(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の運転行動に関する特徴量の各値が得られる度合いを表す運転情報と、前記特徴量に起因して生じる事故が発生する度合いを表す事故統計情報とを取得する統計情報取得手段と、
前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記事故が発生した条件下での前記特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、ベイズの定理を用いて、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いを近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、前記算出されたパラメータを用いた前記関数を、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いとして算出する算出手段と、
を含む事故情報算出装置。
前記統計情報取得手段は、車両の運転行動に関する特徴量の各値が得られる確率を表す前記運転情報と、前記特徴量に起因して生じる事故が発生する確率を表す前記事故統計情報とを取得し、
前記算出手段は、前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記事故が発生した条件下での前記特徴量の各値が得られる確率に関する前記制約条件とに基づいて、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出された前記パラメータを用いた前記関数を算出する請求項1又は請求項2に記載の事故情報算出装置。
前記統計情報取得手段は、車両の運転行動に関する複数の特徴量についての各値が得られる確率を表す前記運転情報と、前記複数の特徴量の各々に起因して生じる複数種類の事故の各々が発生する確率を表す前記事故統計情報とを取得し、
前記算出手段は、前記複数種類の事故の各々について、前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記事故が発生した条件下での前記事故に対応する前記特徴量の各値が得られる確率に関する前記制約条件とに基づいて、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出された前記パラメータを用いた前記関数を算出する請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の事故情報算出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献4の手法では、過去に発生した事故に対する事故要因の確率分布を算出する際に困難が生じる。例えば、交通事故発生時の天候等、観測可能な情報は確率分布化が可能であるが、事故発生直前の運転挙動は事故要因に該当し得るにも関わらず観測困難である。さらに、速度超過の有無等の離散情報ではなく、加速や脇見時間等の連続値の場合は大量の事例データが必要となり、確率分布の取得が更に困難であるという問題がある。
【0009】
本発明では、上記問題点を解決するために成されたものであり、取得可能な統計量を用いて、事故が発生する度合いを算出することができる事故情報算出装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の事故情報算出装置は、車両の運転行動に関する特徴量の各値が得られる度合いを表す運転情報と、前記特徴量に起因して生じる事故が発生する度合いを表す事故統計情報とを取得する統計情報取得手段と、前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記事故が発生した条件下での前記特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いを算出する算出手段と、を含んで構成されている。
【0011】
また、本発明のプログラムは、コンピュータを、車両の運転行動に関する特徴量の各値が得られる度合いを表す運転情報と、前記特徴量に起因して生じる事故が発生する度合いを表す事故統計情報とを取得する統計情報取得手段、及び前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記事故が発生した条件下での前記特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いを算出する算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0012】
本発明によれば、統計情報取得手段によって、車両の運転行動に関する特徴量の各値が得られる度合いを表す運転情報と、特徴量に起因して生じる事故が発生する度合いを表す事故統計情報とを取得する。
【0013】
そして、算出手段によって、統計情報取得手段によって取得された運転情報及び事故統計情報と、事故が発生した条件下での特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、特徴量の各値に対して事故が発生する度合いを算出する。
【0014】
このように、運転情報及び事故統計情報と、事故が発生した条件下での特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、特徴量の各値に対して事故が発生する度合いを算出することにより、取得可能な統計量を用いて、事故が発生する度合いを算出することができる。
【0015】
また、本発明前記算出手段は、前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記事故が発生した条件下での前記特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いを近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、前記算出されたパラメータを用いた前記関数を、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いとして算出するようにすることができる。
【0016】
また、前記算出手段は、前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記事故が発生した条件下での前記特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、ベイズの定理を用いて、前記パラメータを算出するようにすることができる。
【0017】
また、本発明は、対象ドライバの車両の運転行動に関する特徴量の値を取得する特徴量取得手段と、前記特徴量取得手段によって取得された前記特徴量の値、及び前記算出手段によって算出された前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いに基づいて、前記対象ドライバの車両の運転行動について、前記事故が発生する度合い又は前記事故が発生しない度合いを評価する運転行動評価手段と、を更に含むことができる。
【0018】
また、前記統計情報取得手段は、車両の運転行動に関する特徴量の各値が得られる確率を表す前記運転情報と、前記特徴量に起因して生じる事故が発生する確率を表す前記事故統計情報とを取得し、前記算出手段は、前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記事故が発生した条件下での前記特徴量の各値が得られる確率に関する前記制約条件とに基づいて、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出された前記パラメータを用いた前記関数を算出するようにすることができる。これによって、取得可能な統計量を用いて、事故が発生する確率を算出することができる。
【0019】
また、前記統計情報取得手段は、車両の運転行動に関する複数次元の特徴量の各次元についての各値が得られる確率を表す前記運転情報と、前記複数次元の特徴量に起因して生じる事故が発生する確率を表す前記事故統計情報とを取得し、前記算出手段は、前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記複数次元の特徴量の各次元についての前記事故が発生した条件下での前記次元の各値が得られる確率に関する前記制約条件とに基づいて、前記特徴量の各次元の各値に対して前記事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出された前記パラメータを用いた前記関数を算出するようにすることができる。これによって、取得可能な統計量を用いて、事故が発生する確率を算出することができる。
【0020】
また、前記統計情報取得手段は、車両の運転行動に関する複数の特徴量についての各値が得られる確率を表す前記運転情報と、前記複数の特徴量の各々に起因して生じる複数種類の事故の各々が発生する確率を表す前記事故統計情報とを取得し、前記算出手段は、前記複数種類の事故の各々について、前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記事故が発生した条件下での前記事故に対応する前記特徴量の各値が得られる確率に関する前記制約条件とに基づいて、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出された前記パラメータを用いた前記関数を算出するようにすることができる。これによって、取得可能な統計量を用いて、事故が発生する確率を算出することができる。
【0021】
また、本発明は、対象ドライバの車両の運転行動に関する前記複数の特徴量の各々の値を取得する特徴量取得手段と、前記特徴量取得手段によって取得された前記複数の特徴量の各々の値、及び前記算出手段によって前記複数種類の事故の各々について算出された前記関数に基づいて、前記複数種類の事故の各々について前記事故が発生しない確率を算出し、前記対象ドライバの車両の運転行動について、前記複数種類の事故の各々に対して算出される前記事故が発生しない確率の積を、事故が起こらない確率を表す無事故確率として評価する運転行動評価手段とを更に含むようにすることができる。これによって、取得可能な統計量を用いて、ドライバの運転行動を評価することができる。
【0022】
また、前記特徴量取得手段は、対象ドライバの車両の運転行動に関する前記特徴量の値、及び前記特徴量の値の継続時間を取得し、前記運転行動評価手段は、前記特徴量取得手段によって取得された前記特徴量の値及び前記継続時間と、前記算出手段によって前記複数種類の事故の各々について算出された、予め定められた継続時間までに前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する確率を近似した前記関数とに基づいて、前記対象ドライバの車両の運転行動について、前記複数種類の事故の各々に対して算出される前記事故が発生しない確率の積を、前記無事故確率として評価するようにすることができる。これによって、時々刻々と変化する特徴量に対して無事故確率の算出をすることができる。
【0023】
また、前記特徴量取得手段は、対象ドライバの車両の運転行動に関する前記特徴量の値、及び前記特徴量の値が得られているときの走行距離を取得し、前記運転行動評価手段は、前記特徴量取得手段によって取得された前記特徴量の値及び前記走行距離と、前記算出手段によって前記複数種類の事故の各々について算出された、予め定められた走行距離までに前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する確率を近似した前記関数とに基づいて、前記対象ドライバの車両の運転行動について、前記複数種類の事故の各々に対して算出される前記事故が発生しない確率の積を、前記無事故確率として評価するようにすることができる。これによって、時々刻々と変化する特徴量に対して無事故確率の算出をすることができる。
【0024】
また、前記関数は、前記関数の値が最大となるときの前記特徴量の予め定められた値、又は前記関数の値が最小となるときの前記特徴量の予め定められた値を含むようにすることができる。
【0025】
また、前記算出手段は、前記統計情報取得手段によって取得された前記運転情報及び前記事故統計情報と、前記複数次元の特徴量の各次元についての前記事故が発生した条件下での前記次元の各値が得られる確率に関する前記制約条件とに基づいて、ベイズの定理を用い、かつ前記複数次元の特徴量の各次元が互いに独立又は従属であると仮定して、前記パラメータを算出するようにすることができる。
【0026】
また、前記関数は、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いを近似したガウス関数とすることができる。
【0027】
また、前記関数は、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いを近似した線形関数とすることができる。
【0028】
また、前記関数は、前記特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いを近似したシグモイド関数とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明の事故情報算出装置、及びプログラムによれば、運転情報及び事故統計情報と、事故が発生した条件下での特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、特徴量の各値に対して事故が発生する度合いを算出することにより、取得可能な統計量を用いて、事故が発生する度合いを算出することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<概要>
ドライバの運転能力を維持・向上させるためには、継続的且つ的確な措置が非常に重要となる。しかし、現状では、ドライバの運転行動を診断するための評価指標が確立していない。本発明の実施の形態では、ドライバの運転行動を診断する評価指標の一つとして、「無事故確率(事故を起こさない確率)」を定義し、無事故確率の算出方法を説明する。
【0032】
図1に本発明の実施の形態の概念図を示す。
図1に示すように、本発明の実施の形態では、取得された特徴量の値に対して事故が発生する確率に基づいて、事故が起こらない確率を表す無事故確率を算出する。
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の実施の形態では、車両に搭載され、取得された特徴量の値に対して事故が発生する確率を算出し、算出された事故が発生する確率に基づいて、事故が起こらない確率を表す無事故確率を算出する事故情報算出装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0034】
[第1の実施の形態]
<事故情報算出装置の構成>
本発明の第1の実施の形態に係る事故情報算出装置について説明する。
図2に示すように、本発明の実施の形態に係る事故情報算出装置10は、車両の横方向加速度を検出する横方向加速度センサ12と、車両の前後方向加速度を検出する前後方向加速度センサ14と、車両の速度を検出する車速センサ16と、自車両と先行車両との間の車間距離を検出する車間距離センサ18と、道路領域を含む自車両前方を逐次撮像して前方画像を出力する前方カメラ20と、車室内のドライバの目領域を含む顔画像を逐次撮像して出力するドライバカメラ22と、事故統計情報と運転情報とが格納された統計情報データベース24と、無事故確率を算出するコンピュータ26と、コンピュータ26によって算出された無事故確率を出力する出力装置40とを備えている。
【0035】
車間距離センサ18は、車間距離として自車両と先行車両との相対距離を検出してコンピュータ26に出力する。車間距離センサ18としては、例えば、レーザレーダやミリ波レーダ等を用いることができる。
【0036】
前方カメラ20は、車両に搭載され、道路領域を含む自車両前方を撮像して画像を出力する。前方カメラ20は、自車両前方を撮像し、画像の画像信号を生成する撮像部(図示省略)と、撮像部で生成された画像信号をA/D変換するA/D変換部(図示省略)と、A/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)とを備えている。
【0037】
ドライバカメラ22は、ドライバの顔画像を撮像して出力する。ドライバカメラ22は、ドライバの顔を撮像し、画像の画像信号を生成する撮像部(図示省略)と、撮像部で生成された画像信号をA/D変換するA/D変換部(図示省略)と、A/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)とを備えている。
【0038】
統計情報データベース24には、車両の運転行動に関する複数の特徴量A
iについての各値が得られる確率p(A
i)を表す運転情報と、複数の特徴量A
iの各々に起因して生じる複数種類の事故X
iの各々が発生する確率p(X
i)を表す事故統計情報とが格納されている。
【0039】
ここで、A
iはドライバの運転行動に関する特徴量(速度、加速度、車間距離、脇見時間、等)を表す。また、X
iは、特徴量A
iの値に起因して生じる事故(スリップ事故、追突事故、脇見事故、等)を表す。また、p(X
i)は、事故X
iが発生する確率を表し、p(A
i)は、特徴量A
iの値が得られる確率を表す。
【0040】
事故統計情報は、「l[km]走行当たりの事故率」「t[sec]走行当たりの事故率」等のように、任意の量当たりの事故率として正規化され、統計情報データベース24に格納される。例えば、事故X
iが追突事故の場合、全国の1年間の追突事故の件数N
i、全国の1年間の平均走行距離L[km]、全国の自動車所有台数Cの情報を用いて、l[km]走行当たりの追突事故が起こる確率p(X
i)は、以下の式(1)のように予め算出され、統計情報データベース24に格納される。確率p(X
i)は、複数種類の事故の各々について算出される。
【0042】
また、運転情報の確率p(A
i)は、事故統計情報が算出されたときと同じ母集団で計算されることが好ましい。例えば、事故統計情報を全国の事故件数から求めた場合、運転情報の確率p(A
i)は全国の車両の走行情報を統計した際の分布でなければならない。現状では、運転情報は取得困難であるため、実際には少数のドライバの運転データから計算せざるを得ない事もあるが、多数のドライバの走行データを蓄積していき、蓄積された走行データを用いて運転情報の確率p(A
i)を求めることで、運転情報の確率p(A
i)は全国の平均分布に漸近していくと考えられる。
【0043】
コンピュータ26は、事故情報算出装置10全体の制御を司るCPU、後述する運転診断処理ルーチンのプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。このような構成の場合には、各構成要素の機能を実現するためのプログラムをROMやHDD等の記憶媒体に記憶しておき、これをCPUが実行することによって、各機能が実現されるようにする。
【0044】
このコンピュータ26をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、
図2に示すように、横方向加速度センサ12によって検出された車両の横方向加速度、前後方向加速度センサ14によって検出された車両の前後方向加速度、車速センサ16によって検出された車両の速度、車間距離センサ18によって検出された自車両と先行車両との間の車間距離、前方カメラ20によって撮像された前方画像、及びドライバカメラ22によって撮像されたドライバの顔画像に基づいて、複数の特徴量を取得する特徴量取得部28と、統計情報データベース24に格納された事故統計情報と運転情報とを取得する統計情報取得部30と、特徴量取得部28によって取得された複数の特徴量と、統計情報取得部30によって取得された事故統計情報及び運転情報とに基づいて、事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出する算出部32と、算出部32によって算出されたパラメータを用いた関数に基づいて、対象ドライバの運転を評価する運転行動評価部34とを備えている。
【0045】
特徴量取得部28は、運転診断の対象となるドライバの車両の運転行動に関する複数の特徴量の各々の値を取得する。
【0046】
例えば、特徴量取得部28は、前方カメラ20によって撮像された前方画像から、画像処理によって一時停止標識を検出し、一時停止標識が検出されたときに車速センサ16によって検出された車両の速度を、一時停止時の通過速度として取得する。
【0047】
また、特徴量取得部28は、ドライバカメラ22によって撮像されたドライバの顔画像に基づいて、例えばパターンマッチング処理によりドライバの顔を検出する。次に、特徴量取得部28は、検出されたドライバの顔に基づいて、複数の異なる顔向きの顔画像に基づいて学習されたパターンマッチング処理により、ドライバの顔向きを検出する。そして特徴量取得部28は、ドライバの顔向きに基づいて、脇見運転が継続している時間を算出し、脇見運転が継続している時間と、脇見運転が継続しているときに車速センサ16によって検出された車両の速度とを取得する。そして、特徴量取得部28は、取得した脇見運転が継続している時間と、車速とに基づいて、脇見運転が継続した脇見運転距離を取得する。
【0048】
また、特徴量取得部28は、前方カメラ20によって撮像された前方画像から、画像処理によって信号標識の赤信号を検出し、赤信号が検出されたときの交差点の車両の通過時間を取得する。
【0049】
そして、特徴量取得部28は、横方向加速度センサ12によって検出された横方向加速度と、前後方向加速度センサ14によって検出された前後方向加速度と、車間距離センサ18によって検出された車間距離と、一時停止時の通過速度と、脇見運転距離と、赤信号時の交差点通過時間とを、ドライバの運転行動に関する複数の特徴量として取得する。
【0050】
統計情報取得部30は、統計情報データベース24に格納された事故統計情報と運転情報とを取得する。
【0051】
以下では、まず、本実施の形態で算出される無事故確率の定義と、無事故確率を推定するための定式化について説明する。
【0052】
車両のドライバの運転行動(運転走行データ)から無事故確率(事故が起こらない確率)を推定するためには、事故に起因する特徴量の取得及び取得された特徴量を用いた定式化が課題となるが、無事故確率の真値が取得出来ない限り、一般に回帰分析等による定式化は困難である。そこで、本発明の実施の形態では、実際の事故件数に基づく事故統計情報や、運転データの分布を表す運転情報等の統計情報に着目する。本発明の実施の形態では、以下の近似(A)(B)を用いる。
【0053】
(A)全ての事故X
iが生じる確率は互いに独立である。
(B)特徴量A
iのみに起因して事故X
iが生じる。
【0054】
上記の近似(A)に関しては、一台の車両(一人のドライバの運転行動)に着目している以上、複数種類の事故が同時に発生する事は殆ど起こりえないため、妥当と考えられる。また、上記の近似(B)に関しては、様々な要因が重なって事故が生じる場合もあるが、例えば「脇見による事故」は「脇見」が主原因というように、多くの事故の要因は単一もしくは少数の特徴量が支配的になると考えられる。そこで、第1の実施の形態では、A
iを一次元特徴量として定義した上で無事故確率の定式化を行う。上記の近似(A)(B)を用いることで、無事故確率(事故を起こらない確率)p
safeは以下の式(2)で与えられる。
【0056】
なお、p(X
i|A
i)は、特徴量A
iの値に対して事故X
iが発生する確率を表す。
【0057】
次に、特徴量A
iの値に対して事故X
iが発生する確率p(X
i|A
i)を定義する。本発明の実施の形態では、特徴量A
iの各値に対して事故X
iが発生する確率p(X
i|A
i)の各々を、関数を用いて近似する。p(X
i|A
i)を、以下の式(3)又は式(4)に示すように、ガウス関数を用いて近似し、定義する。
【0059】
上記式(3)におけるA
maxは、1(100%)の確率で事故X
iが生じる特徴量A
iの値を表し、予め定められた値である。また、上記式(4)におけるA
minは、1(100%)の確率で事故X
iが生じない特徴量A
iの値を表し、予め定められた値である。また、σ
iはガウス関数のパラメータを表す。
【0060】
算出部32は、複数種類の事故の各々について、統計情報取得部30によって取得された運転情報及び事故統計情報と、事故X
iが発生した条件下での事故X
iに対応する特徴量A
iの各値が得られる確率に関する制約条件とに基づいて、ベイズの定理を用いて、特徴量A
iの各値に対して事故X
iが発生する確率を近似したガウス関数で用いるパラメータを算出し、算出されたパラメータを用いたガウス関数を、特徴量の各値に対して事故が発生する確率p(X
i|A
i)として算出する。
【0061】
具体的には、算出部32は、特徴量A
iと事故X
iとに関する知見を用いて、上記式(3)及び式(4)に含まれるパラメータσ
i(未知数)を推定する。例えば、特徴量A
iと事故X
iとに関する知見から、近似したガウス関数の値が最大となる特徴量、及び近似したガウス関数の値が最小となる特徴量の少なくとも一方を予め設定する。
【0062】
例えば、「A
i:加速度、X
i:スリップ事故」の場合、加速度が静止摩擦係数と重力加速度との積を超えた際にはスリップ事故が生じるものとし、「A
max=静止摩擦係数×重力加速度」と近似する。(あるいは、「加速していないときの事故確率は0%」を前提に「A
min=0[m/s
2]」としてもよい。)また、「A
i:車間距離(又はTTC:Time to Collision)、X
i:車間距離不足による追突事故」の場合、車間距離が0mのときには必ず追突事故が生じるため、「A
max=0[m]」とする事が出来る。以上の近似により、p(X
i|A
i)に残された未知数はパラメータσ
iのみとなる。表1に、本発明の実施の形態で用いる特徴量A
i、事故X
i、A
max、A
minの関係を示す。
【0064】
上記式(3)又は式(4)のパラメータσ
iは、特徴量A
iの値がどれだけ安全なのかを決定するパラメータであり、パラメータの値を上手く設定することで、実際の安全性と矛盾の少ない定式化が可能になると考えられる。従って、近似したガウス関数は、ガウス関数の値が最大となるときの特徴量A
iの予め定められた値、又はガウス関数の値が最小となるときの特徴量A
iの予め定められた値を含む。
【0065】
算出部32は、前述した通り、実際の統計情報である事故統計情報及び運転情報を用いて、ベイズの定理に従って、近似したガウス関数のパラメータσ
iを算出する。そして、算出部32は、算出されたパラメータσ
iを用いたガウス関数を算出する。
【0066】
まず、ベイズの定理を適用することで、p(X
i|A
i)を以下の式(5)のように変形する。
【0068】
ここで、p(A
i |X
i)は、事故X
iが発生した条件下での特徴量A
iの値が得られる確率を表し、未知の値である。また、確率p(A
i)に関しては、以下の式(6)に示すように、p(A
i)の両側無限積分の値は1となる。
【0070】
また、事故X
iが発生した条件下での特徴量A
iの値が得られる確率p(A
i|X
i)に関する制約条件を以下の式(7)に示す。確率p(A
i|X
i)に関しては、その分布形状の取得は困難であるが、事故X
iは特徴量A
iのみに起因して生じるため、以下の式(9)に示すように、p(A
i|X
i)の両側無限積分の値は1となる。
【0072】
算出部32は、上記の式(1)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)を連立することで、
図3に示すように、パラメータσ
iを算出することが可能となる。パラメータσ
iの算出を全ての確率p(A
i|X
i)に対して行えば、上記式(2)の無事故確率p
safeの算出式が適用可能となる。
【0073】
以下では、p(X
i|A
i)の未知のパラメータであるσ
iの導出を行う際の過程を、上記式(3)、式(5)、及び式(7)を例に説明する。
【0074】
特徴量A
iの値が連続値として定義される場合、上記式(3)を上記式(5)に代入し変形することで、以下の式(8)に示すように、p(A
i|X
i)が与えられる。
【0076】
また、上記式(8)のp(A
i|X
i)を、上記式(7)に代入することで、以下の式(9)が得られる。
【0078】
上記式(9)において、値が未知であるp(A
i|X
i)が消えて、未知数はパラメータσ
iのみとなるため、上記式(9)を解くことでパラメータσ
iを得ることができる。ここで、事前に取得しておいたp(A
i)がA
iの関数として与えられており、上記式(9)の積分が解析的に可能である場合には、実際に積分してパラメータσ
iを求めれば良い。上記式(9)の積分が困難な場合、またはp(A
i)がA
iの関数として定義困難な場合には、A
i=a
i,k(k=1,2,・・・,N
ai)としてp(A
i)を離散化すればよく、上記式(7)及び式(9)はそれぞれ以下の式(10)及び式(11)として近似可能である。
【0080】
したがって、上記式(11)を解くことで、未知のパラメータσ
iが得られる。特徴量A
iの値が離散値A
i=a
i,k(k=1,2,・・・,N
ai)として定義されている場合も同様に、式(11)を解くことで、未知のパラメータσ
iが得られる。また、上記では式(3)のp(X
i|A
i)を例に未知のパラメータを算出したが、式(4)を用いる場合にも、式(9)もしくは式(11)のp(X
i|A
i)、またはp(X
i|a
i,k)に代入することで、同様にして未知のパラメータの算出が可能である。
【0081】
以上のように本発明の実施の形態では、特徴量A
i、事故X
i、A
max、A
min、p(X
i|A
i)を知見や仮説を基に定義していき、推測困難な未知数に関しては事故や運転データの統計情報を用いて算出することで、無事故確率の定式化を行った。
【0082】
運転行動評価部34は、特徴量取得部28によって取得された複数の特徴量の各々の値、及び算出部32によって複数種類の事故の各々について算出された、ガウス関数を用いて近似された確率p(X
i|A
i)に基づいて、複数種類の事故の各々について当該事故X
iが発生しない確率(1−p(X
i|A
i))を算出する。そして、運転行動評価部34は、対象ドライバの車両の運転行動について、複数種類の事故の各々に対して算出される事故が発生しない確率(1−p(X
i|A
i))の積を、事故が起こらない確率を表す無事故確率p
safeとして算出する。
【0083】
出力装置40は、運転行動評価部34によって算出された無事故確率p
safeを結果として出力する。
【0084】
<事故情報算出装置10の作用>
次に、第1の実施の形態に係る事故情報算出装置10の作用について説明する。まず、コンピュータ26によって、
図4に示すパラメータ算出処理ルーチンが実行される。
【0085】
ステップS100において、統計情報取得部30によって、統計情報データベース24に格納された事故統計情報を取得する。
【0086】
ステップS102において、統計情報取得部30によって、統計情報データベース24に格納された運転情報を取得する。
【0087】
ステップS104において、算出部32によって、複数種類の事故の各々について、上記ステップS102で取得された運転情報及び上記ステップS100で取得された事故統計情報と、事故X
iが発生した条件下での事故X
iに対応する特徴量A
iの各値が得られる確率に関する制約条件とに基づいて、ベイズの定理を用いて、上記式(1)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)を連立して、特徴量A
iの各値に対して事故X
iが発生する確率をガウス関数を用いて近似した上記式(3)又は式(4)に示す関数で用いるパラメータを算出し、算出されたパラメータを用いた関数を、特徴量A
iの各値に対して事故が発生する確率p(X
i|A
i)として算出する。
【0088】
次に、診断対象のドライバの運転操作により車両が走行し、横方向加速度センサ12によって車両の横方向加速度が検出され、前後方向加速度センサ14によって車両の前後方向加速度が検出され、車速センサ16によって車両の速度が検出され、車間距離センサ18によって自車両と先行車両との間の車間距離が検出され、前方カメラ20によって前方画像が撮像され、ドライバカメラ22によってドライバの顔画像が撮像されているときに、コンピュータ26によって、
図5に示す運転診断処理ルーチンが実行される。
【0089】
ステップS200において、特徴量取得部28によって、横方向加速度センサ12によって検出された横方向加速度と、前後方向加速度センサ14によって検出された前後方向加速度と、一時停止時の通過速度と、車間距離センサ18によって検出された車間距離と、一時停止時の通過速度と、脇見運転距離と、赤信号時の交差点通過時間とを、ドライバの運転行動に関する複数の特徴量として取得する。
【0090】
ステップS202において、運転行動評価部34によって、上記ステップS200で取得された複数の特徴量A
iの各々の値、及びパラメータ算出処理ルーチンの上記ステップS104で算出された複数種類の事故の各々について算出されたガウス関数に基づいて、複数種類の事故の各々について当該事故X
iが発生しない確率(1−p(X
i|A
i))を算出する。
【0091】
ステップS204において、運転行動評価部34によって、対象ドライバの車両の運転行動について、上記ステップS202で算出された複数種類の事故の各々に対して算出される事故が発生しない確率(1−p(X
i|A
i))の積を、事故が起こらない確率を表す無事故確率p
safeとして算出する。
【0092】
ステップS112において、出力装置40によって、上記ステップS204で算出された無事故確率p
safeを結果として出力する。
【0093】
このように、第1の実施の形態の事故情報算出装置によれば、複数種類の事故の各々について、運転情報及び事故統計情報と、事故が発生した条件下での事故に対応する特徴量の各値が得られる確率に関する制約条件とに基づいて、特徴量の各値に対して事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出されたパラメータを用いた当該関数を算出し、対象ドライバの車両の運転行動に関する複数の特徴量の各々の値を取得し、複数の特徴量の各々の値、及び算出された複数種類の事故の各々について算出された関数に基づいて、複数種類の事故の各々について事故が発生しない確率を算出し、対象ドライバの車両の運転行動について、無事故確率として評価することにより、取得可能な統計量を用いてドライバの運転を診断することができる。
【0094】
また、取得が困難な統計量を用いずに、ドライバの運転を診断することができる。また、ドライバの運転を精度よく診断することができる。
【0095】
また、各事故と要因間の大規模な情報を必要とせず容易に観測可能な統計量を用いて、経時変化し得る実際の交通事情に則した客観的な運転の診断及び無事故確率の算出が可能となる。
【0096】
また、加速度、脇見運転時間等の特徴量と、スリップ事故、脇見事故等の事故の種類を関連付けたうえで、条件付確率に関する定理に基づくことで、多数ドライバから収集した運転情報の統計量及び事故の統計量から、各運転状態に対する無事故確率が推定可能となり、これに基づき運転の良し悪しを診断することができる。容易に観測可能な統計量のみで実際の交通事情に則した客観的な運転の診断が期待され、且つ統計量のみを逐次更新することで交通事情の経時変化にも対応が可能となる。
【0097】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態に係る事故情報算出装置の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
第2の実施の形態では、特徴量の各値に対して事故が発生する確率を近似した関数が、複数のパラメータを含む点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0099】
上記第1の実施の形態で示した確率p(X
i|A
i)を近似する関数は、任意に選択することができる。例えば、以下の式(12)又は式(13)に示すような、線形関数やシグモイド関数等によって、特徴量の各値に対して事故が発生する確率p(X
i|A
i)を近似することができる。
【0101】
なお、上記式(12)及び式(13)におけるu
i,v
iはパラメータを表す。上記第1の実施の形態においては、上記式(1)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)を連立して算出可能な未知数は1つであるため、未知数が2つ以上になる第2の実施の形態では、p(X
i|A
i)を定義した場合には別の拘束条件が必要となる。
【0102】
従って、第1の実施の形態の上記式(3)や上記式(4)の代わりに、上記式(12)や上記式(13)のp(X
i|A
i)を採用した場合、未知のパラメータであるu
i、v
iのいずれか一方は経験的に定めたり、別の情報に基づいて定めたりしておく必要がある。
【0103】
あるいは、上記式(12)や上記式(13)に関して、例えばA
max、A
minのいずれかが既知である場合、以下の式のいずれかが成立する。
【0105】
すなわち、上記式(14)及び式(15)を用いることで、上記式(12)及び式(13)は以下の式(16)及び式(17)に示すように、1つの未知のパラメータで定義可能である。
【0107】
ここで、Z
∞は十分大きな正の値、Z
−∞は十分小さな負の値として事前に定義しておく。以上のようにして、p(X
i|A
i)の複数の未知のパラメータであるu
i、v
iの導出が可能となる。
【0108】
なお、第2の実施の形態に係る事故情報算出装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0109】
このように、第2の実施の形態の事故情報算出装置によれば、複数種類の事故の各々について、事故統計情報及び運転情報と、事故が発生した条件下での事故に対応する特徴量の各値が得られる確率に関する制約条件とに基づいて、特徴量の各値に対して事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いる複数のパラメータを算出し、算出された複数のパラメータを用いた当該関数を算出し、対象ドライバの車両の運転行動に関する複数の特徴量の各々の値を取得し、複数の特徴量の各々の値、及び算出された複数種類の事故の各々について算出された関数に基づいて、複数種類の事故の各々について事故が発生しない確率を算出し、対象ドライバの車両の運転行動について、無事故確率として評価することにより、取得可能な統計量を用いてドライバの運転を診断することができる。
【0110】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態に係る事故情報算出装置の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0111】
第3の実施の形態では、特徴量A
iを多次元特徴量へ拡張し、特徴量A
iをn次元ベクトルとして取得する点が、第1及び第2の実施の形態と異なっている。
【0112】
第3の実施の形態の統計情報データベース24には、車両の運転行動に関する複数次元の特徴量A
iの各次元についての各値が得られる確率p(A
i)を表す運転情報と、複数次元の特徴量A
iに起因して生じる事故X
iが発生する確率を表す事故統計情報とが格納されている。
【0113】
また、第3の実施の形態に係る事故情報算出装置のコンピュータでは、特徴量取得部28は、複数種類の事故X
iの各々について、対象ドライバの運転行動に関する複数次元の特徴量A
iの値を取得する。
例えば、特徴量取得部28は、上記表1の脇見による事故に対して、脇見運転距離だけでなく、車速センサ16によって検出された車両の速度、前方カメラ20によって撮像された前方画像から得られる歩行者の有無等を、対象ドライバの運転行動に関する複数次元の特徴量A
i(=(A
i,1,A
i,2,・・・,A
i,n))の各次元の値として取得する。
また、上記表1の追突事故に対して、車間距離だけでなく、ドライバカメラ22から取得したドライバ画像から検出したドライバの閉眼度合い等を、対象ドライバの運転行動に関する複数次元の特徴量A
i(=(A
i,1,A
i,2,・・・,A
i,n))の各次元の値として取得してもよい。
【0114】
算出部32は、統計情報取得部30によって取得された運転情報及び事故統計情報と、複数次元の特徴量A
iの各次元についての事故X
iが発生した条件下での当該次元の各値が得られる確率に関する制約条件とに基づいて、特徴量A
iの各次元の各値に対して事故X
iが発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出されたパラメータを用いた関数を算出する。
【0115】
算出部32は、ベイズの定理を用い、かつ複数次元の特徴量A
iの各次元が互いに独立又は従属であると仮定して、パラメータを算出する。
具体的には、複数次元の特徴量A
iの各次元の値は、互いに独立又は互いに従属して得られると仮定する。特徴量取得部28によって取得される複数次元の特徴量A
iが、A
i=(A
i,1,A
i,2,・・・,A
i,n)というようにn次元である場合には、各特徴A
i,1, A
i,2,・・・, A
i,nを独立または従属と仮定することで、上記式(7)を、以下の式(18)又は式(19)に示すように近似し、さらに以下の式(20)を用いることで、n個の未知数が算出可能となる。以下の式(20)は、複数次元の特徴量A
iの各次元についての事故X
iが発生した条件下での当該次元の各値が得られる確率に関する制約条件の一例である。
【0117】
したがって、p(X
i|A
i)の未知のパラメータがn個以下になるようにp(X
i|A
i)を定義すればよく、例えばp(X
i|A
i)を以下の式(21)の多変量正規分布の関数で近似する方法が考えられる。
【0119】
v
iはパラメータを表し、Σ
iはパラメータ行列を表し、A
refは予め設定したベクトルを表す。なお、第3の実施の形態で求めることができるパラメータの数はn個であるため、上記式(21)のパラメータの数がn個以下になるように、一部のパラメータを経験的に定めたり、別の情報に基づいて予め定めておく。以上のようにして、多次元特徴量に起因する事故に対しても対応可能になると考えられる。
【0120】
運転行動評価部34は、特徴量取得部28によって取得された特徴量の値、及び算出部32によって算出された複数種類の事故の各々について算出されたガウス関数に基づいて、複数種類の事故の各々について当該事故X
iが発生しない確率(1−p(X
i|A
i))を算出する。そして、運転行動評価部34は、対象ドライバの車両の運転行動について、複数種類の事故の各々に対して算出される事故が発生しない確率(1−p(X
i|A
i))の積を、事故が起こらない確率を表す無事故確率p
safeとして算出する。
【0121】
なお、第3の実施の形態に係る事故情報算出装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0122】
このように、第3の実施の形態の事故情報算出装置によれば、運転情報及び事故統計情報と、複数次元の特徴量の各次元についての事故が発生した条件下での当該次元の各値が得られる確率に関する制約条件とに基づいて、特徴量の各次元の各値に対して事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出されたパラメータを用いた関数を算出し、対象ドライバの車両の運転行動に関する複数の特徴量の各々の値を取得し、複数の特徴量の各々の値、及び算出された複数種類の事故の各々について算出された関数に基づいて、複数種類の事故の各々について事故が発生しない確率を算出し、対象ドライバの車両の運転行動について、無事故確率として評価することにより、複数次元の特徴量に対してドライバの運転を診断することができる。
【0123】
なお、第3の実施の形態では、上記式(21)の多変量正規分布の関数に代えて、以下の式(22)の線形関数、式(23)のシグモイド関数で近似することもできる。
【0125】
v
i及びw
i,jはパラメータを表す。なお、上記式(21)と同様に、第3の実施の形態で求めることができるパラメータの数はn個であるため、上記式(22)〜式(23)のパラメータの数がn個以下になるように、一部のパラメータを経験的に定めたり、別の情報に基づいて予め定めておく。
【0126】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第4の実施の形態に係る事故情報算出装置の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0127】
第4の実施の形態では、時々刻々と変化する特徴量A
iに対して無事故確率の算出を行う点が、第1〜第3の実施の形態と異なっている。
【0128】
上記第1〜第3の実施の形態で算出したp
safe(A
1,A
2,・・・)は、ある瞬間の状態(A
1,A
2,・・・)が一定期間持続した際の事故を起こさない確率を意味している。例えば、p(X
i)を「l[km]走行当たりの事故確率」とした場合、p
safe(A
1,A
2,・・・)は「状態(A
1,A
2,・・・)を維持してl[km]走行した場合の事故確率」を意味する。
しかし、実際には同じ運転状態を持続する事は稀であるため、第4の実施の形態では、時々刻々と変化する運転状態に対しての無事故確率の算出を行う。
【0129】
はじめに、任意の物理量L
iを定義する。ただし同時に、特徴量A
iに対する条件付き事故確率p(X
i|A
i)は「特徴量A
iの値が一定のまま対象の運転がL
iを満たすまでに事故が発生する確率」として定義される。例えば、L
iは走行距離や走行時間等が該当し、L
iを走行距離とするとp(X
i|A
i)は「特徴量A
iの値が一定のままL
i[km]の走行を満たすまでに事故が発生する確率」となる。ここで、物理量L
iに対して特徴量A
iの状態である区間の総和をl
i(A
i)とすると、対象の運転がl
i(A
i)を満たすまでに事故X
iが発生しない確率(事故X
iに対する無事故確率)q
safe(X
i|A
i,l
i(A
i))を定義したとき、以下の式(24)が成立する。
【0131】
したがって、特徴量A
iの値が時々刻々と変化する中、対象の運転がL
iを満たすまでの無事故確率q
safeは、以下の式(25)のように与えられる。
【0133】
ここで、S
iはA
iの非可算集合(A
iの取り得る全ての値の集合)である。
【0134】
例えば、任意の物理量L
iとして走行距離を用いる場合には、特徴量取得部28は、対象ドライバの車両の運転行動に関する特徴量A
iの値、及び特徴量A
iの値が得られているときの走行距離l
i(A
i)を取得する。
そして、運転行動評価部34は、特徴量取得部28によって取得された特徴量A
iの値及び走行距離l
i(A
i)と、算出部32によって複数種類の事故の各々について算出された、予め定められた走行距離L
iまでに特徴量A
iの各値に対して事故X
iが発生する確率p(X
i|A
i)を近似した関数とに基づいて、対象ドライバの車両の運転行動について、複数種類の事故の各々に対して算出される事故が発生しない確率(1−p(X
i|A
i))の積を、無事故確率q
safe(A
1,A
2,・・・)を算出する。
【0135】
なお、第3の実施の形態に係る事故情報算出装置の他の構成及び作用については、第1〜第3の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0136】
第4の実施の形態の事故情報算出装置によれば、取得された特徴量の値、及び継続時間又は走行時間と、予め定められた継続時間又は走行時間までに特徴量の各値に対して事故が発生する確率を近似した関数とに基づいて、対象ドライバの車両の運転行動について、複数種類の事故の各々に対して算出される事故が発生しない確率の積を、無事故確率として評価することにより、時々刻々と変化する特徴量に対して無事故確率の算出をすることができる。
【0137】
なお、上記の第4の実施の形態では、任意の物理量L
iとして走行距離を用いた場合を例に説明したが、任意の物理量L
iとして走行時間を用いるようにしてもよい。この場合には、p(X
i|A
i)は「特徴量A
iの値が一定のまま継続した走行時間がL
i時間の走行を満たすまでに事故が発生する確率」となる。特徴量取得部28は、対象ドライバの車両の運転行動に関する特徴量A
iの値、及び特徴量A
iの値の継続時間l
i(A
i)を取得する。そして、運転行動評価部34は、特徴量取得部28によって取得された特徴量A
iの値及び継続時間l
i(A
i)と、算出部32によって複数種類の事故の各々について算出された、予め定められた継続時間L
iまでに特徴量A
iの各値に対して事故X
iが発生する確率p(X
i|A
i)を近似した関数とに基づいて、対象ドライバの車両の運転行動について、複数種類の事故の各々に対して算出される事故が発生しない確率(1−p(X
i|A
i))の積を、無事故確率q
safe(A
1,A
2,・・・)を算出する。
【0138】
また、上記の実施の形態では、事故情報算出装置が車両に搭載されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えばサーバ等によって、事故情報算出装置が実現されてもよい。この場合には、複数のドライバの運転行動に関する特徴量の値を収集して、車両の運転行動に関する複数の特徴量A
iについての各値が得られる確率p(A
i)を表す運転情報を求めるようにしてもよい。また、リアルタイムに逐次特徴量を取得し、対象ドライバの運転行動を評価してもよい。
【0139】
また、上記の実施の形態では、取得された特徴量の値に対して事故が発生する確率を算出し、算出された事故が発生する確率に基づいて、事故が起こらない確率を表す無事故確率を算出する事故情報算出装置に本発明を適用させた場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、統計情報取得部30は、車両の運転行動に関する特徴量の各値が得られる度合いを表す運転情報と、特徴量に起因して生じる事故が発生する度合いを表す事故統計情報とを取得し、算出部32は、統計情報取得部30によって取得された運転情報及び事故統計情報と、事故が発生した条件下での特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、特徴量の各値に対して事故が発生する度合いを算出してもよい。この場合には、対象ドライバの無事故確率を算出するわけではなく、特徴量の各値に対して事故が発生する度合いを算出することができる。
また、特徴量の各値に対して事故が発生する度合いを算出する場合には、算出部32は、統計情報取得部30によって取得された運転情報及び事故統計情報と、事故が発生した条件下での特徴量の各値が得られる度合いに関する制約条件とに基づいて、特徴量の各値に対して事故が発生する度合いを近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出されたパラメータを用いた関数を、特徴量の各値に対して前記事故が発生する度合いとして算出してもよい。
【0140】
または、特徴量取得部28は、対象ドライバの車両の運転行動に関する特徴量の値を取得し、運転行動評価部34は、特徴量取得部28によって取得された特徴量の値、及び算出部32によって算出された特徴量の各値に対して事故が発生する度合いに基づいて、対象ドライバの車両の運転行動について、事故が発生する度合い又は事故が発生しない度合いを評価してもよい。この場合には、確率を算出するわけではなく、事故が発生する度合い又は事故が発生しない度合いを算出することができる。
【0141】
上記のように、特徴量の各値に対して事故が発生する度合い又は事故が発生しない度合いを算出する場合には、確率を算出しないため、上記式(7)に示したベイズの定理は、確率法則として用いずに、非線形関数同士の関係として用いる。
【0142】
また、上記の実施の形態では、無事故確率を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、統計情報取得部30は、車両の運転行動に関する特徴量の各値が得られる確率を表す運転情報と、特徴量に起因して生じる事故が発生する確率を表す事故統計情報とを取得し、算出部32は、統計情報取得部30によって取得された運転情報及び事故統計情報と、事故が発生した条件下での特徴量の各値が得られる確率に関する制約条件とに基づいて、特徴量の各値に対して事故が発生する確率を近似した予め定められた関数で用いるパラメータを算出し、算出されたパラメータを用いた関数のみを算出してもよい。
【0143】
また、上記の実施の形態では、特徴量取得部28によって取得された特徴量の各値に対して事故が発生する確率を算出する場合を例に説明したが、特徴量取得部28によって取得された特徴量の各値に対して事故が発生しない確率を算出してもよい。
【0144】
また、上記の実施の形態では、横方向加速度センサ12によって検出された横方向加速度と、前後方向加速度センサ14によって検出された前後方向加速度と、一時停止時の通過速度と、車間距離センサ18によって検出された車間距離と、一時停止時の通過速度と、脇見運転距離と、赤信号時の交差点通過時間とを、ドライバの運転行動に関する複数の特徴量として取得する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の特徴量を取得してもよい。
【0145】
なお、本発明のプログラムは、記録媒体に格納して提供することができる。