(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ボルトヘッドの外形線は、前記短軸に平行でありかつ中心部に対して互いに反対側に配置される一対の第1辺及び第4辺と、前記長軸に対して斜めであり中心部に対して互いに反対側に配置されて互いに平行な一対の第2辺及び第5辺と、前記第2辺及び前記第5辺と前記長軸に対して線対称の位置に配置される一対の第3辺及び第6辺とを有する
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の車両用レールの取付構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロアレール内に異物が入り込むことがある。異物が小さいときはアッパレールの移動によってロアレールから外側に運び出されるが、異物が大きいときは、この異物が締結ボルトのボルトヘッドとアッパレールの端部との間に挟まってしまうことがある。この場合、アッパレールの移動範囲が制限される。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロアレール内に異物が残留することを抑制することができる車両用レールの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決する車両用レールの取付構造は、車両フロアにブラケットを介して取り付けられるロアレールと、前記ロアレールに対して摺動可能に配置されるアッパレールとを備え、前記ロアレールと前記ブラケットとは締結ボルトにより互いに接続され、前記締結ボルトのボルトヘッドは、
平面視で、長手方向と短手方向とを有する形状をなすとともに、前記ボルトヘッドは、平面視で、前記締結ボルトの軸中心を通る前記ボルトヘッドの長手方向に延びる仮想線を長軸、前記締結ボルトの軸中心を通る前記ボルトヘッドの短手方向に延びる仮想線を短軸とした場合に、前記ボルトヘッドの外形線
が、前記短軸と交わる第1点から前記長軸と交わる第2点に至るまでの区間の少なくとも一部分において、前記第1点から前記第2点に向かうにつれて前記長軸に近づくように形成され
ており、
前記締結ボルトを前記ロアレールに取り付けた状態での前記ボルトヘッドの前記長軸が前記ロアレールの長手方向に沿う前記ボルトヘッドの配置を第1配置とするとともに、前記締結ボルトを前記ロアレールに取り付けた状態での前記ボルトヘッドの長軸と前記ロアレールの長手方向とのなす角度の最大角度が所定角度に設定され、前記最大角度となる前記ボルトヘッドの配置を第2配置とした場合に、前記ボルトヘッドは、前記締結ボルトを前記ロアレールに取り付けた状態での前記ボルトヘッドの配置が前記第1配置と前記第2配置を含む両配置の間の範囲内となっており、前記第2配置における
前記ロアレールの長手方向に垂直な方向の前記ボルトヘッドの占有幅が、前記第1配置における
前記ロアレールの長手方向に垂直な方向の前記ボルトヘッドの占有
幅よりも小さいかまたは等しくなるように、形成されている
。
【0008】
上記構成によれば、ロアレールにおけるボルトヘッドの占有幅が所定幅以下となる。これにより、ボルトヘッドとロアレールの外側壁との間の離間距離が所定距離よりも大きくなるため、異物が排出されやすくなる。このため、ロアレール内に異物が残留することが抑制される。
【0009】
(2)上記車両用レールの取付構造において、前記ロアレールは、底壁と、前記底壁の両端それぞれに突出するように設けられて長手方向に延長する一対の外側壁を有し、前記アッパレールは、上壁と、前記上壁の両端それぞれに突出するように設けられて前記ロアレールに挿通する一対の挿通壁と、前記挿通壁のそれぞれから延びて前記ロアレールの前記外側壁に面する一対の摺動壁とを有し、前記ボルトヘッドの短軸長が、前記アッパレールの前記一対の挿通壁間の寸法よりも短く、前記アッパレールの前記一対の挿通壁間に前記ボルトヘッドが配置され、かつ、前記アッパレールの下端部が前記ボルトヘッドの上面よりも前記ロアレールの底壁側に配置される。
【0010】
この構成によれば、アッパレールの一対の挿通壁間内にボルトヘッドが配置されず、このためにアッパレールの下端部がロアレールの底壁からボルトヘッドの上面位置よりも遠くに配置されるスライド装置に比べて、スライド装置の高さを低くすることができる。
【0011】
(3)上記車両用レールの取付構造において、前記ボルトヘッドの底面には、溶接用突起が設けられ、前記ボルトヘッドは、前記溶接用突起を介して前記ロアレールに溶接され、前記ボルトヘッドは、前記外形線の少なくとも一部分において短軸方向に直線に延びる直線部を有する。
【0012】
この構成によれば、ボルトヘッドの直線部に治具を押し当てて、ロアレールに対するボルトヘッドの向きを精確に定めることができる。このため、ロアレールに対するボルトヘッドの向きが取付誤差範囲内の角度となるように、締結ボルトを位置決めすることが容易になる。
【0013】
(4)上記車両用レールの取付構造において、前記ボルトヘッドは、前記直線部において、前記ボルトヘッドの底面に対して垂直または設定角度で延びる側面を有する。
この構成によれば、ボルトヘッドの直線部の側面に治具を安定した状態で押し当てることができる。
【0014】
(5)上記車両用レールの取付構造において、前記溶接用突起は、前記ボルトヘッドの底面に少なくとも2つ設けられ、前記長軸に沿ってかつねじ部に対して互いに反対側に配置される。この構成によれば、締結ボルトが強固にロアレールに固定される。
【0015】
(6)上記車両用レールの取付構造において、前記ボルトヘッドは、前記長軸に沿って傾斜するテーパ面を有する。この構成によれば、ロアレール内に入り込んだ異物がボルトヘッドを容易に乗り越えることができるようになる。このため、ロアレール内に異物が残留することが抑制される。
【0016】
(7)上記車両用レールの取付構造において、前記ボルトヘッドの外形線は、前記短軸に平行でありかつ中心部に対して互いに反対側に配置される一対の第1辺及び第4辺と、前記長軸に対して斜めであり中心部に対して互いに反対側に配置されて互いに平行な一対の第2辺及び第5辺と、前記第2辺及び前記第5辺と前記長軸に対して線対称の位置に配置される一対の第3辺及び第6辺とを有する。
【0017】
この構成によれば、ボルトヘッドが長軸に対して線対称構造を有するため、目視により、ロアレールの長手方向とボルトヘッドの長軸とを一致させやすい。このようなことから、ロアレールに締結ボルトを固定する際の取付作業性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
上記車両用レールの取付構造は、ロアレール内の異物が残留することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜
図8を参照して、車両用レールの取付構造について説明する。
図1に、車両フロア1に取り付けられた車両用シートを示す。
車両用シート(以下、「シート2」と称す。)は、座面を構成するシートクッション3と、背もたれを構成するシートバック4とを備える。シート2は、2本のスライド装置5を介して車両フロア1に取り付けられる。スライド装置5のそれぞれは、シート2の両端部に互いに平行にかつ車両の前後方向に沿うように配置される。
【0021】
図2に、スライド装置5の斜視図を示す。
スライド装置5は、ブラケット30を介して車両フロア1に固定されるロアレール10と、ロアレール10に摺動可能に配置されるアッパレール20とを備える。アッパレール20は、取付部材6を介してシートクッション3の底部に取り付けられる。これらレール(ロアレール10及びアッパレール20)は金属板により形成される。
【0022】
図3を参照して、ロアレール10とアッパレール20との摺接構造を説明する。
ロアレール10は、底壁11と、底壁11の幅方向両側から略垂直方向に延びる一対の外側壁12と、外側壁12それぞれの端部(底壁11の反対側の端部)から内方向に折り返された折曲部13と、折曲部13から延長して底壁11に向かって延びる内側壁14とを有する。
【0023】
アッパレール20は、上壁21と、上壁21の幅方向両側から略垂直方向に延びてロアレール10に挿通する一対の挿通壁22と、挿通壁22の端部(上壁21の反対側の端部)から外方向に折り返された下端部23と、下端部23から延びてロアレール10の外側壁12に面する摺動壁24とを有する。
【0024】
摺動壁24は、下端部23から外方向かつ上壁21側に向かって延びる第1屈曲部25と、第1屈曲部25の端部から挿通壁22側にかつ上壁21側に向かって延びる第2屈曲部26とを有する。
【0025】
アッパレール20の一対の挿通壁22は、ロアレール10の一対の内側壁14の間に挿通され、一方の挿通壁22が一方の内側壁14に、他方の挿通壁22が他方の内側壁14にそれぞれ対向するように配置される。
【0026】
アッパレール20の第1屈曲部25及び第2屈曲部26は、ロアレール10の外側壁12と内側壁14との間に配置される。アッパレール20の第1屈曲部25とロアレール10の外側壁12(底壁11側)との間、及びアッパレール20の第2屈曲部26とロアレール10の外側壁12(折曲部13側)との間には転動部材28が配置される。このような構造により、アッパレール20がロアレール10に対して摺動可能とされる。
【0027】
なお、アッパレール20の一対の挿通壁22間には締結ボルト40のボルトヘッド42が配置される。そして、アッパレール20の下端部23が、ボルトヘッド42の上面47よりもロアレール10の底壁11側に位置するように、アッパレール20がロアレール10に対して配置される。
【0028】
次に、車両フロア1に対するロアレール10の固定構造を説明する。
図2に示すように、ロアレール10は2個のブラケット30で車両フロア1に固定される。ブラケット30は、貫通孔33が形成された下端部31と、貫通孔34(
図3参照)が形成された上端部32とを有する。
【0029】
ブラケット30の下端部31は、貫通孔33に挿通する締結ボルト(図示省略)により車両フロア1に締結される。
ブラケット30の上端部32は、貫通孔34に挿通する締結ボルト40によりロアレール10の底壁11に締結される。具体的には、次に示すように、ブラケット30とロアレール10とが締結される。ロアレール10の底壁11には、締結ボルト40が挿通する貫通孔15(
図3参照)が設けられている。貫通孔15はロアレール10の幅方向中間部に形成されている。この貫通孔15に締結ボルト40が挿通される。締結ボルト40とロアレール10の底壁11とはプロジェクション溶接により固定される。締結ボルト40は、ブラケット30の上端部32の貫通孔34に挿通され、ブラケット30の裏面側からナット50が締め付けられる。このようにして、ロアレール10とブラケット30とが締結される。
【0030】
図4〜
図7を参照して、ブラケット30とロアレール10とを締結する締結ボルト40の構造を説明する。
締結ボルト40について、
図4(a)に平面図を示し、
図4(b)に底面図を示す。
図5(a)及び
図5(b)にその側面図を示す。
図6(a)にはボルトヘッド42の第1配置を示し、
図6(b)にはボルトヘッド42の第2配置を示す。
図7は、
図2のD−D線に沿った断面図である。
図7は、締結ボルト40の向きを示す。
【0031】
締結ボルト40は、ねじ部41とボルトヘッド42とを備える。
図4に示すように、ボルトヘッド42は、平面視で、縦幅と横幅とが異なる平面構造を有する。すなわち、ボルトヘッド42は短軸LSと長軸LLとを有する。
【0032】
ボルトヘッド42の短軸長DLS(短軸LSに沿う長さ。)は、上述したようにアッパレール20の一対の挿通壁22間に締結ボルト40のボルトヘッド42が配置されうるように、アッパレール20の一対の挿通壁22間の寸法(「挿通壁間寸法LD」と称す。)よりも短い長さに設定される。ボルトヘッド42の長軸長DLL(長軸LLに沿う長さ。)は、アッパレール20の挿通壁間寸法LDよりも長くなるように設定される。これは次の理由による。強度確保のため、ねじ部41の直径は、アッパレール20の挿通壁間寸法LDよりも若干小さい寸法に設定される。このため、ボルトヘッド42の短軸方向には寸法の余裕がなく、長軸方向に沿って後述の溶接用突起48が設けられる。このようなことから、ボルトヘッド42の長軸長DLLは、アッパレール20の挿通壁間寸法LDよりも長くなる。
【0033】
ボルトヘッド42の外形線LVは、外形線LVと短軸LSとが交わる第1点PAから外形線LVと長軸LLと交わる第2点PBに至るまでの区間の少なくとも一部分において、第1点PAから第2点PBに向かうに従って長軸LL側に近づく。
【0034】
また、ボルトヘッド42の外形線LVは、短軸方向に直線部(すなわち、短軸LSに平行な直線要素)を含む。このような直線部があれば、治具によってボルトヘッド42の向きを精確に定めることができるからである。
【0035】
例えば、
図4に示されるように、ボルトヘッド42は、平面視で、六角形に形成される。ボルトヘッド42の外形線LVは、第1辺〜第6辺42a〜42fにより構成される。
第1辺42a及び第4辺42dそれぞれは、短軸LSに平行であり、中心部に対して互いに反対側に配置される。なお、第1辺42a及び第4辺42dは、上述の直線部に相当する。
【0036】
第2辺42b及び第5辺42eそれぞれは、短軸LSから離れるに従って長軸LLに近づく斜めの直線であり、中心部に対して互いに反対側にかつ互いに平行に配置される。
第3辺42c及び第6辺42fそれぞれは、短軸LSから離れるに従って長軸LLに近づく斜めの直線であり、中心部に対して互いに反対側にかつ互いに平行に配置される。更に、第3辺42c及び第6辺42fは、長軸LLを対称軸として第2辺42b及び第5辺42eに対して線対称にそれぞれ形成されている。
【0037】
図4(a)及び
図5(a)に示されるように、ボルトヘッド42には、第1辺42aから中心部に向って傾斜するテーパ面44と、第4辺42dから中心部に向かって傾斜するテーパ面45とが設けられている。
【0038】
図5(b)に示されるように、ボルトヘッド42は、第1辺42a〜第6辺42fそれぞれにおいて、ボルトヘッド42の底面43に対して垂直または設定角度で延びる側面46を有する。設定角度は、例えば、90度に近い値に設定される。
【0039】
図4(b)及び
図5(a)に示されるように、ボルトヘッド42の底面43には、この底面43から突出する溶接用突起48が設けられている。
溶接用突起48は、長軸LLに沿ってかつねじ部41に対して互いに反対側の2箇所に設けられている。
【0040】
図6(a)及び
図6(b)を参照して、ボルトヘッド42の外形線LVについて説明する。
ボルトヘッド42は次の条件を満たすことが好ましい。すなわち、ボルトヘッド42の外形線LVは、第2配置におけるボルトヘッド42の占有幅WSが、第1配置におけるボルトヘッド42の占有幅WSによりも小さいかまたは等しくなるように、形成されることが好ましい。
【0041】
第1配置とは、
図6(a)に示すように、ボルトヘッド42の長軸LLが基準線LXに沿うようにされた配置を示す。基準線LXは、第1配置と次に示す第2配置との関係を規制するための便宜上の線である。
【0042】
第2配置とは、
図6(b)に示すように、ボルトヘッド42を第1配置から取付誤差範囲内の最大角度θmaxまで回転させたときの配置を示す。取付誤差範囲とは、予め設定される角度範囲を示す。取付誤差範囲は、ロアレール10に締結ボルト40を固定するときに生じうるボルトヘッド42の配置角度ばらつきに基づいて設定される。例えば、取付誤差範囲は「±A度」のように設定される。「A」は最大角度θmaxを示す。
【0043】
占有幅WSとは、第1配置または第2配置に置かれたボルトヘッド42について、基準線LXに対して垂直な方向の幅を示す。
上記条件を満たすボルトヘッド42の外形構造によれば、ボルトヘッド42が取付誤差範囲内の角度で配置されるように締結ボルト40がロアレール10に取り付けられたとすると、ロアレール10の幅方向DBにおけるボルトヘッド42が占める幅(占有幅WS)は所定幅以下になる(
図7参照)。
図4に示されるようにボルトヘッド42の外形が六角形である場合は、ロアレール10の幅方向DBにおけるボルトヘッド42が占める幅(占有幅WS)はボルトヘッド42の短軸長DLS以下の長さになる。以降の説明では、このようなボルトヘッド42の外形構造を「占有幅一定構造」と称す。
【0044】
図7を参照して、締結ボルト40の配置構造について説明する。
締結ボルト40は、ボルトヘッド42の長軸方向とロアレール10の長手方向DAとのなす角が取付誤差範囲内(例えば、「±A度」)となるように配置される。
【0045】
この配置によれば、上記に示したボルトヘッド42の占有幅一定構造と相俟って、ロアレール10の幅方向DBにおけるボルトヘッド42の占有幅WSが所定幅(具体的には短軸長DLS)以下の長さになる。すなわち、ボルトヘッド42とロアレール10の外側壁12との間の離間距離LAが所定距離よりも大きくなる。
【0046】
図8を参照して、参考例と比較して、車両用レールの取付構造の作用を説明する。
図8(a)に、第1の参考例に係る車両用レールの取付構造を示す。この車両用レールの取付構造では、円形のボルトヘッド142を有する締結ボルト140により、ロアレール10とブラケット30とが締結される。ボルトヘッド142の直径は、本実施形態に係るボルトヘッド42の長軸長DLL(
図7参照)と等しく、アッパレール20の挿通壁間寸法LDよりも長い。これは、ボルトヘッド142に溶接用突起48が配置されているためである。ボルトヘッド142はロアレール10に2箇所で溶接されているものとする。この場合、ロアレール10とブラケット30との締結強度は本実施形態に係るボルトヘッド42の締結強度と略等しい。しかし、次のような問題が生じる。
【0047】
この車両用レールの取付構造では、
図8(a)に示すように、ボルトヘッド142の一部がアッパレールガイド部27(挿通壁22と下端部23と摺動壁24を含む部分)の軌跡領域AR内に入るようになる。
【0048】
このため、ロアレール10の外側壁12とアッパレール20の挿通壁22との間の間隔距離LBと略等しい幅長さを有する異物100がロアレール10内に入り込んだとすると、異物100はアッパレール20の移動に伴ってロアレール10の外側に運ばれるが、ロアレール10の端部まで運ばれたときにボルトヘッド142に当接するようになる。異物100は、ロアレール10の移動の勢いにより異物100がボルトヘッド142を越えて排出されることもあるが、ロアレール10とボルトヘッド142との間に異物100が挟まって異物100が排出されない場合もある。
【0049】
図8(b)に、第2の参考例に係る車両用レールの取付構造を示す。この車両用レールの取付構造では、矩形のボルトヘッド242を有する締結ボルト240により、ロアレール10とブラケット30とが締結される。ボルトヘッド242の長辺は、本実施形態に係るボルトヘッド42の長軸長DLL(
図7参照)と等しく、ボルトヘッド242の短辺は、本実施形態に係るボルトヘッド42の短軸長DLS(
図7参照)と等しい。すなわち、ボルトヘッド242の長軸LLとロアレール10の長手方向DAとを一致させるように締結ボルト240を配置したときに、ボルトヘッド242がアッパレールガイド部27の軌跡領域AR内に入らないように構成されている。また、ボルトヘッド242はロアレール10に2箇所で溶接されているものとする。この場合、ロアレール10とブラケット30との締結強度は本実施形態に係るボルトヘッド42の締結強度と略等しい。しかし、次のような問題が生じる。
【0050】
ボルトヘッド242の角度が取付誤差範囲の最大角度θmaxとなるように締結ボルト240がロアレール10に取り付けられた場合、取付誤差が0度である場合に比べて、ロアレール10の幅方向におけるボルトヘッド242の占有幅WSが拡大する。このため、ボルトヘッド242の一部がアッパレールガイド部27の軌跡領域AR内に入る場合がある。特に、ボルトヘッド242の短辺がアッパレール20の挿通壁間寸法LDと略等しいときには、ボルトヘッド242の一部がアッパレールガイド部27の軌跡領域AR内に入る可能性が高くなる。
【0051】
このため、ロアレール10の外側壁12とアッパレール20の挿通壁22との間の間隔距離LBと略等しい幅長さを有する異物100がロアレール10内に入り込んだとすると、異物100は、アッパレール20の移動に伴ってロアレール10の外側に運ばれるが、ロアレール10の端部まで運ばれたときにボルトヘッド242に当接するようになる。このようなことから、ロアレール10とボルトヘッド242との間に異物100が挟まって異物100が排出されないといった事態が生じえる。
【0052】
図8(c)に、本実施形態に係る車両用レールの取付構造を示す。
ボルトヘッド42はロアレール10に2箇所で溶接されるため、ロアレール10とブラケット30との締結強度は上記2つの参考例に係るボルトヘッド42の締結強度と略等しい。
【0053】
本実施形態に係る車両用レールの取付構造では、ボルトヘッド42が占有幅一定構造を有するため、ボルトヘッド42の角度が取付誤差範囲の最大角度θmaxとなるように締結ボルト40がロアレール10に取り付けられたとしても、
図8(c)に示すように、ボルトヘッド42がアッパレールガイド部27の軌跡領域AR外に位置する。すなわち、アッパレールガイド部27の軌跡領域ARには異物100の移動の障害となるようなものが存在しない。
【0054】
このため、参考例と同様に、ロアレール10の外側壁12とアッパレール20の挿通壁22との間の間隔距離LBと略等しい幅長さを有する異物100がロアレール10内に入り込んだとしても、ロアレール10の移動に伴って異物100が排出されるようになる。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態に係る車両用レールの取付構造は、次の効果を奏する。
(1)車両用レールの取付構造では、ボルトヘッド42は次の構成を有する。
【0056】
ボルトヘッド42の外形線LVは、短軸LSと交わる第1点PAから長軸LLと交わる第2点PBに至るまでの区間の少なくとも一部分において、第1点PAから第2点PBに向かうにつれて長軸LL側に近づくように形成されている。更に、ボルトヘッド42は、ボルトヘッド42の長軸LLが基準線LXに沿う第1配置と、第1配置から取付誤差範囲の最大角度θmaxまで回転させたときの第2配置との関係において、次のように構成される。すなわち、第2配置における基準線LXに垂直な方向のボルトヘッド42の占有幅WSが、第1配置における基準線LXに垂直な方向のボルトヘッド42の占有幅WSによりも小さいか、または等しくなるように、ボルトヘッド42が形成される。すなわち、ボルトヘッド42は「占有幅一定構造」を有する。
【0057】
そして、締結ボルト40のボルトヘッド42は、その長軸方向とロアレール10の長手方向DAとのなす角(角度)が取付誤差範囲内となるように、ロアレール10に対して配置される。
【0058】
この構成によれば、ロアレール10におけるボルトヘッド42の占有幅WSが所定幅以下となる。これにより、ボルトヘッド42とロアレール10の外側壁12との間の離間距離LAを所定距離よりも大きくなるため、異物100が排出されやすくなる。
【0059】
(2)上記実施形態では、ロアレール10は、底壁11と、底壁11の両端それぞれに突出するように設けられて長手方向DAに延長する一対の外側壁12を有する。アッパレール20は、上壁21と、ロアレール10に挿通する一対の挿通壁22と、挿通壁22のそれぞれから延びてロアレール10の外側壁12に面する一対の摺動壁24とを有する。そして、ボルトヘッド42の短軸長DLSが、アッパレール20の一対の挿通壁22間の寸法(挿通壁間寸法LD)よりも短くなるように設定され、アッパレール20の一対の挿通壁22間にボルトヘッド42が配置され、かつ、アッパレール20の下端部23がボルトヘッド42の上面47よりもロアレール10の底壁11側に配置される。
【0060】
この構成によれば、アッパレール20の一対の挿通壁22間内にボルトヘッド42が配置されず、このためにアッパレール20の下端部23がロアレール10の底壁11からボルトヘッド42の上面47位置よりも遠くに配置されるスライド装置5に比べて、スライド装置5の高さを低くすることができる。
【0061】
(3)上記実施形態では、ボルトヘッド42は、底面43に設けられた溶接用突起48を介してロアレール10に溶接される。ボルトヘッド42は、外形線LVの少なくとも一部分において短軸方向に直線に延びる直線部(第1辺42a,第4辺42d)を有することが好ましい。
【0062】
この構成によれば、ボルトヘッド42の直線部に治具を押し当てて、ロアレール10に対するボルトヘッド42の向きを精確に定めることができる。このため、ロアレール10に対するボルトヘッド42の向きが取付誤差範囲内の角度となるように、締結ボルト40を位置決めすることが容易になる。
【0063】
(4)上記実施形態では、ボルトヘッド42は、直線部(第1辺42a,第4辺42d)において、ボルトヘッド42の底面43に対して垂直または設定角度で延びる側面46を有する。
【0064】
この構成によれば、ボルトヘッド42の直線部の側面46に治具を安定した状態で押し当てることができる。これにより、ロアレール10に対する締結ボルト40の位置決めが容易になる。
【0065】
(5)上記実施形態では、溶接用突起48は、ボルトヘッド42の底面43に少なくとも2つ設けられ、長軸LLに沿ってかつねじ部41に対して互いに反対側に配置される。この構成によれば、締結ボルト40が強固にロアレール10に固定される。
【0066】
(6)上記実施形態では、ボルトヘッド42は、長軸LLに沿って傾斜するテーパ面44を有する。
この構成によれば、ロアレール10内に入り込んだ異物100がボルトヘッド42を容易に乗り越えることができるようになる。このため、ロアレール10内に異物100が残留することが抑制される。
【0067】
なお、テーパ面44は、
図5(a)に示されるように、ボルトヘッド42における長軸方向の両端それぞれから中央部に向かって傾斜するように形成されることが好ましい。長軸方向の一方にだけテーパ面44が形成されている場合は、テーパ面44がロアレール10の長手方向DAの内方側に配置されるようにボルトヘッド42を配置させる必要があるが、上記構成によれば、ボルトヘッド42の向きを考慮する必要がない。このため、締結ボルト40の取付作業性が向上する。
【0068】
(7)上記実施形態では、ボルトヘッド42の外形線LVは、次の6辺を有する六角形に形成される。
具体的には、第1辺42a及び第4辺42dは、短軸LSに平行でありかつ中心部に対して互いに反対側に配置される。
【0069】
第2辺42b及び第5辺42eは、長軸LLに対して斜めであり中心部に対して互いに反対側に互いに平行に配置される。
第3辺42c及び第6辺42fは、第2辺42b及び第5辺42eと長軸LLに対して線対称の位置に配置される。
【0070】
この構成によれば、ボルトヘッド42が長軸LLに対して線対称構造を有するため、目視により、ロアレール10の長手方向DAとボルトヘッド42の長軸LLとを一致させやすい。このようなことから、ロアレール10に締結ボルト40を固定する際の取付作業性が向上する。
【0071】
なお、上記実施形態は以下のように変更することができる。
・上記実施形態では、平面視で六角形の外形構造を有するボルトヘッド42の例を挙げているが、ボルトヘッド42の外形構造はこれに限定されない。例えば、ボルトヘッド42の外形構造は、ひし形、八角形、楕円形等に設定されうる。または、ボルトヘッド42の外形線LVは、直線と曲線とにより構成されうる。なお、上記したように、ボルトヘッド42の外形線LVに短軸LSに平行な直線部が含まれることが好ましい。
【0072】
・上記実施形態では、ボルトヘッド42の底面43に2個の溶接用突起48が設けられているが、溶接用突起48の個数は2個以上であればよい。例えば、ボルトヘッド42の底面43の4箇所に溶接用突起48が設けられうる。
【0073】
・上記実施形態では、ボルトヘッド42の外形構造に関する技術が、締結ボルト40がロアレール10に溶接される車両用レールの取付構造に適用されているが、本技術は、締結ボルト40の固定態様に関わらず適用されうる。すなわち、本技術は、溶接されない締結ボルト40にも適用される。