(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)スクラルファート、(B)有機酸、(C)水、(D)中和増粘剤、及び(E)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物を含有する製剤であって、(A)スクラルファートを5〜30質量%と、(B)有機酸を1〜15質量%と、(E)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物を2種以上とを含有し、分散質中のショ糖硫酸エステル/アルミニウム比が質量比で0.3〜1.4であり、かつpHが5〜8であることを特徴とする製剤。
更に、(F)水不溶性無機粒子として、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウムアルミニウムから選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の製剤。
(A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を配合して、(A)/(C)で表される配合質量比が0.8〜6、(B)有機酸の含有量が7.5〜40質量%である液状組成物を調製し、該液状組成物に対して(D)中和増粘剤を配合してpHを5〜8に調整した後、(E)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物を2種以上配合することを特徴とする製剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製剤は、(A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を所定の比率で含有する液状組成物に対して、(D)中和増粘剤を配合してpHを5〜8に調整して得たゲル組成物に、更に(E)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物を2種以上配合することによって得られるものである。なお、以下の説明において、「液状組成物」とは上記(A)〜(C)成分を配合した段階の液状の組成物を意味し、「ゲル組成物」とは上記液状組成物に対して(D)成分を配合してpHを調整して得たゲル状の組成物を意味する。
【0015】
(A)スクラルファート
(A)スクラルファート(ショ糖オクタ硫酸エステルアルミニウム塩)は、粘膜炎症部のタンパク質と結合して炎症部を被覆・保護しながら修復する作用を有し、「胃の絆創膏」とも呼ばれる薬物である。本発明では、胃の炎症部への効果の他、口腔内崩壊錠とすることによって、胸焼けの原因である食道の炎症部にも優れた効果を発揮することができる。
【0016】
(A)スクラルファートの液状組成物中の配合量は、特に限定されないが、20〜80質量%が好ましい。また、(A)成分のゲル組成物中の配合量は、18〜70質量%が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜50質量%が更に好ましい。製剤全体に対する(A)成分の配合量は、特に限定はされないが、5〜30質量%が好ましく、6〜20質量%がより好ましい。(A)成分の配合量を上記範囲内とすることで、分散安定性や製造適性、服用性が良好となる。
【0017】
(B)有機酸
(B)有機酸としては特に限定されず、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、風味、分散安定性の点から、アルギン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、酪酸、マレイン酸及びフマル酸から選ばれる1種以上が好ましく、特にクエン酸、リンゴ酸及び乳酸が好ましい。
【0018】
(B)成分の液状組成物中の配合量は、7.5〜40質量%であり、8〜23質量%が好ましい。また、(B)成分のゲル組成物中の配合量は、7〜30質量%が好ましく、7〜20質量%がより好ましい。また、製剤全体に対する(B)成分の配合量は、特に限定はされないが、1〜15質量%が好ましく、2〜12質量%がより好ましい。(B)成分の配合量を上記範囲内とすることで、製造適性や服用性が良好となる。
【0019】
本発明において、(B)/(A)で表される配合質量比は、0.1〜1.2が好ましく、0.2〜0.4がより好ましい。特に、この比率を0.2〜0.4とすることで、より良好な滞留性と製剤の服用性(嚥下性)を得ることができる。また、上記の比率が1.2を上回ると製剤の服用性(嚥下性)に問題が生じる場合がある。
【0020】
(C)水
(C)水の液状組成物中の配合量は、5〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。一方、(C)水のゲル組成物中の配合量は4〜55質量%が好ましく、9〜45質量%がより好ましく、15〜40質量%が更に好ましい。なお、液状組成物中では、(A)/(C)で表される配合質量比が0.8〜6であり、この比率が、0.8未満又は6を超えると分散安定性が得られず、次工程(後述する(D)成分を配合する工程)へ進むのが困難になる場合がある。
【0021】
(D)中和増粘剤
(D)中和増粘剤としては特に限定されず、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物及び炭酸塩から選ばれる1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本発明では、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩のほか、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化アルミナマグネシウム等の制酸剤を使用することができる。本発明では、製造性の観点から、特に炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムを好適に用いることができる。なお、上記(D)成分の中には、後述する(F)水不溶性無機粒子を兼ねる成分も含まれる。また、(D)成分として水溶性の成分を配合した場合、当該成分は水に溶解して消費される(金属イオン、水酸化物イオン、炭酸イオン等が系中に残る)。
【0022】
(D)成分の配合量は、上記(A)〜(C)成分を含有する液状組成物のpHを所定の範囲に調整し得る量であり、特に制限されるものではない。本発明では、上記(D)成分により上記液状組成物のpHを5〜8、好ましくは5.5〜7に調整してゲル化させることで、最終的に優れた滞留性と服用性(嚥下性)を有する製剤を得ることができる。
【0023】
(E)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物
(E)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物とは、分子中にアニオン基を有する水溶性高分子化合物であり、かつ該高分子化合物の希薄水溶液(およそ1質量%以下)にカルシウムイオンや鉄(II)イオンといった2価の金属イオンを添加した際、部分的あるいは全体的なゲル化が起こらない高分子化合物である。具体的にはキサンタンガム、アルギン酸エステル、HMペクチン等が該当する。本発明では、これらの2種以上を適宜組み合わせて用いる。その中でも特にキサンタンガム、アルギン酸エステル及びHMペクチンより選ばれる2種以上を組み合わせることにより、より高い滞留性が得られると共に、より優れた分散安定性及び嚥下性を得ることができる。これは、当該高分子化合物を2種以上の組み合わせることよって、緩やかな架橋構造が形成されることによるものと考えられる。なお、HMペクチンとは、構成するガラクツロン酸のうち50%以上がメトキシル化されたグレードであり、具体的には三晶(株)より市販されているUSP−H等が挙げられる。
【0024】
(E)成分の製剤全体に対する配合量は、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.2〜1.0質量%、更に好ましくは0.3〜0.6質量%、最も好ましくは0.4〜0.6質量%である。(E)成分の配合量を上記範囲とすることにより、更なる滞留性の向上が期待される。
【0025】
また、(E)成分の組み合わせに関しては、特にキサンタンガムとアルギン酸エステルとを含むことが好ましい。この場合、アルギン酸エステルに対するキサンタンガムの配合質量比(キサンタンガム/アルギン酸エステル)は、好ましくは0.5〜2、より好ましくは1〜2である。両者の配合質量比を上記の範囲とすることにより、より高い滞留性が得られると共に、より優れた分散安定性及び嚥下性を得ることができる。
【0026】
(F)水不溶性無機粒子
(F)水不溶性無機粒子としては、マグネシウム系無機粒子を好適に用いることができる。具体例としては、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウムアルミニウム等の制酸剤粒子、スメクタイト、ベントナイト及びモンモリロナイト等の無機粘土鉱物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、(F)成分の中には合成ヒドロタルサイトのような(D)成分としても機能する成分も含まれる。そのため、上記(D)成分として、(F)成分としても機能する成分が配合された場合は、当該(F)成分は配合しなくてもよい。一方、上記(D)成分として、水溶性の成分が配合された場合は、上記(F)成分を更に配合することで、製剤の粘膜付着性や分散安定性を一層高めることができる。なお、上記(F)成分の粒子は、例えば顔料等のように水に溶解せず懸濁状態で系中に存在し、生成したゲルと水素結合等の相互作用によりネットワークを形成していると考えられ、ムチンとの相互作用向上にも重要な役割を果たしていると推測される。
【0027】
上記(F)成分の含有量は、スクラルファート500mg相当のゲル組成物に対し、マグネシウム換算で35mg以上が好ましく、100mg以上がより好ましい。また、(F)成分の含有量の上限は特に制限されないが、マグネシウム由来の不快味を押える観点から、スクラルファート500mg相当のゲル組成物に対し、マグネシウム換算で300mg以下が好ましい。
【0028】
[液状組成物]
本発明の「液状」とは、粘度(25℃)が100〜50,000mPa・sである流動体を意味する。粘度は、製造適性の点から、100〜10,000mPa・sが好ましい。また、この範囲とすることで、服用性(飲み込みやすさ)も良好となる。なお、粘度の測定方法は、B型粘度計(例えば、東機産業社製,RB−80)、3又は4番ローター(粘度に応じて変更)を用い、回転速度12rpm/20℃で測定する。本発明において、
製造適性とは、スクラルファート液状組成物の包装容器への充填時、スクラルファート液状組成物にさらなる製剤化処理(ミクロゲル化等)を加えるために次製造プロセスに移行する際に、高粘度では攪拌、ライン輸送等が困難で、製造適性上望ましくないため、液状組成物粘度は一定の値以下であることをいう。また、液状組成物のpH(25℃)は、粘膜付着性の点から、3.0〜4.5の範囲が好ましい。
【0029】
[ゲル組成物]
本発明の「ゲル組成物」とは、分散媒と分散質(粒子)から構成され、分散質は主にスクラルファートと乳酸の複合体、分散媒は水と乳酸の混合液からなり、分散媒と分散粒子の相互作用によって分散粒子が全体に均一分散することで長期間分散が安定化されており、全体としては流体物であり、チキソトロピー性を有する組成物を意味する。
【0030】
スクラルファート自体の1回服用量は、好ましくは250〜3,600mg、より好ましくは300〜1,300mgである。これに別途制酸剤を加えたり、ソフトチュアブルカプセルに内包させたりすることにより、服用する。
【0031】
本発明の製剤には、本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を適宜配合することができる。任意成分としては、その他の有効成分、ポリオール、上記(E)成分以外の高分子化合物、賦型剤、結合剤、崩壊剤、甘味剤、滑沢剤、防腐剤、香料、嬌味剤、色素等が挙げられる。
【0032】
本発明の製剤が適用される剤型としては、更に増粘剤、懸濁剤、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、乳化剤、基剤等の任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することで、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、錠剤(チュアブル錠、口腔内崩壊錠含む)、散剤、顆粒剤、ゼリー剤、グミ剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤とすることができる。本発明においては、特に液剤、ハードカプセル、ソフトチュアブルカプセル剤が好ましい。
【0033】
その他の有効成分としては、ラニチジン又はラニチジン塩酸塩、ファモチジン、シメチジン、塩酸ロキサチジンアセタート、ニザチジン、ラフチジン、ランソプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾール等の胃酸分泌抑制剤、ピレンゼピン、アトロピン、及びスコポラミン等のムスカリン受容体拮抗薬、アルジオキサ、アズレン、L−グルタミン、及びレバミピド等の防御因子促進剤のほか、コウボク流エキス及びソウジュツ流エキス等の健胃生薬成分を配合してもよい。
【0034】
ポリオールとしては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、パラチニット、ラクチトール等の糖アルコール、単糖、オリゴ糖及び多糖類のほか、PEG及びグリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを配合できる。また、エタノール等の低級アルコールも配合できる。
【0035】
上記(E)成分以外の高分子化合物としては、カラギーナン、アルギン酸及びアルギン酸塩、グアガム、ジェランガム、タマリンドガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルピロリドン、寒天等水溶性多糖類、ゼラチン、及びカゼイン等の水溶性タンパク質等を配合してもよい。これらの高分子化合物を配合することで製剤を増粘させ、嚥下性等の服用性が向上すると共に、口腔粘膜や食道粘膜等の疾患部への滞留性が増し、治療効果が高められると期待できる。
【0036】
賦型剤としては、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロース、バレイショデンプン等が挙げられる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、アルファー化デンプン、カルボキシビニルポリマー、寒天、ハチミツ等が挙げられる。崩壊剤としては、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。甘味剤としては、ショ糖、果糖、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ソルビトール、ステビア、精製白糖、サッカリン、グリチルリチン等が挙げられる。防腐剤としては、アルキルパラベン等のパラベン類や、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。香料としては、公知の精油類、例えば、リモネン、オレンジフレーバー、ライチフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、ミントフレーバー、グレープフルーツフレーバー等が挙げられる。嬌味剤としては、メントール等が挙げられる。色素としては、カラメル、カルミン、カロチン液、β−カロテン、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム等が挙げられる。
【0037】
[製造方法]
まず、(A)スクラルファート、(B)有機酸、及び(C)水を所定の比率で混合して液状組成物を得る。次に、上記で得た液状組成物に対して(D)中和増粘剤を配合して所定のpHに調整してゲル組成物を得、更に、水に溶解した(E)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物を2種以上配合することにより本発明の製剤を得ることができる。また、(D)成分を配合してpHを調整した後、上記(E)成分と共に必要に応じて更に(F)水不溶性無機粒子やその他の各成分を配合することにより、滞留性や嚥下性を更に向上させることができる。なお、上記の液状組成物、ゲル組成物及び製剤を調製する各工程においては、特別な攪拌・混合を行う必要なく、公知の攪拌・混合法を採用することができる。攪拌装置としては、スターラー攪拌、プロペラ攪拌、ホモジナイザー、ホモミキサー及び乳化機等が挙げられる。更に、上記で得られた製剤は、後述する製造方法によりソフトカプセル剤やハードカプセル剤とすることができる。
【0038】
(A)スクラルファートは、ショ糖硫酸エステル1モルに対し水酸化アルミニウム(Al
2(OH)
5)約8モルが配位結合した粒子状で存在する。本発明では、まず上述した配合比率で(A)スクラルファートと(B)有機酸と(C)水とを混合することで、酸性条件下でスクラルファート粒子中の一部又は全部の水酸化アルミニウムが解離する。続いて上記(A)〜(C)成分の混合物(即ち、液状組成物)を(D)中和増粘剤で中和することで、ショ糖硫酸エステル、水酸化アルミニウム及び有機酸の3成分が互いに相互作用しながら水中に分散されゲル組成物となる。なお、本発明で得られるゲル組成物は、上記製造方法により得られるものであり、例えば上記の(A)〜(D)成分を同時に混合しても得られない。また、有機酸のかわりにリン酸等の無機酸を加えても、液状組成物が得られないか、ゲル組成物が得られたとしても粘膜滞留性が劣り、本発明の効果が得られない。
【0039】
また、上記で得られる製剤の分散質中のショ糖硫酸エステル/アルミニウム比は質量比で0.3〜1.4の範囲内である。ショ糖硫酸エステル/アルミニウム比を0.3以上とすることで服用性(嚥下性)が良好となり、1.4以下とすることで滞留性が良好となる。なお、上記製剤を後述する処方例のように希釈しても、スクラルファート粒子の構造が変化しないため、上記のショ糖硫酸エステル及びアルミニウムの比率は変わらないまま維持される。そのため、上記製剤は水等で希釈して服用しても、付着性、嚥下性及び治療効果等の効果を十分に得ることができる。本発明の製剤を希釈する際は、例えば後述する処方例で示すように、全量を服用しやすい5〜10mLの量まで精製水でメスアップすればよい。
【0040】
[ソフトカプセル]
ゼラチン基剤の外皮膜中に本発明の製剤を内包して製する。一般的なソフトカプセルの製造方法(打ち抜き法等)で得られる。外皮には、ゼラチン、デンプン、グリセリン等の水溶性成分、カラギーナン等の植物性基剤を配合することもできる。内用物の製剤には、スクラルファート、酸、水の他に、水分活性を下げる目的で無機塩(ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物等)、糖アルコール(マンニトール、エリスリトール、ショ糖等)を更に添加してもよい。特に、ソフトチュアブルカプセルとする場合は、矯味剤として甘味成分(糖類等の天然甘味料、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ソーマチン等の人工甘味料)、香料を内用液に溶かし込んで添加してもよい。
【0041】
[ハードカプセル]
ゼラチン、プルラン、セルロース等の可食性基剤からなる外皮に本発明の製剤を内包して製する。カプセル自体は、一般的な方法(浸漬法等)で得られる剤を用いることができる。内用物の充填は、粉末充填で一般的に用いられる方法(オーガー式、ダイコンプレス式、ファンネル式等が知られている)ではなく、ポンプ式等の液剤充填に用いられる方法が好ましい。ソフトカプセルの場合と同様の目的で、無機塩や糖アルコールを製剤に溶かし込んで添加してもよい。
【0042】
なお、本発明の製剤をカプセル剤とする場合、製剤と皮膜との質量比は、製剤/皮膜=8.0〜0.5とすることが好ましい。ソフトカプセル剤やハードカプセル剤とした場合は、口腔内で咀嚼又は舐めて皮膜を溶かして内容物(製剤)を口内で暴露させることにより口腔粘膜に滞留させたり、暴露した内容物を嚥下して食道粘膜を通過させることで食道粘膜に直接作用させたりする。本発明のように1回服用量を小容量(1回の服用量として多くとも10g、好ましくは0.5〜4g程度、より好ましくは1〜3g程度)とすることで、特に嚥下直後はその大半が食道に滞留するため、すぐに胃に流れてしまうことがない。これらによって、高い治療効果が期待できる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。なお、以下の実施例で用いたスクラルファート(富士化学工業(株)製、「スクラルファート水和物」)には12質量%の水分が含まれる。そのため、例えば実施例1における「スクラルファート水和物」の配合量は11.36質量%(10÷(1−0.12))であり、精製水の配合量はスクラルファート水和物から持ち込まれる水分を差し引いた83.12質量%(84.48−1.36=83.12)である。
【0044】
[実施例1〜36、比較例1〜13]
下記表の組成に従い、以下の通り組成物及び製剤を調製した。
(1)液状組成物の調製
(B)有機酸を(C)水(精製水)に溶解した。スターラー攪拌(回転数100〜1,000rpm)を続けながら(A)スクラルファート粉末を直接添加し、一昼夜攪拌後、液状物1〜9(液1〜9)を得た(スクラルファート液状組成物:粘度100〜48,000mPa・s)。上記液状物の詳細については表1に示した。
【0045】
(2)ゲル組成物の調製
上記(1)で得た液状組成物を攪拌し、表2〜7に示した(D)中和増粘剤を徐々に添加してpHを所定の範囲に調整した後さらに2時間攪拌を続け、必要に応じて更に(F)水不溶性無機粒子を添加してゲル組成物を得た。
【0046】
(3)製剤の調製
別途、表2〜7に示した量の精製水を秤取り、攪拌しながら(E)2価の金属イオンによってゲル化しない水溶性アニオン性高分子化合物を加えて完全に溶解するまで攪拌した。次いで、上記(2)で得たゲル組成物を加えて、さらに1時間攪拌を続けて製剤を得た。
【0047】
上記で得られたスクラルファートを含有する製剤について、下記評価を行った。結果を表2〜7に示す。
【0048】
[滞留率、(A)成分の滞留性]
垂直に設置したポリエチレンチューブ(内径10mm・長さ125mm)を食道モデルとして使用した。なお、ポリエチレンチューブを用いた食道滞留評価法は下記文献にて評価法として用いられており、モデル動物での実験結果とも高い相関が得られている評価方法である。
Potential Efficacy of a Delta 5− Aminolevulinic Acid Bioadhesive Gel Formulation for the Photodynamic Treatment of Lesions of the Gastrointestinal Tract in Mice, V. Vonarx et al., J. Pharm. Pharmacol. (1997)
ポリエチレンチューブの上部より約5.0gのサンプルを注入する。その後、2.5mL/minで2分間、唾液モデル(0.5%ムチン溶液)を注入後、チューブ下部よりサンプルを回収し、スクラルファートの場合は、ショ糖オクタ硫酸エステルを高速液体クロマトグラフィーで、(A)としてその他の成分を用いた場合はアルミニウムを滴定法でそれぞれ定量し、チューブ内残存率を滞留率として算出した。それぞれの定量は日本薬局方に記載の方法に準じて行った。繰り返し6回の平均をとり、この平均値に基づき結果を下記判定基準で示す。
滞留率の計算式
滞留率(%)={1−(回収サンプル内(A)成分量)/(注入した(A)成分量)}×100
〈(A)成分の滞留性判定基準〉
◎:8%以上
○:6%以上8%未満
△:4%以上6%未満
×:4%未満
【0049】
[嚥下性(飲み込みやすさ)]
成人男女5名が各製剤を5mLずつ飲み込み、「飲み込みやすさ」を下記評価基準で評価した。結果を5名の平均値に基づき、下記判定基準で示す。
〈評価基準〉
5:かなり飲みこみやすい。
4:やや飲みこみやすい。
3:どちらともいえない。
2:やや飲み込みにくい。
1:かなり飲み込みにくい。
〈判定基準〉
◎:3.5以上
○:3.0以上3.5未満
△:2.0以上3.0未満
×:2.0未満
【0050】
[外観(分散安定性)]
200mLビーカーにサンプルを100mL入れて1日静置したときの外観(分散安定性)を、下記評価基準で判定した。
〈評価基準〉
◎:全体が均一分散している。
○:5mm未満の離水が確認されるが、撹拌で均一分散する。
△:5mm以上の離水が確認されるが、撹拌で均一分散する。
×:撹拌しても均一分散しない。または製造時から均一分散できない。
【0051】
[分散質中のショ糖硫酸エステル/アルミニウム比]
作製した製剤を遠心分離管にとり、2,000rpm、30分(室温)で遠心分離して上澄みを除去した。沈殿物に精製水を添加、洗浄して遠心分離で上澄みを除去した。同操作を2回繰り返した。得られた沈殿物のショ糖硫酸エステル含量とアルミウム含量を各々求め、ショ糖硫酸エステル/アルミニウム比(質量比)を求めた。
ショ糖硫酸エステル含量は「日局・スクラルファート」定量法(HPLC法)に準じて実施した。アルミニウム含量は、「日局・乾燥水酸化アルミニウムゲル」定量法(逆滴定法)に準じて酸化アルミニウム量を求め、アルミニウム量に換算した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
また、比較例の結果から以下のことが確認できた。
比較例1は、(A)/(C)で表される配合質量比が低すぎるため、液状組成物を調製した直後に沈殿が固化してしまい、製剤を調製することができなかった。
比較例2は、(A)/(C)で表される配合質量比が高すぎるため、液状組成物を調製した直後に沈殿が固化してしまい、製剤を調製することができなかった。
比較例3は、(B)有機酸の配合量が少なすぎるため、液状組成物を調製した直後に沈殿が固化してしまい、製剤を調製することができなかった。
比較例4は、(B)有機酸の配合量が多く、(B)/(A)で表される配合質量比が高すぎるため、服用性(嚥下性)に劣るものとなった。
比較例5は、(B)有機酸が配合量されていないため、滞留性に劣るものとなった。
比較例6は、(B)有機酸を使用せずに、リン酸等の無機酸を使用したものであり、液状組成物が作製できなかった。
比較例7は、(D)中和増粘剤を配合せずに(E)成分を配合したため、口中への吸着等の不快感が解消せず、嚥下性に劣るものとなった。
比較例8〜10は、(E)成分の高分子化合物を1種しか配合していないため、いずれも本発明の効果を得ることができなかった。
比較例11〜13は、(E)成分の比較品としてノニオン性高分子化合物を含むものであり、いずれも本発明の効果を得ることができなかった。
【0060】
[処方例:スクラルファート配合製剤]
上記の製造方法に従って表8に示した配合で(A)〜(D)成分を含有するゲル組成物を調製した。次いで、該ゲル組成物に対して(E)成分としてキサンタンガム及びアルギン酸プロピレングリコールエステル、(F)成分としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び合成ヒドロタルサイト、及び精製水を下記表に示す割合で配合し、所定量のスクラルファートを含む本発明のスクラルファート配合製剤を得た。
【0061】
【表8】
【0062】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
スクラルファート:富士化学工業(株)製、「スクラルファート水和物」
乳酸:DSP五協フード&ケミカル(株)製、90%DL−乳酸
リンゴ酸:関東化学(株)製、「リンゴ酸」
リン酸:和光純薬工業(株)製、「リン酸」
精製水:共栄製薬(株)製、「精製水(蒸留)」
重炭酸ナトリウム:旭硝子(株)製、「重炭酸ナトリウムKP」
炭酸カルシウム:純正化学(株)製、「炭酸カルシウム」
水酸化ナトリウム:和光純薬工業(株)製、「水酸化ナトリウム」
炭酸マグネシウム:和光純薬工業(株)製、「炭酸マグネシウム」
水酸化マグネシウム:和光純薬工業(株)製、「水酸化マグネシウム」
キサンタンガム:DSP五協フード&ケミカル(株)製、「エコーガム」
アルギン酸プロピレングリコールエステル:(株)キミカ製、「キミロイド」
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学工業(株)製、「ノイシリン(UFL2またはNFL2N)」
合成ヒドロタルサイト:協和化学工業(株)製、「アルカマックVF」