(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細菌が塗抹された培地表面に抗菌剤を静置し、前記細菌を培養した後の前記培地表面を撮影した画像に基づいて前記抗菌剤の抗菌効果を判定する抗菌効果判定システムであって、
前記画像の局所領域の明るさの特徴量である局所平均画像と、前記画像の局所的平坦度の特徴量である局所分散画像とを前記画像から抽出する特徴抽出部と、第1の事前確率と、前記局所平均画像及び前記局所分散画像とに基づいて、前記画像の画素ごとに、前記抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な有効領域と無効な無効領域とをベイズ推定によって判定し、前記有効領域と前記無効領域とからなる二値画像を出力する第1のベイズ判定部とを有する領域判定部と、
前記二値画像をブロブ解析して前記有効領域を連結した最大面積を有するブロブを形成し、前記ブロブの前記画像における占有率と、前記ブロブの離心率とを求めるブロブ解析部と、第2の事前確率と、前記占有率及び前記離心率とに基づいて、前記画像の有効領域の形状をベイズ推定によって判定する第2のベイズ判定部とを有する効果判定部と
を具備することを特徴とする抗菌効果判定システム。
前記第1の事前確率は、前記画像内の中心座標点でピーク値を有する二次元ガウス関数でモデル化していることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌効果判定システム。
細菌が塗抹された培地表面に抗菌剤を静置し、前記細菌を培養した後の前記培地表面を撮影した画像に基づいて前記抗菌剤の抗菌効果を判定する抗菌効果判定方法であって、
前記画像の局所領域の明るさの特徴量である局所平均画像と、前記画像の局所的平坦度の特徴量である局所分散画像とを前記画像から抽出する第1のステップと、
第1の事前確率と、前記局所平均画像及び前記局所分散画像とに基づいて、前記画像の画素ごとに、前記抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な有効領域と無効な無効領域とをベイズ推定によって判定し、前記有効領域と前記無効領域とからなる二値画像を出力する第2のステップと、
前記二値画像をブロブ解析して前記有効領域を連結した最大面積を有するブロブを形成し、前記ブロブの前記画像における占有率と、前記ブロブの離心率とを求める第3のステップと、
第2の事前確率と、前記占有率及び前記離心率とに基づいて、前記画像の有効領域の形状をベイズ推定によって判定する第4のステップと
を有することを特徴とする抗菌効果判定方法。
細菌が塗抹された培地表面に抗菌剤を静置し、前記細菌を培養した後の前記培地表面を撮影した画像に基づいて前記抗菌剤の抗菌効果を判定する抗菌効果判定プログラムであって、
前記画像の局所領域の明るさの特徴量である局所平均画像と、前記画像の局所的平坦度の特徴量である局所分散画像とを前記画像から抽出する第1のステップと、
第1の事前確率と、前記局所平均画像及び前記局所分散画像とに基づいて、前記画像の画素ごとに、前記抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な有効領域と無効な無効領域とをベイズ推定によって判定し、前記有効領域と前記無効領域とからなる二値画像を出力する第2のステップと、
前記二値画像をブロブ解析して前記有効領域を連結した最大面積を有するブロブを形成し、前記ブロブの前記画像における占有率と、前記ブロブの離心率とを求める第3のステップと、
第2の事前確率と、前記占有率及び前記離心率とに基づいて、前記画像の有効領域の形状をベイズ推定によって判定する第4のステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする抗菌効果判定プログラム。
前記第1の事前確率は、前記画像内の中心座標点でピーク値を有する二次元ガウス関数でモデル化していることを特徴とする請求項7又は8に記載の抗菌効果判定プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の実施形態
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る抗菌効果判定システム1の構成を示すブロック図である。抗菌効果判定システム1は、領域判定部2と、効果判定部3とから構成されている。領域判定部2は、観測画像から抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な領域と無効な領域を判定し、領域判定結果を効果判定部3に供給する。効果判定部3は、領域判定部2から供給される領域判定結果に基づいて、抗菌剤の抗菌効果を判定し、効果判定結果を出力する。
【0021】
ここで、観測画像の作製方法の一例について説明する。まず、シャーレ内に形成された寒天平板培地表面に試験菌の菌液を均一に塗抹した後、この寒天平板培地の表面に試験片を静置する。次に、寒天平板培地の表面に試験片が静置されたシャーレを、例えば、37℃の温度下で40〜48時間保持し、試験菌を培養する。そして、試験菌が培養されたシャーレを、例えば、デジタルカメラで撮影して観測画像を得る。
【0022】
寒天平板培地は、例えば、以下の手順で作製する。まず、例えば、精製水1,000ml、肉エキス5.0g、ペプトン10.0g、塩化ナトリウム5.0g及び寒天粉末15.0gをフラスコに投入して混合する。次に、フラスコを沸騰する水浴中で加熱して精製水と各材料が混合された内容物を十分に溶解した後、pH7.0±0.2(25℃)になるように0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液で調製する。次に、このフラスコを綿等の培養栓で栓をして高圧蒸気殺菌した後、シャーレに投入して完全に固形化する。
【0023】
試験菌は、本実施の形態では、大腸菌(Escherichia coli:NBRC3972)を用いている。試験片は、本実施の形態では、抗菌剤をすり潰し、網目サイズ125μmの篩にかけた後、直径13mm、厚さ2〜3mmのディスク状に成形したものを用いている。抗菌剤としては、例えば、特許第5282279号公報に記載された抗菌剤や、特許第5358770号公報に記載された製造方法で作製された抗菌剤を用いても良い。
【0024】
次に、領域判定部2の構成について、
図2を参照して説明する。領域判定部2は、特徴抽出部21と、ベイズ判定部22とから構成されている。特徴抽出部21は、観測画像の特徴を抽出するために、観測画像の局所領域の明るさの特徴量として局所平均画像μ
xを、観測画像の局所的平坦度の特徴量として局所分散画像σ
x2をそれぞれ抽出する。
【0025】
ベイズ判定部22は、事前確率P
k(p)と、特徴抽出部21から供給される局所平均画像μ
x及び局所分散画像σ
x2とに基づいて、観測画像の画素ごとに、抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な領域と無効な領域とをベイズ推定によって判定し、領域判定結果を出力する。本実施の形態では、領域判定結果は、有効領域を白、無効領域を黒とした二値画像として出力される。
【0026】
ここで、ベイズ推定による判定について説明する。排反的な事象H
1と事象H
2があり、Aを任意の事象としたとき、事象Aが発生したときにそれが事象H
1である事後確率P(H
1|A)及び、事象Aが発生したときにそれが事象H
2である事後確率P(H
2|A)は、ベイズの定理により、それぞれ式(1)及び式(2)で表わされる。
【0029】
式(1)及び式(2)において、P(H
1)は事象H
1が発生する事前確率、P(H
2)は事象H
2が発生する事前確率、P(A|H
1)及びP(A|H
2)は尤度関数である。
【0030】
事後確率P(H
1|A)と事後確率P(H
2|A)との比は、式(3)で表わされる。式(3)が1より大きければ、事象H
1が発生したと判定することができる。
【0032】
ベイズ判定部22では、事象H
1は抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な領域、事象H
2は抗菌剤の抗菌効果を判定するために無効な領域とする。一方、事象Aは観測画像から選択した画素の座標、局所平均値、局所分散値の組合せとする。また、事前確率P(H
1)は事象Aが有効領域である事前確率P
1(p)、事前確率P(H
2)は事象Aが無効領域である事前確率P
0(p)とする。事前確率P
1(p)及びP
0(p)において、変数pは観測画像内の座標を示す二次元ベクトルを意味している。なお、後述するように、尤度関数P(A|H
1)はΒ
1(μ
1)Γ
1(σ
x2)、尤度関数P(A|H
2)はΒ
0(μ
0)Γ
0(σ
x2)である。式(3)が1より大きければ、当該座標pの画素を有効領域と判定することになる。
【0033】
本実施の形態では、有効領域となる確率は、観測画像内の中心座標点でピーク値をとり、座標pが中心座標点から離れるに従って低くなるという主観に基づく予測を行っている。この予測に従って、事前確率P
1(p)は、観測画像内の中心座標点でピーク値を有する二次元ガウス関数でモデル化している。本実施の形態では、観測画像内の中心座標点での事前確率P
1(p)の値を0.8に設定している。上記位置座標を考慮した主観に基づく予測を取り入れることにより、画素の値のみから算出する場合と比較して、抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な領域と無効な領域との判定精度を向上させることができる。
【0034】
次に、特徴抽出部21の構成について、
図3を参照して説明する。特徴抽出部21は、グレースケール化部31と、ヒストグラム均等化部32と、離散ハール・ウェーブレット変換部33と、離散ハール・ウェーブレット逆変換部34と、減算部35と、2乗部36と、平均フィルタ37とから構成されている。
【0035】
グレースケール化部31は、観測画像をグレースケール化してヒストグラム均等化部32に供給する。なお、このグレースケール化では、観測画像を構成する数値データを実数表現(本実施の形態では、倍精度)に変換し、輝度値を0〜1に正規化している。
【0036】
ここで、本実施の形態において想定している観測画像のデータフォーマットについて説明する。グレースケール化部31は、本実施の形態では、観測画像を標準的な256階調(8ビット)でグレースケール化しているため、観測画像の形式はこのグレースケール化ができるものであれば、BMP、JPEG、GIF、TIF、PNGなど、どのようなものでも良い。
【0037】
次に、観測画像のサイズは、試験菌が培養され、試験片が静置されたシャーレの大部分が画面に収まり、統一された倍率で撮影されていればどのようなサイズでも良い。さらに、観測画像の解像度は、上記シャーレを撮影した部分の解像度が縦1000画素、横1000画素以上であることが好ましい。また、観測画像の階調数は、グレースケール化部31で観測画像を256階調(8ビット)でグレースケール化しているため、256階調(8ビット)と同程度以上であることが好ましい。
【0038】
グレースケール化部31におけるグレースケール化の手法は、特に限定されず、単純平均化法、中間値法、Gチャンネル法、NTSC係数による加重平均法、HDTV係数による加重平均と補正法のいずれでも良いが、いずれの観測画像においても統一されていることが必要である。本実施の形態では、観測画像の形式がJPEGである場合、NTSC係数による加重平均法を用いている。
【0039】
ヒストグラム均等化部32は、グレースケール化部31でグレースケール化された画像について、画素数の多い濃度値の範囲で濃度値の間隔を細かくし、画素数の少ない範囲では間隔を荒くすることにより、コントラストを調整した後、離散ハール・ウェーブレット変換部33に供給する。
【0040】
このヒストグラム均等化部32は、デジタルカメラの被写体である試験菌が培養され、試験片が静置されたシャーレに照射される照明の強さの違いに応じて、特徴量、すなわち、局所平均画像μ
x及び局所分散画像σ
x2がバラつくことを抑制するために用いるものである。したがって、観測画像が一定の照明の強さで撮影される場合には、ヒストグラム均等化を省略しても良い。
【0041】
離散ハール・ウェーブレット変換部33は、ヒストグラム均等化部32から供給される画像データに対して低周波離散ハール・ウェーブレット変換を行った後、離散ハール・ウェーブレット逆変換部34に供給する。ヒストグラム均等化部32の出力画像データを低周波離散ハール・ウェーブレット変換することにより、画像データは、局所的に平坦なサブバンド成分(LL)とそれ以外のサブバンド成分(LH、HL、HH)に分けられる。
【0042】
ここで、離散ハール・ウェーブレット変換について説明する。まず、ヒストグラム均等化部32から供給される画像データの配列をXとし、この配列Xの二次元Z変換をX(z
x,z
y)とする。二次元Z変換X(z
x,z
y)に対して、式(4)で表される二次元伝達関数H(z
x,z
y)による線形低域フィルタリング処理と、二次元間引き処理(ダウンサンプリング処理)とを順次施した結果を式(5)で表す。二次元間引き処理では、水平方向の間引き率及び垂直方向の間引き率をいずれも2とする。
【0045】
これ以降、上記線形低域フィルタリング処理と二次元間引き処理とを(m−1)回繰り返し、得られた結果を式(6)で表す。なお、繰返し回数mは任意の回数を選択することができる。本実施の形態では、繰返し回数mは経験的に3回と設定している。
【0047】
離散ハール・ウェーブレット逆変換部34は、離散ハール・ウェーブレット変換部33から供給される低周波画像データに対して離散ハール・ウェーブレット逆変換を行う。離散ハール・ウェーブレット変換部33の出力画像データは、局所的に平坦なサブバンド成分(LL)だけであるので、このサブバンド成分(LL)を離散ハール・ウェーブレット逆変換して得られる画像データは、観測画像の明るさの局所的な平均値を表すものとなる。したがって、離散ハール・ウェーブレット逆変換部34の出力画像データは、局所平均画像μ
xとして、観測画像を構成する各画素の局所領域の明るさの特徴量として利用することができる。
【0048】
ここで、離散ハール・ウェーブレット逆変換について説明する。式(6)で表されるY
{m}(z
x,z
y)に対して、二次元零値挿入処理(アップサンプリング処理)と、線形低域フィルタリング処理とを順次施した結果を式(7)で表す。二次元零値挿入処理では、水平方向の補間率及び垂直方向の補間率をいずれも2とする。
【0050】
これ以降、上記二次元零値挿入処理及び線形フィルタリング処理を(m−1)回繰り返し、得られた結果を式(8)で表す。
【0052】
式(8)で表されるM(z
x,z
y)の画像配列の二次元逆Z変換が離散ハール・ウェーブレット逆変換部34から局所平均画像μ
xとして出力される。
【0053】
減算部35は、ヒストグラム均等化部32の出力画像データから離散ハール・ウェーブレット逆変換部34の出力画像データを減算する。離散ハール・ウェーブレット逆変換部34の出力画像データは、局所的に平坦なサブバンド成分(LL)だけからなる局所平均画像μ
xである。したがって、減算部35の出力画像データは、等価的には、ヒストグラム均等化部32の出力画像データのサブバンド成分(LL)以外のサブバンド成分(LH、HL、HH)といえる。減算部35の出力画像データは、観測画像の局所的な偏差(コントラスト)を表すものとなる。
【0054】
2乗部36は、減算部35の出力画像データを2乗する。平均フィルタ37は、2乗部36の出力画像データの局所的な平均値を算出する。本実施の形態では、平均フィルタ37として、移動平均フィルタを用いている。減算部35の出力画像データは、観測画像を構成する各画素の局所平均値からの偏差を表しているので、これを2乗部36で2乗した後、平均フィルタ37で周辺の値との平均値を算出することにより、局所分散画像σ
x2を得ることができる。局所分散画像σ
x2は、観測画像を構成する各画素の局所的平坦度の特徴量として利用することができる。
【0055】
ここで、減算部35、2乗部36及び平均フィルタ37の処理について説明する。上記と同様、ヒストグラム均等化部32から供給される画像データの配列をXとすると、減算部35の出力画像データは、配列(X−μ
x)である。次に、2乗部36は、配列(X−μ
x)の要素毎の2乗を取る。したがって、2乗部36の出力画像データは、配列(X−μ
x)の要素毎の2乗を取った配列Qとして式(9)で表される。
【0057】
平均フィルタ37は、配列Qの局所的な平均値を算出した結果、局所分散画像σ
x2を出力する。すなわち、局所分散画像の配列σ
x2の二次元Z変換S(z
x,z
y)は式(10)で表される。
【0059】
式(10)において、Q(z
x,z
y)は配列Qの二次元Z変換、A(z
x,z
y)は平均フィルタ37の二次元伝達関数である。平均フィルタ37を構成する移動平均フィルタのサイズは任意で良い。本実施の形態では、移動平均フィルタのサイズは経験的に5×5と設定している。すなわち、二次元伝達関数A(z
x,z
y)は式(11)で表される。
【0061】
次に、効果判定部3の構成について、
図4を参照して説明する。効果判定部3は、モルフォロジカルクロージング部41と、ブロブ解析部42と、ベイズ判定部43とから構成されている。モルフォロジカルクロージング部41は、領域判定部2から供給される、観測画像の画素ごとに抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な領域と無効な領域とを判定した領域判定結果において、有効領域の構造要素内に適合しない微小な穴を埋めることにより有効領域の形状を整える。
【0062】
ブロブ解析部42は、まず、モルフォロジカルクロージング部41の出力画像データを構成する各画素をオブジェクト画素と背景画素とに分割する。
【0063】
次に、ブロブ解析部42は、連結ブロブ解析を実行して、オブジェクト画素を、連結されたオブジェクト画素のグループ(ブロブ)に形成する。本実施の形態では、観測画像の画素ごとに抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な領域は連結した一つの領域であると仮定し、観測画像内で最大面積を有するブロブのみを解析している。
【0064】
そして、ブロブ解析部42は、連結ブロブ解析の結果、式(12)で表される占有率(面積)a
xと、式(13)で表される離心率e
xとを出力する。
【数12】
【0065】
式(12)において、n
bは観測画像内で最大面積を有するブロブ(有効領域)の画素数、Nは観測画像を構成する全画素の数である。
【0067】
式(13)において、離心率e
xはブロブ(有効領域)と同じ2次モーメントを有する楕円の離心率であり、aは楕円の長径の1/2、bは楕円の短径の1/2である。
【0068】
ベイズ判定部43は、事前確率P
kと、ブロブ解析部42から供給される占有率(面積)a
x及び離心率e
xとに基づいて、観測画像の有効領域の形状についてベイズ推定によって判定し、抗菌剤の抗菌効果を判定した効果判定結果を出力する。本実施の形態では、抗菌剤の効果判定は、領域判定結果における有効領域の形状データに基づいて、良好(○)、効果あり(△)、効果なし(×)の何れかとしてベイズ判定部43から出力される。
【0069】
ベイズ判定部43では、上記式(1)〜式(3)において、事象H
1は抗菌剤の抗菌効果があること、事象H
2は抗菌剤の抗菌効果がないこととする。一方、事象Aは観測画像から得られる占有率(面積)a
x及び離心率e
xの組合せとする。また、事前確率P(H
1)は事象Aで抗菌剤の抗菌効果がある事前確率P
1、事前確率P(H
2)は事象Aで抗菌剤の抗菌効果がない事前確率P
0とする。なお、後述するように、尤度関数P(A|H
1)はΒ
a1(a
x)Β
e1(e
x)、尤度関数P(A|H
2)はΒ
a0(a
x)Β
e0(e
x)である。式(3)が1より大きければ、当該観測画像で抗菌剤の抗菌効果があると判定することになる。
【0070】
本実施の形態では、事前確率P
1及び事前確率P
0はいずれも0.5としている。これは、抗菌剤の抗菌効果を判定する際に、良好(○)、効果なし(×)のいずれにも偏りがないようにするためである。実質上、特徴量のみを用いて抗菌剤の抗菌効果を判定することを意味しており、主観を取り除いている。ただし、事前確率P
1及び事前確率P
0をパラメータとして調整することにより、抗菌効果の判定性能を向上させることも可能である。例えば、効果ありの判定が過剰に行われる場合は事前確率P
1の値を小さくし、逆に効果なしの判定が過剰に行われる場合は事前確率P
0の値を小さくすることにより、抗菌効果の判定精度を調整することができる。
【0071】
次に、上記構成の抗菌効果判定システムの動作について、図面を参照して説明する。まず、領域判定部2における学習フェーズについて、
図5〜
図8を参照して説明する。
図5は、領域判定部2における学習フェーズを説明するためのブロック図である。この学習フェーズでは、教師データと観測画像とに基づいて、推定パラメータ{a
μ0,b
μ0}、{a
μ1,b
μ1}、{aσ
20,bσ
20}及び{aσ
21,bσ
21}を求める。
【0072】
教師データは、8ビットのグレースケール画像である。教師データは、無効領域を示す値0、有効領域を示す値255、ドントケア(Don't care)を意味する値128とから構成されている。教師データのサイズは観測画像のサイズと同一である。教師データの形式は、グレースケール化されているものであれば、BMP、JPEG、GIF、TIF、PNGなど、どのようなものでも良い。教師データの形式は、本実施の形態では、TIFを採用している。
図6に教師データの一例を示すとともに、
図7に観測画像の一例を示す。
【0073】
推定パラメータ{a
μ0,b
μ0}及び{a
μ1,b
μ1}は、後述する判定フェーズで用いる尤度関数Β
k(μ
k)Γ
k(σ
x2)を構成するベータ関数Β
k(μ
k)の推定パラメータである。一方、推定パラメータ{aσ
20,bσ
20}及び{aσ
21,bσ
21}は、尤度関数Β
k(μ
k)Γ
k(σ
x2)を構成するガンマ関数Γ
k(σ
x2)の推定パラメータである。このため、ベイズ判定部22は、学習フェーズでは、ベータ分布最尤推定部22
1と、ガンマ分布最尤推定部22
2とにより構成されている。
【0074】
また、学習フェーズでは、特徴抽出部21とベイズ判定部22との間にランダム抽出部23が挿入されている。学習フェーズでは、ベイズ判定部22は、教師データに基づいて、観測画像の画素ごとに、抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な領域と無効な領域とをベイズ推定によって判定し、特徴抽出部21から供給される局所平均画像μ
x及び局所分散画像σ
x2の統計的性質を解析する。学習フェーズにおいて、観測画像のすべての画素について処理することは、膨大なメモリと長い時間を必要とする。そこで、有効領域及び無効領域のそれぞれの統計量を簡便に算出するために、ランダム抽出部23を設け、局所平均画像μ
x及び局所分散画像σ
x2から必要とするデータをランダムに抽出している。
【0075】
ベータ分布最尤推定部22
1は、教師データと、ランダム抽出部23から供給された局所平均画像μ
xとに基づいて、ベータ分布最尤推定を行って、ベータ関数Β
k(μ
k)の推定パラメータ{a
μ0,b
μ0}及び{a
μ1,b
μ1}を求める。局所平均画像μ
xは、グレースケール化部31において輝度値が値0〜1の間に正規化された画像から得られているため、その輝度値も値0〜1の範囲に収まっている。一方、ベータ分布は値が0〜1の間に制限された確率変数の確率密度関数として典型的に採用される確率モデルである。そこで、本実施の形態では、ベータ分布を採用しているが、ガンマ分布を採用しても良い。
【0076】
ガンマ分布最尤推定部22
2は、教師データと、ランダム抽出部23から供給された局所分散画像σ
x2とに基づいて、ガンマ分布最尤推定を行って、ガンマ関数Γ
k(σ
2x)の推定パラメータ{aσ
20,bσ
20}及び{aσ
21,bσ
21}を求める。局所分散画像σ
x2は、その輝度値が正になることが保証されている。一方、ガンマ分布は正の値のみをもつ確率変数の確率密度関数として典型的に採用される確率モデルである。そこで、本実施の形態では、ガンマ分布を採用している。なお、局所分散画像σ
x2は、局所平均画像μ
xと同様の理由でその輝度値が値0〜1の範囲に収まっているので、ベータ分布を採用しても良い。
【0077】
ここで、
図8に局所平均画像μ
xに対する局所分散画像σ
x2の散布の一例、局所平均画像μ
xの分布(ヒストグラム)の一例及び、局所分散画像σ
x2の分布(ヒストグラム)の一例を示す。実線で描かれた曲線は無効領域に対応し、点線で描かれた曲線は有効領域に対応している。
【0078】
次に、領域判定部2における判定フェーズについて、
図2、
図3、
図7及び
図9〜
図13を参照して説明する。この判定フェーズでは、例えば、
図7に示す観測画像は、
図2に示すグレースケール化部31でグレースケール化された後、ヒストグラム均等化部32で、コントラストが調整される。
【0079】
次に、ヒストグラム均等化部32の出力画像データは、離散ハール・ウェーブレット変換部33で離散ハール・ウェーブレット変換された後、離散ハール・ウェーブレット逆変換部34で離散ハール・ウェーブレット逆変換される。これにより、離散ハール・ウェーブレット逆変換部34の出力画像データは、局所平均画像μ
xとして、
図2に示すベイズ判定部22に供給される。
図9は局所平均画像μ
xの一例である。
【0080】
一方、ヒストグラム均等化部32の出力画像データは、減算部35で離散ハール・ウェーブレット逆変換部34の出力画像データ、すなわち、局所平均画像μ
xが減算される。次に、減算部35の出力画像データは、2乗部36で2乗された後、平均フィルタ37を通過する。これにより、平均フィルタ37は、その出力画像データを局所分散画像σ
x2として、
図2に示すベイズ判定部22に供給する。
図10は局所分散画像σ
x2の一例である。
【0081】
ベイズ判定部22は、事前確率P
k(p)と、特徴抽出部21から供給される局所平均画像μ
x及び局所分散画像σ
x2とに基づいて、観測画像の画素ごとに、抗菌剤の抗菌効果を判定するために有効な領域と無効な領域とをベイズ推定によって判定し、領域判定結果を出力する。
図11は事前確率P
1(p)の一例である。
【0082】
上記学習フェーズで求められた推定パラメータ{a
μ0,b
μ0}及び{a
μ1,b
μ1}は、ベータ関数Β
0(μ
0)及びΒ
1(μ
1)にそれぞれ代入される。一方、上記学習フェーズで求められた推定パラメータ{aσ
20,bσ
20}及び{aσ
21,bσ
21}は、ガンマ関数Γ
0(σ
x2)及びΓ
1(σ
x2)にそれぞれ代入される。
【0083】
この判定フェーズでは、式(3)において、事前確率P(H
1)は事前確率P
1(p)、事前確率P(H
2)は事前確率P
0(p)、尤度関数P(A|H
1)は尤度関数Β
1(μ
1)Γ
1(σ
x2)、尤度関数P(A|H
2)は尤度関数Β
0(μ
0)Γ
0(σ
x2)である。
図12は尤度関数Β
0(μ
0)Γ
0(σ
x2)の一例である。
【0084】
式(3)に事前確率P
1(p)、事前確率P
0(p)、尤度関数Β
1(μ
1)Γ
1(σ
x2)及び尤度関数Β
0(μ
0)Γ
0(σ
x2)を代入して変形すると、式(14)が得られる。
【0086】
式(14)の左辺と右辺の大小を比較し、式(14)の左辺が大きければ当該座標pの画素を有効領域と判定する一方、式(14)の右辺が大きければ当該座標pの画素を無効領域と判定する。
図13は領域判定結果の一例である。
【0087】
次に、効果判定部3における学習フェーズについて、
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は、効果判定部3における学習フェーズを説明するためのブロック図である。この学習フェーズでは、教師データと領域判定結果とに基づいて、推定パラメータ{a
a0,b
a0}、{a
a1,b
a1}、{a
e0,b
e0}及び{a
e1,b
e1}を求める。
【0088】
教師データは、抗菌剤の抗菌効果が良好(○)又は効果なし(×)という判定が既になされている画像に対して、ブロブ解析部42において有効領域のブロブ解析を行い、その結果得られた占有率(面積)a
x及び離心率e
xを二次元ベクトルとして保存した数値データである。
【0089】
推定パラメータ{a
a0,b
a0}及び{a
a1,b
a1}は、後述する判定フェーズで用いる尤度関数Β
ak(a
x)Β
ek(e
x)を構成するベータ関数Β
ak(a
x)の推定パラメータである。一方、推定パラメータ{a
e0,b
e0}及び{a
e1,b
e1}は、尤度関数Β
ak(a
x)Β
ek(e
x)を構成するベータ関数Β
ek(e
x)の推定パラメータである。このため、ベイズ判定部43は、学習フェーズでは、ベータ分布最尤推定部43
1と、ベータ分布最尤推定部43
2とにより構成されている。
【0090】
ベータ分布最尤推定部43
1は、教師データと、ブロブ解析部42から供給された占有率(面積)a
xとに基づいて、ベータ分布最尤推定を行って、ベータ関数Β
ak(a
x)の推定パラメータ{a
a0,b
a0}及び{a
a1,b
a1}を求める。占有率(面積)a
xは、ブロブ解析部42において輝度値が値0〜1の間に正規化された画像から得られているため、その輝度値も値0〜1の範囲に収まっている。一方、ベータ分布は値が0〜1の間に制限された確率変数の確率密度関数として典型的に採用される確率モデルである。そこで、本実施の形態では、ベータ分布を採用しているが、ガンマ分布を採用しても良い。
【0091】
ベータ分布最尤推定部43
2は、教師データと、ブロブ解析部42から供給された離心率e
xとに基づいて、ベータ分布最尤推定を行って、ベータ関数Β
ek(e
x)の推定パラメータ{a
e0,b
e0}及び{a
e1,b
e1}を求める。離心率e
xは、ブロブ解析部42において輝度値が値0〜1の間に正規化された画像から得られているため、その輝度値も値0〜1の範囲に収まっている。一方、ベータ分布は値が0〜1の間に制限された確率変数の確率密度関数として典型的に採用される確率モデルである。そこで、本実施の形態では、ベータ分布を採用しているが、ガンマ分布を採用しても良い。
【0092】
ここで、
図15に複数枚の観測画像における占有率(面積)a
xに対する離心率e
xの散布の一例、占有率(面積)a
xの分布(ヒストグラム)の一例、離心率e
xの分布(ヒストグラム)の一例を示す。実線で描かれた曲線は抗菌剤の抗菌効果が良好(○)の観測画像に対応し、点線で描かれた曲線は抗菌剤の抗菌効果なし(×)の観測画像に対応している。
【0093】
次に、効果判定部3における判定フェーズについて、
図4、
図13及び
図16を参照して説明する。この判定フェーズでは、例えば、
図13に示す領域判定結果は、
図4に示すモルフォロジカルクロージング部41で有効領域の構造要素内に適合しない微小な穴が埋められて有効領域の形状が整えられ後、ブロブ解析部42で連結ブロブ解析される。これにより、ブロブ解析部42から、占有率(面積)a
x及び離心率e
xとが出力される。
【0094】
次に、ベイズ判定部43は、事前確率P
kと、ブロブ解析部42から供給される占有率(面積)a
x及び離心率e
xとに基づいて、観測画像の有効領域の形状についてベイズ推定によって判定し、抗菌剤の抗菌効果を判定した効果判定結果を出力する。
【0095】
上記学習フェーズで求められた推定パラメータ{a
a0,b
a0}及び{a
a1,b
a1}は、ベータ関数Β
a0(a
x)及びΒ
a1(a
x)にそれぞれ代入される。一方、上記学習フェーズで求められた推定パラメータ{a
e0,b
e0}及び{a
e1,b
e1}は、ベータ関数Β
e0(e
x)及びΒ
e1(e
x)にそれぞれ代入される。
【0096】
この判定フェーズでは、式(3)において、事前確率P(H
1)は事前確率P
1、事前確率P(H
2)は事前確率P
0、尤度関数P(A|H
1)は尤度関数Β
a1(a
x)Β
e1(e
x)、尤度関数P(A|H
2)は尤度関数Β
a0(a
x)Β
e0(e
x)である。
図16は尤度関数Β
a1(a
x)Β
e1(e
x)の一例である。
【0097】
式(3)に事前確率P
1、事前確率P
0、尤度関数Β
a1(a
x)Β
e1(e
x)及び尤度関数Β
a0(a
x)Β
e0(e
x)を代入して変形すると、式(15)が得られる。
【0099】
式(15)の左辺と右辺の大小を比較し、式(15)の左辺がある程度大きければ当該観測画像で抗菌剤の抗菌効果が良好(○)と判定する一方、式(15)の右辺がある程度大きければ当該観測画像で抗菌剤の抗菌効果がない(×)と判定する。
【0100】
なお、式(15)の左辺と右辺との間で有為な差が見られない場合、判定をリジェクトする。本実施の形態では、0.2以上の差が見られない場合は、リジェクトとしている。なお、判定をリジェクトした場合には、効果あり(△)と判定している。リジェクトするか否かの値は、調整することが可能である。
【0101】
ここで、本実施の形態に係る抗菌効果判定システム1の効果判定結果の一例について、
図17〜
図22を参照して説明する。
図17は効果判定結果が良好(○)と判定された例における観測画像の一例を示す図、
図18は効果判定結果が良好(○)と判定された例における領域判定効果の一例を示す図である。また、
図19は効果判定結果が効果あり(△)と判定された例における観測画像の一例を示す図、
図20は効果判定結果が効果あり(△)と判定された例における領域判定効果の一例を示す図である。一方、
図21は効果判定結果が効果なし(×)と判定された例における観測画像の一例を示す図、
図22は効果判定結果が効果なし(×)と判定された例における領域判定効果の一例を示す図である。
図17〜
図22からは本実施の形態に係る抗菌効果判定システム1が適切に作動していることを確認することができる。
【0102】
また、
図23には、同一サンプルに対する専門家の目視による効果判定結果と、本実施の形態に係る抗菌効果判定システム1の効果判定結果とを対応させた一例である。
図23からは、本実施の形態に係る抗菌効果判定システム1は、ほぼ、人間と同等の効果判定結果が得られることを確認することができる。
【0103】
このように、本発明の実施の形態1によれば、自動的、定量的かつ迅速に人間の目視による判別と同等な判定をすることができる。これにより、抗菌剤の開発を効率化することができる。また、本発明の実施の形態1によれば、画像処理を用いた自動判定であるので、第1及び第2の従来例のように観察者による目視判定よりも簡易な方法で迅速に判定を行うことができる。また、グレースケール化された画像を用いて判定するため、第3の従来例のように検査対象を染色する必要もない。
本発明の実施の形態1によれば、第3の従来例のような高価な酸化還元系発色試薬や装置を用いることなく、抗菌剤の抗菌効果を簡易かつ安価な構成で判定をすることができる。
【0104】
さらに、本発明の実施の形態1によれば、試験片直下の試験菌が死滅し、試験片の同心円状の周囲に発育阻止帯が拡散していないことを機械的に判定することができる。したがって、第2の従来例のハローテストのような、定性的であること、試験片自体による試験菌の阻止であるのか、試験片から遊離した物質による試験菌の阻止であるのかを正確に判定するには観察者に熟練度が要求されるという問題は発生し難い。
【0105】
第2の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略化する。本実施形態に係る抗菌効果判定システム51は、一般的なコンピュータ、又はマイクロコンピュータなどの装置と同様の構成によって実現されている点で、第1の実施形態に係る抗菌効果判定システム1と相違している。
【0106】
図24は、抗菌効果判定システム51の構成を示すブロック図である。
図24に示すように、抗菌効果判定システム51は、CPU(Central Processing Unit)61と、主記憶部62と、補助記憶部63と、表示部64と、入力部65と、インターフェイス部66とから概略構成されている。
【0107】
CPU61は、補助記憶部63に記憶されているプログラムに従って、入力された観測画像に後述する処理を実行する。主記憶部62は、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成され、CPU61の作業領域として用いられる。
【0108】
補助記憶部63は、ROMやRAM等の半導体メモリ、HD(ハード・ディスク)が装着されるHDドライブ、あるいはCD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)やDVD(Digital Versatile Disk)−ROM、DVD−R、DVD−RW等が装着されるCD/DVDドライブ等を含んで構成されている。この補助記憶部63は、CPU61が実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。また、外部から入力される観測画像に関する情報及びCPU61による処理結果などを含む情報を順次記憶する。補助記憶部63に記憶されるデータとしては、例えば、後述するステップS1及びS2で用いられる教師データ、事前確率P
k(p)及びP
k、局所平均画像μ
x、局所分散画像σ
x2などがある。
【0109】
表示部64は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどを含んで構成され、CPU61の処理結果などを表示する。入力部65は、キーボードやマウス等のポインティングデバイスを含んで構成されている。オペレータの指示は、この入力部65を介して入力され、CPU61に通知される。インターフェイス部66は、シリアルインターフェイスまたはLAN(Local Area Network)インターフェイス等を含んで構成されている。
【0110】
図25に示すフローチャートは、CPU61によって実行されるプログラムの一連の処理アルゴリズムに対応している。以下、
図25に示すフローチャートを参照して、上記構成の抗菌効果判定システム51が実行する処理について説明する。
【0111】
CPU61は、予め、教師データと観測画像とに基づいて、推定パラメータ{a
μ0,b
μ0}、{a
μ1,b
μ1}、{aσ
20,bσ
20}及び{aσ
21,bσ
21}を求める領域判定学習処理を実行しておく。すなわち、CPU61は、
図5〜
図8を参照して説明した特徴部21、ランダム抽出部23及びベイズ判定部22が行う学習フェーズの処理を実行する。推定パラメータ{a
μ0,b
μ0}及び{a
μ1,b
μ1}はベータ関数Β
0(μ
0)及びΒ
1(μ
1)にそれぞれ代入され、推定パラメータ{aσ
20,bσ
20}及び{aσ
21,bσ
21}はガンマ関数Γ
0(σ
x2)及びΓ
1(σ
x2)にそれぞれ代入される。
【0112】
また、CPU61は、予め、教師データと領域判定結果とに基づいて、推定パラメータ{a
a0,b
a0}、{a
a1,b
a1}、{a
e0,b
e0}及び{a
e1,b
e1}を求める領域判定学習処理を実行しておく。すなわち、CPU61は、
図14及び
図15を参照して説明したモルフォロジカルクロージング部41、ブロブ解析部42及びベイズ判定部43が行う学習フェーズの処理を実行する。推定パラメータ{a
a0,b
a0}及び{a
a1,b
a1}はベータ関数Β
a0(a
x)及びΒ
a1(a
x)にそれぞれ代入され、推定パラメータ{a
e0,b
e0}及び{a
e1,b
e1}はベータ関数Β
e0(e
x)及びΒ
e1(e
x)にそれぞれ代入される。
【0113】
ステップS1では、CPU61は、入力された観測画像に対して、グレースケール化・コントラスト調整の処理を実行する。すなわち、CPU61は、
図3及び
図7を参照して説明したグレースケール化部31及びヒストグラム均等化部32が行う処理を実行する。
【0114】
ステップS2では、CPU61は、ステップS1で得られた画像に対して、特徴量抽出処理を実行し、特徴量である局所平均画像μ
x及び局所分散画像σ
x2を抽出する。すなわち、CPU61は、
図3、
図9及び
図10を参照して説明した離散ハール・ウェーブレット変換部33、離散ハール・ウェーブレット逆変換部34、減算部35、2乗部36及び平均フィルタ37が行う処理を実行する。
【0115】
ステップS3では、CPU61は、事前確率P
k(p)と、局所平均画像μ
x及び局所分散画像σ
x2とに基づいて、領域判定処理を実行し、領域判定結果としての画像を得る。すなわち、CPU61は、
図11〜
図13並びに式(3)及び式(14)を参照して説明したベイズ判定部22が行う処理を実行する。
【0116】
ステップS4では、CPU61は、ステップS3で得られた画像に対して、有効領域整形処理を実行する。すなわち、CPU61は、
図4及び
図13を参照して説明したモルフォロジカルクロージング部41が行う処理を実行する。
【0117】
ステップS5では、CPU61は、ステップS4で得られた画像に対して、特徴量抽出処理を実行し、特徴量である占有率(面積)a
x及び離心率e
xを抽出する。すなわち、CPU61は、既に説明したブロブ解析部42が行う処理を実行する。
【0118】
ステップS6では、CPU61は、事前確率P
kと、占有率(面積)a
x及び離心率e
xとに基づいて、効果判定処理を実行し、効果判定結果を出力する。すなわち、CPU61は、
図16並びに式(3)及び式(15)を参照して説明したベイズ判定部43が行う処理を実行する。
【0119】
以上説明したように、本第2の実施形態によれば、本第1の実施の形態で得られる効果が得られる他、第3の従来例のような高価な酸化還元系発色試薬や装置を用いることなく、一般的なコンピュータ、又はマイクロコンピュータなどの装置を用いて、抗菌剤の抗菌効果を簡易かつ安価な構成で判定をすることができる。
【0120】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0121】
例えば、第2の実施形態において、抗菌効果判定システム51の補助記憶部63に記憶されているプログラムは、CD−ROM、DVD−ROM等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する装置を構成することとしても良い。
【0122】
また、プログラムをインターネット等の通信ネットワーク上の所定のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロード等するようにしても良い。また、プログラムは、通信ネットワークを介して転送しながら起動実行することとしても良い。さらに、プログラムは、全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報を通信ネットワークを介して送受信しながら、上述の画像処理を実行することとしても良い。
【0123】
また、上述の各実施の形態では、有効領域の形状のみに基づいて抗菌剤の抗菌効果を判定する例を示したが、これに限定されない。例えば、有効領域の透明度や有効領域の輪郭のにじみ具合を数値化し、これらの数値と有効領域の形状とに基づいて抗菌剤の抗菌効果を判定するように構成しても良い。このように構成すれば、より正確に判定することができる。
【0124】
(i)透明度
試験菌が培養されたシャーレをデジタルカメラで撮影する際にシャーレを載置する台を無地黒色と仮定する。有効領域が判定された後、有効領域の平均輝度値μ
eを算出する。有効領域の輝度値が0〜1の値に正規化されていると仮定し、式(16)で表される透明度Tを算出する。無効領域では試験菌の繁殖により白濁が進むため、上記透明度Tの値は0に近づいていく。
T=1−μ
e …(16)
【0125】
(ii)輪郭のにじみ具合
有効領域の連結ブロブ解析により得られた有効領域の面積A及び離心率e
xを用いて、式(17)で表される輪郭のにじみ具合Bを定義する。
B=定数×e
x/A …(17)
本実施の形態では、有効領域の形状は円形を基本としているので、にじみが生じると形状が円形から歪むため、にじみ具合Bは大きな値となる。また、にじみにより有効領域の面積Aが小さくなってもにじみ具合Bは大きな値となる。