特許第6365075号(P6365075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365075
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】レーザ走査装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   G02B26/10 104Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-156251(P2014-156251)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33586(P2016-33586A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年7月7日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『活力ある生涯のためのLast 5X イノベーション』委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】堀邊 隆介
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】村山 学
(72)【発明者】
【氏名】増田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 智久
(72)【発明者】
【氏名】虫本 篤史
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−053943(JP,A)
【文献】 特開平08−313838(JP,A)
【文献】 特開平04−292068(JP,A)
【文献】 特開2001−228434(JP,A)
【文献】 特開2009−271495(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0024701(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0127404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G01S 7/48 − 7/51
G01S 17/00 − 17/95
G09G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光を走査する走査ミラーと、
前記走査ミラーに駆動信号を印加することで、前記走査ミラーを駆動する駆動部と、
前記走査ミラーにより走査されたレーザ光が走査する領域に配置され、前記レーザ光を検出した際に検知信号を生成するフォトセンサと、
前記走査ミラーの前記走査の繰り返し周波数に位相同期し、かつ、前記繰り返し周波数より周波数が高いクロック信号を生成するクロック生成部と、
前記クロック信号を用いて、前記検知信号の生成間隔を計数する計数部と、
前記計数部で計数された計数値が予め定められた目標値に近づくように前記駆動部を制御する制御部とを備える
レーザ走査装置。
【請求項2】
前記レーザ走査装置は、さらに、
前記検知信号が生成されるごとに論理値が反転する検出パルス信号を生成する信号生成部を備え、
前記クロック生成部は、前記検出パルス信号に位相同期し、かつ、前記検出パルス信号より高周波な前記クロック信号を生成し、
前記計数部は、前記クロック信号を用いて、前記検出パルス信号のパルス幅を計数することで前記生成間隔を計数する
請求項1記載のレーザ走査装置。
【請求項3】
前記信号生成部は、前記走査の1周期の一部の期間である有効期間のみにおいて前記検知信号が生成されるごとに前記論理値が反転する、前記検出パルス信号を生成する
請求項2記載のレーザ走査装置。
【請求項4】
前記クロック信号は、前記検出パルス信号のn(nは2以上の整数)倍の周波数を有する
請求項2記載のレーザ走査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記計数値が前記目標値に近づくように前記駆動信号の振幅を制御する
請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査ミラーを用いるレーザ走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)走査ミラーなどの共振走査ミラーにレーザ光を照射して光走査するレーザ走査装置が知られている。このようなレーザ走査装置は、MEMS走査ミラーの光走査の振幅である走査振幅を検出し、検出結果を用いて当該走査振幅が所望の値になるように制御する。この走査振幅を検出する方法として、レーザ光の走査領域の端部近傍に配置されたフォトセンサから得られるパルス信号の間隔を計測する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−110030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共振走査ミラーは、走査振幅を稼ぐために共振を利用する。この共振走査ミラーは、高いQ値を持つ。また、共振走査ミラーは、駆動信号の周波数が、MEMS構造体が有する共振周波数(固有振動数)の近傍になると急激に走査振幅が増大し、駆動信号の周波数が、共振周波数からずれると急激に走査振幅が減少するという特徴を持つ。これにより、共振走査ミラーでは、厳密な駆動信号の周波数調整が必要になる。また、この共振周波数は、製造バラツキ、温度及び気圧などによって変化するため、起動時及び動作中における駆動信号の調整が必要になる。
【0005】
しかしながら、MEMS走査ミラーの共振周波数が変化すると、走査振幅が同じであっても、フォトセンサから得られるパルス信号の間隔が変化してしまう。これにより、従来の方法では、走査振幅の制御の精度が低いという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、走査振幅の制御の精度を向上できるレーザ走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るレーザ走査装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を走査する走査ミラーと、前記走査ミラーに駆動信号を印加することで、前記走査ミラーを駆動する駆動部と、前記走査ミラーにより走査されたレーザ光が走査する領域に配置され、前記レーザ光を検出した際に検知信号を生成するフォトセンサと、前記走査ミラーの前記走査の繰り返し周波数に位相同期し、かつ、前記繰り返し周波数より周波数が高いクロック信号を生成するクロック生成部と、前記クロック信号を用いて、前記検知信号の生成間隔を計数する計数部と、前記計数部で計数された計数値が予め定められた目標値に近づくように前記駆動部を制御する制御部とを備える。
【0008】
この構成によれば、クロック信号の周期が走査の周期の変化に追従して変化する。よって、当該レーザ走査装置は、走査ミラーの共振周波数のバラツキ等により、走査の周期が変化した場合であっても、計数部で計数される計数値を一定にできる。これにより、当該レーザ走査装置は、計数値に基づく走査振幅の制御の精度を向上できる。
【0009】
例えば、前記レーザ走査装置は、さらに、前記検知信号が生成されるごとに論理値が反転する検出パルス信号を生成する信号生成部を備え、前記クロック生成部は、前記検出パルス信号に位相同期し、かつ、前記検出パルス信号より高周波な前記クロック信号を生成し、前記計数部は、前記クロック信号を用いて、前記検出パルス信号のパルス幅を計数することで前記生成間隔を計数してもよい。
【0010】
この構成によれば、当該レーザ走査装置は、走査の周期に位相同期したクロック信号を容易に生成できる。
【0011】
例えば、前記信号生成部は、前記走査の1周期の一部の期間である有効期間のみにおいて前記検知信号が生成されるごとに前記論理値が反転する、前記検出パルス信号を生成してもよい。
【0012】
この構成によれば、当該レーザ走査装置は、ノイズ等に起因して誤った検出パルス信号が生成されることを抑制できる。
【0013】
例えば、前記クロック信号は、前記検出パルス信号のn(nは2以上の整数)倍の周波数を有してもよい。
【0014】
この構成によれば、当該レーザ走査装置は、走査の周期に位相同期し、かつ、当該周期より高周波なクロック信号を容易に生成できる。
【0015】
例えば、前記制御部は、前記計数値が前記目標値に近づくように前記駆動信号の振幅を制御してもよい。
【0016】
この構成によれば、当該レーザ走査装置は、計数値に基づき走査振幅を制御できる。
【0017】
なお、本発明は、このような特徴的な処理部を備えるレーザ走査装置として実現することができるだけでなく、レーザ走査装置に含まれる特徴的な処理部が実行する処理をステップとするレーザ走査方法として実現することができる。また、レーザ走査装置に含まれる特徴的な処理部としてコンピュータを機能させるためのプログラムまたはレーザ走査方法に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムを、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、走査振幅の制御の精度を向上できるレーザ走査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1に係るレーザ走査装置の概略構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係るフォトセンサを通過するレーザ光の様子を示す図である。
図3】実施の形態1に係るレーザ走査装置のブロック図である。
図4】実施の形態1に係るクロック生成部のブロック図である。
図5】実施の形態1に係る駆動信号の周波数と走査振幅との関係を示す図である。
図6】実施の形態1に係るレーザ走査装置による動作を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1に係るレーザ走査装置における各種信号のタイミングチャートである。
図8】実施の形態1に係る走査振幅と計数値との関係を示す図である。
図9】実施の形態1に係るレーザ走査装置による駆動信号の振幅制御を示す図である。
図10】実施の形態1に係る、固定クロックを使用した場合の課題を説明するための図である。
図11】実施の形態1に係る周波数が変化した際の各種信号を示す図である。
図12】実施の形態2に係るフォトセンサを示す図である。
図13】実施の形態2に係るフォトセンサから得られる信号を示す図である。
図14】実施の形態2に係る検出パルスの生成方法を示す図である。
図15】実施の形態3に係るレーザ走査装置のブロック図である。
図16】実施の形態3に係るクロック生成部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0021】
(実施の形態1)
[レーザ走査装置の構成]
図1は、本実施の形態に係るレーザ走査装置の概略構成を示す図である。
【0022】
図1に示すレーザ走査装置100は、レーザ光源101と、MEMS走査ミラー102と、フォトセンサ103とを備える。
【0023】
レーザ光源101は、レーザ光121を照射する。
【0024】
MEMS走査ミラー102は、共振走査ミラーであり、レーザ光121を反射する。また、MEMS走査ミラー102は、レーザ光121を走査する。また、MEMS走査ミラー102で反射されたレーザ光122は、走査領域123を走査する。
【0025】
フォトセンサ103は、走査領域123に配置され、レーザ光122を検知する。
【0026】
また、図2に示すように、レーザ光122が走査領域123を一往復する1回(1周期)の走査において、レーザ光122は、フォトセンサ103上を2回通過する。
【0027】
図3は、本実施の形態に係るレーザ走査装置100のブロック図である。図3に示すレーザ走査装置100は、レーザ光源101と、MEMS走査ミラー102と、フォトセンサ103と、発振器104と、駆動部105と、信号生成部106と、クロック生成部107と、計数部108と、制御部109とを備える。
【0028】
フォトセンサ103は、レーザ光122を検出した際に検知信号124を生成する。
【0029】
発振器104は、所定の周波数の基準信号125を生成し、当該基準信号125を駆動部105に供給する。また、発振器104は、固定周波数の固定クロック126を生成し、当該固定クロック126を計数部108に供給する。
【0030】
駆動部105は、MEMS走査ミラー102に駆動信号127を印加することで、MEMS走査ミラー102を駆動する。具体的には、駆動部105は、発振器104から供給される基準信号125を用いて、当該基準信号125と同じ周波数の駆動信号127を生成する。駆動部105は、MEMS走査ミラー102に駆動信号127を印加することで、MEMS走査ミラー102にレーザ光122を走査偏向させる。
【0031】
また、駆動部105は、駆動信号127を二値化した二値化駆動信号128を生成し、当該二値化駆動信号128を信号生成部106に供給する。なお、駆動部105は、駆動信号127を信号生成部106に供給し、信号生成部106が二値化駆動信号128を生成してもよい。
【0032】
信号生成部106は、検知信号124を用いて、検知信号124が生成される間隔を示す検出パルス129(検出パルス信号)を生成する。具体的には、検出パルス129は、検知信号124が生成されるごとに論理値が反転する信号である。例えば、検出パルス129は、各周期において、1つ目の検知信号124が生成されてから、2つ目の検知信号124が生成されるまでの区間においてハイレベルとなる信号である。
【0033】
クロック生成部107は、MEMS走査ミラー102による走査の繰り返し周波数に位相同期し、かつ、当該繰り返し周波数より周波数が高い計数クロック130(クロック信号)を生成する。つまり、計数クロック130は、MEMS走査ミラー102の走査の周期の変化に追従して、周期(周波数)が変化する信号である。具体的には、クロック生成部107は、検出パルス129に位相同期し、かつ、検出パルス129より高周波な計数クロック130を生成する。例えば、計数クロック130は、検出パルス129のn(nは2以上の整数)倍の周波数を有する。
【0034】
計数部108は、計数クロック130を用いて、検知信号124の生成間隔を計数し、得られた計数値131を制御部109に通知する。具体的には、計数部108は、計数クロック130を用いて、検出パルス129のパルス幅を計数することで、検知信号124の生成間隔を計数する。
【0035】
制御部109は、計数値131が予め定められた目標値に近づくように駆動部105を制御する。具体的には、制御部109は、計数値131が目標値に近づくように駆動信号127の振幅を制御する。
【0036】
図4は、クロック生成部107のブロック図である。図4に示すようにクロック生成部107は、PLL(Phase Locked Loop)回路111と、分周器112とを備える。PLL回路111は、位相比較器113と、チャージポンプ114と、ループフィルタ115と、電圧制御発振器116とを備える。
【0037】
PLL回路111は、PLL動作を行う。分周器112は、1/n分周器である。ここで、nは、例えば、100程度である。なお、PLL動作は一般的な技術であるため各処理部の詳細な説明は省略するが、図4に示す回路構成により、検出パルス129に位相同期し、かつ、検出パルス129の周期の1/nの周期を有する計数クロック130が生成される。言い換えると、計数クロック130の周波数は、検出パルス129の周波数のn倍である。
【0038】
[MEMS走査ミラーの特性]
MEMS走査ミラー102は、走査振幅を稼ぐため共振を利用する共振走査ミラーである。このような共振走査ミラーは、高いQ値を持つ。図5は、MEMS走査ミラー102の駆動信号127の周波数に対する走査振幅の特性を示す図である。図5に示すように、駆動信号127の周波数が、MEMS構造体が有する共振周波数(固有振動数)付近の場合に、急激に振幅が増大する。一方で、駆動信号127の周波数が共振周波数からずれると急激に走査振幅が減少する。このような特性により、駆動信号127の周波数を高い精度で調整する必要がある。
【0039】
この共振周波数は、製造バラツキと、温度変化及び気圧変化などの環境変化とにより、図5に示すM1〜M3のように変化する。特に製造バラツキによる共振周波数のバラツキは大きい。製造プロセスにも依るが15%程度共振周波数がばらつく場合がある。
【0040】
[レーザ走査装置の動作]
図6は、本実施の形態に係るレーザ走査装置100による走査振幅の調整動作のフローチャートである。
【0041】
まず、レーザ走査装置100は、起動時の初期調整として、駆動信号127の周波数を調整する(S101)。具体的には、発振器104は、固定クロック126を生成し、計数部108に供給する。制御部109の制御に従い、駆動部105は、駆動信号127の周波数をスイープさせる。計数部108は、固定クロック126を用いて、駆動信号127の各周波数における検出パルス129のパルス幅を計数する(S111)。ここで、計数されたパルス幅は、検知信号124の生成間隔に対応する。
【0042】
次に、制御部109は、計数結果に基づき、パルス幅が最大になるように駆動信号127の周波数を設定する(S112)。
【0043】
以上の処理により、製造バラツキ等に基づく共振周波数のバラツキを加味した、駆動信号127の適切な周波数が設定される。
【0044】
一方で、動作中においても温度変化等に起因してMEMS走査ミラー102の共振周波数が変動する。この変動を補償するために、レーザ走査装置100は、動作中において、駆動信号127の振幅を制御する(S102)。これにより、動作中に共振周波数が変動した場合でも、走査振幅を一定にできる。
【0045】
具体的には、まず、クロック生成部107がオンされることで、計数クロック130が生成される(S121)。
【0046】
計数部108は、計数クロック130を用いて、検出パルス129のパルス幅を計数する(S122)。制御部109は、得られた計数値に基づき、計数値が目標値に近づくように駆動信号127の振幅を調整する(S123)。
【0047】
また、このステップS122及びS123の処理が、動作中において所定の時間毎に繰り返し行われる。
【0048】
図7は、本実施の形態に係る各種信号のタイミングチャートである。なお、図7では、駆動信号127の周期T0(偏向走査の周期)及び、駆動信号127の振幅A0は一定である。また、環境変化により走査振幅がB1〜B3に変化している。
【0049】
信号生成部106は、フォトセンサ103からの検知信号124を二値化して二値化検知信号を生成する。ここで、図2に示すように、MEMS走査ミラーの一周期で往路と復路の2回、レーザ光122がフォトセンサ103を横切るため、検知信号124は2個発生する。
【0050】
また、図7に示すように、MEMS走査ミラー102の走査振幅が小さい時には2個の検知信号124の間隔は短く、走査振幅が大きい時には2個の検知信号124の間隔は長くなる。つまり、この間隔により走査振幅の情報を得ることができる。
【0051】
また、信号生成部106は、二値化検知信号の1回目のパルスの立ち上がりエッジでセットされ、2回目のパルスの立ち上がりでリセットされる検出パルス129を生成する。言い換えると、検出パルス129は、検知信号124が生成されるごとに論理値が反転する信号である。
【0052】
また、信号生成部106は、二値化駆動信号128がハイレベルである有効期間にのみ、二値化検知信号に応じて検出パルス129の論理値を反転させ、二値化駆動信号128がローレベルである無効期間では、ローレベルの検出パルス129を生成する。これにより、ノイズ等に起因して誤った検出パルス129が生成されることを抑制できる。なお、ここでは、有効期間は二値化駆動信号128がハイレベルの期間であるが、これは、二値化駆動信号128がハイレベルの期間において、レーザ光122がフォトセンサ103を通過するからである。つまり、有効期間は、MEMS走査ミラー102の走査の1周期の一部の期間であり、かつ、レーザ光122がフォトセンサ103を通過する期間であればよい。言い換えると、有効期間は、フォトセンサ103の位置に応じて設定される。
【0053】
計数部108は、検出パルス129のパルス幅、つまり、検知信号124の生成間隔を計数クロック130で計数する。具体的には、計数部108は、検出パルス129がハイレベルになってからローレベルになるまでの間の計数クロック130のクロック数をカウントすることで計数値を得る。
【0054】
また、図7に示すように、走査振幅がB1、B2、B3と大きくなるに伴い、検出パルス129のパルス幅は、W1、W2、W3と大きくなる。また、パルス幅の増加に伴い計数値131も増加する。
【0055】
制御部109は、得られた計数値131が目標値と等しくなるように駆動信号127の振幅を制御する。
【0056】
図8は、MEMS走査ミラー102の走査振幅と計数値131との関係を示す図である。図1に示すようにフォトセンサ103を走査領域123の端部に配置した場合、走査振幅が小さくレーザ光122がフォトセンサ103を横切らない時は計数値131が得られないが、レーザ光122がフォトセンサ103を横切るようになると、正常に計数値131が得られるようになる。
【0057】
図9は、動作時における駆動信号127の振幅調整処理の一例を示す図である。図9に示すように、駆動信号127の振幅がA1であり、走査振幅がB1である場合、検出パルス129のパルス幅W1は、目標値より狭い。この場合、制御部109は、駆動信号127の振幅をA1からA2に増加させる。これにより、走査振幅がB1からB2が増加し、検知信号124の生成間隔が拡がる。これにより、検出パルス129のパルス幅W2が増加し、当該パルス幅が目標値に近づく。つまり、得られる計数値131が目標値に近づく。
【0058】
以上のように、レーザ走査装置100は、動作環境の変化等に応じて、駆動信号127の振幅を調整することで、走査振幅を一定に制御できる。
【0059】
[効果]
本実施の形態では、上述したように、検出パルス129のパルス幅W2の計測に、検出パルス129に位相同期する計数クロック130が用いられる。これにより、走査振幅の制御の精度を向上できる。以下、この効果について説明する。
【0060】
図10は、比較のための図であり、計数クロック130の代わりに、周波数が一定である固定クロックが用いられる場合の動作を示す図である。
【0061】
上述したように、MEMS走査ミラー102の共振周波数のバラツキ等を補正するために、駆動信号127の周波数が調整される。図10に示すように、駆動信号127の周波数が異なる場合、走査振幅B0が同じであっても、検出パルス129のパルス幅が変化する。
【0062】
例えば、図10に示すように、共振周波数が高い(周期がT1)場合は、2個の検知信号124の間隔に対応するパルス幅W1は狭くなるため、計数値131は小さくなる。一方、共振周波数が低い(周期がT2(>T1))場合は、パルス幅W2は広くなるため、計数値131は大きくなる。つまり、MEMS走査ミラー102の共振周波数のバラツキにより、走査振幅が同じであるにもかかわらず計数値131が変化してしまう。これにより、精度のよい振幅制御ができない。
【0063】
図11は、本実施の形態に係る図であり、検出パルス129に位相同期する計数クロック130が用いられる場合の動作を示す図である。
【0064】
図11に示すように、本実施の形態では、計数クロック130は、検出パルス129に位相同期する。ここで、検出パルス129の周波数は、駆動信号127の周波数と等しい。つまり、検出パルス129の周波数はMEMS走査ミラー102の共振周波数と略等しい。よって、計数クロック130は、共振周波数に比例した周波数を有する。言い換えると、計数クロック130の周波数は、共振周波数が増加すると増加し、共振周波数が減少すると減少する。つまり、計数クロック130の周波数は、共振周波数に追従して変化する。
【0065】
これにより、図11に示すように、共振周波数が変化した場合でも、走査振幅が同じであれば、同じ計数値131が得られる。
【0066】
このように、本実施の形態に係るレーザ走査装置100は、環境変化などにより駆動信号127の周波数が変化しても、計数値131が変化しないので、安定した走査振幅の検出を実現できる。これにより、レーザ走査装置100は、精度の高い走査振幅の制御を実現できる。
【0067】
[変形例]
上記説明では、検出パルス129から計数クロック130が生成される例を述べたが、計数クロック130は、MEMS走査ミラー102の走査の周期(周波数)に位相同期する、又は、駆動信号127の周期(周波数)に位相同期する信号であればよい。言い換えると、計数クロック130は、MEMS走査ミラー102の走査の周期(周波数)、又は、駆動信号127の周期(周波数)の変化に追従して、周期(周波数)が変化する信号であればよい。
【0068】
例えば、クロック生成部107は、検出パルス129の代わりに二値化駆動信号128を用い、二値化駆動信号128をn分周することで計数クロック130を生成してもよい。この場合でも上記と同様の効果を実現できる。
【0069】
また、上記説明では、初期調整時に駆動信号127の周波数のみが調整され、動作中に駆動信号127の振幅のみが調整されているが、初期調整時に周波数及び振幅が調整されてもよい。同様に、動作中に周波数及び振幅が調整されてもよい。
【0070】
(実施の形態2)
本実施の形態では、レーザ光122がフォトセンサ103を通過するタイミングの検知精度を向上する手法について説明する。
【0071】
図12は、本実施の形態に係るフォトセンサ103の構成を示す図である。図12に示すように、本実施の形態ではフォトセンサ103は、2つのフォトセンサ103A及び103Bを含む。
【0072】
図13は、2つのフォトセンサ103A及び103Bにより得られる信号を示す図である。2つのフォトセンサ103A及び103Bから得られる信号SA及びSBと、信号SAと信号SBとの差分値SB−SAと、信号SAと信号SBとの加算値SA+SBと、差分値SB−SAをゼロクロス二値化した信号S3と、加算値SA+SBを二値化した信号S4と、信号S3と信号S4との論理積S5とは、図13に示すように得られる。
【0073】
図14は、本実施の形態に係る信号生成部106による検出パルス129の生成方法を説明するための図である。図14に示すように、信号生成部106は、信号SAと信号SBとの差分値SB−SAと、信号SAと信号SBとの加算値SA+SBとを算出する。次に、信号生成部106は、差分値SB−SAをゼロクロス二値化した信号S3と、SA+SBを二値化した信号S4とを算出する。次に、信号生成部106は、信号S3と信号S4との論理積S5と、信号S3の反転値と信号S4との論理積S6とを算出する。そして、信号生成部106は、論理積S5の立ち上がりでセットされ、論理積S6の立ち上がりでリセットされる検出パルス129を生成する。
【0074】
これにより、図14に示すように、検出パルス129の立ち上がり及び立下りのタイミングは、加算値SA+SBの2つの信号SA及び信号SBの中心と一致する。つまり、検出パルス129の立ち上がり及び立下りのタイミングは、レーザ光122がフォトセンサ103の中心を通過したタイミングと一致する。これにより、本実施の形態に係るレーザ走査装置100は、レーザ光122がフォトセンサ103を通過したタイミングの検知精度を向上できるので、走査振幅の調整精度を向上できる。
【0075】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態1の変形例について説明する。上記実施の形態1では、駆動部105が、初期設定において設定された周波数の駆動信号127を動作時にMEMS走査ミラー102へ供給する例を述べた。本実施の形態では、レーザ走査装置は、自励発振を用いて動作時おいて駆動信号127の周波数を調整する。
【0076】
図15は、本実施の形態に係るレーザ走査装置100Aのブロック図である。図15に示すレーザ走査装置100Aは、実施の形態1に係るレーザ走査装置100の構成に加え、さらに、スイッチ110を備える。また、クロック生成部107Aの構成が異なる。
【0077】
図16は、本実施の形態に係るクロック生成部107Aの構成を示す図である。クロック生成部107Aは、同期信号132をスイッチ110へ出力する点が、クロック生成部107と異なる。
【0078】
ここで、同期信号132は、検出パルス129に位相同期した信号であり、検出パルス129と同じ周波数を有する。
【0079】
スイッチ110は、初期設定時において、発振器104により生成された基準信号125を駆動部105へ供給する。なお、初期設定時の動作は、実施の形態1と同様である。
【0080】
また、スイッチ110は、初期設定後の動作時において、同期信号132を駆動部105へ供給する。これにより、駆動部105は、同期信号132と同じ周波数の駆動信号127を生成する。
【0081】
以上の構成により、上述した駆動信号127の振幅の調整に加え、自励発振動作により、動作中の共振周波数の変動に伴う走査振幅の変動が抑制されるように、駆動信号127の周波数が調整される。これにより、レーザ走査装置100Aは、より高精度に、走査振幅を調整できる。
【0082】
以上、本発明の実施の形態に係るレーザ走査装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0083】
例えば、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0084】
また、ハイ/ローにより表される論理レベル又はオン/オフにより表されるスイッチング状態は、本発明を具体的に説明するために例示するものであり、例示された論理レベル又はスイッチング状態の異なる組み合わせにより、同等な結果を得ることも可能である。
【0085】
また、上記の各装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムとして構成されても良い。RAMまたはハードディスクドライブには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0086】
さらに、上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしても良い。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、例えば、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムを含む。この場合、ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0087】
さらにまた、上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしても良い。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしても良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしても良い。
【0088】
また、本発明は、上記に示す方法であるとしても良い。また、本発明は、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしても良いし、上記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしても良い。
【0089】
さらに、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしても良い。また、これらの非一時的な記録媒体に記録されている上記デジタル信号であるとしても良い。
【0090】
また、本発明は、上記コンピュータプログラムまたは上記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。
【0091】
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、上記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、上記マイクロプロセッサは、上記コンピュータプログラムに従って動作するとしても良い。
【0092】
また、上記プログラムまたは上記デジタル信号を上記非一時的な記録媒体に記録して移送することにより、または上記プログラムまたは上記デジタル信号を上記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。
【0093】
さらに、上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、レーザ走査装置に適用でき、例えば、当該レーザ走査装置から対象物までの距離を測定するためのレーザレンジファインダ等に適用できる。
【符号の説明】
【0095】
100、100A レーザ走査装置
101 レーザ光源
102 MEMS走査ミラー
103、103A、103B フォトセンサ
104 発振器
105 駆動部
106 信号生成部
107、107A クロック生成部
108 計数部
109 制御部
110 スイッチ
111 PLL回路
112 分周器
113 位相比較器
114 チャージポンプ
115 ループフィルタ
116 電圧制御発振器
121、122 レーザ光
123 走査領域
124 検知信号
125 基準信号
126 固定クロック
127 駆動信号
128 二値化駆動信号
129 検出パルス
130 計数クロック
131 計数値
132 同期信号
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
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図10
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