(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
錠で施錠された遊技機などが流通過程などにおいて不正に開錠されたことを把握できるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る錠は、鍵穴を有する鍵穴部材と、鍵穴に挿入部材が挿入される過程で挿入部材に押されて、第1形状から変形し、かつ挿入部材が鍵穴から抜かれる過程で第1形状に戻らない変形部材とを備える。
【0005】
上記錠において、変形部材は、鍵穴に挿入部材が挿入される過程で挿入部材に押されることにより、鍵穴の少なくとも一部を覆う第1形状から第1形状より広く鍵穴を露出させる第2形状に変形してよい。
【0006】
上記錠において、変形部材は、第1形状の状態で、鍵穴の中心軸に向かって延伸する第1延伸部を有し、変形部材は、鍵穴に挿入部材が挿入される過程で挿入部材に押されることにより、第1延伸部が挿入方向に折れ曲がることで、第1形状から第2形状に変形してよい。
【0007】
上記錠において、変形部材は、内筒に対して固定される固定部と、第1延伸部と固定部との間に形成されている折り曲げ部とをさらに有し、第1延伸部は、折り曲げ部を支点として折れ曲がってよい。
【0008】
上記錠において、固定部は、内筒の側面に固着されていてよい。
【0009】
上記錠において、変形部材は、第1形状の状態で、第1延伸部の端部から中心軸に沿った方向に延伸する第2延伸部をさらに有してよい。
【0010】
上記錠において、鍵穴部材は、鍵穴の側壁に凹部を有し、第2延伸部は、第1延伸部が挿入方向に折れ曲がった場合、凹部に収まってよい。
【0011】
上記錠は、キーコードを変更可能であり、キーコードをリセット可能な共通鍵およびキーコードをリセット不可能な固有鍵で開錠可能な可変錠でよい。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本実施形態に係るシリンダ錠10の外観斜視図の一例を示す図である。シリンダ錠10は、キーコードを変更可能なシリンダ錠である。シリンダ錠10を開錠または施錠するのに用いられる鍵は、キーコードをリセット可能な共通鍵50と、キーコードをリセット不可能な固有鍵60とがある。シリンダ錠10は、開錠可能なキーコードに応じて、共通鍵50および固有鍵60のいずれか一方で開錠または施錠できる。
【0016】
共通鍵50は、複数のシリンダ錠に共通のキーコードを有する鍵である。共通鍵50は、入手が比較的容易なセキュリティが低い鍵である。固有鍵60は、固有のキーコードを有する鍵である。固有鍵60は、入手に制限があり、不正に入手することが困難なセキュリティが高い鍵である。なお、本実施形態では、キーコードを変更可能なシリンダ錠を例に説明するが、シリンダ錠は、キーコードを変更できない錠でもよい。さらに言えば、鍵穴を有する錠であれば、シリンダ錠でなくてもよい。
【0017】
シリンダ錠10は、外筒20および内筒30を備える。外筒20は、中心軸を中心に内筒30を回転可能に収容する。内筒30は、鍵が挿入される鍵穴31を有する。内筒30は、鍵穴部材の一例である。外筒20は、鍵穴31を露出する開口23を有する。内筒30は、鍵穴31に挿入された鍵が時計回りまたは反時計回りに回転することに対応して、外筒20の中心軸を中心に時計回りまたは反時計回りに回転する。
【0018】
シリンダ錠10は、内部に物を収める容器を施錠するのに用いられてよい。シリンダ錠10は、内部に電気回路または電子回路などを収める筐体を容器として施錠するのに用いられてよい。シリンダ錠10は、例えば、パチンコ台またはスロット台などの遊技機を施錠するのに用いられてよい。遊技機は、例えば、枠、遊技機本体、およびカバーを備える。遊技機は、枠を介して遊技場の島設備に固定される。カバーは、遊技機本体に設けられた遊技盤を視認可能に覆う。
【0019】
シリンダ錠10は、例えば、遊技機本体が有する取付穴に設けられ、枠に対する遊技機本体の施錠を行う。遊技機本体は、錠取付部材の一例である。シリンダ錠10は、遊技機本体に対するカバーの施錠をさらに行う。例えば、共通鍵50または固有鍵60がシリンダ錠10に対して時計回りに回転されることで、シリンダ錠10は、枠に対する遊技機本体の施錠状態を開錠状態にする。また、共通鍵50または固有鍵60がシリンダ錠10に対して反時計回りに回転されることで、シリンダ錠10は、遊技機本体に対するカバーの施錠状態を開錠状態にする。
【0020】
ところで、シリンダ錠10の出荷時には、設置場所の固有鍵60のキーコードが不明である場合が多い。例えば、複数のホールに用いられる大量の遊技機がトラックで輸送されることがある。また、大量の遊技機が一旦流通倉庫に保管された後、各ホールに分配されることがある。また、ホールに設置される遊技機の台数が変更されることもある。このように、遊技機は設置されるまでどのホールに設置されるか確定できない場合が多い。
【0021】
そこで、遊技機に設けられたシリンダ錠10は、ホールへの設置時の便宜性を確保するために、開錠可能なキーコードとして、共通鍵50のキーコードが設定された状態で出荷される。開錠可能なキーコードとして共通鍵50のキーコードが設定されていることで、遊技機の出荷前の検査、または着荷後の検査を容易に実施することができる。
【0022】
ホールの管理者は、遊技機がホールに設置された後に、共通鍵50を用いてシリンダ錠10のキーコードをリセットして、そのホールに固有の固有鍵60を用いて固有鍵60のキーコードをシリンダ錠10の施錠可能なキーコードに設定する。これにより、シリンダ錠10は、ホールに固有の固有鍵60でのみ開錠および施錠されることができ、セキュリティを高めることができる。
【0023】
しかしながら、上記のように、遊技機に設けられたシリンダ錠10のキーコードが共通鍵50のキーコードに設定されている場合、遊技機が出荷され、ホールに設置されるまでの間に、不特定の人が入手可能な共通鍵50を用いて遊技機に不正行為が行われる可能性がある。例えば、遊技機の流通倉庫に保管されている遊技機に対して、不正に部品交換などが行われる可能性がある。したがって、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されたことを把握できることが望ましい。
【0024】
そこで、本実施形態に係るシリンダ錠10は、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されたことを把握するためのフラグとして機能する変形部材36を外筒20の内部に有する。変形部材36は、鍵穴31の少なくとも一部を覆う第1形状で内筒30に固着されていてよい。
【0025】
変形部材36は、鍵穴31に共通鍵50または固有鍵60などの挿入部材が挿入される過程で挿入部材に押されて、第1形状から変形し、かつ挿入部材が鍵穴から抜かれる過程で第1形状に戻らない。変形部材36は、鍵穴31に挿入部材が挿入される過程で挿入部材に押されることにより、鍵穴31の少なくとも一部を覆う第1形状から第1形状より広く鍵穴31を露出させる第2形状に変形してよい。変形部材は、第2形状に変形した後、挿入部材が鍵穴31から抜かれる過程で第1形状に戻らず、第2形状のままでよい。
【0026】
変形部材36は、第1形状において、鍵穴31内に起立した状態である。そして、変形部材36は、挿入部材により押されることで、鍵穴31内で倒れた状態に変形し、第2形状になってよい。変形部材36は、挿入部材が挿入されることで押されて変形し、鍵穴31を完全に露出してよい。変形部材36は、共通鍵50または固有鍵60が鍵穴31に挿入されることを妨げない範囲で鍵穴31を露出させる程度に変形すればよい。
【0027】
上記のように、鍵穴31に挿入可能な挿入部材が挿入されると変形部材36は、第1形状から第2形状に変形して、第1形状には戻らない。したがって、変形部材36が第1形状から変形しているか否かを確認することで、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠された可能性があるか否かを把握できる。また、変形部材36が第1形状において鍵穴31の少なくとも一部を覆っている場合には、変形部材36が鍵穴31の少なくとも一部を覆っているか否かを確認することで、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠された可能性があるか否かを把握できる。これにより、本実施形態に係るシリンダ錠10によれば、設置前にシリンダ錠10が開錠された可能性があれば、遊技機に不正が行われている可能性があることを容易に把握できる。よって、遊技機に対して不正に部品交換が行われたことを気づかずに、その遊技機がホールで利用されることを防止できる。
【0028】
図2は、シリンダ錠10の分解斜視図の一例を示す図である。シリンダ錠10は、外筒20、内筒30、変形部材36、リセットボタン40、および背面カバー24を備える。
【0029】
外筒20は、正面に開口23を有する。外筒20には、取り付けフランジ22が一体的に形成されている。シリンダ錠10は、遊技機などが有する錠取付部材に形成された取付穴に、取り付けフランジ22を介して設置される。
【0030】
内筒30は、鍵穴31を含む。内筒30は、鍵の回転に応じて外筒20の中心軸を中心に回転する。背面カバー24は、内筒30の出力軸32を外部に露出した状態で、内筒30の背面を覆う。出力軸32は、外部の施錠ユニットと機械的に連結される。出力軸32が回転することに応じて施錠ユニットが施錠対象の開錠および施錠を行う。
【0031】
ユーザは、共通鍵50のキーコードに設定されているシリンダ錠10に対して、共通鍵50、または固有鍵60を用いて、開錠または施錠を行うことができる。ユーザは、キーコードをリセットする場合、例えば、リセットボタン40を中心軸と垂直な方向下方に押下しながら、共通鍵50を用いて、キーコードをリセットさせるためのリセット位置に内筒30を回転させる。リセット位置に内筒30を回転させた後、ユーザは、鍵穴31に新たな固有鍵60を挿入して、内筒30を再び施錠位置まで回転させることで、シリンダ錠10のキーコードを新たな固有鍵60に固有のキーコードに変更することができる。
【0032】
変形部材36は、外筒20内に変形可能に収容される。変形部材36は、シリンダ錠10の開錠または施錠を行う共通鍵50または固有鍵60以外の挿入部材により、第1形状から第2形状に変形されてよい。変形部材36は、シリンダ錠10の使用を開始する前に、専用の初期操作治具を用いて、第1形状から第2形状に変形されてよい。
【0033】
図3は、変形部材36の外観斜視図の一例を示す。なお、変形部材36の形状は、
図3に示す形状には限定されない。
【0034】
変形部材36は、第1形状の状態で、鍵穴31の中心軸に向かって延伸する第1延伸部361を有する。なお、変形部材36が第1形状の状態で、第1延伸部361は、鍵穴31の中心軸に対して平行でなければ、鍵穴31の中心軸に対して垂直な方向に延伸していなくてもよい。変形部材36が第1形状の状態で、第1延伸部361が延伸する方向のベクトルと、鍵穴31の中心軸の方向のベクトルとの間の角度が0度より大きければよい。
【0035】
変形部材36は、内筒30に対して固定される固定部362と、第1延伸部361と固定部362との間に形成されている折り曲げ部364とをさらに有する。固定部362は、固定穴363を有し、固定穴363を介して内筒30の側面に固着されてよい。変形部材36は、鍵穴31に共通鍵50などの挿入部材が挿入される過程で挿入部材に押されることにより、第1延伸部361が折り曲げ部364を支点として挿入方向に折れ曲がることで、第1形状から第2形状に変形する。
【0036】
変形部材36は、第1形状の状態で、第1延伸部361の端部から中心軸に沿った方向に延伸する第2延伸部365をさらに有する。内筒30は、鍵穴31の側壁に凹部を有し、第2延伸部365は、第1延伸部361が挿入方向に折れ曲がった場合、鍵穴31の凹部に収まる。変形部材36が第2延伸部365を有することで、第1延伸部361が折れ曲がった第2形状において、共通鍵50などの挿入部材が、鍵穴31から抜かれる過程で、第1延伸部361の端部に引っ掛かり、抜けにくくなることを防止できる。
【0037】
なお、
図3では、折り曲げ部364は、切り欠きで構成している。しかし、折り曲げ部364の形状は、切り欠きには限定されない。折り曲げ部364は、折り曲げやすくする形状であれば、例えば、溝、スリットなどで構成してもよい。
【0038】
また、変形部材36は、鍵穴31に共通鍵50または固有鍵60が挿入される過程で、折れ曲がるので、比較的に柔らかい材料で構成されることが好ましい。また、折れ曲がった場合に、破断して、変形部材36の一部が鍵穴31の内部に異物として混入することを防止するために、ある程度の強度を有する材料で構成されることが好ましい。そこで、変形部材36は、例えば、縦弾性係数が70GPa前後で引張強さが200〜300MPa程の材料で展伸性が良い材料で構成されることが好ましい。変形部材36は、例えば、アルミニウムまたは黄銅などで構成してもよい。
【0039】
図4Aは、変形部材36が固着される内筒30の側面301を示す。
図4Bは、内筒30の側面に変形部材36が固着された状態を示す。
図4Aに示すように、内筒30の側面301には、変形部材36を固着するための突起部302が形成されている。変形部材36の固定部362の固定穴363に突起部302を嵌めて、かしめることで、変形部材36は、内筒30の側面301に固着される。
【0040】
図5Aは、変形部材36が第1形状の場合におけるシリンダ錠10を正面から見た図である。変形部材36が第1形状の場合、つまりシリンダ錠10が未使用状態の場合、鍵穴31の一部を覆うように配置されている。
【0041】
図5Bは、シリンダ錠10の断面図の一例を示す図である。変形部材36は、内筒30の側面に、固定部362を介して固着されている。内筒30の鍵穴31の側壁には、第1延伸部361が挿入部材により押されて折れ曲がり、変形部材36が第2形状になったときに、第2延伸部365に対応する位置に、凹部34が形成されている。第2延伸部365は、変形部材36が折れ曲がった場合に、凹部34に収まる。
【0042】
図6は、挿入部材として共通鍵50が鍵穴31に挿入される様子を示すシリンダ錠10の断面図の一例である。未使用状態のシリンダ錠10の鍵穴31の少なくとも一部は、変形部材36の第1延伸部361で覆われている。この状態で、鍵穴31に共通鍵50が挿入されると、第1延伸部361が共通鍵50の挿入部52により押され、折れ曲がり、変形部材36が第2形状になる。
【0043】
図7Aは、変形部材36が第2形状の場合におけるシリンダ錠10の断面図の一例を示す図である。
図7Bは、
図7Aの変形部材36を拡大した部分断面図である。変形部材36は、第2形状に変形すると、第2延伸部365が内筒30の内壁に形成された凹部34に収まる。これにより、上記の通り、共通鍵50または固有鍵60が鍵穴31から抜かれる際に、変形部材36に引っ掛かり、抜けにくくなることを防止できる。また、第2延伸部365が凹部34に収まっていることで、外部から第1延伸部361を引っ張って、元の位置に戻しにくくできる。
【0044】
以上、本実施形態に係るシリンダ錠10によれば、変形部材36の状態を確認することで、シリンダ錠10の鍵穴31に少なくとも一回、なんらかの挿入部材が挿入されたことを把握できる。鍵穴31に少なくとも一回、なんらかの挿入部材が挿入されていれば、設置前にシリンダ錠10が開錠された可能性があり、遊技機に不正が行われている可能性がある。よって、変形部材36の状態を確認することで、遊技機に不正が行われたか否かを把握できる。これにより、遊技機に対して不正に部品交換が行われたことを気づかずに、その遊技機がホールで利用されることを防止できる。
【0045】
シリンダ錠10が使用されたかどうかを確認するための手法として、鍵穴31を覆うように未開封シール、封印シールなどと称されるシールを貼っておくことも考えられる。しかし、このようなシールは、比較的に容易に入手できる場合もある。したがって、シリンダ錠10が開けられた後に、新しいシールが貼り付けられることで、不正に気づかない可能性がある。一方、本実施形態に係るシリンダ錠10によれば、変形部材36は、第2形状に変形してしまうと、元の形状に戻すのは困難である。したがって、上記のようなシールに比べて、不正行為をより見逃しにくくできる。
【0046】
なお、上記の実施形態では、変形部材36は、鍵穴31の挿入口付近の内筒30の側面に設けられる例について説明した。しかし、変形部材36が設けられる場所は、鍵穴31の挿入口付近には限定されない。変形部材36は、鍵穴31に挿入される共通鍵50または固有鍵60などの挿入部材の挿入経路上に設けられていればよい。例えば、変形部材36は、鍵穴31の奥に設けられてよい。また、変形部材36は、外筒20などに設けられてよい。
【0047】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0048】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。