(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365206
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】熱間曲げ加工部材の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 7/16 20060101AFI20180723BHJP
B21D 7/08 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B21D7/16
B21D7/08 J
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-207595(P2014-207595)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-74022(P2016-74022A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 直明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 明洋
(72)【発明者】
【氏名】富澤 淳
【審査官】
豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−228713(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/132912(WO,A1)
【文献】
特開2000−94043(JP,A)
【文献】
特開2012−197488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/00 − 7/16
H05B 6/00 − 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺かつ中空の鋼材をその軸方向へ、高周波誘導加熱コイルと、該高周波誘導加熱コイルに対する前記鋼材の相対的な送り方向の下流側に配置された第1の水冷装置とに対して相対的に送りながら、前記高周波誘導加熱コイルにより前記鋼材をAc3点以上に加熱するとともに前記第1の水冷装置により前記加熱された鋼材を冷却し、前記高周波誘導加熱コイルによる加熱と前記第1の水冷装置による冷却とにより前記鋼材の軸方向へ部分的にAc3点以上に加熱されて形成された変形抵抗低下部に曲げモーメントを与えて前記鋼材を所定の曲げ方向へ曲げることにより、焼入れされた曲げ部を有する熱間曲げ加工部材を製造する際に、
前記第1の水冷装置に対する前記鋼材の相対的な送り方向の下流側に第2の水冷装置を配置しておき、
該第2の水冷装置は、前記鋼材を間に配して対向して配置されるとともに、前記鋼材へ向けて冷却水を噴射する噴射孔を該鋼材の進行方向へ向けて複数列並列させて有する一対のヘッダを備え、
該一対のヘッダにおける前記噴射孔は、所定の曲げ方向を含む平面と略平行に配置配置されること
を特徴とする熱間曲げ加工部材の製造方法。
【請求項2】
前記第2の水冷装置からの冷却水は、該第2の水冷装置への入り口において前記鋼材と直交する断面内において前記鋼材に対して斜めに噴射される請求項1に記載された熱間曲げ加工部材の製造方法。
【請求項3】
前記第2の水冷装置からの冷却水は、前記複数列の噴射孔の一列おきに逆方向へ噴射される請求項2に記載された熱間曲げ加工部材の製造方法。
【請求項4】
長尺かつ中空の鋼材をAc3点以上に加熱する高周波誘導加熱コイルと、
該高周波誘導加熱コイルにより加熱された前記鋼材を冷却する第1の水冷装置と、
前記高周波誘導加熱コイルにより加熱された前記鋼材を冷却する第2の水冷装置
長尺かつ中空の鋼材をその軸方向へ、前記高周波誘導加熱コイル、前記第1の水冷装置および前記第2の水冷装置に対して相対的に、かつ、前記第1の水冷装置が前記高周波誘導加熱装置よりも前記鋼材の相対的な送り方向の下流側に位置するとともに前記第2の水冷装置が前記第1の水冷装置よりも前記鋼材の相対的な送り方向の下流側に位置するように、送る送り装置と、
前記高周波誘導加熱コイルによる加熱と前記第1の水冷装置および前記第2の水冷装置による冷却とにより前記鋼材の軸方向へ部分的にAc3点以上に加熱されて形成された変形抵抗低下部に曲げモーメントを与えて前記鋼材を所定の曲げ方向へ曲げる曲げモーメント付与装置と
を備える焼入れされた曲げ部を有する熱間曲げ加工部材の製造装置であって、
前記第2の水冷装置は、前記鋼材を間に配して対向して配置されるとともに、前記鋼材へ向けて冷却水を噴射する噴射孔を該鋼材の進行方向へ向けて複数列並列させて有する一対のヘッダを備え、
該一対のヘッダは、前記所定の曲げ方向を含む平面と略平行に配置されること
を特徴とする熱間曲げ加工部材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間曲げ加工部材の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本出願人により、長尺かつ中空の鋼材に効率的に二次元または三次元の連続曲げ加工を行う曲げ加工装置および曲げ加工方法が開示されている。以降の説明では、鋼材が鋼管である場合を例にとるが、これに限定されず鋼製かつ中空の角管でも事情は同じである。
【0003】
図1は、特許文献1の
図1に示された曲げ加工(以下、この曲げ加工を「熱間曲げ加工」または「3DQ」という)の状況を模式的に示す説明図であり、
図2は、特許文献1の
図5に示された水冷装置6を示す説明図である。
【0004】
図1に示すように、熱間曲げ加工では、支持手段2,2により軸方向へ移動自在に支持された鋼管1を押し出し装置3により上流側から押し出しながら、支持手段2,2と鋼管1を軸方向へ移動自在に支持する可動ローラダイス4との間において、鋼管1の外周面から離れて配置された環状の高周波誘導加熱コイル5により鋼管1を部分的にAc
3点以上の温度に加熱するとともに、高周波誘導加熱コイル5の下流側であって鋼管1の外周面から離れて配置された環状の水冷装置6から冷却水を加熱された鋼管1の外周全面に噴射することにより鋼管1を急冷して焼入れる。
【0005】
そして、可動ローラダイス4の位置または移動速度の一方または双方を制御することにより、高周波誘導加熱コイル5による加熱と水冷装置6による冷却とにより鋼管1の軸方向へ部分的に形成された高温の変形抵抗低下部に曲げモーメントを与えることにより、鋼管1に曲げ加工を逐次または連続的に行う。これにより、少なくとも曲げ部が焼入れされてマルテンサイト組織を有する熱間曲げ加工部材が製造される。なお、
図1における符号7は鋼管1の位置決めを行うチャック機構である。
【0006】
このように、3DQ方法では、環状の高周波誘導加熱コイル5により鋼管1の全周を加熱した後に水冷装置6により鋼管1の全周に冷却水を噴射して鋼管1を急冷する。このため、水冷装置6には、
図2に示すように、多数の噴射孔6aが鋼管1の全周を取り囲んで環状に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−83304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
3DQ方法により製造される熱間曲げ加工部材は、主に、自動車の構成部材(ドアービーム,各種ピラー等の車体構成部品や、サスペンションアーム,スタビライザー等の足回り部品等)に適用される。このため、3DQでは、曲げ加工速度を高めて熱間曲げ加工部材の製造コストを低減することが強く求められる。
【0009】
曲げ加工速度を例えば60mm/sec以上に高めることに伴って、水冷装置6による鋼管1の冷却能力が不可避的に不足する。鋼管1の冷却が不足すると、製造される熱間曲げ加工部材の曲げ部に残留応力や焼きむらが発生する。このため、曲げ加工速度によっては、水冷装置6による冷却能力を補って必要な冷却能力を確保するために、水冷装置6の下流側に水冷装置をもう一基設ける必要が生じる。以下、水冷装置6以外にもう一基の冷却装置を設けて鋼管1を冷却することを「二段冷却」といい、最初の冷却を「一次冷却」といい、次の冷却を「二次冷却」という。
【0010】
しかし、本発明者の検討によれば、3DQ方法において二段冷却を行うと、意外にも、以下の課題があることが判明した。
【0011】
図3は、3DQ方法により、一次冷却を行う水冷装置6−1と二次冷却を行う水冷装置6−2とから、高周波誘導加熱コイル(図示しない)によりAc
3点以上に加熱された鋼管1に冷却水を噴射して鋼管1を急冷する状況を模式的に示す二面図である。
【0012】
二次冷却を行う水冷装置として、
図2に示す一次冷却用の水冷装置6のように、多数の噴射孔6aが鋼管1の全周を取り囲んで環状に配置された水冷装置6−2を配置すると、3DQ方法により製造される曲げ部材の曲げ部の中立線における曲げ半径が例えば100mm以下と小さく、かつ曲げ部の曲げ角度(曲げ部の中心角度)が例えば90°以上と大きい場合(例えば、曲げ部材がダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式のサスペンションのアーム部品である場合)、二次冷却用の水冷装置6−2が曲げ加工時に鋼管1と干渉してしまい、曲げ加工を行うことができない。
【0013】
本発明の目的は、熱間曲げ(3DQ)加工において二段冷却を行う場合に、製造される曲げ部材の曲げ部の曲げ半径が例えば100mm以下と小さく、かつ曲げ部の曲げ角度が例えば90°以上と大きいとき(例えば、曲げ部材がダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式のサスペンションのアーム部品であるとき)であっても、二次冷却用の水冷装置が曲げ加工時に鋼材と干渉することを防止できる熱間曲げ加工部材の製造装置および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得て本発明を完成した。
【0015】
すなわち、二次冷却用の水冷装置として、
図2に示す水冷装置6のように多数の噴射孔6aが鋼管1の全周を取り囲んで環状に配置された水冷装置ではなく、鋼管1へ向けて冷却水を噴射する噴射孔を鋼管1の進行方向へ向けて複数列並列させて有し、かつ鋼管1を間に配して互いに離れて対向して配置される一対の水冷ヘッダが、所定の曲げ方向を含む平面と略平行に配置された水冷装置を用いることにより、鋼管1が曲がる方向には水冷ヘッダが存在しないため、二次冷却用の水冷装置が曲げ加工時に鋼管と干渉することを防止できる。
【0016】
この際、冷却水は鋼管1に対して斜めに噴射してもよく、さらに噴射孔一列おきに噴射方向を逆向きとすることにより、鋼管1を周方向により均一に冷却することが可能になる
本発明は以下に列記のとおりである。
【0017】
(1)長尺かつ中空の鋼材をその軸方向へ、高周波誘導加熱コイルと、該高周波誘導加熱コイルに対する前記鋼材の相対的な送り方向の下流側に配置された第1の水冷装置とに対して相対的に送りながら、前記高周波誘導加熱コイルにより前記鋼材をAc
3点以上に加熱するとともに前記第1の水冷装置により前記加熱された鋼材を冷却し、前記高周波誘導加熱コイルによる加熱と前記第1の水冷装置による冷却とにより前記鋼材の軸方向へ部分的にAc
3点以上に加熱されて形成された変形抵抗低下部に曲げモーメントを与えて前記鋼材を所定の曲げ方向へ曲げることにより、焼入れされた曲げ部を有する熱間曲げ加工部材を製造する際に、
前記第1の水冷装置に対する前記鋼材の相対的な送り方向の下流側に第2の水冷装置を配置しておき、
該第2の水冷装置は、前記鋼材を間に配して対向して配置されるとともに、前記鋼材へ向けて冷却水を噴射する噴射孔を該鋼材の進行方向へ向けて複数列並列させて有する一対の水冷ヘッダを備え、
該一対の水冷ヘッダは、前記所定の曲げ方向を含む平面と略平行に配置されること
を特徴とする熱間曲げ加工部材の製造方法。
【0018】
(2)前記第2の水冷装置からの冷却水は、該第2の水冷装置への入り口において前記鋼材と直交する断面内において前記鋼材に対して斜めに噴射される請求項1に記載された熱間曲げ加工部材の製造方法。
【0019】
(3)前記第2の水冷装置からの冷却水は、前記複数列の噴射孔の一列おきに逆方向へ噴射される請求項2に記載された熱間曲げ加工部材の製造方法。
【0020】
(4)長尺かつ中空の鋼材をAc
3点以上に加熱する高周波誘導加熱コイルと、
該高周波誘導加熱コイルにより加熱された前記鋼材を冷却する第1の水冷装置と、
前記高周波誘導加熱コイルにより加熱された前記鋼材を冷却する第2の水冷装置と、
長尺かつ中空の鋼材をその軸方向へ、前記高周波誘導加熱コイル、前記第1の水冷装置および前記第2の水冷装置に対して相対的に、かつ、前記第1の水冷装置が前記高周波誘導加熱装置よりも前記鋼材の相対的な送り方向の下流側に位置するとともに前記第2の水冷装置が前記第1の水冷装置よりも前記鋼材の相対的な送り方向の下流側に位置するように、送る送り装置と、
前記高周波誘導加熱コイルによる加熱と前記第1の水冷装置および前記第2の水冷装置による冷却とにより前記鋼材の軸方向へ部分的にAc
3点以上に加熱されて形成された変形抵抗低下部に曲げモーメントを与えて前記鋼材を所定の曲げ方向へ曲げる曲げモーメント付与装置と
を備える焼入れされた曲げ部を有する熱間曲げ加工部材の製造装置であって、
該第2の水冷装置は、前記鋼材を間に配して対向して配置されるとともに、前記鋼材へ向けて冷却水を噴射する噴射孔を該鋼材の進行方向へ向けて複数列並列させて有する一対の水冷ヘッダを備え、
該一対の水冷ヘッダにおける前記噴射孔は、前記所定の曲げ方向を含む平面と略平行に配置されること
を特徴とする熱間曲げ加工部材の製造装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、熱間曲げ(3DQ)加工において二段冷却を行う場合に、製造される曲げ部材の曲げ部の曲げ半径が例えば100mm以下と小さく、かつ曲げ部の曲げ角度が例えば90°以上と大きいとき(例えば、曲げ部材がダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式のサスペンションのアーム部品であるとき)であっても、鋼材が曲がる方向には水冷ヘッダが存在しないため、二次冷却用の水冷装置が曲げ加工時に鋼材と干渉することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、特許文献1の
図1に示された熱間曲げ加工の状況を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図2は、特許文献1の
図5に示された水冷装置を示す説明図である。
【
図3】
図3は、3DQ方法により、一次冷却を行う水冷装置と二次冷却を行う水冷装置とから、高周波誘導加熱コイルによりAc
3点以上に加熱された鋼管に冷却水を噴射して鋼管を急冷する状況を模式的に示す二面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る製造装置における第1の水冷装置および第2の水冷装置の配置を抜き出して示す二面図である。
【
図5】
図5は、第2の水冷装置の変形例を模式的に示す説明図である。
【
図6】
図6は、第2の水冷装置6−2の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。なお、本発明に係る製造装置の概略構成は、
図1に示す曲げ加工装置と略同じであるので、以降の説明は
図1も参照しながら行う。
【0024】
図4は、本発明に係る製造装置における第1の水冷装置6−1および第2の水冷装置6−2の配置を抜き出して示す二面図である。
【0025】
図1,4に示すように、本発明に係る製造装置は、高周波誘導加熱コイル5と、第1の水冷装置6−1と、第2の水冷装置6−2と、送り装置3と、曲げモーメント付与装置2,4とを備える。なお、以降の説明では、本発明に係る製造装置により曲げ加工される対象である「長尺かつ中空の鋼材」が円形の横断面を有する鋼管1である場合を例にとるが、本発明は、鋼管に限定されず、略矩形の横断面を有する長尺かつ中空の鋼製の角管に対しても適用可能である。
【0026】
[高周波誘導加熱コイル5]
高周波誘導加熱コイル5は、鋼管1から所定距離離れて鋼管1の外周面を覆う外形を有し、図示しない高周波電力供給装置から高周波電力を供給されることにより、内部に存在する鋼管1をAc
3点以上に例えば1000℃/sec以上の昇温速度で急速に加熱する。
【0027】
高周波誘導加熱コイル5は、この種の高周波誘導加熱コイルとして慣用のものを選択して用いればよく、当業者にとっては周知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0028】
[第1の水冷装置6−1]
第1の水冷装置6−1は、
図2に示すように、多数の噴射孔6aが鋼管1の全周を取り囲んで環状に配置されており、多数の噴射孔6aから冷却水を鋼管1の全周に噴射することにより、高周波誘導加熱コイル5により加熱された鋼管1を、例えば1000℃/sec以上の冷却速度で急速に冷却する。
【0029】
第1の水冷装置6−1から噴射された冷却水が、鋼管1の軸方向へ部分的に形成された高温の変形抵抗低下部へ向かって流れると、変形抵抗低下部の温度を低下させて変形抵抗が変動するため、所望の曲げ加工精度を得られなくなる。このため、第1の冷却装置6−1からの冷却水は、
図2に示すように、鋼管1の送り方向へ向けて斜めに噴射される。
【0030】
第1の水冷装置6−1は、この種の水冷装置として慣用のものを選択して用いればよく、当業者にとっては周知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0031】
[第2の水冷装置6-2]
図4に示すように、第2の水冷装置6−2は、一対の水冷ヘッダ10a,10bを有する。一対の水冷ヘッダ10a,10bは、鋼管1を間に配して互いに対向して配置される。また、一対の水冷ヘッダ10a,10bは、鋼管1へ向けて冷却水を噴射する噴射孔11を、鋼管1の進行方向へ向けて複数列並列させて有している。第2の水冷装置6-2は、噴射孔11から冷却水を鋼管1へ向けて噴射することにより、高周波誘導加熱コイル5により加熱された鋼管1を冷却する。
【0032】
一対の水冷ヘッダ10a,10bにおける噴射孔11は、
図4下図に示すように、鋼管1の所定の曲げ方向を含む平面と略平行に配置される。したがって、鋼管1が曲がる方向には水冷ヘッダ10a,10bが存在しないため、製造される曲げ部材の曲げ部の曲げ半径が例えば100mm以下と小さく、かつ曲げ部の曲げ角度が例えば90°以上と大きいとき(例えば、曲げ部材がダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式のサスペンションのアーム部品であるとき)であっても、第2の水冷装置6−2が曲げ加工時に鋼管1と干渉することを確実に防止できる。
【0033】
図5は、第2の水冷装置6-2の変形例を模式的に示す二面図である。
図5下図に示すように、第2の水冷装置6−2からの冷却水は、第2の水冷装置6−2への入り口において鋼管1と直交する断面内において鋼管1に対して斜めに噴射されてもよく、この場合に、第2の水冷装置6−2からの冷却水は、複数列の噴射孔の一列おきに逆方向へ噴射されることにより、鋼管1をより均一に冷却することができる。
【0034】
図6は、第2の水冷装置6−2の変形例を示す説明図である。
図6に示すように、第2の水冷装置6−2における複数列の噴射孔は、
図5に示すように直線状に配置される必要はなく、
図6に示すように、曲線状に配置されていてもよい。
【0035】
[送り装置3]
送り装置3は、
図1に示す装置ではボールねじ等により構成されるものであり、固定配置された高周波誘導加熱コイル5、第1の水冷装置6−1および第2の水冷装置6−2に対して鋼管1をその軸方向へ送ることによって、鋼管1をその軸方向へ高周波誘導加熱コイル5、第1の水冷装置6−1および第2の水冷装置6−2に対して相対的に、かつ、第1の水冷装置6−1が高周波誘導加熱コイル5よりも鋼管1の送り方向の下流側に位置するとともに第2の水冷装置6−2が第1の水冷装置6−1よりも鋼管1の送り方向の下流側に位置するように、送るものである。なお、ボールねじに替えて慣用される送り装置(例えば産業用ロボット等)により角管を送ってもよいことはいうまでもない。
【0036】
しかし、本発明における送り装置3は、この態様に限定されるものではなく、鋼管1を固定配置しておき、高周波誘導加熱コイル5、第1の水冷装置6−1および第2の水冷装置6−2を鋼管1の軸方向へ移動させることにより、鋼管1をその軸方向へ高周波誘導加熱コイル5、第1の水冷装置6−1および第2の水冷装置6−2に対して相対的に、かつ、第1の水冷装置6−1が高周波誘導加熱コイル5よりも鋼管1の相対的な送り方向の下流側に位置するとともに第2の水冷装置6−2が第1の水冷装置6−1よりも鋼管1の送り方向の下流側に位置するように、送るようにしてもよい。
【0037】
[曲げモーメント付与装置2,4]
曲げモーメント付与装置は、支持手段2,2と、二次元または三次元に移動自在な可動ローラダイス4とにより構成される。曲げモーメント付与装置2,4は、高周波誘導加熱コイル5による加熱と第1の水冷装置6−1および第2の水冷装置6−2による冷却とにより鋼管1の軸方向へ部分的にAc
3点以上に加熱されて形成された変形抵抗低下部に、曲げモーメントを与えて鋼管1を所定の曲げ方向へ曲げる。
【0038】
曲げモーメント付与装置は、支持手段2と可動ローラダイス4とにより構成される態様に限定されるものではなく、これらに替えて、産業用ロボットの二つのマニピュレータにより鋼管1をチャックすることにより曲げモーメント付与装置を構成してもよいことはいうまでもない。
【0039】
本発明に係る製造装置は、以上のように構成されている。次に、本発明に係る製造方法により、焼入れされた曲げ部を有する熱間曲げ加工部材を製造する状況を説明する。
【0040】
本発明に係る製造方法も、熱間曲げ加工に属するものである。つまり、基本的に、送り装置3により鋼管1をその軸方向へ、高周波誘導加熱コイル5と、第1の水冷装置6−1とに対して相対的に送りながら、高周波誘導加熱コイル5により鋼管1をAc
3点以上に加熱するとともに第1の水冷装置6−1により加熱された鋼管1を冷却する。
【0041】
そして、高周波誘導加熱コイル5による加熱と第1の水冷装置6−1による冷却とにより鋼管1の軸方向へ部分的にAc
3点以上に加熱されて形成された変形抵抗低下部に、曲げモーメント付与装置2,4により曲げモーメントを与えて鋼管1を所定の曲げ方向へ曲げることにより、焼入れされた曲げ部を有する熱間曲げ加工部材を製造する。
【0042】
この際、本発明に係る製造方法では、上述したように、第1の水冷装置6−1に対する鋼管1の送り方向の下流側に第2の水冷装置6−2を配置しておく。
【0043】
第2の水冷装置6−2は、上述のように、鋼管1を間に配して対向して配置され、かつ鋼管1へ向けて冷却水を噴射する噴射孔を鋼管1の進行方向へ向けて複数列並列させて有する一対の水冷ヘッダ10a,10bを備えており、一対の水冷ヘッダ10a,10bにおける噴射孔11は、
図4下図に示すように、鋼管1の所定の曲げ方向を含む平面と略平行に配置される。したがって、鋼管1が曲がる方向には水冷ヘッダ10a,10bが存在しないため、製造される曲げ部材の曲げ部の曲げ半径が例えば100mm以下と小さく、かつ曲げ部の曲げ角度が例えば90°以上と大きいとき(例えば、曲げ部材がダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式のサスペンションのアーム部品であるとき)であっても、第2の水冷装置6−2が曲げ加工時に鋼管1と干渉することを確実に防止できる。
【0044】
このようにして、3DQにおける曲げ加工速度が例えば60mm/sec以上と高い場合であっても、曲げ部の曲げ半径が例えば100mm以下と小さく、かつ曲げ部の曲げ角度が例えば90°以上と大きい曲げ部材(例えば、曲げ部材がダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式のサスペンションのアーム部品)を確実に製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
2 支持手段
1 鋼管
3 押し出し装置
4 可動ローラダイス
5 高周波誘導加熱コイル
6 水冷装置
6a 噴射孔
6−1 第1の水冷装置
6−2 第2の水冷装置
7 チャック機構
10a,10b 水冷ヘッダ
11 噴射孔