(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記報知部は、前記クーリングの必要性を報知したにも拘わらず、前記クーリング時間が経過する前に前記エンジンを停止する操作を検出した場合、警告する請求項1〜8のいずれかに記載の建設機械。
前記報知部は、前記クーリングの必要性を報知したにも拘わらず、前記クーリング時間が経過する前に前記エンジンを停止する操作を検出した場合、次回の前記エンジンの始動時に、前回、前記報知が無視されたことを報知する請求項9に記載の建設機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1は、エンジン停止後に尿素水を噴射するので、尿素水中の水分が蒸発して尿素が析出し、析出した尿素が結晶化して排気管等に付着し、排気管のつまりが発生するという問題がある。
【0007】
特許文献2は、第1の所定値として「150」が採用されており、噴射装置が何回も高温環境下に曝されるので、噴射装置の保護を十分に行うことができないという問題がある。また、特許文献1は、クーリング時間を算出することが行われていないので、オペレータはエンジンをOFFをする際、どの程度の時間、アイドル状態にすればよいかが分からない。特許文献2は、噴射装置が十分にクーリングされずにエンジンがOFFされ、噴射装置の保護を十分に行うことができないという問題もある。
【0008】
本発明は、還元剤を噴射する噴射部の故障のリスクを低減できる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による建設機械は、排気浄化機能を備える建設機械であって、
エンジンと、
前記エンジンから排出された排気ガス中の窒素酸化物を除去するための還元剤を噴射する噴射部と、
前記噴射部に接続され、前記エンジンから排出された排気ガスを、前記噴射された還元剤を用いて浄化する後処理装置と、
前記後処理装置の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された温度に基づいて、前記エンジンから排出される排気ガスの温度が一定値以下になるクーリング時間を演算するクーリング時間演算部と、
前記クーリング時間演算部により演算されたクーリング時間の間、前記エンジンの停止前に
、クーリングの必要性をオペレータに報知する報知部と備え、
前記クーリング時間演算部は、前記温度検出部で検出された温度が所定の温度よりも高ければ、前記クーリング時間を所定の加算値ずつ加算させ、前記温度検出部で検出された温度が前記所定の温度よりも低ければ、前記クーリング時間を所定の減算値ずつ減算させる処理を前記エンジンの稼働中、周期的に繰り返
し、
前記クーリングは、前記エンジンの稼働中に循環される冷却水によって前記噴射器を冷却するものである。
【0010】
この構成によれば、エンジン停止前にクーリングの必要性が報知されるので、オペレータにエンジンの停止前に噴射部のクーリングを実施させることができる。そのため、噴射部が高温状態であるにも拘わらずエンジンが停止されることを防止し、噴射部が故障するリスクを低減できる。
【0011】
また、クーリング時間の間、クーリングの必要性が報知されるので、クーリングの終了タイミングをオペレータに報知することができる。
【0013】
建設機械の負荷が高いときは排気ガスの温度が高くなり、負荷が低いときは排気ガスの温度が低くなるというように、排気ガスの温度は建設機械の状態に応じて変化する。本態様では、排気ガスの温度が所定の温度よりも高ければクーリング時間が所定の加算値ずつ加算されていくので、クーリング時間を長くすることができる。一方、排気ガスの温度が所定の温度よりも低くければ、クーリング時間が所定の減算値ずつ減算されていくので、クーリング時間を短くすることができる。したがって、オペレータは、排気ガスの温度が所定の温度よりも低い温度となるように、エンジンを駆動させることで、クーリング時間を減少させ、クーリングを終了させることができる。
【0014】
上記態様において、オペレータが搭乗するキャビンを更に備え、
前記報知部は、前記クーリングの必要性を報知する前記キャビン内に設けられたモニタを備えていてもよい。
【0015】
この構成によれば、オペレータはエンジン停止前にモニタを通じてクーリングの要否を確認できる。
【0016】
上記態様において、
前記報知部は、前記クーリングの必要性を警報音で報知する前記キャビン内に設けられブザーを更に備えていてもよい。
【0017】
モニタには種々の情報が表示されるので、クーリングの必要性を報知する旨の情報が他の情報により隠れることがある。また、建設機械では、オペレータはモニタを注視することなく、吊り荷を注視しながら作業を行うことが多い。本態様では、クーリングの必要性が警報音で報知されるので、オペレータがモニタでクーリングの必要性を確認できない場合、或いはオペレータがモニタを確認しない場合であっても、クーリング時間が経過する前にオペレータがエンジンを停止することを防止できる。
【0018】
上記態様において、前記建設機械の状態を検出する状態検出部と、
前記状態検出部により検出された状態が所定の条件を満たす場合、前記エンジンの停止を予測する予測部とを更に備え、
前記報知部は、前記予測部により前記エンジンの停止が予測された場合、前記クーリングの必要性を報知してもよい。
【0019】
この構成によれば、予測部によりエンジンの停止が予測された場合、クーリングの必要性が報知されるので、不必要にクーリングの必要性がオペレータに報知されることを防止できる。
【0020】
上記態様において、前記エンジンの回転数を調整するために操作されるアクセル操作部を更に備え、
前記状態検出部は、前記アクセル操作部の操作量を検出するアクセル操作量検出部を備え、
前記予測部は、前記アクセル操作量検出部により検出された操作量が前記アクセル操作部の操作がされていないことを示す場合、前記エンジンの停止を予測してもよい。
【0021】
この構成によれば、アクセル操作量検出部によりアクセル操作が無いことが検出された場合、エンジンの停止が予測され、クーリングの必要性が報知される。よって、建設機械の作業中にクーリングの必要性が報知され、オペレータの集中力を低下させることを防止できる。
【0022】
上記態様において、アクチュエータと、
前記アクチュエータを動作させるために操作されるレバー操作部を更に備え、
前記状態検出部は、前記レバー操作部の操作量を検出するレバー操作量検出部を更に備え、
前記予測部は、前記レバー操作量検出部により検出された操作量が前記レバー操作部の操作がされていないことを示す場合、前記エンジンの停止を予測してもよい。
【0023】
この構成によれば、アクセル操作量検出部によりアクセル操作が無いことが検出され、且つレバー操作量検出部によりレバー操作が無いことが検出された場合、エンジンの停止が予測され、クーリングの必要性が報知される。よって、建設機械の作業中にクーリングの必要性が報知されることによる、オペレータの集中力の低下を防止できる。
【0024】
上記態様において、前記モニタは、前記クーリング時間を報知してもよい。
【0025】
この構成によれば、クーリング時間を報知することで、オペレータはあと何分クーリングすればよいのかを認識でき、待機中のオペレータのストレスを低減できる。
【0026】
上記態様において、アクチュエータと、
前記エンジンの回転数を調整するために操作されるアクセル操作部と、
前記アクチュエータを動作させるために操作されるレバー操作部と
前記アクセル操作部の操作量を検出するアクセル操作量検出部と、
前記レバー操作部の操作量を検出するレバー操作量検出部とを更に備え、
前記クーリング時間演算部は、前記レバー操作量検出部により検出された操作量が前記レバー操作部の操作がされていないことを示し、且つ、前記アクセル操作量検出部により検出された操作量に応じた前記エンジンの回転数が所定値より大きい場合、前記所定値より大きくない場合に比べて、前記減算値を大きくしてもよい。
【0027】
オペレータによりレバー操作部が操作されておらず、且つ、エンジンの回転数が所定値より大きい場合(例えば、ハイアイドル状態の場合)、噴射部を通過する排ガス量が増大し、噴射部の冷却効果が高まる。この構成によれば、オペレータによりレバー操作部が操作されておらず、且つ、エンジンの回転数が所定値より大きければ、回転数が所定値より大きくない場合に比べてクーリング時間の減算値が大きくされる。そのため、オペレータは、例えばハイアイドル状態にすることで、クーリング時間を短縮できる。
【0028】
上記態様において、前記報知部は、前記クーリングの必要性を報知したにも拘わらず、前記クーリング時間が経過する前に前記エンジンを停止する操作を検出した場合、警告してもよい。
【0029】
この構成によれば、クーリングの必要性の報知を無視してオペレータがエンジンを停止した場合、警告されるので、オペレータにクーリングを実施するように注意を促すことができる。
【0030】
上記態様において、前記報知部は、前記クーリングの必要性を報知したにも拘わらず、前記クーリング時間が経過する前に前記エンジンを停止する操作を検出した場合、次回の前記エンジンの始動時に、前回、前記報知が無視されたことを報知してもよい。
【0031】
この構成によれば、クーリングの必要性の報知を無視してオペレータがエンジンを停止した場合、次回のエンジンの始動時に、そのことがオペレータに報知されるので、オペレータに今後のクーリングの実施を促すことができる。
【0032】
上記態様において、アクチュエータと、
前記エンジンの回転数を調整するために操作されるアクセル操作部と、
前記アクチュエータを動作させるために操作されるレバー操作部と、
前記アクセル操作部の操作量を検出するアクセル操作量検出部と、
前記レバー操作部の操作量を検出するレバー操作量検出部とを更に備え、
前記クーリング時間演算部は、前記アクセル操作量検知部により検出された操作量が前記アクセル操作部が操作されていないことを示し、且つ前記レバー操作量検出部により検出された操作量が前記レバー操作部が操作されていないことを示す場合、前記クーリング時間を減少させてもよい。
【0033】
建設機械が作業されていないと判断できる状態では、温度が低い排気ガスが排出され、噴射部のクーリングが促進される。この構成によれば、アクセル操作が無く、且つレバー操作も無い状態、すなわち、建設機械が作業されていないと判断できる状態では、クーリング時間が減少される。そのため、オペレータはアクセル操作及びレバー操作をしないことで噴射部をクーリングさせることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、噴射部が高温状態であるにも拘わらずエンジンが停止されることを防止し、噴射部が故障するリスクを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(本発明に至る経緯)
クレーン等の建設機械では、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化するための後処理装置が設けられている。後処理装置には、尿素水を噴射する噴射部が接続されており、後処理装置は噴射部から噴射された尿素水を用いて排気ガス中に含まれるNOxを還元する。
【0037】
噴射部は、後処理装置に接続されているため、後処理装置や周辺雰囲気から高温の熱を受けることになり、エンジン停止後も一定期間、高温の状態が続く。エンジン停止に至るまでに、排気温度が高い時間が長いほど高温状態はより長くなる。
【0038】
また、ディーゼルエンジンの駆動中は、冷却配管を循環する冷却水によって噴射部は冷却されているが、ディーゼルエンジンが停止されると、冷却水を循環させる冷却ポンプの駆動も停止されるので、冷却水の冷却効果も無くなってしまう。
【0039】
したがって、ディーゼルエンジンが停止されると、噴射部の温度は急激に上昇する。その結果、噴射部が故障するという問題が発生する。また、噴射部が高温状態になると、尿素水の水分が蒸発して尿素の結晶が析出し、この結晶が尿素水配管や尿素水の噴射口に固着し、噴射部が故障するという問題も発生する。更に、尿素の結晶が排気ガスを排出する排気管に固着し、排気管のつまりを引き起こすという問題も発生する。
【0040】
そこで、エンジンの停止後も、一定期間、噴射部を強制的に冷却する冷却システムを別途に設けることで、冷却部の故障を防止することが考えられる。冷却システムとしては、(1)電動ポンプや油圧ポンプを用いて強制的に冷却水を循環させるシステムや、(2)冷却風を噴射部に噴射するシステムや、(3)尿素水を強制的に循環させるシステムなどが挙げられる。しかし、これらのシステムを採用した場合、次のような問題点が生じる。
【0041】
(1)強制的に冷却水を循環させるシステム
このシステムは、エンジンの冷却系統とは別に冷却水を循環させる冷却系統を構築することで実現される。しかし、この冷却系統においては、冷却水を循環させるために、電動ポンプや油圧ポンプといったポンプを追加する必要がある。そのため、ポンプを追加した分、装置全体の故障のリスクが増えるという問題が発生する。
【0042】
また、フェールセーフの実現のために、ポンプが正常に駆動しているか否かをセンサを用いて検出する必要があるが、この場合、センサの信頼性を検証する必要がある。
【0043】
また、ポンプとして電動ポンプを採用した場合、電動ポンプを駆動させるためにはバッテリーからの電力供給が必要となる。しかし、エンジン停止時に長時間、電動ポンプを運転させるとバッテリー上がりの危険性が高くなるという問題がある。また、バッテリー上がりを検出するためには、バッテリーの電流量を検出するための電流センサを別途設ける必要がある。
【0044】
一方、ポンプとして油圧ポンプを採用した場合、エンジンの動力が得られないので、アキュームレータ等の蓄圧装置を設ける必要がある。したがって、機器数が増え、故障のリスク及びコスト増加を招来してしまう。
【0045】
(2)強制的に冷却風を噴射部に流すシステム
このシステムでは、冷却風を噴射部に流すファンやファンを駆動させるための電動モータ等が必要となる。したがって、(1)のシステムを採用した場合と同様、バッテリー上がりの問題や、装置を追加した代償としての故障のリスクが増大するという問題がある。
【0046】
(3)強制的に尿素水を循環するシステム
尿素水はエンジンの駆動に頼らない動力源により圧送されている場合が多い。そのため、エンジンの停止後でも噴射部に強制的に尿素水を循環させることで、尿素水による冷却効果を期待することができる。
【0047】
しかし、高温環境下では、尿素水中の水分が蒸発し、尿素の結晶が析出して固化する可能性が高いので、尿素水を貯留するタンクから尿素水を噴射する噴射口までの尿素水配管及び噴射口を詰まらせてしまう可能性がある。
【0048】
以上のことから、エンジン停止後に、強制的に噴射部を冷却するシステムを採用することは、故障リスク、及びコスト等の観点から妥当ではない。
【0049】
このような噴射部の故障を防止するためには、噴射部が故障しない温度にまで低下していることを確認した後でオペレータにエンジンを停止させることが望ましい。
【0050】
そのためには、エンジンの停止時に排気ガスの温度が噴射部を故障させる温度まで上昇しているのであれば、噴射部を冷却させるためのクーリング(例えば、アイドル運転)をオペレータに実行させることが有効となる。
【0051】
そこで、本発明は、以下の技術を提供する。以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0052】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態による建設機械をクローラクレーンX1に適用した場合のクローラクレーンX1の外観図である。以下では、クローラクレーンX1を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、ホイールクレーン、ショベルカー等の排気浄化機能を備える建設機械に適用可能である。クローラクレーンX1は、
図1に示すように、上部旋回体2と、下部走行体3とを備えている。
【0053】
上部旋回体2は、旋回フレーム4と、その旋回フレーム4上に搭載された作業装置6とを有する。作業装置6は、吊荷の吊り作業(クレーン作業)等を行うためのものである。具体的には、作業装置6は、ブーム8と、吊りロープ10と、フック装置12と、吊用ウィンチ14と、ガントリ16と、ガイライン18と、上部スプレッダ20と、下部スプレッダ22と、起伏ロープ24と、起伏用ウィンチ26とを有する。
【0054】
ブーム8は、旋回フレーム4の前部に起伏自在に取り付けられており、そのブーム8の先端から吊りロープ10を介して吊荷を吊るためのフック装置12が吊り下げられている。吊用ウィンチ14は、旋回フレーム4上に搭載されており、吊りロープ10の巻き取り/繰り出しを行うことによりフック装置12の巻き上げ/巻き下げを行う。ガントリ16は、旋回フレーム4の後部上に立設されている。ガイライン18は、その一端がブーム8の先端部に接続されており、その他端部が上部スプレッダ20と接続されている。下部スプレッダ22は、ガントリ16の上端部に設けられており、この下部スプレッダ22と上部スプレッダ20とは互いに離間して配置されている。上部スプレッダ20と下部スプレッダ22には、起伏ロープ24が掛け回されている。起伏用ウィンチ26は、旋回フレーム4上に搭載されており、起伏ロープ24の巻き取り/繰り出しを行うことにより下部スプレッダ22に対する上部スプレッダ20の離間距離を縮小/拡大させる。この両スプレッダ20,22間の離間距離の縮小/拡大に伴って、ブーム8が起伏される。
【0055】
上部旋回体2の前方には、オペレータが搭乗するキャビン9が設けられている。キャビン9は前面及び側面にガラスが設けられ、オペレータはガラスを通じて周囲の環境を目視し、クローラクレーンX1を操作する。キャビン9には、オペレータが着座するシート、クローラクレーンX1を操作するためのレバー操作部、エンジンの出力を調整するためのアクセル操作部、及びクローラクレーンX1の稼働状況等の情報が表示されるモニタ等が設けられている。
【0056】
図2は、
図1に示すクローラクレーンX1の構成を示すブロック図である。クローラクレーンX1は、クローラクレーンX1の駆動源となるエンジン側装置100と、クローラクレーンX1の機械構成を制御する機械側装置200とを備える。
【0057】
エンジン側装置100は、後処理装置110、噴射部120、温度検出部130、エンジン部150、油圧ポンプ(P)153、及びエンジン制御部160を備える。
【0058】
後処理装置110は、エンジン部150のエンジン152と排気管180を介して接続されている。エンジン152から排出された排気ガスは、排気管180及び後処理装置110を通って大気中に排出される。また、後処理装置110は、噴射部120と接続されている。そして、後処理装置110は、エンジン152から排出された排気ガスを、噴射部120から噴射された還元剤を用いて浄化する。
【0059】
詳細には、後処理装置110は、エンジン152からの排気ガス中の窒素酸化物(NOx)のうち一酸化窒素(NO)を低減させて二酸化窒素(NO
2)を増加させる触媒装置と、エンジン152からの排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集し、捕集した粒子状物質を焼却するDPF装置と、噴射部120から噴射された還元剤を加水分解し、排気ガス中に含まれるNOxを窒素と水とに還元するSCR装置などを含む。これにより、後処理装置110からは、NOx及び粒子状物質が除去された排気ガスが排気される。
【0060】
後処理装置110には、還元剤を後処理装置110に噴射する噴射部120が接続されている。噴射部120は、還元剤を貯留する還元剤タンクと、還元剤タンクから還元剤をくみ上げる還元剤ポンプと、還元剤ポンプによりくみ上げられた還元剤を後処理装置110内の排気ガスに噴射する噴射弁等を備える。
【0061】
温度検出部130は、例えば、温度センサで構成され、後処理装置110に接続され、後処理装置110内の排気ガスの温度を検出する。但し、これは一例であり、温度検出部110は、後処理装置110の周辺の温度を検出してもよい。この場合、温度検出部130は、排気管180に接続され、排気管180の温度を後処理装置110の周辺の温度として検出してもよい。すなわち、本発明において、後処理装置110の温度とは、後処理装置110の内部のみならず周辺の温度が含まれる。
【0062】
後処理装置制御部140は、温度検出部130により検出された排気ガスの温度等に応じて、必要な量の還元剤が噴射されるように噴射部120を制御する。ここで、後処理装置制御部140は、例えば、噴射弁の開度を制御することで、噴射部120から噴射される還元剤の量を制御すればよい。
【0063】
エンジン部150は、エンジン(E/G)152と、エンジン152の駆動軸に接続された冷却ポンプ(WP)151とを備える。
【0064】
エンジン152は、例えばディーゼルエンジンで構成され、冷却ポンプ151及び油圧ポンプ153を駆動する。
【0065】
冷却ポンプ151は、エンジン152によって駆動されて、冷却水を冷却配管170に循環させる。油圧ポンプ153は、エンジン152によって駆動されて、作動油を吐出する。油圧ポンプ153から吐出された作動油は、コントロールバルブ260を介してアクチュエータ270に供給される。
【0066】
エンジン制御部160は、エンジン部150を制御する。エンジン制御部160は、温度検出部130により検出された温度データを取得し、後処理装置制御部140及び制御部250に出力する。また、エンジン制御部160は、制御部250からの指令にしたがってエンジン152の回転数を制御する。すなわち、エンジン制御部160は、温度検出部130、後処理装置制御部140、及び制御部250と情報を送受している。なお、油圧ポンプ153の吐出量は制御部250で制御される。
【0067】
なお、本実施の形態では、エンジン152の駆動中は冷却ポンプ151は駆動し、エンジン152が停止されると冷却ポンプ151は停止するものとする。したがって、エンジン152の駆動中は、冷却水は冷却配管170を循環しており、エンジン部150、噴射部120、及び後処理装置110は冷却される。
【0068】
冷却配管170は、エンジン部150及び噴射部120間に接続された、冷却水を循環させる循環路である。冷却配管170は、冷却水を冷却させるラジエータを備え、ラジエータにより冷却された冷却水を、噴射部120に供給し、噴射部120を冷却する。
【0069】
機械側装置200は、レバー操作部210、アクセル操作部220、レバー操作量検出部230(状態検出部の一例)、アクセル操作量検出部240(状態検出部の一例)、制御部250、コントロールバルブ260、アクチュエータ270、及び報知部280を備える。
【0070】
レバー操作部210は、例えば、レバー式の操作装置で構成され、アクチュエータ270を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。レバー操作部210としては、例えば、ブーム8を起伏させるためのブーム操作レバー、フック装置12を上下に移動させるための巻き上げレバー、及び上部旋回体2を旋回させるための旋回レバー等が採用される。
【0071】
アクセル操作部220は、例えば、アクセルダイヤルやアクセルペダルで構成され、エンジン152の回転数を調整するためのオペレータの操作を受け付ける。
【0072】
レバー操作量検出部230は、例えば、ポテンショメータで構成され、レバー操作部210の傾倒角度をレバー操作部210の操作量として検出する。ここで、レバー操作部210が、例えば中立位置を中心に前側及び後側に傾倒される操作レバーであるとすると、レバー操作量検出部230は、レバー操作部210の前側への傾倒角度と後側の傾倒角度とを操作量として検出する。
【0073】
アクセル操作量検出部240は、例えば、ポテンショメータで構成され、アクセル操作部220の操作角度をアクセル操作部220の操作量として検出する。
【0074】
コントロールバルブ260は、例えば、電磁制御弁で構成され、制御部250の制御の下、油圧ポンプ153から吐出された作動油をアクチュエータ270に供給する。
【0075】
アクチュエータ270は、例えば、コントロールバルブ260から供給される作動油によって駆動される油圧モータや、油圧シリンダで構成される。アクチュエータ270としては、例えば、ブーム8を起伏させる起伏用ウィンチ26を駆動させる油圧モータ、フック装置12を上下方向に移動させる巻き上げ吊用ウィンチ14を駆動させる油圧モータ、及び上部旋回体2を旋回させる油圧モータ等が挙げられる。
【0076】
制御部250は、機械制御部251、クーリング時間演算部252、予測部253、及び報知制御部254を備える。
【0077】
機械制御部251は、レバー操作量検出部230が検出した操作量に基づいて、コントロールバルブ260を制御し、アクチュエータ270を駆動させる。例えば、機械制御部251は、レバー操作量検出部230が検出したブーム操作レバーの操作量が中立位置を超える操作量を示す場合、ブーム操作レバーが操作されたと判定し、コントロールバルブ260から起伏用ウィンチ26に作動油を供給し、ブーム8を起伏させる。
【0078】
また、機械制御部251は、アクセル操作量検出部240により検出された操作量に応じた回転数でエンジン152を駆動するための指令をエンジン制御部160に出力する。これにより、オペレータはアクセル操作部220の操作量に応じた回転数でエンジン152を駆動させることができる。
【0079】
クーリング時間演算部252は、温度検出部130により検出された温度に基づいて、エンジン152から排出される排気ガスの温度が一定値以下になるクーリング時間を演算する。クーリング時間は、噴射部120の温度が、故障しない温度にまで低下するのに必要な時間である。
【0080】
ここで、クーリング時間演算部252は、温度検出部130で検出された温度が所定の温度よりも高ければ、クーリング時間を所定の加算値ずつ周期的に加算させる。一方、クーリング時間演算部252は、温度検出部130で検出された温度が所定の温度よりも低くければ、クーリング時間を所定の減算値ずつ周期的に減算させる。
【0081】
予測部253は、レバー操作量検出部230により検出されたレバー操作部210の操作量と、アクセル操作量検出部240によって検出されたアクセル操作部220の操作量とが所定の条件を満たす場合、エンジン152が停止される可能性が高いと予測する。ここで、所定の条件としては、アクセル操作量検出部240により検出された操作量がアクセル操作部220の操作がされていないことを示すという条件と、レバー操作量検出部230により検出された操作量がレバー操作部210の操作がされていないことを示すという条件のいずれか一方或いは両方を満たす場合が該当する。
【0082】
報知制御部254は、報知部280を用いて、クーリング時間演算部252により演算されたクーリング時間の間、エンジン152の停止前にクーリングの必要性をオペレータに報知する。ここで、報知制御部254は、例えば、予測部253がエンジン152の停止を予測した場合に、クーリングの必要性をオペレータに報知すればよい。
【0083】
報知部280は、モニタ281及びブザー282を備える。モニタ281は、キャビン9内に設けられた表示装置で構成され、クローラクレーンX1の状態をオペレータに報知するための画像を表示する。特に、本実施の形態では、モニタ281は、報知制御部254の制御の下、警報ランプの画像を表示する。この場合、報知制御部254は、クーリング時間の間、警報ランプの画像を点灯状態にすればよい。
【0084】
なお、ここでは、報知制御部254は、モニタ281に表示された警報ランプを点灯状態にさせるとして説明したが、これは一例であり、キャビン9内に設けられた物理的な警報ランプを点灯状態にさせてもよい。
【0085】
また、報知制御部254は、モニタ281にクーリング時間自体を表示してもよい。この場合、報知制御部254は、クーリング時間を数値表示する態様を採用してもよいし、砂時計のアイコンを用いてクーリング時間を報知する態様を採用してもよい。
【0086】
ブザー282は、警報音を鳴らすためのブザーで構成されている。報知制御部254は、例えば、クーリング時間の開始時、ブザー282から警報音を出力させ、クーリング時間の終了時にブザー282から警報音を出力させる。
【0087】
図3〜
図5は、本発明の実施の形態1におけるクローラクレーンX1の処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図3〜
図5のフローチャートは、イグニションキーがONされたときに開始され、エンジン152の駆動中、
図4に示すS401から
図5に示すS508までの処理が周期的に繰り返される。本フローチャートでは、この処理が繰り返される周期として1秒を採用するが、これは一例である。
【0088】
まず、報知制御部254は、図略のROMに記憶された前回のエンジン152の停止時におけるクーリング時間CTが、0より大きいか否かを判定する(S301)。クーリング時間が0より大きければ(S301でYES)、報知制御部254は、前回、オペレータがクーリングの報知を無視してエンジンを停止したと判定し、そのことを報知部280に報知する(S302)。ここで、報知制御部254は、例えば、「前回、クーリングせずにエンジンを停止させました。次回から気をつけて下さい。」といった文言をモニタ281に表示させる、或いは、その文言を示す音声をスピーカー(図略)から出力すればよい。
【0089】
S303において、クーリング時間演算部252は、エンジン152が作動中であれば(S303でYES)、温度検出部130が検出した温度から排気ガスの温度である排気温度ETを算出する。ここでは、クーリング時間演算部252は、現在から過去一定期間に温度検出部130が検出した複数の温度情報を平均することで排気温度ETを算出すればよい。これにより、温度検出部130の一時的な温度の誤検出により、過大又は過少なクーリング時間CTの算出が抑制される。
【0090】
一方、エンジン152が作動中でなければ(S303でNO)、処理はS301に戻る。また、クーリング時間演算部252は、エンジン152の回転数が所定の値以上であれば、エンジン152は作動中と判断すればよい。
【0091】
S305において、排気温度ETが250度より大きければ(S305でYES)、クーリング時間演算部252は、ROMに格納されたクーリング時間CTを現在のクーリング時間CTに設定する(S306)。これは、クーリングが必要であるにも拘わらず、クーリングの報知を無視してエンジン152がOFFされた後、直ぐにエンジン152がONされたような場合において、クーリング時間CTにオフセットを付与し、なるべくクーリングの必要性をオペレータに報知できるようにするためである。
【0092】
一方、排気温度ETが250度より大きくなければ(S305でNO)、クーリング時間演算部252は、クーリング時間を「0」に設定する(S307)。
【0093】
図4を参照し、排気温度ETが250度より大きくない場合(S401でNO)、レバー操作部210が操作されておらず(S415でNO)、且つ、エンジン152の回転数が1500min
−1より小さくなければ(S416でNO)、クーリング時間演算部252は、クーリング時間CTを5秒減算する(S418)。ここで、1500min
−1は、アクセル操作部220が操作されていないアイドル状態(ローアイドル状態)であるか否かを判定するための閾値であり、エンジン152の種類やエンジン152が適用されるクローラクレーンX1の種類に応じて異なる値が採用される。
【0094】
一方、レバー操作部210の操作の有無に拘わらず(S415)、エンジン152の回転数が1500min
−1より小さければ(S416でYES)、クーリング時間演算部252は、クーリング時間CTを2.5秒減算する(S417)。
【0095】
排気ガスの温度が250度より高くなければ(S401でNO)、噴射部120の故障のリスクが低いので、クーリング時間CTは、基本的には、2.5秒ずつ減算されていく。但し、レバー操作部210の操作がなく、回転数が1500min
−1より小さくない場合(S415でNO且つS416でNO)、エンジン152はいわゆるハイアイドル状態にあり、流動する排気ガスによる冷却効果が高いので、クーリング時間CTは5秒ずつ減算されていく。これにより、例えば、オペレータは、クーリング時間CTにおいて、アクセル操作部220を操作してエンジン152を駆動させることでクーリング時間CTを短くできる。その結果、オペレータはより早くクーリングを終えることができ、クーリングのためのオペレータの待機時間を短縮できる。
【0096】
排気温度ETが250度より大きく、且つ300度より大きくなければ(S401でYES、S402でNO、且つS403でNO)、クーリング時間演算部252は、フラグTMを1減算する(S408)。そして、フラグTMが0であり(S409でNO)、クーリング時間CTが180秒以上であれば(S413でYES)、クーリング時間演算部252は、クーリング時間CTを180秒に設定する。フラグTMについては後述する。
【0097】
一方、クーリング時間CTが180秒以上でなければ(S413でNO)、クーリング時間演算部252は、クーリング時間CTを0.2秒加算する(S412)。これにより、排気温度ETが250度から300度の範囲にある場合、フラグTMが0であれば、クーリング時間CTは、上限値を180秒として、0.2秒ずつ加算されていく。そのため、クーリング時間CTが無制限に増大することが防止される。
【0098】
S409において、フラグTMが0でなく(S409でYES)、クーリング時間CTが300秒以上でなければ(S410でNO)、クーリング時間演算部252は、クーリング時間CTに0.2秒を加算する(S412)。一方、クーリング時間CTが300秒以上であれば(S410でYES)、クーリング時間演算部252は、クーリング時間CTを300秒に設定する(S411)。
【0099】
これにより、排気温度ETが250度から300度の範囲にある場合、フラグTMが0でなければ、クーリング時間CTは、上限値を300秒として、0.2秒ずつ加算されていく。そのため、クーリング時間CTが無制限に増大することが防止されている。
【0100】
ここで、フラグTMが0でない場合、フラグTMが0の場合に比べて上限値(=300秒)が高く設定されているのは、過去5分以内において、排気温度ETが300度を超えており、噴射部120のクーリングに長時間必要であることを考慮したためである。
【0101】
排気温度ETが400度より大きくなく、300度より大きければ(S402でNO且つS403でYES)、クーリング時間演算部252は、フラグTMを「300」に設定し(S406)、クーリング時間CTを0.3秒加算する(S407)。これにより、排気温度ETが300度から400度の範囲にあれば、クーリング時間CTは0.3秒ずつ加算されることになる。
【0102】
ここで、フラグTMは過去5分以内において排気温度ETが300度を超えている場合に値(=「300」)が設定される。そのため、排気温度ETが250度から300度の範囲内にある場合であっても、排気温度ETが過去5分以内に300度を超えたケースがあれば、S408の処理が300回繰り返され、少なくとも5分間のクーリング時間CTが確保されることになる。
【0103】
排気温度ETが400度より大きければ(S402でYES)、クーリング時間演算部252は、フラグTMを300に設定し(S404)、クーリング時間CTに1秒を加算する(S405)。
【0104】
これにより、排気温度ETが400度より大きければ、クーリング時間CTは1秒ずつ加算されることになる。
【0105】
このように、
図4の処理では、排気温度ETが250度以下であれば、クーリング時間CTは所定の値(5秒又は2.5秒)ずつ減算されるので、クーリング時間を0にできる。また、排気温度ETが250度より大きければ、排気温度ETが高いほど大きな値がクーリング時間CTに加算されていくので、排気温度ETが大きいほどクーリング時間CTの増加量を大きくできる。よって、排気温度ETに応じた適切なクーリング時間CTが設定できる。
【0106】
図5を参照する。S501において、予測部253は、報知部280がONされているか否かを判定する。ここで、報知部280がONされているとは、クーリングの必要性を報知部280がオペレータに報知している状態を指す。具体的には、警報ランプを点灯状態にすることが該当する。
【0107】
S501で、報知部280がOFFされていれば(S501でNO)、予測部253は、クーリング時間CTが60秒以上であるか否かを判断する(S504)。クーリング時間CTが60秒以上であれば(S504でYES)、予測部253は、アクセル操作部220により検出された操作量がアクセル操作がないことを示し、且つ、レバー操作部210により検出された操作量がレバー操作がないことを示すか否かを判定する(S505、S506)。
【0108】
アクセル操作及びレバー操作の両方がされていなければ(S505でNO且つS506でNO)、予測部253は、エンジン152が停止される可能性が高いと判定する。この場合、報知制御部254は、報知部280をONにする(S507)。そして、この場合、報知制御部254は、警報ランプを点灯状態にし、且つ、所定時間(例えば、2,3秒)、ブザー282に警報音を出力させる。これにより、オペレータへのクーリングの報知が開始される。
【0109】
一方、クーリング時間CTが60秒以上でなければ(S504でNO)、報知制御部254は、報知部280をONにせず、処理をS508に進める。また、クーリング時間CTが60秒以上の場合において(S504でYES)、アクセル操作及びレバー操作の一方がされている場合(S505でYES又はS506でYES)、予測部253はエンジン152の停止の可能性が低いと判断する。この場合、報知制御部254は、報知部280をONにせず、処理をS508に進める。
【0110】
エンジン152の負荷の低い作業であっても、瞬間的に排気温度ETが上昇し、クーリング時間CTが数秒の値に設定されることがある。このような場合に、報知部280をいちいちONさせると、報知部280のONが頻発され、オペレータを混乱させる可能性がある。そこで、S504において、60秒の閾値を設け、クーリング時間CTが60秒以上でない場合(S504でNO)、報知部280をONにしないようにした。
【0111】
また、アクセル操作又はレバー操作がされている場合、オペレータは作業中であり、エンジンが停止される可能性が低いので、S505でYES又はS506でYESの場合、報知部280をONさせないようにした。これにより、クローラクレーンX1の操作中にクーリングの報知が開始され、オペレータの集中力が低下することを防止できる。
【0112】
S501で報知部280がONされている場合において(S501でYES)、クーリング時間CTが「0」であれば(S502でYES)、クーリングが終了しているので、報知制御部254は、報知部280をOFFさせる(S503)。この場合、報知制御部254は、警報ランプを消灯し、一定時間(例えば2、3秒)、ブザー282に警報音を出力させ、クーリング時間CTの終了をオペレータに報知すればよい。
【0113】
一方、クーリング時間CTが「0」でなければ(S502でNO)、報知制御部254は、処理をS508に進め、報知部280をOFFにせず、クーリングの報知を継続する。
【0114】
S508において、オペレータによりエンジン152が停止された場合(S508でYES)、報知制御部254は、報知部280がONであれば(S509でYES)、クーリングの報知を無視してオペレータがエンジン152を停止させたと判定し、そのことを報知する(S510)。この場合、報知制御部254は、「クーリングをせずにエンジンを止めました。次回から気をつけて下さい。」といったメッセージをモニタ281に表示させればよい。
【0115】
S508において、オペレータがエンジン152を停止させないのであれば(S508でNO)、処理はS401に戻され、S401以降の処理が繰り返し実行される。これにより、エンジン152の作動中は、排気ガスの温度に基づいてクーリング時間CTを増減させる処理が繰り返される。
【0116】
S509において、報知部280がONされていなければ(S509でNO)、クーリング時間演算部252は、ROMにクーリング時間CTを保存し(S511)、処理を終了する。これにより、エンジン152の停止時のクーリング時間CTがROMに保存され、
図3のS306の処理に活用される。
【0117】
このように、本実施の形態によれば、排気温度ETが250度より大きければ(S401でYES)、排気温度ETが高いほど加算値が増大するようにクーリング時間CTが増大されていく(S405、S407、S412)。そして、クーリング時間CTが60秒より大きく(S504でYES)、且つ、エンジン152が停止される可能性が高いと判定された場合(S505でNO且つS506でNO)、報知部280がONされる(S507)。そのため、オペレータにエンジン152の停止前にクーリングを実施させることができる。
【0118】
また、排気温度ETが250度以下の場合(S401でNO)、クーリングが実施されていると、クーリング時間CTが減算されていき(S417、S418)、クーリング時間CTが0になると、クーリングの報知がOFFされるので(S503)、オペレータにクーリング時間CTの終了タイミングを報知できる。
【0119】
(実施の形態2)
実施の形態2におけるクローラクレーンX1は、クーリング時間CTを減算させる際の条件が実施の形態1と相違する。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同じ構成要素には同一の符号を付し、説明を省く。
【0120】
実施の形態2において、実施の形態1との相違点は、
図4のフローチャートにある。
図6は、本発明の実施の形態2におけるクローラクレーンX1の処理の一例を示すフローチャートである。
図6では、
図4に対して、更に、S601の処理が追加され、S416、S418の処理が削除されている。また、
図6では、S601を設けたことに伴い、
図4のS415が相違するので、末尾に「a」の符号を付している。
【0121】
排気温度ETが250度より大きくない場合(S401でNO)、アクセル操作及びレバー操作の両方がされていなければ(S601でNO且つS415aでNO)、クーリング時間演算部252は、クーリング時間CTを2.5秒減算する(S417)。
【0122】
一方、アクセル操作及びレバー操作の一方がされていれば(S601でYES又はS415aでYES)、クーリング時間演算部252は処理をS401に戻す。
【0123】
つまり、
図6では、アクセル操作及びレバー操作の両方がされていない場合、すなわち、オペレータが作業をしていない場合に限って、クーリング時間CTの減算が行われる(S417)。アクセル操作及びレバー操作が行われていなければ、噴射部120は冷却されるので、クーリング時間CTを減算するのが好ましい。これにより、クーリング時間CTが不必要に長くなることを防止できる。
【0124】
なお、本発明は、以下の変形例が採用できる。
【0125】
(変形例1)
変形例1は、クーリングを自動的に開始させるためのクーリングスイッチを設ける点を特徴とする。この場合、報知制御部254は、クーリングを報知する場合、モニタ281にクーリングスイッチを表示させればよい。そして、クーリングスイッチが押された場合、報知制御部254は、エンジン制御部160にクーリングを実施する上で予め定められた最適な回転数で作動するように指令を出す。これによりエンジン制御部160は最適な回転数でエンジン152を作動させる。この場合、最適な回転数としては、クーリングの促進と燃費との兼ね合いから両者が最適な値となるような値が採用できる。
【0126】
また、変形例1では、クーリング時間CTが0になった場合、エンジン152を自動停止させる構成が採用されてもよい。この場合、オペレータはクーリングの開始とともに、クローラクレーンX1から離れることができる。
【0127】
(変形例2)
クーリング時間CTは、噴射部120の冷却に加えて、エンジン152及び作動油を冷却させるための時間として設けられてもよい。この場合、クーリングの終了条件として、冷却配管170を流れる冷却水の温度が基準温度以下となる条件と、作動油の温度が基準温度以下となる条件が追加されればよい。
【0128】
この場合、クローラクレーンX1が高負荷の作業を行うと、冷却水の温度及び作動油の温度が高温状態となる。この状態で、エンジン152が停止されると、冷却水の循環及びエンジン152のクーリングファン(図略)の回転が停止するので、エンジン152は冷却されない。また、作動油の循環及びオイルクーラファン(図略)の回転も停止するので、作動油は冷却されない。これにより、エンジン152はダメージを受け、且つ作動油の劣化が進行する。そこで、クーリング時間CTの終了条件に、上記の条件を加えることで、このような事態を防止できる。
【0129】
(変形例3)
報知部280がONしているときは、エンジン152を停止できない機能を設けても良い。この場合、オペレータによりエンジン152を停止する操作が入力されても、報知制御部254は、エンジン制御部160にエンジン152の作動を継続するように指令を出せばよい。
【0130】
これにより、オペレータのミス或いはオペレータが意図的にエンジン152を停止させる操作を入力したとしても、噴射部120が故障するリスクを低減できる。
【0131】
(変形例4)
なお、上記実施の形態において、後処理装置110はDPF装置を含んでいたが、DPF装置は省かれてもよい。