(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図3に基づいて本発明の一実施例に係る内燃機関の可変圧縮比装置を説明する。
【0021】
図1には本発明の一実施例に係る内燃機関の可変圧縮比装置の要部を説明する外観状況、
図2にはコネクティングロッドを分解して表す外観状況、
図3(a)には高圧縮比の状態のコネクティングロッドの断面、
図3(b)には低圧縮比の状態のコネクティングロッドの断面を示してある。
【0022】
図1に示すように、内燃機関のシリンダブロック(下部ブロック2だけを示してある)にはクランクシャフト3のクランクジャーナル4が回転自在に支持される。
【0023】
図1、
図2に示すように、クランクシャフト3のクランクピン5(支持軸)には、コネクティングロッド10の大端部6が回転自在に支持される。即ち、コネクティングロッド10の大端部6の支持穴が支持軸に枢支される。コネクティングロッド10の小端部7には、気筒内を往復移動するピストン8の支持軸が回転自在に支持される。即ち、ピストン8の支持軸にコネクティングロッド10の小端部7の支持穴が枢支される。
【0024】
ピストン8が気筒内を往復移動することにより、コネクティングロッド10を介してクランクシャフト3がクランクジャーナル4を中心に回転する。つまり、コネクティングロッド10により、ピストン8の往復移動がクランクシャフトの回転力として伝えられる。
【0025】
コネクティングロッド10の大端部6の支持穴には、筒状の偏心スリーブ11の外周面(筒面)が回転自在に支持され、偏心スリーブ11の内周面は、クランクシャフト3のクランクピン5の外周面に回転自在に支持されている。偏心スリーブ11は、厚肉部11aと薄肉部11bが周方向に対向して設けられ、肉厚が徐々に変化している。
【0026】
コネクティングロッド10の大端部6には、偏心スリーブ11を回転駆動させるアクチュエータ12が内蔵されている。具体的には後述するが、アクチュエータ12により偏心スリーブ11を回転させることにより、クランクシャフト3のクランクピン5の中心と、コネクティングロッド10の大端部6の中心が偏心し、ピストン8(
図1参照)の移動状態が高圧縮比の状態、もしくは、低圧縮比の状態に切換えられる。
【0027】
即ち、熱効率向上、燃費向上のため、高圧縮比での運転が有利となる一方、高負荷運転時に高圧縮比で運転を行うとノッキングの発生が生じる虞があるため、主に、低負荷運転時の際に高圧縮比で運転できるようになっている。このため、運転状態に応じて、アクチュエータ12を駆動して偏心スリーブ11を回転させることで、
図3に示すように、高圧縮比の状態、もしくは、低圧縮比の状態に切換えられる。
【0028】
図3(a)に示すように、厚肉部11aが上方にある状態の偏心スリーブ11の回転位置が高圧縮比の状態となっている。
図3(b)に示すように、薄肉部11bが上方にある状態の偏心スリーブ11の回転位置が低圧縮比の状態となっている。
【0029】
つまり、
図3に示すように、偏心スリーブ11の厚肉部11aが上方にある高圧縮比の状態(a)は、偏心スリーブ11の薄肉部11bが上方にある低圧縮比の状態(b)に比べ、ピストン8の上死点の位置(移動状態)が高さhだけ高い位置になる。
【0030】
例えば、低圧縮比の状態は高負荷運転の時とされているため、高圧縮比の状態から低圧縮比の状態への切換えの場合、低負荷運転から高負荷運転への変化であり、高い応答性が要求されている。
【0031】
このため、高圧縮比の状態から低圧縮比の状態への切換える場合、クランクシャフト3の回転により連れ回りする力が働く方向に偏心スリーブ11を回転させ、応答性が高い状態で偏心スリーブ11を回転させるようにしている。そして、低圧縮比の状態から高圧縮比の状態に切換える際には、高い応答性は要求されないので、アクチュエータ12の駆動範囲を必要以上に拡大することなく、クランクシャフト3の回転方向に対し逆方向に偏心スリーブ11を回転させるようにしている。
【0032】
アクチュエータ12を駆動して偏心スリーブ11を回転させるため、偏心スリーブ11の回転位置を確実に所望の回転位置に制御することが可能になる。
【0033】
図2、
図3に基づいてアクチュエータ12、偏心スリーブ11の回転を制御する機構を具体的に説明する。
【0034】
コネクティングロッド10の大端部6には、偏心スリーブ11を回転駆動させるアクチュエータ12の油圧室13が設けられている。コネクティングロッドの大端部6は、ロッド側の端部に形成され、支持穴の上側の半分を形成する(半円状体に形成される)ロッド側端部15と、支持穴の下側の半分を形成しロッド側端部15に固定される半円状体のキャップ16とで構成されている。
【0035】
そして、キャップ16の内側(支持穴)に断面がコ字型(
図2参照)の油圧室13が設けられている。油圧室13はキャップ16の内側の周方向の両端部に亘って設けられている。つまり、油圧室13は、コネクティングロッド10の大端部6のロッド側端部15とキャップ16との分割部位を除く部位に形成されている。
【0036】
コネクティングロッド10の大端部6のロッド側端部15とキャップ16との分割部位を除く部位に油圧室13が形成されているので、加工が容易な分割部位に、油圧室13への圧油の供給路、排出路を形成することができる。また、キャップ16に油圧室13が形成されているので、ロッド側端部15に油圧室を形成する必要がなく、大端部6に油圧室13を設けた場合であっても、ロッド側端部15のロッド部との境界部の補強等を行うことなく剛性を維持することができる。
【0037】
そして、油圧室13はキャップ16の内側の周方向の両端部に亘って設けられているので、アクチュエータ12により偏心スリーブ11を略180度の角度で回転駆動させることができる。このため、偏心スリーブ11の偏心量を広い回転範囲で設定することができる。
【0038】
偏心スリーブ11の外周部の厚肉部11aと薄肉部11bの境目に該当する部位には、伝達手段としてのベーン17が設けられている。ベーン17は油圧室13の断面形状に応じたコ字型に形成されて油圧室13に配され、ベーン17により油圧室13が二室に仕切られている。
【0039】
一方の油圧室に油圧を供給すると共に他方の油圧室から油圧を排出することにより偏心スリーブ11が一方向に回転し、他方の室に油圧を供給すると共に他方の室から油圧を排出することにより偏心スリーブ11が他方向に回転する。
【0040】
つまり、伝達手段であるベーン17がシリンダーのピストンの役割を果たし、ベーン17を挟んだ一方の油圧室13に油圧を供給すると同時に他方の油圧室13から油圧を排出し、排出状況を制御することにより、偏心スリーブ11の回転位置の制御が実施される。言い換えれば、油圧室13およびベーン17がキャップ16に内蔵されてアクチュエータ12を構成し、偏心スリーブ11の回転位置の制御が実施される。
【0041】
クランクシャフト3(
図1参照)の回転方向が、
図3中時計回り方向である場合、偏心スリーブ11の厚肉部11aが図中右半分を回転して上下に配されると共に薄肉部11bが図中左半分を回転して上下に配される状態で、ベーン17が油圧室13に配される。
【0042】
ベーン17から厚肉部11a側の油圧室13(一方の油圧室13a)の端部(
図3中右側)には油圧排出路としての第1排出路21が連通し、ベーン17から薄肉部11b側の油圧室13(他方の油圧室13b)の端部(
図3中左側)には油圧排出路としての第2排出路22が連通している。第1排出路21及び第2排出路22は、具体的な構成は後述するが、開閉手段により流路が開閉制御される。
【0043】
そして、一方の油圧室13a及び他方の油圧室13bには、油圧供給手段から油圧が供給される。油圧の供給の機構は、具体的な構成は後述するが、偏心スリーブ11の回転位置を固定する固定ピンの解除の油圧が一方の油圧室13aもしくは他方の油圧室13bに送られる油圧となる機構とされている。
【0044】
ベーン17から厚肉部11a側の一方の油圧室13aに油圧を供給すると同時に、ベーン17から薄肉部11b側の他方の油圧室13bから第2排出路22を通して油圧が排出されることで、偏心スリーブ11が
図3中時計回り方向に回転して薄肉部11bが上方になる低圧縮比の状態にされる。
【0045】
つまり、高圧縮比の状態から低圧縮比の状態への切換える場合に、クランクシャフト3(
図1参照)の回転により連れ回りする力が働く方向に偏心スリーブ11を回転させ、応答性が高い状態で偏心スリーブ11を回転させている。
【0046】
逆に、他方の油圧室13bに油圧を供給すると同時に、一方の油圧室13aから第1排出路21を通して油圧が排出されることで、偏心スリーブ11が
図3中反時計回り方向、即ち、クランクシャフト3(
図1参照)の回転方向に対し逆方向に回転して厚肉部11aが上方になる高圧縮比の状態にされる。
【0047】
つまり、低圧縮比の状態から高圧縮比の状態に切換える際には、高い応答性は要求されないので、クランクシャフト3(
図1参照)の回転方向に対し逆方向に偏心スリーブ11を回転させている。
【0048】
図4、
図5に基づいて高圧縮比と低圧縮比の切換えの動作の状況を概略的に説明する。
【0049】
尚、
図4、
図5には、切り換え動作の概略的な動作を示してあり、偏心スリーブ11を回転制御するための油圧の供給、排出の具体的な説明、即ち、開閉手段、操作手段に相当する具体的な構成の説明は後述する。
【0050】
図4には高圧縮比の状態から低圧縮比の状態への切換えの動作説明、
図5には低圧縮比の状態から高圧縮比の状態への切換えの動作説明を示してあり、各図の(a)は切換え前の状態、各図の(b)は切換え途中での状態、各図の(c)は切換えが終了した状態である。
【0051】
図4(a)に示すように、高圧縮比の状態では、偏心スリーブ11は、厚肉部11aが上部に位置し、ベーン17が図中右側の端部に位置する状態に回転位置が固定されて、他方の油圧室13bに油圧が満たされている。低圧縮比に切換えが行われる場合、第1排出路21が閉じられると共に第2排出路22が開かれる。この状態で一方の油圧室13aに油圧が供給される。
【0052】
図4(b)に示すように、他方の油圧室13bの油圧が第2排出路22から排出され、一方の油圧室13aの容積の増加によりベーン17が押されて偏心スリーブ11が図中時計回り方向に回転する。
【0053】
図4(c)に示すように、一方の油圧室13aに油圧が供給され続けることにより、他方の油圧室13bの油圧が第2排出路22から全て排出され、ベーン17が押されて偏心スリーブ11が図中時計回り方向に回転し、薄肉部11bが上部に位置して低圧縮比の状態に切換えられる。
【0054】
従って、高圧縮比の状態から低圧縮比の状態に切換える場合には、アクチュエータ12を駆動して、クランクシャフト3(
図1参照)の回転により(クランクピン5の移動により)連れ回りする力が働く方向に偏心スリーブ11を回転させている。
【0055】
この結果、応答性が必要とされる低圧縮比の状態への切換えの際に、応答性が高い状態で偏心スリーブ11を回転させることができる。
【0056】
図5(a)に示すように、低圧縮比の状態では、偏心スリーブ11は、薄肉部11bが上部に位置し、ベーン17が図中左側の端部に位置する状態に回転位置が固定されて、一方の油圧室13aに油圧が満たされている。高圧縮比に切換えが行われる場合、第2排出路22が閉じられると共に第1排出路21が開かれる。この状態で他方の油圧室13bに油圧が供給される。
【0057】
図5(b)に示すように、一方の油圧室13aの油圧が第1排出路21から排出され、他方の油圧室13bの容積の増加によりベーン17が押されて偏心スリーブ11が図中反時計回り方向に回転する。
【0058】
図5(c)に示すように、他方の油圧室13bに油圧が供給され続けることにより、一方の油圧室13aの油圧が第1排出路21から全て排出され、ベーン17が押されて偏心スリーブ11が図中反時計回り方向に回転し、厚肉部11aが上部に位置して高圧縮比の状態に切換えられる。
【0059】
従って、低圧縮比の状態から高圧縮比の状態に切換える場合には、高い応答性は要求されないので、アクチュエータ12を駆動して、クランクシャフト3(
図1参照)の回転(クランクピン5の白抜き矢印方向への移動)に対し逆方向に偏心スリーブ11を回転させている。
【0060】
上述した内燃機関の可変圧縮比装置は、油圧室13に対して油圧が供給・排出されるアクチュエータ12によりベーン17を介して偏心スリーブ11を回転させるので、大端部6の支持穴とクランクピン5との位置を偏心させ、ピストン8の移動状態を高圧縮比の状態もしくは低圧縮比の状態に切換えることができる。このため、偏心スリーブ11の回転位置を確実に高圧縮比の状態もしくは低圧縮比の状態の位置(所望の回転位置)に制御することが可能になる。
【0061】
上述した可変圧縮比装置は、偏心スリーブ11が高圧縮比の状態、低圧縮比の状態にある時に、固定ピンが偏心スリーブ11に機械的に嵌合する構成となっている。そして、油圧室13に供給される油圧により固定ピンの嵌合を解除した後、解除後の油圧が油圧室13に供給されて偏心スリーブ11が回転する。
【0062】
偏心スリーブ11の回転のための第1排出路21、第2排出路22の開閉は、偏心スリーブ11の回転に連動して操作手段により機械的に操作される開閉手段により行われる。
【0063】
図6から
図10に基づいて偏心スリーブ11を回転制御するための油圧の供給系統(油圧供給手段)の構成を具体的に説明する。
【0064】
図6にはアクチュエータ12への油圧の供給系統を説明する大端部6の分解斜視状態、
図7には油圧回路の概略系統を示してある。また、
図8には高圧縮比から低圧縮比への切換えの動作の状況、
図9には低圧縮比から高圧縮比への切換えの動作の状況、
図10には油路を説明する展開状況の概念を示してある。
【0065】
図6に基づいてアクチュエータ12への油圧の供給系統を説明する。
【0066】
ロッド側端部15の内側には固定ピン28が支持穴側に付勢ばね27により突出付勢された状態で設けられている。つまり、固定ピン28の先端が偏心スリーブ11の周面に摺接した状態でロッド側端部15に固定ピン28が設けられている。偏心スリーブ11の厚肉部11aの外周面には、固定ピン28の先端が嵌合する第1嵌合穴29aが形成され、偏心スリーブ11の薄肉部11bの外周面には、固定ピン28の先端が嵌合する第2嵌合穴29bが形成されている。
【0067】
偏心スリーブ11が高圧縮比の状態に回転した際に、付勢ばね27の付勢力により第1嵌合穴29aに固定ピン28の先端が嵌合して回転状態が機械的に固定され、偏心スリーブ11が低圧縮比の状態に回転した際に、付勢ばね27の付勢力により第2嵌合穴29bに固定ピン28の先端が嵌合して回転状態が機械的に固定される。
【0068】
クランクシャフト3(
図1参照)のクランクピン5には、一方の油圧室13aに油圧を供給するための第1供給路25、及び、他方の油圧室13bに油圧を供給するための第2供給路26が設けられている。偏心スリーブ11の内周には、周方向に円環状とされる第1供給溝31が形成されていると共に、周方向に円環状とされる第2供給溝32が形成されている。第1供給溝31は第1供給路25に連通し、第2供給溝32は第2供給路26に連通している。
【0069】
偏心スリーブ11には、第1供給溝31と第1嵌合穴29aを連通する第1路33が設けられると共に、第2供給溝32と第2嵌合穴29bを連通する第2路34が設けられている。
【0070】
第1嵌合穴29aに付勢ばね27の付勢力により固定ピン28の先端が嵌合している状態で、第1供給路25から油圧が供給されると、第1供給溝31に油圧が満たされ、第1路33から第1嵌合穴29aに油圧が供給される。これにより、付勢ばね27の付勢力に抗して第1嵌合穴29aから固定ピン28が押し戻され、偏心スリーブ11の高圧縮比状態の回転位置の固定が解除される。
【0071】
第2嵌合穴29bに付勢ばね27の付勢力により固定ピン28の先端が嵌合している状態で、第2供給路26から油圧が供給されると、第2供給溝32に油圧が満たされ、第2路34から第2嵌合穴29bに油圧が供給される。これにより、付勢ばね27の付勢力に抗して第2嵌合穴29bから固定ピン28が押し戻され、偏心スリーブ11の低圧縮比状態の回転位置の固定が解除される。
【0072】
一方、第1嵌合穴29aからベーン17の部位の偏心スリーブ11の外周には第1油圧路35が形成され、第1油圧路35は一方の油圧室13aに油圧を供給するようになっている。また、第2嵌合穴29bからベーン17の部位の偏心スリーブ11の外周には第2油圧路36が形成され、第2油圧路36は他方の油圧室13bに油圧を供給するようになっている。
【0073】
つまり、偏心スリーブ11が高圧縮比の状態、低圧縮比の状態にある時に、固定ピン28が偏心スリーブ11の第1嵌合穴29a、第2嵌合穴29bに嵌合する構成とされ、油圧室13に供給される油圧により固定ピン28の嵌合を解除した後、解除後の油圧が第1油圧路35、第2油圧路36から一方の油圧室13a、他方の油圧室13bに供給されて偏心スリーブ11が回転する。
【0074】
コネクティングロッド10のキャップ16の油圧室13の端部には、偏心スリーブ11の回転のための第1排出路21、第2排出路22の開閉を制御するための開閉手段(開閉弁部材)37がそれぞれ設けられている。偏心スリーブ11の厚肉部11aと薄肉部11bの間の筒面には、操作手段として、径方向の外側に突出する操作カム38が180度の対向位置に設けられている。
【0075】
偏心スリーブ11の筒面が支持されるロッド側端部15の内周面、及び、キャップ16の内周面には、操作カム38が摺動自在に収容される案内溝としての回避溝41が形成されている。回避溝41は周方向に延びて形成され、油圧室13に並設されている。回避溝41の端部には、開閉手段(開閉弁部材)37のピストン穴44(詳細は後述する)の一方側が臨んでいる。
【0076】
つまり、開閉手段(開閉弁部材)37のピストン穴44は、大端部6の支持穴の偏心スリーブ11の筒面を支持する内周面に、クランクシャフトの軸方向に交差する方向の一方側の端部が回避溝41に臨んで形成されている。
【0077】
第1排出路21の開閉を制御するための開閉手段(開閉弁部材)37は、キャップ16に設けられ、第2排出路22の開閉を制御するための開閉手段(開閉弁部材)37は、ロッド側端部15に設けられている。尚、2つの開閉手段(開閉弁部材)37をキャップ16、もしくは、ロッド側端部15に設けることも可能である。
【0078】
偏心スリーブ11が180度回転する毎に、即ち、高圧縮比と低圧縮比が切り換えられる毎に、操作カム38により開閉手段(開閉弁部材)37が操作され、開閉手段(開閉弁部材)37の開き状態、閉じ状態が交互に切り換えられて切り換えられた状態が維持される(具体的な説明は後述する)。
【0079】
図7に基づいて油圧供給の系統(油圧供給手段)を説明する。
【0080】
クランクシャフト3のクランクジャーナル4からクランクピン5にわたり、第1供給路25及び第2供給路26が形成されている。第1供給路25及び第2供給路26には供給切換え弁23を介して油圧ポンプ24からの油圧が選択的に供給される。第1供給路25、第2供給路26は第1路33、第2路34につなげられ、嵌合穴29を介して第1油圧路35、第2油圧路36につなげられている。
【0081】
一方の油圧室13aに油圧が供給されている場合には、他方の油圧室13bの第2排出路22から油圧が排出され、他方の油圧室13bから油圧が供給されている場合には、一方の油圧室13aの第1排出路21から油圧が排出されるように、それぞれの開閉手段37(
図6参照)が操作カム38(
図6参照)により操作される。
【0082】
このため、供給切換え弁23では、第1供給路25及び第2供給路26への油圧の切換えをだけを制御することで、第1排出路21及び第2排出路22からの排出の切換えの制御を行うことなく油圧の供給・排出制御が可能になる。従って、複雑な切換え手段を用いることなく簡単な制御によりアクチュエータ12を駆動して偏心スリーブ11を回転させることができる。
【0083】
図8から
図10に基づいて偏心スリーブ11の切換えの動作の状況の説明を油圧の経路を中心に具体的に説明する。
【0084】
図8には高圧縮比の状態から低圧縮比の状態への切換えの動作説明、
図9には低圧縮比の状態から高圧縮比の状態への切換えの動作説明を示してあり、各図の(a)は切換え前の状態、各図の(b)は切換え途中での状態、各図の(c)は切換えが終了した状態である。
図8、
図9の動作の状況は、前述した
図4、
図5の動作の状況に相当する。
【0085】
また、
図10(a)には第1油圧路35、第2油圧路36の状況を説明する偏心スリーブ11の外周面側の展開状況(
図8(a)中のP矢視)、
図10(b)には第1供給溝31、第2供給溝32の状況を説明する偏心スリーブ11の内周面側の展開状況(
図8(c)中のQ矢視)を示してある。
【0086】
図8(a)の状態(
図4(a)の状態)から低圧縮比に切換えが行われる場合、第1排出路21が閉じられると共に第2排出路22が開かれる状態に、開閉手段37がそれぞれ操作カム38により操作されている。操作カム38による開閉手段37の操作が終了し、再度、操作カム38により開閉手段37が操作されるまで、開閉手段37の開閉状態はそのままの状態が維持される。
【0087】
尚、開閉手段37の操作の具体的な構成は後述する。
【0088】
供給切換え弁23(
図7参照)の動作により、第1供給路25から第1供給溝31、第1路33を通して第1嵌合穴29aに油圧が供給され(
図10(b)を参照)、付勢ばね27の付勢力に抗して第1嵌合穴29aから固定ピン28が押し戻されて偏心スリーブ11の固定が解除される。
【0089】
第1供給溝31は円環状に形成されているので、第1供給路25の開口位置に拘わらず第1路33を通して第1嵌合穴29aに油圧を供給することができる(
図10(a)を参照)。
【0090】
第1嵌合穴29aから固定ピン28が押し戻され、第1嵌合穴29aを通して第1油圧路35に油圧が供給されると、一方の油圧室13aへの油圧の供給が開始される。
図8(b)に示すように、他方の油圧室13bの油圧が第2排出路22から排出され、一方の油圧室13aの容積の増加によりベーン17が押されて偏心スリーブ11が図中時計回り方向に回転する。
【0091】
図8(c)に示すように、第1嵌合穴29aを通して第1油圧路35から一方の油圧室13aに油圧が供給され続けることにより、他方の油圧室13bの油圧が第2排出路22から全て排出され、ベーン17が押されて偏心スリーブ11が図中時計回り方向に回転し、付勢ばね27の付勢力により第2嵌合穴29bに固定ピン28の先端が嵌合する。これにより、偏心スリーブ11の回転位置が低圧縮比の状態に機械的に固定される。
【0092】
この時、開閉手段37がそれぞれ操作カム38により操作され、第1排出路21が開かれると共に第2排出路22が閉じられる状態に切換え操作される。つまり、
図8(a)の状態から操作カム38による開閉手段37の操作が終了し、再度、操作カム38により開閉手段37が操作された状態になっている。
【0093】
尚、
図8(a)(b)(c)には、第1供給路25(第2供給路26)と第1供給溝31(第2供給溝32)の連通部と、第1路33(第2路34)と第1供給溝31(第2供給溝32)の連通部とを直線状態に示してあるが、クランクピン5の回転位相と偏心スリーブ11の回転位相により、連通部同士が、第1供給溝31(第2供給溝32)の任意の位置に配されることもある。
【0094】
図9(a)の状態(
図8(c)の状態)では、第1排出路21が開かれると共に第2排出路22が閉じられる状態に、開閉手段37がそれぞれ操作カム38により操作されている。前述同様、操作カム38による開閉手段37の操作が終了し、再度、操作カム38により開閉手段37が操作されるまで、開閉手段37の開閉状態はそのままの状態が維持される。
【0095】
供給切換え弁23(
図7参照)の動作により、第2供給路26から第2供給溝32、第2路34を通して第2嵌合穴29bに油圧が供給され(
図10(b)を参照)、付勢ばね27の付勢力に抗して第2嵌合穴29bから固定ピン28が押し戻されて偏心スリーブ11の固定が解除される。第2供給溝32は円環状に形成されているので、第2供給路26の開口位置に拘わらず第2路34を通して第2嵌合穴29bに油圧を供給することができる(
図10(a)を参照)。
【0096】
第2嵌合穴29bから固定ピン28が押し戻され、第2嵌合穴29bを通して第2油圧路36に油圧が供給されると、他方の油圧室13bへの油圧の供給が開始される。
図9(b)に示すように、一方の油圧室13aの油圧が第1排出路21から排出され、他方の油圧室13bの容積の増加によりベーン17が押されて偏心スリーブ11が図中反時計回り方向に回転する。
【0097】
図9(c)に示すように、第2嵌合穴29bを通して第2油圧路36から他方の油圧室13bに油圧が供給され続けることにより、一方の油圧室13aの油圧が第1排出路21から全て排出され、ベーン17が押されて偏心スリーブ11が図中反時計回り方向に回転し、付勢ばね27の付勢力により第1嵌合穴29aに固定ピン28の先端が嵌合する。これにより、偏心スリーブ11の回転位置が高圧縮比の状態に機械的に固定される。
【0098】
この時、開閉手段37がそれぞれ操作カム38により操作され、再び、第1排出路21が閉じられると共に第2排出路22が開かれる状態に切換え操作され、開閉手段37の開閉状態はそのままの状態が維持される。
【0099】
上述した可変圧縮比装置は、偏心スリーブ11が高圧縮比の状態、低圧縮比の状態にある時に、固定ピン28が偏心スリーブ11に機械的に嵌合し、油圧室13に供給される油圧により固定ピン28の嵌合を解除した後、解除後の油圧が油圧室13に供給されて偏心スリーブ11が回転するようになっている。
【0100】
つまり、一方の油圧室13a及び他方の油圧室13bには、第1供給路25、第2供給路26から油圧が供給されて、偏心スリーブ11の回転位置を固定する固定ピン28の固定を解除した後に、第1油圧路35、第2油圧路36を通して一方の油圧室13aもしくは他方の油圧室13bに送られるようになっている。
【0101】
このため、一つの系統の油圧回路により、固定ピン28による偏心スリーブ11の回転位置の固定の解除と、油圧室13への油圧の供給によるアクチュエータ12の駆動を実施することができる。従って、油圧の系統を複雑にすることなく偏心スリーブ11を、的確にしかも確実に回転させることができる。
【0102】
図6及び
図11から
図17に基づいて開閉手段37を具体的に説明する。
【0103】
図11(a)には開閉手段37を説明するためのコネクティングロッドの大端部の断面、
図11(b)には
図11(a)中のR矢視、
図12(a)には開閉手段37の部位の断面、
図12(b)には
図12(a)中のA-A線矢視、
図12(c)には
図12(a)中のB-B線矢視を示してある。また、
図13には流路ピストンの構成、
図14には案内ガイドの構成、
図15には押圧ピストンの構成を示してあり、各図の(a)は外観斜視、(b)は側面視、(c)は正面視である。そして、
図16には開閉手段37の構成部材の分解斜視の状況、
図17には開閉手段37の動作説明を示してある。
【0104】
第1排出路21、第2排出路22には開閉手段37がそれぞれ備えられ、開閉手段37は、ピストン穴(詳細は後述する)が第1排出路21、第2排出路22を横断して配されている。開閉手段37は、偏心スリーブ11の回転により操作カム38で開閉操作され、流路ピストン45(詳細は後述する)により、第1排出路21、第2排出路22が、流路ピストン45(詳細は後述する)の径方向に連通状態・非連通状態に切換えられる(開閉切換部)。即ち、第1排出路21、第2排出路22の開閉状態が切換えられる。開閉手段37は、第1排出路21、第2排出路22の開閉状況が互いに逆になるように開閉操作される。
【0105】
図6、及び、
図11に基づいて開閉手段37の概略構成を説明する。
【0106】
第1排出路21、第2排出路22は、油圧室13と外部タンク等の戻り路をつないでいる。第1排出路21の途中部、及び、第2排出路22の途中部には、即ち、第1排出路21及び、第2排出路22を横断して、開閉手段37が設けられ、開閉手段37の動作により、第1排出路21、及び、第2排出路22の連通(開)、連通遮断(閉)が切換えられる。
【0107】
図において、第1排出路21の開閉手段37の状況(図中右側の開閉手段37の状況)は、操作カム38の操作により、第1排出路21、第2排出路22が連通遮断になっている状態(閉状態)である。また、第2排出路22の開閉手段37の状況(図中左側の開閉手段37の状況)は、操作カム38の操作により、第1排出路21、第2排出路22が連通している状態(開状態)である。
【0108】
開閉手段37は、操作カム38が案内される回避溝41に一方側の端部が臨むピストン穴44を備えている。即ち、大端部6(
図6参照)の支持穴(偏心スリーブ11の筒面が支持される穴)の内周面に、クランクシャフトの軸方向に交差する方向の一方側の端部が臨むピストン穴44を備えている。
【0109】
ピストン穴44には、突出ばね43により回避溝41の側に付勢され、付勢方向に延びる回転軸を中心に回動自在とされる開閉ピンとしての流路ピストン45と、流路ピストン45の付勢移動により回動案内する案内ガイド46と、頭部(先端)が回避溝41から(偏心スリーブ11の筒面を支持する内周面から)出没自在となるように支持され、頭部が操作カム38により押圧されることにより流路ピストン45を付勢力に抗して移動させる押圧ピストン47とを有している。
【0110】
図6、及び、
図12から
図16に基づいて開閉手段37を具体的に説明する。
【0111】
図6、及び、
図12に示すように、大端部6(ロッド側端部15、キャップ16)には流路ピストン45、押圧ピストン47が移動するピストン穴44が形成され、ピストン穴44は、クランクシャフトの軸方向に交差する方向の一方側の端部が回避溝41(偏心スリーブ11の筒面を支持する内周面)に開口している。つまり、ピストン穴44はクランクシャフトの軸方向に交差する方向に中心軸が延びて大端部6(ロッド側端部15、キャップ16)に形成されている。
【0112】
ピストン穴44の底部には突出ばね43が配され、突出ばね43の先端部位には流路ピストン45の底部が当接している。流路ピストン45には連通路51が形成されている。付勢方向に延びる回転軸を中心に流路ピストン45が回動することにより、連通路51が第1排出路21、及び、第2排出路22と平行な状態とされる位置(開状態)と、連通路51が第1排出路21、及び、第2排出路22と直角な状態とされる位置(閉状態)とに切換えられる。
【0113】
突出ばね43と反対側の流路ピストン45の面側(他方側の面)には、流路ピストン45の付勢方向の端部を規制することで流路ピストン45を回動案内する案内ガイド46が配されている。案内ガイド46が配されているピストン穴44の開口部側には押圧ピストン47が配され、押圧ピストン47の頭部47aが、偏心スリーブ11の筒面を支持する内周面(回避溝41)の開口から出没自在に支持されている。頭部47aは、操作カム38により押圧されるようになっている。
【0114】
尚、押圧ピストン47は、図示しないストッパ等により開口部から回避溝41側への脱落が阻止され、更に、図示しない回り止め機構により、軸方向への移動が許容され、回動が阻止された状態に支持されている。
【0116】
流路ピストン45は筒状の本体50を備え、本体50がピストン穴44に移動自在で回動自在に配されている。本体50の底面側の端面が突出ばね43に当接し、ピストン穴44の開口部側の本体50の端面には、カムフォロア面52が形成されている。
【0117】
詳細は後述するが、流路ピストン45が突出ばね43の付勢力により案内ガイド46側に移動することで、カムフォロア面52が案内ガイド46のカム端面に案内されて流路ピストン45が90度回動するようになっている。
【0118】
流路ピストン45のカムフォロア面52には、端面の中心部位に小径の筒状突起54が形成され、筒状突起54の外周側の2箇所の180度の対向位置に矩形板フォロア55が設けられている。そして、流路ピストン45の本体50には中心軸に直交する方向に連通路51が形成されている。
【0119】
矩形板フォロア55の先端部には、後述する案内ガイドの傾斜部の山部を乗り越えて隣接する傾斜部に移動するためのテーパ部55aが形成されている。乗り越える作用の具体的な説明は後述する。
【0121】
案内ガイド46は、ピストン穴44の内周面の所定位置に固定される円環状をなし、案内ガイド46の流路ピストン45側の面にはカム面57が形成されている。尚、
図12(a)には案内ガイド46のカム面57のカムプロファイルの形状を側面視の状態で示してある。
【0122】
案内ガイド46は展開した状態で、直角三角形が同方向に4個連続して配された形状とされている。そして、直角を作る辺を結ぶ傾斜部がカム面57とされ、流路ピストン45が軸方向に移動することで、カムフォロア面52の矩形板フォロア55の外周側の縁の部位が傾斜したカム面57に摺接して谷部まで移動案内され、流路ピストン45が回動する。
【0124】
押圧ピストン47の径は、案内ガイド46の内周側に移動できる径に設定され、押圧ピストン47のピストン穴44の開口部側(回避溝41の開口部側)の端面に頭部47aが形成されている。頭部47aの反対側(流路ピストン45側)の押圧ピストン47の面には、押圧面61が形成されている。
【0125】
押圧ピストン47の押圧面61は、案内ガイド46のカム面57に沿った傾斜の傾斜面62と、傾斜面62に連続して形成される小傾斜面63とから形成されている。押圧ピストン47の押圧面61は、案内ガイド46の内周側で流路ピストン45のカムフォロア面52に対向している。
【0126】
回避溝41に突出している押圧ピストン47の頭部47aが操作カム38により押されることで、押圧ピストン47の押圧面61が案内ガイド46の内周側から流路ピストン45の矩形板フォロア55を押圧する。具体的には後述するが、流路ピストン45の矩形板フォロア55が押圧ピストン47で押されることで、流路ピストン45の矩形板フォロア55が、案内ガイド46の隣接するカム面57の位置に移動する。
【0127】
図17に基づいて上述した開閉手段37の動作の状況を具体的に説明する。
【0128】
図17(a)(b)(c)(d)(e)は、第1排出路21、第2排出路22が閉じ状態から開き状態に切換えられる動作の状況を説明してある。第1排出路21、第2排出路22が開き状態から閉じ状態に切換えられる状態は、
図17(e)が最初の状態で、
図17(b)(c)(d)(e)に対して連通路51の回動位置が90度ずれている状況となる。
【0129】
例えば、
図11の状態から偏心スリーブ11が反時計周り方向に180度回動すると、第2排出路22側の開閉手段37の状況が、
図17(a)(b)(c)(d)(e)の状態に動作して開き状態に切換えられる。第1排出路21の開閉手段37の状況は、
図17(e)が最初の状態で、
図17(b)(c)(d)(e)に対して連通路51の回動位置が90度ずれている状況で動作して閉じ状態に切換えられる。
【0130】
つまり、第1排出路21、第2排出路22の開閉手段37は、偏心スリーブ11の回転により操作カム38で開閉操作され、第1排出路21、第2排出路22の開閉状況が互いに逆になるように開閉操作される。
【0131】
図17(a)(b)(c)(d)(e)の順に動作の状況を説明する。
【0132】
図17(a)に示すように、流路ピストン45が突出ばね43に付勢され、矩形板フォロア55が案内ガイド46のカム面57の谷部に位置規制されている。流路ピストン45の矩形板フォロア55には、押圧ピストン47の傾斜面62と小傾斜面63の境界部位が当接し、押圧ピストン47が突出側に移動して頭部47aがピストン穴44の開口部から回避溝41に突出している。
【0133】
図17(a)の状態では、第1排出路21、第2排出路22に対し連通路51が直角の位置関係に維持されているため、第1排出路21、第2排出路22の連通が遮断した状態に維持されている。即ち、第1排出路21(第2排出路22)の開閉手段37が閉状態に維持されている。
【0134】
図17(b)に示すように、偏心スリーブ11(
図11参照)が回動して操作カム38が押圧ピストン47の頭部47aを押し始め、押圧ピストン47の押圧面61(傾斜面62と小傾斜面63の境界部位)により、流路ピストン45の矩形板フォロア55が、突出ばね43の付勢力に抗して、案内ガイド46のカム面57の山部側に押され始める。
【0135】
図17(c)に示すように、操作カム38が押圧ピストン47の頭部47aを更に押すことにより、押圧ピストン47の押圧面61の傾斜面62が案内ガイド46のカム面57と重なる位置に流路ピストン45が押される。その後、流路ピストン45の矩形板フォロア55が案内ガイド46のカム面57の山部の位置に達する。
【0136】
図17(d)に示すように、操作カム38が押圧ピストン47の頭部47aを更に押すことにより、流路ピストン45の矩形板フォロア55のテーパ部55aが案内ガイド46のカム面57の山部を乗り越え、流路ピストン45の矩形板フォロア55が、突出ばね43の付勢力により、案内ガイド46のカム面57を谷部側に移動して移動端がカム面57の谷部側で規制される。即ち、押圧ピストン47の押圧面61の傾斜面62と小傾斜面63の境界部位で流路ピストン45の矩形板フォロア55が規制される。
【0137】
これにより、流路ピストン45が90度回動し、第1排出路21、第2排出路22が連通する状態に連通路51が配され、第1排出路21(第2排出路22)の開閉手段37が開状態に切換えられる。
【0138】
開閉手段37が切換えられた後、
図17(e)に示すように、次に、圧縮比の状態を切換える際に偏心スリーブ11が回転し、操作カム38が押圧ピストン47の頭部47aから外れる。突出ばね43の付勢力により流路ピストン45がピストン穴44の開口部側に移動し、流路ピストン45の矩形板フォロア55が、押圧ピストン47の押圧面61の小傾斜面63を押すと同時に、案内ガイド46のカム面57の谷部に移動する。
【0139】
これにより、押圧ピストン47の頭部47aがピストン穴44の開口部から回避溝41に突出し、流路ピストン45の矩形板フォロア55が案内ガイド46のカム面57の谷部に規制される。従って、流路ピストン45が90度回動して開閉手段37が開状態に切換えられた状態が維持される。
【0140】
開閉手段37が開き状態から閉じ状態に切換えられる場合、
図17(e)が最初の状態で、
図17(a)(b)(c)(d)に対して連通路51の回動位置が90度ずれている状況で動作して閉じ状態に切換えられる。つまり、操作カム38による開閉手段37の操作が一旦終了し、再度、操作カム38により開閉手段37が操作されるまで、開閉手段37の開閉状態が維持される。
【0141】
開閉手段37は、操作カム38が押圧ピストン47を押圧する毎に、開閉状態が切換えられ、再度、操作カム38が押圧ピストン47を押圧するまでその状態が維持される。このため、電気的な切換えの機構を用いることなく、機械的な機構により開閉手段37による開閉の切換えと開閉状態の維持とを行うことができる。
【0142】
そして、押圧ピストン47を押圧する操作手段である操作カム38が偏心スリーブ11の外周に設けられ、開閉手段37の押圧ピストン47が回避溝41側に出没自在となっているので、クランクシャフトの軸方向に開閉手段37及び操作手段のスペースを必要としない。このため、コネクティングロッド10の幅を広げることなく、限られたスペースであっても、開閉手段37による開閉の切換えと開閉状態の維持とを行うことができる。
【0143】
従って、偏心スリーブ11を回動させるアクチュエータ12の排出路の開閉を制御する開閉制御弁部材として、開閉手段37を適用することにより、限られたスペースでの油圧経路の切換えのための機構を小型・簡素化することができ、複雑な制御も不要となる。
【0144】
上述した内燃機関の可変圧縮比装置は、油圧を用いたアクチュエータ12を適用して偏心スリーブ11の回転を容易に行うことが可能になる。