特許第6365715号(P6365715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6365715酸拡散制御剤、感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365715
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】酸拡散制御剤、感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20180723BHJP
   C07D 307/94 20060101ALI20180723BHJP
   C07D 493/10 20060101ALI20180723BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20180723BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   C07D307/94CSP
   C07D493/10 A
   G03F7/039 601
   G03F7/038 601
【請求項の数】4
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2017-56733(P2017-56733)
(22)【出願日】2017年3月22日
(62)【分割の表示】特願2014-515583(P2014-515583)の分割
【原出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2017-151448(P2017-151448A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年3月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-113873(P2012-113873)
(32)【優先日】2012年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】生井 準人
(72)【発明者】
【氏名】池田 憲彦
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−135075(JP,A)
【文献】 特開2002−226470(JP,A)
【文献】 特開2010−250076(JP,A)
【文献】 特開2008−107513(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043685(WO,A1)
【文献】 特開2012−137729(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0197067(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/172239(WO,A1)
【文献】 A. Loeffler et al.,Preparation des α-methylenebutyrolactones par reaction de Reformatsky; synthese de l'acide protolic,CHIMIA,スイス,Swiss Chemists' Association,1969年11月15日,Vol.23, Fasc.11,pp.413-416
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
C07D493/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)で表される化合物からなる酸拡散制御剤。
【化1】
(式(2)中、
は、エステル基及びR10が結合する炭素原子と共に環員数5〜8の(n+2)価の単環の複素環基を形成する基である。nは、1〜6の整数である。
は、nが1の場合、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。nが2以上の場合、複数のRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、上記炭化水素基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、若しくは上記炭化水素基が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基であるか、又は複数のRのうちの2つ以上が互いに結合して形成された環員数3〜10の環構造、上記環構造の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む環構造、若しくは上記環構造が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した環構造を形成している。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
10は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR13及びR14が互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。)
【請求項2】
酸解離性基を有する重合体、
酸発生体、及び
請求項1に記載の酸拡散制御剤
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
上記酸拡散制御剤以外の酸拡散制御剤
をさらに含有する請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物を用い、レジスト膜を形成する工程、
上記レジスト膜を露光する工程、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を有するレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸拡散制御剤、感放射線性樹脂組成物、レジストパターン形成方法、化合物及び化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型感放射線性樹脂組成物は、ArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光等の露光光の照射により、露光部において酸発生剤から酸を生成させ、この酸を触媒とする反応により、露光部と未露光部との現像液に対する溶解速度を変化させ、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
かかる感放射線性樹脂組成物には、加工技術の微細化に伴い、解像性等の諸性能を向上させることが要求される。この要求に対し、感放射線性樹脂組成物には、上記酸発生剤から生成した酸の拡散を適度に制御する目的で酸拡散制御剤を含有させることが行われている。このような酸拡散制御剤として、極性基及び環構造を有する窒素原子含有化合物が知られており、解像性及び焦点深度を高めることができるとされている(特開2002−363148号公報及び特開2002−226470号公報参照)。
【0004】
このような中、レジストパターンの微細化がますます進行する現在にあっては、上記解像性及び焦点深度をさらに向上させることが要求され、これに加え、レジストパターンの線幅のバラつきを示すラインウィドゥスラフネス(LWR)性能に優れることも要求される。さらには、上記従来の酸拡散制御剤では、形成されるレジストパターンがトップロス等になる傾向があり、このレジストパターンの断面形状の矩形性を向上させることも求められている。しかし、上記従来の感放射線性樹脂組成物ではこれらの要求を満足させることはできていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−363148号公報
【特許文献2】特開2002−226470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れる酸拡散制御剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる酸拡散制御剤である。
【化1】
(式(1)中、
は、炭素数3〜30の1価の脂環式構造を有する炭化水素基、この基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、若しくは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又はこれらの基が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、R及びRのうちの少なくとも一方が、炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。
式(2)中、
は、エステル基及びR10が結合する炭素原子と共に環員数5〜8の(n+2)価の単環の複素環基を形成する基である。nは、1〜6の整数である。
は、nが1〜6の整数の場合、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、nが2以上の場合、複数のRのうちの2つ以上が互いに結合して形成された環員数3〜10の環構造、若しくはこれらの基若しくは環構造の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、又はこれらの基若しくは環構造が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
10は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR13及びR14が互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。)
【0008】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、
酸解離性基を有する重合体、
酸発生体、及び
当該酸拡散制御剤
を含有する。
【0009】
本発明のレジストパターン形成方法は、
当該感放射線性樹脂組成物を用い、レジスト膜を形成する工程、
上記レジスト膜を露光する工程、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を有する。
【0010】
本発明の化合物は、下記式(1)で表される。
【化2】
(式(1)中、
は、炭素数3〜30の1価の脂環式構造を有する炭化水素基、この基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、若しくは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又はこれらの基が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、R及びRのうちの少なくとも一方が、炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。)
【0011】
また、本発明の別の化合物は、下記式(2)で表される。
【化3】
(式(2)中、
は、エステル基及びR10が結合する炭素原子と共に環員数5〜8の(n+2)価の単環の複素環基を形成する基である。nは、1〜6の整数である。
は、nが1〜6の整数の場合、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、nが2以上の場合、複数のRのうちの2つ以上が互いに結合して形成された環員数3〜10の環構造、若しくはこれらの基若しくは環構造の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、又はこれらの基若しくは環構造が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
10は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR13及びR14が互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。)
【0012】
本発明の化合物の製造方法は、
下記式(i−a)で表される化合物と、下記式(i−b)で表されるアミン化合物とを反応させる工程を有する下記式(1)で表される化合物の製造方法である。
【化4】
(式(i−a)、式(i−b)及び式(1)中、
は、炭素数3〜30の1価の脂環式構造を有する炭化水素基、この基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、若しくは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又はこれらの基が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、R及びRのうちの少なくとも一方が、炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。)
【0013】
本発明の別の化合物の製造方法は、
下記式(ii−a)で表される化合物と、下記式(ii−b)で表されるアミン化合物とを反応させる工程を有する下記式(2)で表される化合物の製造方法である。
【化5】
(式(ii−a)、式(ii−b)及び式(2)中、
は、エステル基及びR10が結合する炭素原子と共に環員数5〜8の(n+2)価の単環の複素環基を形成する基である。nは、1〜6の整数である。
は、nが1〜6の整数の場合、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、nが2以上の場合、複数のRのうちの2つ以上が互いに結合して形成された環員数3〜10の環構造、若しくはこれらの基若しくは環構造の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、又はこれらの基若しくは環構造が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
10は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR13及びR14が互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。)
【0014】
ここで、「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成される炭化水素基をいう。「脂環式構造を有する炭化水素基」とは、環構造として脂環式構造を含む炭化水素基をいう。但し、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に芳香環構造や鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造のみを含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸拡散制御剤、これを含有する感放射線性樹脂組成物及びこの感放射線性樹脂組成物を用いるレジストパターン形成方法によれば、広い焦点深度を発揮しつつ、LWRが小さく、断面形状の矩形性に優れ、かつ高い解像度のレジストパターンを形成することができる。また、本発明の化合物は、当該酸拡散制御剤として好適に用いることができる。本発明の化合物の製造方法によれば、当該化合物を簡便に製造することができる。従って、これらは、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造におけるパターン形成に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<酸拡散制御剤>
当該酸拡散制御剤(以下、「酸拡散制御剤(I)」ともいう)は、上記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう)及び下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」ともいう)からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「化合物(I)」ともいう)からなる。酸拡散制御剤(I)は、化合物(I)からなることで、これを含有する感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れる。酸拡散制御剤(I)が化合物(I)からなることで、上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば、以下のように推察することができる。
化合物(I)は、酸と相互作用し得る窒素原子と共にエステル基を有し、このエステル基の近傍の環構造又はエステル基を含む環構造を有し、さらに、このエステル基の近傍に炭化水素基又はその誘導基である特定基を有する特定の構造を有している。化合物(I)は、このように、極性を有するエステル基、嵩高さを有する環構造及び立体的効果を発揮する特定基が互いに近傍に存在することで、これらの相乗効果が発揮されると考えられ、従来の窒素原子含有化合物に比べて、化合物(I)とレジスト膜を構成する重合体等との親和性が高くなると共に、昇華性が低減されかつ耐熱性に優れる。これにより、化合物(I)のレジスト膜中での拡散及び偏在が適度に抑制される。その結果、化合物(I)を含有する感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度が優れる。
また、化合物(I)は、上記特定構造を有するので、アクリル酸エステル系化合物又はαメチレンラクトン化合物と、アミン化合物とから簡便に合成することができるので、原料の入手が容易であり、製造コスト的にも有利である。
以下、化合物(1)及び化合物(2)の順に説明する。
【0017】
[化合物(1)]
化合物(1)は、下記式(1)で表される。
【0018】
【化6】
【0019】
上記式(1)中、
は、炭素数3〜30の1価の脂環式構造を有する炭化水素基、この基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、若しくは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又はこれらの基が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、R及びRのうちの少なくとも一方が、炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。
【0020】
上記Rで表される炭素数3〜30の1価の脂環式構造を有する炭化水素基としては、例えば、非酸解離性の脂環式構造を有する炭化水素基、酸解離性の脂環式構造を有する炭化水素基等が挙げられる。「酸解離性の脂環式構造を有する炭化水素基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の水素原子を置換する脂環式構造を有する炭化水素基であって、酸の作用により解離する基をいう。
【0021】
上記非酸解離性の脂環式構造を有する炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、1−i−プロピルシクロペンタン−1−イル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、2−メチルアダマンタン−2−イル基、2−i−プロピルアダマンタン−2−イル基等の単環のシクロアルキル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基などが挙げられる。
これらの中で単環のシクロアルキル基、多環のシクロアルキル基が好ましく、多環のシクロアルキル基がより好ましく、アダマンタン環を有する基、トリシクロデカン環を有する基がさらに好ましく、1−アダマンチル基、8−トリシクロデシル基が特に好ましい。
【0022】
上記酸解離性の脂環式構造を有する炭化水素基としては、例えば、結合部位の炭素原子が3級となる基等が挙げられ、例えば、
1−メチル−1−シクロペンチル基、1−エチル−1−シクロペンチル基、1−i−プロピル−1−シクロペンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基等のアルキル基置換単環のシクロアルキル基;
2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−i−イソプロピル−2−アダマンチル基、2−メチル−2−ノルボルニル基等のアルキル基置換多環のシクロアルキル基等;
2−シクロペンチル−2−プロピル基、2−シクロヘキシル−2−プロピル基、2−ノルボルニル−2−プロピル基、2−アダマンチル−2−プロピル基等のシクロアルキル基置換アルキル基等が挙げられる。
これらの中で、アルキル基置換単環のシクロアルキル基、アルキル基置換多環のシクロアルキル基が好ましく、1−アルキル−1−単環シクロアルキル基、2−アルキル−2−多環シクロアルキル基がより好ましく、1−アルキル−1−シクロペンチル基、2−アルキル−2−アダマンチル基がさらに好ましく、1−i−プロピル−1−シクロペンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−i−プロピル−2−アダマンチル基が特に好ましい。
が酸解離性の脂環式構造を有する炭化水素基であると、化合物(1)は、露光部において、酸発生体から発生した酸の作用により解離しカルボキシ基を生じる。その結果、化合物(1)のレジスト膜中における拡散がより適度に制御される。また、Rが酸の作用により解離することで、現像液に対する親和性が変化するため、当該酸拡散制御剤を含有する感放射線性樹脂組成物の溶解コントラストが向上する。具体的には、露光部において、アルカリ現像液に対しては溶解性が向上し、有機溶剤現像液に対しては溶解禁止効果が向上する。
【0023】
上記脂環式構造を有する炭化水素基の炭素−炭素間に−O−を含む基としては、例えば
オキサシクロペンチル基、オキサシクロヘキシル基等のオキサシクロアルカン構造を有する基;
1,3−ジオキサ−2,2−ジメチルシクロペンタン−5−イルメチル基、1,3−ジオキサシクロペンタン−5−イルメチル基等の環状アセタール環(環状ケタール環を含む)を有する基;
7−(1,3−ジオキサ−2,2−ジメチルシクロペンタン−4−イル)−3,3−ジメチル−2,4,8−トリオキサビシクロ[3,3,0]オクタン−6−イル基、7−(1,3−ジオキサ−スピロ[アダマンタン−2,2’]シクロペンタン−4−イル)−スピロ[アダマンタン−3,3’]−2,4,8−トリオキサビシクロ[3,3,0]オクタン−6−イル基等のオキサシクロアルカン構造及び環状アセタール環を有する基等が挙げられる。
これらの中で、環状アセタール環を有する基、オキサシクロアルカン構造及び環状アセタール環を有する基が好ましく、1,3−ジオキサ−2,2−ジメチルシクロペンタン−5−イルメチル基、7−(1,3−ジオキサ−2,2−ジメチルシクロペンタン−4−イル)−3,3−ジメチル−2,4,8−トリオキサビシクロ[3,3,0]オクタン−6−イル基、7−(1,3−ジオキサ−スピロ[アダマンタン−2,2’]シクロペンタン−4−イル)−スピロ[アダマンタン−3,3’]−2,4,8−トリオキサビシクロ[3,3,0]オクタン−6−イル基がより好ましい。
が環状アセタール環を有する基であると、化合物(1)は、露光部において、酸発生体から発生する酸の作用により、2個のヒドロキシ基を生じる。その結果、化合物(1)のレジスト膜中における拡散がより適度に制御される。また、酸発生体から発生した酸の作用により解離することで、現像液に対する親和性が変化するため、溶解コントラストが向上する。具体的には、露光部において、アルカリ現像液に対しては溶解性が向上し、有機溶剤現像液に対しては溶解禁止効果が向上する。
【0024】
上記脂環式構造を有する炭化水素基の炭素−炭素間に−CO−を含む基としては、例えば、
オキソシクロペンチル基、オキソシクロヘキシル基、オキソノルボルニル基、オキソアダマンチル基、ジオキソシクロペンチル基、ジオキソシクロヘキシル基、ジオキソノルボルニル基、ジオキソアダマンチル基等の環状ケトン基;
ノルボルニルカルボニルメチル基、アダマンチルカルボニルメチル基等の環状ケトン基を有する鎖状基等が挙げられる。
これらの中で、環状ケトン基を有する鎖状基が好ましく、ノルボルニルカルボニルメチル基がより好ましい。
【0025】
上記脂環式構造を有する炭化水素基の炭素−炭素間に−COO−を含む基としては、例えば、
ブチロラクトン−イル基、バレロラクトン−イル基、カプロラクトン−イル基、ノルボルナンラクトン−イル基、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン−イル基等のラクトン構造を有する基;
ノルボルナンラクトン−イルオキシカルボニルメチル基、ブチロラクトン−イルオキシカルボニルメチル基等のラクトン−イルオキシカルボニルアルキル基等のラクトン構造を有する基を有するエステル基含有鎖状基等が挙げられる。
これらの中で、ノルボルナンラクトン−イル基、ノルボルナンラクトン−イルオキシカルボニルメチル基が好ましい。
【0026】
上記脂環式構造を有する炭化水素基の炭素−炭素間に−SOO−を含む基としては、例えば、ブチロスルトン−イル基、バレロスルトン−イル基、ノルボルナンスルトン−イル基等のスルトン構造を有する基等が挙げられる。
これらの中で、ノルボルナンスルトン−イル基が好ましい。
【0027】
上記脂環式構造を有する炭化水素基の炭素−炭素間に−NRSO−を含む基としては、例えば、ブチロスルタム−イル基、バレロスルタム−イル基、ノルボルナンスルタム−イル基等のスルタム構造を有する基等が挙げられる。
これらの中で、ノルボルナンスルタム−イル基が好ましい。
【0028】
上記脂環式構造を有する炭化水素基の炭素−炭素間に−NRCO−を含む基としては例えば、ブチロラクタム−イル基、バレロラクタム−イル基、カプロラクタム−イル基、ノルボルナンラクタム−イル基等のラクタム構造を有する基等が挙げられる。
これらの中で、カプロラクタム−イル基、ノルボルナンラクタム−イル基が好ましい。
【0029】
上記Rで表される炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0030】
上記炭素数1〜10の鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。
【0031】
上記炭素数3〜10の脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等のシクロアルキル基;
シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0032】
上記炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0033】
上記Rとしては水素原子、鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0034】
上記Rで表される炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、メチルアントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0035】
上記これらの基が有する水素原子をヒドロキシ基で置換した基としては、例えば、
ヒドロキシシクロペンチル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、ジヒドロキシシクロペンチル基、ジヒドロキシシクロヘキシル基等のヒドロキシ基置換単環のシクロアルキル基;
ヒドロキシノルボルニル基、ヒドロキシアダマンチル基、ジヒドロキシノルボルニル基、ジヒドロキシアダマンチル基等のヒドロキシ基置換多環のシクロアルキル基;
ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシトリル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアントリル基等のヒドロキシ基置換アリール基等が挙げられる。
これらの中で、ヒドロキシ基置換多環のシクロアルキル基が好ましく、ヒドロキシアダマンチル基がより好ましく、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基がさらに好ましい。
【0036】
上記これらの基が有する水素原子を置換するハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0037】
上記これらの基が有する水素原子をハロゲン原子で置換した基としては、例えば、
ハロシクロペンチル基、ハロシクロヘキシル基、ジハロシクロペンチル基、ジハロシクロヘキシル基等のハロゲン原子置換単環のシクロアルキル基;
ハロノルボルニル基、ハロアダマンチル基、ジハロノルボルニル基、ジハロアダマンチル基等のハロゲン原子置換多環のシクロアルキル基;
ハロフェニル基、ハロトリル基、ハロナフチル基、ハロアントリル基等のハロゲン原子置換アリール基等が挙げられる。
これらの中で、ハロゲン原子置換単環のシクロアルキル基が好ましく、パーフルオロシクロアルキル基がより好ましい。
【0038】
としては、非酸解離性の単環又は多環のシクロアルキル基、酸解離性のシクロアルキル基、ヒドロキシ基で置換されたシクロアルキル基、シクロアルキル基の炭素−炭素間に−O−、−COO−及び/又は−SOO−を含む基が好ましく、非酸解離性の単環又は多環のシクロアルキル基、酸解離性のシクロアルキル基、ヒドロキシ基で置換されたシクロアルキル基がより好ましく、無置換単環シクロアルキル基、、無置換多環シクロアルキル基、1−アルキル−1−単環シクロアルキル基、ヒドロキシ置換多環シクロアルキル基がさらに好ましく、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基、1−アルキル−1−シクロペンチル基が特に好ましい。
【0039】
上記R及びRで表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば、上記Rで表される1価の炭化水素基として例示した基と同じもの等が挙げられる。これらの中で、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0040】
上記R及びRの組み合わせとしては、化合物(1)の合成容易性の観点から、水素原子及び1価の炭化水素基の組み合わせが好ましい。
【0041】
上記R及びRで表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば、上記Rで表される1価の炭化水素基として例示した基と同じもの等が挙げられる。これらの中で、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0042】
上記R及びRとしては、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0043】
上記R及びRで表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば、上記Rで表される1価の炭化水素基として例示した基と同じもの等が挙げられる。これらの中で、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0044】
上記R及びRが互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に形成する環員数3〜10の環構造としては、例えば、
アザシクロプロパン構造、アザシクロブタン構造、アザシクロペンタン構造(ピロリジン構造)、アザシクロヘキサン構造(ピペリジン構造)、アザシクロヘプタン構造、アザシクロオクタン構造、アザシクロデカン構造等の単環のアザシクロアルカン構造;
アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン構造、アザビシクロ[2.2.2]オクタン構造、アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン構造等の多環のアザシクロアルカン構造;
アザオキサシクロプロパン構造、アザオキサシクロヘキサン構造(モルホリン構造を含む)等のアザオキサシクロアルカン構造等が挙げられる。
これらの中で、単環のアザシクロアルカン構造、アザオキサシクロアルカン構造が好ましく、アザシクロペンタン構造、アザシクロヘキサン構造、アザオキサシクロヘキサン構造がより好ましく、アザシクロヘキサン構造、1,4−アザオキサシクロヘキサン構造(モルホリン構造)がさらに好ましい。
【0045】
化合物(1)としては、例えば、下記式(i−1)〜(i−20)で表される化合物(以下、「化合物(i−1)〜(i−20)」ともいう)等が挙げられる。
【0046】
【化7】
【0047】
これらの中で、化合物(1)としては、化合物(i−1)〜(i−19)が好ましく、化合物(i−1)〜(i−17)がより好ましく、化合物(i−1)、化合物(i−2)、化合物(i−4)、化合物(i−10)、化合物(i−17)がさらに好ましい。
【0048】
[化合物(2)]
化合物(2)は、下記式(2)で表される。
【0049】
【化8】
【0050】
上記式(2)中、
は、エステル基及びR10が結合する炭素原子と共に環員数5〜8の(n+2)価の単環の複素環基を形成する基である。nは、1〜6の整数である。
は、nが1〜6の整数の場合、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、nが2以上の場合、複数のRのうちの2つ以上が互いに結合して形成された環員数3〜10の環構造、若しくはこれらの基若しくは環構造の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、又はこれらの基若しくは環構造が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
10は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR13及びR14が互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。
【0051】
上記Rがエステル基及びR10が結合する炭素原子と共に形成する環員数5〜8の(n+2)価の単環の複素環基としては、例えば、
ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン等の単環のラクトン;このラクトンのCH−CH間に−O−、−S−、−NR−(Rは、水素原子又は1価の炭化水素基である)、−CO−、−CS−又はこれらを組み合わせた基を含む化合物から(n+2)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
これらの中で、単環のラクトンから(n+2)個の水素原子を除いた基が好ましく、ブチロラクトン、バレロラクトン又はカプロラクトンから(n+2)個の水素原子を除いた基がより好ましく、ブチロラクトンから(n+2)個の水素原子を除いた基がさらに好ましい。
【0052】
上記nとしては、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0053】
上記nが1〜6の整数の場合のRで表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0054】
上記炭素数1〜20の鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基、デシニル基、ドデシニル基、テトラデシニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0055】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等のシクロアルキル基;
シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等のシクロアルケニル基などが挙げられる。
【0056】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、メチルアントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0057】
上記nが2以上の場合の複数のRのうちの2つ以上が互いに結合して形成する環員数3〜10の環構造としては、例えば、
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造等のシクロアルカン構造;
オキサシクロブタン構造、オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘキサン構造、オキサノルボルナン構造、オキサアダマンタン構造等のオキサシクロアルカン構造;
ベンゼン環構造、ナフタレン環構造等の芳香環構造等が挙げられる。
この環構造には、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭化水素基等の置換基が結合していてもよい。
また、これらの環構造は、スピロ環であってもよい。上記環構造を形成する2つのRが同一炭素原子に結合している場合には、スピロ環が形成される。
【0058】
上記これらの基又は環構造の炭素−炭素間に−O−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基としては、例えば、上記鎖状炭化水素基、上記脂環式炭化水素基、上記芳香族炭化水素基及び上記環構造の炭素−炭素間に−O−、−COO−、−SOO−、−NRSO−又は−NRCO−を含む基等が挙げられる。
【0059】
上記Rで表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、上記Rとして例示した1価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。これらの中で、水素原子、鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0060】
上記これらの基又は環構造が有する水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基としては、例えば、上記鎖状炭化水素基、上記脂環式炭化水素基、上記芳香族炭化水素基、上記環構造、これらの基若しくは環構造の炭素−炭素間に−O−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基が有する水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基又はハロゲン原子で置換した基等が挙げられる。
【0061】
としては、上記環構造が好ましく、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造がより好ましく、これらの環構造の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、これらの環構造が有する水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基がさらに好ましく、これらの環構造の炭素−炭素間に−O−を含む基、これらの環構造が有する水素原子の一部をヒドロキシ基で置換した基が特に好ましく、オキサシクロペンタン構造、ヒドロキシ含有シクロヘキサン構造がさらに特に好ましい。
【0062】
10で表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、上記Rとして例示した1価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。これらの中で、水素原子、鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0063】
10としては、水素原子、鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0064】
11及びR12で表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、上記Rとして例示した1価の炭化水素基と同様の基等が挙げられる。これらの中で、水素原子、鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0065】
11及びR12としては、水素原子、鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0066】
13及びR14で表される炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えば、上記Rで表される1価の炭化水素基として例示した基と同じもの等が挙げられる。これらの中で、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基がさらに好ましく、i−プロピル基が特に好ましい。
【0067】
上記R13及びR14が互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に形成する環員数3〜10の環構造としては、例えば、上記R及びRが互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に形成する環構造として例示した環構造と同じもの等が挙げられる。
これらの中で、単環のアザシクロアルカン構造、アザオキサシクロアルカン構造が好ましく、アザシクロペンタン構造、アザシクロヘキサン構造、アザオキサシクロヘキサン構造がより好ましく、アザシクロヘキサン構造、1,4−アザオキサシクロヘキサン構造(モルホリン構造)がさらに好ましい。
【0068】
化合物(2)としては、例えば、下記式(ii−1)〜(ii−13)で表される化合物(以下、「化合物(ii−1)〜(ii−13)」ともいう)等が挙げられる。
【0069】
【化9】
【0070】
これらの中で、化合物(2)としては化合物(ii−1)〜(ii−4)が好ましく、化合物(ii−1)、化合物(ii−2)が好ましい。
【0071】
上記化合物(1)及び化合物(2)は、例えば、下記反応スキームに従い、合成することができる。この方法により、化合物(I)を簡便に得ることができる。
【0072】
【化10】
【0073】
上記反応スキーム中、
は、炭素数3〜30の1価の脂環式構造を有する炭化水素基、この基の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、若しくは炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又はこれらの基が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、R及びRのうちの少なくとも一方が、炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR及びRが互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。
は、エステル基及びR10が結合する炭素原子と共に環員数5〜8の(n+2)価の単環の複素環基を形成する基である。nは、1〜6の整数である。
は、nが1〜6の整数の場合、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、nが2以上の場合、複数のRのうちの2つ以上が互いに結合して形成された環員数3〜10の環構造、若しくはこれらの基若しくは環構造の炭素−炭素間に−O−、−CO−、−COO−、−SOO−、−NRSO−及び−NRCO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基、又はこれらの基若しくは環構造が有する水素原子の一部若しくは全部をヒドロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換した基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
10は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はR13及びR14が互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に環員数3〜10の環構造を形成している。
【0074】
上記式(i−a)で表されるアクリル酸エステル系化合物又は式(ii−a)で表されるαメチレンラクトン化合物と、上記式(i−b)又は式(ii−b)で表されるアミン化合物とを、トルエン等の溶媒中、ピペリジン等の塩基存在下で反応させることにより、上記式(1)又は式(2)で表される化合物が得られる。
【0075】
上記式(1)及び式(2)で表される化合物の合成容易性の観点からは、上記R及びR10は、水素原子が好ましい。上記基が水素原子であることで上記スキームの反応をより容易に進行させることができ、その結果、収率よく上記化合物を得ることができる。
【0076】
このように、化合物(I)は、アクリル酸エステル系化合物又はαメチレンラクトン化合物と、アミン化合物とから簡便に合成することができるので、原料の入手が容易であり、製造コスト的にも有利である。
【0077】
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、酸解離性基を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)、酸発生体(以下、「[B]酸発生体」ともいう)及び当該酸拡散制御剤(以下、「[C]酸拡散制御剤」ともいう)を含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、これらの成分以外にも、好適成分として、[D][C]酸拡散制御剤以外の酸拡散制御剤(以下、「[D]他の酸拡散制御剤」ともいう)、[E]フッ素原子含有重合体及び[F]溶媒をさらに含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
【0078】
<[A]重合体>
[A]重合体は、酸解離性基を有する重合体である。[A]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)以外にも、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位(II)及び/又は極性基を有する構造単位(III)をさらに有していることが好ましく、これらの構造単位以外のその他の構造単位をさらに有していてもよい。[A]重合体は、各構造単位をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。以下、各構造単位について説明する。
【0079】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。「酸解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の酸性基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。
【0080】
構造単位(I)としては、例えば、下記式(3)で表される構造単位(I−1)等が挙げられる。
【0081】
【化11】
【0082】
上記式(3)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、下記式(p)で表される1価の酸解離性基である。
【0083】
【化12】
【0084】
上記式(p)中、Rp1、Rp2及びRp3は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20のシクロアルキル基である。但し、Rp2及びRp3が互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20のシクロアルカンジイル基を形成してもよい。
【0085】
構造単位(I−1)としては、下記式(3−1)〜(3−4)で表される構造単位が好ましい。
【0086】
【化13】
【0087】
上記式(3−1)〜(3−4)中、Rは、上記式(3)と同義である。Rp1、Rp2及びRp3は、上記式(p)と同義である。i及びjは、それぞれ独立して、1〜4の整数である。
【0088】
上記式(3)及び上記式(3−1)〜(3−4)で表される構造単位としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0089】
【化14】
【0090】
【化15】
【0091】
上記式中、Rは、上記式(3)と同義である。
【0092】
構造単位(I)としては、上記式(3−1)で表される構造単位、式(3−2)で表される構造単位が好ましく、1−アルキル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましく、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい。
【0093】
構造単位(I)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜100モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度を向上させることができる。構造単位(I)の含有割合が上記下限未満だと、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0094】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(II)をさらに有することで、現像液への溶解性を調整することができる。また、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
【0095】
構造単位(II)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0096】
【化16】
【0097】
【化17】
【0098】
【化18】
【0099】
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0100】
構造単位(II)としては、これらの中で、ラクトン構造を含む構造単位、スルトン構造を含む構造単位が好ましく、ラクトン構造を含む構造単位がより好ましく、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位がさらに好ましく、ノルボルナンラクトン−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が特に好ましい。
【0101】
構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜80モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、[A]重合体の現像液への溶解性をより適度にすることができる。また、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンと基板との密着性をより向上させることができる。構造単位(II)の含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0102】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、極性基を有する構造単位である(但し、構造単位(II)に該当するものを除く)。[A]重合体は、構造単位(III)をさらに有することで、現像液への溶解性を調整することができる。
【0103】
上記極性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基等が挙げられる。これらの中で、ヒドロキシ基、カルボキシ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
【0104】
構造単位(III)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0105】
【化19】
【0106】
上記式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0107】
構造単位(III)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜80モル%が好ましく、20モル%〜75モル%がより好ましく、40モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(III)の含有割合を上記範囲とすることで、[A]重合体の現像液への溶解性をより適度にすることができる。構造単位(III)の含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0108】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)〜(III)以外のその他の構造単位を有していもよい。上記その他の構造単位としては、例えば、非解離性の脂環式炭化水素基を有する構造単位等が挙げられる。上記その他の構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、通常30モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。上記その他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0109】
[A]重合体の含有量としては、当該感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0110】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤を用い、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
【0111】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0112】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類などが挙げられる。
これらの中で、ケトン類、アルコール類が好ましく、2−ブタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらの重合に使用される溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0113】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間、1時間〜24時間が好ましい。
【0114】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上20,000以下がさらに好ましく、5,000以上15,000が特に好ましい。[A]重合体のMwが上記下限未満だと、得られるレジスト膜の耐熱性が低下する場合がある。[A]重合体のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0115】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2.5以下がさらに好ましい。
【0116】
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業製)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0117】
[A]重合体中の低分子量部分(分子量1,000未満の部分をいう)の含有率としては、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。[A]重合体中の低分子量部分の含有率を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度をより向上させることができる。
【0118】
本明細書における重合体の低分子量部分の含有率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、HPLCカラム(Intersil ODS−25μmカラム(4.6mmφ×250mm)、ジーエルサイエンス製)を使用し、以下の条件により測定される値である。
溶出溶媒:アクリロニトリル/0.1質量%リン酸水溶液
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
【0119】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、露光により酸を発生する物質である。この酸により[A]重合体中の酸解離性基が解離してカルボキシ基等の極性基が生成し、その結果[A]重合体の現像液への溶解性が変化する。当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような低分子化合物の形態(以下、適宜「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた酸発生基の形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0120】
[B]酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0121】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0122】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロヘキサン−1−スルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート等が挙げられる。
【0123】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0124】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0125】
N−スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0126】
[B]酸発生剤としては、これらの中でも、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネートがさらに好ましい。
【0127】
[B]酸発生体の含有量としては、[B]酸発生体が[B]酸発生剤の場合、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性が向上する。[B]酸発生体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0128】
<[C]酸拡散制御剤>
[C]酸拡散制御剤は、本発明の酸拡散制御剤(I)である。当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生体に加えて、酸拡散制御剤(I)を含有することで、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れる。[C]酸拡散制御剤については、上述の酸拡散制御剤(I)の項で説明している。[C]酸拡散制御剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0129】
[C]酸拡散制御剤の含有量としては、[B]酸発生剤に対して、1モル%〜100モル%が好ましく、3モル%〜70モル%がより好ましく、5モル%〜50モル%がさらに好ましい。[C]酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度が向上する。
また、[C]酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
【0130】
<任意成分>
[[D]他の酸拡散制御体]
当該感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、[D]他の酸拡散制御体を含有してもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、[C]酸拡散制御剤に加えて、さらに[D]他の酸拡散制御体を含有することで、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度をより向上させることができる。[D]他の酸拡散制御体をさらに含有することで、上記効果をより向上させることができる理由については必ずしも明確ではないが、例えば、酸拡散制御剤を構成する化合物全体としての拡散度合いを調整することができること等が考えられる。[D]他の酸拡散制御体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、後述するような低分子化合物である酸拡散制御剤の形態(以下、適宜「[D]他の酸拡散制御剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた酸拡散制御基の形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0131】
[D]他の酸拡散制御剤としては、例えば、下記式(4)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0132】
【化20】
【0133】
上記式(4)中、R15、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0134】
含窒素化合物(I)としては、例えば、n−ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0135】
含窒素化合物(II)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0136】
含窒素化合物(III)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。
【0137】
アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0138】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
【0139】
含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン等のピリジン類、ピラジン、ピラゾール等が挙げられる。
【0140】
また上記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えば、N―(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン、N―(t−ブトキシカルボニル)イミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)ベンズイミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)−2−フェニルベンズイミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)ジ−n−オクチルアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0141】
また、[D]他の酸拡散制御体として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば、下記式(5−1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(5−2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0142】
【化21】
【0143】
上記式(5−1)及び式(5−2)中、R18〜R22は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。E及びQは、それぞれ独立して、OH、Rα−COO、Rα−SO又は下記式(6−3)で表されるアニオンである。但し、Rαは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0144】
【化22】
【0145】
上記式(5−3)中、R23は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。uは0〜2の整数である。
【0146】
[D]他の酸拡散制御体の含有量としては、[D]他の酸拡散制御体が[D]他の酸拡散制御剤である場合、[B]酸発生剤に対して、0モル%〜300モル%が好ましく、5モル%〜250モル%がより好ましく、10モル%〜200モル%がさらに好ましい。[D]他の酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度をより向上させることができる。[D]他の酸拡散制御剤の含有量が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物の感度が低下する場合がある。
また、[D]他の酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0〜10質量部が好ましく、0.1質量部〜8質量部がより好ましく、0.3質量部〜5質量部がさらに好ましい。
【0147】
[[E]フッ素原子含有重合体]
当該感放射線性樹脂組成物は、[E]フッ素原子含有重合体([A]重合体に該当するものを除く)を含有してもよい。当該感放射線性樹脂組成物が、[E]フッ素原子含有重合体を含有することで、レジスト膜を形成した際に、レジスト膜中の[E]フッ素原子含有重合体の撥油性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があり、液浸露光時における酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、この[E]フッ素原子含有重合体の撥水性的特徴により、レジスト被膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。このように当該感放射線性樹脂組成物が[E]フッ素原子含有重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト被膜を形成することができる。
【0148】
[E]フッ素原子含有重合体としては、フッ素原子を有する重合体である限り、特に限定されないが、当該感放射線性樹脂組成物中の[A]重合体よりも、フッ素原子含有率(質量%)が高いことが好ましい。[A]重合体よりもフッ素原子含有率が高いことで、上述の偏在化の度合いがより高くなり、得られるレジスト膜の撥水性及び溶出抑制性等の特性が向上する。
【0149】
[E]フッ素原子含有重合体のフッ素原子含有率としては、1質量%以上が好ましく、2質量%〜60質量%がより好ましく、4質量%〜40質量%がさらに好ましく、7質量%〜30質量%が特に好ましい。[E]フッ素原子含有重合体のフッ素原子含有率が上記下限未満だと、レジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。なお、重合体のフッ素原子含有率(質量%)は、13C−NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0150】
[E]フッ素原子含有重合体としては、下記構造単位(Ea)及び構造単位(Eb)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。[E]フッ素原子含有重合体は、構造単位(Ea)及び構造単位(Eb)をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
【0151】
[構造単位(Ea)]
構造単位(Ea)は、下記式(6a)で表される構造単位である。[E]フッ素原子含有重合体は構造単位(Ea)を有することでフッ素原子含有率を調整することができる。
【0152】
【化23】
【0153】
上記式(6a)中、Rは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−O−、−SO−O−NH−、−CO−NH−又は−O−CO−NH−である。Rは、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の1価の鎖状炭化水素基又は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基である。
【0154】
上記Rで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の鎖状炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロi−プロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロi−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。これらの中で、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基が好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基がより好ましい。
【0155】
上記Rで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、モノフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、モノフルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシルメチル基、フルオロノルボルニル基、フルオロアダマンチル基、フルオロボルニル基、フルオロイソボルニル基、フルオロトリシクロデシル基、フルオロテトラシクロデシル基等が挙げられる。
【0156】
上記構造単位(Ea)を与える単量体としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロノルボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロアダマンチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロイソボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロトリシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロテトラシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
これらの中で、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0157】
構造単位(Ea)の含有割合としては、[E]フッ素原子含有重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜60モル%がより好ましく、15モル%〜40モル%がさらに好ましい。構造単位(Ea)の含有割合を上記範囲とすることで、液浸露光時においてレジスト被膜表面のより高い動的接触角を発現させることができる。
【0158】
[構造単位(Eb)]
構造単位(Eb)は、下記式(6b)で表される構造単位である。[E]フッ素原子含有重合体は、構造単位(Eb)を有することで疎水性が上がるため、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト膜表面の動的接触角をさらに向上させることができる。
【0159】
【化24】
【0160】
上記式(6b)中、Rは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R24は、炭素数1〜20の(s+1)価の炭化水素基であり、R24のR25側の末端に酸素原子、硫黄原子、−NR’−、カルボニル基、−CO−O−又は−CO−NH−が結合された構造のものも含む。R’は、水素原子又は1価の有機基である。R25は、単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数4〜20の2価の脂肪族環状炭化水素基である。Xは、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である。Aは、酸素原子、−NR”−、−CO−O−*又は−SO−O−*である。R”は、水素原子又は1価の有機基である。*は、R26に結合する結合部位を示す。R26は、水素原子又は1価の有機基である。sは、1〜3の整数である。但し、sが2又は3の場合、複数のR25、X、A及びR26はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0161】
上記R26が水素原子であると、[E]フッ素原子含有重合体のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる点で好ましい。
【0162】
上記R26で表される1価の有機基としては、例えば、酸解離性基、アルカリ解離性基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基等が挙げられる。
【0163】
上記構造単位(Eb)としては、例えば、下記式(6b−1)〜(6b−3)で表される構造単位等が挙げられる。
【0164】
【化25】
【0165】
上記式(6b−1)〜(6b−3)中、R24’は、炭素数1〜20の2価の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。R、X、R26及びsは、上記式(6b)と同義である。sが2又は3である場合、複数のX及びR26はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0166】
上記構造単位(Eb)の含有割合としては、[E]フッ素原子含有重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜90モル%が好ましく、0モル%〜80モル%がより好ましく、10モル%〜70モル%がさらに好ましい。構造単位(Eb)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト膜表面は、アルカリ現像において動的接触角の低下度を向上させることができる。
【0167】
[構造単位(Ec)]
[E]フッ素原子含有重合体は、上記構造単位(Ea)及び(Eb)以外にも、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(Ec)」ともいう。)を有してもよい(但し、構造単位(Eb)に該当するものを除く)。[E]フッ素原子含有重合体が構造単位(Ec)を有することで、レジスト膜中の[E]フッ素原子含有重合体の現像液への溶け残りを抑制することができ、その結果、得られるレジストパターンの現像欠陥の発生を抑制することができる。構造単位(Ec)としては、上述した[A]重合体における構造単位(I)等が挙げられる。
【0168】
上記構造単位(Ec)の含有割合としては、[E]フッ素原子含有重合体を構成する全構造単位に対し、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜85モル%がより好ましく、25モル%〜80モル%がさらに好ましい。構造単位(Ec)の含有割合が上記下限未満だと、レジストパターンにおける現像欠陥の発生を十分に抑制できない場合がある。構造単位(Ec)の含有割合が上記上限を超えると、得られるレジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。
【0169】
[他の構造単位]
また、[E]フッ素原子含有重合体は、上記構造単位以外にも、例えば、アルカリ可溶性基を含む構造単位、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含む構造単位、非酸解離性の脂環式基を含む構造単位等の他の構造単位を有していてもよい。上記アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホンアミド基、スルホ基等が挙げられる。ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する構造単位としては、上述した[A]重合体における構造単位(II)等が挙げられる。
【0170】
上記他の構造単位の含有割合としては、[E]フッ素原子含有重合体を構成する全構造単位に対して、通常30モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。上記他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0171】
当該感放射線性樹脂組成物における[E]フッ素原子含有重合体の含有量としては、[A]重合体の100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0.5質量部〜15質量部がより好ましく、1質量部〜10質量部がさらに好ましい。[E]フッ素原子含有重合体の含有量が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0172】
<[F]溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は、通常、[F]溶媒を含有する。[F]溶媒は、少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体及び[C]酸拡散制御剤、並びに所望により含有される[D]他の酸拡散制御体等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0173】
[F]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0174】
アルコール系溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0175】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0176】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン(メチル−n−ペンチルケトン)、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0177】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0178】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル等の酢酸エステル系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒;
ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒;
ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどが挙げられる。
【0179】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0180】
これらの中で、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒、環状ケトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンがさらに好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、[F]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0181】
[その他の任意成分]
当該感放射線性樹脂組成物は、上記[A]〜[F]以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0182】
(偏在化促進剤)
偏在化促進剤は、[E]フッ素原子含有重合体を、より効率的にレジスト膜表面に偏析させる効果を有するものである。当該感放射線性樹脂組成物にこの偏在化促進剤を含有させることで[E]フッ素原子含有重合体の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って断面形状の矩形性、LWR性能、解像性及び焦点深度等の特性を損なうことなく、レジスト膜から液浸液への成分の溶出をさらに抑制したり、高速スキャンにより液浸露光をより高速に行うことが可能になり、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制するレジスト膜表面の疎水性を向上させることができる。このような偏在化促進剤として用いることができるものとしては、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物を挙げることができる。このような化合物としては、具体的には、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等が挙げられる。
【0183】
上記ラクトン化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等が挙げられる。
【0184】
上記カーボネート化合物としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0185】
上記ニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル等が挙げられる。
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン等が挙げられる。
【0186】
偏在化促進剤としては、これらの中で、ラクトン化合物が好ましく、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
【0187】
当該感放射線性樹脂組成物における偏在化促進剤の含有量としては、重合体の総量100質量部に対して、10質量部〜500質量部が好ましく、15質量部〜300質量部がより好ましく、20質量部〜100質量部がさらに好ましい。
【0188】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;市販品としては、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、DIC製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子製)等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物における界面活性剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0189】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0190】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば
1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常5質量部以下である。
【0191】
(増感剤)
増感剤は、[B]酸発生剤等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0192】
増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。当該感放射線性樹脂組成物における増感剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0193】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば、[A]重合体、[B]酸発生体、[C]酸拡散制御剤、必要に応じて含有される任意成分及び[F]溶媒を所定の割合で混合することにより調製できる。当該感放射線性樹脂組成物は、混合後に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。当該感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%〜50質量%であり、0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましい。
【0194】
<レジストパターン形成方法>
本発明のレジストパターンの形成方法は、
当該感放射線性樹脂組成物を用い、レジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)
を有する。
【0195】
当該レジストパターン形成方法によれば、上述した当該感放射線性樹脂組成物を用いているので、広い焦点深度を発揮しつつ、LWRが小さく、断面形状の矩形性に優れかつ高い解像度のレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0196】
[レジスト膜形成工程]
本工程では、当該感放射線性樹脂組成物を用い、レジスト膜を形成する。レジスト膜を形成する基板としては、例えば、シリコンウェハ、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウェハ等が挙げられる。感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の方法が挙げられる。上記塗布により形成された塗膜をプレベーク(PB)することにより塗膜中の溶媒を蒸発除去することが好ましい。PB温度としては、通常60℃〜140℃であり、80℃〜120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0197】
[露光工程]
本工程では、レジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、フォトマスク等(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)を介して露光光を照射して行う。露光光としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、極端紫外線、電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV(13.5nm)、電子線がより好ましく、ArFエキシマレーザー光、電子線がさらに好ましい。
【0198】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[B]酸発生体から発生した酸による[A]重合体の酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光された部分(露光部)と露光されていない部分(未露光部)の現像液に対する溶解性の差を確実に生じさせることができる。PEB温度としては、通常50℃〜180℃であり、80℃〜130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0199】
液浸露光を行う場合は、露光工程の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液に不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、現像工程の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(例えば特開2006−227632号公報参照)、現像工程の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えばWO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報参照)のいずれを用いてもよい。但し、スループットの観点からは、現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0200】
[現像工程]
現像工程では、露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンが形成される。上記現像の方法としては、アルカリ現像でも、有機溶媒現像でもよい。通常、アルカリ現像によりポジ型のレジストパターンが、有機溶媒現像によって、ネガ型のレジストパターンが形成される。上記現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0201】
上記現像液としては、
アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
また、有機溶媒現像の場合、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、又は有機溶媒を含有する溶媒が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、上述の感放射線性樹脂組成物の[F]溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2−ヘプタノンがより好ましい。
【0202】
<化合物>
本発明の化合物は、化合物(1)及び化合物(2)である。当該化合物は、上述の性質を有するので、酸拡散制御剤として好適に用いることができ、これを含有する感放射線性樹脂組成物は、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れる。当該化合物については、上記酸拡散制御剤(I)の項で説明している。
【0203】
<化合物の製造方法>
本発明の化合物の製造方法は、
上記式(i−a)で表される化合物と、上記式(i−b)で表されるアミン化合物とを反応させる工程を有する化合物(1)の製造方法、
及び上記式(ii−a)で表される化合物と、上記式(ii−b)で表されるアミン化合物とを反応させる工程を有する化合物(2)の製造方法である。
当該化合物の製造方法によれば、化合物(I)を簡便に製造することができる。当該化合物の製造方法については、上記酸拡散制御剤(I)の項で説明している。
【実施例】
【0204】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0205】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本、東ソー製)を使用し、以下の条件により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0206】
[低分子量部分含有率]
[A]重合体中の低分子量部分(分子量1,000未満の部分をいう)の含有率(質量%)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、HPLCカラム(Intersil ODS−25μmカラム(4.6mmφ×250mm)、ジーエルサイエンス製)を使用し、以下の条件により測定した。
溶出溶媒:アセトニトリル/0.1質量%リン酸水溶液
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
【0207】
13C−NMR分析]
重合体の各構成単位含有割合を求めるための13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子製)を使用して測定した。
【0208】
<化合物(I)の合成>
化合物(I)は、以下の反応スキームに従い、合成した。
【0209】
【化26】
【0210】
上記スキーム中、
は、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、8−トリシクロデシル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基、ノルボルナンラクトン−イル基、ノルボルナンスルトン−イル基、ノルボルナンラクトン−イルオキシカルボニルメチル基、2−i−プロピル−2−アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、1−i−プロピル−1−シクロペンチル基、1,3−ジオキサ−2,2−ジメチルシクロペンタン−5−イルメチル基、7−(1,3−ジオキサ−2,2−ジメチルシクロペンタン−4−イル)−3,3−ジメチル−2,4,8−トリオキサビシクロ[3,3,0]オクタン−6−イル基又は7−(1,3−ジオキサ−スピロ[アダマンタン−2,2’]シクロペンタン−4−イル)−スピロ[アダマンタン−3,3’]−2,4,8−トリオキサビシクロ[3,3,0]オクタン−6−イル基である。
は、メチル基である。
及びRは、水素原子である。
及びRは、エチル基であるか、又はR及びRが互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に、ピペリジン構造、モルホリン構造若しくはデカヒドロキノリン構造を形成している。
は、エステル基及びそのα位の炭素原子と共にブチロラクトン−トリイル基又はブチロラクトン−テトライル基を形成する基である。
は、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、2−メチル−1−オキサシクロペンタン−3,3−ジイル基又はアダマンタン−2,2−ジイル基である。
11及びR12は、水素原子又はメチル基である。
13及びR14は、互いに結合してそれらが結合する窒素原子と共に、ピペリジン構造を形成している。
【0211】
[実施例1]
100mLのナスフラスコに、シクロヘキシルメタクリレート16.8g(100mmol)、ピペリジン25.6g(300mmol)及びトルエン20gを仕込み、65℃で36時間加熱攪拌し、反応を行った。反応終了後、反応液に水を加え、分液操作によって有機層の水洗浄を7回行なった。次いで、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留去することにより淡黄色油状物を得た。この油状物をカラムクロマトグラフィで精製することにより、下記式(i−1)で表される化合物を、無色油状物として18.4g(収率72.8%)得た。
【0212】
【化27】
【0213】
[実施例2〜21]
実施例1において、シクロヘキシルメタクリレートの代わりに各(メタ)アクリル酸エステル又はαメチレンブチロラクトンを用い、ピペリジンの代わりに各アミン化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(i−2)〜(i−17)で表される化合物及び下記式(ii−1)〜(ii−4)で表される化合物をそれぞれ合成した。
【0214】
【化28】
【0215】
<重合体の合成>
[A]重合体、[E]フッ素原子含有重合体の合成に用いた各単量体を下記に示す。
【0216】
【化29】
【0217】
[[A]重合体の合成]
[合成例1]
上記化合物(M−1)9.01g(50モル%)及び化合物(M−2)10.99g(50モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、さらにラジカル開始剤としてのAIBN0.81g(上記化合物の合計モル数に対して5モル%)を溶解させて単量体溶液を調製した。20gの2−ブタノンを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗を用い3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却した。400gのメタノール中に冷却した重合反応液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を80gずつのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A−1)を合成した(15.6g、収率78%)。重合体(A−1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは1.52であった。13C−NMR分析の結果、(M−1)に由来する構造単位及び(M−2)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ50.2モル%及び49.8モル%であった。この重合体(A−1)における低分子量部分の含有率は0.04質量%であった。
【0218】
[合成例2]
上記化合物(M−4)55.0g及び化合物(M−5)45.0g、AIBN4g及び連鎖移動剤としてのt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合反応終了後、重合反応液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、生成重合体を凝固精製した。次いで、この重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、さらに、メタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末の重合体(A−2)を得た(65.7g、収率76.6%)。重合体(A−2)のMwは10,000であり、Mw/Mnは2.1であった。13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位及び化合物(M−5)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ65.4モル%及び34.6モル%であった。この重合体(A−2)における低分子量部分の含有率は、0.05質量%であった。
【0219】
[[E]フッ素原子含有重合体の合成]
[合成例3]
上記化合物(M−1)79.9g(70モル%)及び化合物(M−3)20.91g(30モル%)を、100gの2−ブタノンに溶解し、ラジカル重合開始剤としてのジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート4.77gを溶解させて単量体溶液を調製した。100gの2−ブタノンを入れた1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗を用い3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却した。重合反応液を2L分液漏斗に移液した後、150gのn−ヘキサンでその重合反応液を均一に希釈し、600gのメタノールを投入して混合した。次いで、30gの蒸留水を投入し、さらに振とうして30分静置した。次いで、下層を回収した後、溶媒置換を行い、重合体(E−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(収率60%)。得られた重合体(E−1)のMwは7,200であり、Mw/Mnは2.00であった。13C−NMR分析の結果、(M−1)に由来する構造単位及び(M−3)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ71.1モル%及び28.9モル%であった。この重合体(E−1)における低分子量部分の含有率は0.07質量%であった。
【0220】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
各感放射線性樹脂組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
【0221】
[[B]酸発生剤]
B−1:トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート(下記式(B−1)で表される化合物)
B−2:トリフェニルスルホニウムノルボルナンスルトン−2−イル−オキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート(下記式(B−2)で表される化合物)
B−3:トリフェニルスルホニウム3−(ピペリジン−1−イルスルホニル)−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン−1−スルホネート(下記式(B−3)で表される化合物)
B−4:トリフェニルスルホニウムアダマンタン−1−イルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート(下記式(B−4)で表される化合物)
【0222】
【化30】
【0223】
[[C]酸拡散制御剤]
上記式(i−1)〜(i−17)で表される化合物、上記式(ii−1)〜(ii−4)で表される化合物、並びに下記式(ci−1)、式(cii−1)、式(ciii−1)、式(civ−1)及び式(cv−1)で表される化合物
【0224】
【化31】
【0225】
[[F]溶媒]
F−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
F−2:シクロヘキサノン
【0226】
[[G]偏在化促進剤]
G−1:γ−ブチロラクトン
【0227】
[実施例22]
[A]重合体としての(A−1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)8.5質量部、[C]酸拡散制御剤としての(i−1)30モル%([B]酸発生剤に対するモル比)、[E]フッ素原子含有重合体としての(E−1)3質量部、[F]溶媒としての(F−1)2,240質量部及び(F−2)960質量部、並びに[G]偏在化促進剤としての(G−1)30質量部を混合し感放射線性樹脂組成物(J−1)を調製した。
【0228】
[実施例23〜57及び比較例1〜5]
表1に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、実施例22と同様にして、感放射線性樹脂組成物(J−2)〜(J−57)及び(CJ−1)〜(CJ−5)を調製した。
【0229】
【表1】
【0230】
<レジストパターンの形成>
[ArF露光の場合]
[アルカリ現像]
12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ARC66、ブルワーサイエンス製)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して各感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR−S610C、NIKON製)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L1S)マスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%TMAH水溶液により現像し、水で洗浄、乾燥し、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0231】
[有機溶媒現像]
上記[アルカリ現像]によるレジストパターンの形成において、現像液としての2.38質量%TMAH水溶液の代わりに酢酸n−ブチルを用い、かつ水での洗浄を行わなかった以外は、上記[アルカリ現像]の場合と同様にして、ネガ型のレジストパターンを形成した。
【0232】
<評価>
上記アルカリ現像の場合及び有機溶媒現像の場合それぞれにおいて、形成した各レジストパターンの測定により、各感放射線性樹脂組成物の評価を行った。それぞれの場合において、上記40nm1L1Sマスクパターンを介した露光により、40nm1L1Sパターンを形成する露光量を最適露光量(Eop)とした。なお、この方法で形成したレジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(S−9380、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。下記評価において実施例と比較する「比較例」としては、実施例22〜38については比較例1、実施例39〜42については比較例2、実施例43〜47については比較例3、実施例48〜52については比較例4、実施例53〜57については比較例5とした。評価結果を表2に示す。表2中の「−」は、評価の基準であることを示す。
【0233】
[LWR性能]
上記Eopにおいて形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能(nm)とした。LWR性能は、その値が小さいほど良好であることを示す。LWR性能は、比較例と比べて、10%以上のLWR性能向上(LWR性能の値が90%以下になることをいう)が見られたものを「A」と、5%以上10%未満のLWR性能向上が見られたものを「B」と、5%未満のLWR性能向上であったものを「C」と評価した。
【0234】
[解像性]
上記Eopにおいて解像される最小のレジストパターンの寸法を解像性(nm)とした。解像性は、その値が小さいほど良好であることを示す。解像性は、比較例と比べて、10%以上の解像性向上(解像性の値が90%以下になることをいう)が見られたものを「A」と、5%以上10%未満のLWR性能向上が見られたものを「B」と、5%未満の解像性向上であったものを「C」と評価した。
【0235】
[断面形状の矩形性]
上記Eopにおいて解像されるレジストパターンの断面形状を観察し、レジストパターンの高さ方向の中間での線幅Lbと、レジスト膜の上部での線幅Laを測定した。断面形状の矩形性は、0.9≦(La/Lb)≦1.1である場合を「A」(良好)と、(La/Lb)<0.9又は1.1<(La/Lb)である場合を「B」(不良)と評価した。
【0236】
[焦点深度]
上記Eopにおいて解像されるレジストパターンにおいて、深さ方向にフォーカスを変化させた際の寸法を測定し、ブリッジや残渣が無いままパターン寸法が基準の90%〜110%に入る深さ方向の余裕度を焦点深度とした。焦点深度(nm)は、その値が大きいほど良好であることを示す。焦点深度は、比較例と比べて、10%以上の焦点深度向上(焦点深度の値が110%以上になることをいう)が見られたものを「A」と5%以上10%未満の焦点深度向上が見られたものを「B」と、5%未満の焦点深度向上であったものを「C」と評価した。
【0237】
【表2】
【0238】
表2の結果から明らかなように、ArF露光の場合、実施例の感放射線性樹脂組成物は、比較例の感放射線性樹脂組成物に比べて、アルカリ現像及び有機溶媒現像の場合とも、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性及び焦点深度に優れるといえる。
【0239】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
[電子線照射の場合]
[実施例58]
[A]重合体としての(A−2)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)20質量部、[C]酸拡散制御剤としての(i−1)30モル%([B]酸発生剤に対するモル比)、並びに[F]溶媒としての(F−1)4,280質量部及び(F−2)1,830質量部を混合して感放射線性樹脂組成物(J−37)を調製した。
【0240】
[実施例59〜93及び比較例6〜10]
下記表3に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は実施例58と同様にして感放射線性樹脂組成物(J−38)〜(J−72)及び(CJ−6)〜(CJ−10)を調製した。
【0241】
<レジストパターンの形成>
8インチのシリコンウェハ表面にスピンコーター(CLEAN TRACK ACT8、東京エレクトロン製)を使用して、下記表3に記載の各感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、簡易型の電子線描画装置(HL800D、日立製作所製、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm)を用いて電子線を照射した。照射後、130℃で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%のTMAH水溶液を用いて23℃で30秒間現像し、水で洗浄、乾燥し、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0242】
<評価>
形成した各レジストパターンについて、上記[ArF露光]における評価のうち、LWR性能、解像性及び断面形状の矩形性について、上記同様の方法で測定を行い、感放射線性樹脂組成物の評価を行った。実施例と比較する「比較例」としては、実施例58〜74については比較例6、実施例75〜78については比較例7、実施例79〜83については比較例8、実施例84〜88については比較例9、実施例89〜93については比較例10とした。評価結果を表3に合わせて示す。表3中の「−」は、評価の基準であることを示す。
【0243】
【表3】
【0244】
表3の結果から明らかなように、電子線照射の場合、実施例の感放射線性樹脂組成物は、比較例の感放射線性樹脂組成物に比べて、LWR性能、解像性及び断面形状の矩形性に優れるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0245】
本発明の酸拡散制御剤、これを含有する感放射線性樹脂組成物及びこの感放射線性樹脂組成物を用いるレジストパターン形成方法によれば、広い焦点深度を発揮しつつ、LWRが小さく、断面形状の矩形性に優れ、かつ高い解像度のレジストパターンを形成することができる。また本発明の化合物は、当該酸拡散制御剤として好適に用いることができる。従って、これらは、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造におけるパターン形成に好適に用いることができる。