(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂組成物全量に対する、前記セルロースアセテートプロピオネート、及び前記ポリメチルメタクリレートの合計含有量が94質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
前記セルロースアセテートプロピオネートに対するプロピオニル基の含有量が39質量%以上51質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
前記可塑剤の質量部(C)に対する前記セルロースアセテートプロピオネートの質量部(A)との質量比((A)/(C))が10以上50以下である請求項8に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の樹脂組成物および樹脂成形体の一例である実施形態について説明する。
【0023】
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースアセテートプロピオネートと、ポリメチルメタクリレートとを有する。そして、ポリメチルメタクリレートの質量部(B)に対するセルロースアセテートプロピオネートの質量部(A)の比((A)/(B))が0.45以上100以下である。
【0024】
従来、水酸基の一部がアシル基で置換されたセルロースアシレート(アシル化セルロース誘導体)は、非可食資源からなり、化学重合を必要としない一次誘導体であるため、環境に優しい樹脂材料である。また、強固な水素結合性から、樹脂材料としては高い弾性率を有する。さらに、脂環族構造であることから透明性が高いという特長がある。そのため、セルロースアシレートを含む樹脂組成物は、セルロースアシレートを用いた樹脂材料の特長を生かして、用途によっては(例えば、家具、眼鏡用部材など)、発色性、意匠性、および風合いなどの質感が求められることがある。
【0025】
例えば、特許第5258233号公報(特許文献2)には、セルロースアセテートプロピオネートと、ポリメチルメタクリレートとを特定の割合で混合された樹脂組成物が開示されている。しかし、この樹脂組成物は、発色性は優れるものの、セルロースアセテートプロピオネートが有する本来のなめらかさが低下してしまう場合がある。
【0026】
これに対し、本実施形態に係る樹脂組成物は、上記構成により、表面のなめらかさが向上している樹脂成形体が得られる。この理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0027】
なめらかさは、平均摩擦係数と
摩擦係数の平均偏差との比(平均摩擦係数/
摩擦係数の平均偏差)で表されることが知られている(以下、「平均摩擦係数と
摩擦係数の平均偏差との比」を「SMT値」と称する場合がある。)。SMT値は、数値が高いほうがなめらかさに優れている。
【0028】
ポリメチルメタクリレート単独の樹脂成形体の表面、またはセルロースアセテートプロピオネート単独の樹脂成形体の表面を測定した場合、SMT値は、セルロースアセテートプロピオネート単独の場合に比べると、ポリメチルメタクリレート単独の場合のほうが低い。そのため、両者を混合することで、SMT値は両者の単独で測定した値の間の値となると考えられる。
しかし、ポリメチルメタクリレートの含有量(B)に対するセルロースアセテートプロピオネートの含有量(A)の質量比((A)/(B))が0.45以上100以下であるときの樹脂成形体の表面のSMT値は、セルロースアセテートプロピオネート単独の樹脂成形体の表面を測定した場合のSMT値よりも高くなった。この理由は定かではないが、次のように推測される。
【0029】
ポリメチルメタクリレートおよびセルロースアセテートプロピオネートを上記範囲で混合することで、ポリメチルメタクリレートとセルロースアセテートプロピオネートの非連続ドメインが形成される。また、両者が形成する非連続ドメインは、ドメイン径の大きさが小さい。このため、樹脂成形体表面の摩擦抵抗は、ポリメチルメタクリレートが形成するドメイン部分よりも、なめらかさに優れたセルロースアセテートプロピオネートが形成するドメイン部分の影響が大きくなると考えられる。また、両者が形成する非連続ドメインのうち、ポリメチルメタクリレートのドメイン部分では凹状を形成し、セルロースアセテートプロピオネートのドメイン部分では凸状を形成している部分を有すると考えられる。このため、摩擦抵抗はセルロースアセテートプロピオネートとの接触が支配的になり、且つ、ポリメチルメタクリレートのドメイン部分はセンサーあるいは人間の指が接触しない空間のように働くことで、セルロースアセテートプロピオネート単独の場合よりも摩擦抵抗が小さくなると考えられる。
以上の理由から、ポリメチルメタクリレートおよびセルロースアセテートプロピオネートを上記範囲で混合することで、両者の相乗効果により、なめらかさが向上すると推測される。
【0030】
なお、ポリメチルメタクリレートとセルロースアセテートとを混合した樹脂組成物を用いて樹脂成形体を得た場合、樹脂成形体の表面のなめらかさは低い。これは次のように推測される。ポリメチルメタクリレートは、セルロースアセテートプロピオネートと混合する場合よりも、セルロースアセテートと混合する場合のほうが、相溶性が低い。このため、ポリメチルメタクリレートとセルロースアセテートとを混合した場合、両者は、ドメイン径の大きな非連続ドメインを形成しやすい。その結果、ポリメチルメタクリレートとセルロースアセテートとを混合した場合の樹脂成形体の表面は、ポリメチルメタクリレートによる摩擦抵抗の影響が大きくなる傾向がある。それによって、樹脂成形体の表面の摩擦抵抗が大きくなるため、なめらかさは向上し難いと考えられる。
【0031】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物の成分を詳細に説明する。
【0032】
[セルロースアセテートプロピオネート]
セルロースアセテートプロピオネートは、水酸基の一部がアセチル基およびプロピオニル基で置換されたセルロース誘導体である。セルロースアセテートプロピオネートは、具体的には、下記一般式(1)で表されるセルロース誘導体である。
【0034】
一般式(1)中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、アセチル基、又はプロピオニル基を表す。nは2以上の整数を表す。ただし、n個のR
1、n個のR
2、及びn個R
3のうちの少なくとも一部はアセチル基及びプロピオニル基を表す。
【0035】
一般式(1)中、nの範囲は特に制限されないが、重量平均分子量の範囲に応じて決定されればよい。例えば、50以上900以下が挙げられる。
【0036】
−重量平均分子量−
アセチルプロピオニルセルロースの重量平均分子量は、例えば、1万以上30万以下が好ましく、3万以上20万以下がより好ましい。
【0037】
重量平均分子量(Mw)は、ジメチルアセトアミド/塩化リチウム=90/10溶液を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置(GPC装置:東ソー社製、HLC−8320GPC、カラム:TSKgelα−M)にてポリスチレン換算で測定する。
【0038】
−プロピオニル基の含有量−
セルロースアセテートプロピオネートにおいて、セルロースアセテートプロピオネートに対するプロピオニル基の含有量は、樹脂成形体表面のなめらかさが向上する点で、39質量%以上51質量%以下であることがよく、40質量%以上50質量%以下であることが好ましく、41質量%以上49質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
−アセチル基の含有量−
セルロースアセテートプロピオネートにおいて、セルロースアセテートプロピオネートに対するアセチル基の含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下であることがよく、0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0040】
−プロピオニル基の含有量とアセチル基の含有量との比−
プロピオニル基の含有量を(M
Pr)、アセチル基の含有量を(M
Ac)としたとき、プロピオニル基の含有量(M
Pr)とアセチル基の含有量(M
Pr)との含有比率((M
Ac)/(M
Pr))は、質量比で、0.005以上0.1以下(好ましくは、0.01以上0.07以下)であることがよい。
【0041】
ここで、プロピオニル基の含有量、及びアセチル基の含有量は、以下の方法により求められる。
H
1−NMR(JMN−ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、アセチル基由来ピークとプロピオニル基由来ピークおよび水酸基由来ピークの積分値から算出する。
そして、この方法によって求められたプロピオニル基の含有量、及びアセチル基の含有量から、両者の含有比率((M
Ac)/(M
Pr))(質量比)を求める。
【0042】
−重合度−
セルロースアセテートプロピオネートの重合度は、樹脂成形体表面のなめらかさが向上する点で、50以上900以下が好ましく、55以上800以下がより好ましく、55以上700以下がさらに好ましい。
【0043】
ここで、重合度は、以下の手順で重量平均分子量から求める。
まず、セルロースアセテートプロピオネートの重量平均分子量を前記方法により測定する。次いで、セルロースアセテートプロピオネートの構成単位分子量で割ることで、セルロースアセテートプロピオネートの重合度を求める。
【0044】
セルロースアセテートプロピオネートの製造方法は、特に制限はなく、例えば、セルロースに対し、アシル化、及び、低分子量化(解重合)、並びに、必要に応じて、脱アセチル化を行う方法が挙げられる。また、市販品のセルロースアセテートプロピオネートを、予め定められた重量平均分子量となるように、低分子量化(解重合)等を行って製造してもよい。
【0045】
[ポリメチルメタクリレート]
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリメチルメタクリレートを含有する。
本明細書中において、ポリメチルメタクリレートは、メチルメタクリレート由来の構造単位を含む重合体である。ポリメチルメタクリレートは、メチルメタクリレート由来の構造単位のみを含む単独重合体でもよく、メチルメタクリレート由来の構造単位を含む共重合体でもよい。ポリメチルメタクリレートは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
ポリメチルメタクリレートが、メチルメタクリレート由来の構造単位を含む共重合体である場合、メチルメタクリレート由来の構造単位は、共重合体の全質量に対し、50質量%以上99質量%以下(好ましくは60質量%以上95質量%以下、好ましくは70質量%以上95質量%以下)であることがよい。
【0047】
ポリメチルメタクリレートが、メチルメタクリレート由来の構造単位を含む共重合体である場合、メチルメタクリレート由来の構造単位以外の構造単位としては、例えば、メチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)クリレートに由来する構造単位が挙げられる。メチルメタクリレート由来の構造単位以外の構造単位は、1質量%以上50質量%以下(好ましくは5質量%以上40質量%以下、好ましくは5質量%以上30質量%以下)であることがよい。
【0048】
例えば、具体的には、メチルアクリレート、エチル(メタ)クリレート、プロピル(メタ)クリレート、イソプロピル(メタ)クリレート、ブチル(メタ)クリレート、アミル(メタ)クリレート、ヘキシル(メタ)クリレート、オクチル(メタ)クリレート、2−エチルヘキシル(メタ)クリレート、シクロヘキシル(メタ)クリレート、ドデシル(メタ)クリレート、オクタデシル(メタ)クリレート、フェニル(メタ)クリレート、ベンジル(メタ)クリレートなどのアルキル(メタ)クリレートが挙げられる。アルキル(メタ)クリレートに由来する構造単位は、1種単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
なお、本明細書において、(メタ)クリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの双方を意味する。
【0049】
ポリメチルメタクリレートの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、樹脂成形体の表面のなめらかさが向上する点で、27,000以上120,000以下であることがよく、30,000超100,000以下であることが好ましく、30,100以上100,000以下であることがより好ましく、30,500以上100,000以下であることがさらに好ましい。
【0050】
ポリメチルメタクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される値である。具体的には、GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー社製、HLC−8320GPCを用い、東ソー社製カラム・TSKgelα−Mを使用し、テトラヒドロフラン溶媒で行う。そして、重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0051】
[セルロースアセテートプロピオネートとポリメチルメタクリレートとの質量比]
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリメチルメタクリレートの質量部(B)に対するセルロースアセテートプロピオネートの質量部(A)の比((A)/(B))が0.45以上100以下である。(B)に対する(A)の質量比がこの範囲であるとき、樹脂成形体の表面のなめらかさが向上する。
なお、(A)/(B)の質量比は、1以上100以下であることが好ましく、1以上50以下であることがより好ましく、5以上20以下であることがさらに好ましく、5以上10以下であることがさらに好ましい。(A)/(B)の質量比がこの範囲であると、樹脂成形体表面のなめらかさが優れるとともに、耐衝撃性が向上しやすくなる。
【0052】
[セルロースアセテートプロピオネート、及びポリメチルメタクリレートの含有量]
セルロースアセテートプロピオネートは、樹脂成形体の表面のなめらかさが向上する点で、樹脂組成物全量に対して、セルロースアセテートプロピオネートが29質量%以上であることがよく、31質量%以上であることがよい。また、99質量%以下であることがよく、97質量%以下であることがよく、95質量%以下であることがよい。また、同様の点で、ポリメチルメタクリレートは、1質量%以上であることがよく、3質量%以上であることがよく、5質量%以上であることがよい。また、71質量%以下であることがよく、69質量%以下であることがよく、65質量%以下であることがよい。
【0053】
なお、セルロースアセテートプロピオネート、及びポリメチルメタクリレートの合計含有量は、樹脂組成物全量に対して、94質量%以上であることがよく、98質量%以上であることがよく、100質量%であってもよい。
【0054】
[その他の成分]
(可塑剤)
本実施形態に係る樹脂組成物は、さらに、可塑剤を含んでいてもよい。
可塑剤としては、例えば、アジピン酸エステル含有化合物、ポリエーテルエステル化合物、縮合りん酸エステル化合物、セバシン酸エステル化合物、グリコールエステル化合物、酢酸エステル化合物、二塩基酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、樟脳、クエン酸エステル化合物、ステアリン酸エステル化合物、金属石鹸、ポリエステルポリオールのポリオール化合物、ポリアルキレンオキサイド化合物等が挙げられる。
これらの中でも、アジピン酸エステル含有化合物、ポリエーテルエステル化合物、及びポリエステルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも一つであることがよく、アジピン酸エステル含有化合物およびポリエステルポリオールの少なくとも一つであることが好ましく、アジピン酸エステル含有化合物およびポリエステルポリオールのいずれか一方であることがより好ましい。
【0055】
−アジピン酸エステル含有化合物−
アジピン酸エステル含有化合物(アジピン酸エステルを含む化合物)とは、アジピン酸エステル単独の化合物、又は、アジピン酸エステルとアジピン酸エステル以外の成分(アジピン酸エステルとは異なる化合物)との混合物であることを示す。但し、アジピン酸エステル含有化合物は、アジピン酸エステルを全成分に対して50質量%以上で含むことがよい。
【0056】
アジピン酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジエステル、アジピン酸ポリエステルが挙げられる。具体的には、下記一般式(AE−1)で示されるアジピン酸ジエステル、及び下記一般式(AE−2)で示されるアジピン酸ポリエステル等が挙げられる。
【0058】
一般式(AE−1)及び(AE−2)中、R
AE1及びR
AE2は、それぞれ独立に、アルキル基、又はポリオキシアルキル基[−(C
xH
2X−O)
y−R
A1](但し、R
A1はアルキル基を表す。xは1以上6以下の整数を表す。yは1以上6以下の整数を表す。)を表す。
R
AE3は、アルキレン基を表す。
m1は、1以上5以下の整数を表す。
m2は、1以上10以下の整数を表す。
【0059】
一般式(AE−1)及び(AE−2)中、R
AE1及びR
AE2が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましい。R
AE1及びR
AE2が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
【0060】
一般式(AE−1)及び(AE−2)中、R
AE1及びR
AE2が表すポリオキシアルキル基[−(C
xH
2X−O)
y−R
A1]において、R
A1が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましい。R
A1が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。xは、1以上6以下の整数を表す。yは、1以上6以下の整数を表す。
【0061】
一般式(AE−2)中、R
AE3が表すアルキレン基は、炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキレン基がより好ましい。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
【0062】
一般式(AE−1)及び(AE−2)中、各符号が表す基は、置換基で置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
【0063】
アジピン酸エステルの分子量(または重量平均分子量)は、100以上10000以下が好ましく、200以上3000以下がより好ましい。なお、重量平均分子量は、前述のポリエーテルエステル化合物の重量平均分子量と同様の測定方法により測定された値である。
【0064】
以下、アジピン酸エステル含有化合物の具体例を示すが、これに限られるわけではない。
【0066】
−ポリエーテルエステル化合物−
ポリエーテルエステル化合物として具体的には、例えば、一般式(EE)で表されるポリエーテルエステル化合物が挙げられる。
【0068】
一般式(EE)中、R
EE1及びR
EE2はそれぞれ独立に、炭素数2以上10以下のアルキレン基を表す。A
EE1及びA
EE2はそれぞれ独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は、炭素数7以上18以下のアラルキル基を表す。mは、1以上の整数を表す。
【0069】
一般式(EE)中、R
EE1が表すアルキレン基としては、炭素数3以上10以下のアルキレン基が好ましく、炭素数3以上6以下のアルキレン基がより好ましい。R
EE1が表すアルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び環式のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。
R
EE1が表すアルキレン基の炭素数を3以上にすると、樹脂組成物の流動性の低下が抑制され、熱可塑性が発現しやすくなる。R
EE1が表すアルキレン基の炭素数を10以下又はR
EE1が表すアルキレン基を直鎖状にすると、セルロースアセテートプロピオネートとの親和性が高まりやすくなる。このため、R
EE1が表すアルキレン基を直鎖状とし、且つ炭素数を上記範囲とすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
これら観点から、特に、R
EE1が表すアルキレン基は、n−ヘキシレン基(−(CH
2)
6−)が好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、R
EE1としてn−ヘキシレン基(−(CH
2)
6−)を表す化合物であることが好ましい。
【0070】
一般式(EE)中、R
EE2が表すアルキレン基としては、炭素数3以上10以下のアルキレン基が好ましく、炭素数3以上6以下のアルキレン基がより好ましい。R
EE2が表すアルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び環式のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。
R
EE2が表すアルキレン基の炭素数を3以上にすると、樹脂組成物の流動性の低下が抑制され、熱可塑性が発現しやすくなる。R
EE2が表すアルキレン基の炭素数を10以下又はR
EE2が表すアルキレン基を直鎖状にすると、セルロースアセテートプロピオネートとの親和性が高まりやすくなる。このため、R
EE2が表すアルキレン基を直鎖状とし、且つ炭素数を上記範囲とすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
これら観点から、特に、R
EE2が表すアルキレン基は、n−ブチレン基(−(CH
2)
4−)が好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、R
EE2としてn−ブチレン基(−(CH
2)
4−)を表す化合物であることが好ましい。
【0071】
一般式(EE)中、A
EE1、及びA
EE2が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基であり、炭素数2以上4以下のアルキル基がより好ましい。A
EE1、及びA
EE2が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環式のいずれであってもよいが、分岐状が好ましい。
A
EE1、及びA
EE2が表すアリール基は、炭素数6以上12以下のアリール基であり、フェニル基、ナフチル基等の無置換アリール基、又はt−ブチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基等の置換フェニル基が挙げられる。
A
EE1、及びA
EE2が表すアラルキル基としては、−R
A−Phで示される基である。R
Aは、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数2以上4以下)のアルキレン基を表す。Phは、無置換フェニル基、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数2以上6以下)のアルキル基で置換された置換フェニル基を表す。アラルキル基として具体的には、例えば、ベンジル基、フェニルメチル基(フェネチル基)、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等の無置換アラルキル基、又はメチルベンジル基、ジメチルベンジル基、メチルフェネチル基等の置換アラルキル基が挙げられる。
【0072】
A
EE1、及びA
EE2の少なくとも一方は、アリール基又はアラルキル基を表すことが好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、A
EE1、及びA
EE2の少なくとも一方としてアリール基(好ましくはフェニル基)又はアラルキル基を表す化合物であることが好ましく、A
EE1、及びA
EE2の双方としてアリール基(好ましくはフェニル基)又はアラルキル基を表す化合物であることが好ましい。
【0073】
次に、ポリエーテルエステル化合物の特性について説明する。
【0074】
ポリエーテルエステル化合物の重量平均分子量(Mw)は、450以上650以下が好ましく、500以上600以下がより好ましい。
重量平均分子量(Mw)を450以上にすると、ブリード(析出する現象)し難くなる。重量平均分子量(Mw)を650以下にすると、セルロースアセテートプロピオネートとの親和性が高まりやすくなる。このため、重量平均分子量(Mw)を上記範囲にすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
なお、ポリエーテルエステル化合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される値である。具体的には、GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー(株)製、HPLC1100を用い、東ソー(株)製カラム・TSKgel GMHHR−M+TSKgel GMHHR−M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行う。そして、重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0075】
ポリエーテルエステル化合物の25℃における粘度は、35mPa・s以上50mPa・s以下が好ましく、40mPa・s以上45mPa・s以下がより好ましい。
粘度を35mPa・s以上にすると、セルロースアセテートプロピオネートへの分散性が向上しやすくなる。粘度を50mPa・s以下にすると、ポリエーテルエステル化合物の分散の異方性が出現し難くなる。このため、粘度を上記範囲にすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
なお、粘度は、E型粘度計により測定される値である。
【0076】
ポリエーテルエステル化合物の溶解度パラメータ(SP値)が、9.5以上9.9以下が好ましく、9.6以上9.8以下がより好ましい。
溶解度パラメータ(SP値)を9.5以上9.9以下にすると、セルロースアセテートプロピオネートへの分散性が向上しやすくなる。
溶解度パラメータ(SP値)は、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm
3/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm
3)
1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
【0077】
以下、ポリエーテルエステル化合物の具体例を示すが、これに限られるわけではない。
【0079】
−ポリエステルポリオール−
ポリエステルポリオールは、例えば、多価アルコール成分と、多価カルボン酸成分とを反応させて得られる化合物でもよい。また、多価アルコール成分と、多価カルボン酸の無水物、又は多塩基酸の低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルとを反応させて得られる化合物でもよい。
多価アルコール成分としては、例えば、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、多価カルボン酸成分としては、例えば、具体的には、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,10−デカンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルなどが挙げられる。多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
ポリエステルポリオールの具体例としては、例えば、DIC社製「ポリライト」シリーズなどが挙げられる。
【0081】
本実施形態に係る樹脂組成物が可塑剤を含む場合、樹脂成形体表面のなめらかさが向上する点で、可塑剤の質量部(C)に対するセルロースアセテートプロピオネートの質量部(A)との質量比((A)/(C))は10以上50以下であることがよい。好ましくは、10以上20以下である。
【0082】
本実施形態に係る樹脂組成物が可塑剤を含む場合、樹脂組成物の全量に対する含有量は特に制限されるものではない。可塑剤を含有していても、表面のなめらかさが向上している樹脂成形体が得られやすくなる点で、樹脂組成物の全量に対する含有量は、6質量%以下(好ましくは2質量%以下)であることがよい。同様の点で、可塑剤は0質量%でもよい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。なお、可塑剤の含有量が上記範囲であると、可塑剤のブリードも抑制されやすくなる。
【0083】
(可塑剤以外のその他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、上述した以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、難燃剤、相溶化剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)などが挙げられる。
また、必要に応じて、酢酸放出を防ぐための受酸剤、反応性トラップ剤などの成分(添加剤)を添加してもよい。受酸剤としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトなどの金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;などが挙げられる。
反応性トラップ剤としては、例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミドなどが挙げられる。
これらの成分の含有量は、樹脂組成物全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0084】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記樹脂(セルロースアセテートプロピオネート、及びポリメチルメタクリレート)以外の他の樹脂を含有していてもよい。但し、他の樹脂を含む場合、樹脂組成物の全量に対する他の樹脂の含有量は、5質量%以下がよく、1質量%未満であることが好ましい。他の樹脂は、含有しないこと(つまり0質量%)がより好ましい。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、およびシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体;ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体;シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体;芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体;シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;などが挙げられる。また、コアシェル型のブタジエン−メチルメタクリレート共重合体も挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
[STM値]
STM値は、前述のように、平均摩擦係数と
摩擦係数の平均偏差との比(平均摩擦係数/
摩擦係数の平均偏差)で表される。STM値は、例えば、摩擦感テスター(カトーテック社製)により計測し得る。
本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂成形体表面の平均摩擦係数と
摩擦係数の平均偏差との比(平均摩擦係数/
摩擦係数の平均偏差)が50以上である樹脂成形体が得られる。つまり、本実施形態に係る樹脂組成物を用いて得られた樹脂成形体の表面は、STM値として50以上を示す。樹脂成形体表面のなめらかさが向上する点で、SMT値は、53以上であることがよく、57以上であることが好ましい。STM値は高いほうが、なめらか感が高くなるため、SMT値の上限は特に限定されるものではないが、例えば、70以下が挙げられる。
【0086】
50以上のSTM値を得るには、例えば、樹脂組成物中に、ポリメチルメタクリレートおよびセルロースアセテートプロピオネートを、ポリメチルメタクリレートの質量部(B)に対するセルロースアセテートプロピオネートの質量部(A)の比((A)/(B))として、既述の範囲で含ませることがよい。
【0087】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、及びポリメチルメタクリレートを含む樹脂組成物を調製する工程を有する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースアセテートプロピオネート、及びポリメチルメタクリレートと、必要に応じて、可塑剤、その他の成分等と、を含む混合物を溶融混練することにより製造される。他に、本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分を溶剤に溶解することによっても製造される。
溶融混練の手段としては公知の手段が挙げられ、具体的には、例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
【0088】
<樹脂成形体>
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
【0089】
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法は、形状の自由度が高い点で、射出成形が好ましい。この点で、樹脂成形体は、射出成形によって得られた射出成形体であることが好ましい。
射出成形のシリンダ温度は、例えば200℃以上300℃以下であり、好ましくは240℃以上280℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば40℃以上90℃以下であり、60℃以上80℃以下がより好ましい。
射出成形は、例えば、日精樹脂工業社製NEX500、日精樹脂工業社製NEX150、日精樹脂工業社製NEX70000、日精樹脂工業社製PNX40、住友機械社製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
【0090】
本実施形態に係る樹脂成形体を得るための成形方法は、前述の射出成形に限定されず、例えば、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
【0091】
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、事務機器、家電製品、自動車内装材、容器などの用途に好適に用いられる。より具体的には、電子・電気機器や家電製品の筐体;電子・電気機器や家電製品の各種部品;自動車の内装部品;CD−ROMやDVD等の収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などである。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特に断りのない限り「部」は「質量部」を表す。
【0093】
<セルロースアセテートプロピオネートの準備>
(セルロースアセテートプロピオネート(CAP1〜CAP3)の準備)
下記市販のセルロースアセテートプロピオネート3種を準備した。
CAP−482−0.5を、セルロースアセテートプロピオネート(CAP1)、CAP504−0.2を、セルロースアセテートプロピオネート(CAP2)、CAP482−20を、セルロースアセテートプロピオネート(CAP3)として準備した(いずれも、イーストマンケミカル社製)。
【0094】
(セルロースアセテートプロピオネート(CAP4)の合成)
アシル化:セルロース粉末(日本製紙ケミカル社製、KCフロックW50)3部、硫酸0.15部、酢酸30部と無水酢酸0.09部と無水プロピオン酸1.5部を反応容器に入れ、20℃で4時間攪拌した。
洗浄:撹拌終了後、フィルタープレス(栗田機械社製、SF(PP))を用い、純水にて電導度が50μS以下になるまで洗浄後、乾燥した。
後処理:乾燥後の白色粉末3部に0.2部の酢酸カルシウムと30部の純水を加え、25℃で2時間攪拌した後、ろ過し、得られた粉末を60℃で72時間乾燥し、セルロースアセテートプロピオネート(CAP4)の約2.5部を得た。
【0095】
(セルロースアセテートプロピオネート(CAP5)の合成)
アシル化に用いる無水プロピオン酸1.5部を、4部とし、さらに、反応温度を60℃、反応時間を10時間とした以外は(CAP4)の合成と同様にしてセルロースアセテートプロピオネート(CAP5)を得た。
【0096】
(セルロースアセテートプロピオネート(CAP6)の合成)
アシル化に用いる無水プロピオン酸1.5部を、2部とし、さらに、反応温度を20℃、反応時間を1時間とした以外は(CAP4)の合成と同様にしてセルロースアセテートプロピオネート(CAP6)を得た。
【0097】
(セルロースアセテートプロピオネート(CAP7)の合成)
アシル化に用いる無水プロピオン酸1.5部を、2部とし、さらに、反応温度を80℃、反応時間を15時間とした以外は(CAP4)の合成と同様にしてセルロースアセテートプロピオネート(CAP7)を得た。
【0098】
<セルロースアセテートの準備>
(セルロースアセテート(CA1)の準備)
市販のセルロースアセテート(ダイセル製、L50)を、セルロースアセテート(CA1)として準備した。
【0099】
<重合度、プロピオニル基等の含有量の測定>
セルロースアセテートプロピオネートの重合度の測定、及びセルロースアセテートプロピオネートに対するアセチル基、プロピオニル基、水酸基の含有量の測定は、既述の方法にしたがって測定した。結果を表1にまとめる。また、セルロースアセテートプロピオネートと同様の測定法により、セルロースアセテートの重合度、及びセルロースアセテートに対するアセチル基の含有量を測定した。結果を表1にまとめる。
【0100】
【表1】
【0101】
<ポリメチルメタクリレートの準備>
(ポリメチルメタクリレート(PMMA1)〜(PMMA5)の準備)
ポリメチルメタクリレートとして、表2に示すポリメチルメタクリレートを準備した。
また、準備した各ポリメチルメタクリレートの重量平均分子量を既述の方法により測定した結果を表2にまとめる。
【0102】
【表2】
【0103】
<その他添加剤の準備>
(その他添加剤(PR1)〜(PR5)の準備)
その他添加剤として、表3に示す可塑剤を準備した。
【0104】
【表3】
【0105】
<実施例1〜25、比較例1〜6>
−混練および射出成形−
表4に示す仕込み組成比で、シリンダ温度を表4にしたがって調製し、2軸混練装置(東芝機械社製、TEX41SS)にて混練を実施し、樹脂組成物(ペレット)を得た。
得られたペレットについて、射出成形機(日精樹脂工業社製、NEX140III)を用い、射出ピーク圧力が180MPaを越えないシリンダ温度で、D2試験片(60mm×60mm、厚さ2mm)を成形した。また、同様の条件で、ISO多目的ダンベル(測定部幅10mm×厚み4mm)を成形した。
【0106】
[評価]
−なめらかさの評価−
得られたD2試験片について、摩擦感テスター(カトーテック社製、KES−SE−SRU、0.2mmワイヤーを用い、20×20mmの接触面積をもつプローブ)にセットし、20℃、35%RH環境下荷重150g、速度1mm/minの条件で、SMT値(平均摩擦係数/
摩擦係数の平均偏差)を測定した。SMT値が大きいほど、なめらかさが高い。結果を表4にまとめる。
【0107】
−シャルピー衝撃強さ−
得られたISO多目的ダンベルをノッチングツール(東洋精機社製、ノッチング装置)を用いてノッチ加工し、デジタル耐衝撃測定装置(東洋精機社製、DG−UB型)にて、ISO−179−1に準拠する方法で測定した。結果を表4にまとめる。
【0108】
【表4】
【0109】
なお、表4中、「AC」は、セルロースアシレートを、「PMMA」は、ポリメチルメタクリレートを、それぞれ表す。
また、SMT値は、平均摩擦係数を
摩擦係数の平均偏差で除した値である。
【0110】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、なめらかさ(SMT値)の評価結果が良好であることがわかる。
【解決手段】セルロースアセテートプロピオネートと、ポリメチルメタクリレートと、を有し、前記ポリメチルメタクリレートの質量部(B)に対する前記セルロースアセテートプロピオネートの質量部(A)の比((A)/(B))が0.45以上100以下である樹脂組成物。