(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記登坂状態検出部により前記登坂状態が検出されなかった場合に、前記電力変換装置から前記第2モータへ供給される電力を、前記始動電力演算部で演算した前記始動電力を確保するよう低減させる第2モータ電力低減部と、
前記第2モータ電力低減部により低減された電力を使用して前記スタータジェネレータにより前記エンジンを始動させる第2エンジン始動部と、
をさらに備える請求項1に記載の電動4輪駆動車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
本発明の電動4輪駆動車両の制御装置を具体化した第1の実施形態について
図1〜
図7を参照して説明する。
図1は、電動4輪駆動車両の概略構成を示す図である。第1の実施形態の電動4輪駆動車両10は、エンジン12と、第1モータ14と、自動変速機16と、バッテリ18と、前輪駆動用インバータ20と、後輪駆動用インバータ22と、スタータジェネレータ24と、充電容量検出装置26と、第2モータ28と、減速機30と、制御装置としての駆動力制御装置32と、第1モータ制御装置34と、第2モータ制御装置36と、加速度センサ38と、車速センサ40と、を有して構成されている。
【0012】
エンジン12は、炭化水素系の燃料により出力を発生させる通常の内燃機関であり、車両10の前部側に設けられ前輪Wfを駆動可能としている。ただし、炭化水素系の燃料による内燃機関に限定されるものではなく、出力軸を駆動させる駆動源であればどのようなものでもよい。エンジン12にはエンジンの出力軸の回転数を検出するエンジン回転数センサ13が設けられている。
【0013】
第1モータ14は、例えば、DCブラシレスモータであり、ロータ(図略)に永久磁石を埋設し、ステータ(図略)にステータコイルが巻回された交流で駆動する交流同期型モータジェネレータである。第1モータ14は、前輪Wfを駆動可能に設けられている。
エンジン12と第1モータ14とは、湿式多板クラッチであるクラッチ42を介して直列に接続されている。クラッチ42は、図略の油圧制御回路によって、エンジン12と第1モータ14との間の接続を接離してトルク伝達を断続している。このクラッチ42は、普段はエンジン12と第1モータ14との間を接続しているノーマルクローズタイプのクラッチである。クラッチ42が接続されると、エンジン12と第1モータ14との回転トルクが共に自動変速機16の入力軸(図略)に伝達され、クラッチ42が切断されると、第1モータ14の回転トルクのみが自動変速機16の入力軸に伝達される。
【0014】
自動変速機16は、例えば、前進6段後進1段の変速段を選択可能なドグクラッチ式変速機構(図略)と、ディファレンシャルギヤ機構(図略)とを有している。変速機構による変速段の切り替えとディファレンシャルギヤ機構により、エンジン12または第1モータ14からの回転トルクの回転数を減速し、減速された回転トルクを左右の前輪Wfの駆動軸17に伝達する。
また、エンジン12の回転トルクの一部は、例えば無端ベルト(図略)を介してスタータジェネレータ24に伝達される。スタータジェネレータ24は、エンジン12の駆動によりロータ(図略)が回転すると発電し、発電した電力をバッテリ18に供給してバッテリ18を充電する。また、バッテリ18からの電力によりロータを回転させエンジン12を始動可能とする。
【0015】
バッテリ18は、例えばニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池である。バッテリ18は、車両10の前輪Wfを駆動させる第1モータ14に電気的に接続され、車両10の後輪Wrを駆動させる第2モータ28に電気的に接続されている。
バッテリ18は、バッテリ用制御部44によって管理されている。バッテリ18には、充電容量検出装置26が設けられ、図略の電流センサ、電圧センサにより検出される充放電電流、端子間電圧に基づいて充電容量SOC(State Of Charge)の演算が充電容量検出装置26によって検出される。検出されたデータは、バッテリ用制御部44に送出される。また、バッテリ18は、図略の温度センサにより冷却管理が行われる。
【0016】
第2モータ28は、例えば、第1モータ14と同様に、DCブラシレスモータであり、ロータ(図略)に永久磁石を埋設し、ステータ(図略)にステータコイルが巻回された交流で駆動する交流同期型モータジェネレータである。第2モータ28は、減速機30に接続されている。この減速機30は、第2モータ28の回転トルクの回転数を減速するとともに左右の後輪Wrの駆動軸46に回転トルクを分配する図略のディファレンシャル機構を備える。
【0017】
バッテリ18には、前輪駆動用インバータ20と後輪駆動用インバータ22とが電気的に接続されている。
前輪駆動用インバータ20は、スイッチング素子(図略)を備えており、スイッチング素子のスイッチング動作によりバッテリ18からの直流電流を三相交流電流に変換して、第1モータ14のステータ(図略)のステータ巻線の各相に供給する。このように第1モータ14にバッテリ18からの電力を印加することで、前輪Wfを駆動させる第1モータ14の回転駆動を制御する。前輪駆動用インバータ20には、第1モータ制御装置34が電気的に接続されている。第1モータ制御装置34により前輪駆動用インバータ20のスイッチング動作が制御される。
【0018】
後輪駆動用インバータ22は、前輪駆動用インバータ20と同様な構成であり、第2モータ28にバッテリ18からの電力を印加することで、後輪Wrを駆動させる第2モータ28の回転駆動を制御する。後輪駆動用インバータ22と前輪駆動用インバータ20とにより電力変換装置が構成される。
第1モータ制御装置34と第2モータ制御装置36とは、駆動力制御装置32にCAN(Controller Area Network)により接続され、それぞれ管理・制御される。
【0019】
駆動力制御装置32には、車両のアクセルペダル(図略)の踏み込み量を表すアクセル開度の検出信号が送出され、車速センサ40からの車速を表す検出信号が送出される。また、駆動力制御装置32には、エンジントルクセンサ(図略)によりエンジントルクを表す検出信号が送出される。駆動力制御装置32では、例えば、アクセル開度から演算される要求トルクと第1および第2モータ14,28による合計モータトルクとを比較し、合計モータトルクが要求トルクよりも小さいときにエンジン12の始動を実行して、エンジントルクによる補填を行う。
【0020】
左右の前輪Wfには夫々車輪速より車速を検出する前輪車速センサ40fが設けられ、左右の後輪Wrにも同様に夫々車輪速より車速を検出する後輪車速センサ40rが設けられている。前輪車速センサ40fおよび後輪車速センサ40rにより検出された車速の検出信号は、CANを介して駆動力制御装置32に送出される。
電動4輪駆動車両10には、車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサ38が設けられている。この加速度センサ38は登坂状態検出部の一部を構成するものであり、加速度センサ38により検出された加速度の検出信号は、CANを介して駆動力制御装置32に送出される。
【0021】
駆動力制御装置32は、
図2に示すように、演算部47、記憶部49および制御部51を備えている。演算部47は、エンジン12の始動に必要な始動電力を演算する始動電力演算部48と、車両走行等における車両の走行状態や走行路面の検知を行う加速度センサ38からの検出信号により車両10が所定の傾斜角度以上の坂道を登坂する登板状態であるか否かを検出する登坂状態検出部50とを備えている。
記憶部49は、各センサから入力されたデータや演算部47で演算されたデータが記憶されている。例えば、エンジン始動に必要な電力は、時間経過によって変化するものであり、変化特性も含め始動電力演算部48で演算し、予め記憶部49に記憶される。
【0022】
制御部51は、第1エンジン始動部54と第2エンジン始動部58とバッテリ用制御部44を備えている。第1エンジン始動部54は、後述する第1モータ電力低減部52により低減された電力を使用してスタータジェネレータ24によりエンジン12を始動させる。第2エンジン始動部58は、後述する第2モータ電力低減部56により低減された電力を使用してスタータジェネレータ24によりエンジン12を始動させる。
バッテリ用制御部44は、バッテリ18の充電容量の検出・制御、バッテリ18の温度管理等を行う。
【0023】
制御部51は、下位の制御装置である第1モータ制御装置34および第2モータ制御装置36に電気信号を出力可能に接続されている。第1モータ制御装置34は、登坂状態検出部50により登坂状態が検出された場合に、前輪駆動用インバータ20から第1モータ14へ供給されている電力を、始動電力演算部48で演算した始動電力を確保するよう低減させる第1モータ電力低減部52を有している。
第2モータ制御装置36は、登坂状態検出部50により登坂状態が検出されなかった場合に、後輪駆動用インバータ22から第2モータ28へ供給されている電力を、始動電力演算部48で演算した始動電力を確保するよう低減させる第2モータ電力低減部56を有している。
【0024】
(エンジン始動手順)
次に、上記構成の電動4輪駆動車両の制御装置を使用して、エンジン始動を実施するプログラムの制御手順を
図3のフローチャートを用いて説明する。
まず、駆動力制御装置32は、ステップ100(以下、「ステップ」を「S」と略記する。
図3において同じ。)において、第1モータ14および第2モータ28が駆動された状態にあるか否かを判定する。すなわち、第1モータ14により前輪Wfが駆動され、第2モータ28で後輪Wrが駆動された状態にあるか否かを判定する。前提として、エンジン12は停止状態にある。
駆動力制御装置32は、第1モータ14および第2モータ28が駆動された状態と判定した場合、S101へ移行する。駆動力制御装置32は、第1モータ14および第2モータ28が駆動していないと判定した場合には、本プログラムを終了する。
【0025】
第1モータ14および第2モータ28が駆動された状態にあると判定した場合、駆動力制御装置32は、エンジン12の始動が必要か否かを判定する(S101)。エンジン12の始動が必要な場合として、例えば、(1)バッテリ18の充電容量が不足し、スタータジェネレータ24を駆動してバッテリ18に充電するためにエンジン12を始動する場合である。
他のエンジン12の始動が必要な場合として、(2)ドライバに要求されるトルク(アクセル踏み込み)が、第1モータ14および第2モータ28の出力するトルクの限界を超え、第1モータ14および第2モータ28の駆動トルクに加えてエンジン12による駆動トルクが必要になった場合がある。
また、(3)車速が所定値以上で、必要な駆動トルクが第1モータ14および第2モータ28による駆動トルクの出力限界を超え、モータトルクによる走行からエンジントルクでの走行に切替える場合がある。
駆動力制御装置32は、エンジン始動が必要でないと判定した場合には、エンジン始動を行う制御を終了する。
【0026】
駆動力制御装置32は、エンジン12の始動が必要であると判定した場合は、S102へ移行し、エンジン始動が現在のバッテリ18の充電容量(SOC)で可能であるか否かを判定する(S102)。エンジン始動が現在のバッテリ18のSOCで可能であるか否かは、例えば、以下のように判定される。まず、バッテリ18の充電容量検出装置26により検出された現時点のSOCの値より、駆動力制御装置32の演算部によって、バッテリ18が出力可能な電力を演算する。エンジン始動に必要な電力は、予め駆動力制御装置32の記憶部49に記憶されたデータを読み出して使用する。
【0027】
駆動力制御装置32は、ドライバの要求アクセル踏込み量に対応する要求電力とエンジン始動に必要な電力とを合計する。合計された要求電力およびエンジン始動に必要な電力とバッテリ18が出力可能な電力とを比較する。合計された要求電力およびエンジン始動に必要な電力が、バッテリ18が出力可能な電力よりも大きい場合には、エンジン始動が現在のバッテリ18のSOCでは不可能であると判定し、S103へ移行する。
【0028】
駆動力制御装置32は、要求アクセル踏込み量に対応する要求電力およびエンジン始動に必要な電力の合計が、バッテリ18が出力可能な電力よりも小さい場合には、エンジン始動が現在のバッテリのSOCで可能であると判定し、S106へ移行してエンジン12を始動する。
【0029】
S102において、エンジン始動が現在のバッテリ18のSOCでは不可能であると判定した場合、駆動力制御装置32は、エンジン始動に必要な電力を確保するよう第1モータ14および第2モータ28の駆動力の低減量を演算する(S103)。
すなわち、要求アクセル踏込み量に対応する要求電力およびエンジン始動に必要な電力の合計から、現在の充電容量でバッテリ18が出力可能な電力を差し引いた差分を駆動力(電力)の低減量とする。
【0030】
「始動電力を確保するよう低減」とは、概念的にはエンジン12の始動に必要な電力の少なくとも一部を、第1モータ14の消費電力分または第2モータ28の消費電力分から低減することを意味する。(この場合、エンジン12の始動に必要な電力の残りは、バッテリ18に残存する供給可能な電力から供給される。)
【0031】
S103において、第1モータ14および第2モータ28の駆動力の低減量が演算されると、S104へ移行し、駆動力制御装置32は、登坂状態検出部50において車両10が所定の傾斜角度以上の坂道を登坂状態にあるか否かを判定する(S104)。所定の傾斜角度として、例えば10度を設定する。車両10が走行中の傾斜角度は、以下のように求められる。車両10の進行方向の加速度A1は、車速センサ40f,40rで検出される車速を微分することにより求められる。また、車両10の走行方向に影響する重力は、
図7に示すように、傾斜角度Θの坂道を登坂状態であれば、GsinΘだけ減速させる方向に作用する。そのため、加速度センサ38で求められる加速度A2は、車速センサ40f,40rの車速に基づいて演算された加速度A1よりGsinΘの重力の影響分小さい値で検出される。そこで、駆動力制御装置32は、車速センサ40f,40rで求められる加速度A1より加速度センサ38で求められる加速度A2を減じてGsinΘを演算し(GsinΘ=A1−A2)、傾斜角度Θを求める。
【0032】
駆動力制御装置32は、傾斜角度が10度以上の坂道を登坂状態にあると判定した場合、S105へ移行し、
図5および
図6に示すように、前輪Wfを駆動させる第1モータ14に前輪駆動用インバータ20が供給する低減された電力を演算する(S105)。
低減されて供給される第1モータ14の電力は次のように演算する。
要求アクセル踏込み量に対応する要求電力を、前輪Wfを駆動させる第1モータ14および後輪Wrを駆動させる第2モータ28の駆動配分(例えば、第1モータ:第2モータ=7:3)に応じて分配させることで、第1モータ14の駆動力(電力)を演算する。S103で求めた電力の低減量を第1モータ14の電力から差し引いた差分を第1モータ14に供給する電力とする(
図6(C))。
この場合において、駆動力制御装置32は、低減した第1モータ14の電力を前輪駆動用インバータ20により第1モータ14に供給する。
【0033】
次に、S106へ移行し、駆動力制御装置32は、第1モータ14に前輪駆動用インバータ20が供給する電力が低減されることで、バッテリ18から供給が可能となったエンジン始動に必要な電力を使用してエンジン12を始動させる(S106)。エンジン12の始動が実行されたことをエンジン回転数センサ13で検出し、検出された信号は駆動力制御装置32に送出される。
【0034】
電動4輪駆動車両10が登坂状態にあるとき、車両10が後傾するので、後輪Wr側へ車両10の重心が移動し前輪Wfに負荷される荷重が減少する。そのため、前輪Wfが路面をグリップして車両10を実際に走行させる駆動力が減少する。
これに対して後輪Wrには、登坂状態にあるとき、負荷される荷重が増加するため、前輪Wfとは逆に、後輪Wrが路面をグリップして車両10を実際に走行させる駆動力が増加する。
これにより後輪Wrの駆動力の割合が、前輪Wfの駆動力に対して大きくなる。
【0035】
また、登坂状態では、このように駆動力が小さくなった前輪Wfを駆動させるために供給される電力を、エンジン始動のために低減させるので、電力が低減された際の駆動力の減少によりドライバに与えるショックを低減することができる。
さらに、登坂状態では後傾することから、ドライバを含めた乗員の着座位置も後輪Wr側に偏位するが、駆動力が小さくなった前輪Wf側で駆動力(電力)を低減させてエンジン始動を行うので、乗員が感じる違和感を低減させる。
【0036】
なお、平坦な道路において駆動力の配分を、例えば、第1モータ:第2モータ=7:3とするところを、所定傾斜角度以上の坂道の登坂状態において、第1モータ:第2モータ=6:4に変更することで、一層顕著に後輪Wrに駆動力がかかる。このように、駆動力の配分を後輪Wrが大きくなるよう変更し、前輪Wf側の第1モータ14に供給される電力を低減する制御をすると、ドライバに与える違和感をさらに減少させることができる。
【0037】
S104において、駆動力制御装置32が、傾斜角度が10度以上の坂道を登坂状態にないと判定した場合、S107へ移行し、
図4に示すように、後輪Wrを駆動させる第2モータ28に後輪駆動用インバータ22が供給する低減された電力を演算する(S107)。
この場合においても、要求アクセル踏込み量に対応する要求電力を、後輪Wrを駆動させる第2モータ28の駆動配分に応じて分配させることで、第2モータ28の駆動力(電力)を演算し、S103で求めた駆動力(電力)の低減量を第2モータ28の駆動力(電力)から差し引いた差分を低減した第2モータ28に供給する電力とする(
図6(B))。
この場合において、駆動力制御装置32は、低減した第2モータの電力を後輪駆動用インバータ22により第2モータ28に供給する。
【0038】
後輪Wrを駆動させる第2モータ28に供給する電力が低減された場合、S106へ移行し、第2モータ28に後輪駆動用インバータ22が供給する電力が低減されることで、バッテリ18から供給が可能となったエンジン始動に必要な電力を使用してエンジン12を始動させる(S106)。
エンジン12の始動によって、必要な駆動トルクをエンジントルクで確保し、エンジン12でスタータジェネレータ24を回転させることで、バッテリ18を充電する。
また、エンジン始動によって、第1モータ14および第2モータ28の駆動トルクにエンジン12による駆動トルクを加えてドライバが要求するトルク(アクセル踏み込み)を充足する。
また、エンジン始動によって、モータトルクによる走行からエンジントルクでの走行に切替え、所定以上の車速に対応する。
これによりエンジン始動を行う制御を終了する。
【0039】
<第2実施形態>
次に、本発明の動4輪駆動車両の制御装置を具体化した第2の実施形態について
図6を参照して説明する。本実施形態において、バッテリ18と前輪駆動用インバータ20および後輪駆動用インバータ22との間に昇降圧回路62を設けた点において第1実施形態と相違する。その他の構成は第1実施形態と同様であるので同じ符号を付与して説明を省略する。
【0040】
これによると、バッテリ18と前輪駆動用インバータ20および後輪駆動用インバータ22との間に、昇降圧回路62が設けられている。昇圧回路として働く昇降圧回路62によって、バッテリ18よりも高い電圧で第1モータ14および第2モータ28を駆動させることができ、第1モータ14および第2モータ28の発熱による損失を抑制することができる。また、第1モータ14および第2モータ28で回生する場合に、降圧回路として働く昇降圧回路62によって、前輪駆動用インバータ20および後輪駆動用インバータ22からの電圧を適正な電圧に下げてバッテリ18に充電する。これによって、バッテリ18の耐電圧を低く設計することができる。
その他の作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0041】
上記の記載で明らかなように、第1実施形態および第2実施形態に係る電動4輪駆動車両の制御装置は、前輪Wfおよび後輪Wrのいずれか一方の車輪を駆動可能とするエンジン12と、前輪Wfの駆動を可能とする第1モータ14と、後輪Wrの駆動を可能とする第2モータ28と、エンジン12の始動およびエンジン12の駆動力による発電を可能とするスタータジェネレータ24と、第1モータ14、第2モータ28およびスタータジェネレータ24に電力を供給可能とするバッテリ18と、第1モータ14および第2モータ28に、バッテリ18からの電力をそれぞれ変換して供給可能とする前輪駆動用インバータ20および後輪駆動用インバータ22と、バッテリ18の充電容量を検出する充電容量検出装置26と、を備えた電動4輪駆動車両10における駆動力制御装置32であって、エンジン12の始動に必要な始動電力を演算する始動電力演算部48と、電動4輪駆動車両10が所定の傾斜角度以上の坂道を登板する登坂状態にあるか否かを検出する登坂状態検出部50と、第1モータ14および第2モータ28が駆動している駆動状態で、エンジン12の始動が要求され、登坂状態検出部50により登坂状態が検出された場合に、前輪駆動用インバータ20から第1モータ14へ供給されている電力を、始動電力演算部48で演算した始動電力を確保するよう低減させる第1モータ電力低減部52と、第1モータ電力低減部52により低減された電力を使用してスタータジェネレータ24によりエンジン12を始動させる第1エンジン始動部54と、を備える。
【0042】
これによると、電動4輪駆動車両10が所定の傾斜角度(10度)以上の坂道を登板する登坂状態にあるか否かを登坂状態検出部50により検出する。
そして、前輪Wfを駆動させる第1モータ14と、後輪Wrを駆動させる第2モータ28とが駆動している状態で、エンジン12の始動が要求され、登坂状態検出部50が、所定の傾斜角度(10度)以上の坂道を登板する登坂状態にあることを検出した場合、第1モータ電力低減部52は、前輪駆動用インバータ20から第1モータ14へ供給されている電力を、充電容量検出装置26により検出されたバッテリ18から供給可能な電力に基づいて、始動電力演算部48で演算した始動電力を確保するよう低減させる。第1エンジン始動部54は、低減された始動出力分の電力を使用してエンジン12を始動させる。
このように、登坂状態では、前輪Wfに負荷される荷重が減少し、路面をグリップして車両10を実際に走行させる駆動力が減少した前輪Wfを駆動させるために供給される電力を、エンジン始動のために低減させるので、電力が低減された際の駆動力の減少によりドライバに与えるショックを低減することができる。登板状態で駆動力が増加する後輪Wrの駆動力を減少させないので、摩擦係数の低い坂道での坂道登坂においても、後輪Wrで路面を確実にグリップし、スリップによる運転のもたつきや車両10のずり下がりを防止することができる。
【0043】
上述のように、第1実施形態および第2実施形態に係る電動4輪駆動車両10の制御装置は、登坂状態検出部50により登坂状態が検出されなかった場合に、後輪駆動用インバータ22から第2モータ28へ供給される電力を、始動電力演算部48で演算した始動電力を確保するよう低減させる第2モータ電力低減部56と、第2モータ電力低減部56により低減された電力を使用してスタータジェネレータ24によりエンジン12を始動させる第2エンジン始動部58と、をさらに備える。
これによると、登坂状態検出部50が所定傾斜角度(10度)以上の登坂状態にないことを検出した場合、第2モータ電力低減部56により後輪駆動用インバータ22から第2モータ28へ供給されている電力を、始動電力演算部48で演算した始動電力を確保するよう低減させる。第2エンジン始動部58は、低減された始動出力分の電力を使用してエンジン12を始動させる。
電動4輪駆動車両10が平地走行状態または降坂状態にあるとき、後輪Wrが路面をグリップして電動4輪駆動車両10を実際に走行させる後輪Wrの駆動力が、電動4輪駆動車両10が登坂状態にあるときに比べ少ない。このように駆動力が少ない後輪Wrを駆動させる第2モータ28の電力を、エンジン12の始動のために低減させるので、電力が低減された際の駆動力の減少により運転者に与えるショックを低減することができる。
【0044】
上述のように、本実施形態に係る電動4輪駆動車両10の制御装置は、エンジン12は、電動4輪駆動車両10の前部側に設けられ前輪Wfを駆動可能とする。
これによると、前輪Wfはエンジン12と第1モータ14とにより駆動が可能であり、エンジン12の駆動力を後輪Wrに伝達する装置が不要であることから、低コストの電動4輪駆動車両10とすることができる。
【0045】
上述のように本実施形態に係る電動4輪駆動車両10の制御装置において、エンジン12の始動が要求された場合は、バッテリ18の充電容量が不足し、スタータジェネレータ24を駆動してバッテリ18に充電するためにエンジン12を始動する場合である。
バッテリ18の充電容量が不足した場合、エンジン12によりスタータジェネレータ24を駆動させてバッテリ18を充電する必要がある。このように、バッテリ18の充電容量が低下し、第1モータ14の駆動、第2モータ28の駆動、およびエンジン12の始動の全てに必要な電力が、バッテリ18の充電容量不足により同時に出力できなくなった場合において、第1モータ14または第2モータ28に出力しているいずれかのバッテリ18の電力を低減させ、低減させた電力を使って確実にエンジン12の始動を行うことができる。
【0046】
なお、電動4輪駆動車両10の登坂状態を、加速度センサ38および車速センサ40に基づいて検出するものとしたが、これに限定されず、例えば、車両の上下傾動方向の角速度を検出する公知の角速度センサ(ジャイロ)を使用するものでもよい。この場合、車両のクロック機構のクロック信号を利用して、検出角速度を時間で積分し、平地で設定された初期角度との差である車両の上下方向の変化角度ΔΘを求める。
また、本実施形態では、登坂状態の所定の傾斜角度として10度としたが、これに限定されず、例えば、8度でも良い。坂道の路面と車両の車輪との摩擦係数ミューに応じ、前輪の駆動力の低減が、ドライバにショックを生じない所定傾斜角度を任意に設定できる。
【0047】
また、エンジン12と第1モータ14との間にクラッチ42を設ける構成としたが、これに限定されず、例えば、遊星歯車機構による動力分配機構を設けてもよい。動力分配機構を設けた場合、例えば、エンジンの出力軸をキャリアに直結し、第1モータの回転軸(ロータ)をリングギヤに直結し、スタータジェネレータの回転軸をサンギヤに直結する構成とする。
また、インバータについて、第1モータ14に電力を供給する前輪駆動用インバータ20と、第2モータ28に電力を供給する後輪駆動用インバータ22と、の二つのインバータを使用したが、これに限定されず、例えば、第1モータ14および第2モータ28に電力を供給する1つのインバータでもよい。
【0048】
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。