(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、感光体ドラムを含む複数の作像ユニットと、光走査装置と、転写ユニットと、を備えている。光走査装置は、複数の感光体ドラムの表面を露光して複数の静電潜像を形成する。各作像ユニットは、静電潜像を現像してトナー像を形成する。転写ユニットは、複数の支持ローラーに架け渡される転写ベルトを有している。複数の支持ローラーには、転写ベルトを周回走行させる駆動ローラーが含まれている。走行する転写ベルトには、複数の感光体ドラム上に担持された複数のトナー像が順次転写される。これにより、転写ベルト上にフルカラーのトナー像が形成される。
【0003】
ところで、タンデム方式の画像形成装置では、転写ベルト上において複数のトナー像の重ね合わせ位置がずれることがある(色ずれの発生)。色ずれの主な原因は、熱による光走査装置の変形や駆動ローラーの外径変化等に基づくことが多い。例えば、光走査装置が動作中の熱によって僅かに熱膨張すると、各感光体ドラムの表面において走査光の結像点が僅かにずれることがある。すると、各感光体ドラムに担持されるトナー像の位置がずれるため、色ずれが発生する。また、例えば、駆動ローラーの外径が変化すると、駆動ローラーの線速(周速)が変化する。すると、転写ベルトの周回速度(走行速度)が変化するため、色ずれが発生する。
【0004】
ところで、画像形成装置は、作像ユニットや光走査装置等を冷却するための冷却ファンを備えている。例えば、画像形成動作の実行に伴って装置本体内の温度が上昇すると、冷却ファンが作動する。このとき、主要な冷却対象である作像ユニットや光走査装置等は、冷却ファンによって短時間で冷却される。これに対し、転写ベルト内に配置された駆動ローラーは、冷却ファンの影響を受け難く短時間で冷却することが難しい。このように、光走査装置等と駆動ローラーとでは、冷却効果が現れるまでの時間に差があった。すると、光走査装置の温度変化を要因とする色ずれと、駆動ローラーの外径変化を要因とする色ずれとのバランスが崩れるため、冷却ファンの作動前よりも色ずれが悪化することがあった。つまり、冷却ファンの作動が、色ずれを助長することがあった。
【0005】
そこで、装置本体内の昇温に基づく色ずれを抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置は、転写ベルト(搬送ベルト)上に形成された色ずれ検出用のパターンを一対の光センサーで検出し、この検出結果に基づいて色ずれを検出する色ずれの補正制御を行う。色ずれ補正制御は、画像形成部の近傍に配置された温度センサーの検出結果、または、装置本体内を冷却する冷却ファンの作動に基づいて実行される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下、各図に示す方向を基準に説明する。
【0019】
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る画像形成装置としてのカラープリンター1について説明する。
図1はカラープリンター1の内部構造を模式的に示す断面図である。
図2は中間転写ユニット11を模式的に示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、カラープリンター1は、装置本体2と、給紙カセット3と、排紙トレイ4と、を備えている。給紙カセット3は、略直方体形状の装置本体2の下部に設けられている。排紙トレイ4は、装置本体2の上部に設けられている。
【0021】
給紙カセット3は、装置本体2に着脱可能に装着されている。給紙カセット3の内部には、枚葉のシートS(の束)が収容されている。なお、シートSは、紙製に限らず、樹脂フィルム等であってもよい。
【0022】
また、カラープリンター1は、給紙部10と、中間転写ユニット11と、画像形成部12と、定着装置13と、制御装置14と、を装置本体2内に備えている。給紙部10は、給紙カセット3から排紙トレイ4まで延びる搬送路15の上流側に設けられている。中間転写ユニット11および画像形成部12は、装置本体2の中間部に設けられている。定着装置13は、搬送路15の下流側に設けられている。制御装置14は、カラープリンター1の各構成を統括制御する。なお、装置本体2内には、電力を必要とする各構成に給電するための定圧電源16が備えられている。
【0023】
図2に示すように、中間転写ユニット11(転写ユニット)は、複数の支持ローラー20と、中間転写ベルト21と、ベルトクリーニング装置22と、を備えている。複数の支持ローラー20は、装置本体2に軸支されている。中間転写ベルト21(転写ベルト)は、複数の支持ローラー20に架け渡されている。ベルトクリーニング装置22は、中間転写ベルト21に摺接可能に設けられている。
【0024】
複数の支持ローラー20は、駆動ローラー20aと、従動ローラー20bと、テンションローラー20cと、を含んで構成されている。各ローラー20a,20b,20cは、左右方向に延びる円筒状に形成されている。駆動ローラー20aは、装置本体2の後側に配置され、従動ローラー20bは、装置本体2の前側に配置されている(
図1参照)。テンションローラー20cは、従動ローラー20bの後下側に配置されている。
【0025】
駆動ローラー20aは、ギア列(図示せず)を介してベルトモーターMに接続されている。駆動ローラー20aは、素管23の外周面に積層される弾性層24を有している。素管23は、アルミニウム製で円筒状に形成されている(所謂三ツ矢管)。弾性層24は、例えば、導電性エチレンプロピレンゴムによって形成されている。このように、駆動ローラー20aが導電性エチレンプロピレンゴムから成る弾性層24を備えることで、中間転写ベルト21と駆動ローラー20aとのスリップが抑制される。これにより、駆動ローラー20aは効率良く中間転写ベルト21を周回走行させることができる。なお、弾性層24は、従動ローラー20bまたは/およびテンションローラー20cに形成されていてもよい。
【0026】
中間転写ベルト21は、無端状(環状)に形成され、3つのローラー20a,20b,20cに掛け回されている。中間転写ベルト21は、テンションローラー20cによって所定のテンションを付与されている。中間転写ベルト21は、ベルトモーターMを稼働させて駆動ローラー20aを回転駆動させることで、
図2の矢印方向に周回(走行)する。
【0027】
中間転写ベルト21は、内側から順に、基材層21aと、中間層21bと、コート層21cと、を積層して構成されている。基材層21aは、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリイミド樹脂等で構成されている。中間層21bは、例えば、ヒドリンゴム、クロロプレンゴムまたはポリウレタンゴム等で構成されている。コート層21cは、例えば、アクリル、シリコンまたはフッ素系樹脂等で構成されている。
【0028】
ベルトクリーニング装置22は、中間転写ベルト21を挟んで従動ローラー20bに対向する位置に設けられている。ベルトクリーニング装置22は、中間転写ベルト21の表面に付着した残留トナーを除去するための複数のブラシ22a,22bを備えている。
【0029】
図1に示すように、画像形成部12は、4つのトナーコンテナ25と、4つのドラムユニット26と、光走査装置27と、を含んで構成されている。4つのトナーコンテナ25は、排紙トレイ4の下側で前後方向に並設されている。作像ユニットとしての4つのドラムユニット26は、中間転写ベルト21の下側で前後方向に並設されている。光走査装置27は、各ドラムユニット26の下側に配設されている。
【0030】
4つのトナーコンテナ25は、4色(イエロー(Y),シアン(C),マゼンタ(M),ブラック(K))のトナー(現像剤)を収容している。4つのドラムユニット26は、中間転写ベルト21の走行方向上流側(従動ローラー20b側)から順にイエロー(Y),シアン(C),マゼンタ(M),ブラック(K)に対応している。4つのドラムユニット26は、中間転写ベルト21に転写させるトナー像を担持する感光体ドラム30を含んで構成されている。詳細は後述するが、4つのドラムユニット26は、中間転写ベルト21に対して4つの感光体ドラム30に担持された4色のトナー像を重ね合せるように転写させる。なお、4つのドラムユニット26は略同一構造であるため、以下、1つのドラムユニット26について説明する。
【0031】
ドラムユニット26は、感光体ドラム30と、帯電装置31と、現像装置32と、一次転写ローラー33と、ドラムクリーニング装置34と、を含んで構成されている。像担持体としての感光体ドラム30は、中間転写ベルト21の下側に接触している。帯電装置31、現像装置32、一次転写ローラー33およびドラムクリーニング装置34は、感光体ドラム30の周囲に転写プロセス順に配置されている。一次転写ローラー33は、中間転写ベルト21を挟んで感光体ドラム30の上側に配置されている。中間転写ベルト21の右側には、二次転写ローラー35(転写ローラー)が配置されている。二次転写ローラー35は、中間転写ベルト21を挟んで駆動ローラー20aとの間に二次転写ニップ部35a(ニップ部)を形成している(
図2も参照)。
【0032】
光走査装置27は、略直方体形状のハウジング36の内部に2つの走査部37を有している。2つの走査部37は、ハウジング36内で前後方向に並設されている。なお、2つの走査部37は略同一構造であるため、以下、1つの走査部37について説明する。
【0033】
走査部37は、偏向器37aと、一対の光学素子群37bと、を有している。なお、合計4つの光学素子群37bは、4つの感光体ドラム30に対応して設けられている。偏向器37aは、一対の光学素子群37bの間で、ハウジング36の底面に配置されている。図示は省略するが、偏向器37aは、ポリゴンモーターに回転駆動されるポリゴンミラーによって光源から射出されたレーザー光を一対の光学素子群37bに振り分ける。振り分けられたレーザー光(走査光)は、各光学素子群37bに導かれて感光体ドラム30の表面に結像する(
図1の破線矢印参照)。
【0034】
ここで、カラープリンター1の動作について説明する。制御装置14は、入力された画像データに基づいて、以下のように画像形成処理を実行する。
【0035】
各帯電装置31は、各感光体ドラム30の表面を帯電させる。光走査装置27は、4つの感光体ドラム30の表面に対し、画像データに対応した走査光(
図1の破線矢印参照)を照射する。各現像装置32は、各感光体ドラム30の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像する。一次転写バイアスを印加された各一次転写ローラー33は、各感光体ドラム30の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト21に転写させる。中間転写ベルト21は、周回走行しながら4つの感光体ドラム30に担持された4色のトナー像の一次転写を受ける。つまり、4つのトナー像は、走行する中間転写ベルト21に順番に重なるように転写される。これにより、中間転写ベルト21の表面にはフルカラーのトナー像(重ね合わされたトナー像)が形成される。
【0036】
一方、給紙カセット3から供給されたシートSは、搬送路15を搬送されて二次転写ニップ部35aまで到達する。二次転写バイアスが印加された二次転写ローラー35は、二次転写ニップ部35aに挟持されつつ搬送されるシートSに中間転写ベルト21上で重ね合わされたトナー像を二次転写させる。これにより、シートS上に画像が形成される。定着装置13は、シートSにトナー像(画像)を定着させる。定着処理後のシートSは、排紙トレイ4に排出される。各ドラムクリーニング装置34は、転写後に各感光体ドラム30の表面に残ったトナーを除去する。
【0037】
ところで、画像形成処理を実行するとドラムユニット26や光走査装置27等から大量の熱が発生する。このため、カラープリンター1には、装置本体2内の温度を下げるための冷却機構40が備えられている。
【0038】
図1に示すように、冷却機構40は、吸気ファン41と、冷却ファン42と、を有している。吸気装置としての吸気ファン41は、装置本体2の内部に外気を取り込むために設けられている。冷却装置としての冷却ファン42は、ドラムユニット26および光走査装置27を冷却するために設けられている。
【0039】
吸気ファン41は、装置本体2の左面下部に開口する吸気口(図示せず)に設けられている。吸気ファン41は、複数枚の羽根をモーター(図示せず)で回転させて装置本体2の外部から内部に向かう気流を発生させる。吸気ファン41は、外気を装置本体2内に取り込んで定圧電源16やこれを制御する定圧基板(図示せず)を冷却する。なお、装置本体2内に取り込まれた空気は、排気口(図示せず)から装置本体2の外部に排出される。
【0040】
吸気ファン41には、例えば、サーミスタ等の第1温度センサー43が設けられている。第1温度センサー43は、装置本体2の外部の温度を検知するために設けられている。第1温度センサー43は、制御装置14に電気的に接続されている(
図4参照)。吸気ファン41に第1温度センサー43を設けることで、制御装置14は、装置本体2内に取り込まれる外気の温度を正確に検知することができる。
【0041】
冷却ファン42は、装置本体2の右面下部に開口する供給口(図示せず)に設けられている。冷却ファン42は、複数枚の羽根をモーター(図示せず)で回転させて装置本体2の外部から内部に向かう気流を発生させる。冷却ファン42は、外気を装置本体2内に取り込んでドラムユニット26(主に現像装置32)や光走査装置27等を冷却する。なお、装置本体2内には、供給口から取り込まれた外気を光走査装置27等まで導くための冷却ダクト(図示せず)が設けられている。なお、装置本体2内に取り込まれた空気は、排出口(図示せず)から装置本体2の外部に排出される。
【0042】
カラープリンター1を起動(電源ON)している状態では、吸気ファン41は、常に作動(回転)して、定圧電源16等を冷却している。これに対し、冷却ファン42は、電源ON状態で常に作動するとは限らない。冷却ファン42は、各ドラムユニット26の駆動時間若しくは光走査装置27の温度情報または現像装置32の温度情報に応じて作動するように構成されている。なお、冷却ファン42は、画像を形成(印字)されたシートSの枚数に応じて作動するように構成してもよい。
【0043】
冷却ファン42の作動開始のトリガーとなる光走査装置27の温度は、例えば、サーミスタ等の第2温度センサー44によって検知される。第2温度センサー44は、光走査装置27に内蔵される電力制御基板37cに実装されている。電力制御基板37cは、各偏向器37aに対する電力供給等を制御するために設けられている。第2温度センサー44(電力制御基板37c)は、制御装置14に電気的に接続されている(
図4参照)。光走査装置27に第2温度センサー44を内設することで、制御装置14は、光走査装置27内の温度を正確に検知することができる。また、現像装置32の温度は、例えば、サーミスタ等の第3温度センサー45によって検知される。第3温度センサー45は、制御装置14に電気的に接続されている(
図4参照)。なお、第3温度センサー45を省略し、第2温度センサー44が現像装置32の温度を検知するように構成されてもよい。
【0044】
ところで、タンデム方式のカラープリンター1では、中間転写ベルト21上において複数のトナー像の重ね合わせ位置がずれることがある(色ずれの発生)。色ずれの主な原因は、熱による光走査装置27の変形と駆動ローラー20aの外径変化(主に弾性層24の層厚tの変化(
図2参照))とに基づくことが多い。
【0045】
図3を参照して、画像形成処理を連続実行(連続印字)させた場合において、駆動ローラー20aおよび光走査装置27の温度とトナー像(シアン)の色ずれ量との関係について説明する。
図3は画像形成処理時における駆動ローラー20aおよび光走査装置27の温度とトナー像(シアン)の色ずれ量との測定結果を示すグラフである。
【0046】
当該測定に用いたカラープリンター1の仕様は、例えば、以下のように設定されている。
中間転写ベルト21
基材層21a:ポリフッ化ビニリデン
中間層21b:ポリウレタンゴム等
コート層21c:フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン製コート)
感光体ドラム30 :正帯電有機感光体
二次転写ローラー35:イオン導電性、ASKER−C硬度40°
ステーション間ピッチ:83mm
駆動ローラー20a(外径27mm)
素管23 :アルミニウム製三ツ矢管
弾性層24:厚さt=1.1mm、ASKER−A硬度=80°
なお、ステーション間ピッチとは、隣り合う感光体ドラム30がそれぞれ中間転写ベルト21に接触する点の間の距離を指す。
【0047】
図3に実線で示すように、画像形成処理を開始すると時間の経過に従って、駆動ローラー20aおよび光走査装置27の温度が上昇すると共に色ずれ量も大きくなる。冷却ファン42が作動すると、主要な冷却対象である光走査装置27等は、冷却ファン42によって短時間で冷却されるが、駆動ローラー20aは、冷却ファン42の影響を受け難く短時間で冷却することが難しい。すると、光走査装置27の温度変化を要因とする色ずれと、駆動ローラー20aの外径変化を要因とする色ずれとのバランスが崩れるため、冷却ファン42の作動前よりも色ずれが悪化することがあった。
【0048】
そこで、本実施形態に係るカラープリンター1の制御装置14は、冷却ファン42の作動命令に付随する色ずれ補正制御を実行する。まず、色ずれ補正制御の説明に先立ち、
図4を参照して、制御装置14について説明する。
図4は制御装置14を示すブロック図である。
【0049】
制御装置14は、CPU50と、メモリー51と、バス52と、インターフェース53と、を含んで構成されている。CPU50(Central Processing Unit)は、様々な数値計算やカラープリンター1の各構成要素の制御等を行う。メモリー51は、画像形成処理に必要なデータやプログラム等を記憶する。バス52は、CPU50、メモリー51およびインターフェース53を電気的に接続させる。インターフェース53は、CPU50等とカラープリンター1の各構成とを電気的に接続させる。
【0050】
CPU50は、メモリー51に記憶されたデータやプロクラム等に従って演算処理を実行し、カラープリンター1の各構成要素を制御して画像形成処理を実現する。CPU50は、各ドラムユニット26の連続駆動時間(または累積駆動時間)やシートSの連続印字枚数(または累積印字枚数)等をメモリー51に一時記憶させる。メモリー51には、画像形成処理や色ずれ補正制御の実行に必要なデータやプログラム等が記憶されている。インターフェース53には、ベルトモーターM、定圧電源16、吸気ファン41、冷却ファン42、第1温度センサー43および第2温度センサー44等が電気的に接続されている。なお、図示は省略するが、これらの他にも、カラープリンター1の各構成要素がインターフェース53に電気的に接続されている。これにより、CPU50は、インターフェース53に接続された各構成要素と各種制御信号の送受信を行うことができる。
【0051】
続いて、
図5を参照して、制御装置14が実行する色ずれ補正制御について説明する。
図5は色ずれ補正制御を示すフローチャートである。
【0052】
制御装置14(CPU50)は、所定の条件を満たした場合に、冷却ファン42の作動命令に付随する色ずれ補正制御を実行する。ここで、所定の条件とは、光走査装置27の温度が設定値以上になった場合で、且つ、各ドラムユニット26の連続(または累積)駆動時間が設定値以上になった場合、または、シートSの連続(または累積)印字枚数が設定枚数以上になった場合である。
【0053】
詳細に説明すると、まず、制御装置14は、第1温度センサー43と第2温度センサー44との検知結果を受信する(ステップS1)。制御装置14は、第2温度センサー44の検知結果と、メモリー51に記憶された各ドラムユニット26の駆動時間(またはシートSの印字枚数)とを参照し、上記所定の条件を満たしたか否かを判断する(ステップS2)。所定の条件を満たす場合(ステップS2で「YES」)、制御装置14は、色ずれ補正制御を開始する。なお、所定の条件を満たさない場合(ステップS2で「NO」)、制御装置14は、再び各温度センサー43,44の検知結果の受信を行う(ステップS1)。
【0054】
制御装置14は、第1温度センサー43の検知結果と第2温度センサー44の検知結果との差分dを算出し、当該差分dと第1設定温度D1(例えば、10℃)とを比較する(ステップS3)。
【0055】
ここで、メモリー51には、第1設定温度D1および後述する第2設定温度D2等のデータが予め記憶されている。また、メモリー51には、光走査装置27の温度変化量と、色ずれ量と、を関連付けるデータテーブルT1が予め記憶されている。このデータテーブルT1は、ドラムユニット26毎に個別に作成されている。また、メモリー51には、第1設定温度D1以上となる差分dと、駆動ローラー20aの外径変化量(弾性層24の層厚tの変化量)と、を関連付けるデータテーブルT2が予め記憶されている。さらに、メモリー51には、第1設定温度D1未満となる差分dと、駆動ローラー20aの外径変化量と、を関連付けるデータテーブルT3が予め記憶されている。なお、データテーブルT1〜T3は、経験的・実験的に求められる。
【0056】
ステップS3で算出した差分dが第1設定温度D1以上である場合(ステップS3で「YES」)、制御装置14は、データテーブルT1を参照して、光走査装置27の温度変化を要因とする色ずれ量を算出する(ステップS4)。制御装置14は、データテーブルT2を参照して、駆動ローラー20aの外径変化量を算出する(ステップS5)。続いて、制御装置14は、ベルトモーターMを制御して、ステップ4で算出した色ずれ量を相殺するように駆動ローラー20aの線速(周速)を変更する(ステップS6)。最後に、制御装置14は、冷却ファン42の作動命令を実行(作動開始を指示)する(ステップS7)。以上によって、色ずれ補正制御が完了する。
【0057】
一方、ステップS3で算出した差分dが第1設定温度D1未満である場合、(ステップS3で「NO」)、制御装置14は、当該差分dと第2設定温度D2(例えば、5℃)とを比較する(ステップS10)。当該差分dが第2設定温度D2以上である場合(ステップS10で「YES」)、制御装置14は、データテーブルT1を参照して、光走査装置27の温度変化を要因とする色ずれ量を算出する(ステップS11)。制御装置14は、データテーブルT3を参照して、駆動ローラー20aの外径変化量を算出する(ステップS12)。続いて、制御装置14は、ベルトモーターMを制御して、ステップ11で算出した色ずれ量を相殺するように駆動ローラー20aの線速を変更する(ステップS13)。最後に、制御装置14は、冷却ファン42の作動命令を実行し(ステップS7)、色ずれ補正制御を完了させる。
【0058】
ところで、冷却ファン42が作動しても色ずれが悪化しない場合もある。例えば、
図3に二点鎖線で示すように、所定の条件を満たす直前に画像形成処理を停止(印字停止)した場合、駆動ローラー20aおよび光走査装置27の温度上昇が止まる(鈍くなる)。光走査装置27は、熱源となる走査部37を含むため、駆動ローラー20aよりも冷め難い。したがって、冷却ファン42が作動していない状態では、駆動ローラー20aの温度は、光走査装置27の温度よりも早く低下する。ここで、再び画像形成処理を開始(印字再開)すると、駆動ローラー20aおよび光走査装置27の温度が上昇を始め、所定の条件を満たすと冷却ファン42が作動する。このとき、光走査装置27の温度変化を要因とする色ずれは、駆動ローラー20aの外径変化を要因とする色ずれとバランスのとれた状態(冷却ファン42の作動前と略同様の状態)であるため、色ずれが悪化することがない。
【0059】
そこで、制御装置14が実行する色ずれ補正制御では、当該差分dが第2設定温度D2未満である場合、色ずれの悪化を無視できるものとしている。すなわち、ステップS10で算出した差分dが第2設定温度D2未満である場合、(ステップS10で「NO」)、制御装置14は、色ずれ補正制御を行うことなく冷却ファン42の作動開始を指示する(ステップS7)。
【0060】
以上説明したように、制御装置14は、冷却ファン42の作動命令に伴い、第1温度センサー43の検知結果と第2温度センサー44の検知結果との差分dに基づいて駆動ローラー20aの外径変化量を予測して駆動ローラー20aの回転速度を制御する。制御装置14は、光走査装置27の温度変化に起因する色ずれと、駆動ローラー20aの外径変化に起因する色ずれとのバランスが崩れた状態を、第1温度センサー43と第2温度センサー44との検知結果の差分dとして認識する。制御装置14は、当該差分dから予測された駆動ローラー20aの外径変化量に基づいて、崩れた色ずれのバランスを戻すように駆動ローラー20aの線速を変更する。すなわち、光走査装置27の温度変化に起因する色ずれは、駆動ローラー20aの外径変化に起因する色ずれに相殺される。これにより、画像形成処理(動作)を中断することなく、装置本体2内の温度変化に基づく色ずれを抑制することができる。また、色ずれを検知する部材を追加することなく、簡単な構造で色ずれ等の画像の乱れを抑制することができる。さらに、制御装置14は、当該差分dから駆動ローラー20aの外径変化量を予測することができる。これにより、駆動ローラー20aの温度や外径を直接検知する部材を省略することができる。
【0061】
また、本実施形態に係るカラープリンター1によれば、画像形成処理の負荷に応じて、冷却ファン42による光走査装置17等の冷却と駆動ローラー20aの線速制御とが実行される。これにより、所定の条件を満たした場合に発生する色ずれを抑制することができる。
【0062】
なお、以上説明した色ずれ補正制御の順序は一例であって、本発明はこれに限定されない。例えば、ステップ4(またはステップ11)とステップ5(またはステップ12)との順番を入れ替えてもよい。また、差分dと比較する各設定温度D1,D2は、10℃や5℃に限らず、経験的・実験的に自由に設定してもよい。
【0063】
なお、本実施形態に係るカラープリンター1は、装置本体2内に外気を取り込む吸気ファン41と冷却ファン42とを備えていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各ファン41,42に代えて、装置本体2内から空気を排出する排気ファンを設けてもよい。この場合、第1温度センサー43は、外気の温度を検知可能な場所に配置する。
【0064】
なお、本実施形態の説明では、一例として、本発明をカラープリンター1に適用した場合を示したが、これに限らず、例えば、モノクロプリンター、複写機、ファクシミリまたは複合機等に本発明を適用してもよい。
【0065】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る画像形成装置における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えや組み合わせが可能であって、上記実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。