(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数階建の建設物の建設現場に存在する人に保持される、気圧を計測して計測データを出力する気圧センサ、及び、該気圧センサから出力される前記計測データを発信する無線発信機と、
前記無線発信機から発信される前記計測データを受信する無線受信機と、
前記建設現場の基準高さに設置され、当該基準高さの気圧を計測して計測データを出力する基準気圧センサと、
前記無線受信機が受信した前記計測データと、前記基準気圧センサから出力された前記計測データとに基づいて前記建設現場に存在する人の所在階を求める演算部と、
前記演算部によって求められた前記所在階のみ照明を点灯させる照明制御部と
を備える建設現場管理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高層ビルの建設現場では、作業員の所在階までは管理しておらず、作業員が不在の階でも照明を点灯させていたことから、電力の浪費があった。ここで、上記特許文献1に記載のシステムを用いて作業員の所在階を管理することも考えられるが、建設中の高層ビルでの作業員の移動経路は多種多様であるから、作業員の各階への出入を管理するのは困難である。また、人感センサを用いて各階での作業員の有無を検出することも考えられるが、工事が上の階に進むのに合わせて、人感センサの盛り替え作業が発生するため、運用するのに手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建設現場において人や物の所在階を把握して照明の点灯/消灯を管理するための運用の手間を要しないシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る建設現場管理システムは、複数階建の建設物の建設現場に存在する人に保持される、気圧を計測して計測データを出力する気圧センサ、及び、該気圧センサから出力される前記計測データを発信する無線発信機と、前記無線発信機から発信される前記計測データを受信する無線受信機と、前記建設現場の基準高さに設置され、当該基準高さの気圧を計測して計測データを出力する基準気圧センサと、前記無線受信機が受信した前記計測データと、前記基準気圧センサから出力された前記計測データとに基づいて前記建設現場に存在する人の所在階を求める演算部と、前記演算部によって求められた前記所在階のみ照明を点灯させる照明制御部とを備える。
【0007】
また、前記建設現場管理システムにおいて、前記気圧センサ及び前記無線発信機は、人が被るヘルメットに取付けられてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、建設現場において人や物の所在階を把握して照明の点灯/消灯を管理するための運用の手間を要しないシステムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る建設現場管理システム10を示す図である。この図に示すように、建設現場管理システム10は、建設中の高層ビルの各階に設置された仮設の照明1の点灯/消灯と、作業員2の所在とを管理するシステムである。
【0011】
建設現場管理システム10は、作業員2が装着する樹脂製のヘルメット3に取り付けられた発信機20と、地上階に設置された基準気圧センサ12と、建設中の高層ビルの各階に設置された照明用の分電盤14、主受信機16及び中継受信機18と、照明1を制御する制御盤30と、管理サーバ40とを備えている。
【0012】
基準気圧センサ12は、制御盤30に接続されており、地上階の絶対圧力(基準気圧P0)を計測して計測データを制御盤30へ出力する。また、各階の照明用の分電盤14は、制御盤30に接続されており、制御盤30から送信される点灯/消灯の制御信号に応じて各階の照明1を点灯/消灯させる。
【0013】
また、発信機20、主受信機16及び中継受信機18は、無線通信システムを構成しており、発信機20から発信されたデータが、中継受信機18により中継されて或は直接に主受信機16に受信される。主受信機16は、制御盤30に接続されており、受信したデータを制御盤30へ送信する。
【0014】
ここで、本実施形態では、建設中の高層ビルを対象としているところ、各階の面積が広く、また、各階に間仕切りが多く存在するが、かかる状況において、良好に無線通信を行う必要がある。そこで、本実施形態では、920MHz帯の無線通信システムを採用している。
【0015】
図2は、発信機20の概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、発信機20は、無線チップ22、電池23、及び気圧センサ24を備える。これらは基板に実装されており、ケースに収納されている。無線チップ22は、本実施形態では920MHz帯無線通信モジュールであり、予め割り当てられたIDと気圧センサ24の計測データとを中継受信機(FM)18又は主受信機(FS)16に送信する。無線チップとしては、例えば、アールエフリンク社製のRM−924(IEEE802.15.4g/e準拠)や、同社製のRM−920(同社独自通信規格)等を採用できる。また、電池23は、ボタン電池等であり、無線チップ22及び気圧センサ24の電源になる。
【0016】
気圧センサ24は、小型の絶対圧センサであり、例えば、ST−MICRO社製のLPS25HやOMRON社製の2SMPB−01やVTI TECHNOLOGIES社製のSCP1000等を採用できる。ここで、気圧センサ24は、温度センサを内蔵しており、気圧の計測データ(気圧P1)と共に気温の計測データ(気温T)を出力する。
【0017】
制御盤30は、制御回路と動力回路とを備える。制御盤30の制御回路は、主受信機16から送信された気圧P1及び温度Tの計測データと、基準気圧センサ12から出力された基準気圧P0の計測データとに基づいて、作業員2の所在階Nを求める。そして、制御盤30の制御回路は、作業員2の所在階Nの照明1が点灯される一方、作業員2がいない階の照明1が消灯されるように、動力回路のスイッチやインバーターを動作させる。
【0018】
制御盤30の制御回路は、気圧P1と基準気圧P0との差(差圧(P0−P1))と、気圧P1を計測した気圧センサ24の所在階(即ち、作業員2の所在階)Nとの関係を示すマップや演算式等の関係情報を記憶している。当該関係情報では、差圧(P0−P1)が大きくなるほど所在階Nが上がるように、両者が対応付けられている。
【0019】
また、制御盤30の制御回路は、気圧P1及び基準気圧P0を気温Tに応じて補正するためのマップや演算式等の補正情報を記憶している。当該補正情報では、例えば、気温Tが基準値(例えば、20℃)T0より高い場合に、その差に応じて、気圧P1と基準気圧P0とが実測値よりも低い値に補正されるのに対して、気温Tが上記基準値T0よりも低い場合に、その差に応じて、気圧P1と基準気圧P0とが実測値よりも高い値に補正される。
【0020】
制御盤30の制御回路は、上記補正情報に基づいて、気圧P1及び基準気圧P0を気温Tに応じて補正し、補正した気圧P1と基準気圧P0との差(差圧(P0−P1))に対応する所在階Nを、上記関係情報に基づいて求める。
【0021】
図3は、管理サーバ40の概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、管理サーバ40は、データ受信部42と、演算部44と、データ管理部46と、データベース(DB)48と、表示制御部50とを備えている。データ受信部42は、主受信機16から送信されたIDと気圧P1及び気温Tの計測データ、及び基準気圧センサ12から出力された基準気圧P0の計測データとを受信する。
【0022】
演算部44は、制御盤30の制御回路と同様に、作業員2の所在階Nを演算する。データ管理部46は、演算部44が演算した作業員2の所在階NをIDと対応させてDB48に格納する。表示制御部50は、DB48に格納されている作業員2のIDと所在階とをモニタ等に表示させる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態に係る建設現場管理システム10は、建設中の高層ビルに存在する作業員2に保持され、気圧を計測して計測データを出力する気圧センサ24と、上記作業員2に保持され、気圧センサ24から出力される計測データを発信する無線チップ22と、無線チップ22から発信される計測データを受信する主受信機16と、上記建設中の高層ビルの基準高さに設置に設置され、当該基準高さの気圧を計測して計測データを出力する基準気圧センサ12と、主受信機16が受信した気圧P1の計測データと、基準気圧センサ12から出力された基準気圧P0の計測データとに基づいて作業員2の所在階Nを求め、求めた所在階Nのみ照明1を点灯させる制御盤30とを備える。
【0024】
即ち、本実施形態に係る建設現場管理システム10では、建設中の高層ビルにおいて無線通信ステムが構築され、作業員2に無線チップ22及び気圧センサ24が保持されていることによって、作業員2がどのような経路で作業階に出入りしようとも、作業員2の所在階Nを把握できる。また、人感センサを設置する場合に行われるセンサの盛り替え作業のような手間を要することなくシステムを運用できる。
【0025】
そして、本実施形態に係る建設現場管理システム10では、制御盤30が、作業員2の所在階Nを求めて、作業員2の所在階Nの照明1は点灯させる一方、作業員2が不在の階の照明1を消灯することにより、照明1の点灯/消灯の人為的な管理を要することなく、消費電力を節減できる。
【0026】
また、本実施形態に係る建設現場管理システム10では、管理サーバ40において、作業員2のIDと所在階Nとが対応付けてDB48に格納される。これによって、IDによって識別される作業員2が作業している階を把握でき、人員の配置の状況や工事の進捗状況を容易に確認できる。
【0027】
また、本実施形態に係る建設現場管理システム10では、無線チップ22及び気圧センサ24を有する発信機20を作業員2の被る樹脂製のヘルメット3に取付けている。これによって、作業員2の体内の水分の影響が電波に及ぶことを防止でき、良好に無線通信を行うことができる。
【0028】
図4は、参考例に係る建設現場管理システム100を示す図である。この図に示すように、建設現場管理システム100は、建設中の高層ビルで使用される高所作業車4の所在階を把握するためのシステムである。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0029】
建設現場管理システム100は、高所作業車4に取り付けられた発信機20と、地上階に設置された基準気圧センサ12と、建設中の高層ビルの各階に設置された主受信機16及び中継受信機18と、管理サーバ110とを備えている。
【0030】
基準気圧センサ12は、管理サーバ110に接続されており、基準気圧P0を計測して計測データを管理サーバ110へ出力する。また、発信機20、主受信機16及び中継受信機18は、無線通信システムを構成しており、発信機20から発信されたデータが、中継受信機18により中継されて或は直接に主受信機16に受信される。ここで、発信機20は、予め割り当てられたIDと、気圧センサ24から出力された気圧P1の計測データとを送信する。また、主受信機16は、制御盤30に接続されており、受信したデータを管理サーバ110へ送信する。
【0031】
図5は、管理サーバ110の概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、管理サーバ110は、データ受信部112と、演算部114と、データ管理部116と、データベース(DB)118と、表示制御部120とを備えている。データ受信部112は、主受信機16から送信された気圧P1の計測データとID、及び基準気圧センサ12から出力された基準気圧P0の計測データを受信する。
【0032】
演算部114は、気圧P1と基準気圧P0との差圧(P0−P1)、温度Tと、気圧P1を計測した気圧センサ24の所在階(即ち、作業員2の所在階)Nとの関係を示すマップや計算式等の関係情報を記憶している。一方、演算部114は、常時、気圧センサ24及び基準気圧センサ12から出力される計測データと無線チップ22から送信されるIDとを受信しており、常時、受信した計測データと上記関係情報とから、当該IDが割り当てられた高所作業車4の所在階Nを求めている。
【0033】
データ管理部116は、演算部114で演算された高所作業車4の所在階NをIDと対応させてDB118に格納する。表示制御部120は、DB118に格納されている高所作業車4のIDと所在階Nとをモニタ等に表示させる。
【0034】
即ち、本参考例に係る建設現場管理システム100では、建設中の高層ビルにおいて無線通信ステムが構築され、高所作業車4に無線チップ22及び気圧センサ24が保持されていることによって、高所作業車4がどのような経路で作業階に搬入又は搬出されようとも、高所作業車4の所在階Nを把握できる。また、人感センサを設置する場合行われるセンサの盛り替え作業のような手間を要することなくシステムを運用できる。
【0035】
そして、本実施形態に係る建設現場管理システム100では、管理サーバ110において、高所作業車4のIDと所在階Nとが対応付けてDB118に格納される。これによって、IDによって識別される高所作業車4の所在階Nを把握でき、高所作業車4の使用状況を容易に確認できる。従って、高所作業車4の使用率が低ければ返却する等して、リースやレンタルの費用を節減することが可能になる。
【0036】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、基準気圧センサ12を地上階に設置して地上階の気圧を基準気圧P0としたが、基準気圧センサ12を中間階や地下階に設置して中間階や地下階の気圧を基準気圧P0としてもよい。
【0037】
また、上述の実施形態では、920MHz帯の無線通信システムを採用したが、周波数は、建設現場の状況に応じて適宜設定すればよい。また、上述の実施形態では、制御盤30と管理サーバ40とを別々に設け、制御盤30により分電盤14を制御する構成を採用したが、管理サーバ40により分電盤14を制御する構成を採用してもよい。
【0038】
また、上述の実施形態では、上階の主受信機16と下階の主受信機16との通信を無線通信としたが、通信状況が悪い場合等に該通信を有線によるものとしてもよい。さらに、上述の実施形態では、基準気圧センサ12を所定の一の階に設置しているが、基準圧力P0を多点で計測する必要がある場合等には、基準気圧センサ12を複数階に設置してもよく、その場合、基準気圧センサ12を主受信機16に内蔵してもよい。
【0039】
また、上述の参考例では、高所作業車4を管理するシステムを例に挙げて本発明を説明したが、移動式クレーンやフォークリフトや油圧ショベル等の建設現場で使用される他の機器の稼働状況を管理するシステムにも本発明を適用できる。