(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
双方向に電流を流すことができる電力変換装置は、二次電池などを負荷としたとき、印加する電圧極性等を切り替えて充電ならびに放電を行い、例えば充放電特性等の計測や電池性能の良否判定に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
この装置は、被測定用二次電池の充電時、充電後開路時、規定時間放電後の開路時、エージング後の開路時等における各電圧、ならびに各電流を測定し、二次電池の充放電特性の計測、または計測データを基に予め用意された判定用テーブルの各値と比較することにより、被測定用二次電池の良否を判定している。このように被測定用二次電池を充電する際の電力供給や、放電時の電子負荷としての作用を電力変換装置(双方向電源)によって行っている。
【0003】
図10は、従来の電力変換装置の構成を示す説明図である。図示した電力変換装置100は、双方向電源装置101の直流2次側端子にフルブリッジ回路102を接続し、また、当該フルブリッジ回路102を介して負荷103と接続している。
フルブリッジ回路102は、4個の例えばIGBTなどの半導体スイッチによって構成され、2つの入力点間に双方向電源装置101の出力電圧が印加されるように配線接続されている。
また、フルブリッジ回路102の2つの出力点には、それぞれインダクタ104,105が接続されており、これらインダクタ104,105を介して負荷103が接続されている。詳しくは、インダクタ104の一端に負荷103の高電位側電極が接続され、インダクタ105の一端に負荷103の低電位側電極が接続されている。
【0004】
インダクタ104と負荷103の高電位側電極との間には、負荷103に流れる電流を検出する例えば電流センサ(または電流検出用シャント抵抗器)106が設けられており、検出した電流値を制御部113へ出力するように配線接続されている(ここでは配線接続の図示を省略する)。
電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)106と負荷103との接続点と、インダクタ105と負荷103との接続点との間には出力コンデンサ107が接続されている。また、双方向電源装置101とフルブリッジ回路102の間において、フルブリッジ回路102の入力点間には入力コンデンサ108が接続され、さらに入力コンデンサ108に抵抗109が並列接続されている。
【0005】
電力変換装置100は、AC/DC変換電源部110を備え、AC/DC変換電源部110から出力する直流電力を制御電源部111およびDCファン112へ供給するように配線接続されている。
制御部113は、制御電源部111から出力される電力によって稼動し、フルブリッジ回路102を形成する各半導体スイッチのスイッチ動作を、例えば予め設定されている制御プロトコルに沿って、あるいは外部から入力されたコードやコマンドなどに応じて制御するプロセッサ等を有している。
【0006】
次に動作について説明する。
双方向電源装置101およびAC/DC変換電源部110は、それぞれ外部から交流電力が供給されている。
上記のように交流電力を入力したAC/DC変換電源部110は、所定の直流電圧を生成して制御電源部111およびDCファン112へ供給する。
制御電源部111は、AC/DC変換電源部110から入力した直流電圧を用いて、制御部113へ供給する電源電圧を生成し、当該制御部113へ供給する。また、AC/DC変換電源部110から直流電圧を供給されたDCファン112が稼動し、電力変換装置100内の冷却を行う。
【0007】
電源電圧の供給によって起動した制御部113は、フルブリッジ回路102の各半導体スイッチのスイッチ接続を制御して、双方向電源装置101の出力電圧を負荷103へ印加する。また、負荷103から放電電流を電子負荷となって稼動する双方向電源装置101へ流す。
前述のようなスイッチ接続が行われ、負荷103に流れる充電電流または放電電流を電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)106にて検出し、この検出電流値を例えば制御部113へ入力して負荷103の充電または放電特性の計測を行う。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
[実施例1]
図1は、この発明の実施例1による電力変換装置の構成を示す説明図である。図示した電力変換装置1は、AC/DC変換電源部11およびフルブリッジ回路12を有し、フルブリッジ回路12の出力端に負荷13を接続している。また、電力変換装置1は、制御電源部14、制御部15、DCファン16、および、放電回路17を有している。
AC/DC変換電源部11は、外部から交流電圧を入力して直流の所定電圧、例えば負荷13の充電電圧を生成するように構成されている。
AC/DC変換電源部11の高電位側出力端子には、逆流防止ダイオード18が、当該AC/DC変換電源部11の出力電流の純方向に極性をそろえて接続されている。
【0020】
フルブリッジ回路12は、4個の例えばIGBT等の半導体スイッチによって構成され、スイッチ(Q1)21とスイッチ(Q2)22とを直列接続させた第1レグと、スイッチ(Q3)23とスイッチ(Q4)24とを直列接続させた第2レグとを有し、第1レグと第2レグの各端部が接続されている。
スイッチ(Q1)21〜(Q4)24は、スイッチ接点間に、ターンオン時の破損を防ぐ還流ダイオード(フリーホイーリングダイオード)を有している。この還流ダイオードは、半導体スイッチとしてIGBTを用いた場合には、コレクタにカソードを接続し、エミッタにアノードを接続している。
図1に例示したフルブリッジ回路12において、スイッチ(Q1)21は還流ダイオードとしてダイオードD1を有し、スイッチ(Q2)22はダイオードD2、スイッチ(Q3)23はダイオードD3、スイッチ(Q4)24はダイオードD4を有している。
なお、半導体スイッチとしてMOSFETを用いたとき、耐圧などの定格が十分な値を有している場合にはMOSFETの寄生ダイオードを還流ダイオードとして使用してもよい。
【0021】
ここで、スイッチ(Q1)21とスイッチ(Q3)23との接続点をフルブリッジ回路12の第1接続点、スイッチ(Q2)22とスイッチ(Q4)24との接続点を第2接続点、スイッチ(Q3)23とスイッチ(Q4)24との接続点を第3接続点、スイッチ(Q1)21とスイッチ(Q2)22との接続点を第4接続点とする。
第1接続点には、逆流防止ダイオード18のカソードが接続され、また入力コンデンサ25の一端が接続されている。
第2接続点には、入力コンデンサ25の他端、およびAC/DC変換電源部11の低電位側出力端子が接続されている。
上記の入力コンデンサ25には、バイパス抵抗26が並列接続されている。
第3接続点にはインダクタ27の一端が接続され、第4接続点にはインダクタ28の一端が接続されている。
【0022】
インダクタ27の他端には電流センサまたは電流検出用シャント抵抗器29の第1検出端子が接続されている。電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29の第2検出端子には出力コンデンサ30の一端が接続され、この接続点に負荷13の高電位側電極が接続されている。
インダクタ28の他端には出力コンデンサ30の他端が接続され、この接続点に負荷13の低電位側電極が接続されている。
負荷13は、例えばリチウムイオンバッテリなどの二次電池であり、複数のバッテリから成るバッテリモジュール、あるいはバッテリパック等である。また、負荷13は、定格電圧が例えば数[V]から数百[V]であり、自動車の動力用として使用可能な容量を有するものでもよい。
なお、負荷13は、自身の両電極間電圧値を外部出力することができるように、例えば電圧センサを含む制御ユニットを備え、制御部15へ現在の電圧値(計測電圧値)を表す信号を出力するように構成されている。負荷13が上記の電圧センサ等を備えていない場合には、例えば出力コンデンサ30の両端電圧を計測する電圧センサを電力変換装置1に備えるようにしてもよい。
【0023】
制御電源部14は、AC/DC変換電源部11の出力電圧を入力するように接続されており、詳しくは、逆流防止ダイオード18のカソードに高電位側入力端子を接続している。
また、上記の逆流防止ダイオード18のカソードには、DCファン16が電源接続されており、さらに放電回路17が接続されている。DCファン16は、電力変換装置1の内部温度等が所定範囲内となるように、当該装置の適当な箇所に設置された冷却ファンである。
制御部15は、プロセッサ等の制御デバイスやメモリなどによって構成され、各演算や制御信号の生成などを行う演算・制御信号出力部31、予め設定された各閾値と外部から入力した値とを比較するコンパレータからなる電圧比較部32および電流比較部33を含むものである。この制御部15は、制御電源部14が生成した電源電圧を入力して動作するように回路構成されている。
【0024】
電圧比較部32は、予め設定されている電圧指示値Vdと負荷13に備えられた制御ユニットから出力される計測電圧値とを入力するように接続構成されている。
電流比較部33は、予め設定されている電流指示値Idと電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29から出力される計測電流値とを入力するように接続構成されている。なお、電流検出用シャント抵抗器29を用いる場合には、当該電流検出用シャント抵抗器29の両端電圧(上記の計測電流値に相当する電圧)等が電流比較部33へ入力されるように回路構成されている。
放電回路17は、放電スイッチ34と放電抵抗35によって構成されている。放電スイッチ34は、例えばFET等の半導体スイッチからなるもので、逆流防止ダイオード18のカソードにスイッチ接点の一端を接続し、スイッチ接点の他端を放電抵抗35の一端に接続している。放電スイッチ34の制御端子は放電回路制御信号出力部36に接続されている。また、逆流防止用ダイオード18のカソード(後述する点b)の電圧Vbと、予め設定されている放電開始電圧値Vb1とを比較し、その比較結果を示す信号を放電回路制御信号出力部36へ出力する放電開始電圧比較部37を備えている。
【0025】
次に動作について説明する。
図1の電力変換装置1は、後述するフルブリッジ回路12のスイッチ制御により、負荷13への充電動作と負荷13からの放電動作とを切り替えている。
フルブリッジ回路12は、スイッチ(Q2)22とスイッチ(Q3)23がオン状態になり、また、スイッチ(Q1)21とスイッチ(Q4)24がオフ状態になっているとき、AC/DC変換電源部11の出力電圧を用いて負荷13へ充電電流を供給する。
また、スイッチ(Q1)21とスイッチ(Q4)24が同時にオン状態になり、さらにスイッチ(Q2)22とスイッチ(Q3)23がオフ状態になっているとき、負荷13から放電電流が流れ出る。
制御部15の演算・制御信号出力部31は、各スイッチのon duty比を変化させることによって負荷13の充電動作と放電動作とを切り替える。
【0026】
図2〜6は、
図1の電力変換装置の動作を示す説明図である。これらの図は、フルブリッジ回路12の各スイッチのオン・オフ動作を表しており、また、図中下段には、
図1に示した点aの電圧Va、および点bの電圧Vbの、各スイッチ状態における大きさを示している。
【0027】
図2は、duty比が1:1、即ちduty=0.5となるように演算・制御信号出力部31が制御した各スイッチのオン・オフ動作を示している。なお、上記のduty比は‘充電電流が流れる時間長さ:放電電流が流れる時間長さ’となる。
フルブリッジ回路12の動作周期をTとしたとき、duty=0.5のスイッチ動作では、例えば電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29に充電電流が流れる時間長さは1/2Tとなる。また、この電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29に放電電流が流れる時間長さも1/2Tとなる。
【0028】
このようにスイッチ(Q1)21〜スイッチ(Q4)24のオン期間とオフ期間を同じ時間長さとしてスイッチ動作を行うと、スイッチ動作の1周期内で充電電流と放電電流が打ち消し合うことになり、負荷13に蓄積されている電荷量は変化せず、当該負荷13には直流電流が流れなかったことになる。
このとき、
図1に示した点aの電圧Vaは、AC/DC変換電源部11の出力電圧であり、点bの電圧Vbは、逆流防止ダイオード18の順方向降下電圧をVfとしたとき、Vb=Va−Vfとなっている。
【0029】
図3は、負荷13への充電動作を示したもので、周期Tにおいて充電電流を流す期間が、放電電流を流す期間よりも長くなる、duty>0.5のスイッチ動作を表している。
電力変換装置1が充電動作を行うとき、演算・制御信号出力部31は、スイッチ(Q2)22とスイッチ(Q3)23のオンデューティが、duty>0.5となるようにフルブリッジ回路12の各スイッチ動作を制御する。
このスイッチ動作では、負荷13へ充電電流が流れ込んでいる期間が、負荷13から放電電流が流れ出る期間よりも長いことから、負荷13に蓄積されている電荷が増大する。
【0030】
図4は、負荷13の放電動作を示したもので、周期Tにおいて放電電流を流す期間が、充電電流を流す期間よりも長くなる、duty<0.5のスイッチ動作を表している。
電力変換装置1が放電動作を行うとき、演算・制御信号出力部31は、スイッチ(Q2)22とスイッチ(Q3)23のオンデューティが、duty<0.5となるようにフルブリッジ回路12の各スイッチ動作を制御する。
このスイッチ動作では、負荷13からの放電電流出力期間が、負荷13へ充電電流が供給されている期間よりも長いことから、負荷13に蓄積されている電荷が減少する。
放電動作時には、フルブリッジ回路12の第1接続点と第2接続点の間に、負荷13から出力された電力が供給されることから、点bにおける電圧Vbは、
図4の最下段に示したようにVa+αになり、逆流防止ダイオード18のカソード電圧が高くなってAC/DC変換電源部11からの電力供給が抑止される。
【0031】
電力変換装置1のフルブリッジ回路12は、所定の周期内で逐次充電期間と放電期間を切り替えているが、フルブリッジ回路12等を構成する半導体スイッチは、半導体素子の特性としてオン・オフ動作に遅延が生じる。
そのため、上記の充電期間と放電期間の切り替え(スイッチステータスの切り替え)を行うときに、スイッチ(Q1)21とスイッチ(Q2)22、またスイッチ(Q3)23とスイッチ(Q4)24が同時にオン状態になり、AC/DC変換電源部11の出力点間を短絡する可能性がある。
制御部15は、このようなスイッチ状態になることを防ぐため、スイッチ(Q1)21〜(Q4)24を全てオフ状態としてから次のスイッチステータスへ遷移するように、各スイッチを制御している。
【0032】
次に、前述の充電動作の最中、ならびに放電動作の最中に各々行われる、“充電”期間の動作および“放電”期間の動作を説明する。
なお、充電動作における“充電”期間と、放電動作における“充電”期間は、それぞれの動作におけるduty比が異なり、即ち時間長さが異なっており、フルブリッジ回路12のスイッチステータスや各回路に流れる電流方向等は同じものとなる。
また、充電動作における“放電”期間と、放電動作における“放電”期間についても時間長さが異なるのみで、スイッチステータスや電流方向等は同様なものになる。
【0033】
図5は、
図3および
図4に示した“充電”期間等において、電力変換装置1の各回路に流れる充電電流の経路を示している。
また、
図6は、
図3および
図4に示した“放電”期間等において、各回路に流れる放電電流の経路を示している。
AC/DC変換電源部11から出力された直流電圧は、逆流防止ダイオード18を介してフルブリッジ回路12に印加され、詳しくはフルブリッジ回路12の第1接続点に高電位側の直流電圧が印加され、第2接続点に低電位側の直流電圧が印加されている。
【0034】
上記のようにAC/DC変換電源部11の出力電圧が印加されているとき、
図5(a)に示したように、スイッチ(Q2)22とスイッチ(Q3)23がオン、スイッチ(Q1)21とスイッチ(Q4)24がオフになると、第1接続点からスイッチ(Q3)23、インダクタ27、電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29を介して負荷13の高電位側電極へ充電電流が流れ、負荷13の低電位側電極からインダクタ28、スイッチ(Q2)22を介して第2接続点へ帰還する。
図5(a)に示した一点破線の矢印は、
図3および
図4に示した“充電”期間に流れる充電電流Icである。
【0035】
制御部15は、電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29が検出した充電電流Icの電流計測値を入力し、予め設定されている電流指示値Idと上記の電流計測値とを電流比較部33によって比較する。なお、このとき比較に用いる電流指示値Idは、充電時の電流値として設定されたものである。
また、制御部15は、負荷13の制御回路等から当該負荷13の両端電圧を表す電圧計測値を入力し、予め設定されている例えば充電時の電圧指示値Vdと上記の電圧計測値とを電圧比較部32によって比較する。
演算・制御信号出力部31は、上記の比較結果に応じてフルブリッジ回路12のスイッチ制御(duty比)の変更・修正等を行い、負荷13へ出力している充電電流Icが所定値となるように調整する。
例えば、負荷13がリチウムイオンバッテリ等である場合には、充電開始時には充電電流Icを所定の一定値に維持するように各スイッチのduty制御を行い、充電が進行することによって負荷13の両端電圧上昇が緩やかになり、所定電圧になったときには当該負荷13へ印加する電圧、もしくは負荷13の両端電圧を一定に維持しながら充電電流を流す制御を行う。
【0036】
制御部15は、
図5(a)のスイッチステータスから
図6(a)のスイッチステータスへ遷移させるとき、その途中で前述の動作遅延に対処するため
図5(b)に示したスイッチステータスとなるように各スイッチを制御する。
図5(b)は、スイッチ(Q1)21〜スイッチ(Q4)24全てがオフ状態となっており、インダクタ27,28に蓄積されているエネルギが開放されて慣性電流Icaが流れる状態を示している。図中、一点破線の矢印で示した慣性電流Icaは、このスイッチステータスになる直前までインダクタ27,28に流れていた充電電流Icと同方向に発生する。即ち、負荷13には、充電電流Icの慣性電流Icaが流れる。
【0037】
慣性電流Icaは、オフ状態のスイッチ(Q4)24のダイオードD4を順方向に流れ、インダクタ27、および
図1の電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29を介して負荷13の高電位側電極へ流れる。また、負荷13の低電位側電極からインダクタ28を介して、オフ状態のスイッチ(Q1)21のダイオードD1を順方向に流れてフルブリッジ回路12の第1接続点、即ち逆流防止ダイオード18のカソードへ向かって流れる。ここで、慣性電流Icaは、逆流防止ダイオード18によってAC/DC変換電源部11へ流れることなく、後述するように入力コンデンサ25等へ向かって流れる。
【0038】
第1接続点へ流れた慣性電流Icaの一部分は、入力コンデンサ25およびバイパス抵抗26へ分流し、入力コンデンサ25へ吸収され、またバイパス抵抗26を介して第2接続点へ流れる。
また、逆流防止ダイオード18のカソード、即ち第1接続点には、
図1に示したように制御電源14およびDCファン16の電源入力端子が接続されており、上記の入力コンデンサ25へ吸収されなかった概ねの慣性電流Icaは、AC/DC変換電源部11から出力される電源電流とともに上記の各電源入力端子へ入力され、各部の動作に用いられる。
【0039】
また、放電回路制御信号出力部36は、放電開始電圧比較部37の出力信号から、点bにおける電圧Vbが予め設定されている電圧値(放電開始電圧値Vb1)よりも大きいと判断した場合には、放電回路17に有意の制御信号を出力し、放電スイッチ34を適当な期間オン状態として放電抵抗35へ余剰分の慣性電流Icaを流し、
図1に示した点bの電圧Vbが慣性電流Icaによって上昇することを防ぐ。
【0040】
図5(a)の“充電”期間から、
図5(b)の慣性電流Icaを流す期間を経て“放電”期間に遷移し、
図6(a)に示したように、スイッチ(Q1)21とスイッチ(Q4)24がオン、スイッチ(Q2)22とスイッチ(Q3)23がオフになると、負荷13の高電位側電極から
図1の電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29、スイッチ(Q4)24を介して、入力コンデンサ25の他端を含む当該電力変換装置1の第2接続点へ流れる。
また、放電電流Isは、逆流防止ダイオード18のカソード、即ち、入力コンデンサ25の一端が接続されている第1接続点からスイッチ(Q1)21、インダクタ28を介して負荷13の低電位側電極へ帰還する。
【0041】
図6(a)に示したように、スイッチ(Q1)21とスイッチ(Q4)24がオン、スイッチ(Q2)22とスイッチ(Q3)23がオフになると、負荷13の高電位側電極がフルブリッジ回路12の第2接続点を介してAC/DC変換電源部11の低電位側出力端子に接続される。
また、負荷13の低電位側電極が第1接続点を介して逆流防止ダイオード18のカソードに接続される。このスイッチステータスにおいてAC/DC変換電源部11からフルブリッジ回路12へ印加された電圧により、負荷13の高電位側電極から、図中、一点破線の矢印で示した放電電流Isが流れる。図示した放電電流Isは、
図3、
図4の“放電”期間に負荷13から出力される電流である。
負荷13の高電位側電極から出力された放電電流Isは、電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29、インダクタ27、スイッチ(Q4)24を介して当該電力変換装置1の第2接続点へ流れる。逆流防止ダイオード18のカソード側、即ち入力コンデンサ25の一端側からスイッチ(Q1)21、インダクタ28を介して負荷13の低電位側電極へ帰還する。
【0042】
制御部15は、電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29が検出した放電電流Isの電流計測値を入力し、予め設定されている電流指示値Idと上記の電流計測値とを電流比較部33によって比較する。なお、このとき比較に用いる電流指示値Idは、放電時の電流値として設定されたものである。
また、制御部15は、負荷13の制御回路等から当該負荷13の両端電圧を表す電圧計測値を入力し、予め設定されている例えば放電時の電圧指示値Vdと上記の電圧計測値とを電圧比較部32によって比較する。
演算・制御信号出力部31は、上記の比較結果に応じてフルブリッジ回路12のスイッチ制御(duty比)の変更・修正等を行い、負荷13から出力される放電電流Isが所定値となるように調整する。
【0043】
制御部15は、
図6(a)のスイッチステータスから
図5(a)のスイッチステータスへ遷移させるとき、即ち“放電”期間から“充電”期間へ遷移するとき、その途中で前述の動作遅延に対処するため、
図6(b)に示したスイッチステータスとなるように各スイッチを制御する。
図6(b)は、
図5(b)と同様に、スイッチ(Q1)21〜スイッチ(Q4)24全てがオフ状態となっており、インダクタ27,28に蓄積されているエネルギが開放されて慣性電流Isaが流れる状態を示している。図中、一点破線の矢印で示した慣性電流Isaは、このスイッチステータスになる直前までインダクタ27,28に流れていた放電電流Isと同方向に発生する。即ち、負荷13から放電電流Isの慣性電流Isaが流れる。
【0044】
慣性電流Isaは、入力コンデンサ25の他端を含む当該電力変換装置1の第2接続点から、オフ状態のスイッチ(Q2)22のダイオードD2を順方向に流れて、フルブリッジ回路12の第4接続点を介してインダクタ28へ流れ込む。また、このインダクタ28から負荷13の低電位側電極へ流れる。
また、慣性電流Isaは、インダクタ27からフルブリッジ回路12の第3接続点を介してオフ状態のスイッチ(Q3)23のダイオードD3を順方向に流れ、第1接続点へ向かって流れる。上記のインダクタ27には、負荷13の高電位側電極から電流センサ(電流検出用シャント抵抗器)29を介して慣性電流Isaが流れ込む。
【0045】
第1接続点へ流れた慣性電流Isaは、前述の慣性電流Icaと同様に、当該第1接続点において分流され、一部分の慣性電流Isaは入力コンデンサ25およびバイパス抵抗26へ流れて、入力コンデンサ25へ吸収され、またバイパス抵抗26を介して第2接続点へ流れる。
上記の入力コンデンサ25へ吸収されなかった概ねの慣性電流Isaは、AC/DC変換電源部11から出力される電源電流とともに、制御電源部14、DCファン16の各電源入力端子へ入力され、各部の動作に用いられる。
また、放電回路制御信号出力部36は、放電開始電圧比較部37の出力信号から、点bにおける電圧Vbが予め設定されている電圧値(放電開始電圧値Vb1)よりも大きいと判断した場合には、放電回路17に有意の制御信号を出力し、放電スイッチ34を適当な期間オン状態として放電抵抗35へ余剰分の慣性電流Isaを流す。
【0046】
以上のように実施例1によれば、双方向電源装置を用いることなく負荷13の充放電を行うことができる。
また、充電動作と放電動作とを切り替える間にフルブリッジ回路12の全半導体スイッチをオフ状態としたとき、インダクタ27,28に蓄積したエネルギによって発生する慣性電流を制御電源部14、DCファン16等へ供給するようにしたので、入力コンデンサ25の容量を小さく抑えることができ、また、電力変換装置1の消費電力を抑えることができる。
また、点bにおける電圧Vbに応じて放電回路17をオン状態に制御するようにしたので、制御電源部14、DCファン16等へ印加される電圧を安定させ、過剰な電流供給を防ぐことができる。
【0047】
[実施例2]
図7は、この発明の実施例2による電力変換装置の構成を示す説明図である。
図7に示した実施例2による電力変換装置2は、
図1の電力変換装置1に蓄電部40を加えて構成したもので、他の部分は電力変換装置1と概ね同様に構成されている。ここでは、電力変換装置1と同一あるいは相当する部分に同じ符号を使用し、構成の重複説明を省略する。
【0048】
蓄電部40は、例えば補助電池41、DC/DCコンバータ42、制御部43などによって構成されており、電流の入出力端を逆流防止ダイオード18のカソード、また、点bに接続して制御電源部14、DCファン16等に対して並列に接続されている。
補助電池41は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池であり、充放電を繰り返し行うことができるものである。
DC/DCコンバータ42は、補助電池41の両極と接続しており、当該補助電池41を充電状態または放電状態にすることが可能な双方向出力型の、例えばフルブリッジ回路あるいはハーフブリッジ回路等によって構成されている。
【0049】
制御部43は、DC/DCコンバータ42の動作を制御するもので、適宜、出力方向を切替えて補助電池41の充電動作と放電動作とを制御するように、プロセッサ等のデバイスによって構成されている。
なお、蓄電部40は、補助電池41に流れる電流を検知する、図示を省略した電流センサ、また、DC/DCコンバータ42と点b等との接続点の電圧を検知する、図示を省略した電圧センサ等を備え、これらセンサの出力信号を制御部43において用いるように構成されている。
【0050】
次に動作について説明する。
実施例1の電力変換装置1と同様な動作について、ここでは重複説明を省略する。電力変換装置2のフルブリッジ回路12、制御部15、放電回路・制御信号出力部36などは、電力変換装置1のものと同様に動作し、実施例1で説明したように負荷13の充電または放電を行う。
【0051】
蓄電部40は、制御部15が負荷13を放電状態となるように各部を制御し、放電電流Isが流れているとき、また、慣性電流Isaが流れているときには、制御部43がこれらの電流に対応してDC/DCコンバータ42の動作を制御し、当該電流を補助電池41へ供給する。即ち、放電電流Is、また、慣性電流Isaを補助電池41の充電電流として用いる。
上記の充電電流を供給しているとき、補助電池41が満充電等の状態になった場合には、制御部43は例えばDC/DCコンバータ42等を介して放電抵抗35に、放電電流Isまたは慣性電流Isaを流すように各部を制御する。なお、蓄電部40に放電抵抗を備えて当該電流を流すようにしてもよい。
【0052】
制御部15が負荷13を充電状態となるように各部を制御し、充電電流Icが流れるとき、また、慣性電流Icaが流れるときには、補助電池41から放電電流が点bへ向かって流れるようにDC/DCコンバータ42等を制御し、補助電池41に蓄積しているエネルギ(電力)を負荷13へ供給する。
【0053】
以上のように実施例2によれば、負荷13を放電状態としたとき、放電電流Isならびに慣性電流Isaを蓄電部40へ入力して補助電池41を充電し、負荷13を充電状態としたとき、補助電池41の放電電流を負荷13へ向けて流すようにしたので、電力効率を向上させることができる。
【0054】
[実施例3]
実施例3による電力変換装置は、
図1の電力変換装置1、または、
図7の電力変換装置2の何れかのように構成されている。
実施例3の電力変換装置は、フルブリッジ回路12のスイッチ(Q1)21〜スイッチ(Q4)24として例えばパワーMOSFETを用いて構成されており、他の部分は
図1または
図2に示したように構成されている。
【0055】
次に動作について説明する。
図8および
図9は、この発明の実施例3による電力変換装置の動作を示す説明図である。
図1ならびに
図2に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を使用して説明する。
実施例3の電力変換装置は、負荷13を充電状態(負荷13の充電期間)とするときには、
図8(a)に示したように充電電流Icが流れる。
詳しくは、実施例3の制御部15が、スイッチ(Q2)22およびスイッチ(Q3)23がオン状態、スイッチ(Q1)21およびスイッチ(Q4)24がオフ状態となるように制御し、充電電流Icは実施例1で
図5(a)を用いて説明したように流れる。
【0056】
実施例3の制御部15は、
図8(a)のスイッチステータスから
図9(a)のスイッチステータスへ遷移させるとき、その途中で
図8(b)に示したスイッチステータスとなるように各スイッチを制御する。
図8(b)は、スイッチ(Q2)22およびスイッチ(Q3)23がオフ状態、スイッチ(Q1)21がダイオードD1の両端電圧を小さくする状態に制御されており、スイッチ(Q4)24がダイオードD4の両端電圧を小さくする状態に制御されている状態を示している。
【0057】
詳しくは、スイッチ(Q1)21のゲート電圧を適当な値に調整することにより、第1接続点と第3接続点との間の電圧を低下させ、即ち当該スイッチ(Q1)21のスイッチ接点間電圧を小さくしてダイオードD1の順電圧が小さくなる状態としている。
また、スイッチ(Q4)24のゲート電圧を適当な値に調整することにより、第2接続点と第4接続点の間の電圧を低下させ、即ち当該スイッチ(Q4)24のスイッチ接点間電圧を小さくしてダイオードD4の順電圧が小さくなる状態としている。
実施例3の電力変換装置は、ダイオードD1およびダイオードD4の順電圧を小さくするように、スイッチ(Q1)21およびスイッチ(Q4)24を制御し、この状態で慣性電流Icaが流れるようにしたものである。なお、ここで流れる慣性電流Icaは、実施例1で説明した慣性電流Icaと同様な経路を流れる。
【0058】
図8(a)の充電期間から、
図8(b)の慣性電流Icaを流す期間を経て、
図9(a)に示した各スイッチステータスに遷移すると、放電期間となって放電電流Isが流れる。なお、この放電電流Isは、
図6(a)を用いて説明した放電電流Isと同様な経路を流れる。
実施例3の制御部15は、放電期間から充電期間へ遷移するとき、即ち、
図9(a)のスイッチステータスから
図8(a)のスイッチステータスへ遷移させるとき、その途中で
図9(b)の状態となるように各スイッチを制御する。
図9(b)は、スイッチ(Q1)21およびスイッチ(Q4)24がオフ状態、スイッチ(Q2)22がダイオードD2の両端電圧を小さくする状態に制御されており、スイッチ(Q3)23がダイオードD3の両端電圧を小さくする状態に制御されている状態を示している。
【0059】
詳しくは、スイッチ(Q2)22のゲート電圧を適当な値に調整することにより、第2接続点と第3接続点との間の電圧を低下させ、即ち当該スイッチ(Q2)22のスイッチ接点間電圧を小さくしてダイオードD2の順電圧が小さくなる状態としている。
また、スイッチ(Q3)23のゲート電圧を適当な値に調整することにより、第1接続点と第4接続点との間の電圧を低下させ、即ち当該スイッチ(Q3)23のスイッチ接点間電圧を小さくしてダイオードD3の順電圧が小さくなる状態としている。
実施例3の電力変換装置は、ダイオードD2およびダイオードD3の順電圧を小さくするように、スイッチ(Q2)22およびスイッチ(Q3)23を制御し、この状態で慣性電流Isaが流れるようにしたものである。なお、ここで流れる慣性電流Isaは、実施例1で説明した慣性電流Isaと同様な経路を流れる。
【0060】
以上のように実施例3によれば、慣性電流が流れる還流ダイオードの順電圧が小さくなるように、当該還流ダイオードを有する半導体スイッチを制御するようにしたので、慣性電流を適当な大きさに制御することができ、大きな慣性電流が流れることによって還流ダイオード等が損傷することを防ぐことができる。また、制御電源部14、DCファン16、放電回路17(ならびに蓄電部40)等へ供給する慣性電流の大きさを制御することが可能になる。