特許第6365154号(P6365154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365154
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20180723BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F25B9/00 Z
   B23Q11/12 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-185305(P2014-185305)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-57023(P2016-57023A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−080839(JP,A)
【文献】 特開2006−002738(JP,A)
【文献】 特開2006−266571(JP,A)
【文献】 米国特許第04114380(US,A)
【文献】 特開2000−015541(JP,A)
【文献】 特開2003−101271(JP,A)
【文献】 特開2012−067657(JP,A)
【文献】 特開2003−117770(JP,A)
【文献】 特開2000−205677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00 − 11/04
B23Q 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動ガスが封入されるループ管と、前記ループ管に設けられ第一高温側熱交換器及び第一低温側熱交換器に挟まれ熱の移送方向に複数の導通路を有する第一スタックと、前記ループ管に設けられ第二高温側熱交換器及び第二低温側熱交換器に挟まれ熱の移送方向に複数の導通路を有する第二スタックを備え、前記第一高温側熱交換器を加熱し、前記第一スタックの両端で温度勾配を生じさせることによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波により前記第二低温側熱交換器を冷却する熱音響装置と、
流体を供給する流体供給手段を、少なくも1つ備える工作機械において、
前記第一高温側熱交換器を、自らの構成装置の排熱で温度が上昇した前記流体である高温流体で加熱し、前記第一低温側熱交換器を前記流体により冷却し、前記第二低温側熱交換器により自らの構成部位を冷却する工作機械。
【請求項2】
前記流体は、回転軸の軸受部を冷却する軸受冷却流体、加工部を冷却する加工液、空気のいずれかであり、
前記高温流体は、軸受部を冷却した後に温度が上昇した前記軸受冷却流体である高温軸受冷却流体、加工部を冷却した後に温度が上昇した前記加工液である高温加工液、電気機器を冷却した後に温度が上昇した前記空気である高温空気のいずれかである請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第二高温側熱交換器を、前記軸受冷却流体、前記加工液、前記空気のいずれかで冷却する請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記軸受冷却流体、前記加工液、前記空気のいずれかを、前記第二低温側熱交換器により冷却する請求項2または請求項3に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の構成部位の冷却に関し、特に熱音響効果を利用した冷却に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械の回転軸は、軸受部で発熱するため、焼付きや熱膨張による変位を防止するため、軸受部が冷却されているものがある(特許文献1)。
また、熱音響効果を利用した冷却技術がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−117770号公報
【特許文献2】特開2000−205677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術では、軸受部を冷却する冷却油を冷却するために冷却装置を備えており、冷却装置の運転のためにエネルギーを要している。
特許文献2に記載の従来技術には、住居、倉庫、農業用ハウス、車載クーラに熱音響効果を利用した冷却を応用する技術が記載されているが、工作機械における有用な応用方法は示されていない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、熱音響効果を応用して、冷却装置の消費エネルギーを削減できる工作機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、作動ガスが封入されるループ管と、前記ループ管に設けられ第一高温側熱交換器及び第一低温側熱交換器に挟まれ熱の移送方向に複数の導通路を有する第一スタックと、前記ループ管に設けられ第二高温側熱交換器及び第二低温側熱交換器に挟まれ熱の移送方向に複数の導通路を有する第二スタックを備え、前記第一高温側熱交換器を加熱し、前記第一スタックの両端で温度勾配を生じさせることによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波により前記第二低温側熱交換器を冷却する熱音響装置と、流体を供給する流体供給手段を、少なくも1つ備える工作機械において、前記第一高温側熱交換器を、自らの構成装置の排熱で温度が上昇した前記流体である高温流体で加熱し、前記第一低温側熱交換器を前記流体により冷却し、前記第二低温側熱交換器により自らの構成部位を冷却することである。
【0007】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1に係る発明において、前記流体は、回転軸の軸受部を冷却する軸受冷却流体、加工部を冷却する加工液、空気のいずれかであり、
前記高温流体は、軸受部を冷却した後に温度が上昇した前記軸受冷却流体である高温軸受冷却流体、加工部を冷却した後に温度が上昇した前記加工液である高温加工液、電気機器を冷却した後に温度が上昇した前記空気である高温空気のいずれかであることである。
【0008】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2に係る発明において、前記第二高温側熱交換器を、前記軸受冷却流体、前記加工液、前記空気のいずれかで冷却することである。
【0009】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項2または請求項3に係る発明において、前記軸受冷却流体、前記加工液、前記空気のいずれかを、前記第二低温側熱交換器により冷却することである。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、自らの構成装置の排熱により高温となった高温流体により、熱音響装置の第一高温側熱交換器を加熱することによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波により第二低温側熱交換器を冷却できる。排熱を利用して低温となった第二低温側熱交換器により自らの構成部位を冷却するので、冷却のための消費エネルギーが小さい工作機械を実現できる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、第一低温側熱交換器を軸受冷却流体、加工液、空気により冷却し、高温流体として、高温軸受冷却流体、高温加工液、高温空気を利用した工作機械を実現できる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、第二高温側熱交換器を、軸受冷却流体、加工液、空気のいずれかで冷却するので、第二低温側熱交換器を、加工液と軸受冷却流体と空気のいずれかより低温とすることができる。以上より、熱音響効果の作用が大きく、第二低温側熱交換器をより低温にできる工作機械を実現できる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、自らの排熱で軸受冷却流体、加工液、空気のいずれかをより低温とすることができ、それらを用いて自らの構成部位を効率的に冷却できる工作機械を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自らの排熱を利用した熱音響装置により自らの構成部位を冷却することができるので、冷却のための消費エネルギーを削減できる工作機械を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施形態の工作機械の全体構成を示す概略図である。
図2】第一実施形態の冷却機構の詳細を示す図である。
図3】第二実施形態の冷却機構の詳細を示す図である。
図4】第三実施形態の冷却機構の詳細を示す図である。
図5】第四実施形態の冷却機構の詳細を示す図である。
図6】第五実施形態の冷却機構の詳細を示す図である。
図7】第六実施形態の冷却機構の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第一実施形態を、回転工具を用いて切削加工を行う工作機械に基づき説明する。
図1に示すように、工作機械1は、ベッド2の上に工作物Wと、主軸3により回転可能に支持された工具4を備えている。工作物Wと主軸3は、図示しない送り装置により相対移動可能である。工具4の回転に伴う主軸3の発熱を冷却するための軸受冷却流体供給装置5と、加工中の工作物Wと工具4を冷却するためのノズル9と加工液供給装置6を備えている。さらに、軸受冷却流体を冷却するために、熱音響装置7を備えている(詳細は後ほど説明する)。また、工作機械本体と軸受冷却流体供給装置5と加工液供給装置6の作動を制御するための制御装置8を備えている。
【0017】
図2に熱音響装置7と主軸冷却回路の詳細を示す。
熱音響装置7は、ヘリウムやネオンなどの作動ガスを封入したループ管71と、このループ管71の一方側に設けられ、第一高温側熱交換器74及び第一低温側熱交換器72に挟まれた第一スタック73と、このループ管71の他方側に設けられ、第二高温側熱交換器75及び第二低温側熱交換器77に挟まれる第二スタック76を備えている。第一高温側熱交換器74、第一低温側熱交換器72、第一スタック73と、第二高温側熱交換器75、第二低温側熱交換器77、第二スタック76はループ管71の軸方向に連通する複数の導通路を有している。さらに、第一高温側熱交換器74、第一低温側熱交換器72、第二高温側熱交換器75、第二低温側熱交換器77は軸方向に直交する流路を備え、流路内に流体を通過させることで効率的に熱交換ができる。
ここで、第一高温側熱交換器74を加熱し、第一低温側熱交換器72を冷却し、第一スタック73の両端で温度勾配を生じさせると、自励により作動ガスに定在波及び進行波が発生する。この波がループ管に沿って第二高温側熱交換器75及び第二低温側熱交換器77に挟まれる第二スタック76まで到達すると、波の進行方向と逆の方向に熱を移送させる。すなわち、第二低温側熱交換器77の温度が第二高温側熱交換器75の温度より低くなる。
【0018】
主軸3は本体31に保持されたハウジング32により軸受33を介してスピンドル34を回転自在に支持している。スピンドル34は先端に工具4を保持し、図示しないモータにより回転し、軸受33の摩擦による発熱によりハウジング32は温度上昇する。
軸受冷却流体供給装置5から管路51、第二低温側熱交換器77、管路36を経由して主軸3に軸受冷却流体を供給する。ハウジング32の外周には溝が設けられており、管路36を経由して供給された軸受冷却流体がハウジング32の外周を循環して管路35に排出される。このとき、軸受冷却流体はハウジング32の熱を奪い温度が上昇し、高温軸受冷却流体となる。その後、管路35を経由して第一高温側熱交換器74を加熱して管路52を経由して軸受冷却流体供給装置5に還流する。
加工液供給装置6から、管路61を経由して第一低温側熱交換器72と、管路62を経由して第二高温側熱交換器75に加工液を供給する。通常、加工液供給装置6は空冷されており、加工液の温度はほぼ室温である。
【0019】
上記の管路構成により、第一低温側熱交換器72と第二高温側熱交換器75は加工液により室温に近い温度に冷却され、第一高温側熱交換器74は温度が上昇した軸受冷却流体である高温軸受冷却流体により高温に加熱される。この結果、第一低温側熱交換器72と第一高温側熱交換器74の間で温度勾配が生じ、作動ガスに自励による波が発生する。
この波がループ管に沿って第二高温側熱交換器75及び第二低温側熱交換器77に挟まれる第二スタック76まで到達すると、第二低温側熱交換器77の温度が第二高温側熱交換器75の温度より低くなる。すなわち、第二低温側熱交換器77の温度が室温より低くなり、第二低温側熱交換器77内を経由して主軸3に供給される軸受冷却流体を冷却することができる。
【0020】
以上の構造により、主軸3で発生する排熱を用いて主軸3に供給する軸受冷却流体を冷却することが可能となり、主軸3の冷却に要するエネルギー消費の少ない工作機械を実現できる。
ここでは、軸受33として転がり軸受を使用した主軸3の例を示したが、軸受として静圧油軸受を用いる場合は、軸受ポケットからの排出油を高温流体として用いてもよい。
【0021】
次に、第二実施形態について図3に基づき説明する。
これは、主軸3の排熱を利用して加工液の冷却を行うものである。主軸3、軸受冷却流体供給装置5、加工液供給装置6と熱音響装置7の構造は第一実施形態と同様である。軸受冷却流体供給装置5から管路53を経由して主軸3に軸受冷却流体を供給する。軸受冷却流体はハウジング32の熱を奪い温度が上昇し、高温軸受冷却流体となる。その後、管路35を経由して第一高温側熱交換器74を加熱して管路52を経由して軸受冷却流体供給装置5に還流する。軸受冷却流体供給装置5では空冷により軸受冷却流体を室温近くに冷却する。
加工液供給装置6から供給される加工液は、管路61を経由して第一低温側熱交換器72、管路62を経由して第二高温側熱交換器75、管路65を経由して第二低温側熱交換器77に供給される。第二低温側熱交換器77を経由した加工液は管路91によりノズル9に供給され、加工部で工具4と工作物Wを冷却する。
【0022】
上記の管路構成により、第一低温側熱交換器72と第二高温側熱交換器75は加工液により室温に近い温度に冷却され、第一高温側熱交換器74は温度が上昇した軸受冷却流体である高温軸受冷却流体により高温に加熱される。この結果、第一低温側熱交換器72と第一高温側熱交換器74の間で温度勾配が生じ、自励による波が発生する。
この波がループ管に沿って第二高温側熱交換器75及び第二低温側熱交換器77に挟まれる第二スタック76まで到達すると、第二低温側熱交換器77の温度が第二高温側熱交換器75の温度より低くなる。すなわち、第二低温側熱交換器77の温度が室温より低くなり、第二低温側熱交換器77内を経由して加工部に供給される加工液を冷却することができる。
【0023】
以上の構造により、主軸3で発生する排熱を用いて加工部に供給する加工液を冷却することが可能となり、加工液の冷却に要するエネルギー消費の少ない工作機械を実現できる。
【0024】
次に、第三実施形態について図4に基づき説明する。
これは、第一実施形態における加工液供給装置6に換えて空気圧供給装置11を備えたもので、主軸3の排熱を利用して主軸3に供給する軸受冷却流体の冷却を行うものである。主軸3、軸受冷却流体供給装置5と熱音響装置7の構造は第一実施形態と同様である。軸受冷却流体供給装置5から管路51、第二低温側熱交換器77、管路36を経由して主軸3に軸受冷却流体を供給する。軸受冷却流体はハウジング32の熱を奪い温度が上昇し、高温軸受冷却流体となる。その後、管路35を経由して第一高温側熱交換器74を加熱して管路52を経由して軸受冷却流体供給装置5に還流する。
空気圧供給装置11から供給されるほぼ室温の空気は、管路111を経由して第一低温側熱交換器72を通過し、管路112を経由して第二高温側熱交換器75を通過して大気中に放出される。
【0025】
上記の管路構成により、第一低温側熱交換器72と第二高温側熱交換器75は空気により室温に近い温度に冷却され、第一高温側熱交換器74は温度が上昇した軸受冷却流体である高温軸受冷却流体により高温に加熱される。この結果、第一低温側熱交換器72と第一高温側熱交換器74の間で温度勾配が生じ、自励による波が発生する。
この波がループ管に沿って第二高温側熱交換器75及び第二低温側熱交換器77に挟まれる第二スタック76まで到達すると、第二低温側熱交換器77の温度が第二高温側熱交換器75の温度より低くなる。すなわち、第二低温側熱交換器77の温度が室温より低くなり、第二低温側熱交換器77内を経由して主軸に供給される軸受冷却流体を冷却することができる。
【0026】
以上の構造により、主軸3で発生する排熱を用いて主軸3に供給する軸受冷却流体を冷却することが可能となり、主軸3の冷却に要するエネルギー消費の少ない工作機械を実現できる。
【0027】
次に、第四実施形態について図5に基づき説明する。
これは、第一実施形態における主軸3の軸受冷却流体に換えて、加工部を冷却後に温度上昇した加工液を高温加工液として利用するものである。加工液供給装置6と熱音響装置7の構造は第一実施形態と同様である。ノズル9から加工部に供給され工具4と工作物Wを冷却して高温となった高温加工液は加工液受10に回収され、管路101を経由して第一高温側熱交換器74を加熱して管路64を経由して加工液供給装置6に還流する。加工液供給装置6から、管路61を経由して第一低温側熱交換器72と、管路62を経由して第二高温側熱交換器75を循環した加工液も管路64を経由して加工液供給装置6に還流する。
第二低温側熱交換器77を経由した加工液は、管路91によりノズル9に供給され、加工部で工具4と工作物Wを冷却する。
【0028】
上記の管路構成により、第一低温側熱交換器72と第二高温側熱交換器75は加工液により室温に近い温度に冷却され、第一高温側熱交換器74は温度が上昇した高温加工液により高温に加熱される。この結果、第一低温側熱交換器72と第一高温側熱交換器74の間で温度勾配が生じ、自励による波が発生する。
この波がループ管に沿って第二高温側熱交換器75及び第二低温側熱交換器77に挟まれる第二スタック76まで到達すると、第二低温側熱交換器77の温度が第二高温側熱交換器75の温度より低くなる。すなわち、第二低温側熱交換器77の温度が室温より低くなり、第二低温側熱交換器77内を経由して加工部に供給される加工液を冷却することができる。
【0029】
以上の構造により、加工部で発生する排熱を用いて加工部に供給する加工液を冷却することが可能となり、加工液の冷却に要するエネルギー消費の少ない工作機械を実現できる。
【0030】
次に、第五実施形態について図6に基づき説明する。
これは、第四実施形態における、加工液による第一低温側熱交換器72と第二高温側熱交換器75の冷却を、空気による冷却に換えたものである。加工液供給装置6と熱音響装置7の構造は第一実施形態と同様である。ノズル9から加工部に供給され工具4と工作物Wを冷却し高温となった高温加工液は、加工液受10に回収され管路101を経由して第一高温側熱交換器74を加熱して、管路64を経由して加工液供給装置6に還流する。加工液供給装置6から管路65と第二低温側熱交換器77を経由した加工液は管路91によりノズル9に供給され、加工部で工具4と工作物Wを冷却する。
空気圧供給装置11から供給されるほぼ室温の空気は、管路111を経由して第一低温側熱交換器72を通過し、管路112を経由して第二高温側熱交換器75を通過して大気中に放出される。
【0031】
上記の管路構成により、第一低温側熱交換器72と第二高温側熱交換器75は空気により室温に近い温度に冷却され、第一高温側熱交換器74は温度が上昇した高温加工液により高温に加熱される。この結果、第一低温側熱交換器72と第一高温側熱交換器74の間で温度勾配が生じ、自励による波が発生する。
この波がループ管に沿って第二高温側熱交換器75及び第二低温側熱交換器77に挟まれる第二スタック76まで到達すると、第二低温側熱交換器77の温度が第二高温側熱交換器75の温度より低くなる。すなわち、第二低温側熱交換器77の温度が室温より低くなり、第二低温側熱交換器77、管路91、ノズル9を経由して加工部に供給される加工液を冷却することができる。
【0032】
以上の構造により、加工部で発生する排熱を用いて加工部に供給する加工液を冷却することが可能となり、加工液の冷却に要するエネルギー消費の少ない工作機械を実現できる。
【0033】
次に、第六実施形態について図7に基づき説明する。
これは、第五実施形態における、高温加工液による第一高温側熱交換器74の加熱を、高温空気による加熱に換えたものである。加工液供給装置6と熱音響装置7の構造は第一実施形態と同様である。制御装置8の構成部材である制御盤81内を冷却し高温となった高温空気は、管路82を経由して第一高温側熱交換器74を加熱して大気中に放出される。
加工液供給装置6から管路65と第二低温側熱交換器77を経由し、冷却された加工液は、管路91によりノズル9に供給され、加工部で工具4と工作物Wを冷却する。
空気圧供給装置11から供給されるほぼ室温の空気は、管路111を経由して第一低温側熱交換器72を通過し、管路112を経由して第二高温側熱交換器75を通過して大気中に放出される。
【0034】
上記の管路構成により、第一低温側熱交換器72と第二高温側熱交換器75は空気により室温に近い温度に冷却され、第一高温側熱交換器74は温度が上昇した高温空気により高温に加熱される。この結果、第一低温側熱交換器72と第一高温側熱交換器74の間で温度勾配が生じ、自励による波が発生する。
この波がループ管に沿って第二高温側熱交換器75及び第二低温側熱交換器77に挟まれる第二スタック76まで到達すると、第二低温側熱交換器77の温度が第二高温側熱交換器75の温度より低くなる。すなわち、第二低温側熱交換器77の温度が室温より低くなり、第二低温側熱交換器77、管路91、ノズル9を経由して加工部に供給される加工液を冷却することができる。
【0035】
以上の構造により、加工部で発生する排熱を用いて加工部に供給する加工液を冷却することが可能となり、加工液の冷却に要するエネルギー消費の少ない工作機械を実現できる。
【0036】
以上の実施形態のほかに、以下の組み合わせによる管路構成により所望の部位を冷却してもよい。一高温側熱交換器74を高温軸受冷却流体、高温加工液、高温空気のいずれかで過熱するA群と、第一低温側熱交換器72を軸受冷却流体、加工液、空気のいずれかで冷却するB群と、第二高温側熱交換器75を軸受冷却流体、加工液、空気のいずれかで冷却するC群と、第二低温側熱交換器77により軸受冷却流体、加工液、空気のいずれかを冷却するD群における、群内の任意の1つを用いたすべての組み合わせの管路構成。さらに、第二高温側熱交換器75を流体で冷却しないで、熱音響装置7の配置された環境における自然放熱による冷却としてもよい。
主軸の冷却と加工液の冷却について説明したが、冷却部位は送りねじ、工作物寸法測定装置など、工作機械の他のいかなる部位でもよい。
また、電気機器としてのモータや電熱器などを冷却して高温となった高温空気を用いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:工作機械 2:ベッド 3:主軸 4:工具 5:軸受冷却流体供給装置 6:加工液供給装置 7:熱音響装置 8:制御装置 9:ノズル 10:加工液受 11:空気圧供給装置 71:ループ管 72:第一低温側熱交換器 73:第一スタック 74:第一高温側熱交換器 75:第二高温側熱交換器 76:第二スタック 77:第二低温側熱交換器 81:制御盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7