(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365344
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】エアクリーナ用フィルタエレメント
(51)【国際特許分類】
F02M 35/024 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
F02M35/024 511D
F02M35/024 511E
F02M35/024 511G
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-36905(P2015-36905)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-160750(P2016-160750A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 克尚
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭54−101209(JP,U)
【文献】
特開昭58−183921(JP,A)
【文献】
特開平08−019721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
襞折りされた濾材によりエアを濾過するエアクリーナ用フィルタエレメントにおいて、
前記濾材は、濾紙層と、熱可塑性樹脂の繊維により形成されるとともに前記濾紙層のダスティサイドの面に貼り付けられた不織布層と、を有し、
襞の稜線の延びる方向をフィルタエレメントの幅方向とするとき、
前記幅方向における前記濾紙層の端において前記不織布層が同濾紙層のクリーンサイドに折り返されている、
エアクリーナ用フィルタエレメント。
【請求項2】
前記幅方向における前記濾材の端よりも内側には同濾材とは別体の端部封止部が設けられている、
請求項1に記載のエアクリーナ用フィルタエレメント。
【請求項3】
前記幅方向における前記濾材の端部には、前記不織布層における前記濾紙層のクリーンサイドに折り返された折り返し部を溶融して形成された端部封止部が設けられている、
請求項1に記載のエアクリーナ用フィルタエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、襞折りされた濾材によりエアを濾過するエアクリーナ用フィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
車載内燃機関の吸気通路には、エアを濾過するエアクリーナが設けられている。エアクリーナには、襞折りされた濾材を有するフィルタエレメントが設けられている。
従来、こうした濾材としては、濾紙層と、熱可塑性樹脂の繊維により形成されるとともに同濾紙層のダスティサイドの面に貼り付けられた不織布層とを有するものが開発されるに至っている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―175352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、雨天時などに吸気口から吸気通路内に水が吸い込まれることがある。この場合、吸い込まれた水がフィルタエレメントの濾材に付着すると、濾材が水を吸収することにより同濾材の剛性が低下する。特に、不織布層を有する濾材においては、同不織布層のために濾材の通気抵抗が増大しやすいことから、濾材の通気抵抗の増大を抑制すべく、濾紙層の目付が小さくされることが多い。そのため、濾紙層が水を吸収した場合には剛性が低くなりやすい。このとき、濾材の目詰まりなどにより吸気負圧が大きくなると、フィルタエレメントは剛性が低下しているために大きく変形するなどの不都合が生じるおそれがある。
【0005】
特許文献1に記載のフィルタエレメントでは、濾材のダスティサイドの面が熱可塑性樹脂の繊維により形成された不織布層によって形成されており、同面は撥水性を有する。しかし、襞の稜線の延びる方向、すなわちフィルタエレメントの幅方向における濾材の両端においては濾紙層が外部に露出するため、濾紙層の上記幅方向における両端が水に濡れることとなる。その結果、濾紙層が水を吸収してその剛性が低下することにより、上述した不都合が生じるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、濾紙層が水を吸収することに起因した不都合の発生を抑制することができるフィルタエレメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのフィルタエレメントは、襞折りされた濾材によりエアを濾過するものであり、前記濾材は、濾紙層と、熱可塑性樹脂の繊維により形成されるとともに前記濾紙層のダスティサイドの面に貼り付けられた不織布層と、を有し、襞の稜線の延びる方向をフィルタエレメントの幅方向とするとき、前記幅方向における前記濾紙層の端において前記不織布層が同濾紙層のクリーンサイドに折り返されている。
【0008】
同構成によれば、フィルタエレメントの幅方向における濾材の端においては不織布層が外部に露出し、濾紙層は外部に露出しない。このため、濾紙層の上記幅方向における端が水に濡れることを適切に抑制することができ、同濾紙層が水を吸収することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、濾紙層が水を吸収することに起因した不都合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】同実施形態における濾紙層と不織布層とを張り合わせる工程を示す側面図。
【
図5】同実施形態における濾紙層と不織布層とを張り合わせる工程を示す平面図。
【
図8】同実施形態における濾材について、襞折りされた状態の斜視図。
【
図9】同実施形態における濾材について、端部封止部が形成された状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1〜
図8を参照して、フィルタエレメントの一実施形態について説明する。本実施形態のフィルタエレメント10は、車載内燃機関のエアクリーナに適用されるものである。
【0012】
図1に示すように、フィルタエレメント10は、襞折りされて平面視四角形をなす濾材11と、濾材11の外周縁に設けられた四角枠状のシール部12と、襞の稜線の延びる方向、すなわちフィルタエレメント10の幅方向(以下、単に幅方向Lと略称する。)における濾材11の両端111を封止する端部封止部13とを備えている。
【0013】
図1〜
図3に示すように、濾材11は、濾紙層20と、濾紙層20のダスティサイド(同図の下側であり、エア流れ方向の上流側)の面に貼り付けられた不織布層30とを有している。不織布層30は熱可塑性樹脂の繊維により形成されており、撥水性を有している。
【0014】
不織布層30は、濾紙層20のダスティサイドの面全体に貼り付けられた本体部31(
図2参照)と、幅方向Lにおける濾紙層20の端21において同濾紙層20のクリーンサイド(同図の上側であり、エア流れ方向の下流側)に折り返された折り返し部32(
図3参照)とを有している。折り返し部32の幅は例えば10mm〜15mmが好ましい。折り返し部32の幅が小さすぎると、不織布層30を折り返すことが難しくなったり、折り返し部32を濾紙層20に貼り付けることが難しくなったりするためである。折り返し部32の幅が大きすぎると、濾材11の通気抵抗を悪化させるためである。したがって、濾材11のクリーンサイドの面における折り返し部32を除く大部分は、濾紙層20が露出している。なお、不織布層30を形成する熱可塑性樹脂としては例えばポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。また、不織布層30によってエアに含まれる粒子径0.5μm程度の微細粒子を効率よく捕捉する上では、不織布層30の繊維径は0.7〜15μmが好ましく、不織布層30の目付は、9〜15g/m2が好ましい。
【0015】
シール部12は独立気泡のポリウレタンによって形成されている。
端部封止部13は、ホットメルト接着剤であり、濾材11の外側に端部封止部13がはみ出さないように、端部封止部13は幅方向Lにおける濾材11の各端111よりも内側に設けられている。
【0016】
次に、
図4〜
図8を参照して、濾材11の製造工程について説明する。
図4に示すように、巻き取りローラ43を回転させることにより、濾紙ロール41に巻かれている濾紙層20を巻き取るとともに、不織布ロール42に巻かれている不織布層30を巻き取る。不織布ロール42と巻き取りローラ43との間には、巻き取りローラ43に向けて移動する不織布層30を濾紙層20と平行な姿勢になるようにガイドするガイドローラ44が設けられている。
【0017】
このとき、
図5に示すように、濾紙層20及び不織布層30は、それらの幅方向の中心Cが一致している。また、
図6に示すように、不織布層30の幅W2は、濾紙層20の幅W1よりも大きくされている(W2>W1)。
【0018】
図4及び
図5に示すように、ガイドローラ44と巻き取りローラ43との間には、ガイドローラ44側から順に、ガイド部材45及び一対の加熱ロール46a,46bが設けられている。各加熱ロール46a,46bの周面には、軸線方向において所定間隔毎に複数の突起が形成されている。
【0019】
図5及び
図7に示すように、濾紙層20及び不織布層30は、ガイド部材45を通過することにより、不織布層30の幅方向において濾紙層20よりもはみ出している部分が濾紙層20の端21を内包するように幅方向内側に折り返される。
【0020】
また、濾紙層20及び不織布層30は、一対の加熱ロール46a,46bの間を通過することによりエンボス加工が施される。すなわち、不織布層30が上記突起からの受熱により部分的に溶融されて濾紙層20に接着される。そして、濾紙層20に不織布層30が貼り付けられたものを所定長さにカットすることにより、濾材11が形成される。
【0021】
その後、
図8に示すように、濾材11の幅方向に沿って同濾材11を襞折りする。そして、
図9に示すように、濾材11の幅方向Lにおける端111よりも内側にホットメルト接着剤を塗布することにより端部封止部13を形成する。最後に、濾材11の外周縁にシール部12を成形する。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
幅方向Lにおける濾材11の端においては不織布層30が外部に露出し、濾紙層20は外部に露出しない。このため、濾紙層20の上記幅方向Lにおける端21が水に濡れることを適切に抑制することができ、濾紙層20が水を吸収してその剛性が低下することを抑制することができる。したがって、濾材11の目詰まりなどにより吸気負圧が大きくなっても、フィルタエレメント10が大きく変形するなどの不都合が発生することを抑制することができる。
【0023】
以上説明した本実施形態に係るフィルタエレメントによれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)フィルタエレメント10の濾材11は、濾紙層20と、熱可塑性樹脂の繊維により形成されるとともに濾紙層20のダスティサイドの面に貼り付けられた不織布層30と、を有している。フィルタエレメント10の幅方向Lにおける濾紙層20の端21において不織布層30が同濾紙層20のクリーンサイドに折り返されている。
【0024】
こうした構成によれば、濾紙層20が水を吸収することを抑制することができる。したがって、濾紙層20が水を吸収することに起因した不都合の発生を抑制することができる。
【0025】
(2)幅方向Lにおける濾材11の端111よりも内側には濾材11とは別体の端部封止部13が設けられている。
こうした構成によれば、エアが濾材11自体を通過することなく濾材11の端111の谷間を通じてクリーンサイドに流入することを端部封止部13によって適切に抑制することができる。
【0026】
したがって、本実施形態によれば、幅方向Lにおける濾材11の端111よりも内側に端部封止部13を設けながらも、濾紙層20が水を吸収することに起因した不都合の発生を抑制することができる。
【0027】
(3)不織布層30の本体部31と折り返し部32とをエンボス加工によって濾紙層20に対して同時に接着するようにした。このため、濾材11を効率的に製造することができる。
【0028】
<変形例>
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・濾紙層20と不織布層30とをラミネート加工により貼り付けることもできる。すなわち、濾紙層20と不織布層30との間に通気性の高いホットメルトシートを挟み、加熱及び加圧することにより接着する。
【0029】
・メルトブロー法などによって形成された直後の不織布層30を濾紙層20に張り付けることもできる。
・幅方向Lにおける濾材11の端部に不織布層30における折り返し部32の一部を溶融することにより、端部封止部13を形成することもできる。この場合、ホットメルト接着剤が不要となる。
【符号の説明】
【0030】
10…フィルタエレメント、11…濾材、111…端、12…シール部、13…端部封止部、20…濾紙層、21…端、30…不織布層、31…本体部、32…折り返し部、41…濾紙ロール、42…不織布ロール、43…巻き取りローラ、44…ガイドローラ、45…ガイド部材。46a,46b…加熱ロール。