特許第6365350号(P6365350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365350
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 47/00 20060101AFI20180723BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20180723BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F02M47/00 P
   F02M51/00 E
   F02M51/06 N
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-42444(P2015-42444)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-160883(P2016-160883A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田名田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】植田 大治
(72)【発明者】
【氏名】鎌原 本也
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−309015(JP,A)
【文献】 特開2008−202417(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0257980(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012220027(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 47/00−47/06,51/00−51/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴孔(311)を有するボデー(1、8、9、31)と、
前記ボデー内で往復動して前記噴孔を開閉するノズルニードル(32)と、
前記ノズルニードルに閉弁向きの燃料圧力を作用させる制御室(36)と、
制御室連通路(91)を介して前記制御室に連通するとともに、高圧通路(92)を介して高圧燃料が供給される第1中間室(81)と、
排出通路(84)を介して低圧部(12)に連通する第2中間室(82)と、
前記第1中間室と前記第2中間室とを隔てるバルブシリンダ(51)と、
前記制御室連通路と前記第1中間室との間を開閉し、前記排出通路と前記第2中間室との間を開閉する弁体(52、53、54)と、
前記制御室連通路と前記第1中間室との間が開かれ、且つ、前記排出通路と前記第2中間室との間が閉じられる向きに前記弁体を付勢する弁体スプリング(55)と、
前記制御室連通路と前記第1中間室との間が閉じられ、且つ、前記排出通路と前記第2中間室との間が開かれる向きに前記弁体を駆動するアクチュエータ(7)とを備え、
前記弁体は、
前記第1中間室内に配置され、前記ボデーに形成された高圧シート面(94)と接離して前記制御室連通路と前記第1中間室との間を開閉する円筒状の高圧側弁部(521)を有する第1弁体(52)と、
前記第2中間室内に配置され、前記ボデーに形成された低圧シート面(85)と接離して前記排出通路と前記第2中間室との間を開閉する低圧側弁部(531)を有する第2弁体(53)と、
前記第1弁体と前記第2弁体との間に配置され、前記バルブシリンダに形成されたシリンダ孔(511)に摺動自在に保持された円柱状のロッド部(54)と、
前記制御室連通路と前記第2中間室とを連通させる弁体内通路(523、541)とを備え、
前記高圧側弁部の外径は、前記ロッド部の外径よりも大きいことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
前記弁体は、前記弁体内通路に絞り(524)を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記絞りは、前記弁体内通路における前記制御室連通路側の端部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記弁体は、前記第1弁体と前記第2弁体と前記ロッド部とに分割されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記ロッド部は、前記第1弁体および前記第2弁体のうちいずれか一方と一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料噴射弁。
【請求項6】
前記第1中間室および前記第2中間室は前記ボデーと前記バルブシリンダとによって区画形成され、
前記バルブシリンダがシリンダスプリング(56)によって前記ボデーに押し付けられて前記第1中間室と前記第2中間室との間がシールされていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料噴射弁。
【請求項7】
前記第1中間室および前記第2中間室は前記ボデーと前記バルブシリンダとによって区画形成され、
前記バルブシリンダが前記第1中間室内の高圧燃料によって前記ボデーに押し付けられて前記第1中間室と前記第2中間室との間がシールされていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を内燃機関に噴射するための燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料噴射弁として、例えば特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された燃料噴射弁は、制御室の燃料圧力によりノズルニードルが閉弁向きに付勢され、制御室の圧力を制御してノズルニードルの開閉弁作動を制御するようになっている。
【0003】
より詳細には、制御室に常時連通する制御室連通路を設け、制御室の燃料を制御室連通路および排出通路を介して低圧部に排出して、制御室の燃料圧力を低下させることにより、ノズルニードルを開弁向きに移動させる。一方、高圧通路にて導かれる高圧燃料を制御室連通路を介して制御室に供給して、制御室の燃料圧力を上昇させることにより、ノズルニードルを閉弁向きに移動させるようになっている。
【0004】
制御室連通路と排出通路との間、および制御室連通路と高圧通路との間は、弁室に配置された弁体によって開閉される。この弁体は、弁体スプリングによって制御室連通路と排出通路との間が閉じられる向きに付勢され、ピエゾ素子を用いたアクチュエータによって制御室連通路と高圧通路との間が閉じられる向きに駆動される。
【0005】
ところで、噴射量の精度を維持するためにはニードル閉弁速度を高くすることが望ましい。そして、高圧通路の絞りの流路面積を拡大することにより、ニードル閉弁速度を高くすることができる。
【0006】
しかし、制御室連通路と高圧通路との間を閉じた状態のとき、すなわちニードル閉弁状態のときには、弁体は高圧燃料の圧力により制御室連通路と高圧通路との間が開かれる向きの力を受ける。このため、高圧通路の絞りの流路面積を拡大すると、制御室連通路と高圧通路との間を閉じた状態のときに弁体が高圧燃料の圧力を受ける面積も大きくなり、弁体によって制御室連通路と高圧通路との間を閉じた状態を維持するために要求されるアクチュエータの駆動力が大きくなり、アクチュエータの大型化を招いてしまう。
【0007】
そこで、特許文献1に記載された燃料噴射弁は、弁体によって制御室連通路と高圧通路との間を閉じたときに、弁室および制御室の圧力をアシスト圧として利用してアクチュエータの駆動力を補助する向きの油圧力を弁体に作用させ、これによりアクチュエータに対する要求駆動力を小さくするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−46323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された燃料噴射弁は、制御室連通路と高圧通路との間を閉じたときの弁体には、アシスト圧によりアクチュエータの駆動力を補助する向きの油圧力が作用する一方で、高圧燃料の圧力によりアクチュエータの駆動力に対抗する向きの油圧力が作用する。
【0010】
そして、高圧燃料の圧力はアシスト圧よりも高いため、アクチュエータの駆動力を補助する向きの油圧力よりもアクチュエータの駆動力に対抗する向きの油圧力の方が大である。
【0011】
したがって、燃焼改善等のためにコモンレール圧(すなわち、高圧燃料の圧力)が現状よりもさらに高くなった場合、或いは、ニードル閉弁速度をさらに高くするために高圧通路の絞りの流路面積がさらに拡大された場合には、アクチュエータに対する要求駆動力が現状よりも大きくなり、アクチュエータの大型化を回避できない虞がある。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、制御室の燃料圧力によりノズルニードルが閉弁向きに付勢される燃料噴射弁において、アクチュエータに要求される駆動力を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴射するための噴孔(311)を有するボデー(1、8、9、31)と、ボデー内で往復動して噴孔を開閉するノズルニードル(32)と、ノズルニードルに閉弁向きの燃料圧力を作用させる制御室(36)と、制御室連通路(91)を介して制御室に連通するとともに、高圧通路(92)を介して高圧燃料が供給される第1中間室(81)と、排出通路(84)を介して低圧部(12)に連通する第2中間室(82)と、第1中間室と第2中間室とを隔てるバルブシリンダ(51)と、制御室連通路と第1中間室との間を開閉し、排出通路と第2中間室との間を開閉する弁体(52、53、54)と、制御室連通路と第1中間室との間が開かれ、且つ、排出通路と第2中間室との間が閉じられる向きに弁体を付勢する弁体スプリング(55)と、制御室連通路と第1中間室との間が閉じられ、且つ、排出通路と第2中間室との間が開かれる向きに弁体を駆動するアクチュエータ(7)とを備え、弁体は、第1中間室内に配置され、ボデーに形成された高圧シート面(94)と接離して制御室連通路と第1中間室との間を開閉する円筒状の高圧側弁部(521)を有する第1弁体(52)と、第2中間室内に配置され、ボデーに形成された低圧シート面(85)と接離して排出通路と第2中間室との間を開閉する低圧側弁部(531)を有する第2弁体(53)と、第1弁体と第2弁体との間に配置され、バルブシリンダに形成されたシリンダ孔(511)に摺動自在に保持された円柱状のロッド部(54)と、制御室連通路と第2中間室とを連通させる弁体内通路(523、541)とを備え、高圧側弁部の外径は、ロッド部の外径よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
これによると、高圧側弁部の外径はロッド部の外径よりも大きいため、第1弁体にて制御室連通路と第1中間室との間が閉じられた状態のときには、第1中間室内の高圧燃料の圧力によりアクチュエータの駆動力を補助する向きの油圧力が第1弁体に作用する。したがって、アクチュエータに対する要求駆動力が小さくなり、アクチュエータを小型にすることができる。
【0015】
また、コモンレール圧が現状よりもさらに高くなった場合、或いは、高圧通路の絞りの流路面積がさらに拡大された場合でも、アクチュエータの大型化を回避することができる。
【0016】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射弁の構成を示す断面図である。
図2】一実施形態に係る燃料噴射弁の他の作動状態を示す断面図である。
図3図1の制御弁機構周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態の燃料噴射弁は、コモンレール(図示せず)から供給される高圧燃料を、圧縮着火式内燃機関(以下、内燃機関という。図示せず)の燃焼室に噴射するものである。
【0020】
図1図3に示すように、燃料噴射弁は、インジェクタボデー1、ノズル3、制御弁機構5、アクチュエータ7、第1中間ボデー8、第2中間ボデー9等を、主要構成要素として備えている。
【0021】
略有底円筒状のインジェクタボデー1には、コモンレールから供給される高圧燃料が流通する高圧燃料通路11、図示しない燃料タンクに接続されて常に低圧になっている低圧燃料通路12、アクチュエータ7が収納される収納室13が形成されている。収納室13は、低圧連通孔14を介して低圧燃料通路12に接続されている。なお、低圧燃料通路12は、本発明の低圧部に相当する。
【0022】
第1中間ボデー8は、インジェクタボデー1と第2中間ボデー9との間に配置され、この第1中間ボデー8内に制御弁機構5が収容されている。第1中間ボデー8には、後述する第1中間室81および第2中間室82、高圧燃料通路11と連通する高圧燃料通路83、第2中間室82を低圧燃料通路12に接続する排出通路84が形成されている。
【0023】
ノズル3は、略有底円筒状のノズルボデー31、ノズルボデー31に摺動自在に挿入された略円柱状のノズルニードル32、ノズルニードル32を閉弁向きに付勢するノズルスプリング33、およびノズルシリンダ34を備えている。なお、インジェクタボデー1、第1中間ボデー8、第2中間ボデー9、およびノズルボデー31は、本発明のボデーを構成している。
【0024】
ノズルボデー31には、高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴出させる噴孔311が形成され、ノズルニードル32の先端部(すなわち、噴孔側端部)がノズルボデー31に接離することにより噴孔311が開閉されるようになっている。
【0025】
ノズルボデー31内には、コモンレールから高圧燃料が常時供給される燃料溜まり室35が形成され、コモンレールからの高圧燃料は燃料溜まり室35を介して噴孔311に向かって流れるようになっている。
【0026】
円筒状のノズルシリンダ34は、ノズルスプリング33によって第2中間ボデー9に押し付けられ、ノズルニードル32の後端部(すなわち、反噴孔側端部)がノズルシリンダ34に摺動自在に挿入されている。
【0027】
このノズルシリンダ34内には、内部の燃料圧力が高圧と低圧に切り替えられる制御室36が形成されている。そして、ノズルニードル32は、制御室36内の燃料圧力により閉弁向きに付勢されるとともに、燃料溜まり室35の燃料圧力により開弁向きに付勢される。
【0028】
第2中間ボデー9は、第1中間ボデー8とノズルボデー31との間に配置されている。この第2中間ボデー9には、高圧燃料通路83と燃料溜まり室35とを接続する高圧燃料通路90、第1中間室81と制御室36とを連通させる制御室連通路91、および第1中間室81と燃料溜まり室35とを連通させる高圧通路92が形成されている。制御室連通路91には、制御室36側の開口端部に流入絞り93が形成されている。
【0029】
制御弁機構5は、バルブシリンダ51、第1弁体52、第2弁体53、ロッド部54、弁体スプリング55、およびシリンダ保持スプリング56を備えている。
【0030】
バルブシリンダ51は、有底円筒状に形成され、第1中間室81と第2中間室82を隔てている。より詳細には、第2中間室82は、バルブシリンダ51の内側に形成され、バルブシリンダ51と第1中間ボデー8とによって区画されている。また、第1中間室81は、バルブシリンダ51の外側に形成され、バルブシリンダ51と第1中間ボデー8と第2中間ボデー9とによって区画されている。
【0031】
バルブシリンダ51と第2中間ボデー9との間に配置されたシリンダ保持スプリング56、および第1中間室81内の高圧燃料の圧力によって、バルブシリンダ51の開口端部が第1中間ボデー8に押し付けられ、これにより、第1中間室81と第2中間室82との間がシールされている。
【0032】
バルブシリンダ51の底部における径方向中心部には、シリンダ孔511が形成され、このシリンダ孔511に、円柱状のロッド部54が摺動自在に挿入されている。
【0033】
第1弁体52は、略円柱状に形成され、第1中間室81に配置されている。第1弁体52における第2中間ボデー9側の端面の外周部には、円筒状の突起である高圧側弁部521が形成されている。この高圧側弁部521の外径は、ロッド部54の外径よりも大きく設定されている。また、第1弁体52における高圧側弁部521の内周側には、円柱状の空間である逃がし部522が形成されている。
【0034】
そして、第2中間ボデー9に形成された高圧シート面94に高圧側弁部521が接離して、制御室連通路91と第1中間室81との間が開閉される。より詳細には、高圧シート面94に高圧側弁部521が当接して制御室連通路91と第1中間室81との間が遮断された状態では、制御室連通路91は逃がし部522と連通し、高圧通路92は逃がし部522に連通しないようになっている。
【0035】
第1弁体52の内部には、逃がし部522を介して制御室連通路91とロッド内通路541(詳細後述)とを連通させる第1弁体内通路523が形成されている。また、第1弁体内通路523における逃がし部522側(すなわち、制御室連通路91側)の開口端部には、排出絞り524が形成されている。
【0036】
第2弁体53は、略円柱状に形成され、第2中間室82に配置されている。第2弁体53におけるインジェクタボデー1側の端部には、テーパ状または球面状の低圧側弁部531が形成されている。そして、第1中間ボデー8に形成された低圧シート面85に低圧側弁部531が接離して、排出通路84と第2中間室82との間が開閉される。
【0037】
ロッド部54は、一端が第1中間室81に突出し、他端が第2中間室82に突出している。そして、ロッド部54は、第1弁体52と第2弁体53との間に配置され、ロッド部54と第1弁体52と第2弁体53が一体的に作動するようになっている。
【0038】
なお、第1弁体52、第2弁体53、およびロッド部54は、本発明の弁体を構成している。ここで、本実施形態では、弁体は、第1弁体52と第2弁体53とロッド部54とに分割されているが、ロッド部54は、第1弁体52または第2弁体53と一体に形成してもよい。
【0039】
また、ロッド部54の内部には、第2中間室82と第1弁体内通路523とを連通させるロッド内通路541が形成されている。換言すると、第1弁体内通路523とロッド内通路541により、制御室連通路91と第2中間室82とが連通されている。なお、第1弁体内通路523とロッド内通路541は、本発明の弁体内通路を構成している。
【0040】
弁体スプリング55は、第2中間ボデー9と第1弁体52とに挟持され、第1弁体52と第2弁体53とロッド部54を所定の向きに付勢している。具体的には、弁体スプリング55は、制御室連通路91と第1中間室81との間が開かれ、且つ、排出通路84と第2中間室82との間が閉じられる向きに、第1弁体52と第2弁体53とロッド部54を付勢している。
【0041】
アクチュエータ7は、ピエゾ素子が多数積層されて電荷の充放電により伸縮する円柱状のピエゾ素子積層体71と、ピエゾ素子積層体71の伸縮変位を制御弁機構5に伝達する伝達部とを備えている。
【0042】
伝達部は以下のように構成されている。すなわち、アクチュエータシリンダ72に第1ピストン73および第2ピストン74が摺動自在に且つ液密的に挿入されており、第1ピストン73と第2ピストン74との間には、燃料が充填された液室75が形成されている。
【0043】
第1ピストン73は、第1アクチュエータスプリング76によりピエゾ素子積層体71側に向かって付勢されており、ピエゾ素子積層体71により直接駆動されるようになっている。そして、ピエゾ素子積層体71の伸長時には、第1ピストン73により液室75の圧力が高められるようになっている。
【0044】
第2ピストン74は、第2アクチュエータスプリング77により制御弁機構5側に向かって付勢されるとともに、液室75の圧力を受けて作動するようになっている。
【0045】
具体的には、第2ピストン74は、ピエゾ素子積層体71の伸長時には、高圧化された液室75の圧力を受けて作動して、第1弁体52と第2弁体53とロッド部54を第2中間ボデー9側に向かって駆動する。これにより、高圧側弁部521が高圧シート面94に当接して制御室連通路91と第1中間室81との間が遮断され、低圧側弁部531が低圧シート面85から離れて排出通路84と第2中間室82とが連通する。
【0046】
一方、ピエゾ素子積層体71の収縮時、すなわち液室75の圧力が低いときには、第2ピストン74は、第2アクチュエータスプリング77に抗して弁体スプリング55により第1ピストン73側に押し戻される。
【0047】
次に、上記燃料噴射弁の作動を説明する。まず、図1に示す噴孔311が閉じられたニードル閉弁状態のときに、ピエゾ素子積層体71に電荷を充電すると、ピエゾ素子積層体71が伸長して第1ピストン73が駆動され、第1ピストン73により液室75の圧力が高められる。高圧化された液室75の圧力により第2ピストン74が第1弁体52や第2弁体53側に向かって駆動される。
【0048】
そして、図2および図3に示すように、第2ピストン74にて第1弁体52と第2弁体53とロッド部54が駆動されることにより、高圧側弁部521が高圧シート面94に当接して制御室連通路91と第1中間室81との間が遮断され、低圧側弁部531が低圧シート面85から離れて排出通路84と第2中間室82とが連通する。
【0049】
したがって、制御室36の燃料は、制御室連通路91、逃がし部522、排出絞り524、第1弁体内通路523、およびロッド内通路541を介して第2中間室82に流出し、さらに、排出通路84、および低圧燃料通路12を介して燃料タンクへ戻される。
【0050】
その結果、制御室36の圧力が低下してノズルニードル32を閉弁向きに付勢する力が小さくなるため、ノズルニードル32が開弁向きに移動してニードル開弁状態になり、噴孔311から燃料が噴射される。
【0051】
ここで、高圧側弁部521の外径d1はロッド部54の外径d2よりも大きいため、高圧側弁部521が高圧シート面94に当接して制御室連通路91と第1中間室81との間が遮断された状態のときには、第1中間室81の圧力Pにより、アクチュエータ7の駆動力を補助する向きの油圧力F(F≒π/4×(d1−d2)×P)が第1弁体52に作用する。
【0052】
一方、図2に示すニードル開弁状態のときに、ピエゾ素子積層体71の電荷を放電させると、ピエゾ素子積層体71が収縮する。そして、アクチュエータスプリング76により第1ピストン73がピエゾ素子積層体71側に戻されて液室75の圧力が低下し、弁体スプリング55により、第1弁体52、第2弁体53、ロッド部54、および第2ピストン74が第1ピストン73側に戻される。
【0053】
これにより、高圧側弁部521が高圧シート面94から離れて制御室連通路91と第1中間室81との間が連通し、低圧側弁部531が低圧シート面85に当接して排出通路84と第2中間室82との間が遮断される。
【0054】
したがって、燃料溜まり室35の高圧の燃料が、高圧通路92、第1中間室81、制御室連通路91、および流入絞り93を介して、制御室36に流入する。
【0055】
その結果、制御室36の圧力が上昇してノズルニードル32を閉弁向きに付勢する力が大きくなるため、ノズルニードル32が閉弁向きに移動し、噴孔311が閉じられてニードル閉弁状態になり、燃料噴射が終了する。
【0056】
本実施形態によると、高圧側弁部521の外径はロッド部54の外径よりも大きいため、制御室連通路91と第1中間室81との間が遮断された状態のときには、アクチュエータ7の駆動力を補助する向きの油圧力が第1弁体52に作用する。したがって、アクチュエータ7に対する要求駆動力が小さくなり、アクチュエータ7を小型にすることができる。また、コモンレール圧を現状よりもさらに高くしたり、或いは、流入絞り93の流路面積をさらに拡大した場合でも、アクチュエータ7の大型化を回避することができる。
【0057】
また、第2弁体53とロッド部54は分割されているため、第2弁体53の低圧側弁部531が第1中間ボデー8の低圧シート面85に当接する際に自動的に調芯作用が行われて、低圧側弁部531と低圧シート面85との当接部は高いシール性が得られる。
【0058】
また、シリンダ保持スプリング56および第1中間室81内の高圧燃料の圧力によって、バルブシリンダ51を第1中間ボデー8に押し付けているため、バルブシリンダ51と第1中間ボデー8との当接部は高いシール性が得られる。
【0059】
ところで、本出願人が先に出願した特願2014−219293の明細書には、排出絞りを有する制御プレートとこの制御プレートをシート面側に向かって付勢するプレートスプリングとを制御室内に配置する燃料噴射弁が開示されている。
【0060】
この燃料噴射弁は、ニードル閉弁状態にする場合には、本実施形態と同様に制御室の燃料は排出絞りを介して燃料タンクへ戻される。一方、ニードル開弁状態にする場合には、本実施形態と同様に高圧の燃料は排出絞りを通らずに制御室に流入する。
【0061】
そして、この先願のように制御プレートおよびプレートスプリングを制御室内に配置した場合は、制御室の容積が大きくなってしまい、制御室の油圧脈動が大きくなり易い。
【0062】
これに対し、本実施形態のように排出絞り524を第1弁体内通路523に配置することにより、制御室36の容積を低減できるため、制御室36の油圧脈動を低減して噴射量の制御性を向上させることができる。
【0063】
(他の実施形態)
上記実施形態では、アクチュエータ7を、ピエゾ素子積層体71と伝達部とで構成したが、アクチュエータ7は、電磁力にて第1弁体52と第2弁体53とロッド部54を駆動する形式のものでもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、制御室連通路91に流入絞り93を設けたが、高圧通路92に流入絞り93を設けてもよい。
【0065】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0066】
また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0067】
また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0068】
また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0069】
1 インジェクタボデー(ボデー)
7 アクチュエータ
8 第1中間ボデー(ボデー)
9 第2中間ボデー(ボデー)
12 低圧燃料通路(低圧部)
31 ノズルボデー(ボデー)
32 ノズルニードル
36 制御室
51 バルブシリンダ
52 第1弁体(弁体)
53 第2弁体(弁体)
54 ロッド部(弁体)
55 弁体スプリング
81 第1中間室
82 第2中間室
84 排出通路
85 低圧シート面
91 制御室連通路
92 高圧通路
94 高圧シート面
311 噴孔
511 シリンダ孔
521 高圧側弁部
523 第1弁体内通路(弁体内通路)
531 低圧側弁部
541 ロッド内通路(弁体内通路)
図1
図2
図3