーションにおいて複数回ノイズを与える重畳ノイズ波形を用いて電磁感受性を評価する方法を用いている。
図10は、第1の実施の形態における重畳ノイズ波形を説明する図である。なお、
図10では、( )内に一例における値を示している。
ここでは、
図1(c)に示したノイズ波形を基本ノイズ波形と表記する。そして、ノイズが継続する時間以上の長さに設定される期間をノイズ期間NIとする。
図1(c)に示したノイズ波形では、ノイズが継続する時間(正負に振動する時間)は100nsである。よって、ノイズ期間NIは、100ns以上に設定すればよい。そして、複数のノイズをノイズ期間NI隔てて重畳させて、重畳ノイズ波形としている。なお、ノイズ期間NIをノイズが継続する時間より短く設定すると、重畳させたノイズが重なるため好ましくない。
そして、ノイズ期間NIをノイズが継続する時間、ここで示す一例では100ns(
図1(c)参照)に設定すると、最も短い時間間隔で複数のノイズが重畳させられる。
図10に示す重畳ノイズ波形は、基本ノイズ波形を5個(#1〜#5)重畳させている。
【0040】
図11は、第1の実施の形態における重畳ノイズ波形、受信信号波形、アイパターンの一例を示す図である。
図11(a)は、重畳ノイズ波形、
図11(b)は、受信信号波形、
図11(c)は、アイパターンである。ここで、
図11(a)、(b)、(c)において、横軸が時間t(ns)、縦軸が電圧(V)である。
図11(a)に示すように、重畳ノイズ波形において、時間tが0ns、100ns、200ns、300ns、400nsの時点にノイズが与えられている。
これにより、
図11(b)に示すように、受信信号波形において、それぞれのノイズが与えられた時点から50nsが経過するまでの間、振幅が他の部分に比べて大きくなるとともに、波形に乱れが生じている。
そして、
図11(c)に示すように、それぞれのノイズの影響が重畳されたアイパターンが得られる。このアイパターンは、
図5〜9のアイパターンを重畳したものに近い。
【0041】
以上説明したように、与えられるタイミング(ノイズタイミング)が異なる複数のノイズの影響を反映したアイパターンが1回のシミュレーションにより求められる。
【0042】
(電磁感受性評価装置)
図12は、電磁感受性を評価する電磁感受性評価装置50の一例を説明する図である。
電磁感受性を評価する装置である電磁感受性評価装置50は、PC(Personal Computer)などであって、中央演算処理装置(以下ではCPUと表記する。)51、メモリ(以下ではMEMと表記する。)52、入出力デバイス(以下ではI/Oと表記する。)53、インターフェイス(以下ではIFと表記する)54を備えている。
そして、CPU51、MEM52、I/O53、IF54は、信号バス55で接続されている。
また、IF54にネットワークアナライザNAが接続され、ネットワークアナライザNAに測定対象物DUTが接続されている。なお、測定対象物DUTの一例がケーブル20である。
【0043】
CPU51は、論理演算及び算術演算を実行するALU(Arithmetic Logical Unit:論理算術演算ユニット)などを備えている。
MEM52は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク(HDD)などから構成され、CPU51が行う論理演算及び算術演算を実行するためのプログラム及びデータを保持している。
I/O53は、電磁感受性評価装置50の状態に関する情報を表示するディスプレイなどの出力デバイス及びユーザが電磁感受性評価装置50に指示を与えるキーボード、タッチパネル又は/及びボタンなどの入力デバイスを備えている。
IF54は、シリアル又はパラレルのインターフェイスであって、接続されたネットワークアナライザNAとデータのやり取りを行う。
【0044】
すなわち、電磁感受性評価装置50におけるCPU51は、MEM52に格納されたプログラム、データを読み出し、プログラムを実行する。これには、電子装置1の基板10−1、10−2の回路パラメータを算出するプログラムの実行が含まれてもよい。また、他の装置によって算出された回路パラメータを取得してもよい。そして、CPU51は、IF54を介してネットワークアナライザNAに実行を指示し、IF54を介してネットワークアナライザNAが測定したケーブル20の回路パラメータであるSマトリクスを取得する。さらに、取得した回路パラメータ、プログラムの実行によって得られた結果をMEM52に格納したり、I/O53に送信したりする。
【0045】
(電磁感受性評価装置50の機能ブロック)
図13は、電磁感受性評価装置50の機能ブロックの一例を示す図である。ここでは、電磁感受性評価装置50の他に、ネットワークアナライザNA、ネットワークアナライザNAの測定対象物DUT(一例としてケーブル20)を合わせて示している。
電磁感受性評価装置50は、後述する各種のデータを記憶する記憶部110、信号生成部120、重畳ノイズ波形生成部130、受信信号算出部140、アイパターン生成部150を備えている。
記憶部110は、電磁感受性の評価のため、送信信号パラメータ、基本ノイズ波形、重畳ノイズ波形、Sパラメータを含む回路パラメータ、受信信号波形、アイパターンを記憶する。ここで、送信信号パラメータは、PRBSである送信信号を生成するためのパラメータ、基本ノイズ波形は、
図1(c)に示したノイズ波形、回路パラメータは、電子装置1における基板10−1、10−2の回路パラメータ及びケーブル20の回路パラメータであるSパラメータである。なお、Sパラメータは、ネットワークアナライザNAによって測定される。
【0046】
信号生成部120は、
図2に示した信号生成回路11に代わって、記憶部110に記憶された送信信号パラメータを読み出し、PRBSである送信信号波形を生成する。
重畳ノイズ波形生成部130は、記憶部110に記憶された基本ノイズ波形を読み出し、基本ノイズ波形を重畳した重畳ノイズ波形を生成する。
受信信号算出部140は、記憶部110からケーブル20に対するSパラメータを含む回路パラメータ、重畳ノイズ波形を読み出し、送信信号波形に対する影響をシミュレーションして、受信信号波形を算出する。算出された受信信号波形は、記憶部110に記憶される。
アイパターン生成部150は、受信信号波形を読み出してアイパターンを生成する。生成されたアイパターンは、記憶部110に記憶される。
【0047】
ここで、記憶部110は、
図12に示した電磁感受性評価装置50のMEM52に対応し、信号生成部120、重畳ノイズ波形生成部130、受信信号算出部140、アイパターン生成部150は、CPU51に対応する。
【0048】
(電磁感受性評価方法のフローチャート)
図14は、電磁感受性評価方法のフローチャートの一例である。
ここでは、
図13に示した電磁感受性評価装置50の機能ブロックにより説明する。
記憶部110に、ケーブル20のSマトリクスを含む、電子装置1(評価対象物)の回路パラメータを取得する(回路パラメータ取得ステップ、回路パラメータ取得機能)(ステップ1、
図14ではS1と表記する。以下同様とする。)。
次に、重畳ノイズ波形生成部130により、基本ノイズ波形(ノイズ波形)をノイズ期間NIの間隔で重畳させた(重ね合せた)重畳ノイズ波形を生成する(重畳ノイズ波形生成ステップ、重畳ノイズ波形生成機能)(ステップ2)。
そして、受信信号算出部140により、回路パラメータ及び重畳ノイズ波形を用いて、送信信号(入力信号)波形に対する受信信号(出力信号)波形を算出する(出力信号波形算出ステップ、出力信号波形算出機能)(ステップ3)。
そしてまた、アイパターン生成部150により、受信信号(出力信号)波形からアイパターンを生成する(アイパターン生成ステップ、アイパターン生成機能)(ステップ4)。
【0049】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、重畳ノイズ波形において、複数のノイズを与える時点(ノイズタイミング)を等しい時間間隔とした。第2の実施の形態では、アイパターンの単位期間UIをノイズの数(m)で等分した追加単位期間Δを設定し、ノイズ期間NIに追加単位期間Δの倍数を加えてノイズタイミングを設定する。
図15は、
図10に示した第1の実施の形態の一例におけるノイズタイミング、信号タイミングなどと、アイパターンの単位期間UIにおけるノイズタイミングとを示す図である。
【0050】
前述したように、信号生成回路11(信号生成部120)は、480MbpsでRPBSの信号を発生する。最も高速になるデータビットパターンの信号の周期(信号周期)は、4.16nsである。信号タイミングは、この信号周期のタイミングであって、信号周期の整数倍である。そして、信号を評価するアイパターンの単位期間UIは、信号周期の二分の一に一致する。ここで示す一例においては、単位期間UIは2.08nsである。
【0051】
第1の実施の形態で示した一例においては、
図10、11(a)に示したように、ノイズ#1〜#5に対するノイズタイミングは、0ns、100ns、200ns、300ns、400nsであった。このノイズタイミングは、ノイズ期間NI(100ns)で設定されていた。
これらのノイズタイミングより短く且つ最も近い信号タイミングは、それぞれ単位期間UIの0倍の0ns、48倍の99.84ns、96倍の199.68ns、144倍の299.52ns、192倍の399.36nsである。すると、ノイズタイミングと信号タイミングとのタイミング差は、それぞれ0ns、0.16ns、0.32ns、0.48ns、0.64nsとなる。このことは、ノイズ#1〜#5のタイミングは、単位期間UIに対する比率が0.0%、7.7%、15.4%、23.1%、30.8%となる。
図15の右側の図から分かるように、ノイズタイミングは、単位期間UIに対する比率が0.0%から30.8%の範囲に限られ、30.8%を超え100%未満の範囲にはない。すなわち、ノイズタイミングが単位期間UIの一部に片寄っている。
よって、アイパターンの単位期間UIにおいて、ノイズが与えられていない期間にノイズを与えて、シミュレーションすることがより好ましい。
【0052】
図16は、第2の実施の形態における重畳ノイズ波形を説明する図である。
図16(a)は、ノイズタイミングをシフトしないノイズ期間NIからずらす(シフトさせる)ために追加する追加期間を算出する方法を説明する図、
図16(b)は、重畳ノイズ波形である。なお、
図16では、( )内に一例における値を示している。
図16(a)に示すように、ノイズタイミングをアイパターンの単位期間UIを重畳するノイズの数m(mは1以上の整数)で割った期間(UI/m)を追加単位期間Δとする。一例として、アイパターンの単位期間UIが2.08ns、ノイズの数が5である場合(m=5)、単位期間UIを5等分して得られる追加単位期間Δは、0.416nsとなる。
【0053】
そして、
図16(b)に示すように、ノイズタイミングを、シフトしないノイズ期間NIに対して、追加単位期間Δの整数倍をシフトさせる。すなわち、nをノイズの番号とした場合(nは1以上且つm以下の整数)、追加期間を+(n−1)×Δとする。すなわち、追加期間は、1番目のノイズでは0(ns)、2番目のノイズでは+Δ、3番目のノイズでは+2×Δ、4番目のノイズでは+3×Δ、5番目のノイズでは+4×Δとする。追加期間は、単位期間UIをノイズの数で分割したそれぞれの時点までの時間である。
一例においては、ノイズの数が5(m=5)、ノイズ期間NIが100ns、追加単位期間Δが0.416nsであるので、
図16(a)に示すように、1番目のノイズの追加期間は0ns、2番目のノイズの追加期間が0.416ns、3番目のノイズの追加期間が0.832ns、4番目のノイズの追加期間が1.248ns、5番目のノイズの追加期間が1.664nsとなる。よって、
図16(b)に示すように、1番目のノイズが0ns、2番目のノイズが100.416ns、3番目のノイズが200.832ns、4番目のノイズが301.248ns、5番目のノイズが401.664nsに与えられる。
【0054】
図17は、第2の実施の形態における重畳ノイズ波形、受信信号波形、アイパターンの一例を示す図である。
図17(a)は、重畳ノイズ波形、
図17(b)は、受信信号波形、
図17(c)は、アイパターンである。ここで、
図17(a)、(b)、(c)において、横軸が時間t(ns)、縦軸が電圧(V)である。
図17(a)に示す重畳ノイズ波形の場合においても、
図17(b)に示す受信信号波形において、
図11(b)と同様に、それぞれのノイズが与えられた時点から50nsが経過するまでの間、振幅が他の部分に比べて大きくなるとともに、波形に乱れが生じている。
そして、
図17(c)に示すように、それぞれのノイズの影響が重畳されたアイパターンが得られている。
図17(c)に示すアイパターンは、
図11(c)に示した第1の実施の形態におけるアイパターンと比べ、開口の大きさが小さくなっている。すなわち、
図16(a)、(b)で説明したノイズ波形(
図17(a))を用いることにより、ノイズの影響がより反映されたアイパターンが得られている。
【0055】
なお、
図16(b)に示したノイズ波形においては、ノイズの番号順(#1〜#5)に長くなるように追加単位期間Δの倍数を設定した。しかし、ノイズの番号順に追加単位期間Δの倍数を設定することを要せず、ノイズの番号順に追加単位期間Δの倍数を逆に設定してもよく、ランダムに設定してもよい。
【0056】
なお、
図12に示した電磁感受性評価装置50、
図13に示した電磁感受性評価装置50の機能ブロック図、
図14に示した電磁感受性評価方法のフローチャートは、第2の実施の形態にも適用しうる。
図14に示したフローチャートのステップ2における基本ノイズ波形を重畳させた重畳ノイズ波形の生成において、追加単位期間Δを単位として設定される追加期間を加えてノイズタイミングを設定すればよい。
【0057】
[第3の実施の形態]
第2の実施の形態では、アイパターンの単位期間UIをノイズの数(m)で等分した追加単位期間Δを設定し、ノイズ期間NIに追加単位期間Δの倍数を加えてノイズタイミングを設定した。
しかし、第2の実施の形態では、アイパターンの単位期間UIに対して、必ずしも均等にノイズタイミングが設定されていない(割り振られていない)。
図18は、
図16(a)、(b)に示した第2の実施の形態の一例におけるノイズタイミング、信号タイミングなどと、アイパターンの単位期間UIにおけるノイズタイミングとを示す図である。
【0058】
第2の実施の形態では、
図16(b)に示したように、ノイズ#1〜#5に対するノイズタイミングは、0ns、100.416ns、200.832ns、301.248ns、401.664nsである。これらのタイミングより短く且つ最も近い信号タイミングは、それぞれ単位期間UIの0倍の0ns、48倍の99.84ns、96倍の199.68ns、144倍の299.52ns、193倍の401.44nsとなる。すると、ノイズタイミングと信号タイミングとのタイミング差は、それぞれ0ns、0.576ns、1.152ns、1.728ns、0.224nsとなる。このことは、ノイズ#1〜#5のタイミングの単位期間UIに対する比率は、0.0%、27.7%、55.4%、83.1%、10.8%である。
図18の右側の図から分かるように、ノイズタイミングは、アイパターンの単位期間UIに対して均等に(等しい間隔で)設定されていない(割り振られていない)。
【0059】
そこで、第3の実施の形態では、ノイズタイミングをアイパターンの単位期間UIにおいて均等に設定される(割り振られる)ようにしている。
なお、均等とは、アイパターンの単位期間UIに対してノイズタイミングが等しい間隔で設定されることをいう。なお、完全に等しくなくとも、実質的に等しいとみなされる間隔で設定されることも含む。
【0060】
図19は、第3の実施の形態におけるノイズタイミング、信号タイミングなどと、アイパターンの単位期間UIにおけるノイズタイミングとの一例を示す図である。
図19の左側の表において、単位期間UIに対する比率から順に左側のノイズタイミングへと値が設定される。
第3の実施の形態では、ノイズタイミングのアイパターンの単位期間UIに対する比率を、均等(等しい間隔)に設定する。これまでと同様に、一例として、ノイズの数を5(m=5)とし、ノイズ#1〜#5のタイミングの単位期間UIに対する比率を0%、20%、40%、60%、80%に設定する。一例においては、単位期間UIが2.08nsであるので、ノイズタイミングと信号タイミングとの差は、0ns、0.416ns、0.832ns、1.248ns、1.664nsとなる。
【0061】
ノイズタイミングは、信号タイミングに上記の差を加えた時間で求められる。なお、前のノイズタイミングから次のノイズタイミングまでの期間は、ノイズ期間NIより長くなくてはならない。ノイズ期間NIは、一例では、100nsである。
【0062】
ノイズ#1は、タイミング差0nsであるので、信号タイミング0nsの時点、すなわち、0nsに与えられる。次のノイズ#2は、単位期間UIの48倍の99.84nsにタイミング差0.416nsを加えた100.256nsに与えられる。ノイズ#3は、単位期間UIの96倍の199.68nsにタイミング差0.832nsを加えた200.512nsに与えられる。ノイズ#4は、単位期間UIの144倍の299.52nsにタイミング差1.248nsを加えた300.768nsに与えられる。ノイズ#5は、単位期間UIの192倍の399.36nsにタイミング差1.664nsを加えた401.024nsに与えられる。
このようにすることで、ノイズタイミングが、アイパターンの単位期間UIにおいて等しい間隔で設定される。すなわち、アイパターンの単位期間UIに対して、ノイズを均等に発生させている。
【0063】
図20は、第3の実施の形態における重畳ノイズ波形、受信信号波形、アイパターンの一例を示す図である。
図20(a)は、重畳ノイズ波形、
図20(b)は、受信信号波形、
図20(c)は、アイパターンである。ここで、
図20(a)、(b)、(c)において、横軸が時間t(ns)、縦軸が電圧(V)である。
図20(a)に示した重畳ノイズ波形に対する、
図20(b)に示した受信信号波形において、ノイズが与えられた時点から50nsが経過するまでの間、振幅が他の部分に比べて大きくなるとともに、波形に乱れが生じている。
そして、
図20(c)に示すように、それぞれのノイズの影響が重畳されたアイパターンが得られている。
図20(c)に示すアイパターンは、
図17(c)に示した第2の実施の形態におけるアイパターンと開口の大きさが同程度である。すなわち、
図19で説明した重畳ノイズ波形を用いることにより、ノイズの影響がより反映されたアイパターンが得られている。
【0064】
なお、
図19では、ノイズの番号順(#1〜#5)に単位期間UIに対する比率が大きくなるようにした。しかし、ノイズの番号順に単位期間UIに対する比率を大きくすることを要せず、ノイズの番号順に単位期間UIに対する比率を逆に設定してもよく、ランダムに設定してもよい。
【0065】
なお、
図12に示した電磁感受性評価装置50、
図13に示した電磁感受性評価装置50の機能ブロック図、
図14に示した電磁感受性評価方法のフローチャートは、第3の実施の形態にも適用しうる。
図14に示したフローチャートのステップ2における基本ノイズ波形を重畳させた重畳ノイズ波形の生成において、アイパターンの単位期間UIに対する比率が均等になるように、ノイズタイミングを設定すればよい。
【0066】
なお、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態における時間tの“0(ns)”は基準の時点である。シミュレーションにおいて、開始部分は信号が不安定であるため、この部分を含めてアイパターンを求めると、電磁感受性の評価に好ましくないことがある。このような場合には、シミュレーションの開始部分でない時点に基準の時点を設定し、時間tの“0(ns)”とすればよい。
また、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態における重畳するノイズ波形の数(m)を5としたが、他の数であってよい。信号(送信信号)を480Mbpsとしたが、他の値であってもよい。
【0067】
ここでは、電磁感受性評価方法を、ケーブル20で説明したが、基板配線14−1、14−2、14−3に適用してもよい。
さらに、人体からの静電気放電を模擬したESDガン2による放電3に対する電磁感受性を評価する方法として説明したが、他のノイズに対する電磁感受性の評価にも適用しうる。