(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365088
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】錠
(51)【国際特許分類】
E05B 13/00 20060101AFI20180723BHJP
E05B 17/14 20060101ALI20180723BHJP
E05B 27/00 20060101ALI20180723BHJP
A63F 7/02 20060101ALI20180723BHJP
A63F 5/04 20060101ALI20180723BHJP
E05B 61/00 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
E05B13/00 B
E05B17/14
E05B27/00 Z
A63F7/02 327A
A63F7/02 334
A63F5/04 512Z
A63F5/04 512C
!E05B61/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-160307(P2014-160307)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-37724(P2016-37724A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 亮志
(72)【発明者】
【氏名】森 俊二
【審査官】
桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−352229(JP,A)
【文献】
特開2002−213118(JP,A)
【文献】
特開2014−023595(JP,A)
【文献】
特開2005−016277(JP,A)
【文献】
特開平05−033535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
A63F 5/04
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵穴を有する錠であって、
前記鍵穴の開口面から突出しない位置まで前記鍵穴に充填され、前記鍵穴から非破壊的に除去不可能な充填部材を備え、
前記充填部材は、前記開口面から露出している面上に塗料を有する、錠。
【請求項2】
鍵穴を有する錠であって、
前記鍵穴の開口面から突出しない位置まで前記鍵穴に充填され、前記鍵穴から非破壊的に除去不可能な充填部材を備え、
前記充填部材は、前記開口面から露出している面上に、前記充填部材を破壊的に抜去するための抜去治具の先端が前記充填部材内に差し込まれることをガイドする凹部を有する、錠。
【請求項3】
前記充填部材は、前記凹部内に塗料を有する、請求項2に記載の錠。
【請求項4】
前記鍵穴を有する内筒と、
前記内筒内に収容されるタンブラと
をさらに備え、
前記充填部材は、前記タンブラで支持されることで前記鍵穴内に保持される、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の錠。
【請求項5】
キーコードを変更可能であり、キーコードをリセット可能な共通鍵およびキーコードをリセット不可能な固有鍵で開錠可能な可変錠である、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの鍵部材を重ね合わせることにより鍵穴を封印する封印鍵が記載されている。
特許文献1 特開平5−156848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
錠で施錠された遊技機などの流通過程において、不正に錠が開けられたことを把握できるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る錠は、鍵穴を有する錠であって、鍵穴の開口面から突出しない位置まで鍵穴に充填され、鍵穴から非破壊的に除去不可能な充填部材を備える。
【0005】
上記錠において、充填部材は、開口面から露出している面上に塗料を有してよい。
【0006】
上記錠において、充填部材は、開口面から露出している面上に、充填部材を破壊的に抜去するための抜去治具の先端が充填部材内に差し込まれることをガイドする凹部を有してよい。
【0007】
上記錠において、充填部材は、凹部内に塗料を有してよい。
【0008】
上記錠において、鍵穴を有する内筒と、内筒内に収容されるタンブラとをさらに備え、充填部材は、タンブラで支持されることで鍵穴内に保持されてよい。
【0009】
上記錠において、キーコードを変更可能であり、キーコードをリセット可能な共通鍵およびキーコードをリセット不可能な固有鍵で開錠可能な可変錠でよい。
【0010】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るシリンダ錠の外観斜視図の一例を示す図である。
【
図2】シリンダ錠の分解斜視図の一例を示す図である。
【
図3】シリンダ錠および充填部材の外観斜視図の一例を示す図である。
【
図4】鍵穴に充填部材が充填された状態のシリンダ錠の外観斜視図の一例を示す図である。
【
図5】抜去治具により充填部材を鍵穴から抜く様子を示すシリンダ錠の断面図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るシリンダ錠10の外観斜視図の一例を示す図である。シリンダ錠10は、キーコードを変更可能なシリンダ錠である。シリンダ錠10を開錠または施錠するのに用いられる鍵は、キーコードをリセット可能な共通鍵50と、キーコードをリセット不可能な固有鍵60とがある。シリンダ錠10は、開錠可能なキーコードに応じて、共通鍵50および固有鍵60のいずれか一方で開錠または施錠できる。
【0014】
共通鍵50は、複数のシリンダ錠に共通のキーコードを有する鍵である。共通鍵50は、入手が比較的容易なセキュリティが低い鍵である。固有鍵60は、固有のキーコードを有する鍵である。固有鍵60は、入手に制限があり、不正に入手することが困難なセキュリティが高い鍵である。なお、本実施形態では、キーコードを変更可能なシリンダ錠を例に説明するが、シリンダ錠は、キーコードを変更できない錠でもよい。
【0015】
シリンダ錠10は、外筒20および内筒30を備える。外筒20は、中心軸を中心に内筒30を回転可能に収容する。内筒30は、鍵が挿入される鍵穴31を有する。内筒30は、鍵穴31に挿入された鍵が時計回りまたは反時計回りに回転することに対応して、外筒20の中心軸を中心に時計回りまたは反時計回りに回転する。外筒20は、鍵穴31を露出する開口23を有する。
【0016】
図2は、シリンダ錠10の分解斜視図の一例を示す図である。シリンダ錠10は、外筒20、内筒30、リセットボタン40、および背面カバー24を備える。
【0017】
外筒20は、正面に開口23を有する。外筒20には、取り付けフランジ22が一体的に形成されている。シリンダ錠10は、取り付けフランジ22を介して遊技機などが有する錠取付部材に形成された取付穴に設置される。内筒30は、鍵穴31を含む。内筒30は、鍵の回転に応じて外筒20の中心軸を中心に回転する。背面カバー24は、内筒30の出力軸32を外部に露出した状態で、内筒30の背面を覆う。出力軸32は、外部の施錠ユニットと機械的に連結される。出力軸32が回転することに応じて施錠ユニットが施錠対象の開錠および施錠を行う。
【0018】
ユーザは、共通鍵50のキーコードに設定されているシリンダ錠10に対して、共通鍵50、または固有鍵60を用いて、シリンダ錠10の開錠または施錠を行うことができる。ユーザは、キーコードをリセットする場合、例えば、リセットボタン40を中心軸と垂直な方向下方に押下しながら、共通鍵50を用いて、キーコードをリセットさせるためのリセット位置に内筒30を回転させる。リセット位置に内筒30を回転させた後、ユーザは、鍵穴31に新たな固有鍵60を挿入して、内筒30を再び施錠位置まで回転させることで、シリンダ錠10のキーコードを新たな固有鍵60に固有のキーコードに変更することができる。
【0019】
シリンダ錠10は、内部に物を収める容器を施錠するのに用いられてよい。シリンダ錠10は、内部に電気回路または電子回路などを収める筐体を容器として施錠するのに用いられてよい。シリンダ錠10は、例えば、パチンコ台またはスロット台などの遊技機を施錠するのに用いられてよい。遊技機は、例えば、枠、遊技機本体、およびカバーを備える。遊技機は、枠を介して遊技場の島設備に固定される。カバーは、遊技機本体に設けられた遊技盤を視認可能に覆う。
【0020】
シリンダ錠10は、例えば、遊技機本体が有する取付穴に設けられ、枠に対する遊技機本体の施錠を行う。遊技機本体は、錠取付部材の一例である。シリンダ錠10は、遊技機本体に対するカバーの施錠をさらに行う。例えば、共通鍵50または固有鍵60がシリンダ錠10に対して時計回りに回転されることで、シリンダ錠10は、枠に対する遊技機本体の施錠状態を開錠状態にする。また、共通鍵50または固有鍵60がシリンダ錠10に対して反時計回りに回転されることで、シリンダ錠10は、遊技機本体に対するカバーの施錠状態を開錠状態にする。
【0021】
シリンダ錠10の出荷時には、設置場所の固有鍵60のキーコードが不明である場合が多い。例えば、複数のホールに用いられる大量の遊技機がトラックで輸送されることがある。また、大量の遊技機が一旦流通倉庫に保管された後、各ホールに分配されることがある。また、ホールに設置される遊技機の台数が変更されることもある。このように、遊技機は、設置されるまでどのホールに設置されるか確定できない場合が多い。
【0022】
そこで、シリンダ錠10は、ホールへの設置時の便宜性を確保するために、開錠可能なキーコードとして、共通鍵50のキーコードが設定された状態で出荷される。開錠可能なキーコードとして共通鍵50のキーコードが設定されていることで、遊技機の出荷前の検査、または着荷後の検査を容易に実施することができる。
【0023】
ホールの管理者は、遊技機がホールに設置された後に、共通鍵50を用いてシリンダ錠10のキーコードをリセットして、そのホールに固有の固有鍵60を用いて固有鍵60のキーコードをシリンダ錠10の施錠可能なキーコードに設定する。これにより、シリンダ錠10は、ホールに固有の固有鍵60でのみ開錠および施錠されることができ、セキュリティを高めることができる。
【0024】
しかしながら、上記のように、遊技機に設けられたシリンダ錠10のキーコードが共通鍵50のキーコードに設定されている場合、遊技機が出荷され、ホールに設置されるまでの間に、不特定の人が入手可能な共通鍵50を用いて遊技機に不正行為が行われる可能性がある。例えば、遊技機の流通倉庫に保管されている遊技機に対して、不正に部品交換などが行われる可能性がある。したがって、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されたことを把握できることが望ましい。
【0025】
そこで、本実施形態に係るシリンダ錠10は、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されにくくする。さらに、たとえ流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されたとしても、開錠されたことを把握できるようにする。
【0026】
より具体的には、
図3に示すように、使用前のシリンダ錠10の鍵穴31に充填部材70を充填しておく。充填部材70は、
図4に示すように、鍵穴31の開口面から突出しない位置まで鍵穴31に充填され、鍵穴31から非破壊的に除去不可能である。
【0027】
充填部材70は、鍵穴31の開口面から露出している面上に凹部72を有する。凹部72に、先端が尖ったネジなどの抜去治具の先端を差し込んで引き抜くことで充填部材70を破壊的に抜去できる。凹部72は、抜去治具の先端が充填部材70内に差し込まれることをガイドする。充填部材70は、抜去治具を内部に差し込める程度の硬度を有する材料で構成されている。充填部材70は、例えば樹脂により構成されてよい。
【0028】
充填部材70は、鍵穴31の開口面から突出しない位置まで鍵穴31に充填されているので、先端が尖ったネジなどの抜去治具の先端を差し込んで引き抜くなど、破壊でなければ充填部材70を抜くことはできない。したがって、充填部材70の鍵穴31の開口面から露出している面が傷ついている場合は、少なくとも一回、充填部材70が鍵穴31から抜かれ、シリンダ錠10が開錠された可能性があることが把握できる。
【0029】
本実施形態に係るシリンダ錠10によれば、充填部材70の状態を確認することで、シリンダ錠10の鍵穴31に少なくとも一回、充填部材70が抜かれ、シリンダ錠10が開錠された可能性があることが把握できる。よって、設置前にシリンダ錠10が開錠された可能性があれば、遊技機に不正が行われている可能性があることを容易に把握できる。よって、遊技機に対して不正に部品交換が行われたことを気づかずに、その遊技機がホールで利用されることを防止できる。
【0030】
充填部材70は、鍵穴31の開口面から露出している面上に塗料を有してもよい。塗料は、可視性の塗料でよい。あるいは、塗料は、ブラックライトの照射など予め定められた条件化で可視化できる塗料でよい。塗料を塗布しておくことで、充填部材70を何らかの手法で抜こうとした痕跡を残すことができる。例えば、不正ユーザが、鍵穴31に充填部材70が充填されていることを知らずに不正に鍵を鍵穴31に挿入しようとする。この場合、充填部材70に阻害されて鍵を挿入できない。しかも、鍵の挿入を試みることによって、充填部材70に塗布された塗料が鍵により剥がれ、不正行為の痕跡を残すことができる。
【0031】
充填部材70は、凹部72に塗料を有してもよい。これにより、凹部72の塗料の状態を確認することで、凹部72にネジなどの抜去治具を差し込んだかどうかを容易に確認できる。
【0032】
ここで、抜去治具を使用せずに、例えば、粘着性の高い素材を塗布した棒状部材の先端を充填部材70の鍵穴31の開口面から露出している面に押し付けて、充填部材70を引っ張り出すことも考えられる。この場合、鍵穴31の開口面から露出している面に塗料を塗布しておけば、粘着性の高い素材により塗料が剥がれることになる。充填部材70の鍵穴31の開口面から露出している面に塗布されている塗料は、充填部材70の一部であるので、このような手法で充填部材70が抜かれる場合にも、非破壊的に除去できていないと言える。
【0033】
図5は、抜去治具80により充填部材70を鍵穴31から抜く様子を示すシリンダ錠10の断面図の一例を示す図である。
【0034】
(a)に示すように、充填部材70は、鍵穴31の開口面から突出しない位置まで鍵穴31に充填されている。この状態で、(b)に示すように、抜去治具80を凹部72でガイドしながら、充填部材70の内部へ破壊的に差し込む。この状態で、(c)に示すように、抜去治具80を鍵穴31から抜くことで、充填部材70を鍵穴31から抜き去ることができる。なお、充填部材70は、鍵穴31内に収まっている状態では、内筒30に設けられているタンブラ34によって支持され、保持されている。よって、充填部材70は、抜去治具80などにより破壊的でなければ、抜くことが難しい。
【0035】
以上、本実施形態に係るシリンダ錠10によれば、鍵穴31に充填されている充填部材70の状態を確認することで、シリンダ錠10の鍵穴31に少なくとも一回、充填部材70が鍵穴31から抜かれ、シリンダ錠10が開錠された可能性があることが把握できる。したがって、設置前にシリンダ錠10が開錠された可能性があれば、遊技機に不正が行われている可能性があることを容易に把握できる。よって、遊技機に対して不正に部品交換が行われたことを気づかずに、その遊技機がホールで利用されることを防止できる。
【0036】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0037】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0038】
10 シリンダ錠
20 外筒
22 取り付けフランジ
23 開口
24 背面カバー
30 内筒
31 鍵穴
32 出力軸
40 リセットボタン
50 共通鍵
60 固有鍵
70 充填部材
72 凹部
80 抜去治具