(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(A)実施形態に係るレドックスフロー電池は、正極電極と、負極電極と、これら両電極間に介在される隔膜とを備える電池セルに正極電解液及び負極電解液を供給して充放電を行う。正極電解液は、マンガン(Mn)イオンと、添加金属イオンとを含有し、負極電解液は、チタン(Ti)イオン、バナジウム(V)イオン、クロム(Cr)イオン、及び亜鉛(Zn)イオンから選択される少なくとも一種の金属イオンを含有する。そして、正極電解液が含有する添加金属イオンは、アルミニウム(Al)イオン、カドミウム(Cd)イオン、インジウム(In)イオン、スズ(Sn)イオン、アンチモン(Sb)イオン、イリジウム(Ir)イオン、金(Au)イオン、鉛(Pb)イオン、ビスマス(Bi)イオン及びマグネシウム(Mg)イオンの少なくとも一種である。
【0013】
正極電解液が添加金属イオンの少なくとも1つを含有することにより、正極における析出物の発生を抑制することができる。添加金属イオンとは、正極電解液中で主として析出物の発生を抑制する機能を備え、積極的に活物質として機能しないものをいう。
【0014】
(B)実施形態のRF電池として、負極電解液が、さらに添加金属イオンを含有し、この負極電解液が含有する添加金属イオンが、Alイオン、Cdイオン、Inイオン、Snイオン、Sbイオン、Irイオン、Auイオン、Pbイオン、Biイオン及びMgイオンの少なくとも一種である形態が挙げられる。
【0015】
負極電解液が添加金属イオンの少なくとも1つを含有することにより、(1)負極活物質として機能する金属イオンの電池反応性を高められる(反応速度を速められる)、(2)イオン種によっては活物質として機能することがある、(3)水の分解に伴う水素の発生を抑制することができる、といった効果が期待される。
【0016】
(C)実施形態のRF電池として、正極電解液が、チタンイオンを含有する形態が挙げられる。
【0017】
正極電解液がTiイオンを含有することで、析出物の発生をさらに抑制することができる。
【0018】
(D)実施形態のRF電池として、正極電解液が含有するTiイオンの濃度が5M以下である形態が挙げられる。
【0019】
正極電解液が含有するTiイオンの濃度が5M以下であることで、析出物の発生をより効果的に抑制することができる一方で、正極電解液が含有するMnイオンの相対的な濃度が下がりすぎず、エネルギー密度の高いRF電池とすることができる。ここで、濃度の単位として示すMとは、体積モル濃度、即ちmol/L(モル/リットル)を意味する。以下、濃度について同様である。
【0020】
(E)実施形態のRF電池として、負極電解液がMnイオンを含有する形態が挙げられる。
【0021】
負極電解液がMnイオンを含有することで、両極の電解液におけるイオン種が等しくなる。よって、(1)Mnイオンが対極に移動して、各極で本来反応するMnイオンが相対的に減少することによる電池容量の減少を効果的に回避できる、(2)充放電に伴って経時的に液移り(一方の極の電解液が他方の極に移動する現象)が生じて両極の電解液の液量にばらつきが生じた場合でも、両極の電解液を混合するなどしてばらつきを容易に是正できる、(3)電解液の製造性に優れる、といった効果を奏する。
【0022】
(F)実施形態のRF電池として、負極電解液が含有するMnイオンの濃度が0.3M以上5M以下である形態が挙げられる。
【0023】
負極電解液が含有するMnイオンの濃度が上記の範囲であることで、負極電解液が含有するTiイオンの相対的な濃度が下がりすぎず、エネルギー密度の高いRF電池とすることができる。
【0024】
(G)実施形態のRF電池として、正極電解液が含有するマンガンイオンの濃度、および、負極電解液が含有する金属イオンの濃度の少なくとも一方が0.3M以上5M以下である形態が挙げられる。
【0025】
正極において活物質として機能するMnイオンの濃度、および、負極において活物質として機能する金属イオンの濃度の少なくとも一方が上記の範囲であることで、(1)価数変化反応を行う金属元素を十分に含み、高いエネルギー密度を有することができる、(2)電解液を酸の水溶液とする場合でも良好に溶解でき、電解液の製造性に優れる、という効果を奏する。ここで、負極電解液が含有する金属イオンが複数種の場合は、合計濃度とする。
【0026】
(H)実施形態のRF電池として、負極電解液がチタンイオンを含み、正極電解液が含有するMnイオンの濃度、および負極電解液が含有するTiイオンの濃度の少なくとも一方が0.3M以上5M以下である形態が挙げられる。
【0027】
正極において活物質として機能するMnイオンの濃度、および、負極において活物質として機能するTiイオンの濃度の少なくとも一方を上記の範囲とすることで、エネルギー密度の高いRF電池とすることができる。
【0028】
(I)実施形態のRF電池として、正極電解液における添加金属イオンの合計濃度が0.001M以上1M以下である形態が挙げられる。
【0029】
正極電解液における添加金属イオンの合計濃度が上記の範囲であることで、析出物の発生を効果的に抑制できる。
【0030】
(J)実施形態のRF電池として、正極電解液および負極電解液の少なくとも一方が含有する添加金属イオンまたは負極電解液が含有する添加金属イオンが、下記(1)から(10)の少なくとも1つを満たす形態が挙げられる。
(1)Alイオンが1価のAlイオン、2価のAlイオン、および3価のAlイオンの少なくとも一種
(2)Cdイオンが1価のCdイオン、および2価のCdイオンの少なくとも一方
(3)Inイオンが1価のInイオン、2価のInイオン、および3価のInイオンの少なくとも一種
(4)Snイオンが2価のSnイオン、および4価のSnイオンの少なくとも一方
(5)Sbイオンが3価のSbイオン、および5価のSbイオンの少なくとも一方
(6)Irイオンが1価のIrイオン、2価のIrイオン、3価のIrイオン、4価のIrイオン、5価のIrイオン、および6価のIrイオンの少なくとも一種
(7)Auイオンが1価のAuイオン、2価のAuイオン、3価のAuイオン、4価のAuイオン、および5価のAuイオンの少なくとも一種
(8)Pbイオンが2価のPbイオン、および4価のPbイオンの少なくとも一方
(9)Biイオンが3価のBiイオン、および5価のBiイオンの少なくとも一方
(10)Mgイオンが1価のMgイオン、および2価のMgイオンの少なくとも一方
【0031】
各添加金属イオンの電荷が上記の価数をとることで、正極においては析出物の発生をより効果的に抑制でき、負極においては上記した電池反応性向上等の効果がより発揮されやすいと期待される。
【0032】
(K)実施形態のRF電池として、Mnイオンが2価のMnイオン、および3価のMnイオンの少なくとも一方であり、正極電解液及び負極電解液の少なくとも一方は、Tiイオンを含み、Tiイオンが3価のTiイオン、および4価のTiイオンの少なくとも一方である形態が挙げられる。
【0033】
正極電解液中のMnイオンが上記の価数をとることで、標準酸化還元電位を高くすることができ、高い起電力のRF電池とすることができる。また、正極電解液が上記のいずれかの価数のTiイオンを含有することで、析出物の発生を抑制することができ、さらに、両極の電解液の構成を共通の構成とすることができるので、電解液の生産性に優れる。
【0034】
負極電解液では、活物質としてTiイオンを含む場合がある。この場合、Tiイオンが上記の価数をとることで、含まれるTiイオンを電池反応に効率的に利用でき、エネルギー密度の高いRF電池とすることができる。また、負極電解液が上記のいずれかの価数のMnイオンを含有することで、両極の電解液の構成を共通の構成とすることができ、電解液の生産性に優れる。
【0035】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るRF電解液を、以下の図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0036】
図1を参照し、実施形態に係るRF電池を説明する。本実施形態のRF電池1は、正極活物質がMnイオン、負極活物質がTiイオンであり、正極電解液および負極電解液に同一の構成を備える電解液を用いる一液系のTi/Mn系RF電池である。なお、
図1において、実線矢印は充電、破線矢印は放電を示し、両電解液用のタンク106,107に示される金属イオンは、正極活物質であるMnイオン、および負極活物質であるTiイオンのみを図示している。なお、Mnイオン、およびTiイオンの価数は代表的な形態のみを示しており、図示する以外の価数もとり得る。また、上記の両元素イオン以外の活物質が含まれる場合がある。
【0037】
<RF電池の全体構成>
実施形態に係るRF電池1は、代表的には、交流/直流変換器200や変電設備210を介して、発電部300(例えば、太陽光発電装置や風力発電装置、その他一般の発電所など)と負荷(ここでは、電力系統/需要家400)との間に接続される。そして、発電部300で発電した電力を充電して蓄え、又は、蓄えた電力を放電して電力系統/需要家400に供給する。このRF電池1は、従来のRF電池と同様に、電池セル100と、この電池セル100に電解液を供給する循環機構(タンク、導管、ポンプ)とを備える。
【0038】
(電池セル及び循環機構)
RF電池1における電池セル100は、正極電極104を内蔵する正極セル102と、負極電極105を内蔵する負極セル103と、両セル102,103を分離すると共にイオンを透過する隔膜101とを備える。正極セル102には、正極電解液を貯留する正極電解液用のタンク106が導管108,110を介して接続されている。負極セル103には、負極電解液を貯留する負極電解液用のタンク107が導管109,111を介して接続されている。また、導管108,109にはそれぞれ、両極の電解液を循環させるポンプ112,113が設けられている。電池セル100は、導管108〜111とポンプ112,113によって、正極セル102(正極電極104)及び負極セル103(負極電極105)にそれぞれ正極電解液用のタンク106の正極電解液及び負極電解液用のタンク107の負極電解液を循環供給して、両極における電解液中の活物質となる金属イオン(本実施形態では、正極においてはMnイオン、負極においてはTiイオン)の価数変化に伴って充放電を行う。
【0039】
電池セル100は通常、正極電極104(正極セル102)と負極電極105(負極セル103)と隔膜101とを構成要素とする単セルを複数積層したセルスタックと呼ばれる形態で利用される。セルスタックには、一面に正極電極104、他面に負極電極105が配置される双極板(図示せず)と、電解液を供給する給液孔及び電解液を排出する排液孔を有し、上記双極板の外周に形成される枠体(図示せず)とを備えるセルフレームが利用される。複数のセルフレームを積層することで、上記給液孔及び排液孔は電解液の流路を構成し、この流路は導管108〜111に接続される。セルスタックは、セルフレーム、正極電極104、隔膜101、負極電極105、セルフレーム、…の順に積層して構成される。なお、RF電池1の基本構成は、公知の構成を適宜利用することができる。
【0040】
(電解液)
正極電解液と負極電解液とには、それぞれに異なる構成の電解液を用いてもよいが、本実施形態のRF電池1に用いる正極電解液および負極電解液には、両電解液を共通の構成としている。この電解液は、複数の金属イオンを含有する。より詳細には、正極において活物質イオンとなるMnイオンと、負極において活物質イオンとなるTiイオンと、添加金属イオンとを含有する硫酸水溶液である。以下、この電解液につき、詳細に説明する。
【0041】
〔活物質イオン〕
活物質イオンは、電解液中に含まれる金属イオンであって、電子の受け渡しによる価数変化により電池反応に関与する。以下、両極における活物質イオンについて説明し、あわせて、正極電解液におけるTiイオン、および負極電解液におけるMnイオンについて説明する。
【0042】
(正極)
正極では、正極電解液中に含有されるMnイオンが活物質イオンとなり、Tiイオンは積極的には活物質として機能しない。このMnイオンは、電解液中において2価、3価、および4価の少なくとも一つの価数をとりうる。具体的には、放電時:2価のMnイオン(Mn
2+)が存在し、充電時:3価のMnイオン(Mn
3+)が存在し、充放電の繰り返しにより、両Mnイオンが存在する形態となる。よって、正極電解液が上記二つのMnイオンを含有することで標準酸化還元電位を高くすることができ、高い起電力のRF電池とすることができる。4価のMnは析出物(MnO
2)と考えられるが、このMnO
2は固体の析出物ではなく、電解液中に溶解したように見える安定な状態で存在していると考えられる。このようなMnO
2は、放電時、2電子反応として、Mn
2+に還元され(放電して)、即ち、MnO
2が活物質として作用して、繰り返し使用できることで、電池容量の増加に寄与することがある。したがって、上記の各実施形態では、若干量(Mnイオンの総量(mol)に対して10%程度以下)の4価のMnの存在を許容する。
【0043】
本実施形態のように、正極電解液はTiイオンを含有してもよい。析出物の発生をさらに抑制できるからである。この際、当該Tiイオンの濃度が5M以下であることが好ましい。また、正極電解液中のTiイオンの濃度を0.3M以上、0.5M以上、更に1M以上とすることができる。但し、溶媒に対する溶解度を考慮すると、正極電解液中のTiイオンの濃度は、5M以下、更に2M以下が利用し易い。析出物を抑制する効果が発揮されやすい一方で、正極電解液が含有するMnイオンの相対的な濃度が下がりすぎず、エネルギー密度の高いRF電池とすることができるからである。また、後述するように、負極電解液が活物質イオンとしてTiイオンを含有する場合には、正極電解液が含有するTiイオンの濃度を負極電解液が含有するTiイオンの濃度と同じ濃度とすれば、両極の電解液の構成を共通の構成とすることができ、電解液の生産性に優れる。
【0044】
(負極)
本実施形態において、負極では、負極電解液が含有するTiイオンが活物質イオンとなり、Mnイオンは積極的には活物質として機能しない。負極電解液では、放電時:4価のTiイオン(Ti
4+、TiO
2+など)が存在し、充電時:3価のTiイオン(Ti
3+)が存在し、充放電の繰り返しにより、両Tiイオンが存在する形態となる。
【0045】
負極の活物質イオンには、上記のTiイオンのみならず、Vイオン、Crイオン、およびZnイオンの少なくとも一種を用いてもよい。Vイオンを用いた場合には、2価のVイオンおよび3価のVイオンの少なくとも一方のVイオンを含有する。Crイオンを用いた場合には、2価のCrイオンおよび3価のCrイオンの少なくとも一方のCrイオンを含有する。Znイオンを用いた場合には、2価のZnイオンを含有する。
【0046】
上記いずれかのVイオンを含有することで、放電時:3価のVイオン(V
3+)が存在し、充電時:2価のVイオン(V
2+)が存在し、充放電の繰り返しにより、両Vイオンが存在する形態となる。上記いずれかのCrイオンを含有することで、放電時:3価のCrイオン(Cr
3+)が存在し、充電時:2価のCrイオン(Cr
2+)が存在し、充放電の繰り返しにより、両Crイオンが存在する形態となる。2価のZnイオンを含有することで、放電時:2価のZnイオン(Zn
2+)が存在し、充電時:金属亜鉛(Zn)が存在し、充放電の繰り返しにより、2価のZnイオンが存在する形態となる。
【0047】
負極の活物質イオンは、負極の活物質イオンとなる上記の各金属イオンを単一で用いてもよいし、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。2種以上の活物質イオンを含有する場合、充電時の電圧の上昇に伴って各活物質イオンが一つずつ順番に電池反応を行うように、各金属イオンの標準酸化還元電位を考慮して組合せることが好ましい。例えば、電位が貴な順に、Ti
3+/Ti
4+,V
2+/V
3+,Cr
2+/Cr
3+を組み合せて含有する形態が好ましい。
【0048】
本実施形態のように、負極電解液はMnイオンを含有してもよい。この際、当該Mnイオンの濃度は0.3M以上5M以下であることが好ましい。上記の正極電解液同様、負極電解液が含有するTiイオンの相対的な濃度が下がりすぎず、エネルギー密度の高いRF電池とすることができるからである。また、負極電解液が含有するMnイオンの濃度を正極電解液が含有するMnイオンと同じ濃度とすれば、両極の電解液の構成を共通の構成とすることができ、電解液の生産性に優れる。
【0049】
(その他)
両極の電解液に含有される活物質イオンの濃度はいずれも0.3M以上5M以下が好ましい。活物質イオンの濃度が0.3M未満では、大容量の蓄電池として十分なエネルギー密度(例えば、10kWh/m
3程度)を確保することが難しいからである。よって、活物質イオンの濃度は高い方が好ましく、0.5M以上、更に1.0M以上がより好ましい。一方、本実施形態のように電解液の溶媒を酸の水溶液とする場合、酸濃度の上昇により活物質イオンの溶解度の低下を招くおそれがある。よって、一方の極における活物質イオンの合計濃度の上限は5M以下が好ましい。
【0050】
本実施形態において、負極電解液が含む上記の金属イオンのうち、Tiイオンが占める割合が大きい方が好ましい。高い起電力が得られるRF電池とすることができるからである。この際、上記同様の理由から、正極において活物質として機能するMnイオンの濃度、および、負極において活物質として機能するTiイオンの濃度の少なくとも一方を0.3M以上5M以下とすることが好ましい。
【0051】
〔添加金属イオン〕
添加金属イオンとは、正極電解液中で主として析出物の発生を抑制する機能を備え、積極的に活物質として機能しないものをいう。また、添加金属イオンが負極電解液に含有される場合には、(1)負極活物質として機能する金属イオンの電池反応性を高められる(反応速度を速められる)、(2)イオン種によっては活物質として機能することがある(3)水の分解に伴う水素の発生を抑制することができる、といった効果の少なくとも1つが期待される。
【0052】
このような添加金属イオンとしては、Alイオン、Cdイオン、Inイオン、Snイオン、Sbイオン、Irイオン、Auイオン、Pbイオン、Biイオン及びMgイオンの少なくとも一種が挙げられる。これらの金属イオンは、例えば、電解液中で以下の価数の金属イオンとして存在しうる。
(1)Alイオン:1価のAlイオン、2価のAlイオン、および3価のAlイオンの少なくとも一種
(2)Cdイオン:1価のCdイオン、および2価のCdイオンの少なくとも一方
(3)Inイオン:1価のInイオン、2価のInイオン、および3価のInイオンの少なくとも一種
(4)Snイオン:2価のSnイオン、および4価のSnイオンの少なくとも一方
(5)Sbイオン:3価のSbイオン、および5価のSbイオンの少なくとも一方
(6)Irイオン:1価のIrイオン、2価のIrイオン、3価のIrイオン、4価のIrイオン、5価のIrイオン、および6価のIrイオンの少なくとも一種
(7)Auイオン:1価のAuイオン、2価のAuイオン、3価のAuイオン、4価のAuイオン、および5価のAuイオンの少なくとも一種
(8)Pbイオン:2価のPbイオン、および4価のPbイオンの少なくとも一方
(9)Biイオン:3価のBiイオン、および5価のBiイオンの少なくとも一方
(10)Mgイオン:1価のMgイオン、および2価のMgイオンの少なくとも一方
ここで、添加金属イオンは、電解液中で金属(固体)として存在する場合(0価の場合)、および上記以外の価数をとる場合を許容する。また、同一元素のイオンであって、価数が異なるイオンを含む場合がある。
【0053】
上記に例示した各金属イオン以外にも、リチウム(Li)イオン、ベリリウム(Be)イオン、ナトリウム(Na)イオン、カリウム(K)イオン、カルシウム(Ca)イオン、スカンジウム(Sc)イオン、ニッケル(Ni)イオン、亜鉛(Zn)イオン、ガリウム(Ga)イオン、ゲルマニウム(Ge)イオン、ルビジウム(Rb)イオン、ストロンチウム(Sr)イオン、イットリウム(Y)イオン、ジルコニウム(Zr)イオン、ニオブ(Nb)イオン、テクネチウム(Tc)イオン、ロジウム(Rh)イオン、セシウム(Cs)イオン、バリウム(Ba)イオン、ランタノイド元素(但しセリウムを除く)のイオン、ハフニウム(Hf)イオン、タンタル(Ta)イオン、レニウム(Re)イオン、オスミウム(Os)イオン、白金(Pt)イオン、タリウム(Tl)イオン、ポロニウム(Po)イオン、フランシウム(Fr)イオン、ラジウム(Ra)イオン、アクチニウム(Ac)イオン、トリウム(Th)イオン、プロトアクチニウム(Pa)イオン、ウラン(U)イオンが添加金属イオンとして挙げられる。
【0054】
上述のように、正極電解液が添加金属イオンの少なくとも1つを含有することにより、析出物の発生を抑制する。また、負極電解液が添加金属イオンの少なくとも一種を含有することで、上記の効果を奏すると期待される。特に、各極における添加金属イオンの合計濃度がそれぞれ0.001M以上であると、これらの効果を発揮しやすい。この濃度は0.005M以上が好ましく、0.01M以上がより好ましく、0.1M以上がさらに好ましい。一方、各極における添加金属イオンの合計濃度がそれぞれ1Mを超えると、電解液中の活物質イオンの割合が低くなり、エネルギー密度が低下する。よって、エネルギー密度の低下を防ぐためには、各極における添加金属イオンの合計濃度は、それぞれ1M以下とすることが好ましく、0.8M以下とすることがより好ましく、0.5M以下とすることがさらに好ましい。なお、これらの添加金属イオンを電解液中に含有させるためには、添加金属イオンを含有する化合物(代表的には酸化物や硫酸化合物)を電解液に溶解させればよい。
【0055】
なお、イオン種によっては、添加金属イオンは活物質として機能する場合がある。例えば、正極に含まれるPbイオン、負極電解液に含まれるSnイオンは活物質として機能しうる。また、負極電解液に含まれるZnイオンは、主として活物質として働くが、添加金属イオンとしても機能しうると期待される。
【0056】
本実施形態では、正極電解液含まれる金属イオンの種類及び濃度と、負極電解液に含まれる金属イオンの種類及び濃度が等しい。これにより、(1)液移りに伴って各極の金属イオンが相互に対極に移動することにより、各極で本来活物質として反応する金属イオンが減少して電池容量が減少し、エネルギー密度が低下する現象を抑制できる、(2)液移りにより液量がアンバランスになっても是正し易い、(3)電解液の製造性に優れる、といった効果を奏する。このような観点から、本実施形態では、両極電解液の構成を共通としている。よって、負極電解液が、Tiイオン以外の活物質イオンを含有する場合には、正極電解液には、上記した負極の活物質イオンを含んでもよい。
【0057】
〔溶媒〕
本実施形態において、電解液が含有する金属イオンは、水溶性イオンが好適に利用できる。その場合、正極電解液及び負極電解液の溶媒には、水溶液を好適に利用することができる。特に、溶媒を硫酸や硫酸塩を含有する酸の水溶液とすると、(1)各種の金属イオンの安定性の向上、活物質イオンの反応性の向上、溶解度の向上が得られる場合がある、(2)Mnイオンのような電位が高い金属イオンを用いる場合でも、副反応が生じ難い(分解が生じ難い)、(3)イオン伝導度が高く、電池の内部抵抗が小さくなる、(4)塩酸を利用した場合と異なり、塩素ガスが発生しない、(5)硫酸塩などと水とを用いて電解液が容易に得られ、製造性に優れる、といった複数の効果が期待できる。この酸の水溶液を溶媒とする電解液には、例えば、硫酸アニオン(SO
42−)が存在する。電解液の溶媒を酸溶液とする場合、酸の濃度を高めると、析出物の発生をある程度抑制できる。その反面、Mnイオンなどの各種の金属イオンの溶解度の低下や電解液の粘度の増加を招く恐れがある。したがって、各極の電解液中における酸の濃度は5M未満が好ましいと考えられ、特に4.5M以下、さらに1M以上4M以下が利用し易い。溶媒には、硫酸や硫酸塩の他、公知の酸や公知の塩を含む水溶液を利用することができる。
【0058】
(電極)
正極電極104及び負極電極105の材質は、例えば、カーボンファイバからなる不織布(カーボンフェルト)が挙げられる。カーボンフェルト製の電極を利用すると、(1)電解液に水溶液を用いた場合において充電時に酸素発生電位になっても、酸素ガスが発生し難い、(2)表面積が大きい、(3)電解液の流通性に優れる、といった効果がある。なお、他にも公知の電極を利用できる。
【0059】
(隔膜)
隔膜101は、例えば、陽イオン交換膜や陰イオン交換膜といったイオン交換膜が挙げられる。イオン交換膜は、(1)正極活物質の金属イオンと負極活物質の金属イオンとの隔離性に優れる、(2)H
+イオン(電池内部の電荷担体)の透過性に優れる、といった効果があり、隔膜101に好適に利用することができる。上記以外にも、公知の隔膜を利用できる。
【0060】
(タンクおよび導管)
正極電解液用のタンク106、負極電解液用のタンク107、および導管108〜111は、上記RF電解液が接触する部材である。部材(106〜111)の構成材料には、密度(ASTM D 1505)が0.080g/cm
3以上、0.960g/cm
3以下の範囲内にあり、メルトフローレート(ASTM D 1238,測定条件:190℃、荷重2.16kg)が0.01g/10分以上、20g/10分以下の範囲内にあるエチレン単独重合体、あるいは上記の範囲の密度およびメルトフローレートのエチレン・αオレイン共重合体などが挙げられる。
【0061】
以上に示した実施形態のRF電池は、充電状態が高い場合でも、正極における析出物の発生を抑制することができる。その結果、エネルギー密度が高くなることで、電解液を多量に用いる必要がなく、電解液用のタンクなどの設備の小型化や、これらの設備を設置するスペースを縮小することができる。
【0062】
以下、試験例を挙げて、本実施形態に係るRF電池を具体的に説明する。
【0063】
<試験例1>
[経時変化の観察]
試験例1では、実際の運用に供するRF電池を想定して、正極電解液に析出物が発生するかを観察した。まず、上記の実施形態と同様の構成のRF電池を試作した。このRF電池では、両電極に電極面積が9cm
2のカーボンフェルトを、隔膜に陽イオン交換膜を用いた(後述する各試験例についても特に記述がない限り同様)。正極電解液および負極電解液には、それぞれに同一の(共通の)組成の電解液(試料)を用いた。まず、試料1として、硫酸マンガン、硫酸チタン、および硫酸を用いて水溶液を作製した。この試料1のマンガンイオン濃度は1.0M、チタンイオン濃度は1.0M、硫酸イオン濃度(合計濃度)は5.0Mである。さらに、試料1と硫酸ビスマス(III)とを用いて、試料2と試料3とを作製した。試料2は、ビスマスイオン濃度が0.1M、硫酸イオン濃度(合計濃度)が5.15M、試料3は、ビスマスイオン濃度が0.02M、硫酸イオン濃度(合計濃度)が5.03M、である。そして、上記のRF電池において、試料1から試料3をそれぞれ電解液とした場合における経時的な析出物の発生を観察した。各試料を用いたRF電池は、正極の充電状態(正極SOC)を90%とし、試料1を電解液としたRF電池では、充電状態が70%の場合についても観察した。RF電池の充電は、各試料を用いたRF電池を充電電流315mA、充電終了電圧2Vで充電することで行った。なお、充電状態は、下記により求めた。
【0064】
・充電状態(%)=(充電電気量/1電子反応の理論電気量)×100
・充電電気量(A・h)=充電電流(A)×充電時間(h)
・1電子反応の理論電気量(A・h)=電解液の体積(L)×マンガンイオンの濃度(mol/L)×ファラデーの定数:96,485(A・秒/mol)×1(電子)/3600
【0065】
そして、規定の充電状態まで充電した各RF電池を室温(25℃)で静置することで待機状態とし、析出物が発生するか否かを目視にて経時的に観察した。析出物は、正極電解液中の沈殿物として観察される。観察結果を表1に示す。
【0067】
表1に示すように、試料1は、充電状態が70%の場合には静置から約1日で、充電状態が90%の場合には静置から約2.5時間で析出物の発生がそれぞれ観察された。試料3は、約7日で析出物の発生が観察された。一方、試料2は、30日を超えても析出物の発生が観察されなかった。以上より、正極電解液が添加金属イオンを含む場合には、RF電池を高い充電状態で待機状態としても、析出物の発生を抑制でき、ひいてはエネルギー密度を高めることができるものと考えられる。また、試料2および試料3より、正極電解液の添加金属イオンの含有量は、0.02M以上が好ましく、0.1M以上がより好ましいことが判る。
【0068】
<試験例2>
[電気化学測定]
試験例2では、上記の試験例1と同様の構成で0.785cm
2のカーボンフェルト電極を用いたRF電池、並びに試料1および試料2を用いて、各極の酸化還元反応電流および酸化還元反応電位の測定を行った。酸化還元反応電流、および、酸化還元反応電位の測定は、ポテンショスタット/ガルバノスタット(北斗電工(株)製、HZ−5000)を用い、参照電極をAg/AgClとした三極式サイクリックボルタンメトリーにより行った。測定に際しては、まず、測定する極を作用極、対極をカウンター電極とし、測定する極側の電解液中に参照電極を設置した。そして、作用極の電解液は静止状態、対極を循環状態とした上で測定した。この際、掃引速度はいずれも3mV/sとした。この測定結果を表2に示す。なお、表2中の電流に関する項目の単位はmA/0.785cm
2、電位に関する項目の単位はV(Vs Ag/AgCl)である。
【0070】
表2から明らかなように、試料2を用いた場合における両極の反応電流差は、試料1を用いた場合における両極の反応電流差よりもいずれも大きい。具体的には、試料2を用いた場合は試料1を用いた場合よりも、正極において1.3倍程度、負極において1.6倍程度大きい。一方、反応電位差は、試料2を用いた場合と、試料1を用いた場合とで大きな差はない。以上より、電解液が添加金属イオンを含有することで、エネルギー密度が向上することが判る。
【0071】
<試験例3>
[充電状態の検討]
試験例3では、上記の試験例1と同様の構成のRF電池を用いて、試料1および試料2をそれぞれ電解液に用いたRF電池の正極の充電状態を求めた。ただし、正極電解液を10ml、負極電解液を25ml、電極面積を9cm
2とした点が試験例1と異なる。また、充電状態の調整は、上記の試験例1に記載の各項目の計算方法を基準にして行った。この結果を表3に示す。
【0073】
表3から明らかなように、試料2を用いた場合は試料1を用いた場合よりも、充電時間、および正極の充電状態の両方が高い値である。これは、試料2を用いた場合では、析出物の発生が抑制された結果、活物質の利用率が高まったためと考えられる。以上より、電解液が添加金属イオンを含有することで、エネルギー密度が向上することが判る。
【0074】
<試験例4>
[放電容量の測定]
試験例4では、試料2を電解液としたRF電池を用いて、充放電サイクル試験を行った。RF電池は上記の試験例1と同様の構成であるが、正極電解液が6ml、負極電解液が9ml、充電電流および放電電流が450mAである点が異なる。なお、充電側切替電圧(充電から放電に切り替える電圧)は1.5V、放電側切替電圧(放電から充電に切り替える電圧)は1.0Vとし、サイクル数=3とした。そして、各サイクルにおける電流効率(%)、電圧効率(%)、放電容量(Ah)をそれぞれ調べ、電流効率と電圧効率とから電池効率(%)を求めた。これらの値の求め方は下記のとおりである。
・電流効率(%)=(放電時間/充電時間)×100
・電圧効率(%)=放電時平均電圧(V)/充電時平均電圧(V)×100
・電池効率(%)=電流効率(%)×電圧効率(%)×0.01
・放電容量(Ah)=放電時間(時間)×電流(A)
【0075】
これらの値について、2サイクル目の結果と3サイクル目の結果とから平均値を算出したところ、電流効率が、98.5%、電圧効率が87.6%、電池効率が86.2%、放電容量は25.2分であった。本試験例では、電流値が一定であるので、放電容量を時間で記載する。Mnイオンの1電子反応(Mn
3++e
−→Mn
2+)の理論放電容量(理論放電時間)が21.4分であるので、試料2を用いた本試験例のRF電池の放電容量は、理論放電容量の約118%に相当する。これより、添加金属イオンを含有する試料2を電解液として用いたRF電池は、エネルギー密度が高いことが判る。
【0076】
<試験例5>
[経時変化の観察]
試験例5では、実際の運用に供するRF電池を想定して、正極電解液に析出物が発生するかを観察した。まず、上記の実施形態と同様の構成のRF電池を試作した。
正極電解液として、Al添加試料、Mg添加試料、Sn添加試料、及び金属無添加試料を以下の通り作製した。
Al添加試料として、硫酸マンガン、硫酸チタン、硫酸、硫酸アルミニウムを用いて、マンガンイオン(2価)濃度が1.0M、チタンイオン(4価)濃度が1.0M、硫酸イオン濃度(合計濃度)が5.0M、Alイオン(3価)濃度が0.1Mの組成の電解液(ここでは水溶液)を用意した。
Mg添加試料として、硫酸マンガン、硫酸チタン、硫酸、硫酸マグネシウムを用いて、マンガンイオン(2価)濃度が1.0M、チタンイオン(4価)濃度が1.0M、硫酸イオン濃度(合計濃度)が5.0M、Mgイオン(2価)濃度が0.1Mの組成の電解液(ここでは水溶液)を用意した。
Sn添加試料として、硫酸マンガン、硫酸チタン、硫酸、硫酸スズを用いて、マンガンイオン(2価)濃度が1.0M、チタンイオン(4価)濃度が1.0M、硫酸イオン濃度(合計濃度)が5.0M、Snイオン(2価)濃度が0.05Mの組成の電解液(ここでは水溶液)を用意した。
金属無添加試料として、硫酸マンガン、硫酸チタン、硫酸を用いて、マンガンイオン(2価)濃度が1.0M、チタンイオン(4価)濃度が1.0M、硫酸イオン濃度(合計濃度)が5.0Mの組成の電解液(ここでは水溶液)を用意した。
【0077】
負極電解液は、正極電解液と同様に準備した。
【0078】
小型セルの各極の電極には9cm
2のカーボンフェルトを、隔膜には陽イオン交換膜を用いた。
【0079】
作製した各極の電解液をそれぞれ7mlずつ用意し、作製した小型セルを用いて充電を行った。充電条件は、315mAの定電流(電流密度が70mA/cm
2の定電流)とし、マンガンイオンの充電状態(SOC)が60%と70%となるまで充電を行った(Sn添加試料については70%のみ)。この充電直後に、正極電解液のタンクの内壁を目視にて確認した。マンガンイオンの充電状態(SOC、%)は、(充電電気量/1電子反応の理論電気量)×100によって求めた。なお、充電電気量、1電子反応の理論電気量は以下のように表わされる。マンガンイオンの1電子反応は、Mn
2+→Mn
3++e
−である。
充電電気量(A・h)=充電電流(A)×充電時間(h)
1電子反応の理論電気量(A・h)=電解液の体積(L)×マンガンイオンの濃度(mol/L)×ファラデーの定数:96,485(A・秒/mol)×1(電子)/3600
【0080】
そして、規定の充電状態まで充電した各RF電池の正極電解液を室温(25℃)で静置することで待機状態とし、析出物が発生するか否かを目視にて経時的に観察した。観察結果を表4に示す。なお、Sn添加試料の結果は以下の文中で説明する。
【0082】
表4に示すように、Al添加試料を含むRF電池は、充電状態が60%の場合には静置から3〜6日で、充電状態が70%の場合には静置から1.25日で析出物の発生がそれぞれ観察された。Mg添加試料を含むRF電池は、充電状態が60%の場合に7日で、充電状態が70%の場合は1日で析出物の発生が観察された。さらにSn添加試料を含むRF電池は、充電状態が70%の場合は1日で析出物の発生が観察されたが、析出物は分散しやすい形態であることが目視にて確認でき、析出物が微粒子化されていると推測される。析出物が微粒子化すると、再放電が容易な形態となるためRF電池として使用しやすくなる。一方、金属無添加試料では、充電状態が60%と70%において、析出までの日数が、それぞれ3日と1日であった。以上より、添加金属イオンを加えない試料(析出物の発生を抑制する金属としてチタンのみ加えるもの)と比較し、添加金属イオンを含む場合には、RF電池を高い充電状態で待機状態としても、析出物発生の抑制効果が同等或いはより優れることが分かった。
【0083】
[付記]
以上説明した本発明の実施形態に関連して、更に以下の付記を開示する。
【0084】
(付記1)
正極電極と、負極電極と、これら両電極間に介在される隔膜とを備える電池セルに正極電解液及び負極電解液を供給して充放電を行うレドックスフロー電池であって、
前記正極電解液は、マンガンイオンを含有し、
前記負極電解液は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、及び亜鉛イオンから選択される少なくとも一種の金属イオンと、添加金属イオンとを含有し、
前記負極電解液が含有する添加金属イオンは、アルミニウムイオン、カドミウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、アンチモンイオン、イリジウムイオン、金イオン、鉛イオン、ビスマスイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一種とを含有するレドックスフロー電池。
【0085】
付記1に記載のレドックスフロー電池は、負極電解液が添加金属イオンを含むことで、(1)負極活物質として機能する金属イオンの電池反応性を高められる(反応速度を速められる)、(2)イオン種によっては活物質として機能することがある、(3)水の分解に伴う水素の発生を抑制することができる、といった効果が期待される。よって、エネルギー密度が高いレドックスフロー電池とすることができる。
【0086】
なお、上記の負極電解液が含む添加金属イオンとしては、上記に例示したもの以外にも、例えば、リチウムイオン、ベリリウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、スカンジウムイオン、ニッケルイオン、ガリウムイオン、ゲルマニウムイオン、ルビジウムイオン、ストロンチウムイオン、イットリウムイオン、ジルコニウムイオン、ニオブイオン、テクネチウムイオン、ロジウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオン、セリウムイオンを除くランタノイド元素のイオン、ハフニウムイオン、タンタルイオン、レニウムイオン、オスミウムイオン、白金イオン、タリウムイオン、ポロニウムイオン、フランシウムイオン、ラジウムイオン、アクチニウムイオン、トリウムイオン、プロトアクチニウムイオン及びウランイオンが挙げられる。