特許第6365051号(P6365051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6365051ダイレクトドライブモータ、搬送装置、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365051
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ダイレクトドライブモータ、搬送装置、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/38 20060101AFI20180723BHJP
   H02K 5/173 20060101ALI20180723BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20180723BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20180723BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20180723BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20180723BHJP
   H02K 11/00 20160101ALI20180723BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20180723BHJP
   F16C 33/60 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H02K3/38 Z
   H02K5/173
   H02K1/18 D
   H02K1/16 Z
   H02K3/46 B
   H02K15/14 Z
   H02K11/00
   F16C19/36
   F16C33/60
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-147320(P2014-147320)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-25709(P2016-25709A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 逸男
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和則
(72)【発明者】
【氏名】丸山 正幸
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−167588(JP,A)
【文献】 実開昭60−077240(JP,U)
【文献】 特開2003−299299(JP,A)
【文献】 特開2010−130763(JP,A)
【文献】 特開2014−093117(JP,A)
【文献】 特開2006−211863(JP,A)
【文献】 特開2005−287121(JP,A)
【文献】 特開2005−073320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/38
F16C 19/36
F16C 33/60
H02K 1/16
H02K 1/18
H02K 3/46
H02K 5/173
H02K 11/00
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止輪及び回転輪を有する軸受で構成される軸受部と、
複数のティースと、前記ティースに支持され、巻線が巻回されたボビンとを有するステータコアを有し、
前記静止輪を支持するステータと、
複数の永久磁石を有し、かつ前記回転輪に支持され、前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、
前記ロータの回転を検出する回転検出器と、
前記回転検出器、前記軸受部、前記ロータの前記永久磁石、前記ステータが、軸方向に直交する同一面内であって、かつ前記ロータの回転軸に対して径方向外側に向かって順に並ぶように、環状の前記ステータと環状の前記軸受部とを部材の一方面側に径方向の間隔をあけて保持する金属製のハウジングと、
電気的絶縁性を有する樹脂製であって、環状の部材である第1のカバー部材と、
電気的絶縁性を有する樹脂製であって、環状の部材である第2のカバー部材と、
を備え
前記第1のカバー部材は、前記ボビンの軸方向の一方に嵌め込まれた状態で固定されており、
前記第2のカバー部材は、前記ボビンの軸方向の他方に嵌め込まれた状態で固定されており、前記ボビンと前記ハウジングとの間に設けられ、
前記巻線と前記第1のカバー部材との間及び前記巻線と前記第2のカバー部材との間には、放熱グリスが充填されている、
ダイレクトドライブモータ。
【請求項2】
前記ティースの軸方向最小幅は、前記軸受部の軸方向最大幅よりも大きい
請求項1に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項3】
前記軸受部の軸方向最大幅部が軸方向に占める位置は、前記ティースの軸方向最小幅部が軸方向に占める位置の範囲内である請求項2に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項4】
前記ダイレクトドライブモータの軸方向の高さに対し、前記ティースの軸方向最小幅部が25%以上50%以下の範囲で規定された請求項2または3に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項5】
前記ステータの内側に前記ロータを有するインナーロータ型のダイレクトドライブモータであって、
前記ハウジングは、
前記ステータを前記ステータコアの径方向外縁部で保持し、前記軸受を前記静止輪の径方向内縁部で保持すると共に、前記回転検出器が径方向内縁部に設けられた円環状のステータハウジングと、
前記ロータが径方向外縁部に形成され、前記軸受を前記回転輪の径方向外縁部で保持する円環状のロータハウジングと、
を含む請求項1から4の何れか一項に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項6】
前記軸受は、クロスローラ軸受である請求項1からの何れか一項に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項7】
前記軸受部は、複数個の前記軸受が軸方向に複数段重ねられて構成された請求項1からの何れか一項に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項8】
前記ステータコアは、円環状の部材と、該円環状の部材から径方向に突出した前記複数のティースとが一体的に形成されて構成された請求項1からの何れか一項に記載のダイレクトドライブモータ。
【請求項9】
請求項1からの何れか一項に記載のダイレクトドライブモータと、
前記ダイレクトドライブモータの作動により物体を搬送する搬送部と、
を備える搬送装置。
【請求項10】
請求項1からの何れか一項に記載のダイレクトドライブモータと、
前記ダイレクトドライブモータの作動により移動する物体を検査する検査部と、
を備える検査装置。
【請求項11】
請求項1からの何れか一項に記載のダイレクトドライブモータと、
前記ダイレクトドライブモータの作動により移動する物体を加工する加工部と、
を備える工作機械。
【請求項12】
請求項1からの何れか一項に記載のダイレクトドライブモータと、
前記ダイレクトドライブモータの作動により移動する物体を処理する処理部と、
を備える半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトドライブモータ、このダイレクトドライブモータの製造方法、搬送装置、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトドライブモータは、減速機構を介さずに、発生した動力を対象物にダイレクトに伝達する。ダイレクトドライブモータは、動力を発生するモータ部と、モータ部の回転を検出するレゾルバ(回転検出器)と、モータ部及びレゾルバを保持するハウジングと、を備えている。モータ部は、コイル及びそのコイルを支持するステータコアを含むステータと、永久磁石を含むロータとを有する。コイルは、リード線と接続される。リード線は、コネクタを介して、電力供給部と接続される。
【0003】
コイルを含むステータと、永久磁石を含むロータとを有するモールドモータの一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−109861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、搬送装置等に用いられるダイレクトドライブモータでは、高い外部荷重に耐える強度を維持しながら、軸方向の高さの低減が望まれている。軸方向の高さを低減しつつ、高い外部荷重に耐える強度を得るためには、金属製のハウジングが用いられることが多い。このような金属製のハウジングを用いた場合、金属製のハウジングとステータのコイルとの間の絶縁性能を確保するために一定以上の空間距離・沿面距離が必要であり、そのための空間をハウジング内部に確保するためにステータコアの厚みを薄くしてしまうと、ダイレクトドライブモータの出力性能が低下する可能性がある。
【0006】
性能が低下したダイレクトドライブモータが、搬送装置、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置に使用された場合、それら搬送装置、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置の性能が低下する可能性がある。
【0007】
本発明の態様は、性能の向上を図ることができるダイレクトドライブモータ、このダイレクトドライブモータの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の態様は、性能の向上を図ることができる搬送装置、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、静止輪及び回転輪を有する軸受で構成される軸受部と、複数のティースに巻線が巻回されたステータコアを有し、前記静止輪を支持するステータと、前記回転輪に支持され、前記ステータに対して回転可能に設けられたロータと、前記ロータの回転を検出する回転検出器と、前記回転検出器と前記軸受部と前記ステータ及び前記ロータで構成されるモータ部とを前記ロータの回転軸に対して径方向に並べて保持すると共に、前記ステータの径方向一端部を保持し、該ステータの軸方向端部の一方面に対向しつつ径方向他端部側に延びて形成された金属製のハウジングと、電気的絶縁性を有し、少なくとも前記ステータの軸方向端部の一方面と前記ハウジングとの間に設けられたカバーと、を備えるダイレクトドライブモータを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、実質的にハウジングとステータとの間に空間を設ける必要がなくなり、ダイレクトドライブモータの軸方向の高さに対して、ステータコアの軸方向幅を大きくすることができる。したがって、ダイレクトドライブモータの軸方向の高さを大きくすることなく、絶縁性能及び出力性能を含むダイレクトドライブモータの性能の向上を図ることが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様のダイレクトドライブモータにおいて、前記ティースの軸方向最小幅は、前記軸受部の軸方向最大幅よりも大きくてもよい。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、ダイレクトドライブモータの性能の向上を図ることが可能となる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様のダイレクトドライブモータにおいて、前記軸受部の軸方向最大幅部が軸方向に占める位置は、前記ティースの軸方向最小幅部が軸方向に占める位置の範囲内であってもよい。
【0013】
これにより、ダイレクトドライブモータの軸方向の高さが抑制される。
【0014】
本発明の第4の態様は、第2または第3の態様のダイレクトドライブモータにおいて、ダイレクトドライブモータの軸方向の高さに対し、前記ティースの軸方向最小幅部が25%以上50%以下の範囲で規定されていてもよい。
【0015】
これにより、ダイレクトドライブモータの軸方向の高さに応じて出力性能を規定することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1から第4の何れかの態様のダイレクトドライブモータにおいて、前記ステータの内側に前記ロータを有するインナーロータ型のダイレクトドライブモータであって、前記ハウジングは、前記ステータを前記ステータコアの径方向外縁部で保持すると共に、前記軸受を前記静止輪の径方向内縁部で保持する円環状のステータハウジングと、前記ロータが径方向外縁部に形成され、前記軸受を前記回転輪の径方向外縁部で保持する円環状のロータハウジングと、を含んでもよい。
【0017】
これにより、回転子の回転軸から径方向に向けて、回転検出器、軸受、モータ部を並べて配置することができ、ダイレクトドライブモータの軸方向の高さを低減することができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1から第5の何れかの態様のダイレクトドライブモータにおいて、前記カバーは、前記ステータの軸方向端部の他方面にさらに設けられていてもよい。
【0019】
これにより、ハウジング内部への異物の侵入を防ぐと共に、金属製の保護用カバーを用いる場合と比べて、ステータコアの軸方向幅を大きくすることができ、ダイレクトドライブモータの軸方向の高さを低減しつつ、性能の向上を図ることができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第1から第6の何れかの態様のダイレクトドライブモータにおいて、前記カバーは、樹脂製のカバーであってもよい。
【0021】
これにより、巻線の絶縁性能を確保することができる。
【0022】
本発明の第8の態様は、第1から第7の何れかの態様のダイレクトドライブモータにおいて、前記カバーと前記巻線との間に放熱グリスが充填されていてもよい。
【0023】
これにより、コイルが発する熱の放熱性を向上することができ、ダイレクトドライブモータの定格トルクを大きくすることができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、第1から第8の何れかの態様のダイレクトドライブモータにおいて、複数の前記ティースは、それぞれ前記巻線がボビンに巻回されたコイルを支持しており、前記カバーは、複数の前記ティースに設けられた各前記ボビンの少なくとも径方向一方端に嵌合され保持されていてもよい。
【0025】
これにより、カバーを確実にステータに嵌合させることができる。
【0026】
本発明の第10の態様は、第1から第9の何れかの態様のダイレクトドライブモータにおいて、前記軸受は、クロスローラ軸受であってもよい。
【0027】
これにより、いずれの方向に対する荷重にも強く、大きな荷重に耐え得る高い剛性を保つことができる。
【0028】
本発明の第11の態様は、第1から第10の何れかの態様のダイレクトドライブモータにおいて、前記軸受部は、複数個の前記軸受が軸方向に複数段重ねられて構成されていてもよい。
【0029】
これにより、多段構成の軸受を構成する各段の軸受にかかる荷重を小さくすることができ、軸受の長寿命化、延いては、ダイレクトドライブモータの長寿命化を図ることができる。
【0030】
本発明の第12の態様は、第1から第11の何れかの態様のダイレクトドライブモータにおいて、前記ステータコアは、円環状の部材と、該円環状の部材から径方向に突出した前記複数のティースとが一体的に形成されて構成されていてもよい。
【0031】
これにより、コイルが所定位置から逸脱することを防ぐことができる。
【0032】
本発明の第13の態様は、静止輪及び回転輪を有する軸受で構成される軸受部と、円環状のステータコアに設けられた複数のティースに巻線が巻回されたステータと、前記ステータの内側に配置され、前記軸受部を介して前記ステータに対し回転可能に設けられた円環状のロータと、前記ステータを前記ステータコアの径方向外縁部で保持すると共に、前記軸受を静止輪の径方向内縁部で保持する円環状のステータハウジングと、前記ロータが径方向外縁部に形成され、前記軸受を回転輪の径方向外縁部で保持する円環状のロータハウジングと、前記ステータハウジングに面する前記ステータの軸方向端部の一方面に設けられた絶縁用カバーと、前記絶縁用カバーが設けられた前記ステータの軸方向端部の他方面に設けられた保護用カバーと、を備えたインナーロータ型のダイレクトドライブモータの製造方法であって、前記ステータハウジング上に前記絶縁用カバーを配置する工程と、前記ステータハウジング上で位置決めした前記絶縁用カバー上に前記ステータを配置して、前記絶縁用カバーと前記ステータとを嵌合させる工程と、前記ステータハウジングと前記ステータとを固定する工程と、前記ステータハウジングに固定された前記ステータ上に前記保護用カバーを配置して、前記保護用カバーと前記ステータとを嵌合させる工程と、前記保護用カバーの径方向外側端部を前記ステータコアと共に前記ステータハウジングに固定する工程と、を有するダイレクトドライブモータの製造方法を提供する。
【0033】
本発明の第13の態様によれば、保護用カバー、絶縁用カバー、及びステータのステータハウジングへの組み付けを作業性良く実施することができる。
【0034】
本発明の第14の態様は、第1から第12の何れかの態様のダイレクトドライブモータと、前記ダイレクトドライブモータの作動により物体を搬送する搬送部と、を備える搬送装置を提供する。
【0035】
本発明の第14の態様によれば、搬送装置の性能の向上を図ることができる。
【0036】
本発明の第15の態様は、第1から第12の何れかの態様のダイレクトドライブモータと、前記ダイレクトドライブモータの作動により移動する物体を検査する検査部と、を備える検査装置を提供する。
【0037】
本発明の第15の態様によれば、検査装置の性能の向上を図ることができる。
【0038】
本発明の第16の態様は、第1から第12の何れかの態様のダイレクトドライブモータと、前記ダイレクトドライブモータの作動により移動する物体を加工する加工部と、を備える工作機械を提供する。
【0039】
本発明の第16の態様によれば、工作機械の性能の向上を図ることができる。
【0040】
本発明の第17の態様は、第1から第12の何れかの態様のダイレクトドライブモータと、前記ダイレクトドライブモータの作動により移動する物体を処理する処理部と、を備える半導体製造装置を提供する。
【0041】
本発明の第17の態様によれば、半導体製造装置の性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の態様によれば、性能の向上を図ることができるダイレクトドライブモータ、このダイレクトドライブモータの製造方法が提供される。また、本発明の態様によれば、性能の向上を図ることができる搬送装置、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、ダイレクトドライブモータの全体構成の一例を概略的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示すダイレクトドライブモータにおけるステータを示す図である。
図3図3は、図2に示すステータのB−B矢視図である。
図4図4は、ステータを構成するステータコアの内周コアを示す図である。
図5図5は、ステータを構成するステータコアの外周コアを示す図である。
図6図6は、本実施形態に係るダイレクトドライブモータの全体構成の一例を概略的に示す断面図である。
図7図7は、本実施形態に係るダイレクトドライブモータを備える検査装置の一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係るダイレクトドライブモータを備える工作機械の一例を示す図である。
図9図9は、本実施形態に係るダイレクトドライブモータを備える半導体製造装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0045】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する前に、まず、ダイレクトドライブモータの構成について説明する。図1は、ダイレクトドライブモータ1の全体構成の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示すダイレクトドライブモータ1におけるステータ21を示す図である。図3は、図2に示すステータ21のB−B矢視図である。図4は、ステータ21を構成するステータコア25の内周コア251を示す図である。図5は、ステータ21を構成するステータコア25の外周コア252を示す図である。
【0046】
ダイレクトドライブモータ1は、減速機構を介さずに、発生した動力を対象物にダイレクトに伝達する。ダイレクトドライブモータ1は、例えば、搬送装置のアームを駆動する駆動源として使用されるサーボモータを含む。また、その他にも、ダイレクトドライブモータ1は、例えば、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置等にも用いられることを想定されている。
【0047】
図1に示すように、ダイレクトドライブモータ1は、対象物を回転させるための動力を発生するモータ部2と、モータ部2の回転を検出する回転検出器3と、モータ部2及び回転検出器3を保持するハウジング4と、モータ部2と接続されるリード線10と、ハウジング4に設けられ、リード線10を引き出すコネクタ30とを備えている。なお、図示はしていないが、コネクタ30から引き出されたリード線10は、ダイレクドライブモータ1を制御する制御装置に接続される。
【0048】
モータ部2は、ステータ21と、ステータ21に対して回転可能なロータ22とを有する。ロータ22は、回転軸AXを中心に回転する。
【0049】
ダイレクトドライブモータ1は、インナーロータ型である。ステータ21は、ロータ22の周囲に配置される。回転軸AXに対して、ステータ21は、ロータ22の外側に配置される。
【0050】
図1図5に示すように、ステータ21は、複数のティース23及び複数のティース23を連結するヨーク24を含む内周コア251及び外周コア252からなるステータコア25と、ステータコア25に支持されるコイル26とを有する。ティース23は、回転軸AXの周囲に複数配置される。コイル26は、複数設けられる。コイル26は、複数のティース23のそれぞれに支持される。各ティース23間には、それぞれスロット27が形成される。
【0051】
内周コア251は、回転軸AXの周囲に配置される複数のティース23と、複数のティース23を連結するヨーク24とを有する。複数のティース23は、ヨーク24から回転軸AXに対する放射方向に関して外側に向かって突出するように配置される。ティース23は、回転軸AXの周囲において等間隔で複数配置される。隣り合うティース23の間にスロット27が設けられる。
【0052】
外周コア252は、内周コア251の外径よりも大きい内径を有する環状の部材である。内周コア251と外周コア252とは固定される。
【0053】
コイル26は、集中巻された巻線14を含む。巻線14が集中巻されたコイル26がティース23に支持される。1つのティース23に1つのコイル26が配置される。ここで、集中巻とは、1つのティース23に巻線を多回数巻いたもの、すなわち、1つのティース23に1相分の巻線を巻き付けるものをいう。
【0054】
図1に示す例では、コイル26は、巻線14がボビン28に巻かれて形成される。1つのボビン28に1つのコイル26が配置される。ボビン28がティース23に支持される。すなわち、コイル26は、巻線14がボビン28に集中巻された状態で、ティース23に支持される。
【0055】
巻線14がボビン28に集中巻されて形成された複数のコイル26は、それぞれ内周コア251の各ティース23に挿入される。複数のコイル26がそれぞれ各ティース23に支持された後、内周コア251と外周コア252とが接続される。これにより、コイル26は、内周コア251と外周コア252との間に配置される。
【0056】
なお、図3から図5に示す例では、内周コア251にティース23が設けられることとしたが、外周コア252にティース23が設けられていてもよい。
【0057】
図1に示すように、ロータ22は、回転軸AXの周囲において、等間隔で複数配置された永久磁石13を含む。ロータ22は、後述する第2支持部材12に複数個の永久磁石13が組み付けられて構成される。ステータ21とロータ22とは、間隙を介して対向する。
【0058】
また、図1に示すように、ダイレクトドライブモータ1は、回転検出器3を有する。回転検出器3は、モータ部2の回転を検出する。回転検出器3は、アブソリュート方式のレゾルバを含み、モータ部2のロータ22の回転を検出する。回転検出器3は、ロータ22の回転速度、回転方向、及び回転角度の少なくとも一つを検出する。なお、回転検出器3は、アブソリュート方式のレゾルバのみならず、インクリメンタル方式のレゾルバを含んでもよい。
【0059】
ハウジング4は、モータ部2及び回転検出器3を保持する。本実施形態において、ハウジング4は、ステータハウジング4A及びロータハウジング4Bを含む。ステータハウジング4Aは、第1ハウジング41及び第1支持部材11を含む。ロータハウジング4Bは、第2ハウジング42及び第2支持部材12を含む。第1ハウジング41は、環状の部材である。第1支持部材11は、環状の部材である。第2ハウジング42は、環状の部材である。第2支持部材12は、環状の部材である。本実施形態において、第1ハウジング41、第1支持部材11、第2ハウジング42、及び第2支持部材12は、それぞれ、円筒状の部材である。第1ハウジング41と第1支持部材11とが、例えばボルト等で接続されてステータハウジング4Aを構成する。第2ハウジング42と第2支持部材12とが、例えばボルト等で接続されてロータハウジング4Bを構成する。ステータハウジング4Aの中心軸と、ロータハウジング4Bの中心軸と、回転軸AXとは、一致する。
【0060】
ステータ21は、ステータハウジング4Aを構成する第1ハウジング41と接続される。ロータ22は、上述したように、ロータハウジング4Bを構成する第2支持部材12に複数個の永久磁石13が組み付けられて構成される。
【0061】
ステータハウジング4Aとロータハウジング4Bとの間に軸受5が配置される。軸受5は、静止輪5Aと、回転輪5Bと、静止輪5Aと回転輪5Bとの間に配置される転動体5Cとを有する。静止輪5Aは、第1ハウジング41と第1支持部材11とで回転軸AXと平行な方向(以下、軸方向ともいう)に挟持され、ステータハウジング4Aに接続される。回転輪5Bは、第2ハウジング42と第2支持部材12とで軸方向に挟持され、ロータハウジング4Bに接続される。軸受5により、ロータハウジング4Bは、ステータハウジング4Aに対して、回転軸AXを中心に回転可能に支持される。なお、本実施形態では、軸受5は、転動体5Cとして円筒形のクロスローラを用いたクロスローラ軸受である。クロスローラ軸受は、クロスローラと静止輪5A及び回転輪5Bとが線接触するため、大きな荷重に耐え得るという利点がある。また、隣り合うクロスローラで回転軸が互いに90°傾斜しているため、いずれの方向に対する荷重にも強く、高い剛性を保つことができる。
【0062】
図1に示すダイレクトドライブモータ1では、モータ部2、軸受5、及び回転検出器3は、回転軸AXに対する放射方向(以下、径方向ともいう)に並び配置される。具体的には、回転軸AXに近い方から、回転検出器3、軸受5、モータ部2、の順に並び配置される。この場合、回転検出器3は、第2ハウジング42と第1支持部材11との間に配置され、軸受5は、第1支持部材11と第2支持部材12との間に配置され、モータ部2は、ステータ21の径方向外側に位置するステータコア25の外周コア252が第1ハウジング41に接続され、ロータ22を構成する永久磁石13が第2支持部材12に接続される。このような構成とすることで、モータ部2、軸受5、及び回転検出器3を径方向に並べて配置することができ、ダイレクトドライブモータ1の軸方向の寸法、つまり、軸方向の高さの増大が抑制される。
【0063】
また、図1に示すダイレクトドライブモータ1は、ステータ21の軸方向一端部(上端部)及び回転検出器3の軸方向他端部(下端部)からの異物の侵入を防ぐために、第1保護用カバー部材6と第2保護用カバー部材8とを設けている。
【0064】
上記したように構成されたダイレクトドライブモータ1は、ステータ21に対してロータ22が回転することにより、ステータハウジング4Aに対してロータハウジング4Bが回転軸AXを中心に回転する。
【0065】
ロータハウジング4Bにワーク(不図示)が接続される。モータ部2の作動によりロータハウジング4Bが回転すると、ロータハウジング4Bとともにワークが回転する。ロータハウジング4Bは、モータ部2の作動により回転軸AXを中心に回転する出力軸として機能する。
【0066】
ところで、上記したダイレクトドライブモータ1は、上述したように、搬送装置、検査装置、工作機械、及び半導体製造装置等にも用いられることを想定したものであり、高い外部荷重を受けることが考えられる。このため、ハウジング4、第1保護用カバー部材6、第2保護用カバー部材8を金属製の構造部材としている。従って、ステータ21の軸方向両端部には、ハウジング4(第1ハウジング41)と巻線14との間、及び、第1保護用カバー部材6と巻線14との間の絶縁性能を確保するために一定以上の空間距離・沿面距離を保つ必要があり、ステータ21の軸方向両端部に空間C1,C2を設けている。このため、巻線14が巻回されるティース23の軸方向幅Dが制限され、延いては、ダイレクトドライブモータ1の出力性能が制限されることとなる。
【0067】
つぎに、本実施形態に係るダイレクトドライブモータについて説明する。図6は、本実施形態に係るダイレクトドライブモータ1aの全体構成の一例を概略的に示す断面図である。なお、図1に示す構成と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、ステータ21の構成は、図1に示したダイレクトドライブモータ1と同一であるので、本実施形態のステータ21についても、図2から図5を用いて説明する。
【0068】
本実施形態に係るダイレクトドライブモータ1aは、金属製の第1保護用カバー部材6に代えて、電気的絶縁性を有する、例えば樹脂製の第1保護用カバー部材6aを具備している。第1保護用カバー部材6aは、環状の部材である。第1保護用カバー部材6aは、径方向内側端部がボビン28の径方向内側端部に嵌め込まれ、径方向外側端部がステータコア25と共に第1ハウジング41に例えばボルト等で接続される。これにより、実質的にステータ21の軸方向上端部に空間(図1に示すダイレクトドライブモータ1における空間C1)を設ける必要がなくなり、図1に示すダイレクトドライブモータ1よりも、ティース23の軸方向幅D’を大きくすることができる。
【0069】
また、ステータ21の軸方向下端部には、電気的絶縁性を有する、例えば樹脂製の絶縁用カバー部材7を具備している。絶縁用カバー部材7は、環状の部材である。絶縁用カバー部材7は、径方向両端部がボビン28の両端に嵌め込まれる。これにより、実質的にステータ21の軸方向下端部に空間(図1に示すダイレクトドライブモータ1における空間C2)を設ける必要がなくなり、図1に示すダイレクトドライブモータ1よりも、ティース23の軸方向幅D’をさらに大きくすることができる。
【0070】
なお、図6に示す例では、絶縁用カバー部材7にリード線10を引き出すためのリード線引出口7aを設けている。
【0071】
図6に示す例では、第1保護用カバー部材6a及び絶縁用カバー部材7を具備したことにより、図1に示す例(ティース23の軸方向幅D)と比較して、ティース23の軸方向幅D’を40%程度大きくできた例を示している。この図6に示すように、本実施形態では、ティース23の軸方向最小幅(ここでは、軸方向幅D’)は、軸受5の軸方向最大幅よりも大きい。
【0072】
これにより、図6に示す本実施形態に係るダイレクトドライブモータ1aでは、図1に示すダイレクトドライブモータ1に対し、約40%のトルクアップを図ることができる。
【0073】
また、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さに対するティース23の軸方向最小幅部を、例えば25%以上50%以下の範囲で規定するようにしてもよい。このようにすれば、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さに応じて出力性能を規定することができる。
【0074】
さらに、巻線14と第1保護用カバー部材6aあるいは絶縁用カバー部材7との間に、放熱グリスを充填することで、コイル26が発する熱の放熱性を向上することができ、ダイレクトドライブモータ1aの定格トルクを大きくすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、図4に示すように、円環状のヨーク24と、そのヨーク24から径方向外側に突出したティース23とが一体的に形成された内周コア251を具備した、所謂一体型の構造を有している。ティースの径方向内側に円環状のヨークを持たない構成では、コイルが所定位置から回転軸AX側に逸脱する可能性があるが、本実施形態において説明した、所謂一体型の構造を有するステータコア25を用いた場合、回転軸AXに向かう方向にコイル26が逸脱することを防ぐことができる。なお、上述したように、外周コア252にティース23が設けられていてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、ティース23の軸方向最小幅(ここでは、軸方向幅D’)を、軸受5の軸方向最大幅よりも大きくしており、さらに、軸受5の軸方向最大幅部の軸方向に占める位置を、ティース23の軸方向最小幅部(ここでは、ティース23の軸方向幅D’は一定)が軸方向に占める位置の範囲内に収めている。このため、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さを抑制することができる。
【0077】
さらに、図6に示す例では、軸受5を軸方向に1段設けた例を示したが、軸受5を軸方向に複数段重ねて構成した軸受部であってもよい。このようにすることで、各段の軸受5にかかる荷重を小さくすることができ、軸受5の長寿命化、延いては、ダイレクトドライブモータ1aの長寿命化を図ることができる。
【0078】
つぎに、本実施形態に係るダイレクトドライブモータ1の製造方法について、図6を参照して説明する。ここでは、本実施形態に係る第1保護用カバー部材6a、絶縁用カバー部材7、及びステータ21を第1ハウジング41に組み付ける手順について説明する。なお、ステータ21は予め組み立てられているものとする。
【0079】
まず、第1ハウジング41上に絶縁用カバー部材7を配置する。第1ハウジング41と絶縁用カバー部材7との周方向位置は、第1ハウジング41のコネクタ30の位置と絶縁用カバー部材7に設けられたリード線引出口7aの位置とで決まる。
【0080】
次に、第1ハウジング41上で位置決めした絶縁用カバー部材7上にステータ21を配置し、絶縁用カバー部材7とステータ21とを嵌合させる。具体的には、コイル26から延びるリード線10を絶縁用カバー部材7に設けられたリード線引出口7aから引き出し、さらに、コネクタ30からリード線10を引き出して、巻線14が巻回されたボビン28の径方向両端部に絶縁用カバー部材7の径方向両端部を軸方向に合わせて嵌合させる。この状態で、第1ハウジング41とステータ21とを例えばボルト等で固定する。
【0081】
次に、第1ハウジング41に固定されたステータ21上に第1保護用カバー部材6aを配置し、第1保護用カバー部材6aとステータ21とを嵌合させる。具体的には、巻線14が巻回されたボビン28の径方向内側端部に第1保護用カバー部材6aの径方向内側端部を軸方向に合わせて嵌合させる。この状態で、第1保護用カバー部材6aの径方向外側端部をステータコア25と共に第1ハウジング41に例えばボルト等で固定する。
【0082】
上述した手順で第1保護用カバー部材6a、絶縁用カバー部材7、及びステータ21を第1ハウジング41に組み付けるようにすれば、図1に示すダイレクトドライブモータ1の組み立て手順に大きな変更を加えることなく、作業性良く実施することができる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、ステータ21の径方向一端部を保持し、そのステータ21の軸方向端部の一方面に対向しつつ、ステータ21の径方向他端部側に延びて形成された金属製のハウジング4とステータ21の軸方向端部の一方面との間に、電気的絶縁性を有する絶縁用カバー部材7を設けることで、実質的にハウジング4とステータ21との間に空間を設ける必要がなくなり、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さに対して、ティース23の軸方向幅D’を大きくすることができる。したがって、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さを大きくすることなく、絶縁性能及び出力性能を含むダイレクトドライブモータ1aの性能の向上を図ることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、ティース23の軸方向最小幅を軸受5の軸方向最大幅よりも大きくすることで、ダイレクトドライブモータ1aの出力トルクを増加させることができ、ダイレクトドライブモータ1aの出力性能の向上を図ることが可能となる。
【0085】
また、本実施形態によれば、軸受5の軸方向最大幅部が軸方向に占める位置を、ティース23の軸方向最小幅部(図6に示す例では、ティース23の軸方向幅D’は一定)が軸方向に占める位置の範囲内とすることにより、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さを抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さに対するティース23の軸方向最小幅部を25%以上50%以下の範囲で規定することにより、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さに応じて出力性能を規定することができる。
【0087】
また、本実施形態によれば、ステータ21の内側にロータ22を有し、ハウジング4は、ステータ21をステータコア25の径方向外縁部で保持し、軸受5を静止輪5Aの径方向内縁部で保持すると共に、回転検出器3が径方向内縁部に設けられた円環状のステータハウジング4Aと、ロータ22が径方向外縁部に形成され、軸受5を回転輪5Bの径方向外縁部で保持する円環状のロータハウジング4Bと、を含む。
【0088】
これにより、回転軸AXから径方向に向けて、回転検出器3、軸受5、モータ部2を並べて配置することができ、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さを低減することができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、絶縁用カバー部材7に加え、ステータ21の軸方向上端部に電気的絶縁性を有する第1保護用カバー部材6aをさらに設けることで、ハウジング4内部への異物の侵入を防ぐと共に、金属製の第1保護用カバー部材6を用いる場合と比べて、ティース23の軸方向幅D’を大きくすることができ、ダイレクトドライブモータ1aの軸方向の高さを低減しつつ、性能の向上を図ることができる。
【0090】
図1に示すダイレクトドライブモータ1は、高い外部荷重を受けることが想定されるため、ハウジング4、第1保護用カバー部材6、第2保護用カバー部材8を金属製の構造部材としている。従って、ステータ21の軸方向両端部には、ハウジング4(第1ハウジング41)と巻線14との間、及び、第1保護用カバー部材6と巻線14との間の絶縁性能を確保するために一定以上の空間距離・沿面距離を保つ必要があり、ステータ21の軸方向両端部に空間C1,C2を設けている。このため、ティース23の軸方向幅Dが制限され、延いては、ダイレクトドライブモータ1の出力性能が制限されることとなる。
【0091】
本実施形態に係るダイレクトドライブモータ1aは、図1に示すダイレクトドライブモータ1における金属製の第1保護用カバー部材6に代えて、電気的絶縁性を有する第1保護用カバー部材6aを具備している。これにより、実質的にステータ21の軸方向上端部に空間(図1に示す空間C1)を設ける必要がなくなり、図1に示すダイレクトドライブモータ1よりも、ティース23の軸方向幅D’を大きくすることができる。
【0092】
また、ステータ21の軸方向下端部には、電気的絶縁性を有する絶縁用カバー部材7を具備している。これにより、実質的にステータ21の軸方向下端部に空間(図1に示す空間C2)を設ける必要がなくなり、図1に示すダイレクトドライブモータ1よりも、ティース23の軸方向幅D’をさらに大きくすることができる。
【0093】
これにより、本実施形態に係るダイレクトドライブモータ1aでは、軸方向の高さを大きくすることなく、図1に示すダイレクトドライブモータ1に対してトルクアップを図ることができ、軸方向の高さを低減しつつ、性能の向上を図ることができる。
【0094】
また、本実施形態によれば、第1保護用カバー部材6a及び絶縁用カバー部材7を含むカバーは、樹脂製のカバーである。これにより、巻線14の絶縁性能を確保することができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、第1保護用カバー部材6a及び絶縁用カバー部材7を含むカバーと巻線14との間に放熱グリスが充填されている。これにより、コイル26が発する熱の放熱性を向上することができ、ダイレクトドライブモータ1aの定格トルクを大きくすることができる。
【0096】
また、本実施形態によれば、複数のティース23は、それぞれ巻線14がボビン28に巻回されたコイル26を支持しており、第1保護用カバー部材6a及び絶縁用カバー部材7を含むカバーは、複数のティース23に設けられた各ボビン28の少なくとも径方向一方端に嵌合され保持されている。これにより、第1保護用カバー部材6a及び絶縁用カバー部材7を含むカバーを確実にステータ21に嵌合させることができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、軸受5は、転動体5Cとして円筒形のクロスローラを用いたクロスローラ軸受である。クロスローラ軸受は、クロスローラと静止輪5A及び回転輪5Bとが線接触するため、大きな荷重に耐え得るという利点がある。また、隣り合うクロスローラで回転軸が互いに90°傾斜しているため、いずれの方向に対する荷重にも強く、高い剛性を保つことができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、軸受5を軸方向に複数段重ねて構成した軸受部とすることで、各段の軸受5にかかる荷重を小さくすることができ、軸受5の長寿命化、延いては、ダイレクトドライブモータ1aの長寿命化を図ることができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、ステータコア25は、円環状のヨーク24及び外周コア252と、円環状のヨーク24あるいは外周コア252から径方向に突出した複数のティース23とが一体的に形成されて構成されている。
【0100】
円環状のヨーク24及び外周コア252を持たない構成では、コイル26が所定位置から逸脱する可能性があるが、円環状のヨーク24あるいは外周コア252から径方向に突出した複数のティース23とが一体的に形成された、所謂一体型の構造を有するステータコア25を用いた場合、コイル26が所定位置から逸脱することを防ぐことができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、静止輪5A及び回転輪5Bを有する軸受5と、円環状のステータコア25に設けられた複数のティース23に巻線14が巻回されたステータ21と、ステータ21の内側に配置され、軸受5を介してステータ21に対し回転可能に設けられた円環状のロータ22と、ステータ21をステータコア25の径方向外縁部で保持すると共に、軸受5を静止輪5Aの径方向内縁部で保持する円環状のステータハウジング4Aと、ロータ22が径方向外縁部に形成され、軸受5を回転輪5Bの径方向外縁部で保持する円環状のロータハウジング4Bと、ステータハウジング4Aに面するステータ21の軸方向端部の一方面に設けられた電気的絶縁性を有する絶縁用カバー部材7と、ステータ21の軸方向端部の他方面に設けられた電気的絶縁性を有する第1保護用カバー部材6aと、を備えたインナーロータ型のダイレクトドライブモータ1aの製造方法であって、ステータハウジング4A上に絶縁用カバー部材7を配置する工程と、ステータハウジング4A上で位置決めした絶縁用カバー部材7上にステータ21を配置して、絶縁用カバー部材7とステータ21とを嵌合させる工程と、ステータハウジング4Aとステータ21とを固定する工程と、ステータハウジング4Aに固定されたステータ21上に第1保護用カバー部材6aを配置して、第1保護用カバー部材6aとステータ21とを嵌合させる工程と、第1保護用カバー部材6aの径方向外側端部をステータコア25と共にステータハウジング4Aに固定する工程と、を有する。これにより、図1に示すダイレクトドライブモータ1の組み立て手順に大きな変更を加えることなく、作業性良く実施することができる。
【0102】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0103】
図7は、上述の実施形態で説明したダイレクトドライブモータ1aを備える検査装置300の一例を示す図である。検査装置300は、検査対象の物体W1を搬送する搬送装置200と、物体W1を検査する検査部301とを備えている。搬送装置200は、ダイレクトドライブモータ1aと、ダイレクトドライブモータ1aの作動により物体W1を搬送する搬送部201とを備えている。ダイレクトドライブモータ1aは、検査装置300のベース部材302に接続される。
【0104】
搬送部201は、ダイレクトドライブモータ1aのロータ22と接続されたテーブルを含む。テーブル202は、検査対象の物体W1を支持する。テーブル202は、ダイレクトドライブモータ1aの作動により回転する。テーブル202が回転することにより、そのテーブル202に支持されている物体W1は移動する。
【0105】
検査部301は、ダイレクトドライブモータ1aの作動により移動する物体W1を検査する。本実施形態において、検査部301は、テーブル202に支持された物体W1の画像を取得するカメラを含む。カメラ302で撮影された物体W1の画像に基づいて、物体W1の検査が実施される。
【0106】
搬送装置200は、カメラ302の視野領域に物体W1を移動する。カメラ302は、搬送装置200により視野領域に配置された物体W1の画像を取得する。
【0107】
本実施形態によれば、搬送装置200は、物体W1をカメラ302の視野領域に高い位置決め精度で移動可能である。そのため、検査装置300の検査精度を向上させることができる。また、検査装置300の性能の向上を実現することができる。
【0108】
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0109】
図8は、上述の実施形態で説明したダイレクトドライブモータ1aを備える工作機械400の一例を示す図である。工作機械400は、加工対象の物体W2を搬送する搬送装置200と、物体W2を加工する加工部401とを備えている。搬送装置200は、ダイレクトドライブモータ1aと、ダイレクトドライブモータ1aの作動により物体W2を搬送する搬送部(テーブル)201とを備えている。ダイレクトドライブモータ1aは、工作機械400のベース部材402に接続される。
【0110】
テーブル202は、ダイレクトドライブモータ1aのロータ22と接続される。物体W2は、テーブル202に支持される。テーブル202は、ダイレクトドライブモータ1aの作動により回転する。テーブル202が回転することにより、そのテーブル202に支持されている物体W2は移動する。
【0111】
加工部401は、ダイレクトドライブモータ1aの作動により移動する物体W2を加工する。本実施形態において、加工部401は、テーブル202に支持された物体W2に部品Bを搭載するロボットアームを含む。
【0112】
搬送装置200は、ロボットアーム402の可動範囲に物体W2を移動する。ロボットアーム402は、搬送装置200により可動範囲に配置された物体W2に部品Bを搭載する。
【0113】
本実施形態によれば、搬送装置200は、物体W2をロボットアーム402の可動範囲に高い位置決め精度で移動可能である。そのため、工作機械400の加工精度を向上させることができる。また、工作機械400の性能の向上を実現することができる。
【0114】
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0115】
図9は、上述の実施形態で説明したダイレクトドライブモータ1aを備える半導体製造装置500の一例を示す図である。半導体製造装置500は、処理対象の物体W3を搬送する搬送装置200と、物体W3を処理する処理部501とを備えている。搬送装置200は、ダイレクトドライブモータ1aと、物体W3を搬送する搬送部(テーブル)201とを備えている。ダイレクトドライブモータ1aは、半導体製造装置500のベース部材502に接続される。
【0116】
半導体製造装置500は、半導体デバイスを製造可能な半導体デバイス製造装置である。半導体製造装置500は、半導体デバイスの製造工程の少なくとも一部において使用される。物体W3は、半導体デバイスを製造するための物体である。
【0117】
本実施形態において、物体W3は、半導体デバイスを製造するための基板である。物体W3から半導体デバイスが製造される。物体W3は、半導体ウエハを含んでもよいし、ガラス板を含んでもよい。物体W3にデバイスパターン(配線パターン)が形成されることによって、半導体デバイスが製造される。
【0118】
半導体製造装置500は、搬送装置200により処理位置に配置された物体W3に対して、処理部501を用いて、デバイスパターンを形成するための処理を行う。
【0119】
例えば、半導体製造装置500が、投影光学系を介してデバイスパターンの像を物体W3に投影する露光装置を含む場合、処理部501は、投影光学系を含み、処理位置は、投影光学系502から射出される露光光の照射位置を含む。
【0120】
本実施形態によれば、搬送装置200は、物体W3を処理部501の処理位置に高い位置決め精度で移動可能である。そのため、半導体製造装置500の処理精度を向上させることができる。また、半導体製造装置500の性能の向上を実現することができる。
【0121】
なお、上述の各実施形態においては、ダイレクトドライブモータ1aがインナーロータ型であることとした。ダイレクトドライブモータ1aは、アウターロータ型でもよい。
【符号の説明】
【0122】
1,1a ダイレクトドライブモータ
2 モータ部
3 回転検出器
4 ハウジング
5 軸受
5A 静止輪
5B 回転輪
5C 転動体
6 第1保護用カバー部材(金属製)
6a 第1保護用カバー部材(樹脂製)
7 絶縁用カバー部材(樹脂製)
7a リード線引出口
8 第2保護用カバー部材(金属製)
10 リード線
11 第1支持部材
12 第2支持部材
13 永久磁石
14 巻線
21 ステータ
22 ロータ
23 ティース
24 ヨーク
25 ステータコア
26 コイル
27 スロット
28 ボビン
30 コネクタ
41 第1ハウジング
42 第2ハウジング
200 搬送装置
201 搬送部
202 テーブル
251 内周コア
252 外周コア
300 検査装置
301 検査部
302 カメラ
400 工作機械
401 加工部
402 ロボットアーム
500 半導体製造装置
501 処理部
502 投影光学系
AX 回転軸
C1,C2 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9