特許第6365047号(P6365047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365047
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】防音壁の遮音板留め金具
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   E01F8/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-145420(P2014-145420)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11574(P2016-11574A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年6月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:平成26年2月4日〜6月12日、販売先:日本板硝子環境アメニティ(株)東京事業部、JFE建材アルミ(株)、公開者:新中央工業株式会社、公開内容:遮音板留め金具販売
(73)【特許権者】
【識別番号】592093914
【氏名又は名称】新中央工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中西 顕朗
(72)【発明者】
【氏名】大下 忠信
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−26911(JP,A)
【文献】 特開2005−307632(JP,A)
【文献】 特開2004−190369(JP,A)
【文献】 特開平10−280335(JP,A)
【文献】 実開平4−57513(JP,U)
【文献】 特開2015−196948(JP,A)
【文献】 米国特許第4143495(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 3/00〜 8/02
E01F 1/00、13/00〜15/14
E01B 1/00〜 26/00
E04B 1/62〜 1/99
F16B 2/00〜 2/26
F16B 5/00〜 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の遮音板と、この遮音板の端縁部を支持する溝部を有する支柱とを備えた防音壁において、該遮音板を該支柱の該溝部に挿入した際に該溝部と該遮音板の端縁部との隙間に装着され、弾性復元力により該遮音板を該溝部に押圧する板バネ式の留め金具であって、略上下方向に延び、上記隙間に装着されたときに、厚み方向の一方の面が上記遮音板の厚み方向における該隙間側の面に当接する第1縦辺部と、上記第1縦辺部と対向しかつ該第1縦辺部との水平距離が上側に向かって大きくなるように略上下方向に延び、上記隙間に装着されたときに、厚み方向における第1縦辺部と反対側面の上端部が上記断面コ字状溝の一方の側面に当接する第2縦辺部と、上記第2縦辺部の上端部に接続され、該上端部から上記第1縦辺部側に向かって延びる第1横辺部と、上記第1横辺部の第1縦辺部側端部に接続され、該端部から上記第2縦辺部側でかつ斜め下側に向かって延びる第2横辺部と、上記第2横辺部の第2縦辺部側端部に接続され、該端部から上記第1縦辺部側でかつ下側に或いは上記第2縦辺部側でかつ上側に向かって延びる第3横辺部とを備え、上記第1横辺部と上記第2横辺部との接続部が、該第1縦辺部の内面に接触可能な第1接触部として形成され、上記第2横辺部と上記第3横辺部との接続部から上記第3横辺部との間に、該第2縦辺部の内面に接触可能な第2接触部が形成され、
第2縦辺部の下端部に接続され、該下端部から第1縦辺部に向かって斜め下方に延びる傾斜辺部と、該傾斜辺部の下端部に接続され、該下端部から該第1縦辺部方向に延びて、該第1縦辺部の該下端部に接続される下辺部とを備え、
上記留め金具が該支柱に装着された状態で、上記第1縦辺部と上記第2縦辺部との隙間が狭くなる動きに対して、該第2接触部が第2縦辺部の内面に接触して下方に滑った後、第2縦辺部の内面から該傾斜辺部の内面に移動して接触して斜め下方に滑り、上記第1縦辺部と上記第2縦辺部との隙間が広くなる動きに対しては逆に、該第2接触部が該傾斜辺部の内面に接触して斜め上方に滑るようになっていることを特徴とする防音壁の遮音板留め金具。
【請求項2】
請求項1記載の防音壁の遮音板留め金具において、該第2接触部が、第2縦辺部の内面に接触して下方に滑った後、第2縦辺部と該傾斜辺部との境界で一旦停止して、その後該傾斜辺部の内面に接触して斜め下方に滑るように、該第2縦辺部の該下端部と該傾斜辺部との接続部分に折り曲げ部が形成されていることを特徴とする防音壁の遮音板留め金具。
【請求項3】
請求項2記載の防音壁の遮音板留め金具において、上記第2接触部が上記傾斜辺部の内面を滑る際に、上記第3横辺部と上記第2横辺部との接触部が上記傾斜辺部の内面に接触するとともに、上記第3横辺部の先端部が上記傾斜辺部の内面に非接触になることを特徴とする防音壁の遮音板留め金具。
【請求項4】
請求項3記載の防音壁の遮音板留め金具において、上記第2横辺部と上記第3横辺部とが直角に設けられていることを特徴とする防音壁の遮音板留め金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音壁において遮音板を弾力的に固定するための板バネ式の遮音板留め金具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車道路の両側等に設けられる防音壁は、所定間隔をあけて立設された複数の支柱と、該相隣接する一対の支柱の対向面に形成され、該支柱の長さ方向に延びる断面コ字状溝と、該相対向する断面コ字状溝間に嵌め込まれ、該断面コ字状溝の溝幅よりも厚みが小さく設定された遮音板とを備えている。
そして、上記遮音板と断面コ字状溝における一方の側面との隙間には板バネ式の遮音板留め金具が装着され、この留め金具の弾性復元力により遮音板が断面コ字状溝の他方の側面に押圧されて固定されるようになっている。(特許文献1)
【0003】
特許文献1に示す留め金具は、略上下方向に延び、上記隙間に装着されたときに、厚み方向の一方の面が上記遮音板の厚み方向における該隙間側の面に当接する第1縦辺部と、この第1縦辺部と対向しかつ該第1縦辺部との水平距離が上側に向かって大きくなるように設けられ、留め金具が上記隙間に装着されたときに、厚み方向における第1縦辺部と反対側面の上端部が上記断面コ字状溝の一方の側面に当接する第2縦辺部とを備えている。第1縦辺部と第2縦辺部との間に、上記第2縦辺部の上端部に接続され、該上端部から上記第1縦辺部側に向かって延びる第1横辺部と、上記第1横辺部の第1縦辺部側端部に接続され、該端部から上記第2縦辺部側でかつ下側に向かって延びる第2横辺部とを備え、上記第2横辺部の第2縦辺部側端部に接続され、該端部から上記第1縦辺部側でかつ上側に向かって延びる第3横辺部とを備え、第1横辺部と第2横辺部との接続部が第1縦辺部の内面に接触するように形成され、第2横辺部と第3横辺部との接続部が第2縦辺部の内面に接して滑るように形成されている。上記特許文献1の留め金具は、第1縦辺部及び第2縦辺部の下端部間の水平距離は、上記隙間よりも小さく設定されている一方、上端部間の水平距離は、上記隙間よりも大きく設定されており、留め金具の第1縦辺部及び第2縦辺部の下端部をその隙間に挿入しておき、この留め金具を上側からハンマー等で叩くことにより第1縦辺部及び第2縦辺部の上端部を互いに近付く方向に撓ませて、上記遮音板と断面コ字状溝との隙間に挿入させる。
【0004】
上記特許文献1の留め金具では、防音壁の支柱の溝部と遮音板の端縁部との隙間に挿入すると、第1縦辺部と第2縦辺部の上端側が狭められるようになり、第1横辺部と第2横辺部の接続部が第1縦辺部の内面に接触し、第2横辺部と第3横辺部との接続部が第2縦辺部の内面に接触する。更に、第1縦辺部と第2縦辺部との間隔が狭められるに従って、両接続部はそれぞれ第1縦辺部及び第2縦辺部の内面に接触しながら下方に滑ることが要求される。しかし、上記接続部では、留め金具が上記隙間に挿入され両縦辺部間が狭められた際に、縦辺部の内面に接触した瞬間から接触抵抗が大きくなるので、接続部が下方に滑りにくい。実際には、両縦辺部間が狭められた際の方向は略水平方向(又はやや斜め下方方向)であるのに対して、接続部が滑る方向は略縦方向であり、滑る方向の作用力が小さく滑り力を得られない。通常では、留め金具を挿入する際に第1横辺部が下方に叩き込まれるので、第1横辺部と第2横辺部との接続部は第1縦辺部の内面を接触しながら下方に強制的に下方に押し込まれ、滑ることとなる。しかし、第2横辺部と第3横辺部との接続部では、このような強制的な下方向への作用力も無く、この接続部ではしばしば滑らないことが発生していた。時には、第2縦辺部に変な力が作用して変形して、バネ力が弱くなったり、極端な場合には第2縦辺部が部分的に破損することもあった。
【0005】
特許文献1の留め金具では、第1横辺部と第2横辺部との接続部、第2横辺部と第3横辺部との接続部の両接続部を結ぶ直線に対して、第2横辺部の長手方向が下方に傾いている。そのため、留め金具の装着時、第1縦辺部と第2縦辺部との間隔が急激に狭くなった場合に、第2横辺部が変形しても、中央が下凸(上凹)に変形する。その結果、第1横辺部と第2横辺部との接続部の角度(即ち第1横辺部と第2横辺部との角度)が初期状態よりも広くなり、滑らかな曲線となるので滑りやすくなる。しかし、第1横辺部と第2横辺部との接続部が第1縦辺部の内面に対して滑りやすくなるのであり、第2横辺部と第3横辺部との接続部は、第2横辺部の内面に対して相変わらず滑りにくい状態にある。そのため、この特許文献2においても、第2横辺部と第3横辺部との接続部が第2縦辺部の内面を滑らない状態で、無理やり第1縦辺部と第2縦辺部との間隔が狭まることとなっている。その結果、第2横辺部が座屈変形し、弾性復元力が無くなってしまう結果となっている。
【0006】
特に、最近では、留め金具の材料として、通常の鋼材でなく、ステンレス鋼板が使われるようになってきている。通常の鋼板の場合には、亜鉛めっき等の防錆処理を表面に施しているので、お互いの接触時比較的滑り易かった。しかし、このステンレス鋼板では、上記のようなめっき処理をせずに、素材のままで使用することが多く、その場合には、お互いの接触時比較的滑りにくく、上記問題が、大きくクローズアップされることとなっている。
【0007】
上記のような防音壁の遮音板留め金具に対して、防音壁の隙間に遮音板留め金具が挿入された際に、第2横辺部と第3横辺部との接続部が第2縦辺部の内面に滑らかに接触して、滑って下降することを目的とするものも知られている。(特許文献2)
【0008】
【特許文献1】実開平04−57513号公報
【特許文献2】特開2005−307632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2のものでは、特許文献1等に比較して滑べりが改善されており、実用化されている。最近では、遮音板として、透光板等の合成樹脂製のものも出てきており、軽量化が図られている。また、遮音板自体の長さを大きくして、遮音板を嵌めこむ支柱間の間隔を大きく取るようにして、支柱数や留め金具数等を削減して低コスト化を図ると共に、遮音板等の組立工数も低減したいという要求が出てきている。
このような大きな遮音板を使用するためには、特許文献1や2の留め金具では、耐荷重性が不足しており、留め金具にかかる耐荷重力を今までより倍増にすることが必要となっている。単純に考えれば、留め金具の厚さを増加して、耐荷重性を増加することが考えられるが、コストアップになると共に、重量アップになる問題点を有する。
そのために、本発明では、留め金具の厚さを殆ど変更することなく、できるだけ現状の板厚の留め金具を使用して、止め金具の形状の工夫で耐荷重性を大幅に改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、
矩形状の遮音板と、この遮音板の端縁部を支持する溝部を有する支柱とを備えた防音壁において、該遮音板を該支柱の該溝部に挿入した際に該溝部と該遮音板の端縁部との隙間に装着され、弾性復元力により該遮音板を該溝部に押圧する板バネ式の留め金具であって、略上下方向に延び、上記隙間に装着されたときに、厚み方向の一方の面が上記遮音板の厚み方向における該隙間側の面に当接する第1縦辺部と、上記第1縦辺部と対向しかつ該第1縦辺部との水平距離が上側に向かって大きくなるように略上下方向に延び、上記隙間に装着されたときに、厚み方向における第1縦辺部と反対側面の上端部が上記断面コ字状溝の一方の側面に当接する第2縦辺部と、上記第2縦辺部の上端部に接続され、該上端部から上記第1縦辺部側に向かって延びる第1横辺部と、上記第1横辺部の第1縦辺部側端部に接続され、該端部から上記第2縦辺部側でかつ斜め下側に向かって延びる第2横辺部と、上記第2横辺部の第2縦辺部側端部に接続され、該端部から上記第1縦辺部側でかつ下側或いは上側に向かって延びる第3横辺部とを備え、上記第1横辺部と上記第2横辺部との接続部が、該第1縦辺部の内面に接触可能な第1接触部として形成され、上記第2横辺部と上記第3横辺部との接続部から上記第3横辺部との間に、該第2縦辺部の内面に接触可能な第2接触部が形成され、
第2縦辺部の下端部に接続され、該下端部から第1縦辺部に向かって斜め下方に延びる傾斜辺部と、該傾斜辺部の下端部に接続され、該下端部から該第1縦辺部方向に延びて、該第1縦辺部の該下端部に接続される下辺部とを備え、
上記留め金具が該支柱に装着された状態で、上記第1縦辺部と上記第2縦辺部との隙間が狭くなる動きに対して、該第2接触部が第2縦辺部の内面に接触して下方に滑った後、第2縦辺部の内面から該傾斜辺部の内面に移動して接触して斜め下方に滑り、上記第1縦辺部と上記第2縦辺部との隙間が広くなる動きに対しては逆に、該第2接触部が該傾斜辺部の内面に接触して斜め上方に滑るようになっていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、該第2接触部が、第2縦辺部の内面に接触して下方に滑った後、第2縦辺部と該傾斜辺部との境界で一旦停止して、その後該傾斜辺部の内面に接触して斜め下方に滑るように、該第2縦辺部の該下端部と該傾斜辺部との接続部分に折り曲げ部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、上記第2接触部が上記傾斜辺部の内面を滑る際に、上記第3横辺部と上記第2横辺部との接触部が上記傾斜辺部の内面に接触するとともに、上記第3横辺部の先端部が上記傾斜辺部の内面に非接触になることを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、上記第2横辺部と上記第3横辺部とが直角に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、留め金具の防音壁の遮音板と支柱との隙間に装着する際に、留め金具の第1縦辺部と第2縦辺部との下側部分を隙間に挿入し、更に強制的に挿入していくと第1接触部が第1縦辺部の内面に接触し、第2接触部が第2縦辺部の内面に接触し、更に挿入していくと、第1縦辺部と第2縦辺部との間隔が狭くなる。その時に、第1接触部は、第1横辺部が強制的に押し込まれることにより、下方向の力が作用するので、第1縦辺部の内面を下方にスムーズに滑っていくことができる。また、第2接触部は、第2縦辺部の内面を下方にスムーズに滑っていき、傾斜辺部に乗り上げて滑って、第2接触部が傾斜辺面に接触して止まるようになっているので、この状態で留め金具が縮められて弾力的に溝部に保持されるので、元に戻ろうとする復元力が強く、耐圧縮荷重が強いものが得られる。特に、留め金具を溝部に挿入した挿入終期ごろには、従来では、第2接触部が第2縦辺部の内面に接触して滑るので、スムーズに滑るが、圧縮時の荷重は大きくなく、弾性復元力としては強いものではなかった。しかし、第1の発明では、第2接触部が第2縦辺部の内面に接触して滑った後、傾斜辺部に乗り上げて滑ることとなるので、従来に比較して、留め金具を縮める圧縮力が強くなり、即ちこのことは、弾性復元力が従来に比較して強くできることである。したがって、留め金具の耐圧縮荷重性(或いは弾性復元力)を強化することができるので、防音板の長さが長くなり、支柱間の間隔が広くなっても、止め金具としての要求強度を確保できる点で優れている。
また、逆に、第1縦辺部と第2縦辺部との間隔が広くなると、第2接触部が傾斜辺部を滑って上昇するが、この傾斜辺部を滑るので、高い耐圧縮荷重性を維持したままとすることができる。
【0015】
第2の発明では、第2接触部が、第2縦辺部の内面を下方に滑っていき、該第2縦辺部の該下端部と該傾斜辺部との接続部分に設けた折り曲げ部で、一旦停止する。このことで、留め金具の耐圧縮荷重性が急激に上がり、大きな荷重に耐えることが出来る。それと共に、更に大きな荷重がかかると、該第2縦辺部が、傾斜辺部を滑るので、高い耐圧縮荷重性を維持したままで傾斜辺部を滑るようになっている。この時に、逆に、第1縦辺部と第2縦辺部との間隔が広くなると、第2接触部が傾斜辺部を滑って上昇するが、この傾斜辺部を滑るので、高い耐圧縮荷重性を維持したままとすることができる。特に、間隔が大幅に狭くなって第2接触部が傾斜辺部の上端部に達しても、折り曲げ部で維持されるので、高い耐圧縮荷重性を維持したとすることができる。
【0016】
第3の発明では、上記第3横辺部と上記第2横辺部との接触部が上記傾斜辺部の内面に接触するとともに、上記第3横辺部の下端部が上記傾斜辺部の内面に非接触になるので、第2接触部が傾斜辺部を滑らかに滑ることができる。
【0017】
第4の発明では、上記第2横辺部と上記第3横辺部とが直角に設けられているので、第2接触部が、折り曲げ部で、傾斜辺部を滑らかに滑ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る遮音板留め金具が防音壁に取り付けられた状態を示す断面図である。
図2】遮音板留め金具の斜視図である。
図3図1に示すように遮音板留め金具を支柱に挿入後、間隔が狭くなった時の遮音板留め金具の状態を説明する簡略図である。
図4】耐圧縮荷重と間隔との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1ないし図3は、本発明の実施形態1に係り、留め金具を防音壁に適用した例を示す。
図1に示すように、留め金具10が設けられた防音壁1を示し、この防音壁1は、自動車道路の両側において該自動車道路に沿った方向(図1の紙面の表裏方向)に所定間隔をあけて立設された多数の支柱2,2,…を備えている。なお、図1では、支柱2に、遮音板4と留め金具10が嵌め込まれた状態の断面である。支柱2は、図視を省略するが、H形鋼からなっていて、支柱2の長さ方向に延びる2つの断面コ字状の溝部3,3を有し、この各溝部3の開口が自動車道路に沿った方向(図1の紙面の表裏方向)を向くように立設されている。すなわち、各溝部3は、相隣接する一対の支柱2,2の対向面に形成されていることになる。
【0020】
一対の支柱2,2の対向面における相対向する溝部3,3間には、自動車道路に沿った方向に延びる複数の遮音板4,4,…が上下方向に積み重ねられた状態で嵌め込まれている。この各遮音板4は、ポリカーボネート等のプラスチック製や、鉄、アルミニウムやコンクリート等からなるボックスタイプ製であり、その厚みtは上記溝部3の溝幅Wよりも小さく設定されている。尚、各支柱2の自動車道路と反対側面には金属製の外装板(図示せず)が貼付固定されている。
【0021】
各遮音板4と各溝部3における自動車道路と反対側の側面との隙間(隙間量S=W−t)には、弾性復元力により該遮音板4を溝部3の自動車道路側の側面に押圧しかつばね鋼鋼材等からなる板バネ式の遮音板留め金具10が装着されている。この留め金具10は、上記各遮音板4の長さ方向両端部の上端部に設けられていて、遮音板4の厚み方向における自動車道路と反対側面(上記隙間側面)の上端部を自動車道路側に押圧するように構成されている。尚、各遮音板4の上端部には、留め金具10の取付辺部11の嵌合孔11aに嵌まる突起4aが設けられている。またこの留め金具10の上側に重ねられる留め金具10の取付辺部11には、孔11aに嵌まって、更に上側に飛び出た突起4aが挿入される凹部4bが設けられている。このことで、留め金具10の外れが防止されると共に、遮音板4の位置合わせがなされ下端部の厚み方向への移動が規制されるようになっている。
【0022】
留め金具10は、具体的には、図1に示すように、留め金具10が上記隙間Sに装着されたときに、取付辺部11の下面が上記遮音板4の上端面に当接しかつ取付辺部11の上端面に突設された断面円形の嵌合部4a(図1参照)に嵌合孔11aが略嵌合する。この取付辺部11の自動車道路と反対側端部には、略上下方向に延びる第1縦辺部12の上端部が接続されている。この第1縦辺部12の厚み方向における自動車道路側面は、留め金具10が隙間Sに装着されたときに、略全体的に遮音板4の厚み方向における上記隙間側面に当接するようになっている。
【0023】
第2縦辺部13の上端部には、上端部から第1縦辺部12側でかつ斜め下側に向かってほぼ第1縦辺部12近辺まで延びる第1横辺部14が接続されている。第1横辺部14の第1縦辺部12側端部(下端部)には、該端部から第2縦辺部13側でかつ斜め下側に向かってほぼ第2縦辺部13付近まで延びる第2横辺部15が接続されている。第2横辺部15の第2縦辺部13側端部には、該端部から第1縦辺部12側でかつ斜め下側に向かって延びる第3横辺部16が接続されている。第2横辺部と第3横辺部とは略直角に設けられている。第1横辺部14と第2横辺部15との接続部に、第1縦辺部12の内面に接触可能な断面略円弧状の第1接触部17が設けられ、第2横辺部15と第3横辺部16との接続部に、第2縦辺部13の内面に接触可能な断面略円弧状の第2接触部18が設けられている。これらの第1接触部17及び第2接触部18は、滑らかな断面略円弧形状に形成されている。
【0024】
なお、第3横辺部16は、第2横辺部15の第2縦辺部13の側端部に、該端部から第2縦辺部13側でかつ斜め上側に向かって延びるように設けられていても良い。なお、この場合には、第3横辺部16の先端には、更に第2縦辺部13側でかつ斜め上側に向かって延びるように折り曲げられるようにすることが好ましい。
第1接触部17及び第2接触部18は、円弧状で無く、単なる屈曲部でも良い。
【0025】
傾斜辺部20は、第2縦辺部13の下端部に接続され、この下端部から第1縦辺部12に向かって斜め下方に延びて設けられている。下辺部19が、傾斜辺部20の下端部に接続され、この下端部から第1縦辺部12方向に延びて、第1縦辺部12の下端部に接続される。第1縦辺部12と第2縦辺部13の下端部の間隔は、上記隙間Sよりも少し小さ目に形成され、隙間Sに挿入し易くなっている。第2縦辺部13の厚み方向における第1縦辺部12と反対側面(自動車道路と反対側面)の上端部は、留め金具10が隙間Sに装着されたときに、溝部3の自動車道路と反対側の側面に当接するようになっている。
【0026】
第2横辺部15と第3横辺部16とのコーナー部分の狭い方の角度αと、第2横辺部15が傾斜辺部20に接触した時に、第2横辺部15と傾斜辺部20との狭い方の角度βとは、α≧90°>βとなっている。このことにより、傾斜辺部20にコーナー部分が接触して滑るようにするだけでなく、第3横辺部16の先端部が傾斜辺部20に接触しないようになる。それによって、滑り抵抗になる事を防止するようにしている。それと共に、第2接触部18の強度をアップさせるようにしている。
なお、傾斜辺部20と第2縦辺部13との狭い方の角度は、隙間Sの間隔や要求される耐圧縮強度等で異なるが、50°〜20°が実用的な範囲である。
【0027】
第2縦辺部13に内側(第1縦辺部12方向)に向かって突出するビード状の第1変形部31が形成されている。第2縦辺部13の上下方向略中間位置には、第1変形部31の幅方向一部を切り欠いで形成し、先端が支柱2の溝部3の内面に接触可能な抜け止め突起40が設けられている。抜け止め突起40によって、振動等で留め金具10が隙間Sから抜け出ることを防止している。
【0028】
第1横辺部14と第2横辺部15の幅方向中央部には、ほぼ長さ方向全長に亘って第1補強用ビード部32が内側に突出して設けられている。この第1補強用ビード部32は、第1横辺部14と第2横辺部15との間の第1接触部17にも連続して同一幅で内側に向けて突出して形成されており、第1横辺部14、第2横辺部15及び第1接触部17の強度アップが図られている。
【0029】
具体的に、留め金具10を隙間Sに挿入する際の状況を説明する。実施形態1では、図2に示すように、留め金具10はフリーな状態で、第1接触部17は第1縦辺部12の内面に接触せず、且つ第2接触部18も第2縦辺部13の内面から浮いている状態になるものを使用する例である。図1及び図3に示すように、留め金具10が隙間Sに挿入され、第1横辺部14がハンマー等で叩かれて更に奥に挿入されると、第1縦辺部12と第2縦辺部13との間隔が狭くなり、まず第1接触部17が第1縦辺部12の内面に接触しながら下方に滑っていく。それにつれて、第2接触部18が第1変形部31に接触し、第1変形部31を滑って下方に移動し、更に、第2縦辺部13の内面に移って滑っていく。この状態では、図4では、間隔Sが狭くなるにつれて、耐圧縮荷重が僅かずつ徐々に高くなっていく。通常の使用範囲では、この隙間が大きく変化しないので、第2接触部16が、第2縦辺部13の内面を上下に滑る程度で、使用できている。
【0030】
それに対して、大きな振動や強風などで、防音壁1が大きく振動して、隙間におおきな荷重がかかって、急激に狭くなった場合には、第2接触部16が、第2縦辺部13の下端まで行き、更に下向きの力が作用することとなる。この時に、第2縦辺部13と傾斜辺部20との境界に設けられた折り曲げ部21に第2接触部18が接触した状態で保持される。この状態では、図4では、間隔Sはほとんど変化しないで、急激に耐圧縮荷重が増加する。このことによって、留め金具は10は、大きな弾性復元力を持って遮音板4を保持することができる。
【0031】
更にこれ以上に間隔Sが狭くなるように力が働くと、第2接触部18が第2縦辺部13の内面から傾斜辺部20の内面に移動して接触して斜め下方に滑っていく。この状態では、図4では、急激に耐圧縮荷重が増加したところから、第2接触部18が傾斜辺部20を滑りながら、徐々に耐圧縮荷重が僅かずつ徐々に高くなっていく。その結果、第2接触部18が第2縦辺部13よりも更に内側に狭まった傾斜辺部20の傾斜面を接触して滑るので、留め金具10の圧縮荷重が増加する。その結果、留め金具10の復元力が強化されることになる。
【0032】
なお、第1縦辺部12と第2縦辺部13との隙間が広くなる動きに対しては、逆に、第2接触部18が傾斜辺部20の内面に接触して斜め上方に滑るようになっている。この状態で、間隔Sが広くなるような力が作用すると、第2接触部18が傾斜辺部20の傾斜面を接触して上方に向かって滑る。この状態では、図4では、点線で示すように、僅かに耐圧縮荷重が弱くなる方向であるが、依然として高い耐圧縮荷重を維持しているので、高い弾性復元力を保持できている。
【0033】
留め金具10を隙間Sに挿入して第1縦辺部12と第2縦辺部13との間隔が狭まる際に、基本的には第2横辺部15は変形しないようになっているが、僅かには弾性変形し湾曲する。この場合に、第1接触部17と第2接触部18を結ぶ仮想線に対して、第2横辺部15の長手方向は下方に位置しているので、第2横辺部15が弾性変形する場合には下方に膨らんで変形する。その結果、第1横辺部14と第2横辺部15との角度は増大する方向となり、第1接触部17は曲率が小さくなるので、第1接触部17は滑りやすくなり、且つ座屈変形や亀裂が生じにくくなる。
【0034】
以上述べたように、留め金具10aを隙間Sに装着して使用している間では、振動や強風等で、防音壁が揺れて、隙間の間隔が縮小したり、拡大しており、その結果第1縦辺部12と第2縦辺部13との間隔が常に変化する。そのために、留め金具には、この間隔の縮小・拡大に滑らかに追従することが必要である。即ち、第2接触部18が第2縦辺部13の内面を滑らか滑ってスムーズに移動することが、上記間隔の縮小・拡大に滑らかに追従する為にも必要なことである。それと共に、耐圧縮荷重が高くなることが必要とされる。
【0035】
このように、留め金具には、上記で述べたように、挿入後において隙間の縮小・拡大に滑らかに追従することが、強く要求されている。この要求に対しては、第2接触部18が傾斜辺部20に接触して滑る機能を有しているので、挿入後の振動・風力等による隙間の縮小・拡大に対して、追従性が良く且つ耐圧縮荷重を高く維持することができ、優れた機能を発揮する。
【0036】
なお、上記実施形態では、留め金具10が隙間Sに挿入されない自由な状態では、第1接触部17が第1縦辺部12の内面に接触し、第2接触部18は第2縦辺部13の内面に接触せず、遮音板4と溝部3との隙間Sに挿入する際に接触するように形成されている。しかし、自由な状態で初めから軽い力で第2縦辺部13の内面に接触するように形成していても良い。ただ挿入しやすさを考えると、自由な状態では接触してない前者の方が好ましい。
【0037】
第1横辺部14及び第2横辺部15に形成する第1補強用ビード32は内側に突出して形成しているが、逆に外側に突出して形成しても良い。また、この第1補強用ビード32及び第2縦辺部13に設ける第1変形部31は1条に限らず、複数条に形成しても良い。特に第2縦辺部等の幅が広いものでは、補強用ビードや変形部を複数条設けると好ましい。
【符号の説明】
【0038】
4 遮音板
10 留め金具
11 取付部
12 第1縦辺部
13 第2縦辺部
14 第1横辺部
15 第2横辺部
16 第3横辺部
17 第1接触部
18 第2接触部
20 傾斜辺部
40 抜け止め突起
図1
図2
図3
図4