特許第6365768号(P6365768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6365768
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20180723BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-511530(P2017-511530)
(86)(22)【出願日】2016年3月23日
(86)【国際出願番号】JP2016059201
(87)【国際公開番号】WO2016163237
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2017年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-81207(P2015-81207)
(32)【優先日】2015年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小平 悦宏
【審査官】 多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/027826(WO,A1)
【文献】 特開2014−107378(JP,A)
【文献】 特開2009−010252(JP,A)
【文献】 特開2013−239512(JP,A)
【文献】 特開2001−144249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/00−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路板を有する積層基板と、
接合部及び直立部を有し、前記積層基板の回路板に前記接合部が固定された制御端子と、
開口部を有し、前記積層基板を覆って配置され、前記開口部から前記直立部が外方に延出する樹脂ケースと、
前記樹脂ケースの開口部に挿入され、前記開口部の側壁に向けて前記制御端子の直立部を押圧し固定している樹脂ブロックと、
を備え、
前記制御端子が、前記直立部における前記樹脂ブロックと接触する位置よりも前記樹脂ケース内側の位置に、低剛性部を備え、
前記制御端子の低剛性部が、前記樹脂ケース内に注入される封止材よりも前記樹脂ケースの開口部寄りに位置する半導体装置。
【請求項2】
前記制御端子の直立部が、第1突起部と、第2突起部と、前記第1突起部及び第2突起部の間の凹部を備え、前記凹部が、前記樹脂ブロックと嵌合する請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記制御端子が、前記接合部と前記直立部とを連結する連結部をさらに備え、
前記直立部と前記連結部がL字状に連結され、
前記低剛性部が、前記直立部における前記第2突起部の前記連結部側に設けられている請求項2記載の半導体装置
【請求項4】
前記直立部と前記連結部の交線と、前記連結部と前記接合部の交線と、が直交している請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記低剛性部の剛性が、前記連結部の剛性より小さい請求項3または4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記制御端子の低剛性部が、略ジグザグ形状である請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記樹脂ブロックが、2個一組の制御端子を固定し、前記2個一組の制御端子は、形状が異なり、かつ低剛性部におけるたわみ易さが形状の相違に応じて異なり、前記樹脂ブロックによる押圧力で各制御端子の低剛性部が同じ程度に変形し得る請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記制御端子が、
第1接合部、低剛性部を備える第1直立部、および前記第1接合部と第1直立部とを連結する第1連結部を備える第1制御端子と、
第2接合部、低剛性部を備える第2直立部、および前記第2接合部と第2直立部とを連結する第2連結部を備える第2制御端子と、を含み、
前記第1連結部が前記第2連結部より長く、前記第1直立部の低剛性部の剛性が前記第2直立部の低剛性部の剛性より小さく、
前記開口部の側壁に向けて前記第1直立部および第2直立部が前記樹脂ブロックにより固定されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1直立部の低剛性部および前記第2直立部の低剛性部がともに略ジグザグ形状であり、
前記第1直立部の低剛性部の切り欠きの数が、前記第2直立部の低剛性部の切り欠きの数より多い請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1直立部の低剛性部および前記第2直立部の低剛性部がともに略ジグザグ形状であり、
前記第1直立部の低剛性部の切り欠きの幅が、前記第2直立部の低剛性部の切り欠きの幅より大きい請求項8記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールに関して、積層基板の回路板に半導体チップが固定され、回路板に主端子及び制御端子の各々の一端が固定され、他端は樹脂ケースに設けられた開口を貫通して樹脂ケースより外方に延出しているパワー半導体モジュールがある。主端子及び制御端子が樹脂ケースとインサート成形により一体的にされていない端子、換言すれば樹脂ケースとは独立して設けられた端子は、独立端子と呼ばれている。
【0003】
独立端子を有するパワー半導体モジュールは、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたパワー半導体モジュールを図8(a)に平面図で、図8(b)に図8(a)のB−B線視の断面図で示す。図8に示すパワー半導体モジュール100は、放熱ベース11上に積層基板12が図示しない接合材、例えば、はんだにより固着されている。積層基板12は金属板12a、絶縁板12b及び回路板12cが積層されてなる。積層基板12の回路板12cの一つの領域には,主端子13の下端が、はんだ22により電気的かつ機械的に接合されている。また、回路板12cの別の領域には、制御端子140の下端が、はんだ22により電気的かつ機械的に接合されている。積層基板12を覆うように樹脂ケース15が設けられ、放熱ベース11に、図示しない接着剤によって固着されている。
【0004】
図8(c)に、図8(b)のC方向から見た主端子13の上端近傍の要部拡大図を示す。主端子13の上端は、上面部13a及びこの上面部の両端に接続する2つの側面部13bにより逆U字形状を有している。主端子13の上端は、樹脂ケース15の開口16を通して外方に延出している。主端子13の2つの側面部13bの間には、ナット191が埋め込まれた樹脂体であるナットケース19が挿入されている。
【0005】
図8(d)に図8(b)のD領域近傍の拡大図、すなわち制御端子140の上端近傍の拡大図を示す。制御端子140の上端は、樹脂ケース15の開口17を通して外方に延出している。制御端子140は、第1突起部140aと第2突起部140bとを間隔を空けて有している。この第1突起部140aと第2突起部140b部の間に凹部140cが形成されている。
樹脂ケース15の制御端子140用の開口17に、この制御端子140の凹部140cに嵌まり合う凸形状の段差部を有する樹脂ブロック18が挿入されている。凹部140cは、樹脂ブロック18の先端部と嵌合される。これにより制御端子140は、水平な方向に精度よく位置決めされ、また、外部からの荷重による上下方向の移動が抑制される。
【0006】
制御端子140の上端は、コネクタやプリント基板と接続されるから、高い位置精度が要求される。特に独立端子の制御端子140は、樹脂ケース15にインサート成形された制御端子に比べて位置精度が低下するおそれがある。そのため、図8に示した制御端子140と樹脂ブロック18との嵌合により、位置精度の向上が図られてきた。
【0007】
しかしながら、制御端子140の上端の位置決め精度は、制御端子140の下端を積層基板12の回路板に接合するときの位置精度によって低下するおそれがあった。また、樹脂ケース15の開口17は、制御端子140の公差や樹脂ケース15を固定するときの作業性の観点から、当該開口17に通された制御端子140との間にクリアランスを有している。このクリアランスが大きい場合には制御端子140の位置決め精度が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2013/027826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、独立端子よりなる制御端子の位置決めの精度を改善できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置の一態様は、回路板を有する積層基板と、接合部及び直立部を有し、前記積層基板の回路板に前記接合部が固定された制御端子と、開口部を有し、前記積層基板を覆って配置され、前記開口部から前記直立部が外方に延出する樹脂ケースと、前記樹脂ケースの開口部に挿入され、前記開口部の側壁に向けて前記制御端子の直立部を押圧し固定している樹脂ブロックと、を備え、前記制御端子が、前記直立部における前記樹脂ブロックと接触する位置よりも前記樹脂ケース内側の位置に、低剛性部を備え、前記制御端子の低剛性部が、前記樹脂ケース内に注入される封止材よりも前記樹脂ケースの開口部寄りに位置する。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、制御端子が低剛性部を備えるから、独立端子よりなる制御端子の位置決め精度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態1のパワー半導体モジュールの説明図である。
図2図2は、樹脂ケースの開口部近傍の拡大図である。
図3図3は、樹脂ブロックの説明図である。
図4図4は、樹脂ケースと樹脂ブロックと制御端子との組立図である。
図5図5は、制御端子の説明図である。
図6図6は、制御端子の説明図である。
図7図7は、制御端子の説明図である。
図8図8は、従来のパワー半導体モジュールの説明図である。
図9図9は、従来の制御端子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の半導体装置の実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。なお、以下の説明では、上、下については図面における紙面の上、下の位置関係を意味していて、実際の使用状態における上、下の位置関係を意味するものではない。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の半導体装置の一実施形態であるパワー半導体モジュール10の説明図である。図1中、図1(a)はパワー半導体モジュール10の平面図であり、図1(b)は図1(a)のB−B線視の断面図である。パワー半導体モジュール10は、放熱ベース11、積層基板12、主端子13、制御端子14及び樹脂ケース15を備えている。
【0015】
図1(b)に示すように、放熱ベース11上に積層基板12が固着されている。積層基板12は金属板12a、絶縁板12b及び回路板12cが積層されてなる。放熱ベース11に当該金属板12aを対向させて図示しない接合材、例えばはんだにより固着されている。積層基板12の回路板は、所定の電気回路を構成するパターンの形状に選択的に形成されている。積層基板12の回路板上には図示しないパワー半導体チップが接合材により電気的かつ機械的に接合されている。図1において、パワー半導体チップは、本発明の特徴的な部分ではないので図示を省略している。同様に、パワー半導体チップと回路板12cとを電気的に接続する配線部材は、本発明の特徴的な部分ではないので図示を省略している。また、積層基板12の回路板12cには,主端子13の下端が、はんだ付け、ろう付け、超音波接合または溶接により電気的かつ機械的に接合され、また、制御端子14の下端が、はんだ付け、ろう付け、超音波接合または溶接により電気的かつ機械的に接合されている。図示した例では、回路板12cと主端子13の下端とが、はんだ22により接合されている。また、回路板12cと制御端子14の下端とが、はんだ22により接合されている。パワー半導体チップは、積層基板12の回路板又は図示しない配線部材により主端子13や制御端子14と電気的に接続されている。
【0016】
図1(a)に示すように樹脂ケース15は、積層基板12を覆うように設けられ、放熱ベース11に接着剤によって固着されている。樹脂ケース15は、開口16及び開口17を有している。開口16を通して、主端子13の上端が外方に延出している。また、開口17を通して、制御端子14の上端が外方に延出している。開口17は、図示した例では、主端子13は3個であり、制御端子14は4個である。制御端子14用の樹脂ケース15の開口17近傍には樹脂ブロック18が取り付けられている。図1に例示するパワー半導体モジュール10の外形は略直方体である。
【0017】
図1(c)に、図1(b)のC方向から見た主端子13の上端近傍の要部拡大図を示す。主端子13の上端は、上面部13a及びこの上面部の両端に接続する2つの側面部13bにより逆U字形状を有している。主端子13の上端は、樹脂ケース15の開口16を通して外方に突出する。上面部13aにはボルト穴13cが形成されている。主端子13の2つの側面部13bの間には、ナットケース19が挿入される。ナットケース19は、外部配線を主端子13に接続するためのナット191が収容された樹脂体である。図示したナットケース19は、3個の主端子13に対応した3個のナット191が、主端子13の間隔と同じ間隔で直線状に配列されている。ナットケース19の各ナット191は、主端子13のそれぞれに位置合わせされる。主端子13と外部配線との接続は、図示しないボルト又はねじを、主端子13のボルト穴13cを通してナットケース19のナット191にねじ結合することにより行われる。
【0018】
図1(d)に、図1(b)のD領域近傍の拡大図を示す。図1(d)に示される制御端子14の上端近傍において、制御端子14は、樹脂ケース15の開口17を貫通して上端が外方に突出している。開口17は、樹脂ケース15の開口部20(図2参照)に取り付けられた樹脂ブロック18により範囲を決められた開口である。
【0019】
制御端子14は、積層基板12と樹脂ケース15の開口17に対応する位置に、第1突起部14aと第2突起部14bとを間隔を空けて有している。この第1突起部14aと第2突起部14bの間に凹部14cが形成されている。凹部14cは、樹脂ケース15の開口部20に取り付けられる樹脂ブロック18の突起部と嵌合する。これにより制御端子14は、水平な方向、すなわち、放熱ベース11のおもて面の面内方向と平行な方向に精度よく位置決めされ、また、外部からの荷重による上下方向の移動が抑制される。
【0020】
図2(a)に図1(a)に示した樹脂ケース15の開口部20近傍の拡大図を示し、また図2(b)に開口部20を矢印A側から見た背面図を示す。樹脂ケース15の開口部20は、樹脂ケース15の上面と側面とに繋がった開口である。この開口部20の底部は梁(はり)部20aである。開口部20の両側に形成される側壁20bの上側には、当該側壁20bから開口部20の内側に向かって突出する凸状の第1庇部(第1段差部)20cが形成される。
【0021】
開口部20の前方側壁には、開口部20の内側に向かって突出する凸状の第2庇部(段差部)20dが形成される。開口部20の前方側壁とは、開口部20のうち、側面側の入り口の開口に対向する側壁である。前方側壁は対向する2つの側壁20bに隣接する。また、開口部20の両側の側壁20bには、開口部20の外側に向かって第1凹部20eが形成される。第1凹部20eは、第1庇部20cと離れた位置に配置される。梁部20aは、制御端子14が貫通する貫通孔20fが形成される。
【0022】
図3に、樹脂ブロック18を示す。図3(a)は樹脂ブロック18の上面図、図3(b)は樹脂ブロック18の下面図、図3(c)は樹脂ブロック18の側面図である。樹脂ブロック18には樹脂ケース15の開口部20の第2庇部(段差部)20dと嵌合する溝18aが形成されている。また樹脂ブロック18の両側の側面18bには、制御端子14の凹部14cと嵌合する凸形状を有する段差部18cが形成されている。また両側の側面18bには、それぞれ樹脂ケース15の開口部20の第1凹部20eと嵌合する突起18dが形成されている。
【0023】
図4に、図3の樹脂ケース15の開口部20に制御端子14及び樹脂ブロック18を挿入した状態を示す。図4(a)は、上面図であり、図4(b)は、図5(a)の矢印A方向から見た背面図であり、図4(c)は、制御端子14の第1突起部14a及び第2突起部14bの間の凹部14cに樹脂ブロック18の段差部18cを嵌合させた部分断面図である。樹脂ブロック18は矢印A方向から開口部20へ挿入され得る。
【0024】
樹脂ケース15の開口部20の側壁20bと樹脂ブロック18の先端側の側面との間に制御端子14の平板面14iが挟み込まれることにより、制御端子14は、図面の矢印A方向に直交する方向の位置が固定される。すなわち、樹脂ブロック18を挿入する方向に直交する樹脂ケース15の幅方向であって、制御端子14の平板面14iに直交する方向の位置が固定される。
また、制御端子14の第1突起部14a及び第2突起部14bの間の凹部14cに樹脂ブロック18の両側面の凸状の段差部18cが嵌合されることにより、制御端子14は、図面の矢印A方向と矢印D方向(図4(b))の位置が固定される。すなわち、樹脂ケース15の長さ方向および樹脂ブロック18を挿入する方向に直交する樹脂ケース15の高さ方向それぞれの位置が固定される。このようにして制御端子14は高精度に位置決めされ固定される。
【0025】
樹脂ブロック18は、両側面に段差部18cが形成されていることにより、段差部18cのそれぞれに位置させた制御端子14の凹部14cを嵌合させることができる。よって1つの樹脂ブロック18で2本の制御端子14を嵌合させ、固定することができる。樹脂ブロック18の側面の突起18dは、それぞれ樹脂ケース15の開口部20に形成された第1凹部20eと嵌合することにより樹脂ブロック18を樹脂ケース15の開口部20に固定する。また樹脂ケース15の開口部20の梁部20aに接着剤を滴下又は塗布することによって樹脂ブロック18を樹脂ケース15の開口部20に固定することもできる。
【0026】
図5、6に制御端子14を示す。図5(a)は制御端子14の側面図であり、図5(b)は制御端子14の上面図である。図6は樹脂ケース15の開口部20に挿入される樹脂ブロック18により制御端子14、特に低剛性部14jが変形する様子を示す。制御端子14は、金属の板材を所定の形状に打ち抜き加工したのち、折り曲げ加工を行って作成される。制御端子14は、折り曲げ加工によって区分された3つの部分を有する。制御端子14は2つの端部を有し、その一方の端部は回路板12cに固定され、一方の端部の反対側の他方の端部は開口部20から樹脂ケース15の外方に延出する。具体的には積層基板12に対して略直立し、一方の端部(先端)が樹脂ケース15の外部に露出する直立部14dと、直立部14dと略L字状をなすように直立部14dの他方の端部に連結された連結部14eと、連結部14eにおける直立部14dが連結する端部とは反対側の端部に連結され、かつ積層基板12に接合される接合部14fを有する。図示した例では直立部14d、連結部14eおよび接合部14fのそれぞれの主面はお互いに略直交している。直立部14dと連結部14eの交線と、連結部14eと接合部14fの交線とが略直交している。直立部14dの主面は樹脂ブロック18の挿入方向と略平行である。
【0027】
先に述べた第1突起部14a、第2突起部14b及び凹部14cは、制御端子14の直立部14dの一方の側端面14gに形成されている。直立部14dの他方の側端面14hは、樹脂ケース15の開口部20の前方側壁側において貫通孔20fの側壁に当接する。貫通孔20fの側壁において制御端子14の側端面14hが当接する箇所が、樹脂ケース15の長手方向における制御端子14の位置の基準面となる。
【0028】
制御端子14は、直立部14dにおける第2突起部14bよりも連結部14eに近い位置に低剛性部14jを備えている。換言すれば、直立部14dの、第2突起部14bの連結部14e側の部分であって、樹脂ケース15の開口部20で樹脂ブロック18に押圧される位置よりも樹脂ケース15の内側の位置に、低剛性部14jを備えている。低剛性部14jは、より好ましくはパワー半導体モジュール10の樹脂ケース15内において、当該樹脂ケース15に注入される封止材21よりも上方となる位置に形成されている。
低剛性部14jは、図5(a)に示されるように交互に切り欠きを備えるジグザグ形状であり、直立部14dの平板面14iを例えば切り欠き加工によって略ジグザグ形状に部分的に形成してなる。
【0029】
制御端子14の低剛性部14jの効果を、図8及び図9に示す従来の制御端子と対比して説明する。
図9は従来の制御端子140の形状の一例を示す。下端が積層基板12に接合され、上端が樹脂ケースの開口を貫通させた制御端子140を樹脂ブロック18により押圧して固定すると、制御端子140の直立部分は根本で変形して傾きが生じ、制御端子140先端の位置精度を低下させることがあった。
図9に示した従来の制御端子140において先端位置精度の低下を招く直立部の傾きは、制御端子140を積層基板12に接合する位置のバラツキや、樹脂ケース15と制御端子140との部品公差及びクリアランス等が要因となる。また、制御端子140の直立部や連結部の長さが長いほど、直立部の剛性が高いほど、直立部の傾きは大きくなり易い。
【0030】
また、従来の制御端子140の第1突起部140a、第2突起部140b及び凹部140cの形成のために、必然的に直立部の平板面をケースの長手方向と平行な向きに配置していた。そのため、一方の側端面から他方の側端面に向かう方向、すなわちケースの長手方向と平行な方向の剛性は、平板面に垂直な方向、すなわちケースの長手方向と垂直な方向の剛性に比べて高かった。したがって、樹脂ブロック18によって、制御端子140の直立部の一つの側端面から他の側端面に向けて押圧力を加えても直立部は変形し難く、直立部と連結部とが接続する部分で変形する結果、直立部の傾きを招いていた。
【0031】
これに対して、本実施形態の半導体装置の制御端子14は、直立部14dに低剛性部14jを設けている。このことにより、直立部14dおよび連結部14eのそれぞれの主面が互いに略直交し、直立部14dの主面と樹脂ブロック18の挿入方向が略平行であっても、樹脂ブロック18を樹脂ケース15の開口部20に取り付けて、制御端子14の直立部14dの一つの側端面14gから他の側端面14hに向けて押圧すると、図6に示すように、この低剛性部14jでたわみ、変形し、直立部14dの先端側が基準面と平行になる。
【0032】
したがって、制御端子14の接合部14fを積層基板12に接合する位置のバラツキ等や樹脂ケース15と制御端子14との部品公差及びクリアランス等の要因により、直立部14dに傾きが生じ得る場合であっても、樹脂ブロック18の樹脂ケース15への取り付け時の押圧により当該低剛性部14jがたわむ。そのため直立部14dの側端面14hは貫通孔20fの側壁に平行な状態で密着するから、低剛性部14jよりも先端側では制御端子14の傾きが抑制され、よって高い位置精度を確保することができる。
【0033】
直立部14dにおける低剛性部14jの位置は、第2突起部14bの連結部14e側で、連結部14eに近い位置である。なお、樹脂ケース15内に注入される封止材21よりも先端寄りであることが好ましい。すなわち、制御端子14は第2突起部14bと封止材21の間に低剛性部14jを備えることが好ましい。低剛性部14jが封止材21中に位置すると、低剛性部14jの変形時に封止材21に亀裂等を生じさせ、耐電圧特性を低下させるおそれがある。
【0034】
制御端子14の連結部14eは、樹脂ケース15内で封止材21中に浸漬され得るから、封止材21に亀裂を生じさせるのを回避するために、低剛性部14jを連結部14eに設けるのは避けるのが好ましい。
【0035】
低剛性部14jの剛性は、樹脂ブロック18を樹脂ケース15に取り付けたときの加圧力により、たわむことができる程度とすればよい。低剛性部14jの剛性は、板状の連結部14eおよび/または接合部14fの剛性より小さく、樹脂ブロック18の挿入の際受ける力により、連結部14eおよび接合部14fに対し低剛性部14jが優先して変形する程度が好ましい。なお、あまりに剛性が低いと、パワー半導体モジュールの組立時に制御端子14がぐらついて、位置精度をかえって低下させるおそれがある。低剛性部14jの剛性は略ジグザグ形状を構成する切り欠きの数や線材の太さにより調整され得る。さらに、樹脂ブロック18による力の作用する方向と逆方向のいずれにも同程度に変形し、撓むように切り欠きの数を調整するとなお好ましい。接合部14fの位置がパワー半導体モジュール10の長手方向のいずれにずれていても直立部14d先端を位置決めできるからである。例えば切り欠きの数を偶数にするとよい。
【0036】
また、低剛性部14jの形状は、図5に示した略ジグザグ形状に限られず、直立部14dの他の部分に優先して変形し得る形状であればよい。例えば、S字形状やU字形状とすることができる。
【0037】
(実施形態2)
図3に示した樹脂ブロック18は、両側面18bにそれぞれ段差部18cを有し、2本の制御端子14を嵌合させ固定できる。図7に、積層基板12に接合された主端子13及び制御端子14の平面図(図7(a))及び側面図(図7(b))を示す。1個の樹脂ブロック18により固定される2個で一組の制御端子14P1及び14P2は、積層基板12上の異なる回路板に互いに非接触で接合するために、互いに直立部14d及び連結部14eの長さが異なっている。制御端子14P1及び14P2は、例えば一方がゲート用であり他方がソースセンス用である。制御端子14P1及び14P2が直立部14d及び連結部14eの長さが異なっていても、低剛性部14jは樹脂ブロック18により押圧したときに同じ程度に変形するように調整することにより、高い位置精度を得ることができる。
【0038】
そこで、制御端子14P1及び14P2の好ましい態様は、直立部14dや連結部14eの長さのように、形状が異なる2個の制御端子14P1及び14P2を1個の樹脂ブロック18で固定する場合に、制御端子14P1及び14P2とは、低剛性部14jにおけるたわみ易さが、形状の相違に応じて異なるようにした。これにより、樹脂ブロック18による押圧力で制御端子14P1及び14P2の低剛性部が同じ程度に変形する。ここでいうたわみ易さは、樹脂ケースの長手方向、すなわち樹脂ケース15の開口部20に樹脂ブロック18を挿入する方向におけるたわみ易さをいう。低剛性部14jにおけるたわみ易さを異ならせる具体的な手段は、低剛性部14jが略ジグザグ形状である場合に、ジグザグ形状を付与する切り欠きの数や幅等を異ならせることが例示される。例えば、図示するように制御端子14P2の連結部14eが制御端子14P1の連結部14eより長い場合、制御端子14P2の低剛性部14jの剛性が制御端子14P1の低剛性部14jよりも小さいとよい。制御端子14P2の連結部14eの方が外力によりたわみ易い(剛性が小さい)ので、制御端子14P2の低剛性部14jを制御端子14P1よりも変形しやすくすることにより、制御端子14P1及び14P2の先端の位置決めが容易になる。制御端子14P2の低剛性部14jを制御端子14P1よりも変形しやすくするには、例えば、制御端子14P2の低剛性部14jの切り欠きの数を制御端子14P1より多くしたり、または、制御端子14P2の低剛性部14jの切り欠きの幅を制御端子14P1より大きくしたり、線材を細くしたりするとよい。
【0039】
以上、本発明の半導体装置を図面及び実施形態を用いて具体的に説明したが、本発明は、実施形態及び図面の記載に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で幾多の変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 パワー半導体モジュール
12 積層基板
13 主端子
14 制御端子
14a 第1突起部
14b 第2突起部
14c 凹部
14j 低剛性部
15 樹脂ケース
18 樹脂ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9