(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365099
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】尿素水の温度管理システム及び尿素水の温度管理方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20180723BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/24 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-162712(P2014-162712)
(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-37931(P2016-37931A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】今西 嶺浩
【審査官】
楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−090431(JP,A)
【文献】
特開2005−315206(JP,A)
【文献】
特開2008−101535(JP,A)
【文献】
特許第3686670(JP,B1)
【文献】
特開2011−241735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08〜 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガス中のNOxを浄化処理する際に還元剤として使用する尿素水を貯留する尿素水タンクに、加熱媒体を通過させることで貯留した尿素水を解凍又は保温する尿素水の温度管理システムにおいて、
前記尿素水タンクに供給する前記加熱媒体の流量を調整する流量制御弁を制御する制御装置が、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第1温度以下であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を100%にして常時開とし、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第2温度であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を予め設定された設定割合とし、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第3温度以上であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を0%にして常時閉とし、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、前記第1温度と前記第2温度との間であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を100%と前記設定割合の間の線形補間の時間割合とし、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、前記第2温度と前記第3温度との間であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を前記設定割合と0%の間の線形補間の時間割合とする制御を行うように構成されることを特徴とする尿素水の温度管理システム。
【請求項2】
前記加熱媒体がエンジン冷却水であり、前記第1温度がマイナス11℃以上0℃以下の範囲内に、前記第2温度が1℃以上2.5℃以下の温度範囲内に、前記第3温度が15℃以上20℃以下の温度範囲内に、それぞれ設定されると共に、前記設定割合が40%以上60%以下の範囲内に設定される請求項1に記載の尿素水の温度管理システム。
【請求項3】
内燃機関の排気ガス中のNOxを浄化処理する際に還元剤として使用する尿素水を貯留する尿素水タンクに、加熱媒体を通過させることで貯留した尿素水を解凍又は保温するとともに、前記尿素水タンクに供給する前記加熱媒体の流量を流量制御弁により調整する尿素水の温度管理方法において、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第1温度以下であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を100%にして常時開とし、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第2温度であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を予め設定された設定割合とし、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第3温度以上であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を0%にして常時閉とし、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、前記第1温度と前記第2温度との間であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を100%と前記設定割合の間の線形補間の時間割合とし、
前記尿素水タンクの尿素水の温度が、前記第2温度と前記第3温度との間であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を前記設定割合と0%の間の線形補間の時間割合とする制御を行うことを特徴とする尿素水の温度管理方法。
【請求項4】
前記加熱媒体がエンジン冷却水であり、前記第1温度がマイナス11℃以上0℃以下の範囲内に、前記第2温度が1℃以上2.5℃以下の温度範囲内に、前記第3温度が15℃以上20℃以下の温度範囲内に、それぞれ設定されると共に、前記設定割合が40%以上60%以下の範囲内に設定される請求項3に記載の尿素水の温度管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素水タンクに貯留され、内燃機関の排気ガス中のNOxを浄化処理する際に還元剤として使用される尿素水を解凍又は保温するための尿素水の温度管理システム及び尿素水の温度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディーゼルエンジン等の内燃機関を搭載している車両では、内燃機関から排出される排気ガスに含まれるPM(微粒子状物質)やNOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)等を除去すべく、酸化触媒装置、微粒子捕集装置、リーンNOxトラップ触媒装置、及び、選択還元型触媒(SCR触媒)装置等を組み合わせて備えた排気ガス浄化装置が設けられている。
【0003】
この選択還元型触媒装置では、この選択還元型触媒装置の上流側に設けた尿素水噴射装置から尿素水を排気ガスに噴射して、排気ガス内で尿素水からNH
3(アンモニア)を発生させ、このNH
3で、排気ガスに含まれるNOxを還元して浄化処理している。
【0004】
この尿素水の融点は尿素の濃度に依るが、約−11℃〜0℃(尿素0%)であり、寒冷地等では、尿素水タンクに貯留した尿素水がこの融点以下になり凝固し凍結してしまうと、尿素水噴射装置に尿素水を供給することが困難になるため、例えば、エンジン冷却水等を用いて貯留した尿素水の解凍及び温度維持をしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この尿素水は、排気ガス中のNOx処理を開始する時にはそれに対応して迅速に選択還元型触媒装置に供給する必要があるので、尿素水の供給開始時には解凍されている状態である必要がある。また、排気ガス中のNOx量に対応した量で選択還元型触媒装置に供給する必要があるため、尿素水中の尿素量の濃度を判定している。
【0006】
しかしながら、従来技術においては、エンジン冷却水のラインの開閉弁の開閉制御で尿素水を温めるエンジン冷却水の流れを制御しているが、この開閉弁の開弁のタイミングが遅かったり、この開閉弁の閉弁のタイミングが早かったりすると、尿素水の解凍が遅れたり不十分となったりして、NOx処理が必要なときに尿素水を供給できず、また、この開閉弁の閉弁のタイミングが遅いと尿素水の温度上昇により溶液中に気泡が発生し、尿素水中の尿素の濃度を正確に判定できず、適切な尿素水の量を供給できず、排気ガス浄化装置による排気ガス内のNOxの浄化処理に支障をきたすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−217233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、その目的は、尿素水タンクに貯留され、内燃機関の排気ガス中のNOxを浄化処理する際に還元剤として使用される尿素水の解凍性を確保しつつ、尿素水の温度上昇による尿素水内での気泡の発生を抑制して、尿素水に含まれる尿素の濃度を正確に判定することができ、精度よくNOx低減を図ることができる尿素水の温度管理システム及び尿素水の温度管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の尿素水の温度管理システムは、内燃機関の排気ガス中のNOxを浄化処理する際に還元剤として使用する尿素水を貯留する尿素水タンクに、加熱媒体を通過させることで貯留した尿素水を解凍又は保温する尿素水の温度管理システムにおいて、前記尿素水タンクに供給する前記加熱媒体の流量を調整する流量制御弁を制御する制御装置が、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第1温度以下であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を100%にして常時開とし、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第2温度であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を予め設定された設定割合とし、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第3温度以上であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を0%にして常時閉とし、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、前記第1温度と前記第2温度との間であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を100%と前記設定割合の間の線形補間の時間割合とし、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、前記第2温度と前記第3温度との間であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を前記設定割合と0%の間の線形補間の時間割合とする制御を行うように構成されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、このエンジン冷却水等の加熱媒体の流量調整により、尿素水タンクの尿素水の解凍性を確保しつつ、尿素水の温度上昇による尿素水内における気泡の発生を抑制でき、尿素水に含まれる尿素の濃度(品質)を正確に判定することができる。
【0011】
また、上記の尿素水の温度管理システムにおいて、前記加熱媒体がエンジン冷却水であり、前記第1温度がマイナス11℃以上0℃以下の範囲内に、前記第2温度が1℃以上2.5℃以下の温度範囲内に、前記第3温度が15℃以上20℃以下の温度範囲内に、それぞれ設定されると共に、前記設定割合が40%以上60%以下の範囲内に設定されると、より効果的に尿素水の温度状態を尿素水が解凍状態でかつ尿素濃度の判定が精度良くできる状態に管理できる。
【0012】
そして、上記の目的を達成するための本発明の尿素水の温度管理方法は、内燃機関の排気ガス中のNOxを浄化処理する際に還元剤として使用する尿素水を貯留する尿素水タンクに、加熱媒体を通過させることで貯留した尿素水を解凍又は保温するとともに、前記尿素水タンクに供給する前記加熱媒体の流量を流量制御弁により調整する尿素水の温度管理方法において、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第1温度以下であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を100%にして常時開とし、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第2温度であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を予め設定された設定割合とし、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、予め設定された第3温度以上であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を0%にして常時閉とし、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、前記第1温度と前記第2温度との間であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を100%と前記設定割合の間の線形補間の時間割合とし、前記尿素水タンクの尿素水の温度が、前記第2温度と前記第3温度との間であるときは、前記流量制御弁の開弁の時間割合を前記設定割合と0%の間の線形補間の時間割合とする制御を行うことを特徴とする。
【0013】
また、上記の尿素水の温度管理方法において、前記加熱媒体がエンジン冷却水であり、前記第1温度がマイナス11℃以上0℃以下の範囲内に、前記第2温度が1℃以上2.5℃以下の温度範囲内に、前記第3温度が15℃以上20℃以下の温度範囲内に、それぞれ設定されると共に、前記設定割合が40%以上60%以下の範囲内に設定される。
【0014】
これらの方法によれば、上記の尿素水の温度管理システムと同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の尿素水の温度管理システム及び尿素水の温度管理方法によれば、このエンジン冷却水等の加熱媒体の流量調整を比較的単純な開閉弁の開閉制御で行うことにより、尿素水タンクに貯留され、内燃機関の排気ガス中のNOxを浄化処理する際に還元剤として使用される尿素水の解凍性を確保しつつ、尿素水の温度上昇による尿素水内での気泡の発生を抑制でき、尿素水に含まれる尿素の濃度(品質)を正確に判定することができ、精度良く適量の尿素水を供給してNOx低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る実施の形態の尿素水の温度管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明に係る実施の形態の尿素水の温度管理方法における、貯蔵されている尿素水の温度と流量制御弁の開度の時間割合の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態の尿素水の温度管理システム及び尿素水の温度管理方法について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
最初に、本発明に係る尿素水の温度管理システム30を備えたエンジン(内燃機関)10について、
図1を参照しながら説明する。このエンジン10のエンジン本体11においては、吸気通路12から吸気マニホールド11aに入った吸気Aは、気筒内(シリンダ)11bの内部で燃料と共に燃焼し、燃焼後の排気ガスGは、排気マニホールド11cより排気通路13に排出され、この排気通路13に配設された排気ガス浄化装置14により浄化処理された後、この浄化処理された排気ガスGcはマフラー(図示しない)を介して大気へ放出される。
【0019】
この排気ガス浄化装置14は、酸化触媒14a、PM捕集用フィルタ14b、尿素選択還元型触媒(尿素SCR触媒)装置14cを備えて構成される。この排気ガス浄化装置14の上流側には、尿素水噴射装置23が設けられている。この尿素水噴射装置23より尿素水Uを排気ガスGに噴射して、排気ガスG内で尿素水UからNH
3(アンモニア)を発生し、このNH
3を排気ガス浄化装置14内の尿素選択還元型触媒装置14cに供給することで、排気ガスGに含まれるNOxをNH
3で還元して浄化処理している。この尿素選択還元型触媒装置14cは、一般的に、ハニカム構造体に、白金、バナジウム等の貴金属触媒や、バナジウム、銅、卑金属触媒を担持させて形成する。
【0020】
この排気ガスG中に尿素水噴射装置23から尿素水Uを排気通路13に供給する尿素水供給システム20は、尿素水Uを貯留する尿素水タンク21と、尿素水Uを約9bar程度の高圧まで加圧して、この高圧化した尿素水Uを尿素水噴射装置23に供給する尿素水供給装置(サプライモジュール:S/M)と、尿素水噴射装置23と、これらを接続する尿素水配管24(点線で示す)とを有して構成される。この尿素水供給装置22は、尿素水Uの供給時には高圧化して尿素水噴射装置23に送るが、尿素水Uの噴射後は、噴射されずに尿素水噴射装置23の内部に滞留している余剰の尿素水Uを吸い戻す機能も付与されている。
【0021】
また、尿素水Uの融点は約−11℃〜0℃であり、寒冷地等で、尿素水タンク21に貯留した尿素水Uがこの融点以下になり凝固し凍結してしまうと、尿素水噴射装置23に尿素水Uを供給することが困難になるため、この尿素水供給システム20には、エンジン冷却水Wを尿素水タンク21の加熱管34と尿素水噴射装置23に循環して尿素水Uを解凍したり、尿素水Uの温度を融点以上に維持したりする尿素水の温度管理システム30が設けられている。
【0022】
この尿素水の温度管理システム30は、エンジン本体11から出る第1配管31と、この第1配管31から分岐する第2配管32と、この第2配管32に設けられた流量制御弁33と、尿素水タンク21に設けられた加熱管34と、この加熱管34と尿素水供給装置22との間を連結する第3配管35と、尿素水供給装置22からエンジン本体11に向かう第4配管36と、この第4配管36が合流する第5配管39とを有すると共に、更に、第1配管31から分岐して尿素水噴射装置23に接続して、エンジン冷却水Wを尿素水噴射装置23に供給する第6配管37と、尿素水噴射装置23から第5配管に接続して、エンジン冷却水Wを尿素水噴射装置23からエンジン本体11に戻す第7配管38とを有して構成される。なお、これらの第1配管31から第7配管は
図1では太線で示している。
【0023】
そして、この流量制御弁33の開閉制御によりエンジン冷却水Wの加熱管34への供給を制御して、尿素水タンク21に貯蔵されている尿素水Uの温度Tuを管理している。そのために、この尿素水供給システム20と尿素水の温度管理システム30を管理及び制御する尿素水噴射制御ユニット(DCU)(制御装置)41が設けられる。
【0024】
この尿素水噴射制御ユニット41は、エンジン10の全体を制御するエンジンコントロールモジュールと呼ばれる全体制御装置(ECM)との間の信号により、尿素水タンク21、尿素水供給装置22、尿素水噴射装置23等を制御すると共に、さらに、尿素水タンク21に設けられ、尿素水タンク21に貯蔵されている尿素水Uの温度Tuを検出する温度センサ42からの信号を受けて、流量制御弁33を制御する。
【0025】
また、尿素水噴射制御ユニット41は、尿素水タンク21、尿素水供給装置22、または尿素水噴射装置23のいずれかに異常(故障)が発生した場合は、その異常情報を受信し、全体制御装置40に送信し、全体制御装置40が、車両の運転席等に配設された異常情報の表示用ランプを点灯させる等して、運転者にこの異常情報を伝達するように構成される。
【0026】
この尿素水噴射制御ユニット41は、
図1に示すように、全体制御装置40とは別個に構成され、制御信号線で接続されて構成されてもよいが、全体制御装置40に組み込まれて一つの全体システム制御装置として構成されてもよい。
【0027】
そして、この尿素水噴射制御ユニット41は、尿素水タンク21に貯蔵されている尿素水Uの温度Tuに応じて、例えば、45分等の予め設定された一定時間の間(単位制御時間)Rtにおける、流量制御弁33の開弁の時間割合raを変化させて、尿素水タンク21の加熱管34に供給するエンジン冷却水Wの流量を調整することで、貯蔵されている尿素水Uの温度Tuを制御及び管理する。なお、流量制御弁33を流量調整弁で構成し、流量調整弁の開弁時の弁開度を制御することでエンジン冷却水Wの流量を調整するように構成してもよいが、流量制御弁33を開閉弁で構成し、開弁時間と閉弁時間を制御した方が、流量調整が容易となる。
【0028】
そして、本発明においては、
図2に示すように、第1温度Tu1をマイナス11℃以上0℃以下の温度範囲内の温度、好ましくは0℃(
図2では0℃)に、第2温度Tu2を1℃以上2.5℃以下の温度範囲内の温度、好ましくは2℃(
図2では2℃)に、第3温度Tu3を15℃以上20℃以下の温度範囲内の温度、好ましくは20℃(
図2では20℃)にそれぞれ設定する。また、流量制御弁33の予め設定された一定時間Rtに対する開弁時間Raの割合を示す開弁の時間割合raに関して、予め設定された設定割合racを40%以上60%以下の範囲内の時間割合、好ましくは50%(
図2では50%)に設定する。
【0029】
この第1温度Tu1以下の温度範囲は、尿素水の解凍を優先する温度範囲であり、尿素濃度が32.5%で融点が最低温度のマイナス11℃となるので、これを考慮して、下限値をマイナス11℃とする。また、尿素濃度が0%、即ち、水のみの場合の融点が0℃となるので、その上限値を0℃とする。この0℃を超えると温度センサ42の周辺の尿素水Uは確実に溶けるので尿素濃度の判定を精度良く行うことが可能となる。
【0030】
この第1温度Tu1を超えてから第2温度Tu2までの温度範囲では、尿素水Uの解凍の優先度は減り、尿素水Uの温度上昇による気泡発生抑制の優先度が高まる。そのため、尿素水Uの温度Tuが第1温度Tu1から第2温度Tu2に上昇するにつれて、開弁の時間割合raを100%から設定割合に移行する必要があるが、流量制御弁33の制御を考えると、一気に流量を減少させるのではなく、徐々に流量を減少させた方が良いので、第2温度Tu2の下限値を1℃とし、上限値を2.5℃とする。
【0031】
第2温度Tu2から第3温度Tu3までの温度範囲では、尿素水タンク21全体の解凍性を確保しつつ、極力気泡の発生を抑制する。そのため、緩やかに開弁の時間割合raを変化させる。そして、尿素水Uの温度Tuが20℃以上になると尿素濃度センサ(図示しない)の検知値が実際の濃度より低くなる傾向があるため、尿素水Uの温度上昇をストップさせる温度として第3温度Tu3を設け、この第3温度の上限を20℃とする。なお、下限値は、これよりも低い15℃とする。
【0032】
ここで、この流量制御弁33の開弁の時間割合raについてより詳細に説明すると、予め設定した単位制御時間(1サイクル:例えば、45分)Rtを分母とし、この単位制御時間Rtに対して流量制御弁33が開弁している開弁時間Raを分子として算出される値(補正係数、
図2の縦軸に記載の補正係数も同様)をパーセンテージで示したものである。つまり、開弁時間Ra=(単位制御時間Rt×時間割合ra×0.01)となる。
【0033】
例えば、流量制御弁33の開弁の時間割合raが100%であるときは、単位制御時間Rt内の全期間で流量制御弁33が開弁しており、開弁の時間割合raが50%であるときは、単位制御時間Rt内の50%の時間R
50で流量制御弁33が開弁しており、開弁の時間割合raが0%であるときは、単位制御時間Rt内の全期間で流量制御弁33が閉弁している。つまり、単位制御時間Rtを45分とすると、時間R
50は22.5分(=45分×50×0.01)となる。
【0034】
そして、尿素水噴射制御ユニット41は、尿素水タンク21に供給するエンジン冷却水(加熱媒体)Wの流量を調整する流量制御弁33を制御し、この制御において、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、予め設定された第1温度Tu1以下であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを100%にして常時開とし、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、予め設定された第2温度Tu2であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを予め設定された設定割合racとし、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、予め設定された第3温度Tu3以上であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを0%にして常時閉とする制御を行うように構成される。
【0035】
また、更に、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、第1温度Tu1と第2温度Tu2との間であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを100%と設定割合racの間の線形補間の時間割合とし、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、第2温度Tu2と第3温度Tu3との間であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを設定割合racと0%の間の線形補間の時間割合とする制御を行うように構成される。
【0036】
つまり、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、第1温度Tu1と第2温度Tu2との間にあるときは、
図2に示すように、横軸の尿素水の温度Tuに対して、縦軸の開弁の時間割合raを示す第1線Aの線上の値の開弁の時間割合raで流量制御弁33を開弁制御する。また、尿素水Uの温度Tuが、第2温度Tu2と第3温度Tu3との間にあるときは、
図2に示すように、横軸の尿素水の温度Tuに対して、縦軸の開弁の時間割合raを示す第2線Bの線上の値の開弁の時間割合raで流量制御弁33を開弁制御する。
【0037】
この構成によれば、このエンジン冷却水Wの流量調整により、尿素水タンク21の尿素水Uの解凍性を確保しつつ、尿素水Uの温度上昇による尿素水U内における気泡の発生を抑制でき、尿素水Uに含まれる尿素の濃度(品質)を正確に判定することができる。また、第1温度Tu1、第2温度Tu2、第3温度Tu3、及び設定割合racを上記の値に設定することにより、より効果的に尿素水Uの温度状態を尿素水が解凍状態でかつ尿素濃度の判定が精度良くできる状態に管理することができる。
【0038】
次に、本発明の実施の形態の尿素水の温度管理方法について説明する。この尿素水の温度管理方法は、エンジン10の排気ガスG中のNOxを浄化処理する際に還元剤として使用する尿素水Uを貯留する尿素水タンク21に、エンジン冷却水(加熱媒体)Wを通過させることで貯留した尿素水Uを解凍又は保温するとともに、尿素水タンク21に供給するエンジン冷却水Wの流量を流量制御弁33により調整する尿素水Uの温度管理方法である。
【0039】
そして、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、予め設定された第1温度Tu1以下であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを100%にして常時開とし、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、予め設定された第2温度Tu2であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを予め設定された設定割合racとし、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、予め設定された第3温度Tu3以上であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを0%にして常時閉とする。
【0040】
また、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、第1温度Tu1と第2温度Tu2との間であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを100%と設定割合racの間の線形補間の時間割合とし、尿素水タンク21の尿素水Uの温度Tuが、第2温度Tu2と第3温度Tu3との間であるときは、流量制御弁33の開弁の時間割合raを設定割合racと0%の間の線形補間の時間割合とする。
【0041】
従って、上記の構成の尿素水の温度管理システム30、及び、尿素水の温度管理方法によれば、このエンジン冷却水(加熱媒体)Wの流量調整を比較的単純な開閉弁の流量制御弁33の開閉制御で行うことにより、尿素水タンク21に貯留され、エンジン(内燃機関)10の排気ガスG中のNOxを浄化処理する際に還元剤として使用される尿素水Uの解凍性を確保しつつ、尿素水Uの温度上昇による尿素水U内での気泡の発生を抑制でき、尿素水Uに含まれる尿素の濃度(品質)を正確に判定することができ、精度良く適量の尿素水Uを供給してNOx低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 エンジン(内燃機関)
11 エンジン本体
12 吸気通路
13 排気通路
14 排気ガス浄化装置
14a 酸化触媒
14b PM捕集用フィルタ
14c 尿素選択還元型触媒装置(尿素SCR装置)
20 尿素水供給システム
21 尿素水タンク
22 尿素水供給装置
23 尿素水噴射装置
30 尿素水の温度管理システム
33 流量制御弁
34 加熱管
40 全体制御装置(ECU)
41 尿素水噴射制御ユニット(制御装置)
42 温度センサ
Tu1 予め設定された第1温度
Tu2 予め設定された第2温度
Tu3 予め設定された第3温度
G 排気ガス
Gc 浄化処理された排気ガス
U 尿素水
W エンジン冷却水(加熱媒体)