(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部にタイヤ赤道の両側でタイヤ幅方向に延びてトレッド端に開口する複数本のラグ主溝が形成され、該ラグ主溝がタイヤ赤道の両側でタイヤ幅方向に対して対称的に傾斜し、かつ該ラグ主溝がタイヤ幅方向外側に向かって回転方向とは反対側へ傾斜し、前記ラグ主溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度αがタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置において15°≦α≦45°の範囲に設定され、前記ラグ主溝のトレッド端での幅W1が該ラグ主溝のトレッド端での相互間隔W2に対して0.7≦W1/W2≦1.5の関係を満足し、前記ラグ主溝の位置がタイヤ赤道の両側でタイヤ周方向にずれており、該ラグ主溝の位置ずれ量Sが該ラグ主溝のタイヤ周方向のピッチPに対して0.3≦S/P≦0.5の関係を満足し、
前記トレッド部にタイヤ周方向に隣り合うラグ主溝を互いに連結する複数本のショルダー傾斜溝が形成され、該ショルダー傾斜溝がそれに対応するラグ主溝とはタイヤ幅方向に対して逆方向に傾斜し、
前記トレッド部にタイヤ赤道の両側に位置するラグ主溝を互いに連結する複数本のセンター傾斜溝が形成され、前記ラグ主溝の各々が2本のセンター傾斜溝を介して他の2本のラグ主溝に連通し、前記センター傾斜溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度βが10°≦β≦40°の範囲に設定され、該センター傾斜溝の長手方向中央位置での幅W3が前記ラグ主溝のトレッド端での幅W1に対して0.3≦W3/W1≦0.8の関係を満足し、
前記トレッド部には前記ショルダー傾斜溝よりもタイヤ幅方向外側に位置する複数のショルダーブロックと前記ショルダー傾斜溝よりもタイヤ幅方向内側に位置する複数のセンターブロックが区画され、前記センターブロックの各々において2本のセンター傾斜溝で挟まれた角部に面取り部が形成され、該面取り部の踏面での稜線と前記角部の先端とのタイヤ幅方向の距離X1がタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置における前記ラグ主溝の溝深さFDに対して0.3≦X1/FDの関係を満足し、
前記トレッド部の溝面積比が0.4以上0.7以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記面取り部の踏面での稜線の少なくとも一部がタイヤ赤道よりも前記角部の先端側に突き出しており、前記稜線のタイヤ赤道からの最大突き出し量X2がタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置における前記ラグ主溝の溝深さFDに対して0<X2/FD≦1.0の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記面取り部の踏面での稜線の両端点がタイヤ赤道よりも前記角部の先端側に突き出しており、一方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X3及び他方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X4が0≦X4/X3≦1.0の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
前記面取り部の踏面での稜線の両端点のうちの一方の端点だけがタイヤ赤道よりも前記角部の先端側に突き出しており、一方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X3及び他方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X4が−1.0<X4/X3≦0の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
前記面取り部の踏面での稜線が前記角部の先端側に向かって凸となるように湾曲しており、その湾曲による膨出量X5がタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置における前記ラグ主溝の溝深さFDに対して0.05≦X5/FD≦1.0の関係を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記面取り部の深さDがタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置における前記ラグ主溝の溝深さFDに対して0.3≦D/FD≦0.7の関係を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記センター傾斜溝の長手方向中央位置での溝深さD1がタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置における前記ラグ主溝の溝深さFDに対して0.3≦D1/FD≦0.7の関係を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記ショルダー傾斜溝の長手方向中央位置での溝深さD2がタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置における前記ラグ主溝の溝深さFDに対して0.3≦D2/FD≦0.7の関係を満足することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記センター傾斜溝の底部に両端が前記ラグ主溝に開口する細溝が形成され、該細溝の幅W4が前記センター傾斜溝の長手方向中央位置での幅W3に対して0.05≦W4/W3≦0.5の関係を満足することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記トレッド部の踏面を基準とする前記細溝の溝深さD3がタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置における前記ラグ主溝の溝深さFDに対して0.5≦D3/FD≦1.0の関係を満足することを特徴とする請求項10に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、トラクション性能と耐偏摩耗性とを高い次元で両立することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部にタイヤ赤道の両側でタイヤ幅方向に延びてトレッド端に開口する複数本のラグ主溝が形成され、該ラグ主溝がタイヤ赤道の両側でタイヤ幅方向に対して対称的に傾斜し、
かつ該ラグ主溝がタイヤ幅方向外側に向かって回転方向とは反対側へ傾斜し、前記ラグ主溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度αがタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置において15°≦α≦45°の範囲に設定され、前記ラグ主溝のトレッド端での幅W1が該ラグ主溝のトレッド端での相互間隔W2に対して0.7≦W1/W2≦1.5の関係を満足し、前記ラグ主溝の位置がタイヤ赤道の両側でタイヤ周方向にずれており、該ラグ主溝の位置ずれ量Sが該ラグ主溝のタイヤ周方向のピッチPに対して0.3≦S/P≦0.5の関係を満足し、
前記トレッド部にタイヤ周方向に隣り合うラグ主溝を互いに連結する複数本のショルダー傾斜溝が形成され、該ショルダー傾斜溝がそれに対応するラグ主溝とは
タイヤ幅方向に対して逆方向に傾斜し、
前記トレッド部にタイヤ赤道の両側に位置するラグ主溝を互いに連結する複数本のセンター傾斜溝が形成され、前記ラグ主溝の各々が2本のセンター傾斜溝を介して他の2本のラグ主溝に連通し、前記センター傾斜溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度βが10°≦β≦40°の範囲に設定され、該センター傾斜溝の長手方向中央位置での幅W3が前記ラグ主溝のトレッド端での幅W1に対して0.3≦W3/W1≦0.8の関係を満足し、
前記トレッド部には前記ショルダー傾斜溝よりもタイヤ幅方向外側に位置する複数のショルダーブロックと前記ショルダー傾斜溝よりもタイヤ幅方向内側に位置する複数のセンターブロックが区画され、前記センターブロックの各々において2本のセンター傾斜溝で挟まれた角部に面取り部が形成され、該面取り部の踏面での稜線と前記角部の先端とのタイヤ幅方向の距離X1がタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置における前記ラグ主溝の溝深さFDに対して0.3≦X1/FDの関係を満足し、
前記トレッド部の溝面積比が0.4以上0.7以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、トレッド部にタイヤ幅方向に延びてトレッド端に開口する複数本のラグ主溝とタイヤ周方向に隣り合うラグ主溝を互いに連結する複数本のショルダー傾斜溝とタイヤ赤道の両側に位置するラグ主溝を互いに連結する複数本のセンター傾斜溝を形成し、トレッド部に複数のショルダーブロックと複数のセンターブロックを区画し、センターブロックの角部に面取り部を形成すると共に、ラグ主溝の傾斜角度α、ラグ主溝のトレッド端での幅W1とラグ主溝のトレッド端での相互間隔W2との比W1/W2、ラグ主溝の位置ずれ量Sとラグ主溝のピッチPとの比S/P、センター傾斜溝の傾斜角度β、センター傾斜溝の幅W3とラグ主溝のトレッド端での幅W1との比W3/W1、面取り部の稜線と角部の先端とのタイヤ幅方向の距離X1とラグ主溝の溝深さFDとの比X1/FD、トレッド部の溝面積比を規定することにより、偏摩耗の発生を効果的に抑制しながらトラクション性能を最大限に発揮することが可能になる。その結果、トラクション性能と耐偏摩耗性とを従来よりも高い次元で両立することができる。
【0008】
本発明において、面取り部の踏面での稜線の少なくとも一部がタイヤ赤道よりも角部の先端側に突き出しており、稜線のタイヤ赤道からの最大突き出し量X2がタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝の溝深さFDに対して0<X2/FD≦1.0の関係を満足することが好ましい。このように面取り部の踏面での稜線の少なくとも一部がタイヤ赤道よりも角部の先端側に突き出した構成とすることにより、タイヤ赤道の両側のセンターブロック同士がタイヤ幅方向に重複するためトラクション性能を損なうことなくセンターブロックの偏摩耗を抑制することができる。
【0009】
面取り部の踏面での稜線の両端点はタイヤ赤道よりも角部の先端側に突き出しており、一方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X3及び他方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X4が0≦X4/X3≦1.0の関係を満足することが好ましい。この場合、面取り部の踏面での稜線の両端点においてセンターブロックが適度な鈍角を形成するため、センターブロックの偏摩耗を効果的に抑制することができる。
【0010】
或いは、面取り部の踏面での稜線の両端点のうちの一方の端点だけがタイヤ赤道よりも角部の先端側に突き出しており、一方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X3及び他方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X4が−1.0<X4/X3≦0の関係を満足することが好ましい。ここで、一方の端点がタイヤ赤道よりも角部の先端側に位置するため突き出し量X3は正の値となるが、他方の端点がタイヤ赤道よりも角部の先端とは反対側に位置する場合、その突き出し量X4は負の値となる。このような関係を規定した場合、面取り部の稜線が長くなるためトラクション性能を改善することができ、タイヤ赤道の両側のセンターブロック同士のタイヤ幅方向の重複を維持することができる。
【0011】
面取り部の踏面での稜線は角部の先端側に向かって凸となるように湾曲しており、その湾曲による膨出量X5がタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝の溝深さFDに対して0.05≦X5/FD≦1.0の関係を満足することが好ましい。これにより、センターブロックの偏摩耗を効果的に抑制することができる。
【0012】
面取り部の深さDはタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝の溝深さFDに対して0.3≦D/FD≦0.7の関係を満足することが好ましい。このように面取り部をラグ主溝よりも浅くすることにより、少なくとも摩耗中期までのセンターブロックの剛性を損なわずに耐偏摩耗性を良好に確保することができる。
【0013】
センター傾斜溝の長手方向中央位置での溝深さD1はタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝の溝深さFDに対して0.3≦D1/FD≦0.7の関係を満足することが好ましい。このようにセンター傾斜溝をラグ主溝よりも浅くすることにより、少なくとも摩耗中期までのトラクション性能を十分に確保しながら、センターブロックの剛性を損なわずに耐偏摩耗性を良好に確保することができる。
【0014】
ショルダー傾斜溝のラグ主溝に対する傾斜角度γは80°≦γ≦100°の範囲に設定され、ショルダー傾斜溝の
長手方向及び幅方向の中心位置はタイヤ赤道からトレッド幅の15%〜35%の範囲に配置され、ショルダー傾斜溝の面積A1はショルダー傾斜溝の外側に区画されたショルダーブロックの面積A2に対して0.2≦A1/A2≦0.6の関係を満足することが好ましい。ショルダー傾斜溝がラグ主溝に対して略直交することで、ショルダーブロック及びセンターブロックの鋭角化を回避し、偏摩耗を効果的に抑制することができる。また、ショルダー傾斜溝の面積A1を相対的に大きくし、その位置を適正化することにより、トラクション性能を効果的に改善することができる。
【0015】
ショルダー傾斜溝の長手方向中央位置での溝深さD2はタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝の溝深さFDに対して0.3≦D2/FD≦0.7の関係を満足することが好ましい。このようにショルダー傾斜溝をラグ主溝よりも浅くすることにより、少なくとも摩耗中期までのトラクション性能を十分に確保しながら、ショルダーブロック及びセンターブロックの剛性を高めて耐偏摩耗性を良好に確保することができる。
【0016】
センター傾斜溝の底部には両端がラグ主溝に開口する細溝が形成され、該細溝の幅W4がセンター傾斜溝の長手方向中央位置での幅W3に対して0.05≦W4/W3≦0.5の関係を満足することが好ましい。センター傾斜溝の底部に細溝を設けることにより、摩耗中期以降の溝面積を確保し、トラクション性能を良好に維持することができる。
【0017】
トレッド部の踏面を基準とする細溝の溝深さD3はタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝の溝深さFDに対して0.5≦D3/FD≦1.0の関係を満足することが好ましい。このように細溝の溝深さD3を規定することにより、摩耗中期以降の溝面積を確保し、トラクション性能を良好に維持することができる。
【0018】
本発明において、トレッド幅とは、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに測定されるタイヤ軸方向の接地幅を意味する。トレッド端とは、上記接地幅にて特定される接地領域のタイヤ軸方向の端部(接地端)を意味する。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。
【0019】
本発明における各寸法は、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で測定される。また、トレッド部の溝面積比とは、トレッド部の接地領域の面積に対する該接地領域内の溝面積の比である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜
図6は本発明の実施形態からなるスクレーパー車両用の空気入りタイヤを示すものである。
図1ではタイヤ赤道CLよりもタイヤ幅方向の一方側の構造だけが描写されているが、この空気入りタイヤは他方側にも対称的な構造を備えている。
図2においては、トレッド構造の理解を容易にするために、タイヤ走行時に路面と接触する部位を斜線部として描写している。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。トレッド部1はスクェアショルダーを有し、そのショルダーエッジが接地端となっている。
【0023】
一対のビード部3,3間には少なくとも1層のカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。カーカス層4の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用されるが、ポリエステル等の有機繊維コードを使用することも可能である。
【0024】
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層6a,6b,6c,6dが埋設されている。これらベルト層6a〜6dはタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ任意の層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層6a〜6dにおいて、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層6a〜6dの補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。
【0025】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0026】
図2に示すように、トレッド部1には、タイヤ赤道CLの両側でタイヤ幅方向に延びる複数本のラグ主溝11がタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。これらラグ主溝11の各々は、タイヤ幅方向内側の端部がタイヤ赤道CLから離間した位置で終端する一方で、タイヤ幅方向外側の端部がトレッド端に開口している。ラグ主溝11はタイヤ赤道CLの両側でタイヤ幅方向に対して対称的に傾斜している。つまり、ラグ主溝11はタイヤ幅方向外側に向かってタイヤ周方向の一方側(回転方向Rとは反対側)へ傾斜している。ラグ主溝11のタイヤ幅方向に対する傾斜角度αはタイヤ赤道CLからトレッド幅TWの25%の位置において15°≦α≦45°の範囲に設定されている。傾斜角度αはラグ主溝11の中心線の傾斜角度である。更に、ラグ主溝11のトレッド端での幅W1はラグ主溝11のトレッド端での相互間隔W2に対して0.7≦W1/W2≦1.5の関係を満足している。
【0027】
また、ラグ主溝11の位置はタイヤ赤道CLの両側でタイヤ周方向にずれており、ラグ主溝11の位置ずれ量Sが該ラグ主溝11のタイヤ周方向のピッチPに対して0.3≦S/P≦0.5の関係を満足している。
【0028】
トレッド部1には、タイヤ周方向に隣り合うラグ主溝11,11を互いに連結する複数本のショルダー傾斜溝12が形成されている。ショルダー傾斜溝12はそれに対応するラグ主溝11とは逆方向に傾斜している。つまり、ショルダー傾斜溝12はそれ自体が連結するラグ主溝11とはタイヤ幅方向に対して逆方向に傾斜している。これにより、トレッド部1のショルダー領域にはラグ主溝11とショルダー傾斜溝12により複数のショルダーブロック22が区画されている。
【0029】
更に、トレッド部1には、タイヤ赤道CLの両側に位置するラグ主溝11を互いに連結する複数本のセンター傾斜溝13が形成されている。これらセンター傾斜溝13はタイヤ幅方向に対する傾斜方向がタイヤ周方向に沿って交互に反転している。そして、1本のラグ主溝11のタイヤ幅方向内側の端部には2本のセンター傾斜溝13,13が分岐するように連結され、これら2本のセンター傾斜溝13,13がタイヤ赤道CLの反対側に位置する別々のラグ主溝11に連通している。センター傾斜溝13のタイヤ幅方向に対する傾斜角度βは10°≦β≦40°の範囲に設定されている。傾斜角度βはセンター傾斜溝13の中心線の傾斜角度である。また、センター傾斜溝13の長手方向中央位置での幅W3はラグ主溝11のトレッド端での幅W1に対して0.3≦W3/W1≦0.8の関係を満足している。これにより、トレッド部1のセンター領域にはラグ主溝11とショルダー傾斜溝12とセンター傾斜溝13により複数のセンターブロック23が区画されている。
【0030】
センターブロック23の各々において、2本のセンター傾斜溝13,13で挟まれた角部には面取り部24が形成されている。
図4及び
図5に示すように、面取り部24はセンターブロック23の角部を斜めに切り落としたような構造を有している。面取り部24は平面をなしていても良く、或いは、タイヤ径方向外側に向かって凸となる曲面(例えば、
図6参照)をなしていても良い。面取り部24の踏面での稜線24aと角部の先端23aとのタイヤ幅方向の距離X1はタイヤ赤道CLからトレッド幅TWの25%の位置におけるラグ主溝11の溝深さFDに対して0.3≦X1/FDの関係を満足している。なお、距離X1は面取り部24の稜線24aにおいて角部の先端23a側に最も近い部分から角部の先端23aまでのタイヤ幅方向の距離である。
【0031】
上記空気入りタイヤは、トレッド部1にラグ主溝11、ショルダー傾斜溝12及びセンター傾斜溝13を備えているが、その結果として、トレッド部1の溝面積比が0.4以上0.7以下の範囲に設定されている。つまり、トレッド幅TWを有する接地領域の面積に対する溝面積(斜線部以外の領域の面積)の比が上記範囲に設定されている。
【0032】
上記空気入りタイヤでは、トレッド部1にタイヤ幅方向に延びてトレッド端に開口する複数本のラグ主溝11とタイヤ周方向に隣り合うラグ主溝11を互いに連結する複数本のショルダー傾斜溝12とタイヤ赤道CLの両側に位置するラグ主溝11を互いに連結する複数本のセンター傾斜溝13を形成し、トレッド部1に複数のショルダーブロック22と複数のセンターブロック23を区画し、センターブロック23の角部に面取り部24を形成すると共に、ラグ主溝11の傾斜角度α、ラグ主溝11のトレッド端での幅W1とラグ主溝11のトレッド端での相互間隔W2との比W1/W2、ラグ主溝11の位置ずれ量Sとラグ主溝11のピッチPとの比S/P、センター傾斜溝13の傾斜角度β、センター傾斜溝13の幅W3とラグ主溝11のトレッド端での幅W1との比W3/W1、面取り部24の踏面での稜線24aとセンターブロック23の角部の先端23aとのタイヤ幅方向の距離X1とラグ主溝11の溝深さFDとの比X1/FD、トレッド部1の溝面積比を規定することにより、偏摩耗の発生を効果的に抑制しながらトラクション性能を最大限に発揮することが可能になる。
【0033】
より具体的には、ラグ主溝11をタイヤ赤道CLの両側で対称的に傾斜するように配置し、ラグ主溝11のタイヤ幅方向に対する傾斜角度αをタイヤ赤道CLからトレッド幅TWの25%の位置において15°≦α≦45°の範囲、より好ましくは、25°≦α≦35°の範囲に設定することにより、トレッド部1のセンター領域からタイヤ幅方向外側に向かってラグ主溝11内の土砂を効果的に排出し、良好なトラクション性能を発揮することができる。ラグ主溝11の傾斜角度αが小さ過ぎるとラグ主溝11内に土砂が詰まり易くなり、逆に大き過ぎるとトラクション性能が低下する。
【0034】
また、ラグ主溝11のトレッド端での幅W1がラグ主溝11のトレッド端での相互間隔W2に対して0.7≦W1/W2≦1.5の関係、より好ましくは、0.9≦W1/W2≦1.2の関係を満足することにより、トラクション性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。ラグ主溝11のトレッド端での幅W1を相対的に大きくすることで、ラグ主溝11内に取り込む土砂の容量が増加してトラクション性能の改善に寄与するが、これが大き過ぎるとラグ主溝11により区画されるブロック(ショルダーブロック22及びセンターブロック23)の幅が狭くなって剛性が低下するため、偏摩耗が発生し易くなる。
【0035】
また、ラグ主溝11の位置をタイヤ赤道CLの両側でタイヤ周方向にずらし、ラグ主溝11の位置ずれ量Sが該ラグ主溝11のタイヤ周方向のピッチPに対して0.3≦S/P≦0.5の関係を満足することにより、タイヤ回転時における瞬間的な接地圧の上昇とブロック端部の急激な変形を抑制し、偏摩耗を効果的に抑制することができる。ラグ主溝11の位置ずれ量Sとラグ主溝11のタイヤ周方向のピッチPとの比S/Pが上記範囲から外れると偏摩耗の抑制効果が低下する。
【0036】
更に、トレッド部1に、タイヤ周方向に隣り合うラグ主溝11,11を互いに連結するショルダー傾斜溝12を追加することにより、ラグ主溝11により区画されるブロックの幅を確保しつつ溝面積を確保することができる。
【0037】
また、接地圧が高くなるトレッド部1のセンター領域に、タイヤ赤道CLの両側に位置するラグ主溝11を互いに連結する複数本のセンター傾斜溝13を配置し、ラグ主溝11の各々を2本のセンター傾斜溝13を介して他の2本のラグ主溝11に連通するようにし、センター傾斜溝13のタイヤ幅方向に対する傾斜角度βを10°≦β≦40°の範囲に設定することにより、ラグ主溝11を介してタイヤ幅方向外側に土砂を排出し、トラクション性能を効果的に改善することができる。ここで、センター傾斜溝13のタイヤ幅方向に対する傾斜角度βが小さ過ぎるとセンターブロック23の角部の剛性が低下して耐偏摩耗性が低下し、逆に大き過ぎるとトラクション性能の改善効果が不十分になる。
【0038】
そして、センター傾斜溝13の長手方向中央位置での幅W3がラグ主溝11のトレッド端での幅W1に対して0.3≦W3/W1≦0.8の関係を満足することにより、トラクション性能と耐偏摩耗性を良好に維持することができる。つまり、トレッド部1のセンター領域では接地圧が高くてブロック変形が大きくなるが、トレッド部1のショルダー領域にあるラグ主溝11よりもセンター傾斜溝13を狭くすることにより、耐偏摩耗性を損なわずにトラクション性能を改善することができる。ここで、センター傾斜溝13の幅W3とラグ主溝11の幅W1との比W3/W1が小さ過ぎるとトラクション性能の改善効果が低下し、逆に大き過ぎると耐偏摩耗性の改善効果が低下する。
【0039】
更に、上述のようなセンター傾斜溝13を設けた場合、各センターブロック23の2本のセンター傾斜溝13で挟まれた角部が鋭角となり、この部分に偏摩耗が発生し易くなるが、2本のセンター傾斜溝13で挟まれた角部に面取り部24を形成することにより、トラクション性能を損なうことなく、センターブロック23の偏摩耗を抑制することができる。
【0040】
特に、面取り部24の踏面での稜線24aとセンターブロック23の角部の先端23aとのタイヤ幅方向の距離X1がタイヤ赤道CLからトレッド幅TWの25%の位置におけるラグ主溝11の溝深さFDに対して0.3≦X1/FDの関係、より好ましくは、0.3≦X1/FD≦3.0の関係を満足することにより、トラクション性能と耐偏摩耗性を良好に維持することができる。ここで、上記距離X1とラグ主溝11の溝深さFDとの比X1/FDが小さ過ぎると耐偏摩耗性の改善効果が低下し、逆に大き過ぎるとトラクション性能の改善効果が低下する。
【0041】
しかも、上記空気入りタイヤでは、トレッド部1の溝面積比が0.4以上0.7以下の範囲に設定されているので、トラクション性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。トレッド部1の溝面積比が小さ過ぎるとトラクション性能が低下し、逆に大き過ぎると耐偏摩耗性が低下する。
【0042】
上記空気入りタイヤにおいて、
図4に示すように、面取り部24の踏面での稜線24aの少なくとも一部がタイヤ赤道CLよりも角部の先端23a側に突き出しており、稜線24aのタイヤ赤道CLからの最大突き出し量X2がタイヤ赤道CLからトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝11の溝深さFDに対して0<X2/FD≦1.0の関係、より好ましくは、0.1≦X2/FD≦0.7の関係を満足することが好ましい。このように面取り部24の踏面での稜線24aの少なくとも一部がタイヤ赤道CLよりも角部の先端23a側に突き出した構成とすることにより、タイヤ赤道CLの両側のセンターブロック23,23同士が最大突き出し量X2の2倍の範囲にわたってタイヤ幅方向に重複するため、トラクション性能を損なうことなくセンターブロック23の偏摩耗を抑制することができる。ここで、稜線24aの最大突き出し量X2とラグ主溝11の溝深さFDとの比X2/FDが小さ過ぎるとトラクション性能の改善効果が低下し、逆に大き過ぎると面取り部24を形成することが困難になる。
【0043】
図7はセンターブロック23の変形例を示すものである。上述した
図4の例では、面取り部24の踏面での稜線24aがタイヤ赤道CLと平行に延在しているのに対して、
図7の例では、面取り部24の踏面での稜線24aがタイヤ赤道CLに対して傾斜している。面取り部24の踏面での稜線24aの両端点はタイヤ赤道CLよりも角部の先端23a側に突き出しており、一方の端点のタイヤ赤道CLからの突き出し量X3及び他方の端点のタイヤ赤道CLからの突き出し量X4が0≦X4/X3≦1.0の関係を満足している。
図7において、突き出し量X3は最大突き出し量X2と等価である。また、X3=X4であっても良い。この場合、面取り部24の踏面での稜線24aの両端点においてセンターブロック23が適度な鈍角を形成するため、センターブロック23の偏摩耗を効果的に抑制することができる。
【0044】
図8はセンターブロック23の他の変形例を示すものである。
図8において、面取り部24の踏面での稜線24aの両端点のうちの一方の端点だけがタイヤ赤道CLよりも角部の先端23a側に突き出しており、一方の端点のタイヤ赤道CLからの突き出し量X3及び他方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X4が−1.0<X4/X3≦0の関係を満足している。
図8において、突き出し量X3は最大突き出し量X2と等価である。ここで、稜線24aの端点がタイヤ赤道CLよりも角部の先端23a側に位置する場合は突き出し量が正の値となり、稜線24aの端点がタイヤ赤道CLよりも角部の先端23aとは反対側に位置する場合は突き出し量が負の値となるものとする。このように面取り部24の踏面での稜線24aをタイヤ赤道CLに対して大きく傾斜させた場合、面取り部24の稜線24aが長くなるためトラクション性能を改善することができ、しかも、突き出し量X4の絶対値を突き出し量X3よりも小さくすることでタイヤ赤道CLの両側のセンターブロック23,23同士のタイヤ幅方向の重複を維持することができる。
【0045】
図9はセンターブロック23の更に他の変形例を示すものである。
図9において、面取り部24の踏面での稜線24aは角部の先端23a側に向かって凸となるように湾曲しており、その湾曲による膨出量X5がタイヤ赤道CLからトレッド幅TWの25%の位置におけるラグ主溝11の溝深さFDに対して0.05≦X5/FD≦1.0の関係を満足している。湾曲による膨出量X5とは、稜線24aの両端点を結ぶ直線に対して稜線24aが膨出した量である。このように面取り部24の踏面での稜線24aを湾曲させることにより、接地圧が高いセンターブロック23の偏摩耗を効果的に抑制することができる。ここで、面取り部24の稜線24aの膨出量X5とラグ主溝11の溝深さFDとの比X5/FDが小さ過ぎると耐偏摩耗性の改善効果が低下し、逆に大き過ぎると面取り部24を形成することが困難になる。
【0046】
上述した空気入りタイヤにおいて、面取り部24の深さDはタイヤ赤道CLからトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝11の溝深さFDに対して0.3≦D/FD≦0.7の関係を満足することが好ましい。このように面取り部24をラグ主溝11よりも浅くすることにより、少なくとも摩耗中期までのセンターブロック23の剛性を損なわずに耐偏摩耗性を良好に確保することができる。ここで、面取り部24の深さDとラグ主溝11の溝深さFDとの比D/FDが小さ過ぎると耐偏摩耗性の改善効果が低下し、逆に大き過ぎるとトラクション性能の改善効果が低下する。
【0047】
上記空気入りタイヤにおいて、
図3に示すように、センター傾斜溝13の長手方向中央位置での溝深さD1はタイヤ赤道CLからトレッド幅TWの25%の位置におけるラグ主溝11の溝深さFDに対して0.3≦D1/FD≦0.7の関係を満足していると良い。なお、本実施形態ではセンター傾斜溝13が長手方向の全長にわたって一定の溝深さD1を有している。このようにセンター傾斜溝13をラグ主溝11よりも浅くすることにより、少なくとも摩耗中期までのトラクション性能を十分に確保しながら、センターブロック23の剛性を損なわずに耐偏摩耗性を良好に確保することができる。そのため、例えば、この空気入りタイヤを新品時から摩耗中期まで駆動軸に装着し、タイヤローテーションの際には従動軸に装着するようにすれば、トラクション性能と耐偏摩耗性の両立効果を最大限に享受することが可能になる。ここで、センター傾斜溝13の溝深さD1とラグ主溝11の溝深さFDとの比D1/FDが小さ過ぎるとトラクション性能の改善効果が低下し、逆に大き過ぎると耐偏摩耗性の改善効果が低下する。
【0048】
上記空気入りタイヤにおいて、
図2に示すように、ショルダー傾斜溝12とラグ主溝11との連結部において、ショルダー傾斜溝12のラグ主溝11に対する傾斜角度γは80°≦γ≦100°の範囲に設定することが好ましい。傾斜角度γはショルダー傾斜溝12の中心線の傾斜角度である。このようにショルダー傾斜溝12のラグ主溝11に対する傾斜角度γを80°≦γ≦100°の範囲で概ね直角とすることにより、ラグ主溝11により区画されるブロックの鋭角化を回避し、偏摩耗の発生を抑制することができる。ここで、ショルダー傾斜溝12の傾斜角度γが上記範囲から外れるとブロックの鋭角化に起因して偏摩耗が発生し易くなる。傾斜角度γはショルダー傾斜溝12の中心線の傾斜角度である。
【0049】
また、タイヤ赤道CLからショルダー傾斜溝12の長手方向及び幅方向の中心位置までの距離Xはトレッド幅TWの15%〜35%の範囲に配置することが好ましい。このようにタイヤ赤道CLからショルダー傾斜溝12の中心位置までの距離Xをトレッド幅TWの15%〜35%の範囲に配置することにより、ラグ主溝11により区画されるブロックの剛性を確保し、偏摩耗の発生を抑制することができる。つまり、タイヤ赤道CLからショルダー傾斜溝12の中心位置までの距離Xが上記範囲から外れるとショルダーブロック22とセンターブロック23の一方が小さくなって偏摩耗を生じ易くなる。
【0050】
更に、各ショルダー傾斜溝12の面積A1(平面視での面積)が該ショルダー傾斜溝12の外側に区画された各ショルダーブロック22の面積A2(平面視での面積)に対して0.2≦A1/A2≦0.6の関係、より好ましくは、0.35≦A1/A2≦0.55を満足することが好ましい。各ショルダー傾斜溝12の面積A1が各ショルダーブロック22の面積A2に対して上記関係を満足することにより、トラクション性能と耐偏摩耗性とを両立することができる。ショルダー傾斜溝12の面積A1を大きくすることでトラクション性能の改善に寄与するが、これが大き過ぎるとショルダーブロック22の面積A2が小さくなって剛性が低下するため、偏摩耗が発生し易くなる。
【0051】
上記空気入りタイヤにおいて、
図3に示すように、ショルダー傾斜溝12の長手方向中央位置での溝深さD2はタイヤ赤道CLからトレッド幅TWの25%の位置におけるラグ主溝11の溝深さFDに対して0.3≦D2/FD≦0.7の関係を満足していると良い。なお、本実施形態ではショルダー傾斜溝12が長手方向の全長にわたって一定の溝深さD2を有している。このようにショルダー傾斜溝12をラグ主溝11よりも浅くすることにより、少なくとも摩耗中期までのトラクション性能を十分に確保しながら、ショルダーブロック22及びセンターブロック23の剛性を高めて耐偏摩耗性を良好に確保することができる。そのため、例えば、この空気入りタイヤを新品時から摩耗中期まで駆動軸に装着し、タイヤローテーションの際には従動軸に装着するようにすれば、トラクション性能と耐偏摩耗性との両立効果を最大限に享受することが可能になる。ここで、ショルダー傾斜溝12の溝深さD2とラグ主溝11の溝深さFDとの比D2/FDが小さ過ぎるとトラクション性能の改善効果が低下し、逆に大き過ぎると耐偏摩耗性の改善効果が低下する。
【0052】
図10は本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッドパターンのセンター領域を示し、
図11はその要部の断面を示すものである。
図10及び
図11において、
図1〜
図9と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
図10に示すように、センター傾斜溝13の底部には両端がラグ主溝11に開口する細溝14が形成されている。細溝14はセンター傾斜溝13の幅方向中心位置において該センター傾斜溝13の長手方向に沿って延在している。細溝14の幅W4はセンター傾斜溝13の長手方向中央位置での幅W3に対して0.05≦W4/W3≦0.5の関係、より好ましくは、0.1≦W4/W3≦0.3の関係を満足している。
【0053】
このように接地圧が高くなるトレッド部1のセンター領域に配置されたセンター傾斜溝13の底部に細溝14を設けることにより、摩耗中期以降の溝面積を確保し、トラクション性能を良好に維持することができる。つまり、センター傾斜溝13をラグ主溝11よりも浅くすることでセンターブロック23の剛性を高めて耐偏摩耗性を良好に確保した場合であっても、トラクション性能と耐偏摩耗性を両立することができる。
【0054】
図11に示すように、トレッド部1の踏面を基準とする細溝14の長手方向中央位置での溝深さD3はタイヤ赤道CLからトレッド幅TWの25%の位置におけるラグ主溝11の溝深さFDに対して0.5≦D3/FD≦1.0の関係を満足していると良い。このように細溝14の溝深さD3を規定することにより、摩耗中期以降の溝面積を確保し、トラクション性能を良好に維持することができる。ここで、細溝14の溝深さD3とラグ主溝11の溝深さFDとの比D3/FDが小さ過ぎると摩耗中期以降のトラクション性能の改善効果が低下し、逆に大き過ぎるとトレッド部1の耐久性が低下する。
【0055】
本発明の空気入りタイヤは、各種の用途に適用可能であるが、建設車両用として好適であり、特にスクレーパー車両用として好適である。
【実施例】
【0056】
タイヤサイズが37.25R35であり、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
図2のような方向性トレッドパターンを有すると共に、タイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度α、ラグ主溝のトレッド端での幅W1とラグ主溝のトレッド端での相互間隔W2との比W1/W2、ショルダー傾斜溝のラグ主溝への開口の有無、ショルダー傾斜溝のラグ主溝に対する傾斜方向、トレッド部の溝面積比、ラグ主溝の位置ずれ量Sとラグ主溝のタイヤ周方向のピッチPとの比S/P、センター傾斜溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度β、センター傾斜溝の長手方向中央位置での幅W3とラグ主溝のトレッド端での幅W1との比W3/W1、センターブロックの角部の先端から面取り部の踏面での稜線までのタイヤ幅方向の距離X1とタイヤ赤道からトレッド幅の25%の位置におけるラグ主溝の溝深さFDとの比X1/FD、面取り部の踏面での稜線のタイヤ赤道からの最大突き出し量X2とラグ主溝の溝深さFDとの比X2/FD、面取り部の踏面での稜線の一方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X3(最大値)と他方の端点のタイヤ赤道からの突き出し量X4(最小値)との比X4/X3、面取り部の踏面での稜線の膨出量X5とラグ主溝の溝深さFDとの比X5/FD、面取り部の深さDとラグ主溝の溝深さFDとの比D/FD、センター傾斜溝の長手方向中央位置での溝深さD1とラグ主溝の溝深さFDとの比D1/FD、ショルダー傾斜溝の中心位置(タイヤ赤道からショルダー傾斜溝の中心位置までの距離Xとトレッド幅TWとの比X/TW)、ショルダー傾斜溝のラグ主溝に対する傾斜角度γ、ショルダー傾斜溝の面積A1とショルダーブロックの面積A2との比A1/A2、ショルダー傾斜溝の長手方向中央位置での溝深さD2とラグ主溝の溝深さFDとの比D2/FD、細溝の幅W4とセンター傾斜溝の長手方向中央位置での幅W3との比W4/W3、細溝の溝深さD3とラグ主溝の溝深さFDとの比D3/FDを表1〜表4のように設定した比較例2〜17及び実施例1〜24のタイヤを作製した。
【0057】
比較のため、トレッド部にタイヤ赤道の両側でタイヤ幅方向に延びてトレッド端に開口する複数本のラグ主溝が形成され、該ラグ主溝がタイヤ赤道の両側でタイヤ幅方向に対して同一方向に傾斜した非方向性トレッドパターンを有する従来例のタイヤを用意した。また、ラグ主溝がタイヤ赤道の両側でタイヤ幅方向に対して同一方向に傾斜すること以外は実施例1と同じ構成を有する比較例1のタイヤを用意した。
【0058】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、トラクション性能、耐偏摩耗性を評価し、その結果を表1〜表4に併せて示した。
【0059】
トラクション性能:
各試験タイヤをリム組みし、空気圧を525kPaとしてスクレーパー車両に装着し、路面の敷均し作業を行う際のタイヤのスリップ率を測定した。ここで、タイヤのスリップ率(S)は、車両の速度(V1)とタイヤの外周面の速度(V2)を計測し、S=〔(V2−V1)/V2〕×100%の式に基づいて算出することができる。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数値にて示した。この指数値が大きいほどトラクション性能が優れていることを意味する。
【0060】
耐偏摩耗性:
各試験タイヤをリム組みし、空気圧を525kPaとしてスクレーパー車両に装着し、同一条件で路面の敷均し作業を継続的に実施した後、トレッド部に生じた偏摩耗量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数値にて示した。この指数値が大きいほど耐偏摩耗性が優れていることを意味する。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
表1〜表4から明らかなように、実施例1〜24のタイヤは、いずれも、従来例との対比においてトラクション性能及び耐偏摩耗性が優れていた。これに対して、比較例1〜4,8,12,14のタイヤは、耐偏摩耗性に問題はないものの、トラクション性能が低下していた。また、比較例5〜7,9〜11,15〜17のタイヤは、トラクション性能に問題はないものの、耐偏摩耗性が低下していた。比較例13のタイヤは、トラクション性能、耐偏摩耗性が共に低下していた。
【解決手段】トレッド部1にラグ主溝11がタイヤ赤道の両側で対称的に傾斜し、ラグ主溝11の傾斜角度αが15°≦α≦45°の範囲、ラグ主溝11の幅W1がラグ主溝11の相互間隔W2に対して0.7≦W1/W2≦1.5の関係を満足し、ラグ主溝1の位置ずれ量SがピッチPに対して0.3≦S/P≦0.5の関係を満足し、センター傾斜溝13の傾斜角度βが10°≦β≦40°の範囲に設定され、センター傾斜溝13の幅W3がラグ主溝11の幅W1に対して0.3≦W3/W1≦0.8の関係を満足し、センターブロック23の角部に面取り部24が形成され、面取り部24の稜線24aと角部の先端23aとの距離X1がラグ主溝11の溝深さFDに対して0.3≦X1/FDの関係を満足し、トレッド部1の溝面積比が0.4〜0.7である、空気入りタイヤ。