特許第6365090号(P6365090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365090
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 41/00 20060101AFI20180723BHJP
   E05B 15/00 20060101ALI20180723BHJP
   E05B 61/00 20060101ALI20180723BHJP
   A63F 7/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   E05B41/00 A
   E05B15/00 A
   E05B61/00 A
   A63F7/02 327A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-160401(P2014-160401)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-37728(P2016-37728A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 亮志
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
【審査官】 桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−253931(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02305963(GB,A)
【文献】 米国特許第02906112(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵穴を有する鍵穴部材と、
前記鍵穴に挿入部材が挿入される過程で前記挿入部材に押されて第1位置から移動し、かつ前記挿入部材が前記鍵穴から抜かれる過程で前記第1位置に戻らない移動部材と
を備え
前記移動部材は、前記鍵穴に前記挿入部材が挿入される過程で前記挿入部材により押されることにより、前記鍵穴の少なくとも一部を覆う前記第1位置から前記第1位置より広く前記鍵穴を露出させる第2位置へ移動する、錠。
【請求項2】
鍵穴を有する内筒を備える錠であって、
前記錠は、
キーコードを変更可能であり、キーコードをリセット可能な共通鍵およびキーコードをリセット不可能な固有鍵で開錠可能な可変錠であり、
前記鍵穴に挿入部材が挿入される過程で前記挿入部材に押されて第1位置から移動し、かつ前記挿入部材が前記鍵穴から抜かれる過程で前記第1位置に戻らない移動部材と、
前記内筒と前記移動部材との間に配置され、第1表示態様を示す第1表示領域および前記第1表示態様とは異なる第2表示態様を示す第2表示領域を含む表示盤と、
前記内筒および前記表示盤を回転可能に収容し、かつ前記移動部材を移動可能に収容する外筒と
を備え、
前記移動部材は、前記第1表示態様および前記第2表示態様とは異なる第3表示態様を示す第3表示領域を含み、
前記外筒は、
前記移動部材が前記第1位置から移動し、開錠可能である鍵が前記共通鍵である場合、前記第1表示領域の少なくとも一部を目視可能に露出し、前記移動部材が前記第1位置から移動し、開錠可能である鍵が前記固有鍵である場合、前記第2表示領域の少なくとも一部を目視可能に露出し、前記移動部材が前記第1位置にある場合、前記第3表示領域の少なくとも一部を目視可能に露出する表示窓を有する、錠。
【請求項3】
前記移動部材は、前記第1位置にある場合、前記外筒の内壁のうち前記鍵穴から第1方向にある部分で支持され、かつ前記外筒の内壁のうち前記鍵穴から前記第1方向とは異なる第2方向にある部分と離間しており、前記鍵穴に前記挿入部材が挿入される過程で前記挿入部材に押されることにより、前記第1位置から前記第2方向に移動する、請求項に記載の錠。
【請求項4】
前記移動部材は、前記第1位置にある場合、前記外筒の内壁のうち前記鍵穴から前記第1方向に形成されている凹部に係止されており、前記鍵穴に前記挿入部材が挿入される過程で前記挿入部材に押されることにより、前記凹部からはずれて移動する、請求項に記載の錠。
【請求項5】
前記第1方向は、前記鍵穴に対して水平方向であり、前記第2方向は、前記鍵穴に対して垂直方向である、請求項または請求項に記載の錠。
【請求項6】
前記表示盤と前記移動部材との間に配置される仕切盤をさらに備え、
前記外筒は、前記仕切盤を回転不可能に収容する、請求項から請求項のいずれか1つに記載の錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、施錠したか否かを確認できる差込鍵が開示されている。特許文献2には、鍵穴に挿入されたときに鍵穴の内壁に係止され、無線操作により係止が解除される鍵防護具が開示されている。
特許文献1 特開2013−249684号公報
特許文献2 特開2002−213118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
遊技機などに用いられる錠において、流通過程などで不正に錠が開けられたことを把握できるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る錠は、鍵穴を有する鍵穴部材と、鍵穴に挿入部材が挿入される過程で挿入部材に押されて第1位置から移動し、かつ挿入部材が鍵穴から抜かれる過程で第1位置に戻らない移動部材とを備える。
【0005】
上記錠において、移動部材は、鍵穴に挿入部材が挿入される過程で挿入部材により押されることにより、鍵穴の少なくとも一部を覆う第1位置から第1位置より広く鍵穴を露出させる第2位置へ移動してよい。
【0006】
上記錠は、キーコードを変更可能であり、キーコードをリセット可能な共通鍵およびキーコードをリセット不可能な固有鍵で開錠可能な可変錠でよい。
【0007】
上記錠において、鍵穴部材は、内筒であり、上記錠は、内筒と移動部材との間に配置され、第1表示態様を示す第1表示領域および第1表示態様とは異なる第2表示態様を示す第2表示領域を含む表示盤と、内筒および表示盤を回転可能に収容し、かつ移動部材を移動可能に収容する外筒とをさらに備え、移動部材は、第1表示態様および第2表示態様とは異なる第3表示態様を示す第3表示領域を含み、外筒は、移動部材が第1位置から移動し、開錠可能である鍵が共通鍵である場合、第1表示領域の少なくとも一部を目視可能に露出し、移動部材が第1位置から移動し、開錠可能である鍵が固有鍵である場合、第2表示領域の少なくとも一部を目視可能に露出し、移動部材が第1位置にある場合、第3表示領域の少なくとも一部を目視可能に露出する表示窓を有してよい。
【0008】
上記錠において、移動部材は、第1位置にある場合、外筒の内壁のうち鍵穴から第1方向にある部分で支持され、かつ外筒の内壁のうち鍵穴から第1方向とは異なる第2方向にある部分と離間しており、鍵穴に挿入部材が挿入される過程で挿入部材に押されることにより、第1位置から第2方向に移動してよい。
【0009】
上記錠において、移動部材は、第1位置にある場合、外筒の内壁のうち鍵穴から第1方向に形成されている凹部に係止されており、鍵穴に挿入部材が挿入される過程で挿入部材に押されることにより、凹部からはずれて移動してよい。
【0010】
上記錠において、第1方向は、鍵穴に対して水平方向であり、第2方向は、鍵穴に対して垂直方向でよい。
【0011】
上記錠において、表示盤と移動部材との間に配置される仕切盤をさらに備え、外筒は、仕切盤を回転不可能に収容してよい。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るシリンダ錠の外観斜視図の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係るシリンダ錠の分解斜視図の一例を示す図である。
図3】移動部材が第1位置にある場合のシリンダ錠を表面から見た図である。
図4】初期操作治具がシリンダ錠の鍵穴に挿入される様子を示すシリンダ錠の斜視図の一例を示す図である。
図5】初期操作治具がシリンダ錠の鍵穴に挿入される様子を示すシリンダ錠の断面図の一例を示す図である。
図6】初期操作治具がシリンダ錠の鍵穴に挿入された状態を示す断面図の一例を示す図である。
図7】移動部材が第2位置にある場合のシリンダ錠を表面から見た図である。
図8】移動部材が第2位置にある場合に、共通鍵が鍵穴に挿入される様子を示すシリンダ錠の断面図の一例を示す図である。
図9】移動部材が第2位置にある場合に、共通鍵が鍵穴に挿入された状態を示すシリンダ錠の断面図の一例を示す図である。
図10】移動部材が第2位置にある場合に、固有鍵が鍵穴に挿入される様子を示すシリンダ錠の断面図の一例を示す図である。
図11】移動部材が第2位置にある場合に、固有鍵が鍵穴に挿入された状態を示すシリンダ錠の断面図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本実施形態に係るシリンダ錠10の外観斜視図の一例を示す図である。シリンダ錠10は、キーコードを変更可能なシリンダ錠である。シリンダ錠10を開錠または施錠するのに用いられる鍵は、キーコードをリセット可能な共通鍵50と、キーコードをリセット不可能な固有鍵60とがある。シリンダ錠10は、開錠可能なキーコードに応じて、共通鍵50および固有鍵60のいずれか一方で開錠または施錠できる。
【0016】
共通鍵50は、複数のシリンダ錠に共通のキーコードを有する鍵である。共通鍵50は、入手が比較的容易なセキュリティが低い鍵である。固有鍵60は、固有のキーコードを有する鍵である。固有鍵60は、入手に制限があり、不正に入手することが困難なセキュリティが高い鍵である。なお、本実施形態では、キーコードを変更可能なシリンダ錠を例に説明するが、シリンダ錠は、キーコードを変更できない錠でもよい。さらに言えば、鍵穴を有する錠であれば、シリンダ錠でなくてもよい。
【0017】
シリンダ錠10は、外筒20および内筒30を備える。外筒20は、中心軸を中心に内筒30を回転可能に収容する。内筒30は、鍵が挿入される鍵穴31を有する。内筒30は、鍵穴部材の一例である。内筒30は、鍵穴31に挿入された鍵が時計回りまたは反時計回りに回転することに対応して、外筒20の中心軸を中心に時計回りまたは反時計回りに回転する。
【0018】
外筒20は、鍵穴31を露出する開口23を有する。外筒20は、開口23が形成される面である正面に表示窓26を有する。表示窓26は、現在、開錠可能な鍵が共通鍵50であるか固有鍵60であるか、未使用時かを表示する。
【0019】
シリンダ錠10は、内部に物を収める容器を施錠するのに用いられてよい。シリンダ錠10は、内部に電気回路または電子回路などを収める筐体を容器として施錠するのに用いられてよい。シリンダ錠10は、例えば、パチンコ台またはスロット台などの遊技機を施錠するのに用いられてよい。遊技機は、例えば、枠、遊技機本体、およびカバーを備える。遊技機は、枠を介して遊技場の島設備に固定される。カバーは、遊技機本体に設けられた遊技盤を視認可能に覆う。
【0020】
シリンダ錠10は、例えば、遊技機本体が有する取付穴に設けられ、枠に対する遊技機本体の施錠を行う。遊技機本体は、錠取付部材の一例である。シリンダ錠10は、遊技機本体に対するカバーの施錠をさらに行う。例えば、共通鍵50または固有鍵60がシリンダ錠10に対して時計回りに回転されることで、シリンダ錠10は、枠に対する遊技機本体の施錠状態を開錠状態にする。また、共通鍵50または固有鍵60がシリンダ錠10に対して反時計回りに回転されることで、シリンダ錠10は、遊技機本体に対するカバーの施錠状態を開錠状態にする。
【0021】
シリンダ錠10の出荷時には、設置場所の固有鍵60のキーコードが不明である場合が多い。例えば、複数のホールに用いられる大量の遊技機がトラックで輸送されることがある。また、大量の遊技機が一旦流通倉庫に保管された後、各ホールに分配されることがある。また、ホールに設置される遊技機の台数が変更されることもある。このように、遊技機は、設置されるまでどのホールに設置されるか確定できない場合が多い。
【0022】
そこで、シリンダ錠10は、ホールへの設置時の便宜性を確保するために、開錠可能なキーコードとして、共通鍵50のキーコードが設定された状態で出荷される。開錠可能なキーコードとして共通鍵50のキーコードが設定されていることで、遊技機の出荷前の検査、または着荷後の検査を容易に実施することができる。
【0023】
ホールの管理者は、遊技機がホールに設置された後に、共通鍵50を用いてシリンダ錠10のキーコードをリセットして、そのホールに固有の固有鍵60を用いて固有鍵60のキーコードをシリンダ錠10の施錠可能なキーコードに設定する。これにより、シリンダ錠10は、ホールに固有の固有鍵60でのみ開錠および施錠されることができ、セキュリティを高めることができる。
【0024】
しかしながら、上記のように、遊技機に設けられたシリンダ錠10のキーコードが共通鍵50のキーコードに設定されている場合、遊技機が出荷され、ホールに設置されるまでの間に、不特定の人が入手可能な共通鍵50を用いて遊技機に不正行為が行われる可能性がある。例えば、遊技機の流通倉庫に保管されている遊技機に対して、不正に部品交換などが行われる可能性がある。したがって、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されたことを把握できることが望ましい。
【0025】
そこで、本実施形態に係るシリンダ錠10は、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されたことを把握するためのフラグとして機能する移動部材36を鍵穴31の内部に有する。移動部材36は、鍵穴31に挿入可能な共通鍵50などの挿入部材が鍵穴31に挿入される過程で挿入部材に押されて第1位置から移動し、かつ挿入部材が鍵穴31から抜かれる過程で第1位置に戻らない。移動部材36は、第1位置において、鍵穴31の少なくとも一部を覆ってもよい。そして、移動部材36は、挿入部材が鍵穴31に挿入されることにより押されることで、鍵穴31の少なくとも一部を覆う第1位置から第1位置より広く鍵穴を露出させる第2位置へ移動してよい。移動部材36は、例えば、挿入部材により押されることで、鍵穴31に対して垂直方向下方に移動する。移動部材36は、挿入部材が挿入されることで押されることで、鍵穴31を完全に露出してよい。移動部材36は、共通鍵50または固有鍵60が鍵穴31に挿入されることを妨げない範囲で鍵穴31を露出させる位置を第2位置として移動してよい。
【0026】
ここで、移動部材36は、第1位置から第2位置に移動した後、共通鍵50などの挿入部材が鍵穴31から抜かれる過程で元の位置には戻らない。つまり、移動部材36は、一度第2位置に移動すると、第1位置には戻らない。移動部材36は、第2位置に移動した後は、第2位置に留まってもよい。
【0027】
上記ように、鍵穴31に挿入可能な挿入部材が挿入されると移動部材36は、第1位置から第2位置に移動して、第1位置には戻らない。したがって、移動部材36が第1位置から移動しているか否かを確認することで、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されたことを把握できる。移動部材36が第1位置において鍵穴31の少なくとも一部を覆っている場合には、移動部材36が鍵穴31の少なくとも一部を覆っているか否かを確認することで、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されていないことを把握できる。これにより、本実施形態に係るシリンダ錠10によれば、設置前にシリンダ錠10が開錠された可能性があれば、遊技機に不正が行われている可能性があることを容易に把握できる。よって、遊技機に対して不正に部品交換が行われたことを気づかずに、その遊技機がホールで利用されることを防止できる。
【0028】
図2は、シリンダ錠10の分解斜視図の一例を示す図である。シリンダ錠10は、外筒20、内筒30、第1仕切盤33、表示盤34、第2仕切盤35、移動部材36、リセットボタン40、および背面カバー24を備える。
【0029】
外筒20は、正面に開口23および表示窓26を有する。外筒20には、取り付けフランジ22が一体的に形成されている。シリンダ錠10は、取り付けフランジ22を介して遊技機などが有する錠取付部材に形成された取付穴に設置される。
【0030】
内筒30は、鍵穴31を含む。内筒30は、鍵の回転に応じて外筒20の中心軸を中心に回転する。背面カバー24は、内筒30の出力軸32を外部に露出した状態で、内筒30の背面を覆う。出力軸32は、外部の施錠ユニットと機械的に連結される。出力軸32が回転することに応じて施錠ユニットが施錠対象の開錠および施錠を行う。
【0031】
ユーザは、共通鍵50のキーコードに設定されているシリンダ錠10に対して、共通鍵50、または固有鍵60を用いて、シリンダ錠10の開錠または施錠を行うことができる。ユーザは、キーコードをリセットする場合、例えば、リセットボタン40を中心軸と垂直な方向下方に押下しながら、共通鍵50を用いて、キーコードをリセットさせるためのリセット位置に内筒30を回転させる。リセット位置に内筒30を回転させた後、ユーザは、鍵穴31に新たな固有鍵60を挿入して、内筒30を再び施錠位置まで回転させることで、シリンダ錠10のキーコードを新たな固有鍵60に固有のキーコードに変更することができる。
【0032】
表示窓26は、開錠可能な鍵が共通鍵50の場合、第1表示態様を表示する。表示窓26は、開錠可能な鍵が固有鍵60の場合、第2表示態様を表示する。さらに、表示窓26は、鍵穴31に共通鍵50などの挿入部材が一度も挿入されていない未使用状態の場合、第3表示態様を表示する。第1表示態様、第2表示態様、および第3表示態様は、シリンダ錠10の現在の状態が目視で確認できる態様であれば、どのような態様でもよい。第1表示態様、第2表示態様、および第3表示態様は、例えば、色、模様などの違いにより区別されてもよい。例えば、第1表示態様は「赤」、第2表示態様は「黒」、第3表示態様は「青」で示されてよい。
【0033】
移動部材36は、外筒20内に移動可能に収容される。移動部材36は、鍵穴31の少なくとも一部を覆う第1位置にある場合、第3表示態様を示す第3表示領域として表示窓26を介して目視可能に露出される。つまり、シリンダ錠10が、鍵穴31に共通鍵50などの挿入部材が一度も挿入されていない未使用状態の場合、表示窓26から移動部材36が第3表示態様として目視可能に露出されている。移動部材36は、挿入部材が鍵穴31に挿入される過程で、挿入部材に押されることにより、例えば、中心軸に対して垂直方向下方の第2位置に移動して、表示窓26から目視可能に露出されなくなる。
【0034】
なお、本実施形態では、移動部材36は、鍵穴31の垂直方向下方に移動する例について説明する。しかし、移動部材36は、他の方向に移動してよい。移動部材36は、鍵穴31の垂直方向上方に移動してもよい。あるいは、移動部材36は、鍵穴31の水平方向に移動してもよい。
【0035】
第2仕切盤35は、外筒20内の表示盤34と移動部材36との間に回転不可能に収容される。第2仕切盤35は、透明または半透明な光透過部材により形成されてよい。第2仕切盤35は、表示盤34の回転に伴い移動部材36が移動することを防止する。第1仕切盤33は、外筒20内の表示盤34と内筒30との間に回転不可能に収容される。第1仕切盤33は、内筒30の回転に伴い表示盤34が回転することを防止する。
【0036】
表示盤34は、移動部材36が第2位置にある場合、その一部が表示窓26から目視可能に露出され、開錠可能なキーコードを有する現在の鍵の種類を提示する。表示盤34は、開錠可能な鍵が共通鍵50である第1表示態様を示す第1表示領域37および第1表示態様とは異なる、開錠可能な鍵が固有鍵60である第2表示態様を示す第2表示領域38を含む。
【0037】
表示窓26は、移動部材36が第2位置にあり、開錠可能である鍵が共通鍵50である場合、第1表示領域の少なくとも一部を第1表示態様として目視可能に露出する。表示窓26は、移動部材36が第2位置にあり、開錠可能である鍵が固有鍵60である場合、第2表示領域の少なくとも一部を第2表示態様として目視可能に露出する。なお、本実施形態では、移動部材36が第2位置に移動した後、表示窓26から目視可能に露出されなくなる。しかし、移動部材36が第2位置に移動した後、移動部材36が表示窓26から完全に目視できない状態まで移動しなくてもよい。移動部材36は、第1位置にある場合よりも表示窓26から目視しにくくなる程度に移動するだけでもよい。つまり、移動部材36が第2位置に移動した後も、表示窓26から、表示盤34に含まれる第1表示領域37または第2表示領域38とともに、移動部材36の一部が目視可能に露出されていてもよい。
【0038】
表示盤34は、切り欠き部39を有する。鍵穴31に挿入されている鍵が共通鍵50である場合、共通鍵50の回転経路上に切り欠き部39が介在する。よって、共通鍵50が回転すると、切り欠き部39を介して表示盤34が回転する。一方、鍵穴31に挿入されている鍵が固有鍵60である場合、固有鍵60の回転経路上に切り欠き部39が介在しない。よって、固有鍵60が回転しても、表示盤34は回転しない。
【0039】
図3は、移動部材36が第1位置にある場合のシリンダ錠10を正面から見た図である。図3では、移動部材36の全体を実線で描いている。しかし、実際には、移動部材36が第1位置にある場合、移動部材36の一部のみが、外筒20の開口23から露出している状態である。
【0040】
移動部材36は、第1位置にある場合、外筒20の内壁のうち鍵穴31から水平方向にある部分で支持され、かつ外筒の内壁のうち鍵穴31から垂直方向にある部分と離間している。移動部材36は、外筒の内壁のうち鍵穴31から垂直方向下方にある部分と離間していてよい。なお、水平方向は、第1方向の一例であり、垂直方向は、第1方向とは異なる第2方向の一例である。また、移動部材36の形状は、図3に示す形状には限定されない。外筒20または内筒30の形状、表示窓26の有無などによって適宜変形されてよい。また、移動部材36は、板状部材でなくてもよい。鍵穴31の一部を覆う状態から、鍵穴31に挿入される挿入部材の挿入過程で挿入部材により押されて、鍵穴31をより広く露出する状態、あるいは共通鍵50または固有鍵60の挿入経路から待避する状態に移動可能な部材であれば、ブロック状の部材など他の形状の部材でもよい。
【0041】
外筒20の内壁のうち鍵穴31から水平方向には、第1凹部27が形成されており、移動部材36は、第1位置にある場合、第1凹部27に係止されてよい。
【0042】
移動部材36は、第1位置にある場合、鍵穴31の一部を覆い、かつ表示窓26を介して、目視可能に露出されている。この状態で、鍵穴31に共通鍵50などの挿入部材が挿入されると、鍵穴31に挿入部材が挿入される過程で移動部材36は垂直方向下方に押されて、第1凹部27からはずれて第1位置から垂直方向である第2方向にある第2位置に移動する。外筒20の内壁のうち第1凹部27の垂直方向下方には、第2凹部28が形成されており、移動部材36が第2位置に移動すると、移動部材36は、第2凹部28に係止される。
【0043】
ここで、移動部材36は、シリンダ錠10の開錠または施錠を行う共通鍵50または固有鍵60以外の挿入部材により、第1位置から第2位置に移動されてよい。移動部材36は、シリンダ錠10の使用を開始する前に、専用の初期操作治具を用いて、第1位置から第2位置に移動されてよい。
【0044】
図4は、初期操作治具70がシリンダ錠10の鍵穴31に挿入される様子を示すシリンダ錠10の斜視図の一例を示す。図5は、初期操作治具70がシリンダ錠10の鍵穴31に挿入される様子を示すシリンダ錠10の断面図の一例を示す。図6は、初期操作治具70がシリンダ錠10の鍵穴31に挿入された状態を示す断面図の一例を示す。
【0045】
初期操作治具70は、移動部材36を垂直方向下方に押しやすくするための傾斜部74が形成された挿入部72を有する。初期操作治具70が鍵穴31に挿入される過程で、移動部材36が傾斜部74により垂直方向下方に押され、図6に示すように、移動部材36は第1位置から第2位置に移動する。
【0046】
図7は、移動部材36が第2位置にある場合のシリンダ錠10を表面から見た図である。図7では、移動部材36の全体を実線で描いている。しかし、実際には、移動部材36は、外筒20の開口23および表示窓26から目視可能に露出されていない。
【0047】
移動部材36は、鍵穴31に挿入部72などの挿入部材が挿入される過程で、垂直方向下方に押されて、第1位置から第2位置に移動し、第2凹部28に係止される。これにより、鍵穴31が移動部材36により覆われなくなり、表示窓26から表示盤34が目視可能に露出される。移動部材36は、挿入部材が抜かれる過程で、第1位置には戻らない。移動部材36は、挿入部材が抜かれる過程で、第2位置に留まる。
【0048】
表示窓26から移動部材36が目視可能に露出されず、表示盤34が目視可能に露出されている場合には、鍵穴31に挿入部材が挿入され、シリンダ錠10の開錠操作が少なくとも1回、行われた可能性があることを示す。よって、流通過程などにおいて不正にシリンダ錠10が開錠されたことを把握できる。遊技機を設置前にシリンダ錠10が開錠された可能性があれば、遊技機に不正が行われている可能性があることを容易に把握できる。よって、遊技機の部品交換が不正に行われたことに気付かず、その遊技機がホールで利用されることを防止できる。
【0049】
図8は、移動部材36が第2位置にある場合に、共通鍵50が鍵穴31に挿入される様子を示すシリンダ錠10の断面図の一例を示す。図9は、移動部材36が第2位置にある場合に、共通鍵50が鍵穴31に挿入された状態を示すシリンダ錠10の断面図の一例を示す。
【0050】
図8に示すように、移動部材36が第2位置にある場合、移動部材36は、共通鍵50の挿入経路上から待避している。よって、移動部材36は、共通鍵50の鍵穴31への挿入を妨げない。なお、図9に示すように、共通鍵50の挿入部52には、図2に示す表示盤34の切り欠き部39に対応する位置に凸部54が形成されている。そして、共通鍵50が回転する場合、凸部54が表示盤34の切り欠き部39に接触して、表示盤34が回転する。
【0051】
図10は、移動部材36が第2位置にある場合に、固有鍵60が鍵穴31に挿入される様子を示すシリンダ錠10の断面図の一例を示す。図11は、移動部材36が第2位置にある場合に、固有鍵60が鍵穴31に挿入された状態を示すシリンダ錠10の断面図の一例を示す。
【0052】
図10に示すように、移動部材36が第2位置にある場合、移動部材36は、固有鍵60の挿入経路上から待避している。よって、移動部材36は、固有鍵60の鍵穴31への挿入も妨げない。
【0053】
以上、本実施形態に係るシリンダ錠10によれば、移動部材36の状態を確認することで、シリンダ錠10の鍵穴31に少なくとも一回、なんらかの挿入部材が挿入されたことを把握できる。したがって、設置前にシリンダ錠10が開錠された可能性があれば、遊技機に不正が行われている可能性があることを容易に把握できる。よって、遊技機に対して不正に部品交換が行われたことを気づかずに、その遊技機がホールで利用されることを防止できる。
【0054】
シリンダ錠10が使用されたかどうかを確認するための手法として、鍵穴31を覆うように未開封シール、封印シールなどと称されるシールを貼っておくことも考えられる。しかし、このようなシールは、比較的に容易に入手できる場合もある。したがって、シリンダ錠10が開けられた後に、新しいシールが貼り付けられることで、不正に気づかない可能性がある。一方、本実施形態に係るシリンダ錠10によれば、移動部材36は、第2位置に移動してしまうと、外筒20の内部に収まってしまうので、元の位置に戻すのは困難である。したがって、上記のようなシールに比べて、不正行為をより見逃しにくくできる。
【0055】
なお、上記の実施形態では、移動部材36は、第1位置にある場合、鍵穴31の一部を覆うとともに、表示窓26から目視可能に露出しており、第2位置に移動すると、鍵穴31を覆わず、表示窓26から目視可能に露出されなくなる例について説明した。言い換えれば、上記の実施形態では、表示窓26の表示態様を確認することで、シリンダ錠10の鍵穴31に少なくとも一回、なんらかの挿入部材が挿入されたことを確認できる例について説明した。しかし、移動部材36の位置によって、表示窓26に表示されている態様を変化させなくてもよい。移動部材36は、例えば、第1位置にある場合、鍵穴31の一部を覆うだけで、表示窓26から目視可能に露出されていなくてもよい。そして、第2位置に移動すると、移動部材36が鍵穴31を覆わなくなるだけでよい。この場合、ユーザは、例えば、鍵穴31から移動部材36が目視可能に露出しているか否かを確認することで、シリンダ錠10の鍵穴31に少なくとも一回、なんらかの挿入部材が挿入されたことを把握してよい。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0057】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0058】
10 シリンダ錠
20 外筒
22 取り付けフランジ
23 開口
24 背面カバー
26 表示窓
27 第1凹部
28 第2凹部
30 内筒
31 鍵穴
32 出力軸
33 第1仕切盤
34 表示盤
35 第2仕切盤
36 移動部材
37 第1表示領域
38 第2表示領域
39 切り欠き部
40 リセットボタン
50 共通鍵
52 挿入部
60 固有鍵
70 初期操作治具
72 挿入部
74 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11