特許第6365033号(P6365033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365033
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】画像処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   G06T1/00 500A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-140784(P2014-140784)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-18391(P2016-18391A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 耕輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆之
【審査官】 村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−130105(JP,A)
【文献】 特開2006−007707(JP,A)
【文献】 特開2009−251454(JP,A)
【文献】 特開2012−226763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00 − 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象画像を、前景領域と背景領域とに分離する分離手段と、
前記前景領域の明度である前景明度、および、前記背景領域の明度である背景明度を把握する把握手段と、
前記背景領域に対してマスクを行い、当該マスクを行った後の当該背景領域と前記前景領域との間にコントラストが生じるように当該マスクを行うマスク手段と、
を備え、
前記マスク手段は、
前記前景明度が予め定められた明度よりも大きい場合において前記背景明度が予め設定された設定背景明度よりも小さい場合には、当該設定背景明度よりも大きい場合に比べて、前記マスクの明度を大きくし、
前記前景明度が予め定められた明度よりも小さい場合において前記背景明度が予め設定された設定背景明度よりも大きい場合には、当該設定背景明度よりも小さい場合に比べて、前記マスクの明度を小さくすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記マスク手段が前記マスクの明度を大きくする場合の当該マスクの明度は、当該マスクを通じて前記背景領域が透けて見える明度に設定され、
前記マスク手段が前記マスクの明度を小さくする場合の当該マスクの明度は、当該マスクを通じて前記背景領域が透けて見える明度に設定されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
ユーザから得た調整値を用い、前記マスクの明度を変更する明度変更手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
ユーザにより入力される前記調整値を取得する調整値取得手段と、
前記背景領域にマスクが行われた後の画像を表示するタッチパネルと、
を更に備え、
前記調整値取得手段は、前記タッチパネル上をスライド移動する、ユーザの指の移動量を検知して前記調整値を取得することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
対象画像を、前景領域と背景領域とに分離する分離機能と、
前記前景領域の明度である前景明度、および、前記背景領域の明度である背景明度を把握する把握機能と、
前記背景領域に対してマスクを行い、当該マスクを行った後の当該背景領域と前記前景領域との間にコントラストが生じるように当該マスクを行うマスク機能と、
をコンピュータに実現させるためのプログラムであり、
前記マスク機能は、
前記前景明度が予め定められた明度よりも大きい場合において前記背景明度が予め設定された設定背景明度よりも小さい場合には、当該設定背景明度よりも大きい場合に比べて、前記マスクの明度を大きくし、
前記前景明度が予め定められた明度よりも小さい場合において前記背景明度が予め設定された設定背景明度よりも大きい場合には、当該設定背景明度よりも小さい場合に比べて、前記マスクの明度を小さくすることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、推定前景領域と推定背景領域の間の境界を含み且つ推定前景領域と推定背景領域の両方にまたがる境界周辺領域内のピクセル群から、全ての又は代表的な複数の色を抽出し、抽出された複数の色のいずれとも可及的に異なる色になるように、抽出結果画像の色を決定する処理が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−191054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、画像の背景領域にマスクを行って前景領域を見やすくするに際し、背景領域がマスクにより見えなくなることを抑制しつつ、前景領域を見やすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、対象画像を、前景領域と背景領域とに分離する分離手段と、前記前景領域の明度である前景明度、および、前記背景領域の明度である背景明度を把握する把握手段と、前記背景領域に対してマスクを行い、当該マスクを行った後の当該背景領域と前記前景領域との間にコントラストが生じるように当該マスクを行うマスク手段と、を備え、前記マスク手段は、前記前景明度が予め定められた明度よりも大きい場合において前記背景明度が予め設定された設定背景明度よりも小さい場合には、当該設定背景明度よりも大きい場合に比べて、前記マスクの明度を大きくし、前記前景明度が予め定められた明度よりも小さい場合において前記背景明度が予め設定された設定背景明度よりも大きい場合には、当該設定背景明度よりも小さい場合に比べて、前記マスクの明度を小さくすることを特徴とする画像処理装置である。
請求項2に記載の発明は、前記マスク手段が前記マスクの明度を大きくする場合の当該マスクの明度は、当該マスクを通じて前記背景領域が透けて見える明度に設定され、前記マスク手段が前記マスクの明度を小さくする場合の当該マスクの明度は、当該マスクを通じて前記背景領域が透けて見える明度に設定されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項3に記載の発明は、ユーザから得た調整値を用い、前記マスクの明度を変更する明度変更手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置である。
請求項4に記載の発明は、ユーザにより入力される前記調整値を取得する調整値取得手段と、前記背景領域にマスクが行われた後の画像を表示するタッチパネルと、を更に備え、前記調整値取得手段は、前記タッチパネル上をスライド移動する、ユーザの指の移動量を検知して前記調整値を取得することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置である。
請求項5に記載の発明は、対象画像を、前景領域と背景領域とに分離する分離機能と、前記前景領域の明度である前景明度、および、前記背景領域の明度である背景明度を把握する把握機能と、前記背景領域に対してマスクを行い、当該マスクを行った後の当該背景領域と前記前景領域との間にコントラストが生じるように当該マスクを行うマスク機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラムであり、前記マスク機能は、前記前景明度が予め定められた明度よりも大きい場合において前記背景明度が予め設定された設定背景明度よりも小さい場合には、当該設定背景明度よりも大きい場合に比べて、前記マスクの明度を大きくし、前記前景明度が予め定められた明度よりも小さい場合において前記背景明度が予め設定された設定背景明度よりも大きい場合には、当該設定背景明度よりも小さい場合に比べて、前記マスクの明度を小さくすることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1によれば、画像の背景領域にマスクを行って前景領域を見やすくするに際し、背景領域がマスクにより見えなくなることを抑制しつつ、前景領域を見やすくすることができる。
本発明の請求項2によれば、マスクの明度を大きくした後や、マスクの明度を小さくした後、ユーザは、背景領域を視認できる。
本発明の請求項3によれば、マスクの明度を、ユーザが希望する明度に変更することができる。
本発明の請求項4によれば、マスクの明度の変更をユーザが行う際の操作性を向上させることができる。
本発明の請求項5によれば、画像の背景領域にマスクを行って前景領域を見やすくするに際し、背景領域がマスクにより見えなくなることを抑制しつつ、前景領域を見やすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を例示したブロック図である。
図2】(A)〜(C)は、画像処理装置において、画像から前景領域が分離される様子を説明する模式図である。
図3】前景領域と背景領域とを分離する分離処理から、マスキング処理に至る一連の処理の流れを示した図である。
図4】(A)〜(E)は、前景領域と背景領域とを分離する分離処理から、マスキング処理に至る一連の処理の流れを示した図である。
図5】明度テーブルを示した図である。
図6】(A)、(B)は、明度テーブルを用いた処理の具体例を示した図である。
図7】マスクの明度の変更処理を説明する図である。
図8】(A)〜(C)は、マスクの明度の変更処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置1の構成を例示したブロック図である。図2は、画像処理装置1において、画像Pから前景領域Pfが分離される様子を説明する模式図である。
【0009】
図1に示す画像処理装置1は、画像取得部20と、表示部30と、操作部40と、制御部50と、記憶部60とを備える。また、この画像処理装置1は、いわゆるタブレット端末により構成されている。
【0010】
画像取得部20は、例えば図2(A)に示した画像P(画像Pの画像データ)を取得する。ここで、画像取得部20は、例えば、外部機器に接続される接続インタフェースにより構成される。画像取得部20にて取得された画像データは、ハードディスク装置等により構成された記憶部60に出力され、この記憶部60に一旦格納される。
表示部30は、例えばタッチパネル方式のディスプレイにより構成され、画像を表示する表示面31(図2(A)参照)を有する。
【0011】
操作部40は、例えば、表示部30の表示面31に一体に形成され(タッチパネル方式のディスプレイの一部により構成され)、指やスタイラスペン等によって接触操作されることで、画像Pの一部の指定を受け付ける。付言すると、操作部40は、表示面31に表示された画像Pのうち、ユーザ(操作者)が分離(抽出)しようとする前景領域Pf(図2(B)参照)に含まれる前景シードSf(前景部分)の指定、および、画像Pのうちの前景領域Pfを除いた部分である背景領域Pbに含まれる背景シードSbの指定を受け付ける。
本実施形態では、前景シードSf及び背景シードSbは、図2(B)に示すように、いずれも線で指定されているが、線で指定されるものに限定されず、点で指定されるものであってもよい。
【0012】
なお、前景シードSfを指定するときは(前景領域Pfを指定するときは)、ユーザが表示面31に表示された「Fore」ボタン(図示省略)を押下した後に、ユーザが前景領域Pfとして抽出しようとした範囲の内側の部分を指やスタイラスペン等でなぞり、これにより、なぞった部分が前景シードSfとなる。前景シードSfは、図2(B)に示すように1つに限定されるものではなく、2つ以上指定されてもよい。
【0013】
背景シードSbを指定するときは、ユーザが表示面31に表示された「Back」ボタン(図示省略)を押下した後に、ユーザが前景領域Pfとして抽出しようとする範囲の外側の部分を、指やスタイラスペン等でなぞる。これにより、なぞった部分が背景シードSbとなる。背景シードSbについても、1つに限定されるものではなく、2つ以上指定されてもよい。なお、前景シードSfだけを指定し、背景シードSbを指定しなくてもよい。
【0014】
表示面31には、「Fore」ボタン及び「Back」ボタンの他に「Cut」ボタン(図示省略)が表示され、前景シードSfの指定及び背景シードSbの指定、又は、前景シードSfのみの指定が完了した後に、「Cut」ボタンが押下されることで、前景領域Pfの形成処理が実行される。また、本実施形態では、背景領域Pbに指定された部分については、図2(C)に示すように、マスキングが施される。これにより、前景領域Pfが、より目立つ状態で表示される。
なお、上記では説明を省略したが、前景シードSf及び背景シードSbによって前景領域Pfを形成する方法としては、既存の方法を挙げることでき、例えばグラフカット(Graph Cut)のアルゴリズムが挙げられる。
【0015】
図1に戻り、画像処理装置1の制御部50について説明する。
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)(何れも不図示)を備えている。
ROMは、CPUにより実行される制御プログラムを記憶している。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、RAMを作業エリアにして制御プログラムを実行する。CPUにより制御プログラムが実行されることで、後述する各機能(各処理)が実現される。
【0016】
なお、CPUによって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で、画像処理装置1へ提供しうる。また、インターネットなどの通信手段を用い、画像処理装置1へダウンロードしてもよい。
【0017】
図3図4は、前景領域Pfと背景領域Pbとを分離する分離処理から、マスキング処理に至る一連の処理の流れを示した図である。付言すると、図3図4は、制御部50によって実行される、分離処理、マスキング処理を示した図である。なお、図3は、処理の流れを示したフローチャートであり、図4は、処理の具体例を示した図である。
図3に示すように、本実施形態では、まず、画像処理装置1への画像データの入力が行われ(ステップ101)、この画像データが、画像取得部20にて取得される。ここで、図4における(A)は、入力された画像(画像データ)を示しており、この例では、二重丸の中に星が表示された画像となっている。
【0018】
次いで、図3に示すように、また、上記にて説明したように、分離手段として機能する制御部50によって、前景領域Pfと背景領域Pbとの分離処理が行われる(ステップ102)。その後、マスク用の画像であるマスク用画像を生成する(ステップ103)。
ここで、図4(B)には、前景領域Pfと背景領域Pbとを表示している。さらに、図4(B)には、マスク用画像を例示している。ここで、このマスク用画像は、その輪郭が、背景領域Pbの輪郭と一致するように生成される。
【0019】
その後、図3のステップ104に示すように、前景領域Pfおよび背景領域Pbのそれぞれについて、色解析処理を行う。具体的には、把握手段としても機能する制御部50が、図4の(C)で示すように、前景領域Pfおよび背景領域Pbのそれぞれについて、画像全体の明度(明度分布)を把握する。
【0020】
次いで、ステップ103にて生成したマスク用画像の色の決定を行う(ステップ105)。具体的には、ステップ103にて生成したマスク用画像の明度(濃度)を変更(調整)する処理を行う。これにより、図4の(D)に示すように、明度が変更された新たなマスク用画像が生成される。
次いで、図3のステップ106に示すように、背景領域Pbと、ステップ105にて生成された新たなマスク用画像との合成処理を行い、マスク用画像が重ねられた背景領域Pb(以下、「マスク済み背景領域Pb」と称することがある)を生成する。付言すると、マスク手段として機能する制御部50が、背景領域Pbに対して、ステップ105にて生成された新たなマスク用画像を用いてマスクを行い、マスク済み背景領域Pbを生成する。
【0021】
次いで、このマスク済み背景領域Pbと、ステップ102の分離処理により得られた前景領域Pfとの合成処理を行い、合成画像(以下、「マスク済み合成画像」)を生成する。次いで、このマスク済み合成画像の表示処理を行う(ステップ107)。これにより、本実施形態では、ユーザが選択した前景領域Pfが、より目立つ状態で表示されるようになる。
【0022】
ここで、本実施形態では、色の認識より明暗の認識が優れている人間の目の特性を利用している。背景領域Pbの明度を変化させると、画像処理装置1を操作しているユーザは、明暗の感度の高さから、前景領域Pfと背景領域Pbとの間の境界を認識することができる。また、本実施形態の処理では、明度のみが変化するだけであり、色相が変化しないため、画像全体の印象の変化を抑制しつつ、前景領域Pfが目立つようになる。
【0023】
ところで、本実施形態では、上記のように、前景領域Pfと背景領域Pbとの分離が行われ、さらに、背景領域Pbについてはマスクが被せられる。
ところで、このマスクが、例えば、黒一色などである場合には、背景領域Pbが全く見えず、前景領域Pfと背景領域Pbとの分離が、意図した通りになされているか否かの判断が難しくなる。付言すると、操作ミスなどによって、意図した箇所とは異なる箇所で、前景領域Pfと背景領域Pbとの分離がなされることがあり、このような場合に、黒色のマスクがなされ、背景領域Pbが全く見えないと、分離処理が適切なものであるか否かの判断が難しくなる。このため、本実施形態では、マスク後も背景領域Pbが見えるマスクとしている。
【0024】
その一方で、背景領域Pbのみを考慮してマスクを生成してしまうと、今度は、前景領域Pfの明度と、背景領域Pbの明度とが近くなるなどして、前景領域Pfを目立たせるのが難しくなることがある。このため、本実施形態では、前景領域Pfおよび背景領域Pbの二つの領域を考慮して、マスクの明度を決定する。
【0025】
具体的には、本実施形態では、マスクの明度を決めるために明度テーブルが記憶部60に記憶されており、この明度テーブルを参照して、マスクの明度を決定する。付言すると、本実施形態では、上記のステップ105にてマスク(マスク用画像)の明度を決めるが、この際、この明度テーブルを参照して、マスクの明度を決める。
なお、明度テーブルを参照してマスクの明度を決めるのは一例であり、マスクの明度を決める数式などを予め用意しておき、この数式を用い明度を決めてもよい。
【0026】
図5は、明度テーブルを示した図である。
この明度テーブルでは、前景領域Pfの明度(領域全体の平均明度)(前景明度)が、2つに分類(「低(明度「小」)」および「高(明度「大」)」)されており、また、背景領域Pbの平均明度(領域全体の平均明度)(背景明度)も、2つに分類(「低(明度「小」)」および「高(明度「大」)」)されている。付言すると、本実施形態では、明度についての閾値である明度閾値が予め設定されており、この明度閾値を境として、前景領域Pfの明度および背景明度Pbの各々が、小さい明度あるいは大きい明度の何れかに分類される。
【0027】
なお、本実施形態では、明度閾値が1つ設定された場合を一例に説明するが、明度閾値は、例えば、2つ設けてもよく、この場合は、例えば、小さい方の明度閾値よりも明度が小さい場合に、明度が小さいと判断し、大きい方の明度閾値よりも明度が大きい場合に、明度が大きいと判断する。
また、本実施形態では、前景領域Pfの明度の判断(明度の高低の判断)、背景領域Pbの明度の判断(明度の高低の判断)に際して、共通の明度閾値を用いるが、前景領域Pfの明度の判断に用いる明度閾値と、背景領域Pbの明度の判断に用いる明度閾値とを異ならせてもよい。
【0028】
ここで、同図の(A)の条件の場合は、即ち、前景領域Pfの明度が低く(小さく、暗く)、背景領域Pbの明度も低い(小さい、暗い)場合、生成するマスクを白に近い色にするなど、マスクの明度を、高く(大きく、明るく)する。
これにより、前景領域Pfと、マスクをした後の背景領域Pbとの間で、コントラストが大きくなり、前景領域Pfが目立つようになる。また、マスクについては、白に近い色であり、背景領域Pbが透けるようになり、背景領域Pbが見えるようになる。
【0029】
付言すると、(A)の条件の場合、マスクの明度を小さくしてしまうと、背景領域Pbの明度も小さいために、背景領域Pbが見えなくなるおそれがある。このため、(A)の条件では、マスクの明度を大きくしている。また、明度の小さい前景領域Pfを目立たせるためにも、マスクの明度を大きくしている。
【0030】
さらに説明すると、(A)の条件のように、前景領域Pfの明度が上記明度閾値よりも小さい場合は、マスクの明度を大きくするほど、コントラストが大きくなり、前景領域Pfが目立つ。また、(A)の条件では、背景領域Pbの明度が明度閾値よりも小さく、背景領域Pbは暗いため、マスクの明度を小さくしてしまうと、背景領域Pbが見えなくなる。このため、(A)の条件のように、前景領域Pfの明度が明度閾値よりも小さく、さらに、背景領域Pbの明度も明度閾値よりも小さい場合は、マスクの明度を大きくする。
【0031】
次に(B)の条件について説明する。
(B)の条件の場合は、即ち、前景領域Pfの明度が高く(大きく、明るく)、背景領域Pbの明度が低い(小さい、暗い)場合は、生成するマスクをグレーにやや近づいた白にするなど、生成するマスクを、中から高くらいの明度にする。これにより、前景領域Pfと、マスクをした後の背景領域Pbとの間で、コントラストが生まれる。また、マスクについては、明度が比較的高いため、背景領域Pbが透けるようになり、背景領域Pbが見えるようになる。
【0032】
付言すると、(B)の条件においても、マスクの明度を小さくしてしまうと、背景領域Pbの明度も小さいために、背景領域Pbが見えなくなるおそれがある。このため、マスクの明度を大きくしている。その一方で、(B)の条件では、前景領域Pfの明度が大きいために、マスクの明度も大きくしてしまうと、前景領域Pfが目立ちにくくなる。このため、この例では、マスクの明度を、中−高の範囲に設定する。
【0033】
さらに説明すると、(B)の条件のように、前景領域Pfの明度が明度閾値よりも大きい場合は、マスクの明度を小さくするほど、コントラストが大きくなり、前景領域Pfが目立つようになる。その一方で、(B)の条件では、背景領域Pbの明度が明度閾値(設定背景明度の一例)よりも小さく、背景領域Pbは暗いため、マスクの明度を小さくすると、背景領域Pbが見えなくなるおそれがある。
このため、(B)の条件のように、前景領域Pfの明度が明度閾値よりも大きく、その一方で、背景領域Pbの明度が明度閾値よりも小さい場合には、背景領域Pbの明度が明度閾値よりも大きい場合に比べ(後に説明する条件(D)の場合に比べ)、マスクの明度を大きくする。これにより、マスクを通じ、背後に位置する背景領域Pbが見えるようになる。
【0034】
次に(C)の条件について説明する。
(C)の条件の場合は、即ち、前景領域Pfの明度が低く(小さく、暗く)、背景領域Pbの明度が高い(大きい、明るい)場合は、生成するマスクの明度を、低から中くらいの明度にする。これにより、前景領域Pfと、マスクをした後の背景領域Pbとの間で、コントラストが生まれる。また、背景領域Pbの部分については、もともとの明度が高いため、低から中くらいの明度のマスクをしたとしても、背景領域Pbが透け、背景領域Pbが見える。
【0035】
付言すると、(C)の条件の場合は、背景領域Pbの明度が大きいため、マスクの明度が大きいと、背景領域Pbのマスクが不十分となり、背景領域Pbが見えやすくなってしまう。このため、この条件では、マスクの明度を小さくする。その一方で、マスクの明度を小さくし過ぎると、今度は、前景領域Pfと背景領域Pbとの間でコントラストが生じにくくなり、前景領域Pfが目立ちにくくなる。このため、(C)の条件では、マスクは、最も低い明度よりも大きい、「低−中」の明度に設定する。
【0036】
さらに説明すると、(C)の条件のように、前景領域Pfの明度が明度閾値よりも小さい場合には、マスクの明度を大きくするほど、コントラストが大きくなり、前景領域Pfが目立つ。その一方で、(C)の条件では、背景領域Pbの明度が明度閾値(設定背景明度の一例)よりも大きく、背景領域Pbが明るいため、マスクの明度を大きくしてしまうと、背景領域Pbが透けてしまう。そしてこの場合、背景領域Pbが隠れずに目立つようになる。
【0037】
このため、本実施形態では、(C)の条件のように、前景領域Pfの明度が明度閾値よりも小さく、その一方で、背景領域Pbの明度が明度閾値よりも大きい場合には、背景領域Pbの明度が明度閾値よりも小さい場合に比べ(上記の条件(A)の場合に比べ)、マスクの明度を小さくする。このようにすると、マスクを通じた背景領域Pbの視認を行えるようにしつつ、背景領域Pbが目立ちにくくなる。
【0038】
次に(D)の条件について説明する。
(D)の条件の場合は、即ち、前景領域Pfの明度が高く(大きく、明るく)、背景領域Pbの明度も高い(大きい、明るい)場合は、生成するマスクの明度を「低」にする。これにより、前景領域Pfと、マスクをした後の背景領域Pbとの間で、コントラストが生まれる。また、背景領域Pbの部分については、もともとの明度が高いため、低の明度のマスクをしたとしても、背景領域Pbが透け、背景領域Pbが見える。
【0039】
付言すると、この(D)の条件でも、背景領域Pbの明度が大きいため、マスクの明度を大きくしてしまうと、背景領域Pbのマスクが不十分となり、背景領域Pbが見えやすくなってしまう。このため、この条件でも、マスクの明度を小さくする。また、この条件では、前景領域Pfの明度が大きく、マスクの明度が小さいほど前景領域Pfが目立つため、マスクの明度を「低」にする。
【0040】
さらに、説明すると、(D)の条件のように、前景領域Pfの明度が明度閾値よりも大きい場合は、マスクの明度を小さくするほど、コントラストが大きくなり、前景領域Pfが目立つ。また、(D)の条件では、背景領域Pbの明度が明度閾値よりも大きく、背景領域Pbは明るいため、マスクの明度を小さくしても、背景領域Pbは見える。このため、この条件(D)のように、前景領域Pfの明度が明度閾値よりも大きく、さらに、背景領域Pbの明度も明度閾値よりも大きい場合には、マスクの明度を小さくする。
【0041】
図6(A)、(B)は、明度テーブルを用いた処理の具体例を示した図である。
ここで、例えば、同図(A)の(A1)に示す画像の背景領域Pbに対して、マスクを行う場合を想定する。なお、例では、「星」の画像の内側の部分、星を取り囲むリングの部分が前景領域Pfとして設定され、これ以外の部分が背景領域Pbとして設定されている。
【0042】
この(A)に示す例では、前景領域Pfおよび背景領域Pbのいずれにおいても、明度が大きくなっている。このため、この場合は、図5の(D)の条件に該当し、明度が低いマスクが設定される。これにより、図6(A)の(A2)に示すように、背景領域Pbに対し、黒色に近いマスクがかけられる。
【0043】
また、図6(B)に示す例では、「星」の画像の内側の部分が前景領域Pfとして設定され、これ以外の部分が、背景領域Pbとして設定されている。また、この(B)に示す例では、前景領域Pfの明度が小さく、背景領域Pbの明度が大きくなっている。このため、この場合は、図5の(C)の条件に該当し、「低―中」の明度のマスクが設定される。
【0044】
これにより、図6(B)の(B2)に示すように、背景領域Pbに対して、グレーのマスクがかけられるようになる。そして、この場合、前景領域Pfと背景領域Pbとの間にコントラストが生まれ、前景領域Pfが目立つようになる。また、背景領域Pbが透けて見え、前景領域Pfと背景領域Pbとの分離が、意図した通りに行われているか否かの確認を行えるようになる。
【0045】
ところで、上記の手法によってマスクの明度を設定した場合であっても、場合によっては、マスクの明度が大きすぎたり小さすぎたりし、背景領域Pbが見えなくなってしまったり、背景領域Pbが見えたままの状態となったりすることがある。このため、本実施形態の画像処理装置1では、マスクの明度を変更できるようにしている。
【0046】
図7図8は、マスクの明度の変更処理を説明する図である。付言すると、図7図8は、制御部50によって実行される、マスクの明度変更処理を示した図である。なお、図7は、処理の流れを示したフローチャートであり、図8は、処理の具体例を示した図である。
【0047】
図7に示すように、本実施形態では、まず、上記にて説明した、分離処理、マスク処理が実行される(ステップ201)。これにより、例えば、図8(B)で示すような画像が生成される。
【0048】
次いで、ユーザが行った操作の認識処理であるジェスチャ認識を行う(ステップ202)。ここで、この例では、図8(B)に示すように、タッチパネル(表示面31)上にてスライド移動する指の認識処理を行う。具体的には、指の移動量を検知する。そして、指の移動量を検知すると、マスクの明度の変更処理を実施する(ステップ203)。
【0049】
さらに説明すると、本実施形態では、ユーザの指の移動量に基づき、マスクの明度の変更処理を行う。付言すると、本実施形態では、マスクの明度の変更に際しては、まず、調整値取得手段として機能する制御部50が、明度の変更に用いる調整値をユーザから取得する。具体的には、ユーザの指の移動量を調整値として取得する。次いで、明度変更手段として機能する制御部50が、この調整値を用いて、マスクの明度の変更処理を行う。そして、マスクの明度の変更処理を施した画像を、再び表示する(ステップ204)。
【0050】
さらに具体的に説明すると、本実施形態では、図8(B)にて示す状態から、例えば、ユーザが指を図中上方へ移動させた場合には、マスクの明度を大きくする処理を行い、ユーザが指を図中下方へ移動させた場合には、マスクの明度を小さくする処理を行う。ここで、同図(C)は、ユーザが、指を下方へ移動した場合を例示しており、ユーザの指が下方へ移動した場合には、同図(C)に示すように、背景領域Pbの明度が小さくなる。
【0051】
なお、この例では、指の上下方向の移動に基づきマスクの明度を変更する場合を一例に説明したが、その他に、例えば、指の左右方向の移動に基づきマスクの明度を変更するようにしてもよい。
また、この例では、タッチパネル(表示面31)に対する指の移動量に基づき、明度の変更量を取得する場合を一例に説明したが、その他に、例えば、タッチパネル(表示面31)にテンキーを表示するなどして、ユーザが、明度の変更量についての具体的な数値を直接入力する形態としてもよい。
また、上記では、画像処理装置1が、いわゆるタブレット端末により構成された場合を一例に説明したが、画像処理装置1は、モニタ、キーボード、マウスなどを備えたPC(Personal Computer)により構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…画像処理装置、50…制御部、P…画像、Pf…前景領域、Pb…背景領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8